JP4161642B2 - スパッタ成膜方法及びマグネトロンスパッタ装置 - Google Patents

スパッタ成膜方法及びマグネトロンスパッタ装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は基板表面に薄膜を形成するスパッタ成膜方法及びマグネトロンスパッタ装置に係り、特に膜厚分布及び膜質分布が均一な薄膜を形成するとともに、ターゲットの材料の利用効率を向上させる成膜技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス板などの基板に薄膜を形成する手段として、従来からマグネトロンスパッタ装置が知られている(特開平5−295538号公報、特開2000−313956号公報等)。図10及び図11に従来のインライン型スパッタ装置の要部構成を示す。インライン型スパッタ装置は、チャンバー内においてキャリア80に保持した基板82を搬送手段(不図示)で移動させながら固定ターゲット84の前を通過させて基板表面に薄膜を形成する装置である。この種のインライン型スパッタ装置は、複数枚の基板82を連続して処理できることから、生産性が高く、例えば、液晶表示装置(LCD)用途等の大面積の基板82に成膜を行う手段として利用されている。
【0003】
スパッタリング時には、チャンバー内を排気して所定の低圧状態とした後にAr 等の放電ガス及び必要に応じてO2 等の反応ガスを導入する。その後、電源から放電用電力を供給すると、放電によってガスが電離しプラズマ86が発生し、ターゲット84の表面に形成された磁場によりプラズマ密度が高められる。プラズマ中の陽イオンは負電位のターゲット84に衝突(スパッタリング)し、ターゲット原子を叩き出す。このとき発生した原子(スパッタ粒子)が基板82に堆積して薄膜が形成される。なお、反応性スパッタリングの場合には、スパッタ粒子と反応ガスとが反応して酸化物や窒化物などの化合物の薄膜が基板82に形成される。
【0004】
ターゲット84の周囲には、ターゲット84上に覆いかぶさるような、スパッタ粒子の飛散範囲を制限する分布修正板88が配置されており、分布修正板88の取付状態を調整することによってスパッタ粒子の付着分布を適正化する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、スパッタ粒子は、基板82以外の場所にも付着して膜を形成する。すなわち、従来の装置で成膜を行うと、分布修正板88等のカソード周辺部材に大量のスパッタ粒子からなる膜が付着する。分布修正板88は主として膜厚の均一化に寄与する部材であるが、ターゲット84上に覆いかぶさっているため、分布修正板88に付着した膜が剥離落下してダストとなったり、ターゲット84から基板82への着膜率を下げる等の不具合を生みだす部材でもある。
【0006】
また、マグネトロンスパッタ装置は、ターゲット84表面に電子閉じ込め用の磁場を形成してプラズマ密度を高めることで成膜速度を高速化したものであるが、その構造上、ターゲット84が不均一にエロージョン(浸食)、つまりターゲット84の一部が局所的に深く削られてしまうため、ターゲット84の材料の利用効率が低く、更には、非エロージョン領域がダスト発生源となるという問題がある。
【0007】
ターゲットの材料の利用効率を高めるために、従来から様々な提案がなされているが(特開2000−355764号公報、特開平8−325726号公報等)、現状のスパッタ装置においては、主にダスト発生防止の観点から、ダストが急増する前に装置を停止し、分布修正板88等のカソード周辺部材のクリーニングを行うとともに、新品ターゲット84への交換を行い、ダストを抑制している。つまり、装置のランニングタイムを制限しているのはターゲットライフ(寿命)ではなく、上述のダスト発生であり、ダウンタイムを伴うクリーニング作業は、装置のランニングタイム延長の阻害要因となっている。
【0008】
更にまた、図10及び図11に示した従来のスパッタ装置においては、プラズマが基板上に拡散し、基板82面内において中央部分と周囲部分とで光学性能が異なる不均一な膜が形成されるという問題がある。
【0009】
