JP4163739B2 - エンボス加工ステンレス鋼板及びそれを備えたキッチン台 - Google Patents

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Description

本発明は、表面に複数の微細な凸部を形成するエンボス加工が施されたステンレス鋼板に関する。
従来、キッチン台に用いられているシンクや天板等の表面につく疵や水滴等による汚れを防止するために、表面に複数の微細な凸部を形成するエンボス加工が施された金属製のシンクを用いることで、シンクの表面に付く疵や水滴等による汚れを防止している(例えば、特許文献1参照)。
また、エンボス加工が施されたステンレス鋼板には、ステンレス鋼板の表面につく疵や水滴等による汚れを効果的に防止するために、エンボス深さや凸部平坦部の長さや凸部エッジ部の長さなどを所定の範囲で形成しているものもある(例えば、特許文献2参照)。
特開2004−316195号公報(第4頁、第1図) 特許第3371096号公報(第3頁、第1図)
しかしながら、特許文献1及び2に記載のステンレス鋼板の表面に施されたエンボスにあっては、エンボスを構成する複数の凸部の高さが全て同じ高さとなっているため、それぞれの凸部の疵の付き方や疵の付く時期が同じになり、複数の凸部に均等に疵が付くようになるため、その疵が目立ってしまうという問題がある。
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、表面に複数の微細な凸部を形成するエンボス加工が施されたステンレス鋼板において、疵が付き難く、かつ疵が付いても、その疵を目立たないようにできるエンボス加工ステンレス鋼板を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載のエンボス加工ステンレス鋼板は、表面に複数の微細な凸部を形成するエンボス加工が施されたステンレス鋼板において、前記凸部における最頂部の高さに対して80%以上の部位を頂上部とし、該頂上部の平面視形状と前記凸部の底面の平面視形状とが略相似形状をなし、前記凸部は、前記最頂部の高さに対して80%の高さ部位の平面幅が、前記底面の平面幅の50%以上で、前記底面の平面幅の100%未満となるように形成され、前記複数の凸部が、それぞれ高さの異なる少なくとも2種類の凸部で構成され、3つの凸部により、正三角形を形成するように、前記凸部が配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、凸部の形状を特定していることで、凸部の頂上部が扁平な形状となり、ステンレス鋼板上を他の部材が摺動移動する際に、最頂部と他の部材とが面接触され、その接触圧を低減できるようになり、最頂部に他の部材が接触されることで生じる疵が付き難くなり、かつそれぞれ高さの異なる少なくとも2種類の凸部が形成されることにより、複数の凸部に均等に疵が付かず、それぞれの凸部の疵の付き方や疵の付く時期が変化するようになり、複数の凸部に付いた疵が目立ち難くなる。またステンレス鋼板の汚れの拭取作業を容易に行うことができる。
本発明の請求項2に記載のエンボス加工ステンレス鋼板は、請求項1に記載のエンボス加工ステンレス鋼板であって、
前記複数の凸部は、それぞれ高さの異なる大形凸部と小形凸部の少なくとも2種類の凸部で構成され、前記小形凸部が、前記大形凸部の周囲を囲むように配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、複数の大形凸部同士の間に小形凸部が配置されるようになり、ステンレス鋼板に他の部材が接触した際に、他の部材が小形凸部に接触することで、大形凸部同士の間のステンレス鋼板の表面に疵が付き難くなる。
本発明の請求項3に記載のエンボス加工ステンレス鋼板は、請求項1または2に記載のエンボス加工ステンレス鋼板であって、
前記ステンレス鋼板の表面には、無機・有機複合系塗料の耐摩耗性を有する塗膜が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、被接触物をステンレス鋼板に接触させた場合に面圧を下げ、高さの異なる凸部の疵の付く時期を変化させて疵を目立ち難くし、高さの低い凸部の磨耗が遅れるようになっているため、その残存している塗膜により長期間に渡って耐摩耗性を有するステンレス鋼板を提供できる。
