JP2004155961A - 抗酸化剤 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】キク科トウヒレン属植物の粉末及び/又は抽出物を有効成分として含有する抗酸化剤。
【効果】活性酸素の過剰生成に起因する生活習慣病等の予防又は治療、皮膚の老化、しみ、そばかす等の予防又は治療。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗酸化剤に関し、より詳細には、キク科(Compositae)トウヒレン属(Saussurea)植物の粉末及び/又は抽出物を有効成分として含有する抗酸化剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
キク科トウヒレン属植物、例えば雪蓮花は、中国のチベット、雲南、四川、青海省などの高山岩石地帯において生息し、チベットの至宝、天然の朝鮮人参をはるかにこえる薬効を示すものとして、中国特権階級の健康増進のための常用薬として用いられている。
この植物の薬効としては、種々のものが報告されており、例えば、滋養強壮効果、悪性腫瘍、アトピー性皮膚炎、更年期障害、冷え性等が挙げられる。
さらに、コラーゲン産生促進作用および/またはエストロゲン様作用(例えば、特許文献1)、チロシナーゼ阻害剤、メラニン産生抑制剤および美白化粧料(例えば、特許文献2)等についても知られている。
一方、環境中や生体内で過剰に生じた活性酸素は、生体傷害の原因となる。なかでも、細胞膜の重要な構成成分であるリン脂質、特に酸化されやすい不飽和脂肪酸に対しては、活性酸素などのフリーラジカルによる酸化的傷害の結果、連鎖反応とよばれる「生体内脂質過酸化反応」が進行して、反応性の高いフリーラジカルによるタンパク質、酵素、核酸などの生体構成成分への攻撃が続き、最終的にガンをはじめ、動脈硬化、虚血性心疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、免疫不全等の種々の疾患を引き起こすと考えられている。したがって、生体における活性酸素を抑制又は消失させることが、生活習慣病、ガン及び老化等をはじめ、上述した生体傷害を防止する上で有効である。
しかし、抗酸化作用がある成分として、キク科トウヒレン属植物に関する報告はない。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−316240号公報
【特許文献2】
特開2002−201122号公報
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、キク科(Compositae)トウヒレン属(Saussurea)植物の粉末及び/又は抽出物を有効成分として含有する抗酸化剤が提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明におけるキク科トウヒレン属植物は、これに属するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、Saussurea involucrate (Kar.etKir.) Sch.Blp.(漢方名:雪蓮)、Saussurea gnaphaloides (Royle) Sch.−Bip.(漢方名:鼠▲麹▼雪兎子)、Saussurea stella Maxim.(漢方名:星状風毛菊)、Saussureamedusa Maxim.、Saussurea laniceps Hand.−Mazz.、Saussurea tridactyla Sch.−Bip.ex Hook.f.、Saussurea namikawae Kitam.、Saussurea gossypiphora D.Don、Saussurea nishiokae Kitam.、Saussurea leucoma Diels、Saussurea quercifolia W.W.Smith、Saussurea eriocephala Franch.、Saussureakingii J.R.Drumm.ex C.E.C.Fisch.、Saussurea simpsoniana (Field.et Gardn.) Lipsch.、Saussurea obvallata (DC.) Edgew.、Saussurea wettsteiniana Hand.−Mazz.、Saussurea globosa Chen、Saussurea longifolia Franch.等が挙げられる。なかでも、雪蓮花、具体的には、綿頭雪蓮花(学名:Saussurea laniceps HAND−MAZZ., 産地:四川、雲南、チベットなど)、水雲雪蓮花(Saussurea medusa MAXIM., 青海、甘粛、四川、雲南、チベットなど)、西蔵雪蓮花(Saussurea tridactyla SCH.−BIP., 別名 三指雪蓮花、チベット)、毛頭雪蓮花(Saussurea eriocephala FRANCH., 雲南など)、包被雪蓮花(Saussurea involucrata KAR.et KIN.,別名大苞雪蓮花、新彊など)等が好ましい。これらの植物は、種類や産地等によって、その中に含有される成分の量や種類に若干の差異があると考えられるが、中国、朝鮮、日本、サハリン、シベリアなどの産地のほか、いずれの地域に生育しているものでも使用することができる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0006】