これは以下のような不均一化のメカニズムが考えられる。基板82(ガラス基板)と、これを保持しているキャリア80とのポテンシャルの経時変化を比較すると、金属製のキャリア80は基板82に比べて表面積が大きいことから静電容量が大きく、非常にゆっくりとフローティングポテンシャルに近づく。これに対し、ガラス製の基板82は静電容量が小さく、直ぐにフローティングポテンシャルに落ち着く。したがって、キャリア80と基板82とを比較すると、キャリア80の方がグランドに近く、キャリア80のメタル部では基板82中央部よりも相対的にポテンシャルが高くなる。これにより、キャリア80に電子が入射しやすくなり、基板82の周囲部でプラズマ86は吸収され、基板82の周囲部におけるプラズマ密度が小さくなると考えられる。
【0010】
すなわち、図12に示したように、各基板82の中央部82Aはプラズマ密度が大きく、キャリア80のメタル部に近い周囲部82Bではプラズマ密度が小さくなる。
【0011】
基板82の周囲部82Bでプラズマ密度が小さくなることにより、基板82での反応ガスの取り込み量が減少し、膜の組成が不均一になる。例えば、LCD用ブラックマトリックス用途の低反射クロム膜の生産において、反応性スパッタにより酸窒化クロム(Cr Ox Ny )膜を形成する場合においては、O2 の取り込み量が減り、膜の屈折率nが増加する。
【0012】
膜の光学的性質は、物理的膜厚dと屈折率nの積(n×d)で評価できるため、上述したメカニズムによって膜厚分布及び/又は膜質(屈折率)分布が不均一になることで、光学的に不均一な膜が形成されると考えられる。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、分布修正板等のカソード周辺部材及びターゲットの非エロージョン領域を発生源とするダストを抑制し、装置のランニングタイムの延長を達成できるとともに、膜厚分布及び膜質分布が均一な薄膜を形成することができるスパッタ成膜方法及びマグネトロンスパッタ装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するために、ターゲットの表面に磁場を形成してプラズマ密度を高め、プラズマ中の陽イオンが前記ターゲットをスパッタリングすることによって発生したターゲット原子を基板に堆積させ、基板上に薄膜を形成するスパッタ成膜方法において、ターゲット面に対して基板側に、磁束密度の垂直成分がゼロとなる位置が、ターゲットから垂直方向に離れるに従いターゲットの中心部から外側に広がる磁力線形状を有する磁場を形成し、前記ターゲット表面の中心部近傍において磁束密度の水平成分がゼロとなる位置における磁束密度の垂直成分の絶対値B1と、前記ターゲット表面の外縁部近傍において磁束密度の垂直成分の絶対値の最大値B2との比(B1/B2)が2.5以上となる前記磁力線形状を有する磁場によって前記基板側へのプラズマの拡散を抑制することにより膜厚分布及び膜質分布の均一化を図ることを特徴としている。
【0015】
すなわち、本発明は、マグネトロンスパッタリング法によって成膜される膜の膜厚分布及び/又は膜質分布が不均一となる原因である基板方向へのプラズマの拡散を抑制するために、マグネトロン磁場の磁力線形状を、発散型の磁力線形状、つまりターゲット面に対して基板側に、磁束密度の垂直成分がゼロとなる位置が、ターゲットから垂直方向に離れるに従いターゲットの中心部から外側に広がる磁力線形状とした特徴としている。この磁場によって、プラズマをターゲット表面に比較的近い領域に閉じ込め、基板側への拡散を抑制するとともに、ターゲット上に比較的広いエロージョン領域を形成する。これにより、分布修正板等がなくても膜厚分布及び膜質分布が均一な薄膜を得ることができ、従来必要とされていた分布修正板等のカソード周辺部材をチャンバー内から撤去できる。したがって、カソード周辺部材に付着するスパッタ粒子からなる膜に起因するダストの発生や着膜率の低下等の問題を回避でき、製品歩留りや生産性の向上を図ることができる。
【0016】
また、本発明は前記目的を達成するために、ターゲットの表面に磁場を形成してプラズマ密度を高め、プラズマ中の陽イオンが前記ターゲットをスパッタリングすることによって発生したターゲット原子を基板に堆積させ、基板上に薄膜を形成するマグネトロンスパッタ装置において、前記ターゲットの裏面側に配置され、ターゲット面に対して基板側に、磁束密度の垂直成分がゼロとなる位置が、ターゲットから垂直方向に離れるに従いターゲットの中心部から外側に広がり、かつ前記ターゲット表面の中心部近傍において磁束密度の水平成分がゼロとなる位置における磁束密度の垂直成分の絶対値B1と、前記ターゲット表面の外縁部近傍において磁束密度の垂直成分の絶対値の最大値B2との比(B1/B2)が2.5以上となる磁力線形状を有する磁場を形成する磁場形成手段を備え、該磁力線形状を有する磁場によって前記基板側へのプラズマの拡散を抑制することにより膜厚分布及び膜質分布の均一化が図られることを特徴としている。
