以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る車両の盗難防止装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本発明に係る車両の盗難防止装置は、例えば燃料噴射量、燃料噴射タイミング、スロットル開度、エンジン始動用スタータの起動指令等、エンジンに係る装置を総合的に制御するパワートレイン制御モジュール( Powertrain Control Module、以下、PCMと称す)1と、運転席の車両前方に配設された指示メータ3と、エンジン制御装置1と指示メータ3とを結ぶ通信ライン5と、キーシリンダ11に挿入されてイグニッションキースイッチOFF、アクセサリON、或いはイグニッションキースイッチONの位置に回動操作されるキー7と、エンジンスタータ39とで構成されている。また、キー7にはID番号が記憶されていると共に、キー7がキーシリンダ11に挿入された際に、記憶されているID番号をアンテナANTに送信するトランスポンダ9が備えられている。
PCM1には、エンジン制御側イモビライザユニット(以下、PCM側ユニットと称す)21が設けられ、このPCM側ユニット21には、暗号値生成手段19と、記憶部25と演算手段27とを有する記憶手段23と、比較手段29とが備えられ、記憶部25と演算手段27とは走行距離データが相互にやり取りされる。また、記憶手段23から比較手段29に走行距離データを用いて演算されたエンジン制御ユニット側照合値(以下、PCM側照合値)が送られる。
一方、指示メータ3には、走行距離を表示するオドメータ13と、メータ側イモビライザユニット(以下、MU側ユニットと称す)31が設けられ、MU側ユニット31には、記憶部35と演算手段37とを有する記憶手段33が備えられ、記憶部25と演算手段37とは走行距離データが相互にやり取りされる。演算手段37では、記憶部25に記憶されていた走行距離データを用いてメータ側照合値が演算され、MU側ユニット31からPCM側ユニットにメータ側照合値(MU側照合値)が送信される。
そして、比較手段29においてPCM側照合値とMU側照合値とが比較され、その比較の結果に基づいてPCM側ユニット21はエンジンの始動を許可、又は禁止する。その結果、エンジンの始動が許可された場合は、エンジンスタータ39が起動し、逆に始動を禁止された場合は、エンジンスタータ39は起動出来ないようにされている。なお、暗号値生成手段19は、走行距離データを用いて照合値を演算するための暗号値を生成する手段である(詳細、後述)。
図2は、キー7がキーシリンダ11に挿入され、PCM側ユニット21とMU側ユニット31とに記憶されていた走行距離データを比較照合し、エンジンの始動を許可、或いは不許可にする、走行距離データ照合ロジックの内、PCM側ユニット21の制御フローを示すフローチャート図である。
図2において、まず、ステップ100からスタートし、ステップ105でキー7がキーシリンダ11に挿入されると、トランスポンダ9からアンテナANTを経てID番号がPCM側ユニット21に送信され、ステップ110に進む。ステップ110では、PCM側ユニット21が予め記憶しているID番号と、アンテナANTから受信したID番号とを照合し、一致すればさらにID番号をMU側ユニット31に送信し、MU側ユニット31でも予め記憶しているID番号と受信したID番号とを照合する。
MU側ユニット31でも両ID番号が一致すれば、MU側ユニット31は一致信号をPCM側ユニット21に送信してステップ115に進む。
両ID番号が不一致の場合、MU側ユニット31は不一致信号をPCM側ユニット21に送信し、MU側ユニット31はステップ140に進んでエンジンの始動を不許可とし、エンジンスタータ39は起動されない。
PCM側ユニット21とMU側ユニット31の両ユニットで夫々、予め記憶しているID番号と受信したID番号が一致し、ステップ115に進むと、PCM側ユニット21の暗号値生成手段19でランダム値(暗号値)(R)が生成される。
ランダム値(R)は、例えば2、3、・・・、10等の整数値であり、キー7がイグニッションキースイッチON位置に操作される度に異なったランダム値(R)として生成され、ステップ120に進む。
ステップ120では、ステップ115で生成されたランダム値(R)がPCM側ユニット21からMU側ユニット31へ送信されると同時に、PCM側ユニット21の演算手段27で照合値を演算処理するステップ125に進む。
