JP4162898B2 - ラミニン5産生促進剤およびインテグリンα6β4産生促進剤を含む組成物 - Google Patents

ラミニン5産生促進剤およびインテグリンα6β4産生促進剤を含む組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、皮膚基底膜の構成成分であるラミニン5の産生を促進する成分と表皮基底細胞の細胞膜に存在し、ラミニン5の受容体として機能するインテグリンα6β4の産生を促進する成分を含む組成物、およびその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、しわ、しみ、くすみ、たるみなど、皮膚の老化に伴って起こる変化には、加齢、日光曝露、環境によるストレス、精神的ストレスなどが関与することが知られている。皮膚内部のミクロの変化としては、真皮でのI型コラーゲン、III型コラーゲンおよびエラスチンなどの弾性繊維の減少や変性、基底膜でのIV型コラーゲンやラミニンなどの減少や変性、表皮細胞のターンオーバーの異常などが起こっている。
【0003】
基底膜はIV型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンなどの細胞外マトリックスタンパク質により構成される緻密な膜で、皮膚においては表皮と真皮の結合部に存在する。基底膜は表皮と真皮の結合を担い、皮膚の構造維持に重要であるとともに、表皮のターンオーバーの制御や表皮と真皮の間の情報伝達にも関与する。
【0004】
皮膚基底膜を構成する細胞外マトリックスタンパク質の中で、特に重要な機能をもつタンパク質の一種としてラミニン5が知られている。ラミニン5(別名カリニン、エピリグリン、ナイセイン)は皮膚の基底膜に存在するラミニン分子種の一種として同定され、α3鎖、β3鎖、γ2鎖の3本のサブユニットで構成される分子量380〜490kDaの糖タンパク質である(Carter,W.G.,et al.,Cell.,65,599−610,1991.,Rousselle,P.,et al.,J.Cell Biol.,114,567−576,1991.,Verrando,P.,et al.,Biochem.Biophys.Acta,942,45−56,1988.)。ラミニン5は表皮細胞により産生され、表皮細胞と基底膜の結合に関与するとともに、VII型コラーゲンと結合し、真皮と基底膜の結合にも関与する(Rousselle,P.,et al.,J.Cell Biol.,114,567−576,1991.,Rousselle,P.,et al.,J.Cell Biol.,138,719−728,1997.,Chen,M.,et al.,J.Invest.Dermatol.,112,177−183,1999)。
【0005】
ラミニン5遺伝子の異常が表皮・真皮間の剥離と水泡形成を特徴とする重篤な遺伝的疾患である結合型表皮水泡症(Herlitz’s junctional epidermolysis bullosa)を引き起こすことから、ラミニン5は正常な皮膚構造の維持に必要不可欠なタンパク質であることが知られている(Aberdam,D.,et al.,Nat.Genet.,6,299−304,1994.,Pulkkinen,L.,et al.,Genomics,24,357−360,1994.,Kivirikko,S.,et al.,Hum.Mol.Genet.,4,959−962,1995.)。また、ラミニン5は表皮細胞の遊走を促進させる活性をもち、かつ皮膚の創傷治癒部位でラミニン5遺伝子およびその受容体遺伝子の発現が上昇することから、創傷治癒に関与することが示唆されている(Verrndo,P.,etal.,Lab.Invest.,71,567−574,1994.,Ryan,M.C.,J.Biol.Chem.,269,22779−22787,1994.)。
【0006】
以上のようなことから、ラミニン5は、表皮と真皮の結合を担い、正常な皮膚構造の維持に重要であるとともに、皮膚が損傷を受けた場合には、表皮細胞の遊走を促進し、創傷治癒に働くと考えられる。
【0007】
表皮細胞が基底膜の構成成分であるIV型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンなどの細胞外マトリックスタンパク質に接着するためには、その受容体として働くインテグリンが必要不可欠である。インテグリンはα鎖、β鎖が非共有結合で会合するヘテロダイマーで、細胞膜に発現して、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンなどの細胞外のリガンドと結合するとともに、細胞内ではテーリンやα−アクチニンなどの細胞骨格タンパク質と結合し、細胞と細胞外マトリックスあるいは細胞と細胞の結合に関与する。
【0008】
現在、16種類のα鎖、9種類のβ鎖が報告されており、これらα鎖、β鎖の組み合わせにより、リガンド特異性の異なる多様な分子が形成されている。インテグリンは細胞接着を介して、細胞増殖、細胞分化、細胞運動、アポトーシス、形態形成、免疫反応、創傷治癒、血液凝固、骨吸収などの多岐にわたる生物学的機能を担っている(Hynes,R.O.:Cell,69:11−25,1992,Rouslati,E.et al.:Cell,77:477−478,1994)。
【0009】
これまでに、ラミニン5の受容体としてインテグリンα6β4およびインテグリンα3β1が知られており、インテグリンα6β4は主に細胞接着に関与し、インテグリンα3β1は主に細胞の運動に関与することが知られている(Rousselle,P.et al.:J. Cell Biol.,114:567−576,1991,Verrndo,P.et al.:Lab.Invest.,71:567−574,1994)。
【0010】
インテグリンα6β4は、分子量150kDaのα6鎖と205kDaのβ4鎖のダイマーで、β4とダイマーを形成するα鎖としてはα6のみが報告されている(Suzuki,S.:EMBO J.,9:757−763,1990)。インテグリンα6β4は、上皮細胞、シュワン細胞、神経細胞、一部の内皮細胞などで発現しており、皮膚では表皮基底細胞の基底側に存在し、基底膜に存在するラミニン5と結合して、表皮と基底膜間の結合を担っている(Rousselle,P.et al.:J.Cell Biol.,114:567−576,1991)。
【0011】
ラミニン5遺伝子の変異と同様に、インテグリンβ4遺伝子の変異は、表皮・真皮間の剥離と水泡形成を特徴とする重篤な遺伝的疾患である先天性接合部型表皮水泡症(Herlitz’s junctional epidermolysis bullosa)を引き起こすことから、インテグリンα6β4とラミニン5との接着が正常な皮膚構造の維持に必要不可欠であることが知られている(Pulkkinen,L.et al.:Nature Genet.,6:293−298,1994,Vidal,F.et al.:Nature Genet.,10:229−234,1995)。
【0012】
インテグリンβ4遺伝子のノックアウトマウスは、先天性接合部型表皮水泡症と同様の表皮剥離がみられ、基底細胞がアポトーシスを起こしていることから、ラミニン5とインテグリンα6β4の結合は基底細胞の生存に重要であることが知られている(Dawling,J.et al.:J.Cell Biol.,134:559−572,1996)。
【0013】
ラミニン5とインテグリンα6β4の結合は、細胞増殖シグナルに関与するRas−MAPキナーゼの経路を介して、表皮細胞の増殖に関与することが知られている(Mainiero,F.et al.:EMBO J.,16:2365−2375,1997,Mainiero,F.et al.:EMBO J.,17:3940−3951,1998)。