【0018】
また、本発明における前記磁場形成手段は、前記ターゲットの中心部に対応する位置に配置された第1の磁石と、前記ターゲットの外縁部に配置された第2の磁石と、1個以上の補助磁石とを有し、これら各磁石によって前記ターゲット表面の近傍にターゲット表面と略平行な平行磁場を形成していることが好ましい。
【0019】
すなわち、少なくとも1つの補助磁石を含む全ての磁石によってターゲット表面近傍の磁力線形状をターゲット表面と略平行に形成することで、ターゲットの中心部からターゲットの外縁部にわたる広い範囲にエロージョン領域を形成でき、ターゲットの材料の利用効率を高めることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係るスパッタ成膜方法及びマグネトロンスパッタ装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0021】
図1は本発明の実施形態に係るマグネトロンスパッタ装置に適用される磁気回路の直線部分(長手方向)の構成を示す要部平面図であり、図2は図1に示した磁気回路の直線部分(長手方向)の概略断面図(図1の2−2線に沿う断面図)である。
【0022】
これらの図面に示したように、本例の磁気回路10は、インライン型スパッタ装置のカソード部に適用される磁気回路であり、カソードの長手方向に沿う中心線CL1 並びにこれと直交する幅方向に沿う中心線CL2 に対してそれぞれ対称な形状を有している。
【0023】
磁気回路10には、長手方向の中心線CL1 に沿ってその中心部に第1の磁石として中央磁石12が配設され、磁気回路10の外周部に第2の磁石として外周磁石14が配設されている。また、中央磁石12の近傍には、図示せぬスペーサを介して中央磁石12と平行に補助磁石(以下、内側補助磁石という。)16、16が配置され、外周磁石14の近傍においては、図示せぬスペーサを介して外周磁石14と平行に補助磁石(以下、外側補助磁石という。)18が配置されている。本例では、各磁石(12〜18)に永久磁石を用いるが、永久磁石に代えて電磁石を適用してもよい。永久磁石を用いると、電磁石を使用する際の電力が不要になり、またコイルの経時劣化もなく、長期安定性に優れる。
【0024】
図2に示したように、中央磁石12は、S極を上側にした状態で磁性体ヨーク20上に固定される。外周磁石14はN極を上側にした状態で磁性体ヨーク20上に固定される。内側補助磁石16は、中央磁石12側をS極とする横倒状態で非磁性体補助ヨーク22上に固定される。外側補助磁石18はS極を上側にした状態で非磁性体補助ヨーク24上に固定される。非磁性体補助ヨーク22、24は図示せぬボルトを用いて磁性体ヨーク20に固定されている。
【0025】
磁性体ヨーク20は、例えば、SUS430で作製され、非磁性体補助ヨーク22、24にはアルミで作製されるが、ヨーク材料はこれに限定されない。
【0026】
上記構成からなる磁気回路10の上には、バッキングプレート40を介して矩形状のターゲット42が取り付けられる。こうして、基板50に面するターゲット42表面上にマグネトロン磁場が形成される。基板50とターゲット42との間の距離は50〜200mmとする。
【0027】
本例の磁気回路10では、中央磁石12の磁束密度の垂直成分の絶対値を外周磁石14の磁束密度の垂直成分の絶対値よりも相対的に大きくするように設計されている。なお、「垂直成分」とは、ターゲット42面に対して垂直となる成分を意味する。
【0028】
実験によれば、膜厚分布及び膜質分布の均一化を達成するためには、ターゲット42面に対して基板側に、磁束密度の垂直成分がゼロとなる位置が、ターゲット42から垂直方向に離れるに従いターゲット42の中心部42aから外側に広がる磁力線形状を有する磁場を形成すること、特に、ターゲット42の中心部42a近傍において磁束密度の水平成分がゼロとなる位置における磁束密度の垂直成分の絶対値B1 と、ターゲット42の外縁部42b近傍において磁束密度の垂直成分の絶対値の最大値B2 の比(B1 /B2 )が2.5以上、より好ましくは3以上となるように設計されることが好ましい。ただし、ターゲット42のごく表面(例えば10mm以内の空間)については、磁束密度の垂直成分がゼロとなる位置が複数存在するため、この領域は除外される。ここで「近傍」とは、ターゲット幅の10%以内の範囲をいう。
【0029】