まず、ステップ125では、PCM側ユニット21の記憶部25に予め記憶されていた走行距離データ(Cm−2)とステップ115で生成したランダム値(R)とを用い、演算手段27にて照合用アルゴリズム(Cp=F(Cm−2,R))によりPCM側照合値(Cp)を生成する。
これは例えば、ステップ115で生成したランダム値(R)が5で、PCM側ユニット21の記憶部25に予め記憶されていた走行距離データ(Cm−2)が6,000kmの場合、これらを乗じた30,000がPCM側照合値(Cp)として生成されるものである。
一方、ステップ120においてMU側ユニット31に送信されたランダム値(R)は、走行距離データ照合ロジックの内、MU側ユニット31の制御フローを示すフローチャート図である図3の各ステップにより処理されてMU側照合値が演算される。
即ち、ステップ200でMU側ユニット31はPCM側ユニット21から送信されたランダム値(R)を受信し、ステップ205に進む。
ステップ205では、MU側ユニット31の記憶部35に予め記憶されていた走行距離データ(Cm−2)とステップ200で受信したランダム値(R)とを用い、演算手段37にて照合用アルゴリズム(Cm=F(Cm−2,R))によりMU側照合値(Cm)を生成する。
これは例えば、上で説明した例に倣えば、ステップ200で受信したランダム値(R)は5であり、MU側ユニット31の記憶部35に予め記憶されていた走行距離データ(Cm−2)が6,000kmの場合、これらを乗じた30,000がMU側照合値(Cm)として生成されるものである。
なお、PCM側ユニット21の記憶部25とMU側ユニット31の記憶部35とに記憶されていた走行距離データ(Cm−2)は、今回のイグニッションキースイッチON操作時の走行距離データではなく、過去のイグニッションキースイッチON操作時の走行距離データである。また、PCM側ユニット21の記憶部25に記憶されていた走行距離データ(Cm−2)と、MU側ユニット31の記憶部35に予め記憶されていた走行距離データ(Cm−2)とは、PCM側ユニット21若しくはMU側ユニット31が別のユニットに交換されない限り等しい。これらについては、図4、図5を用いた走行距離データ移動ロジック、及び走行距離データ変換ロジックの説明で明らかにされる。
さて、ステップ205で生成されたMU側照合値(Cm)は、ステップ210に進んでMU側ユニット31からPCM側ユニット21に送信される。
そしてここで再度、図2に戻り、ステップ130においてPCM側ユニット21はMU側ユニット31からMU側照合値(Cm)を受信し、ステップ135に進む。
ステップ135は、PCM側ユニット21の比較手段29において、先に演算していたPCM側照合値(Cp)と、MU側ユニット31から受信したMU側照合値(Cm)とを比較し、一致、又は不一致を判断する判断ブロックである。
ステップ135では、PCM側照合値(Cp)とMU側照合値(Cm)とが一致した場合、ステップ150に進むと同時に図4、図5に示す走行距離データ移動ロジック、及び走行距離データ変換ロジックに進み、不一致の場合ステップ140に進む。
ステップ140は、エンジン始動を不許可とするもので、エンジンスタータ39は起動することなく、ステップ145に進んでエンドとされる。
このステップ140に進むのは、車両のPCM1、若しくはPCM側ユニット21が不当に取り替えられた場合である。即ち、このような場合はPCM側ユニット21の記憶部25に記憶されていた走行距離データ(Cm−2)が別の値、或いはPCM側ユニット21に走行距離データが無い状態となるため、PCM側照合値(Cp)とMU側照合値(Cm)とは不一致となってエンジンスタータ39は起動されない。
一方、ステップ150では、PCM側ユニット21がエンジン始動許可信号を生成し、エンジンスタータ39の起動が実行され、ステップ160にてエンドとされる。
また、ステップ150では、エンジン始動許可信号が生成されると同時に、走行距離データ移動ロジック、及び走行距離データ変換ロジックの実行を開始するためのトリガとしてMU側ユニット31に送信される。
続いて、走行距離データ移動ロジック、及び走行距離データ変換ロジックについて説明する。図4は、MU側ユニット31で処理される走行距離データ移動ロジック、及び走行距離データ変換ロジックのフローチャート図、図5は、PCM側ユニット21で処理される走行距離データ変換ロジックのフローチャート図である。
図4において、ステップ300では、MU側ユニット31はステップ150で生成されるエンジン始動許可信号を受信して以下の処理の実行を開始しステップ305に進む。
