JP4163142B2 - カーボンブラック、その製造方法、及びそれを含有した組成物 - Google Patents

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本発明は、カーボンブラック、その製造方法及びそれを含有した組成物に関する。
カーボンブラックを含有(以下、「含有」を「充填」ともいう。)させた樹脂及びゴムから選ばれた少なくとも一方の組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)の導電性の制御は、カーボンブラックの充填量によって行われている(例えば特許文献1)。従来、高い導電性を得るため、カーボンブラックを高充填すると、組成物の流動性を低下させ加工牲を損なわせたので、より高い導電性付与能力のあるカーボンブラックの出現が待たれていた。
特開2002−322366号公報
本発明の目的は、導電性付与能力の大きなカーボンブラック、その製造方法及びそれを含有した組成物を提供することである。
すなわち、本発明は、酸素含有量が0.5%以下、JIS K 6217によるDBP吸収量が150〜250ml/100g、透過型電子顕微鏡によって測定されたストラクチャー長さを用いて描かれた粒度分布曲線の最大頻度径が0.5〜0.8μmで、その半値幅が1μm以上であることを特徴とするカーボンブラックである。
また、本発明は、透過型電子顕微鏡によって測定されたストラクチャー長さを用いて描かれた粒度分布曲線の最大頻度径が0.5〜0.8μmで、その半値幅が1μm以上であるカーボンブラック原料を、水素を含む気流中、加熱処理して酸性官能基を脱離させることを特徴とするカーボンブラックの製造方法である。この場合において、上記カーボンブラック原料が、炭化水素ガスの供給口の周辺から酸素ガスを複数に分割して供給することによって、炭化水素ガスを不完全燃焼させて製造されたものであることが好ましい。また、製造されたカーボンブラックが上記本発明のカーボンブラックであることが好ましい。
さらに、本発明は、樹脂及びゴムから選ばれた少なくとも一方に、上記本発明のカーボンブラックを含有させてなることを特徴とする組成物である。
本発明によれば、導電性付与能力の大きなカーボンブラックとその製造方法、及び導電性が向上した組成物が提供される。
本発明のカーボンブラックは、JIS K 6217によるDBP吸収量が150〜250ml/100gである。カーボンブラックは、その一次粒子が枝状に強固に一体化したストラクチャーと呼ばれる一次凝集形態を形成しており、組成物の導電性付与能力に影響を及ぼしている。ストラクチャーが長く発達した構造であれば、組成物の粘度を上昇させ、流動性(加工性)が低下する。逆に、ストラクチャーが短いと、カーボンブラック粒子同士の連絡が十分でなくなり導電性付与能力が低下する。
DBP吸収量は、ジブチルフタレートのカーボンブラックへの吸油量であるから、全ストラクチャーの長さの総和を示す指標と言え、150ml/100gよりも著しく小さいと、導電性付与能力が低下し、250ml/100gよりも著しく大きいと、組成物の加工性を損なわせる恐れがある。。好ましいDBP吸収量は100〜200ml/100gである。比表面積は80〜200m/gであることが好ましい。
また、本発明のカーボンブラックは、透過型電子顕微鏡によって測定されたストラクチャー長さを用いて描かれた粒度分布曲線の最大頻度径(モード径)が0.5〜0.8μmで、その半値幅が1μm以上である。最大頻度径が0.5μmよりも著しく小さいと、導電経路の確保が困難となって同一充填量では組成物の導電性は向上せず、また0.8μmよりも著しく大きいと、ストラクチャーの立体障害により組成物の加工性が低下する恐れがある。
本発明においては、組成物の導電性と加工性のバランスをとるために、上記粒度分布曲線の半値幅は重要な要件であり、最大頻度径が0.5〜0.8μmのカーボンブラックにおいて、1μm以上の半値幅である。
本発明において、カーボンブラックの粒度分布曲線は、透過型電子顕微鏡によって測定されたストラクチャー長さを用いて描かれる。この場合、サンプル数を多くするほど信頼性が増すが、1000サンプル又はそれ以上で十分である。DBP吸収量がストラクチャー長さの指標として間接的な測定方法であるのに対して、透過型電子顕微鏡は直接的な手法であり、その両方を組み合わせて評価することで、カーボンブラックのストラクチャー長さの信頼性を高めて定量することが可能となる。
本発明のカーボンブラックは、酸素含有量が0.5%以下である。酸素含有量は、カーボンブラックに存在するカルボキシル基、カルボニル基等の酸性官能基量の大きさを示す指標である。酸性官能基は電子吸引性であるため、カーボンブラックのπ電子が捕獲され、酸素含有量が0.5%を超えると導電性付与能力の低下が顕著となる。また、0.5%を超える酸素含有量は大気中の水分吸着の要因となるので好ましくはない。好ましい酸素含有量は0.3%以下である。