図3は、図1及び図2で示したような磁気回路10を有する場合におけるターゲット42と基板50の間に形成される磁場のターゲット42の幅方向における磁力線形状を示す図である。図3において、横軸はターゲット42の幅方向の中心からの距離を示し、縦軸はターゲット42表面から基板50方向への距離(ターゲット42表面からの高さ)を示す。なお、同図では、ターゲット幅=127mmの例が示されているが、本発明の実施に際してターゲット42のサイズはこの例に限定されない。
【0030】
図3に示したように、ターゲット42と基板50の間に形成される磁場は、ターゲット42面に対して基板側に、磁束密度の垂直成分がゼロとなる位置が、ターゲット42から垂直方向に離れるに従いターゲット42の中心部42aから外側に広がる磁力線形状を有する磁場となっており、ターゲット42中心から外縁部42bにわたって磁気トンネルを形成する。
【0031】
ターゲット42表面付近においては、特開平5−44029号公報に開示されているとおり、磁力線がターゲット42の表面と略平行になるような領域が形成されることが好ましい。かかる平行磁場領域がターゲット42の幅方向について比較的広い範囲で形成されることによって、ターゲット42のエロージョン領域が広がり、ターゲット42の材料の利用効率が高められている。なお、このような磁力線の形状は主として補助磁石(16、18)の作用によってもたらされる。
【0032】
ターゲット42表面からの距離が遠ざかるにつれて、磁力線は次第に大きく膨らみ、磁束密度の垂直成分がゼロとなる位置はターゲット42の中心部42aから外側に移動していく。こうして、磁力線は次第に発散し、全体的に偏平でターゲット42の中心部42aから外側寄りに偏ったトンネル形状を形成する。
【0033】
図4に、図1及び図2で示したような磁気回路10を有する場合における磁束密度の垂直成分がゼロとなる位置をターゲット42の中心から幅方向にプロットしたものを示す。同図によれば、ターゲット42から垂直方向にある程度離れた空間(例えば、10mm以上離れた空間)については、ターゲット42から垂直方向に離れるにしたがって磁束密度の垂直成分がゼロとなる位置が、ターゲット42の外側に広がっていく様子が示されている。
【0034】
図5は図1及び図2で示したような磁気回路10を有する場合におけるターゲット42表面上での磁束密度の水平成分(ターゲット42面に対して水平となる成分)の分布を示すグラフであり、図6はターゲット42表面上での磁束密度の垂直成分(ターゲット42面に対して垂直となる成分)の分布を示すグラフである。
【0035】
図5及び図6によれば、ターゲット42表面上においてターゲット中心部42a近傍の磁束密度の水平成分がゼロとなる位置(図5ではターゲット42中心からの距離がゼロ、つまりターゲット42の真中心の位置)における磁束密度の垂直成分の絶対値(B1 )は0.06T、ターゲット42表面上においてターゲット外縁部42bの磁束密度の垂直成分の絶対値の最大値(B2 )は0.02T(ターゲット42中心からの距離が約65mmの位置)となり、B1 /B2 =3.0となるため、膜厚分布及び膜質分布の均一化が達成される。
【0036】
図7は、本実施形態における磁力線形状とプラズマの発生状況を示した模式図である。図7に示したように、本実施形態では、チャンバー52内に図11に示されたターゲット84上に覆いかぶさるような分布修正板88は設置されておらず、ターゲット42の裏面に配置された磁気回路10によってターゲット42表面には、図3乃至図6で説明したとおり、発散型のマグネトロン磁場が形成される。発散した磁力線(ターゲット42に入射しない磁力線)は、ターゲット42の外側に広がってチャンバー52の壁面(グランド)に吸収される。
【0037】
図示せぬ放電用電源からカソードに放電電力が供給されることにより、ターゲット42とチャンバー52壁の間で放電が維持され、プラズマ54が発生する。放電によって発生したプラズマ54は、磁場の作用によって、図7に示すように、ターゲット42表面の比較的近い領域に閉じ込められる。図7において、符号aで示した領域がプラズマ密度の最も濃い領域であり、以下、a>b>cの順でプラズマ密度が次第に薄くなっている。すなわち、本実施の形態(図7)においては、発散型の磁力線形状によってプラズマ54がターゲット42表面に比較的近い領域に閉じ込められる。
【0038】
このような構成のスパッタ装置によれば、成膜される膜の膜厚分布及び膜質分布の均一化を達成でき、従来必要とされていたターゲット上に覆いかぶさるような分布修正板88等のカソード周辺部材を省略できる。
【0039】