ステップ305は、走行距離データ移動ロジックの一部であり、イグニッションキースイッチONした現在のMU側ユニット31の走行距離データ(O)と、これより1回前にイグニッションキースイッチONした時のMU側ユニット31の走行距離データ(Om−1)と、さらに1回前にイグニッションキースイッチONした時のMU側ユニット31の走行距離データ(Om−2)とについて、条件αとして(O)>(Om−1)>(Om−2)が成立するかどうかを判断するステップである。
この走行距離データ(Om−2)は、即ち、現時点のイグニッションキースイッチON時よりも2回前のイグニッションキースイッチON時点の走行距離データであると共に、先にステップ125で説明した、PCM側照合値(Cp)を演算するためにPCM側ユニット21に送信され、PCM側ユニット21の記憶部25に予め記憶される走行距離データ(Cm−2)の元データである。したがって、先にステップ125で説明した「過去のイグニッションキースイッチON操作時」とは、「現時点のイグニッションキースイッチON時よりも2回前のイグニッションキースイッチON操作時」ということになる。
ステップ305では、通常の自動車の使用であれば2回前のイグニッションキースイッチON操作の後、ある距離を走行した後イグニッションキースイッチはOFF操作され、次に1回前のイグニッションキースイッチON操作の後、ある距離を走行した後イグニッションキースイッチがOFF操作され、そして今回、イグニッションキースイッチON操作に至ることになるので、条件αは成立し、ステップ310へ進む。
しかし、例えば1回前のイグニッションキースイッチのON操作でエンジンは起動したが運転者の都合で走行しないような場合もあり得る。このような場合、条件αは不成立となり、以後の処理は行われず、ステップ325に進んでエンドとされる。但し、この場合、エンジン停止に至ることは無い。
条件αが成立し、ステップ310へ進むと、MU側ユニット31では走行距離データ変換ロジックにより走行距離データ変換処理が実行される。このステップ310における走行距離データ変換ロジックは、ステップ200においてPCM側ユニットから受信したランダム値(R)と、走行距離データ変換アルゴリズム(Ov=F(Om−1,R))とを使って、1回前にイグニッションキースイッチONした時のMU側ユニット31の走行距離データ(Ov)を演算手段37にて生成する。ここで、走行距離データ(Om−1)は、1回前にイグニッションキースイッチをON操作した時のMU側ユニット31の走行距離データである。
そして、ステップ315に進むと、生成した走行距離データ(Ov)はPCM側ユニット21に送信され、且つ次ステップ320に進む。
ステップ320では、再び走行距離移動ロジックに戻り、MU側ユニット31の走行距離データのメモリシフト処理が実行される。即ち、1回前にイグニッションキースイッチONした時のMU側ユニット31の走行距離データ(Om−1)を、新たに2回前にイグニッションキースイッチONした時のMU側ユニット31の走行距離データ(Cm−2)と書き換え、同時に現在のMU側ユニット31におけるオドメータ値である走行距離データ(O)を、新たに1回前にイグニッションキースイッチONした時のMU側ユニット31の走行距離データ(Om−1)と書き換える。これら新たに書き換えられた走行距離データ(Om−1)、(Cm−2)は、記憶部35に記憶され、ステップ325に進んで終了される。
なお、新たに書き換えられて記憶部35に記憶された走行距離データ(Cm−2)は、次回のイグニッションキースイッチON操作時におけるステップ130の照合用アルゴリズム(Cm=F(Cm−2,R))を演算実行するための走行距離データとして用いられる。
一方、ステップ315にてMU側ユニット31から送信された走行距離データ(Ov)は、図5に示すステップ400にてPCM側ユニット21に受信され、次ステップ405に進む。
ステップ405では、PCM側ユニット21の演算手段27にて、走行距離変換ロジックにより走行距離データ復元処理が実行される。走行距離データ復元処理とは、MU側ユニット31から送信された走行距離データ(Ov)と、ステップ115で生成したランダム値(R)とを用いた走行距離データ復元アルゴリズム(Om−2=F(Ov,R))を使って走行距離データ(Om−2)を演算する処理である。即ち、この演算された走行距離データ(Om−2)は、元々、ステップ310にて1回前の走行距離データである(Om−1)とランダム値(R)を用いた走行距離データ変換アルゴリズム(Ov=F(Om−1,R))により演算された走行距離データ(Ov)を用い、これが逆算されるものであるから、現時点のイグニッションキースイッチON時よりも1回前のイグニッションキースイッチON時の走行距離データ(Om−1)と等しいことになる。しかし、次回のイグニッションキースイッチON時には、1回前の走行距離データとなるため、予め、2回前のイグニッションキースイッチON時の走行距離データ(Om−2)として演算しておくものである。