本発明のカーボンブラックは、例えば本発明のカーボンブラックの製造方法によって製造することができる。すなわち、炭化水素ガスを、分割された酸素ガスによって不完全燃焼させて上記粒度分布特性を有するカーボンブラック原料を製造し、それを水素を含む気流中で加熱処理をし、酸性官能基を脱離させることによって製造することができる。
炭化水素ガスを不完全燃焼させて、透過型電子顕微鏡によって測定されたストラクチャー長さを用いて描かれた粒度分布曲線の最大頻度径が0.5〜0.8μmで、その半値幅が1μm以上であるカーボンブラック原料を製造する方法の一例は、炭化水素ガスと酸素ガスとを別々にして、しかも酸素ガスを複数に分割して炭化水素ガスの供給口の周辺から供給することである。
さらに述べれば、耐火煉瓦等の耐火物で密閉化された竪型炉の頂部に、炭化水素ガスの供給口と、その周囲に2又は3以上の酸素ガスの供給口を設け、炭化水素ガスの周辺から酸素ガスを分割供給することである。このように酸素ガスの分割供給によって、より好ましくは各酸素ガスの供給口から供給される酸素量を違えることによって、炉内には酸素ガス供給口の数だけ温度分布の異なる不完全燃焼領域を複数存在させることができるので、ストラクチャー分布の広いカーボンブラックの生成が可能となる。
2又は3以上の各酸素ガスの供給口から供給される酸素ガス量を制御することによって、上記カーボンブラックの粒度分布特性を変えることができる。たとえば、酸素ガス供給口を2とした場合、一方の酸素ガス流量の割合を他方に対して1.2倍量以上、特に1.5〜3倍量とすることが好ましい。
本発明で使用される炭化水素の種類には制約はなく、それを例示すると、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、アセチレン、ブタジエン等のガス状、ベンゼン、トルエン、キシレン、ガソリン、灯油、軽油、重油等のオイル状炭化水素などである。中でも、エチレン、アセチレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレンは生成する熱量が高く、反応温度が高くなるため、不完全燃焼に使用する酸素供給量を少なくすることができ、得られるカーボンブラックの酸素含有量も少なくなるので本発明には好適である。また、液体炭化水素は、過剰な酸素を加えて燃焼させる必要があるので、それを用いるときはガス化してから炉内に供給することが好ましい。
ついで、製造されたカーボンブラック原料は水素を含む気流中で加熱処理される。ここで、水素を含む気流中とは、水素ガス単独、又は水素ガスと例えば窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスとの混合ガスが、連続的又は間欠的に加熱処理炉を流通していることである。この方法としては、例えば加熱処理炉の一方から他方に向けて、水素を含むガスを流すことをあげることができる。混合ガスの水素ガス濃度としては、20体積%以上が好適である。処理温度は700℃以上が好ましい。この工程を経ることによって、カルボキシル基、カルボニル基等の酸性官能基を減少(なくすことも含む)させることができ、酸素含有量が0.5%以下のカーボンブラックを製造することができる。
つぎに、本発明の組成物について説明する。本発明の組成物は、樹脂及びゴムの少なくとも一方に上記カーボンブラックを含有させたものである。その混合方法の一例を示せば、例えばブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機によって混合した後、更に必要に応じて、加熱ロール、ニーダー、一軸又は二軸の押出機等によって混練する方法をあげることができる。また、混合割合の一例を示せば、樹脂及びゴムの少なくと一方が100質量部に対して、カーボンブラックが5〜150質量部である。
本発明で使用される樹脂としては、例えば汎用プラスチックではポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン/酢酸ビニル樹脂、エチレン/ビニルアルコール樹脂、ポリメチルペンテン、環状オレフィン共重合体等のオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、エチレン/塩化ビニル樹脂等の塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、汎用エンジニアリングプラスチックでは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、スーパーエンジニアリングプラスチックでは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリアリレート、熱可塑性ポリイミド、ケトン系樹脂、スルホン系樹脂、その他樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルエステル、ポリイミド、フラン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性強化プラスチックやポリマーアロイ等である。