本実施形態におけるスパッタ装置を用いることにより、膜厚分布及び膜質分布が均一な膜を形成することができる。膜厚分布及び膜質分布はボトム波長によって均一かどうかを調べることができる。「ボトム波長」とは、膜厚分布又は膜質分布の何れかが不均一となったとき、最小の反射率を有する波長が変化することを応用したものであり、ボトム波長が膜全面にわたって40nm以内であることが好ましく、20nm以内であることが特に好ましい。
【0040】
〔実施例〕
図1乃至図7で説明した発散型の磁力線形状を有する磁気回路(長さ1258mm×幅127mm)を作製し、分布修正板88を具備していないインライン型スパッタ装置に設置して金属製のキャリアを用いて成膜を実施した。
【0041】
スパッタガスとしては、O2 ,N2 ,Ar を導入し、無アルカリガラスからなる基板(長さ550mm×横650mmを2枚並べたもの)へ酸窒化クロム膜(屈折率n=2.4,消衰係数k=0.5 at 600nm)を300nm成膜した。この場合のターゲットには、Cr ターゲットを用いた。
【0042】
形成された膜について、触針型膜厚計(Sloan 社製 Surface Profile measuring System Dektak 3030)により長さ方向の膜厚分布を評価したところ、図8に示すように全域にわたって均一な分布が得られた。
【0043】
次に、上記同様に酸窒化クロム膜を50nm成膜した後、直ちに別のターゲットを用いて酸窒化クロム膜上にクロム膜を110nm成膜し、ガラス面側(成膜面と反対側の面側)から分光測色計(ミノルタカメラ社製型式CM-2002 )を用いて分光反射率の極小値をもつ波長(ボトム波長)の分布を調べたところ、ボトム波長は膜全面にわたって15nmであった。これは、膜厚分布及び膜質分布が基板全面にわたって均一な分布となっていることを示している。
【0044】
図9に、本実施形態に用いたターゲット42の幅方向におけるエロージョン断面形状を示す。横軸はターゲット中心からの距離(左側が−方向、右側が+方向)を示し、縦軸は規格化されたエロージョン量を示す。同図に示したように、ターゲット42の幅方向について比較的広い範囲でエロージョンされ、材料の利用効率は約40%であり、高い利用効率であった。
【0045】
上述の実施形態では、ターゲット材料としてCr を例示したが、本発明の実施に際してターゲット材料はこの例に限定されるものではなく、生成する膜の種類に応じて適宜選択される。例えば、Ti、Al、Cu、Ag、Mo、Ta、Si等の金属、ITO、SnO2 、In2 3 、ZnO、Ga添加ZnO、Al添加ZnO、SiO2 、SiNx 等の酸化物あるいは窒化物、Fe、Co、Ni等の強磁性金属、及びFe−Co、Co−Ni、Fe−Co−Ni、Fe−Cu、Co−Cu、Co−Au、Co−Pt、Mn−Bi、Mn−Al、Fe−Cr、Co−Cr、Ni−Cr、Fe−Co−Cr、Co−Ni−Cr、Fe−Co−Ni−Cr等の強磁性合金等の磁性材料等を挙げることができる。
【0046】
上述のように、本発明を適用した発散型の磁力線形状により、図7のとおりプラズマ54をターゲット42の表面の比較的近い領域に閉じ込めることができ、従来の分布修正板88等を用いることなく、膜厚分布及び膜質分布の均一化を達成できる。したがって、カソード周辺部材のクリーニング作業等が不要になり、生産性の向上を達成できる。また、本実施形態によれば、ターゲット42の非エロージョン領域を減らして、材料の利用効率を高めることができるとともに、非エロージョン領域を発生源とするダストを抑制することができる。
【0047】
また、上述の実施形態では、インライン型スパッタ装置への適用例を述べたが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、枚葉式スパッタ装置、カルーセル型スパッタ装置など様々な方式のマグネトロンスパッタ装置に適用可能である。特に大面積のLCD用ガラス基板への成膜に好適である。更にまた、上述の実施形態では矩形状の平板ターゲットを例示したが、本発明の実施に際しては、ターゲットの形状は特に限定されず、平面形状が多角形や円形のもの、あるいはターゲット面に傾斜や凹凸のあるものなどについても本発明を応用できる。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ターゲット面に対して基板側に、磁束密度の垂直成分がゼロとなる位置が、ターゲットから垂直方向に離れるに従いターゲットの中心部から外側に広がる磁力線形状を有するマグネトロン磁場を形成したことによって、基板方向へのプラズマの拡散を抑制でき、従来の分布修正板等のカソード周辺部材を用いることなく、膜厚分布や膜質分布の均一化を達成できる。これにより、チャンバー内から分布修正板等のカソード周辺部材を撤去した装置構成が実現され、カソード周辺部材に付着する膜に起因するダストの発生や着膜率の低下等の問題を解消できるとともに、装置のランニングタイムを大幅に延長することができ、製品歩留りや生産性の向上を達成できる。