走行距離データ復元アルゴリズム(Om−2=F(Ov,R))を使って走行距離データ(Om−2)が演算されると、ステップ410に進む。ステップ410は、PCM側ユニット21における走行距離変換ロジックの続きのステップであり、走行距離データPCM側ユニット21の記憶部25に、走行距離データ(Om−2)を新たな走行距離データ(Cm−2)として記憶する。この新たな走行距離データ(Cm−2)は、次回のイグニッションキースイッチON時におけるステップ125にて照合値(Cp)を生成するために用いられる。
新たな走行距離データ(Cm−2)が記憶部25に記憶されると、ステップ415に進んで終了する。
以上、本発明の実施の形態を説明した。これによれば、以下5点のセキュリティ性向上策が本実施の形態には含まれている。
(1)キーのID番号は、エンジン制御ユニットとメータユニットとで照合される。
(2)ランダム値は、イグニッションキースイッチON操作時の度に異なる値が生成される。
(3)PCM側ユニットとMU側ユニットとで夫々、ランダム値と記憶していた走行距離データを用いて走行距離データが演算される。
(4)PCM側ユニットとMU側ユニットとがデータ等を互いに送受信する。
(5)現在のイグニッションキースイッチON操作時よりも過去のイグニッションキースイッチON操作時の走行距離データを用いて照合値が演算される。
したがって、例えば、エンジン制御ユニットをイモビライザーシステムの搭載されていない別のエンジン制御ユニットと交換してエンジンを起動させようとする、極めて悪質な盗難の手口をもってしても、MU側ユニットとのデータ等のやり取りが出来ないためエンジン始動は不可能であり、盗難による不当な使用が防止できる。
また、GPS装置を用いてキーオフ時の自車位置とキーオン時の自車位置とを夫々記憶させ、これら比較するというシステムではないので、フェリー等で別の場所に移動した際に、正規ユーザであるにもかかわらずエンジン始動が出来なくなるという事態に陥ることは無い。
また、上記実施の形態は、ステップ135において比較される照合値(Cp)と照合値(Cm)とが、現在のイグニッションキースイッチON操作時よりも2回前のイグニッションキースイッチON操作時に記憶した走行距離データを元にしたデータとされている。本発明では、これに限定されることはなく、1回前のイグニッションキースイッチON操作時に記憶した走行距離データを元にした照合値(Cp)と照合値(Cm)とを比較しても良く、この別の実施の形態について図6〜図9に基づいて説明する。なお、図6におけるステップ500〜ステップ520、及び図7におけるステップ600はそれぞれ、図2のステップ100〜ステップ115、及び図3におけるステップ200の説明と同じであるため省略する。ここで図6は、上記別の実施の形態におけるPCM側ユニットの走行距離データ照合ロジックを示すフローチャート図、図7は、同MU側ユニットの走行距離データ照合ロジックを示すフローチャート図、図8は、上記別の実施の形態におけるMU側ユニット31で処理される走行距離データ移動ロジック、及び走行距離データ変換ロジックのフローチャート図、図9は、同PCM側ユニット21で処理される走行距離データ変換ロジックのフローチャート図である。
まず、図6において、ステップ520では、PCM側ユニット21の記憶部25に予め記憶されていた走行距離データ(Cm−1)とステップ515で生成したランダム値(R)とを用い、演算手段27にて照合用アルゴリズム(Cp=F(Cm−1,R))によりPCM側照合値(Cp)を生成する。
これは例えば、ステップ315で生成したランダム値(R)が5で、PCM側ユニット21の記憶部25に予め記憶されていた走行距離データ(Cm−1)が6,000kmの場合、これらを乗じた30,000がPCM側照合値(Cp)として生成されるものである。
一方、ステップ520においてMU側ユニット31に送信されたランダム値(R)は、走行距離データ照合ロジックの内、MU側ユニット31の制御フローを示すフローチャート図である図7の各ステップにより処理されてMU側照合値が演算される。
即ち、ステップ600でMU側ユニット31はPCM側ユニット21から送信されたランダム値(R)を受信し、ステップ605に進む。