また、本発明で使用されるゴムとしては、例えば天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンターポリマー、エチレンとα−オレフィンとの共重合ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ポリエステル等の熱可塑性エラストマー、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン等である。
実施例1〜4 比較例1
炉長4m、炉直径0.5mの竪型炉の頂部に、炭化水素ガスの供給ノズル(直径18mm)と、2本の酸素ガスの供給ノズル(直径8mm)を設け、130℃に加熱された炭化水素ガスと、分割された酸素ガスとを表1に示す割合で供給して不完全燃焼(炭素と酸素のモル比が1以上)させた。得られたカーボンブラック原料を炉下部に設置された酸性官能基の脱離室(全長2m、直径0.1m)に導き、水素気流中(1m/hの水素ガスが供給されている気流中)、800℃で加熱処理してカーボンブラックを製造した。
得られたカーボンブラックについて、(1)窒素ガス吸着によるBET1点法の比表面積、(2)JIS K 6217によるDBP吸収量、(3)酸素窒素同時分析装置(LECO社製「TC−136型」)による酸素含有量を測定した。さらには、(4)ストラクチャーの最大頻度径及び粒度分布の半値幅、(5)組成物の体積固有抵抗、(6)流動性(MFi)を、以下に従い測定した。それらの結果を表1に示す。
(4)ストラクチャーの最大頻度径及び粒度分布の半値幅
カーボンブラックをクロロホルムに分散した後、マイクログリッドメッシュですくい、透過型電子顕微鏡(日立製作所社製商品名「H−300」)を用いて、倍率3000倍にて無作為に撮影し、得られた写真上でカーボン凝集粒子1000サンプルについてストラクチャーの長さを測定した。選別方法で結果が大きく異なることがないよう、各撮影ごとに視野を変え、写真の角にかかっているサンプル以外はすべて測定した(各写真につき、5サンプル程度測定)。ストラクチャーの長さは、写真上のストラクチャーに沿って一次粒子の中心を通るように曲線を引き、また枝状に2以上に分岐している場合はストラクチャーの先端から他方の先端までの長さが最大となる線をそのストラクチャーとし、その長さを測定した。1000サンプルの結果を用いて頻度分布曲線を描き、この曲線から最大頻度径と半値幅を求めた。
(5)組成物の体積固有抵抗
カーボンブラック30質量部とEVA樹脂(日本ユニカー社製商品名「NUC−3830」)100質量部とを内容量60mlの混練試験機(東洋精機製作所社製商品名「ラボプラストミル50MR」)でブレード回転数30rpm、温度120℃で10分間混練し、得られた混練物を温度180℃の加熱下9.8×10Paの圧力で加圧成形して2×20×70mmの試験片を作製し、体積固有抵抗をデジタルマルチメーター(横河電機社製商品名「デジタルマルチメーター7562」)を用い、SRIS2301に準じて測定した。
(6)組成物の流動性(MFi)
体積固有抵抗で使用した試験片を2×5×5mmの大きさに切断し、流動性測定器(東洋精機製作所社製商品名「メルトインデクサーA−111」)で200℃の加熱下、5kgの荷重下にて内径2mmのノズルから流れる10分間当たりの組成物の質量を測定した。
Figure 0004163142
表1から、本発明の実施例のカーボンブラックは、比較例に比べて広範なストラクチャーの分布を持ち、酸素含有量も少ないことがわかる。その結果、同一条件で調製された本発明の組成物の体積固有抵抗は、比較例よりも著しく小さくなり、流動性も高かった。
本発明のカーボンブラックは、樹脂・ゴムへの導電性付与剤の他に、塗料、一次電池、二次電池、燃料電池、キャパシタ等の電池用導電剤、帯電防止剤、導電紙用導電剤として利用することができる。

Claims (5)

  1. 酸素含有量が0.5%以下、JIS K 6217によるDBP吸収量が150〜250ml/100g、透過型電子顕微鏡によって測定されたストラクチャー長さを用いて描かれた粒度分布曲線の最大頻度径が0.5〜0.8μmで、その半値幅が1μm以上であることを特徴とするカーボンブラック。
  2. 透過型電子顕微鏡によって測定されたストラクチャー長さを用いて描かれた粒度分布曲線の最大頻度径が0.5〜0.8μmで、その半値幅が1μm以上であるカーボンブラック原料を、水素を含む気流中、加熱処理して酸性官能基を脱離させることを特徴とするカーボンブラックの製造方法。
  3. 上記カーボンブラック原料が、炭化水素ガスの供給口の周辺から酸素ガスを複数に分割して供給することによって、炭化水素ガスを不完全燃焼させて製造されたものであることを特徴とする請求2項記載のカーボンブラックの製造方法。
  4. カーボンブラックが、請求項1記載のものであることを特徴とする請求項2又は3記載のカーボンブラックの製造方法。
  5. 樹脂及びゴムの少なくとも一方に、請求項1記載のカーボンブラックを含有させてなることを特徴とする組成物。
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