【0014】
以上のようなことから、インテグリンα6β4はラミニン5の受容体として、表皮と真皮の間の結合を担い、正常な皮膚構造の維持に重要であるとともに、表皮基底細胞の生存および増殖に重要な働きをする。
【0015】
最近、頬や瞼などの露光部位では、20歳代前半から基底膜の断裂や多重化などの皮膚基底膜の損傷が見られ、20歳代後半から30歳代前半に顕著に悪化することから、基底膜の損傷が皮膚老化を引き起こす重要な要因であり、精製ラミニン5やラミニン5の産生を促進する物質が基底膜の形成を促進し、基底膜ケアの有用な物質であることが示された{J.Soc.Cosmet.Chem.Jpn.,総説,35(1)1−7,2001}。また、老化に伴って表皮角化細胞のインテグリンβ4の発現が低下することから、皮膚の老化とインテグリンα6β4の発現低下に因果関係があることが示唆されていた(Le VarletB.et al.:J.Invest.Dermatol.Symposium Proceedings,3:172−179,1998)。
【0016】
以上のようなことから、皮膚の老化を防ぐために、基底膜の形成を促進する作用をもつ精製ラミニン5やラミニン5の産生を促進する植物抽出物や化合物を有効成分として含む組成物および表皮基底細胞を活性化する作用をもつインテグリンα6β4の産生を促進する植物抽出物を有効成分として含む組成物が開発されている(特開平10−147515、特開平11−343226、特開2000−226308、特願2000−331318、特願2001−151485、特願2001−366056、特願2001−389007)。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、さらに皮膚老化防止作用の高い組成物を提供することを課題とする。前述のように、ラミニン5産生促進剤またはインテグリンα6β4産生促進剤をそれぞれ単独で用いた老化防止用組成物の開発は試みられていたが、本発明では、それぞれ単独よりもより効果的な老化防止用組成物を開発することを課題とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
前述のように、ラミニン5産生促進剤またはインテグリンα6β4産生促進剤をそれぞれ単独で用いた老化防止用組成物の開発は従来から試みられていたが、ラミニン5産生促進剤およびインテグリンα6β4産生促進剤を組み合わせた老化防止用組成物の開発は試みられていなかった。
【0019】
本発明者は、ラミニン5産生促進剤またはインテグリンα6β4産生剤をそれぞれ単独で用いた場合と双方を組み合わせた場合の光障害抑制作用について検討した。その結果、ラミニン5の産生を促進する成分とインテグリンα6β4の産生を促進する成分を組み合わせて用いることにより、より効果的に紫外線による細胞障害を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0020】
すなわち、本発明は、
1.ラミニン5の産生を促進する成分とインテグリンα6β4の産生を促進する成分を含む組成物、
2.ラミニン5の産生を促進する成分が下記(1)〜(3)
(1)リュウガン、タイセイ、ホソバタイセイ、リュウキュウアイ、ナルコユリおよびカギクルマバナルコユリの植物またはその抽出物
(2)フェニルプロパノイド類の化合物またはそれらの塩、あるいはそれらの化合物の配糖体またはそれらの塩
(3)コメヌカ油
から選ばれる1種または2種以上である上記1の組成物、
3.インテグリンα6β4の産生を促進する成分が、セイヨウキズタ、エキナセア、カボチャ、セイヨウタンポイポ、およびアンジェリカの植物またはその抽出物から選ばれる1種または2種以上である上記1または2の組成物、
4.皮膚基底膜賦活用および/または表皮基底細胞賦活用である上記1〜3のいずれかの組成物、
5.光障害抑制用である上記1〜3のいずれかの組成物、及び
6.上記1〜5のいずれかの組成物からなる皮膚外用剤、
に関する。
【0021】
【発明の実施の形態】
「ラミニン5の産生を促進する成分」は、皮膚基底膜を構成する細胞外マトリックスタンパク質の一種であるラミニン5の皮膚基底膜における存在量を増加させるものであれば良く、表皮細胞による産生を促進することにより、その量は増加する。
このような「ラミニン5の産生を促進する成分」としては、リュウガン、タイセイ、ホソバタイセイ、リュウキュウアイ、ナルコユリ、カギクルマバナルコユリの植物またはその抽出物、フェニルプロパノイド類の化合物またはそれらの塩、あるいはそれらの化合物の配糖体またはそれらの塩、コメヌカ油を挙げることができる。
「インテグリンα6β4の産生を促進する成分」は、ラミニン5の受容体として働くインテグリンα6β4の表皮基底細胞の基底側での存在量を増加させるものであれば良く、表皮細胞による産生を促進することにより、その量は増加する。
このような「インテグリンα6β4の産生を促進する成分」としては、セイヨウキズタ、エキナセア、カボチャ、セイヨウタンポポおよびアンジェリカの植物またはその抽出物を挙げることができる。
【0022】
本発明に用いられるリュウガン(Euphoria longan (Lour.)Steud.)は、むくろじ科ユーフォリア属の植物である。仮種皮の部分は竜眼肉(リュウガンニク)と呼ばれ、鎮静、滋養強壮に処方され、物忘れや不眠症にも効果的で、神経の興奮を静める効力があるといわれている(「原色牧野和漢薬草大図鑑」北隆館)。
【0023】
本発明に用いられるタイセイ(I. Indigotica Fort.)、ホソバタイセイ(Isatis tinctoria L.)は、いずれもあぶらな科タイセイ属の植物である。根の部分は板藍根(バンランコン)と呼ばれ、種々の病原菌に対する抑制作用を有し、消炎、解熱、解毒、止血薬として用いられている(「原色牧野和漢薬草大図鑑」北隆館)。
【0024】
本発明に用いられるリュウキュウアイ(Storobilanthes flaccidifolius Nees)は、きつねのまご科イセハナビ属の植物である。この植物の根、根茎も板藍根(バンランコン)と呼ばれ、タイセイ(I. Indigotica Fort.)、ホソバタイセイ(Isatis tinctoria L.)の根と同様の薬効を有する。また、葉の部分にも抗菌、解毒、解熱、消炎、止血作用があることが知られている(「原色牧野和漢薬草大図鑑」北隆館)。
【0025】
本発明に用いられるナルコユリ(Polygonatum folcatumA. Gray)、カギクルマバナルコユリ(Polygonatum sibiricum Redoute ex Redoute)は、いずれもゆり科アマドコロ属の植物である。根茎の部分は黄精(オウセイ)と呼ばれ、種々の菌に対する抑制作用、アドレナリンによる高血糖に対する抑制作用、血圧降下作用があり、滋養強壮、糖尿病、動脈硬化症などの薬として用いられる(「原色牧野和漢薬草大図鑑」北隆館)。
【0026】
本発明に用いられるセイヨウキズタ(Hedera helix L.)は、ウコギ科ヘデラ属の植物である。ヨーロッパからコーカサス地方に原産する。葉は神経痛、リウマチ痛、座骨神経痛を緩和するハップ剤や歯痛、百日咳用のチンキとして使用される(「ハーブの写真図鑑」レスリーブレムネス著、日本ヴォーグ社)。成分としては、ヘデリン、サポニン、フラボノイド、有機酸などを含む。洗浄作用、抗炎症作用、保湿作用、抗菌作用、痩身作用があり、化粧品に広く使用される(「化粧品ハンドブック」日光ケミカルズ株式会社)。特にニキビ、脂性肌用の洗顔料やクリーム、シャンプーなどに配合されている。