ステップ605では、MU側ユニット31の記憶部35に予め記憶されていた走行距離データ(Cm−1)とステップ600で受信したランダム値(R)とを用い、演算手段37にて照合用アルゴリズム(Cm=F(Cm−1,R))によりMU側照合値(Cm)を生成する。
これは例えば、上で説明した例に倣えば、ステップ600で受信したランダム値(R)は5であり、MU側ユニット31の記憶部35に予め記憶されていた走行距離データ(Cm−1)が6,000kmの場合、これらを乗じた30,000がMU側照合値(Cm)として生成されるものである。
なお、PCM側ユニット21の記憶部25とMU側ユニット31の記憶部35とに記憶されていた走行距離データ(Cm−1)は、今回のイグニッションキースイッチON操作時の走行距離データではなく、今回より1回前のイグニッションキースイッチON操作時の走行距離データである。また、PCM側ユニット21の記憶部25に記憶されていた走行距離データ(Cm−1)と、MU側ユニット31の記憶部35に予め記憶されていた走行距離データ(Cm−1)とは、PCM側ユニット21若しくはMU側ユニット31が別のユニットに交換されない限り等しい。これらについては、図8、図9を用いた走行距離データ移動ロジック、及び走行距離データ変換ロジックの説明で明らかにされる。
さて、ステップ605で生成されたMU側照合値(Cm)は、ステップ610に進んでMU側ユニット31からPCM側ユニット21に送信される。
そしてここで再度、図6に戻り、ステップ530においてPCM側ユニット21はMU側ユニット31からMU側照合値(Cm)を受信し、ステップ535に進む。
ステップ535は、PCM側ユニット21の比較手段29において、先に演算していたPCM側照合値(Cp)と、MU側ユニット31から受信したMU側照合値(Cm)とを比較し、一致、又は不一致を判断する判断ブロックである。
ステップ535では、PCM側照合値(Cp)とMU側照合値(Cm)とが一致した場合、ステップ550に進むと同時に走行距離データ移動ロジック、及び走行距離データ変換ロジックに進み、不一致の場合ステップ540に進む。
ステップ540は、エンジン始動を不許可とするもので、エンジンスタータ39は起動しない。
このステップ540に進むのは、車両のエンジン制御装置1、若しくはPCM側ユニット21が不当に取り替えられた場合である。即ち、このような場合はPCM側ユニット21の記憶部25に記憶されていた走行距離データ(Cm−1)が別の値となるため、PCM側照合値(Cp)とMU側照合値(Cm)とは不一致となってエンジン始動は不許可とされる。
一方、ステップ550では、PCM側ユニット21がエンジン始動許可信号を生成し、エンジンスタータ39の起動が実行される。
また、ステップ345で生成されるエンジン始動許可信号は、走行距離データ移動ロジック、及び走行距離データ変換ロジックの実行を開始するためのトリガとしてMU側ユニット31に送信される。
続いて、走行距離データ移動ロジック、及び走行距離データ変換ロジックについて、それらのフローチャート図である図8、図9を用いて説明する。
図8のステップ700において、MU側ユニット31はステップ550で生成されるエンジン始動許可信号を受信して以下の処理の実行を開始しステップ405に進む。
ステップ705は、イグニッションキースイッチONした現在のMU側ユニット31の走行距離データ(O)と、これより1回前にイグニッションキースイッチONした時のMU側ユニット31の走行距離データ(Om−1)とについて、条件αとして(O)>(Om−1)が成立するかどうかを判断するステップである。
この走行距離データ(Om−1)は、現時点のイグニッションキースイッチON時よりも1回前のイグニッションキースイッチON時点の走行距離データであると共に、先にステップ525で説明した、PCM側照合値(Cp)を演算するためにPCM側ユニット21に送信され、PCM側ユニット21の記憶部25に記憶される走行距離データ(Cm−1)の元データである。
ステップ705では、通常の自動車の使用であれば1回前のイグニッションキースイッチONの後、ある距離を走行した後イグニッションキースイッチOFFされ、そして今回、イグニッションキースイッチONに至るので、条件αは成立し、ステップ710へ進む。
しかし、例えば1回前のイグニッションキースイッチONでエンジンは起動したが運転者の都合で走行しないような場合もあり得る。このような場合、条件αは不成立となり、以後の処理は行われず、ステップ725に進んで終了する。但し、この場合、エンジン停止に至ることは無い。