このような植物は、根茎など地下部分のみならず、葉、花等のトウヒレン属植物の全ての部位を利用することができる。なかでも、地上部分が好ましい。
粉末として用いる場合、採取した植物を、そのまま又は乾燥して粉砕機等で粉砕することにより、100〜1000メッシュ、好ましくは100〜200メッシュの粉末として調製することができる。
本発明における「抽出物」とは、抽出処理によって得られる抽出液;抽出液の希釈液又は濃縮液;抽出液等を乾燥して得られる乾燥物又はこれらの粗精製物又は精製物のいずれをも含むものとする。抽出物として用いる場合には、上記植物をそのまま、天日又は乾燥機で乾燥した後又は粉砕して、水、低級アルコール(メタノール、エタノール、ブタノール等、好ましくはエタノール)又はこれらの混合物などの溶媒により室温にて、加熱して又は冷浸して得ることができる。溶媒は、植物に対して1〜50重量倍程度、好ましくは1〜30重量倍程度で使用することが適当である。また、80〜90℃程度に1〜10時間程度加熱するか、10〜35℃程度の冷浸温度にて、振盪下又は非振盪下に、1〜10日間程度植物を浸漬することによって抽出物を調製することができる。なお、抽出処理は、同一原料について1回のみ行ってもよいが、複数回、例えば、2〜5回程度行うことが好ましい。
【0007】
得られた抽出物は、濃縮してもよい。濃縮は、低温下及び/又は低圧下で行うことが好ましい。この濃縮は乾固するまで行ってもよい。なお、濃縮する前にろ過し、ろ液を濃縮してもよいし、遠心分離により残渣を除去したものを濃縮してもよい。また、濃縮したままの状態であってもよいし、粉末状又は凍結乾燥品等としてもよい。濃縮する方法、粉末状及び凍結乾燥品とする方法は、当該分野で公知の方法を用いることができる。
得られた抽出物は、濃縮する前後に、精製処理に付してもよい。精製処理は、クロマトグラフ法、イオン交換樹脂を使用する溶離法、溶媒による分配抽出等を単独又は組み合わせて採用することができる。例えば、クロマトグラフ法としては、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、遠心液体クロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー等のいずれか又はそれらを組み合わせて行う方法が挙げられる。この際の担体、溶出溶媒等の精製条件は、各種クロマトグラフィーに対応して適宜選択することができる。
【0008】
キク科トウヒレン属植物の粉末及び/又は抽出物は、医薬的に受容な塩、賦形剤、保存剤、着色剤、矯味剤等とともに、医薬品又は食品の製造分野において公知の方法によって、医薬品として、顆粒、錠剤、カプセル剤等の種々の形態とすることができる。これらの形態においては、適当な媒体を添加してもよい。適当な媒体としては、医薬的に受容な賦形剤、例えば結合剤(例えばシロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガント又はポリビニルピロリドン);充填剤(例えば乳糖、砂糖、トウモロコシ澱粉、リン酸カルシウム、ソルビトール又はグリシン);錠剤用滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール又はシリカ);崩壊剤(例えば馬鈴薯澱粉)又は受容な湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)等が挙げられる。
【0009】
また、キク科トウヒレン属植物の粉末及び/又は抽出物は、健康食品の形態とすることができる。健康食品とは、通常の食品よりも積極的な意味で、保健、健康維持・増進等を目的とした食品を意味する。例えば、液体又は半固形、固形の製品、例えばクッキー、せんべい、ゼリー、ようかん、ヨーグルト、まんじゅう等の菓子類、清涼飲料、栄養飲料、スープ、調味料等が挙げられる。また、そのまま煎じて、茶剤としてもよい。これらの食品の製造工程において、あるいは最終製品に、上記粉末、抽出物等を混合又は塗布、噴霧などにより添加して、健康食品とすることができる。
【0010】