【0027】
本発明に用いられるエキナセア(Echinacea purpurea,E.angustifolia,E.pallida)は、キク科エキナセア属の植物である。北アメリカ原産で、アメリカ先住民の間で万能薬として、歯痛、喉の痛み、風邪、伝染病などの治療に約400年前から利用されてきた。19世紀末、ヨーロッパにも紹介され、栽培が始まった。成分としては多糖、カフェー酸誘導体、アルキルアミドなどを含む。免疫力を高め、風邪や感染症、皮膚病の治療や予防、炎症に効果があると言われている(「薬用ハーブの機能研究」健康産業新聞社)。
【0028】
本発明に用いられるセイヨウタンポポ(Taraxacum officinale)は、キク科タンポポ属の植物である。東ヨーロッパ原産で、葉は生でサラダとして、煎った根はコーヒーの代替として、花はワインの原料として用いられる。成分としてはトリテルペン、ステロール、糖類、ビタミン類、カリウムを含む。根は消化不良や便秘に効果があり、また、肝臓と胆嚢を刺激し、胆汁の分泌を増加させ、肝障害や黄疸に有効である。葉は強力な利尿作用があり、また、血液や組織の浄化作用もあり、皮膚病やリューマチの治療薬としても有効である(「ハーブ大全」小学館)。
【0029】
本発明に用いられるアンジェリカ(Angelica archangelica L.)は、セリ科シシウド属の植物である。成分としては、アンゲリカラクトン、アンゲリシン、アンゲリカ酸、ベルガプテンや葉酸、ビタミンB12などのビタミンB群などを含む。血行を良くし、女性ホルモンの分泌を調整する効用があり、貧血症、生理痛、生理不順、冷え性などに広く用いられる(「機能性ハーブの生理活性」常盤植物化学研究所)。
【0030】
本発明に用いられるカボチャ(Cucurbita pepo L.)は、ウリ科カボチャ属の植物である。北アメリカ原産で、野菜としてなじみが深く、世界中で栽培されている。種子は栄養価が高く、食用にされる。成分としては、脂肪酸、リグナン、トコフェロール、微量元素であるセレンなどが含まれている。ヨーロッパでは、種子の油性の抽出物が、過敏膀胱や前立腺肥大症などの泌尿器系疾患の治療目的に用いられている(「機能性ハーブの生理活性」常盤植物化学研究所)。
【0031】
本発明に用いられる植物は、葉、茎、芽、花、木質部、木皮部(樹皮)などの地上部、根、塊茎などの地下部、種子、樹脂などのすべての部位が使用可能である。
本発明における植物は、それら自体を乾燥させた乾燥物、その粉砕物、それら自体を圧搾抽出することにより得られる搾汁、植物自体あるいはその乾燥物の水またはアルコール、エーテル、アセトンなどの有機溶媒による粗抽出物、および該粗抽出物を分配、カラムクロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィーなどで段階的に精製して得られた抽出物画分などのすべてを含む。これらは単独で用いても良く、2種以上混合して用いても良い。
【0032】
本発明で使用するフェニルプロパノイド類は、天然に存在する化合物群の一つであり、ベンゼン核(C6,phenyl)に直鎖状3炭素(C3,propane)が結合したものである。これらの化合物は、広範な生物源から直接もしくは間接的に得ることが出来るが、化学合成品であってもよい。
本発明では、フェニルプロパノイド類として、特にカフェー酸、フェルラ酸、ケイヒ酸、ケイヒアルデヒド、オイゲノール、コニフェリルアルコール、クロロゲン酸などが好ましいが、これに限られるわけではない。
【0033】
自然界では、維管束植物においてアミノ酸フェニルアラニン(イネ科ではチロシン)の脱アミノ化によりトランスケイヒ酸(イネ科ではp−クマリン酸)が生成される。トランスケイヒ酸は酸化されてp−クマリン酸、さらに酸化されてカフェー酸となる。カフェー酸はメチル化を受けてフェルラ酸となる。被子植物はフェルラ酸をさらに酸化して5−ヒドロキシフェルラ酸に、次にメチル化してシナピック酸とすることができるが、シダ植物や裸子植物はできない。自然界において、これら酸のフェノール性水酸基は部分的にメチル化され、そしてカルボキシル基は逐次還元されて対応するアルデヒド、アルコール、あるいはオレフィンとなる(「天然物化学」改訂第4版、三橋博ら編、南江堂)。
【0034】
カフェー酸は下記式(1)で表され、肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制効果や5−リポキシゲナーゼおよびロイコトリエン生成の阻害活性がある(「天然薬物辞典」奥田拓男編、廣川書店)。コーヒー豆、ノコギリソウ、オトギリソウなどに数%含まれるクロロゲン酸、ヨモギおよび同族植物の主成分の3,5−di−O−カフェイルキナ酸、その他いわゆるカフェータンニンの構成成分として存在する。また、遊離してタバコ葉、サツマイモ、ナシ葉などの広い範囲の植物に存在する。カフェー酸は、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、無水酢酸、酢酸カリウムの混合物を加熱する(パーキン反応)ことにより得られる。また、クロロゲン酸の酸加水分解によって生成する。
【化1】
Figure 0004162898
【0035】
フェルラ酸は下記式(2)で表され、抗酸化作用、紫外線吸収能を持つことが知られている。それ自体およびその誘導体は植物の細胞壁を形成するリグニンの前駆体である。遊離状、エステル型、リグニンの形で、微量ながら広く植物に存在する(「化学大辞典」東京化学同人)。4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒドとマロン酸をピペリジン存在下ピリジン中で縮合脱炭酸させることにより得られる。また、コメヌカから効率的に抽出する方法が開発されている(特開平5−331101号)。
【化2】
Figure 0004162898
【0036】
ケイヒ酸は下記式(3)で表され、そのエステル類は香料および医薬品として用いられる(「天然薬物辞典」奥田拓男編、廣川書店)。通常、ケイヒ酸とはトランス形のものを指し、シス形のものはアロケイヒ酸と呼ばれる。シス形は不安定でトランス形になりやすい。カシア油、ペルーバルサム、トルーバルサムの樹脂などに遊離酸あるいはエステルとして存在する。ケイヒアルデヒドの酸化、あるいはベンズアルデヒド、無水酢酸、酢酸カリウムの混合物の加熱(パーキン反応)により得られる。
【化3】
Figure 0004162898
【0037】
ケイヒアルデヒドは下記式(4)で表され、強い特有の芳香と甘味があることから、菓子などの食品香料に用いられている(「天然薬物辞典」奥田拓男編、廣川書店)。また、医薬品、化粧品にも用いる。ケイの樹皮、葉に含まれ、ケイヒ油、カシア油の主成分で香りの本体であり、その他ミルラ油、パチョウリ油にも含まれる。ベンズアルデヒドとアセトアルデヒドをアルカリで縮合させて得られる。
【化4】
Figure 0004162898
【0038】
オイゲノールは下記式(5)で表され、バニリンの製造原料、香料、殺菌剤、防腐剤などに用いられる(「天然薬物辞典」奥田拓男編、廣川書店)。チョウジ油に多く含まれるほか、広く植物の精油中に存在するフェノール性精油成分である。グローブ油、桂葉油をアルカリ抽出することにより得られる。
【化5】
Figure 0004162898
【0039】
コニフェリルアルコールは下記式(6)で表され、針葉樹の形成層とその周辺の柔細胞、コンフリーの根、テンサイ、アスパラガスなどに配糖体のコニフェリンとして存在する(「天然薬物辞典」奥田拓男編、廣川書店)。植物体内で脱水素重合によってリグニン様の物質になる。リグニンには、抗腫瘍作用、肝カタラーゼ活性促進作用などの作用が認められている。コニフェリンに加水分解酵素エムルシンを作用させることにより得られる。
