JP4163607B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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本発明は、ステアリングハンドルに入力される操舵トルクを車輪に伝達する操舵トルク伝達経路上に三相モータを配置し、制御手段により制御されるモータ駆動回路を介して三相モータを駆動して車輪を操舵する電動パワーステアリング装置に関する。
かかる電動パワーステアリング装置は、下記特許文献1により公知である。この電動パワーステアリング装置のモータ駆動回路は6個のスイッチング素子を組み合わせた三相ブリッジ回路を備えており、それら6個のスイッチング素子を所定にタイミングでON/OFFすることで三相モータのU相コイル、V相コイルおよびW相コイルに三相交流電流を供給するようになっている。
特開2002−331946号公報
ところで、6個のスイッチング素子の何れかがON故障した場合や、三相モータのバスバーが短絡した場合に該モータが不適切な作動をしないように、制御手段と三相モータとを接続するU相ライン、V相ラインおよびW相ラインにフェイルセーフリレーを介装し、異常時にフェイルセーフリレーを開放して三相モータの駆動を禁止することが考えられる。この場合、U相ライン、V相ラインおよびW相ラインのうちの何れか2本のラインを開放すれば三相モータの駆動を禁止することが可能なため、フェイルセーフリレーの構造を簡素化するために前記2本のラインだけを開放する構造が採用される。
しかしながら、U相ライン、V相ラインおよびW相ラインのうち、フェイルセーフリレーが介装された2本のラインは、残りの1本のラインに比べてフェイルセーフリレーの接触抵抗の分だけ抵抗値が高くなるため、U相ライン、V相ラインおよびW相ラインを流れる電流がアンバランスになって三相モータのトルク変動が発生し、操舵フィーリングが低下する問題がある。
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたもので、電動パワーステアリング装置のモータ駆動回路および三相モータ間に介装したフェイルセーフリレーに起因する三相モータのトルク変動を抑制することを目的とする。
上記目的を達成するために、発明によれば、ステアリングハンドルに入力される操舵トルクを車輪に伝達する操舵トルク伝達経路上に配置された三相モータと、複数のスイッチング素子を有して三相モータを駆動するモータ駆動回路と、ステアリングハンドルに入力される操舵トルクを検出する操舵トルクセンサと、操舵トルクセンサで検出した操舵トルクに基き、モータ駆動回路を介して三相モータの駆動を制御する制御手段と、モータ駆動回路および三相モータを接続するU相ライン、V相ラインおよびW相ラインのうちの第1、第2のラインを開放可能なフェイルセーフリレーとを備えており、前記制御手段、U相ライン、V相ラインおよびW相ラインに流れる電流が等しくなるように、前記第1、第2のラインに流れる電流、あるいは第3のラインに流れる電流を所定の補正量だけ変化させる電動パワーステアリング装置であって、前記制御手段は、前記第1、第2のラインに所定の電流を流してフェイルセーフリレーの抵抗値を算出し、この抵抗値に基づいて前記補正量を算出することを特徴とする電動パワーステアリング装置が提案される。
尚、実施例の第1〜第6スイッチング素子46a〜46fは本発明のスイッチング素子に対応し、実施例の電子制御ユニットUは本発明の制御手段に対応する。
本発明によれば、モータ駆動回路および三相モータを接続するU相ライン、V相ラインおよびW相ラインのうちの第1、第2のラインをフェイルセーフリレーで開放可能とした場合、フェイルセーフリレーの接触抵抗の影響を補償してU相ライン、V相ラインおよびW相ラインに流れる電流が等しくなるように、前記第1、第2のラインに流れる電流、あるいは第3のラインに流れる電流を所定の補正量だけ変化させるので、三相モータの出力トルクの変動を抑制して操舵フィーリングを高めることができる。
また特にフェイルセーフリレーが介装された第1、第2のラインに所定の電流を流して抵抗値を算出し、この抵抗値に基づいてU相ライン、V相ラインおよびW相ラインに流れる電流の補正量を算出するので、U相ライン、V相ラインおよびW相ラインに流れる電流を補正により精度良く一致させることができる。
以下、本発明の実施形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
図1〜図8は本発明の一実施例を示すもので、図1は電動パワーステアリング装置の全体斜視図、図2は図1の2−2線拡大断面図、図3は図2の3−3線断面図、図4はモータの駆動回路を示す図、図5はU相電流、V相電流およびW相電流の大きさを示すグラフ、図6はU相電流、V相電流およびW相電流により発生する出力トルクの大きさを示すグラフ、図7はW相電流の減少させる制御を説明するフローチャートである。