【0049】
更にまた、前記磁力線形状の磁場によって比較的広いエロージョン領域を形成することによって、ターゲットの材料の利用効率を高めることができるとともに、非エロージョン領域に起因するダストの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るマグネトロンスパッタ装置に適用される磁気回路の直線部分(長手方向)の構成を示す要部平面図
【図2】図1の2−2線に沿う概略断面図
【図3】ターゲットと基板の間に形成される磁場の磁力線形状を示す図
【図4】図3に示した磁場において磁束密度の垂直成分がゼロとなる位置をターゲットの中心から幅方向にプロットした図
【図5】ターゲット表面上での磁束密度の分布(水平方向)を示す図
【図6】ターゲット表面上での磁束密度の分布(垂直方向)を示す図
【図7】本実施形態における磁力線形状とプラズマの発生状況を示した模式図
【図8】実施例により成膜された膜の膜厚分布の測定結果を示す図
【図9】ターゲットの幅方向におけるエロージョン断面形状を示す図
【図10】従来のインライン型スパッタ装置の要部構成を示す平面図
【図11】図10に示したスパッタ装置の要部断面図
【図12】膜厚分布及び/又は膜質分布が不均一となる原因を説明するために用いた説明図
【符号の説明】
10…磁気回路、12…中央磁石、14…外周磁石、16…内側補助磁石、18…外側補助磁石、20…磁性体ヨーク、22,24…非磁性体補助ヨーク、40…バッキングプレート、42…ターゲット、42a…中心部、42b…外縁部、50…基板、52…チャンバー、54…プラズマ、80…キャリア、82…基板、82A…中央部、82B…周囲部、84…ターゲット、86…プラズマ、88…分布修正板

Claims (3)

  1. ターゲットの表面に磁場を形成してプラズマ密度を高め、プラズマ中の陽イオンが前記ターゲットをスパッタリングすることによって発生したターゲット原子を基板に堆積させ、基板上に薄膜を形成するスパッタ成膜方法において、
    ターゲット面に対して基板側に、磁束密度の垂直成分がゼロとなる位置が、ターゲットから垂直方向に離れるに従いターゲットの中心部から外側に広がる磁力線形状を有する磁場を形成し、
    前記ターゲット表面の中心部近傍において磁束密度の水平成分がゼロとなる位置における磁束密度の垂直成分の絶対値B1と、前記ターゲット表面の外縁部近傍において磁束密度の垂直成分の絶対値の最大値B2との比(B1/B2)が2.5以上となる前記磁力線形状を有する磁場によって前記基板側へのプラズマの拡散を抑制することにより膜厚分布及び膜質分布の均一化を図ることを特徴とするスパッタ成膜方法。
  2. ターゲットの表面に磁場を形成してプラズマ密度を高め、プラズマ中の陽イオンが前記ターゲットをスパッタリングすることによって発生したターゲット原子を基板に堆積させ、基板上に薄膜を形成するマグネトロンスパッタ装置において、 前記ターゲットの裏面側に配置され、ターゲット面に対して基板側に、磁束密度の垂直成分がゼロとなる位置が、ターゲットから垂直方向に離れるに従いターゲットの中心部から外側に広がり、かつ前記ターゲット表面の中心部近傍において磁束密度の水平成分がゼロとなる位置における磁束密度の垂直成分の絶対値B1と、前記ターゲット表面の外縁部近傍において磁束密度の垂直成分の絶対値の最大値B2との比(B1/B2)が2.5以上となる磁力線形状を有する磁場を形成する磁場形成手段を備え、
    該磁力線形状を有する磁場によって前記基板側へのプラズマの拡散を抑制することにより膜厚分布及び膜質分布の均一化が図られることを特徴とするマグネトロンスパッタ装置。
  3. 前記磁場形成手段は、前記ターゲットの中心部に対応する位置に配置された第1の磁石と、前記ターゲットの外縁部に配置された第2の磁石と、1個以上の補助磁石とを有し、これら各磁石によって前記ターゲット表面の近傍にターゲット表面と略平行な平行磁場を形成していることを特徴とする請求項2記載のマグネトロンスパッタ装置。
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