【化6】
Figure 0004162898
【0040】
クロロゲン酸は下記式(7)で表され、中枢神経興奮作用に加えて、胃液や胆汁分泌を促進する作用がある(「天然薬物辞典」奥田拓男編、廣川書店)。また、抗酸化作用(「フリーラジカルと和漢薬」奥田拓男・吉川敏一編、国際医薬出版)や癌細胞転移抑制作用(東京農工大・矢ケ崎教授ら、日本経済新聞2000.9.4朝刊)が報告されている。コーヒー豆からはじめて単離されたが、双子葉植物の果実や葉などに広く分布し、特にナス科、キク科、セリ科などの植物にこれを多く含むものが多い。カフェー酸とキナ酸をエステル化することにより得られる。
【化7】
Figure 0004162898
【0041】
いずれの化合物も市販されており、これを用いることができる。
本発明における化合物は、それらを各種溶媒を用いて溶解した状態でも使用できる。例えば、水またはエタノール、メタノールなどのアルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコール、エーテル、アセトン、酢酸エチルなどの有機溶媒を用いて溶解した状態で使用できる。これらは単独で用いても良く、2種以上混合して用いても良い。
【0042】
本発明で使用するフェニルプロパノイド類の化合物の配糖体としては、カフェー酸の配糖体として、グルコカフェー酸{3−(3,4−Dihydroxyphenyl)−2−propenoic acid;4’−O−β−D−Glucopyranoside}、フェルラ酸の配糖体として、グルコフェルラ酸{3−(4−hydroxy−3−methoxyphenyl)−2−propenoic acid;4−O−β−D−Glucopyranoside}、オイゲノールの配糖体として、ササンクイン(オイゲノール β−プライムベロシド){2−methoxy−4−(2−prophenyl)phenol;O−[β−D−Xylopyranosyl−(1→6)−β−D−glucopyranoside]}、オイゲノール ジェンティオビオシド{2−methoxy−4−(2−prophenyl)phenol;O−[β−D−Xylopyranosyl−(1→6)−β−D−glucopyranoside]}、オイゲノール ルティノシド{2−methoxy−4−(2−prophenyl)phenol;O−[α−L−Rhamnopyranosyl−(1→6)−β−D−glucopyranoside]}、コニフェリルアルコールの配糖体として、コニフェリン{3−(3,4−Dihydroxyphenyl)−2−propen−1−ol;3’Me ether,4’−O−β−D−glucopyranoside}、シトルシンD(イソコニフェリン){3−(3,4−Dihydroxyphenyl)−2−propen−1−ol;3’Me ether,1−O−β−D−glucopyranoside}、コニフェリノシド{3−(3,4−Dihydroxyphenyl)−2−propen−1−ol;3’Me ether,4’−O−[β−D−Glucopyranosyl−(1→6)−β−D−glucopyranoside]}、イソコニフェリノシド{3−(3,4−Dihydroxyphenyl)−2−propen−1−ol;3’Me ether,1,4’−di−O−β−D−glucopyranoside}等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、本発明で使用するフェニルプロパノイド類の化合物またはそれらの配糖体の塩としては、例えばナトリウム塩、カルシウム塩等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0043】
本発明で使用するコメヌカ油は、イネ種子の精米直後のコメヌカから得られる半乾性油であり、一般に市販されている。淡黄色の油状液体で、中性脂肪のほかに多量の遊離脂肪酸、ロウ分、トコフェロール、オリザノール、ステロール、微量のリン脂質、糖脂質、金属などを含む。脂肪酸の成分は、おもにオレイン酸、リノール酸、パルミチン酸である。トコフェロールやオリザノールの影響により、空気や熱に対して非常に安定である。表皮細胞や線維芽細胞などの皮膚細胞に対する毒性はほとんどなく、非常に安全性が高い。
【0044】
コメヌカ油中のオリザノールが紫外線を吸収して皮膚を保護する効果がある。また、コレステロール低下作用もあり、舌触りが良く香味が良いので、食用油として用いられている。コメヌカ油脂肪酸はオレイン酸が多く、コメヌカ油から製造した石けんは水に溶けやすく、洗浄力がすぐれ、家庭用洗剤として使用されている。欧米では天然のサンスクリーンオイルとして使われている(「化粧品ハンドブック」日光ケミカルズ株式会社)。
【0045】
本発明の組成物には、ラミニン5産生促進剤およびインテグリンα6β4産生促進剤が、それぞれ少なくとも1種以上含まれていれば良く、2種以上混合して用いても良い。
本発明に用いるラミニン5産生促進剤およびインテグリンα6β4産生促進剤の組成物への有効配合量は、ラミニン5産生促進剤およびインテグリンα6β4産生促進剤の調製法、製剤の形態などにより、適宜選択、決定され、特に限定されないが、それぞれ0.001〜30重量%が適当である。
【0046】
ラミニン5産生促進剤およびインテグリンα6β4産生促進剤を含む本発明組成物は、表皮細胞におけるラミニン5およびインテグリンα6β4の産生を促進し、皮膚基底膜および表皮基底細胞の活性化、再生促進に有用であり、紫外線の照射により低下した皮膚基底膜および/または表皮基底細胞の働きを高めて、基底膜と基底細胞の結合力を強化し、いわゆる光老化した皮膚の再生作用を有する。
【0047】
皮膚基底膜を構成する細胞外マトリックスタンパク種の一種であるラミニン5の産生を促進する成分およびその受容体として働くインテグリンα6β4の産生を促進する成分は、単独でも前記のような効果を有する。しかし、ラミニン5あるいはインテグリンα6β4は協調的に作用するために、例えば、紫外線暴露などにより、インテグリンα6β4の産生あるいは活性が低下している場合には、どんなにラミニン5の産生を促進しても、その受容体の量が限られているので、ある一定以上の効果は期待できない。ラミニン5の産生あるいは活性が低下している場合におけるインテグリンα6β4の産生促進についても同様である。したがって、それらの機能を十分に発揮させるために、表皮細胞におけるラミニン5の産生を促進し、皮膚基底膜を活性化すると同時に、インテグリンα6β4の産生を促進し、表皮基底細胞を活性化することで、相乗的な効果が得られる。
【0048】
本発明の組成物には、植物油のような油脂類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、防腐剤、糖類、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子のような高分子、増粘剤、粉体成分、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、ヒアルロン酸のような保湿剤、香料、pH調整剤、乾燥剤等を含有させることができる。また、ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、抗癌剤、美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分を含有させることもできる。
【0049】