図1に示すように、ステアリングハンドル11と一体に回転する上部ステアリングシャフト12は、上部ユニバーサルジョイント13、下部ステアリングシャフト14および下部ユニバーサルジョイント15を介して、減速機16から上方に突出するピニオンシャフト17に接続される。減速機16の下端に接続されたステアリングギヤボックス18の左右両端から突出するタイロッド19,19が、左右の車輪WL,WRの図示せぬナックルに接続される。減速機16には三相交流モータMが支持されており、このモータMの作動が、減速機16の内部に収納した操舵トルクセンサStからの信号が入力される電子制御ユニットUにより制御される。
図2および図3に示すように、減速機16はステアリングギヤボックス18と一体の下部ケース21と、その上面にボルト22…で結合された中間ケース23と、その上面にボルト24…で結合された上部ケース25とを備えており、ステアリングギヤボックス18および上部ケース25にボールベアリング26,27で前記ピニオンシャフト17が回転自在に支持される。ピニオンシャフト17の下端に設けられたピニオン28が、ステアリングギヤボックス18の内部に左右移動自在に支持したラックバー29に設けられたラック30に噛合する。ステアリングギヤボックス18に形成した貫通孔18aに押圧部材31が摺動自在に収納されており、貫通孔18aを閉塞するナット部材32との間に配置したスプリング33で押圧部材31をラックバー29の背面に向けて付勢することで、ラックバー29の撓みが抑制される。
減速機16の内部に延びるモータMの回転軸34は、一対のボールベアリング35,36で下部ケース21に回転自在に支持されており、モータMの回転軸34に設けられたウオーム37が、ピニオンシャフト17に固定されたウオームホイール38に噛合する。
従って、モータMを駆動すると回転軸34のトルクがウオーム37およびウオームホイール38を介してピニオンシャフト17に伝達され、ドライバーのステアリング操作がモータMによってアシストされる。
図4には、電子制御ユニットUからの指令でモータMを駆動するモータ駆動回路Cが示される。モータ駆動回路Cは三相ブリッジ回路41を備えており、その高圧端子THはシャント抵抗42、パワーリレー43およびチョークコイル44を介して車載の12Vのバッテリ45のプラス極45aに接続され、その低圧端子TLは接地されてバッテリ45のマイナス極45bに接続される。三相ブリッジ回路41の高圧端子THおよび低圧端子TL間には、直列に接続された第1スイッチング素子46a、第1出力端子TM1および第2スイッチング素子46bと、直列に接続された第3スイッチング素子46c、第2出力端子TM2および第4スイッチング素子46dと、直列に接続された第5スイッチング素子46e、第3出力端子TM3および第6スイッチング素子46fとが、相互に並列に接続される。そして第1、第2、第3出力端子TM1,TM2,TM3が、モータMのスター結線されたU相コイル61U、V相コイル61VおよびW相コイル61Wに、それぞれU相ライン62U、V相ライン62VおよびW相ライン62Wを介して接続される。第1〜第6スイッチング素子46a〜46fは、例えば電界効果トラジスタ(FET)で構成される。
第1〜第6スイッチング素子46a〜46fの何れかがON故障した場合や、モータMのバスバーが短絡した場合に、モータMが不適切な作動をするのを防止すべく、U相ライン62U、V相ライン62VおよびW相ライン62Wのうちの何れか2本のライン(本実施例ではU相ライン62UおよびV相ライン62V)にフェイルセーフリレー47が介装される。フェイルセーフリレー47はU相ライン62U、V相ライン62VおよびW相ライン62Wの3本のラインに介装しても良いが、2本のラインに介装すればモータMを停止させられるため、このようになっている。
バッテリ45から三相ブリッジ回路41への電力の供給をON/OFFするパワーリレー43と、異常時にモータMを停止させるフェイルセーフリレー47とは、電子制御ユニットUにより制御される共通のリレー駆動回路48に接続されており、パワーリレー43およびフェイルセーフリレー47は連動してON/OFFする。即ち、パワーリレー43がONするとフェイルセーフリレー47もONし、パワーリレー43がOFFするとフェイルセーフリレー47もOFFし、これによりコストの低減およびリレー駆動回路48の故障率の低減が図られる。
パワーリレー43および三相ブリッジ回路41間に配置されたシャント抵抗42はモータ電流検出回路49に接続されており、電子制御ユニットUに接続されたモータ電流検出回路49は、シャント抵抗42の両端の電位差とシャント抵抗42の抵抗値とに基づいて、バッテリ45から三相ブリッジ回路41に供給される電流を検出する。
三相ブリッジ回路41の第1〜第6スイッチング素子46a〜46fを電子制御ユニットUに接続されたスイッチング素子駆動回路51によりデューティ制御することで、モータMのU相コイル61U、V相コイル61VおよびW相コイル61Wに、図5に示すような三相交流を供給することができる。このとき、第1〜第6スイッチング素子46a〜46fを均等にデューティ制御しても、U相ライン62UおよびV相ライン62Vに介装したフェイルセーフリレー47の接点の接触抵抗により、U相電流およびV相電流がフェイルセーフリレー47を通過しないW相電流よりも若干小さくなることが避けられない。その結果、図6に示すように、U相電流およびV相電流により発生する出力トルクに対してW相電流により発生する出力トルクが若干大きくなり、それらの出力トルクを加算したモータMの出力トルクが正弦波状に変動し、これが騒音や振動の原因なったり操舵フィーリング低下の原因となったりする問題がある。