本発明の請求項に記載のエンボス加工ステンレス鋼板は、請求項に記載のエンボス加工ステンレス鋼板であって、
前記ステンレス鋼板の表面に塗料を塗布後、該ステンレス鋼板を所定温度で加熱することにより前記塗料を前記ステンレス鋼板の表面に焼き付けて前記塗膜が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、塗料をステンレス鋼板の表面に焼き付けることで、剥離し難い塗膜を形成することができ、ステンレス鋼板が長年の使用に耐えられるようになる。
本発明の請求項に記載のエンボス加工ステンレス鋼板は、請求項1ないしのいずれかに記載のエンボス加工ステンレス鋼板であって、
前記ステンレス鋼板が、0.5重量%以上のCuを含み、該Cu主体のリッチ相を0.2体積%以上析出させたことを特徴としている。
この特徴によれば、ステンレス鋼板にCuを含ませることにより、抗菌性を有するステンレス鋼板を形成することができる。
本発明の請求項に記載のキッチン台は、
請求項1ないしのいずれかに記載のエンボス加工ステンレス鋼板を備えたことを特徴としている。
この特徴によれば、表面に疵等が付き難いシンクや天板を備えたキッチン台を製造できる。
本発明に係るエンボス加工ステンレス鋼板を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下に説明する。
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明のエンボス加工が施されたキッチン台を示す斜視図であり、図2は、実施例におけるステンレス鋼板の表面を示す平面図であり、図3(a)は、圧延ローラとステンレス鋼板を示す縦断側面図であり、図3(b)は、圧延ローラによって圧延されるステンレス鋼板を示す縦断側面図であり、図3(c)は、エンボス加工が施されたステンレス鋼板を示す縦断側面図であり、図4(a)は、使用状態におけるステンレス鋼板を示す縦断側面図であり、図4(b)は、長年使用したステンレス鋼板を示す縦断側面図である。
図1の符号1は、キッチン台を示しており、キッチン台1の天板2の上面やガスコンロ3の上面やシンク4の内面などには、本発明の適用されたエンボス加工が施されたステンレス鋼板5が用いられている。
キッチン台1に用いられているステンレス鋼板5について詳述すると、図2に示すように、ステンレス鋼板5の表面6に形成された凸部7a,7bは、平面視で円形状をなしており、直径kが大きく突出高gの高い大形凸部7aと、該大形凸部7aよりも直径k’が小さく突出高g’の低い小形凸部bとの大小2種類の寸法の凸部7a,7bが形成されている(図3(c)参照)。図2の部分拡大斜視図に示すように、凸部7a,7bは、その頂上部8が略平坦面を形成するとともに、この凸部7a,7bは、縦断側面視で上方に湾曲するように膨出された略扁平半球形状となっている(図3(c)参照)。
また、頂上部8からステンレス鋼板5の表面6に向かって側面部9が形成されている。尚、凸部7a,7bは、その底部の基部(底面)の平面視形状と頂上部8の平面視形状とが略相似形状をなし、頂上部8から凸部7a,7bの基部(底面)まで漸次相似形状が拡大する形状となっている。
更に、図2に示すように、各々の凸部7a,7bは等間隔に複数配列されており、1つの大形凸部7aの周囲には、等距離に6つの小形凸部7bが並ぶ配列となっているとともに、大形凸部7aから小形凸部7bに向かう方向の大形凸部7a同士の間には、2つの小形凸部7bが並ぶ配列となっている。尚、複数の凸部7a,7bは、任意の1つの大形凸部7a及び2つの隣接する小形凸部7bにより、正三角形を形成するように配置されている。
図2における部分拡大平面図に示すように、大形凸部7aの底部の基部(底面)の直径bは約0.9mm、小形凸部7bの底部の基部(底面)の直径は約0.5mmとなっているとともに、大形凸部7aの中心αから小形凸部7bの中心α’まで離間距離a、及び小形凸部7bの中心α’同士の間の離間距離aは約1.5mmとなっている。尚、後述する大形凸部7aの最頂面17の高さgは約0.03mm、小形凸部7bの最頂面17の高さg’は約0.02mmとなっている(図3(c)参照)。