油脂類としては、例えばツバキ油、月見草油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ゴマ油、ホホバ油、胚芽油、小麦胚芽油、トリオクタン酸グリセリン、等の液体油脂、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ、モクロウ核油、硬化油、硬化ヒマシ油等の固体油脂、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、ヌカロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ等のロウ類が挙げられる。
【0050】
炭化水素類としては、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
高級脂肪酸として、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等が挙げられる。
【0051】
高級アルコールとして、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等が挙げられる。
【0052】
シリコーンとして、例えば、鎖状ポリシロキサンのジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等、環状ポリシロキサンのデカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0053】
アニオン界面活性剤として、例えば、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、N−アシルサルコシン酸、スルホコハク酸塩、N−アシルアミノ酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤として、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
両性界面活性剤として、アルキルベタイン、アミドベタイン等のベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
非イオン界面活性剤として、例えば、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体が挙げられる。
【0054】
防腐剤として、例えばメチルパラベン、エチルパラベン等を挙げることができる。
金属イオン封鎖剤として、例えばエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エデト酸、エデト酸ナトリウム塩等のエデト酸塩を挙げることができる。
【0055】
高分子として、例えば、アラビアゴム、トラガカントガム、ガラクタン、グァーガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード、デキストラン、プルランカルボキシメチルデンプン、コラーゲン、カゼイン、ゼラチンメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、アルギン酸ナトリウムカルボキシビニルポリマー(CARBOPOL等)等のビニル系高分子、等を挙げることができる。
【0056】
増粘剤として、カラギーナン、トラガカントガム、クインスシード、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースカルボキシビニルポリマー、グァーガム、キサンタンガム、ベントナイト等を挙げることができる。
【0057】
粉末成分としては、タルク、カオリン、雲母、シリカ、ゼオライト、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、セルロース粉末、無機白色顔料、無機赤色系顔料、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ等のパール顔料、赤色201号、赤色202号等の有機顔料を挙げることができる。
【0058】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸、サリチル酸フェニル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
紫外線遮断剤として、酸化チタン、タルク、カルミン、ベントナイト、カオリン、酸化亜鉛等を挙げることができる。
【0059】
保湿剤として、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、ソルビトール、ブドウ糖、果糖、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸、シクロデキストリン等が挙げられる。
【0060】
薬効成分としては、ビタミンA油、レチノール等のビタミンA類、リボフラビン等のビタミンB2類、ピリドキシン塩酸塩等のB6類、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−グルコシド等のビタミンC類、パントテン酸カルシウム等のパントテン酸類、ビタミンD2、コレカルシフェロール等のビタミンD類;α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸DL−α−トコフェロール等のビタミンE類等のビタミン類を挙げることができる。プラセンタエキス、グルタチオン、ユキノシタ抽出物等の美白剤、ローヤルゼリー、ブナノキエキス等の皮膚賦活剤、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸、γ−オリザノール等の血行促進剤、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、アズレン等の消炎剤、アルギニン、セリン、ロイシン、トリプトファン等のアミノ酸類、常在菌コントロール剤のマルトースショ糖縮合物、塩化リゾチーム等を挙げることができる。さらに、カミツレエキス、パセリエキス、ワイン酵母エキス、グレープフルーツエキス、スイカズラエキス、コメエキス、ブドウエキス、ホップエキス、ビワエキス、オウバクエキス、ヨクイニンエキス、センブリエキス、メリロートエキス、バーチエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、トウガラシエキス、レモンエキス、ゲンチアナエキス、シソエキス、アロエエキス、ローズマリーエキス、セージエキス、タイムエキス、茶エキス、海藻エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、ニンジンエキス、マロニエエキス、ハマメリスエキス、クワエキス等の各種抽出物を挙げることができる。
【0061】
本発明の組成物は、例えば水溶液、油剤、乳液、懸濁液等の液剤、ゲル、クリーム等の半固形剤、粉末、顆粒、カプセル、マイクロカプセル、固形等の固形剤の形態で適用可能である。従来から公知の方法でこれらの形態に調製し、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏、硬膏、ハップ剤、エアゾール剤、坐剤、注射剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、シロップ剤、トローチ剤等の種々の剤型とすることができる。
【0062】