条件αが成立し、ステップ710へ進むと、MU側ユニット31では走行距離データ変換ロジックにより走行距離データ変換処理が実行される。このステップ710における走行距離データ変換ロジックは、ステップ600においてPCM側ユニットから受信したランダム値(R)と、走行距離データ変換アルゴリズム(Ov=F(O,R))とを使って、今回イグニッションキースイッチONした時のMU側ユニット31の走行距離データ(Ov)を演算手段37にて生成する。ここで、走行距離データ(O)は、今回のイグニッションキースイッチON時のMU側ユニット31の走行距離データである。
そして、ステップ715に進むと、生成した走行距離データ(Ov)はPCM側ユニット21に送信されると同時に、MU側ユニット31にて次の処理を実行すべくステップ720に進む。
ステップ720では、再び走行距離移動ロジックに戻り、MU側ユニット31の走行距離データのメモリシフト処理が実行される。即ち、今回イグニッションキースイッチONした時のMU側ユニット31の走行距離データ(O)を、新たに1回前にイグニッションキースイッチONした時のMU側ユニット31の走行距離データ(Cm−1)と書き換える。この新たに書き換えられた走行距離データ(Om−1)は、記憶部35に記憶され、ステップ725に進んで終了される。
なお、新たに書き換えられて記憶部35に記憶された走行距離データ(Cm−1)は、次回のイグニッションキースイッチON時におけるステップ330の照合用アルゴリズム(Cm=F(Cm−1,R))の走行距離データとして用いられる。
一方、ステップ715にてMU側ユニット31から送信された走行距離データ(Ov)は、図8に示すステップ800にてPCM側ユニット21に受信され、次ステップ805に進む。
ステップ805では、PCM側ユニット21の演算手段27にて、走行距離変換ロジックにより走行距離データ復元処理が実行される。走行距離データ復元処理とは、MU側ユニット31から送信された走行距離データ(Ov)と、ステップ310で生成したランダム値(R)とを用いた走行距離データ復元アルゴリズム(Om−1=F(Ov,R))を使って走行距離データ(Om−1)を演算する処理である。即ち、この演算された走行距離データ(Om−1)は、元々、ステップ410にて今回のイグニッションキースイッチONした時の走行距離データである(O)とランダム値(R)を用いた走行距離データ変換アルゴリズム(Ov=F(O,R))により演算された走行距離データ(Ov)を用い、これが逆算されるものであるから、現時点のイグニッションキースイッチON時の走行距離データ(O)と等しい。しかし、次回のイグニッションキースイッチON時には、1回前の走行距離データとなるため、予め、1回前のイグニッションキースイッチON時の走行距離データ(Om−1)として演算しておくものである。
走行距離データ復元アルゴリズム(Om−1=F(Ov,R))を使って走行距離データ(Om−1)が演算されると、走行距離変換ロジックの一部であるステップ810に進む。ステップ810では、PCM側ユニット21の記憶部25に、走行距離データ(Om−1)を新たな走行距離データ(Cm−1)として記憶する。この新たな走行距離データ(Cm−1)は、次回のイグニッションキースイッチON時におけるステップ525にて照合値(Cp)を生成するために用いられる。
新たな走行距離データ(Cm−1)が記憶部25に記憶されると、ステップ815に進んで終了する。
以上、別の実施の形態について説明した。これは、先に説明した実施の形態、即ち、照合値(Cp)及び照合値(Cm)のデータを演算するために、イグニッションキースイッチON操作を行った現時点よりも2回前のイグニッションキースイッチON時の走行距離データを用いる場合よりも簡略化されている。しかしながら、セキュリティ性の向上の観点からすると略同等の効果を有している。
なお、以上2つの実施の形態において、記憶手段は、イグニッションキースイッチのON時にメータ側記憶部と、エンジン制御ユニット側記憶部とに走行距離データがそれぞれ記憶されるようにしている。これは、電源の安定性が確保されるため、確実な作動が行われるために好ましい。
以上、本発明を実施するための最良の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、イグニッションキースイッチOFF時に記憶させるようにしても良い。但し、この場合、別にメモリー用バッテリを備えたり、ディレイ回路を設けて記憶する前に電源が遮断されたりしないようにする。そして、過去に記憶した走行距離データとは、1回前、或いは2回前のイグニッションキースイッチOFF時に記憶したものとすれば良い。