図3(a)に示すように、ステンレス鋼板5にエンボス加工を施す際には、圧延ローラ10,11を用いた圧延加工によって行われる。一方の圧延ローラ10の外周面12には、複数の略扁平半球形状の内空間を有する大形凹部13aと小形凹部13bとが形成されている。尚、本実施例で用いられるステンレス鋼板5には、0.5重量%以上のCu(銅)を含み、該Cu主体のリッチ相を0.2体積%以上析出させたステンレス鋼板5が使用されている。
ステンレス鋼板5におけるCu主体のリッチ相の析出方法について詳述すると、0.5重量%以上のCuを含んだオーステナイト系ステンレス鋼を熱間圧延後から最終製品となるまでの間に500〜900℃の温度範囲で熱処理を1回以上施すことにより、ステンレス鋼板5にCu主体のリッチ相を0.2体積%以上析出させることができる。
図3(b)に示すように、ステンレス鋼板5にエンボス加工を施す際には、外周面12の凹部13a,13bが形成された圧延ローラ10と外周面12’が平坦な圧延ローラ11との間にステンレス鋼板5を挿入して、これらの圧延ローラ10,11によってステンレス鋼板5を上下方向から押圧しながら圧延加工を行う。
ステンレス鋼板5の表面6の一部は、圧延ローラ10によって圧延されるときに、圧延ローラ10の凹部13a,13b内に入り込み、ステンレス鋼板5の表面6の大形凹部13aに対応した位置に、大形凸部7aが形成されるとともに、小形凹部13bに対応した位置に、小形凸部7bが形成される、また、圧延ローラ10,11の押圧力が適度に調整されており、凹部13a,13b内に入り込んだ凸部7a,7bの頂上部8が、凹部13a,13bの奥面16に当接されない。そのため頂上部8の上面は若干上方に膨出された状態で略平坦面になるように形成される。
図3(c)に示すように、圧延ローラ10によってステンレス鋼板5に形成された複数の凸部7a,7bは、その最大の高さg,g’部位に、平坦面をなす最頂面17(最頂部)が形成されている。各々の凸部7a,7bの最頂面17の高さg,g’を100%とした場合に、凸部7a,7bにおける80%の高さh,h’以上の部位が頂上部8を構成している。
本実施例の圧延ローラ10,11によるエンボス形状の成形方法では、凹部13a,13bの深さを、凸部7a,7bが奥面16に当接しない充分な深さとし、凹部13a,13bの径の大きさと圧延ローラ10,11の押圧力とを適宜調整することで、凸部7a,7bの最大の高さg,g’を決めることができる。尚、高低差のある凸部7a,7bを一度に圧延ローラ10,11で押圧するため、凸部7a,7bは、凹部13a,13bの径が大きいほど高く、凹部13a,13bの径が小さいほど低く形成されるようになっている。
また、最頂面17(最頂部)は、圧延ローラ10,11による押圧時に、凹部13a,13bの奥面16に当接させて成形してもよいが、当接させない場合には、最頂面17が若干の湾曲面となる。そのような場合には、本実施例で言う最頂面17の平面幅m,m’の最大幅とは、凸部7a,7bの最も高い部位g,g’に対して95%以上の凸部7a,7bの部位と定義する。この最頂面17は凸部7a,7bに調理器具などの被接触物を接触させた場合に点接触に比較して面圧を下げることができるため、凸部7a,7bの耐摩耗性を向上させることができる。
また、凸部7a,7bは、最頂面17の高さg,g’に対して80%の高さh,h’の部位の平面幅i,i’が、凸部7a,7bの底部の基部(底面)の平面幅k,k’の50%以上で、100%未満となるように形成されている。更に、少なくとも最頂面17の高さgに対して95%以上の高さの平面幅m,m’は、凸部7a,7bの底部の基部(底面)の平面幅k,k’の10%以上の寸法になっている。このように凸部7a,7bの形状を特定することで、凸部7a,7bの頂上部8が扁平な形状となる。
尚、前記平面幅i,i’は、凹部13a,13bの側面を傾斜させることにより調整でき、本実施例では、側面部9に接触する面が垂直な凹部13a,13bを用いているが、側面部9に接触する面を傾斜または湾曲させた凹部13a,13bを用いて、凸部7a,7bをなだらかな立ち上がりの側面部9を有するように形成することもできる。このようにすれば、凸部7a,7bの立ち上がり部の清掃性を向上させることができる。