これらを身体に塗布、貼付、噴霧、飲用等により適用することができる。特にこれら剤型の中で、ローション剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、硬膏剤、ハップ剤、エアゾール剤等が皮膚外用剤に適している。化粧料としては、化粧水、乳液、クリーム、パック等の皮膚化粧料、メイクアップベースローション、メイクアップクリーム、乳液状又はクリーム状あるいは軟膏型のファンデーション、口紅、アイカラー、チークカラーといったメイクアップ化粧料、ハンドクリーム、レッグクリーム、ボディローション等の身体用化粧料等、入浴剤、口腔化粧料、毛髪化粧料とすることができる。
【0063】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[植物抽出液の調製]
リュウガン(Euphoria longan (Lour.) Steud.)の仮種皮(リュウガンニク)、ホソバタイセイ(Isatis tinctoria L.)の根(バンランコン)、ナルコユリ(Polygonatumfolcatum A. Gray)の根茎(オウセイ)、セイヨウサンザシ(Crataegus oxyacantha L.)の葉、コウカサイ(Hemerocallis plicata Stapf)の花の蕾(キンシンサイ)、セイヨウキズタ(Hedera helix L.)の葉、エキナセアプルプレア(Echinacea purpurea L. Moench)の根、薬用カボチャ(Cucurbitae pepo L.)の種子、セイヨウタンポポ(Taraxacum officinale G.)の根、アンジェリカ(Angelica archangelica L.)の根、セイヨウイラクサ(Urtica dioica L.)の根、ゲンチアナ(Gentianalutea L.)の根を細切し、その各1kgに99.5%エタノール3Lを加え、室温で一晩浸漬した。これを濾過し、各抽出液を得た。各抽出液を濃縮したところ、その蒸発残分はそれぞれ75g、110g、135g、98g、102g、65g、23g、135g、45g、78g、56g、43gであった。なお、ここで、セイヨウサンザシ(Crataegus oxyacantha L.)の葉、コウカサイ(Hemerocallis plicata Stapf)の花の蕾(キンシンサイ)セイヨウイラクサ(Urtica dioica L.)の根、ゲンチアナ(Gentiana lutea L.)の抽出液は、比較対照のために調製した。
【0064】
[試験結果1 植物抽出液およびフェルラ酸によるラミニン5産生促進作用の測定]
表皮角化細胞(NHEK)および培地(KGM)は、胎児由来正常ヒト表皮角化細胞(旭テクノグラス)およびKeratinocyte Growth Medium Bullet Kit(旭テクノグラス)を用いた。細胞はKGMで37℃−5%CO2インキュベーターにて培養した。本実験には継代数が3〜5代の細胞を使用した。
NHEKをKGMで培養後、トリプシン/EDTA溶液を用いて、接着細胞を培養ディッシュから剥がした後、トリプシン中和溶液を用いてトリプシンを中和した。遠心分離により細胞を集めた後、1.25×105cells/mlとなるようにKGMにて再懸濁した。
【0065】
この細胞懸濁液を4ml/ウェルで6ウェルプレートに播種し、24時間培養後、ウシ胎児血清(FBS)、前記の方法により調製した各植物抽出液およびフェルラ酸(築野食品工業)を添加したKGMで24時間培養した。培養後、細胞培養上清を回収した。800rpm、5分間遠心して浮遊細胞を除去後、15,000rpm、30分間遠心して細胞片を除去した。80%飽和になるように硫酸アンモニウムを添加して4℃で一晩攪拌した。20,000rp、30分間遠心してタンパク質を沈降させ、上清を除去後、20mM Tris−HCl(pH7.5)に溶解した。20mM Tris−HCl(pH7.5)で4℃、一晩透析後、20倍濃縮になるように20mM Tris−HCl(pH7.5)を加え、ウエスタンブロッティング用サンプルとして用いた。FBSは、ラミニン5の産生を促進する因子として公知の物質であり、ここでは対照として用いた(特開平11−343226)。
【0066】
サンプル中のタンパク質を非還元条件でSDS−PAGE(Sodium dodecyl sulfate−polyacrylamide gel electrophoresis)により分離後、ニトロセルロース膜に転写した。転写後のニトロセルロース膜をブロッキング溶液(5%のスキムミルクを含むPBS)に浸し、室温で1時間ブロッキングした。洗浄液{0.1%のBSAおよび0.05%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含むPBS}で洗浄後、一次抗体溶液{洗浄液で1mg/mlに調製したラミニンγ2鎖に対するモノクローナル抗体(クローンD4B5)}に浸し、室温で一晩反応させた。洗浄後、二次抗体溶液(洗浄液で1mg/mlに調製したビオチン化抗マウスイムノグロブリンG)に浸し、室温で1時間反応させた。洗浄後、酵素溶液(洗浄液で1mg/mlに調製したアルカリフォスファターゼアビジンD)に浸し、室温で1時間反応させた。洗浄後、基質液{BCIP/NBT substrate kit(VECTOR LABORATORIES)}に浸し、室温で15〜30分間反応させた。
【0067】
FBSおよび各植物抽出液を0.1%で処理した時の結果を図1に示す。ここでFBSを0.1%で処理するとは、FBSの原液を培地量の0.1%で加えて処理することをいう。また、植物抽出液を0.1%で処理するとは、固形分濃度にして0.1重量%になるように、エタノールで100mg/mlに調製した植物抽出液を培地量の1重量%加えて処理することをいう。ここで、2本のラミニン5のバンドが見られるが、上のバンドはγ2鎖全長型ラミニン5であり、下のバンドはγ2鎖が酵素により限定分解されたγ2鎖分解型ラミニン5である。リュウガンの仮種皮(リュウガンニク)、ホソバタイセイの根(バンランコン)、ナルコユリの根茎(オウセイ)の各植物抽出液により、γ2鎖全長型およびγ2鎖分解型のラミニン5の発現が有意に促進された。一方、セイヨウサンザシの根、キンシンサイの根の抽出液で処理した場合は、ラミニン5の発現に対する促進活性は見られなかった。このことから、本発明のリュウガン、ホソバタイセイおよびナルコユリがラミニン5産生促進のために選択的に作用することが分かった。
【0068】
FBSおよびフェルラ酸の濃度を変えて処理した時の結果を図2に示す。ここでFBSを0.10%および1.00%で処理するとは、FBSの原液を培地量の0.10%および1.00%で加えて処理することをいう。また、フェルラ酸を0.01%、0.10%および1.00%で処理するとは、固形分濃度にして0.01重量%、0.10重量%および1.00重量%になるように、エタノールで10mg/ml、100mg/mlおよび1g/mlに調製したフェルラ酸溶液を培地量の1重量%加えて処理することをいう。ここで、2本のラミニン5のバンドが見られるが、上のバンドはγ2鎖全長型ラミニン5であり、下のバンドはγ2鎖が酵素により限定分解されたγ2鎖分解型ラミニン5である。フェルラ酸溶液により、濃度依存的にγ2鎖全長型およびγ2鎖分解型ラミニン5の発現が促進された。また、フェルラ酸溶液を0.1%および1.0%で処理した場合、FBSを1.0%で処理した場合と同程度の活性が見られた。
【0069】
[試験結果2 コメヌカ油によるラミニン5産生促進作用の測定]