しかしながら本実施例では、U相電流およびV相電流に対して大きくなるW相電流を所定量だけ減少させる補正制御を行うことでU相電流、V相電流およびW相電流を等しくし、騒音、振動、操舵フィーリング低下を防止している。
以下、W相電流を所定量だけ減少させる補正制御の内容を、図7のフローチャートに基づいて説明する。
イグニッションスイッチをONした直後に電子制御ユニットUからの指令でU相ライン62UおよびV相ライン62Vに微小電流を供給した状態で、先ずステップS1でU相電流IuおよびV相電流Ivと、フェイルセーフリレー47の接触抵抗Rとを用いて、その接触抵抗Rによる発熱量Atempを、
Atemp←(|Iu|+|Iv|)2 ×R
により算出する。
続くステップS2で前記発熱量Atempを電子制御ユニットUのメモリに記憶し、ステップS3でメモリ回数が予め設定したn回に達すると、ステップS4で発熱量Atempの移動平均としてのリレー抵抗温度特性係数Ktempを、
Ktemp←ΣAtemp/n
により算出する。
そしてステップS5でaを定数として、W相電流のデューティ値W Dutyを、
Duty←W Duty−(R+a×Ktemp)
により算出する。
このように、通電によるフェイルセーフリレー47の発熱で接触抵抗Rの大きさが変化することを考慮してW相電流のデューティ値W Dutyを算出するので、W相電流をU相電流およびV相電流に精度良く一致させることができる。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、第1〜第6スイッチング素子46a〜46fは電界効果トランジスタ(FET)に限定されず、絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ(IGBT)等の他種のスイッチング素子であっても良い。
また実施例ではW相電流を減少させてU相電流およびV相電流に一致させているが、U相電流およびV相電流を増加させてW相電流に一致させても良い。
また実施例ではイグニッションスイッチのON時にW相電流のデューティ値W Dutyを算出しているが、それをモータMが駆動されない車両の直進走行時に行うことも可能である。
実施例に係る電動パワーステアリング装置の全体斜視図 図1の2−2線拡大断面図 図2の3−3線断面図 モータ駆動回路を示す図 U相電流、V相電流およびW相電流の大きさを示すグラフ U相電流、V相電流およびW相電流により発生する出力トルクの大きさを示すグラフ W相電流の減少させる制御を説明するフローチャート
符号の説明
11 ステアリングハンドル
46a 第1スイッチング素子(スイッチング素子)
46b 第2スイッチング素子(スイッチング素子)
46c 第3スイッチング素子(スイッチング素子)
46d 第4スイッチング素子(スイッチング素子)
46e 第5スイッチング素子(スイッチング素子)
46f 第6スイッチング素子(スイッチング素子)
47 フェイルセーフリレー
62U U相ライン
62V V相ライン
62W W相ライン
C モータ駆動回路
M 三相モータ
St 操舵トルクセンサ
U 電子制御ユニット(制御手段)
WL 車輪
WR 車輪

Claims (1)

  1. ステアリングハンドル(11)に入力される操舵トルクを車輪(WL,WR)に伝達する操舵トルク伝達経路上に配置された三相モータ(M)と、
    複数のスイッチング素子(46a〜46f)を有して三相モータ(M)を駆動するモータ駆動回路(C)と、
    ステアリングハンドル(11)に入力される操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ(St)と、
    操舵トルクセンサ(St)で検出した操舵トルクに基き、モータ駆動回路(C)を介して三相モータ(M)の駆動を制御する制御手段(U)と、
    モータ駆動回路(C)および三相モータ(M)を接続するU相ライン(62U)、V相ライン(62V)およびW相ライン(62W)のうちの第1、第2のラインを開放可能なフェイルセーフリレー(47)とを備えており、
    前記制御手段(U)、U相ライン(62U)、V相ライン(62V)およびW相ライン(62W)に流れる電流が等しくなるように、前記第1、第2のラインに流れる電流、あるいは第3のラインに流れる電流を所定の補正量だけ変化させる電動パワーステアリング装置であって、
    前記制御手段(U)は、前記第1、第2のラインに所定の電流を流してフェイルセーフリレー(47)の抵抗値を算出し、この抵抗値に基づいて前記補正量を算出することを特徴とする、電動パワーステアリング装置。
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