本実施例では、凸部7a,7bの平面視の形状が円形をなしているため、例えば、凸部7a,7bの底部の基部(底面)の平面幅k,k’と、凸部7a,7bの底部の基部(底面)の直径とが同じになっている。尚、凸部の平面視の形状が円形以外の形状をなしている場合には、凸部の底部の基部(底面)の周縁点同士を凸部の中心点を通過する直線によって結んだ距離のうち、最も長い距離を平面幅k,k’と定義する。
図4(a)に示すように、圧延ローラ10,11によってステンレス鋼板5にエンボス加工を施した後、ステンレス鋼板5における凸部7a,7bを含む表面6には、耐摩耗性を有する塗膜18が形成される。この塗膜18について詳述すると、塗膜18の形成に用いる塗料には、シリカ系、チタニア、アルミナ系、ジルコニア系を始めとする各種無機系塗料や、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂など各種有機系塗料を使用することができる。
また、シリカ・アクリル樹脂、シリカ・アクリルシリコーン樹脂などの各種無機・有機複合系塗料を用いることもできる。更に、塗膜18の耐摩耗性を向上させる目的で、潤滑剤を添加してもよい。潤滑剤としては、4フッ化エチレンに代表されるフッ素樹脂粉末、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン樹脂粉末、ポリエチレン−フッ素樹脂複合粉末、シリコーン樹脂粉末などを用いる。
塗膜18の形成方法について、有機系のフッ素樹脂の塗料を用いた場合と、無機・有機複合系のシリカ・アクリルシリコーン樹脂の塗料を用いた場合の2つを形成方法を例に説明する。
フッ素樹脂の塗料を用いる場合には、先ずステンレス鋼板5にエンボス加工を施し、キッチン台1の天板2やシンク4の形状に合わせて絞り加工を施した後、ステンレス鋼板5のアルカリ脱脂を行う。そして、フッ素樹脂塗料(固形分:ポリフッ化ビニリデン樹脂67重量%、アクリル樹脂28重量%、4フッ化エチレン粉末5重量%)を乾燥塗膜厚で5μmとなるようにスプレー塗装を行う。その後、ステンレス鋼板5を230℃(所定温度)で15分間(所定時間)加熱することにより塗料をステンレス鋼板5に焼き付けて塗膜18が形成される。
シリカ・アクリルシリコーン樹脂の塗料を用いる場合には、先ずステンレス鋼板5にエンボス加工を施し、キッチン台1の天板2やシンク4の形状に合わせて絞り加工を施した後、ステンレス鋼板5のアルカリ脱脂を行う。そして、シリカ・アクリルシリコーン樹脂(固形分:コロイダルシリカ24重量%、シラン加水分解縮合物43重量%、アクリルシリコーン樹脂33重量%)に固形分換算でポリエチレン樹脂粉末を5重量%添加した塗料を用いて、乾燥塗膜厚で5μmとなるようにスプレー塗装を行う。その後、ステンレス鋼板5を180℃(所定温度)で20分間(所定時間)加熱することにより塗料をステンレス鋼板5に焼き付けて塗膜18が形成される。
以上、本実施例におけるエンボス加工のステンレス鋼板5では、最頂面17の高さg,g’に対して80%の高さh,h’の部位の平面幅i,i’が、凸部7a,7bの底部の基部(底面)の平面幅k,k’の50%以上で、最頂面17の平面幅m,m’が、凸部7a,7bの底部の基部(底面)の平面幅k,k’の100%未満となるように凸部7a,7bの形状を特定していることで、凸部7a,7bの最頂面17が扁平な形状となり、ステンレス鋼板5上を他の部材、例えば、キッチン台1で使用する鍋等の調理器具19が摺動移動する際に、最頂面17と調理器具19とが面接触され、その接触圧を低減できるようになり、最頂面17に調理器具19が接触されることで生じる疵が付き難くなる。
また、複数の凸部7a,7bが、それぞれ高さg,g’の異なる大形凸部7aと小形凸部7bの少なくとも2種類の凸部7a,7bで構成されることにより、複数の凸部7a,7bに均等に疵が付かず、それぞれの凸部7a,7bの疵の付き方や疵の付く時期が変化するようになり、複数の凸部7a,7bに付いた疵が目立ち難くなる。