ヒト皮膚三次元モデルは、TESTSKIN(LSE−high)(東洋紡績)を用い、プロトコールにしたがって培養した。植物性スクワラン(花王)にFBSまたはコメヌカ油(築野食品工業)を溶解し、アッセイリング内の組織上に80μl添加し、24時間培養した。FBSはラミニン5の産生を促進する公知の物質であり、ここでは対照として用いた(特開平11−343226)。培養液で数回洗浄して薬剤を完全に除去した後、UVBを0および240mJ/cm2で照射した。新たに薬剤を添加し、さらに24時間培養した。組織を回収し、組織抽出用溶液{50mM Tris−HCl(pH7.5)、1% (Octylphenoxy)polyethoxyethanol(Sigma−Aldrich)}を加え、ホモジナイズした。15,000rpm、30分間遠心して組織片を除去した後、50mM Tris−HCl(pH7.5)にて透析した。
【0070】
この組織抽出液を用いて、ELISA(enzyme−linked immunosorbent assay)によりラミニン5産生促進作用を調べた。組織抽出液を50mM Tris−HCl(pH7.5)で適当に希釈し、96ウェルELISA用プレートに4℃で18時間吸着させた。細胞培養上清液を除去後、ブロッキング溶液{1%の牛血清アルブミン(BSA)を含むPBS(−)}に浸し、37℃で1時間ブロッキングした。洗浄液{0.05%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(和光純薬)を含むPBS(−)}にて洗浄後、一次抗体溶液{洗浄液で5mg/mlに調製したラミニンγ2鎖に対するモノクローナル抗体(クローンD4B5)(Mizushima,H.,et al.,Horm.Res.,50,7−14,1998.)}を添加し、37℃で2時間反応させた。洗浄後、二次抗体{洗浄液で1mg/mlに調製したビオチン化抗マウスイムノグロブリンG(Vector laboratories)}を添加し、室温で1時間反応させた。洗浄後、酵素溶液{洗浄液で1mg/mlに調製したアルカリフォスファターゼアビジンD(Vectorlaboratories)}を添加し、室温で1時間反応させた。洗浄後、基質液{1mg/mlのp−nitrophenyl phosphate(ICN Biomedicals,Inc.)を含む0.75M Tris−HCl(pH10.3)}を添加し、37℃で30分間反応後、405nmでの吸光度を測定した。
【0071】
FBSを1.0%、コメヌカ油を0.1%、1.0%および3.0%で処理した時の結果を図3に示す。ここでFBSを1.0%で処理するとは、FBSの原液を植物性スクワランに1.0%で加えて処理することをいう。また、コメヌカ油を0.1%、1.0%および3.0%で処理するとは、コメヌカ油の原液を植物性スクワランにそれぞれ0.1%、1.0%および3.0%で加えて処理することをいう。薬剤を無処理で、UVBを非照射の場合を100%として評価した。その結果、コメヌカ油はUVB非照射および照射のいずれにおいても濃度依存的にラミニン5産生を促進した。尚、FBSを処理した場合も同様にラミニン5の産生を促進した。
【0072】
[試験結果3 表皮角化細胞におけるインテグリンα6β4産生促進作用の測定]
NHEKをKGMで1.25×105/mlとなるように懸濁し、4ml/ウェルで6穴プレートに播種し、24時間培養した。前記の方法により調製した各植物抽出液およびFBSを添加したKGMを4ml/ウェルで処理し、さらに24時間培養した。培養後、TRIZOL試薬(ライフテックオリエンタル)を用いて、プロトコールに従い全RNAを回収した。FBSは、インテグリンα6mRNAおよびインテグリンβ4mRNAの発現を促進する因子として公知の物質であり、ここでは対照として用いた。
【0073】
回収した全RNAを用いて、RT−PCR(Reverse transcriptase−polymerase chain reaction)high(東洋紡)により、インテグリンα6mRNA、インテグリンβ4mRNAおよびG3PDHmRNAの発現促進活性を測定した。G3PDH遺伝子はハウスキーピング遺伝子として知られ、全ての細胞で恒常的に発現していることから、コントロール遺伝子として広く用いられている。PCR用プライマーとして、インテグリンα6は5’−GAA CTG TGT GAA CAT CAG A−3’および5’−ATC CTT ACA GCA TGG TAT CG−3’を用い、インテグリンβ4は5’−CGG ATG CTG CTT ATT GAG AAC−3’および5’−GAG GGT GGA GGA TGT GCT TAG−3’を用い、G3PDHは5’−ACC ACA GTCCAT GCC ATC AC−3’および5’−TCC ACC ACC CTG TTG CTG TA−3’を用いた。PCRの反応条件は、インテグリンα6およびインテグリンβ4が、94℃、7分処理後、94℃、1分、56℃、1分、74℃、1分を25回繰り返した後、74℃、10分処理し、4℃で保存した。一方、G3PDHは、94℃、7分処理後、94℃、1分、58℃、1分、74℃、1分を20回繰り返した後、74℃、10分処理し、4℃で保存した。RT−PCR産物を電気泳動後、エチジウムブロマイドにより染色し、写真撮影した。
【0074】
各植物抽出液を0.1%で処理した時の結果を図4に示す。ここで植物抽出液を0.1%で処理するとは、固形分濃度にして0.1重量%になるように、エタノールで100mg/mlに調製した植物抽出液を培地量の1重量%加えて処理することをいう。セイヨウキズタの葉、エキナセアプルプレアの根、薬用カボチャの種子、セイヨウタンポポの根、アンジェリカの根の各植物抽出液を処理した場合は、無処理対照に比べてインテグリンα6mRNAおよびインテグリンβ4mRNAの発現が有意に促進された。一方、セイヨウイラクサの根、ゲンチアナの根の抽出液で処理した場合は、インテグリンα6mRNAおよびインテグリンβ4mRNAの発現に対する促進活性は見られなかった。尚、G3PDHの発現は植物抽出液の処理の有無に関わらず、同程度であった。このことから、本発明のセイヨウキズタ、エキナセアプルプレア、薬用カボチャ、セイヨウタンポポ、およびアンジェリカがインテグリンα6β4産生促進のために選択的に作用することが分かった。
【0075】
セイヨウキズタの葉の抽出液を濃度を変えて処理した時の結果を図5に示す。図5における濃度も、前記と同じで培地量に対する固形分濃度を表す。セイヨウキズタの葉の抽出液により、濃度依存的にインテグリンα6mRNAおよびインテグリンβ4mRNAの発現が促進された。また、セイヨウキズタの葉の抽出液を0.1%および1.0%で処理した場合、FBSを0.1%および1.0%で処理した場合と同程度の活性が見られた。尚、G3PDHの発現は植物抽出液の処理の有無に関わらず、同程度であった。
【0076】
[試験結果5 ヒト表皮角化細胞におけるラミニン5産生促進剤およびインテグリンα6β4産生促進剤の光障害抑制作用の測定]
NHEKをKGMで培養後、トリプシン/EDTA溶液を用いて、接着細胞を培養ディッシュから剥がした後、トリプシン中和溶液を用いてトリプシンを中和した。遠心分離により細胞を集めた後、2×105cells/mlとなるようにKGMにて再懸濁した。細胞懸濁液を24ウェルプレートに1ml/ウェルで播種し、24時間培養した。UVBを0および75mJ/cm2で照射し、さらに24時間培養した。PBS(−)で洗浄し浮遊細胞を除去した後、5%グルタルアルデヒド水溶液にて室温、15分間処理し、細胞を固定した。水道水にて洗浄後、蛍光染色液{5μg/mlのHoechst33342(Sigma−Aldrich)および0.001%のポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(和光純薬)を含む水溶液}を室温、暗所にて1.5時間処理した。水道水にて洗浄後、蛍光プレートリーダーを用いて、蛍光強度を測定することにより細胞生存率を評価した。
【0077】