さらに、キク科トウヒレン属植物の粉末及び/又は抽出物は、化粧料の形態とすることができる。化粧料として、例えば、軟膏、クリーム、乳液、化粧水、パック、入浴剤等の皮膚化粧料、整髪料等が挙げられる。これらの化粧料は、当該分野で公知の方法により製造することができる。また、化粧料においては、通常化粧料に使用される成分、例えば、グリセリン、コラーゲン、ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸およびその塩、キチン、キトサン等の保湿剤;クエン酸又はその塩類、酒石酸又はその塩類、乳酸又はその塩類、マロニエエキス等の収斂剤;安息香酸、安息香酸ナトリウム等の殺菌剤;パラジメチルアミノ安息香酸アミル等の紫外線吸収剤;グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質等の複合脂質;β−カロチン、油溶性甘草エキス、リコカルコンA、バイカリン、バイカレインその他の活性酸素消去作用を有する物質;アズレン、グリチルリチン酸およびその塩類、グリチルレチン酸およびその誘導体、酸化亜鉛等の抗炎症作用物質;リボフラビン、トコフェロール、アスコルビン酸、葉酸等のビタミンおよびその誘導体類;ホホバ油、ラノリン、流動パラフィン、スクワラン、イソステアリルアルコール等の油性成分;ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ジエタノールアミン、ステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;エリソルビン酸ナトリウム等の酸化防止剤;エチルパラベン等の防腐剤;オウバク抽出物、カミツレ抽出物、カンゾウ根抽出物、ローズマリー抽出物、マロニエ抽出物等のコレステロール類;植物ステロール類;リポプロテイン類;ビフィズス菌培養物、乳酸菌培養物、酵母抽出物、ブクリョウ抽出物等の微生物由来成分;褐藻抽出物、紅藻抽出物等の藻類抽出物;γ−オリザノール等の血行促進剤;硫黄等の抗脂漏剤;香料;アルコール;カルボキシポリマー等の増粘剤;チタンイエロー、ベニバナその他着色料等を用いてもよい。
【0011】
キク科トウヒレン属植物の粉末及び/又は抽出物の使用量は、年齢、症状等によって異なるが、予防に用いる場合には、成人1回につき粉末では1〜10g程度、好ましくは2〜3g程度、抽出物では100〜3000mg程度、好ましくは800〜1500mg程度が挙げられ、食前30分位に1日3回服用するのが望ましい。また、健康食品としての使用時には、食品の味や外観に悪影響を及ぼさない量、例えば、対象となる食品1kgに対し、粉末又は抽出物の形態で100〜10000mg程度の範囲で用いることが適当である。さらに、化粧料としての使用時には、例えば、粉末では0.001〜10重量%程度、抽出物では0.01〜5重量%程度の濃度で使用することができる。
以下に、本発明の抗酸化剤をさらに具体的に説明する。
【0012】
キク科トウヒレン属植物の抽出
中華人民共和国の雲南省昆明市および北京市安国生薬市場において入手し、植物の形態などを文献上確認して同定した綿頭雪蓮花、水母雪蓮花、西蔵雪蓮花、毛頭雪蓮花、包被雪蓮花の全草を粗切または粉砕機で100〜400メッシュの粉末とし、この粉末1kgに対して5リットルの溶媒(水又はエタノール(含水量5%))を加え、90℃程度で3時間加熱、抽出し、ろ過した。そのろ液を45℃以下で減圧濃縮し、水エキス、エタノールエキスを得た。水エキス及びエタノールエキスの収率は、いずれも約10〜15%程度であった。
得られた綿頭雪蓮花、水母雪蓮花の水抽出物は、いずれも、褐色〜緑褐色粉末で吸湿性を示した。
また、以下の条件下での薄層クロマトグラフィーでは、いずれも昇天部分に褐色スポット、Rf値0.6〜0.8付近に数個の赤紫〜褐色スポット、0.3付近に褐色バンドが得られた。
担体:Silica Gel 60F254 pre−coated TLC plate(Merck社製)
展開溶媒:クロロホルム:メタノール:水(10:3:1、下層)
発色:1%硫酸セリウムを含む10%硫酸水溶液を噴霧後の加熱時の呈色による。
【0013】
さらに、以下の条件下での薄層クロマトグラフィーでは、いずれも、Rf値0.8付近に赤紫スポット、0.5〜0.7付近に複数の褐色スポットが得られた。
担体:Silica Gel 60F254 pre−coated TLC plate(Merck社製)
展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル(2:1)
発色:1%硫酸セリウムを含む10%硫酸水溶液を噴霧後の加熱時の呈色による。
紫外線吸収スペクトル(島津UV−1600、溶媒:メタノール)では、いずれも、270nm付近、328nm付近に極大吸収を示した。
IRスペクトル(島津FTIR−8100(KBr))では、いずれも、3130cm−1付近に水酸基、2940cm−1付近にメチレン、1070〜1080cm−1付近にエーテル結合に由来すると思われる吸収が認められた。
【0014】
試験例1:ラジカル消去作用