また、小形凸部7bが、大形凸部7aの周囲を囲むように配置されていることで、複数の大形凸部7a同士の間に小形凸部7bが配置されるようになり、ステンレス鋼板5に調理器具19が接触した際に、調理器具19が小形凸部7bに接触することで、大形凸部7a同士の間のステンレス鋼板5の表面6に疵が付き難くなる(図4(a)及び図4(b)参照)。
より詳述すると、図4(a)に示すように、大形凸部7a同士の間に小形凸部7bが配置されることで、ステンレス鋼板5上に調理器具19等を載置した際や、調理器具19等をステンレス鋼板5上で摺動移動させた際に、小形凸部7bの頂上部8より高い大形凸部7aの頂上部8には疵が付くが、大形凸部7aの間に配置されている小形凸部7bの頂上部8には疵が付き難くなる。若しくは大形凸部7aの頂上部8と小形凸部7bの頂上部8に同時に疵が付いても、その疵の方向が異なるようになる。更に、疵付き易い大形凸部7aの頂上部8の間隔が広いので、疵が目立たなくなっており、ステンレス鋼板5の美観を向上させられる。
また、調理器具19等を傾斜させてステンレス鋼板5上で摺動移動させると調理器具19の底面の角部が大形凸部7a同士の間に入り込み、大形凸部7a同士の間のステンレス鋼板5の表面6を疵つける虞があるが、本実施例のエンボス加工においては、大形凸部7a同士の間に小形凸部7bが配置されるので、この小形凸部7bの頂上部8に調理器具19の角部が接触し、表面6に調理器具19の角部が接触することを防ぐことができ、ステンレス鋼板5の表面6には疵が付かないようになっている。
更に、図4(b)に示すように、キッチン台1の長年の使用によって凸部7a,7bが磨耗する。耐摩耗性を有する塗膜18を凸部7a,7bの表面に塗布しているため、塗膜18が凸部7a,7bの表面に存在している時期には、凸部7a,7bの磨耗が遅れるようになっている。本実施例では、大形凸部7aと小形凸部7bの少なくとも2種類の凸部7a,7bで構成されることにより、大形凸部7aの塗膜18が磨耗してステンレスの地金部分が露出して大形凸部7aの磨耗が速まった場合であっても、小形凸部7bには、塗膜18が残存しているため、小形凸部7bの塗膜18により、小形凸部7bの磨耗が遅れるようになっている。そのため長期間に渡って耐摩耗性を有するステンレス鋼板5を提供できるようになっている。
また、最頂面17の平面幅m,m’が凸部7a,7bの底部の基部(底面)の平面幅k,k’の10%以上となるように最頂面17が平坦面に形成されることで、最頂面17が調理器具19に点接触されずに済むようになる。尚、最頂面17が平坦面をなし、頂上部8が扁平な形状をなしていることで、最頂面17及び頂上部8にスプレー塗装を行った際に、最頂面17及び頂上部8上に塗料が留まるようになり、凸部が半球形状をなしている場合と比較して、最頂面17及び頂上部8に厚い塗膜18を形成できるようになっている。
また、複数の凸部7a,7bが、任意の1つの大形凸部7a及び2つの隣接する小形凸部7bにより、正三角形を形成するように配置されていることで、キッチン台1の使用者がステンレス鋼板5の表面6を互いに60度の角度で交差する3方向から拭くことができるようになり、ステンレス鋼板5の汚れの拭取作業を容易に行うことができる。
また、ステンレス鋼板5における凸部7a,7bを含む表面6に耐摩耗性を有する塗膜18が形成されることで、凸部7a,7bを含むステンレス鋼板5の表面6が保護され、疵等が付き難いステンレス鋼板5とすることができる。
また、ステンレス鋼板5における凸部7a,7bを含む表面6に塗料を塗布後、ステンレス鋼板5を所定温度で加熱することにより塗料をステンレス鋼板5における凸部7a,7bを含む表面6に焼き付けて塗膜18が形成されていることで、剥離し難い塗膜18を形成することができ、ステンレス鋼板5が長年の使用に耐えられるようになる。