フェルラ酸および各植物抽出液を0.1%で処理した時の結果を図6に示す。図6における濃度も、前記と同じで培地量に対する固形分濃度を表す。薬剤を無処理で、UVBを非照射の場合を100%として評価した。UVB非照射の場合は、フェルラ酸および各植物抽出液をそれぞれ単独または組み合わせて処理したいずれの場合でも、無処理と同程度の細胞生存率であった。UVBを照射した場合は、無処理に比べてフェルラ酸、セイヨウキズタおよびエキナセアをそれぞれ単独で処理した場合は有意に細胞生存率が上昇したが、フェルラ酸およびセイヨウキズタまたはエキナセアを組み合わせて処理した場合は、それぞれ単独よりもより効果的に細胞生存率が上昇した。一方、セイヨウイラクサおよびゲンチアナはフェルラ酸の有無に関わらず、無処理と同程度の細胞生存率であった。よって、フェルラ酸およびセイヨウキズタまたはエキナセアの組み合わせが、光障害抑制のために選択的に作用することが分かった。
【0078】
フェルラ酸および各植物抽出液をそれぞれ単独で0.01%および0.1%、フェルラ酸および各植物抽出液を合わせて0.01%および0.1%で処理した時の結果を図7に示す。図7における濃度も、前記と同じで培地量に対する固形分濃度を表す。薬剤を無処理で、UVBを非照射の場合を100%として評価した。UVB非照射の場合は、フェルラ酸および各植物抽出液をそれぞれ単独または組み合わせて処理したいずれの場合でも、無処理と同程度の細胞生存率であった。UVBを照射した場合において、フェルラ酸およびセイヨウキズタをそれぞれ単独で0.01%処理した場合は無処理と同程度の細胞生存率であったが、フェルラ酸およびセイヨウキズタを合わせて0.01%処理した場合は、細胞生存率が上昇した。同様に、フェルラ酸およびセイヨウキズタを合わせて0.1%処理した場合もフェルラ酸およびセイヨウキズタをそれぞれ単独で0.1%処理した場合に比べて、細胞生存率が上昇した。よって、フェルラ酸およびセイヨウキズタの組み合わせが、光障害抑制のために相乗的に作用することが分かった。
【0079】
[試験結果6 ヒト皮膚三次元モデルにおけるラミニン5産生促進剤およびインテグリンα6β4産生促進剤の光障害抑制作用の測定]
ヒト皮膚三次元モデルは、TESTSKIN(LSE−high)(東洋紡績)を用い、プロトコールにしたがって培養した。植物性スクワランにコメヌカ油および各植物抽出液を溶解し、アッセイリング内の組織上に80μl添加し、24時間培養した。培養液で数回洗浄して薬剤を完全に除去した後、UVBを0および240mJ/cm2で照射した。新たに薬剤を添加し、さらに24時間培養後、組織培養液を回収し、15,000rpm、30分間遠心して組織片を除去した。
【0080】
この組織培養液を用いて、細胞膜に傷害を受けた細胞から遊離される乳酸脱水素酵素(LDH)活性を測定することにより、細胞毒性を測定した。LDH活性の測定は、LDH−細胞毒性テストキット(和光純薬)を用いて行った。PBS(−)を用いて適当に希釈した組織培養液を96ウェルの反応プレートに分注後、発色液を処理し、室温で20分間反応させた。反応停止液を処理後、マイクロプレートリーダーにより560nmの吸光度を測定し、細胞毒性を評価した。
【0081】
コメヌカ油を1.0%、各植物抽出液を0.1%で処理した時の結果を図8に示す。図8における濃度も、前記と同じで植物性スクワランに対する固形分濃度を表す。薬剤を無処理で、UVBを非照射の場合の細胞毒性率を100%として評価した。UVBを非照射の場合は、薬剤処理の有無に関わらず、ほぼ同程度の細胞毒性率であった。UVBを照射した場合は、無処理に比べてコメヌカ油、セイヨウキズタおよびエキナセアをそれぞれ単独で処理した場合は有意に細胞生存率が上昇したが、コメヌカ油およびセイヨウキズタまたはエキナセアを組み合わせて処理した場合は、それぞれ単独よりもより効果的に細胞生存率が上昇した。一方、セイヨウイラクサおよびゲンチアナはコメヌカ油の有無に関わらず、無処理と同程度の細胞生存率であった。よって、コメヌカ油およびセイヨウキズタまたはエキナセアの組み合わせが、光障害抑制のために選択的に作用することが分かった。
【0082】
以下に、本発明の処方例を示す。
<処方例1> クリーム
下記の処方(単位は質量%)により、クリームを製造した。
(1)ステアリルアルコール 6.0%
(2)ステアリン酸 2.0%
(3)水添ラノリン 4.0%
(4)スクワラン 9.0%
(5)オクチルドデカノール 10.0%
(6)POE(25)セチルアルコールエーテル 3.0%
(7)モノステアリン酸グリセリン 2.0%
(8)コメヌカ油 1.0%
(9)防腐剤 適量
(10)香料 適量
(11)セイヨウキズタ抽出液 1.0%
(12)1,3ブチレングリコール 6.0%
(13)PEG 1500 4.0%
(14)精製水 残余
上記成分(1)〜(10)を80℃に加熱溶解し油相とする。成分(11)〜(14)を70℃に加熱溶解し水相とする。油相に水相を徐々に加え乳化し、攪拌しながら40℃まで冷却し、さらに30℃まで攪拌冷却してクリームを得た。
【0083】
<処方例2> 錠剤
下記の処方(単位は質量%)により、錠剤を製造した。
コメヌカ油 10.0%
セイヨウキズタ抽出液 10.0%
乳糖 65.0%
コーンスターチ 14.0%
グァーガム 1.0%
【0084】
【発明の効果】
以上に説明したように、ラミニン5産生促進剤およびインテグリンα6β4産生促進剤を含む本発明組成物は、表皮細胞におけるラミニン5およびインテグリンα6β4の産生を促進し、皮膚基底膜と表皮基底細胞の接着を促進することにより、表皮と基底膜の構造維持および機能向上を促す。したがって、老化した皮膚、特に紫外線により障害を受けた皮膚に対して、表皮と基底膜の構造異常および機能低下を予防、防止、改善することにより、しわ、しみ、くすみ、たるみのない若々しい肌の状態を維持することができる。
【0085】
【配列表】
SEQUENCE LISTING
Figure 0004162898
【0086】
Figure 0004162898
【0087】
Figure 0004162898
【0088】
Figure 0004162898
【0089】
Figure 0004162898
【0090】
Figure 0004162898
【0091】
Figure 0004162898

【図面の簡単な説明】
【図1】ヒト表皮角化細胞に各植物抽出液を濃度依存的に処理した場合のラミニン5の産生を促進する作用を示す図である。
【図2】ヒト表皮角化細胞にフェルラ酸を濃度依存的に処理した場合のラミニン5の産生を促進する作用を示す図である。
【図3】ヒト皮膚三次元モデルにコメヌカ油を濃度依存的に処理した場合のラミニン5の産生を促進する作用を示す図である。
【図4】ヒト表皮角化細胞に各植物抽出液を処理した場合のインテグリンα6およびβ4の産生を促進する作用を示す図である。
【図5】ヒト表皮角化細胞にセイヨウキズタの葉の抽出液を濃度依存的に処理した場合のインテグリンα6およびβ4の産生を促進する作用を示す図である。
【図6】ヒト表皮角化細胞にフェルラ酸および各植物抽出液を処理した場合の光障害を抑制する作用を示す図である。
【図7】ヒト表皮角化細胞にフェルラ酸およびセイヨウキズタの葉の抽出液を処理した場合の光障害を抑制する作用を示す図である。
【図8】ヒト皮膚三次元モデルにコメヌカ油および各植物抽出液を処理した場合の光障害を抑制する作用を示す図である。

Claims (2)

  1. フェルラ酸とセイヨウキズタあるいはその抽出物とを含む皮膚の光障害抑制用組成物。
  2. 皮膚外用剤である請求項1記載の組成物。
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