エタノール1ml、上記で得られた抽出物のエタノール溶液(濃度0〜100μg/ml)1ml、0.2M酢酸緩衝液(pH5.5)2ml及びDPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル、2.0×10−7モル/mlエタノール溶液)1mlを混合し、30分間放置した。その後、この混合液の517nmの吸光度を測定した。
一方、DPPH溶液に代えてエタノール1mlを用いた混合液をブランクとし、この517nmの吸光度を上記と同様に測定した。そして、吸光度が1/2になるのに必要な抽出物の量を算出し、これを抗酸化の指標とした。
また、比較例として、上記抽出物に代えて、α−トコフェロールの抗酸化力も測定した。これらの結果を表1に示す。
なお、この測定においては、安定ラジカルDPPHのエタノール溶液は、青色517nmに吸収をもち、ラジカル補足物質を添加すると添加量に応じて退色するために、上記方法を利用した。
【0015】
【表1】
Figure 2004155961
【0016】
試験例2:スーパーオキシド消去作用
50mM炭酸ナトリウム緩衝液2.25mlに3mMキサンチン、3mMEDTA、0.15%牛血清アルブミン(BSA)、0.75mMニトロブルーテトラゾリウム(NBT)を各0.1mlずつ加えて混合した。これに各濃度(%)の被験物質0.25mlを加え、25℃で10分間予備加熱した後、56mU/mlキサンチンオキシダーゼ溶液0.1mlを加え、25℃で20分間インキュベートした。6mMのCuCl0.1mlを加えて反応を停止させ、560nmにおける吸光度を測定した。
得られた結果を表2に示す。
【0017】
【表2】
Figure 2004155961
【0018】
試験例3:一酸化窒素酸性抑制活性
ddY系雄性マウス(約30g)の腹腔から採取したマクロファージを10%牛胎児血清(FCS)含有RPMI−1640培地に懸濁し、96穴平底マイクロプレートに5×10cell/ml播種し、1時間インキュベートした。NOは不安定で直接測定が困難であるため、NOの代謝産物であるNO をグリース試薬にて定量した。すなわち、培養上清と同量のグリース試薬(1%スルファニルアミド/0.1%N−1−ナフチルエチレンジアミン/5%リン酸)とを混合し、室温にて10分間放置した後、吸光度を測定し(測定波長:570nm、参照波長:655nm)、培地で希釈したNaNOをスタンダードとして定量した。
得られた結果を表3に示す。
【0019】
【表3】
Figure 2004155961
【0020】
実施例1:乳液
ホホバオイル4g、オリーブオイル2g、スクワラン2g、セタノール2g、モノステアリン酸グリセリル2g、ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.0)2.5g、グリチルリチン酸ジカリウム0.3g、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.0)2g、1,3−ブチレングリコール3g、パラオキシ安息香酸メチル0.15g、香料 0.05g、綿頭雪蓮花の抽出エキス0.1g、精製水残部(全量を100gとする)を混合し、当該分野で公知の方法により、乳液を製造した。
【0021】
実施例2:化粧水
グリセリン3g、1,3−ブチレングリコール3g、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.0)0.5g、パラオキシ安息香酸メチル 0.15g、クエン酸0.1g、香料0.05g、綿頭雪蓮花の抽出エキス2g 精製水残部(全量を100gとする)を混合し、当該分野で公知の方法により、化粧水を製造した。
【0022】
実施例3:健康食品
綿頭雪蓮花の抽出エキス50重量部、ショ糖200重量部、グリセリン脂肪酸エステル 10重量部を混合し、当該分野で公知の方法により混合及び打錠し、錠剤形状の健康食品を製造した。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、活性酸素の過剰生成に起因する各種の生活習慣病等に対して、DPPH、スーパーオキシド等を消去して、これらの生活習慣病等を予防又は治療することができる。
また、これらの生活習慣病のほか、皮膚の老化、しみ、そばかす等を予防又は治療することが可能となる。
さらに、マクロファージからの過剰なNOの産生を予防又は治療して、炎症を改善することが可能となる。

Claims (4)

  1. キク科トウヒレン属植物の粉末及び/又は抽出物を有効成分として含有する抗酸化剤。
  2. キク科トウヒレン属植物が雪蓮花である請求項1に記載の抗酸化剤。
  3. 皮膚化粧料の形態である請求項1又は2に記載の抗酸化剤。
  4. 健康食品の形態である請求項1又は2に記載の抗酸化剤。
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