また、Cu(銅)は比較的安価な元素であるとともに、抗菌成分としても有効であり、本実施例のステンレス鋼板5が、0.5重量%以上のCuを含み、該Cu主体のリッチ相を0.2体積%以上析出させることで、抗菌性を有するステンレス鋼板5を形成することができる。尚、ステンレス鋼板5の凸部7a,7bが磨耗したとしても、常に、ステンレス鋼板5の内部からCu主体のリッチ相が新規に現れるため、ステンレス鋼板5の抗菌性を持続させることができる。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例では、各々の凸部7a,7bの形状を特定しているエンボス加工が施されたステンレス鋼板5が、キッチン台1の天板2の上面やガスコンロ3の上面やシンク4の内面などに用いられていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、建材として用いられている内装材や外装材、若しくは什器や電気機器類等に、本実施例のエンボス加工が施されたステンレス鋼板5を使用してもよい。また、本発明のステンレス鋼板5は、装飾管用途や張紙防止用鋼板や滑り性改善鋼板としても利用でき、該表面にクリア塗装等を施こした塗装仕上げとすることで、更に耐疵付性を改善できるため、使用用途が広くなり、工業的価値も高くなる。
また、前記実施例では、大形凸部7aと小形凸部7bとの2種類の凸部がステンレス鋼板5に設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、同一形状をなす凸部の直径や突出高を変えた3種類以上の凸部を設けるようにしてもよい。
本発明のエンボス加工が施されたキッチン台を示す斜視図である。 実施例におけるステンレス鋼板の表面を示す平面図である。 (a)は、圧延ローラとステンレス鋼板を示す縦断側面図であり、(b)は、圧延ローラによって圧延されるステンレス鋼板を示す縦断側面図であり、(c)は、エンボス加工が施されたステンレス鋼板を示す縦断側面図である。 (a)は、使用状態におけるステンレス鋼板を示す縦断側面図であり、(b)は、長年使用したステンレス鋼板を示す縦断側面図である。
符号の説明
1 キッチン台
2 天板
3 ガスコンロ
4 シンク
5 ステンレス鋼板
6 表面
7a 大形凸部
7b 小形凸部
8 頂上部
9 側面部
10,11 圧延ローラ
12,12’ 外周面
13a 大形凹部
13b 小形凹部
16 奥面
17 最頂面(最頂部)
18 塗膜
19 調理器具(他の部材)

Claims (6)

  1. 表面に複数の微細な凸部を形成するエンボス加工が施されたステンレス鋼板において、前記凸部における最頂部の高さに対して80%以上の部位を頂上部とし、該頂上部の平面視形状と前記凸部の底面の平面視形状とが略相似形状をなし、前記凸部は、前記最頂部の高さに対して80%の高さ部位の平面幅が、前記底面の平面幅の50%以上で、前記底面の平面幅の100%未満となるように形成され、前記複数の凸部が、それぞれ高さの異なる少なくとも2種類の凸部で構成され、3つの凸部により、正三角形を形成するように、前記凸部が配置されていることを特徴とするエンボス加工ステンレス鋼板。
  2. 前記複数の凸部は、それぞれ高さの異なる大形凸部と小形凸部の少なくとも2種類の凸部で構成され、前記小形凸部が、前記大形凸部の周囲を囲むように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエンボス加工ステンレス鋼板。
  3. 前記ステンレス鋼板の表面には、無機・有機複合系塗料の耐摩耗性を有する塗膜が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンボス加工ステンレス鋼板。
  4. 前記ステンレス鋼板の表面に塗料を塗布後、該ステンレス鋼板を所定温度で加熱することにより前記塗料を前記ステンレス鋼板の表面に焼き付けて前記塗膜が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のエンボス加工ステンレス鋼板。
  5. 前記ステンレス鋼板が、0.5重量%以上のCuを含み、該Cu主体のリッチ相を0.2体積%以上析出させたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のエンボス加工ステンレス鋼板。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載のエンボス加工ステンレス鋼板を備えたことを特徴とするキッチン台。
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