JP4161581B2 - 摩擦撹拌接合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、摩擦撹拌接合方法に関し、特に接合部表面に酸化膜層、異種金属層、塗料層等の表皮層が形成されている被接合材の摩擦撹拌接合に適用して好適な摩擦撹拌接合方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム素材をTIG溶接、MIG溶接等によって溶融溶接する場合、溶接部の表面に酸化膜層、異種金属層、塗料層等の溶接に不適な表皮層が存在すると、溶接部内にブローホールが発生したり、異物が巻き込まれて接合強度および耐食性を低下させるため、溶接部の表皮層を除去して溶接している。例えば、亜鉛精錬に使用された陰極板を溶接する場合、表面に残存するZn層が溶接熱で蒸発して溶接部内に混入すると溶接不良が発生するので、予め機械加工によって表面のZn層を除去している。
【0003】
TIG溶接、MIG溶接等の溶融溶接の代わりに固相接合によってアルミニウム合金からなる2つの金属材料(被接合材)を接合する摩擦撹拌接合(Friction Stir Welding )は、溶融溶接に比べて被接合材の表面の清浄度が多少低くても接合できることが知られており、例えば表面に油等が付着していても接合できる。
【0004】
摩擦撹拌接合方法は、摩擦熱を利用して被接合材の接合部を互いに突き合わせるかまたは重ね合わせて接合する方法であって、図5および図6を用いて2つの被接合材を突き合わせ接合する場合について説明する。この摩擦撹拌接合方法は被接合材1,2よりも硬質で耐熱性に優れた材料からなる摩擦撹拌ツール3を高速回転させ、その先端に一体に突設した撹拌ピン4を被接合材1,2の接合面6に沿って押し込み、ツール3を接合面6に沿って矢印A方向に移動させることにより、接合部5に摩擦熱を発生させる。この摩擦熱により2つの被接合材1,2の接合面6付近のメタルMは塑性化可能な状態にまで軟化され、撹拌ピン4の高速回転による撹拌作用により撹拌・流動した後、撹拌ピン4の通過により加熱源を失って冷却・固化することにより、接合部5を固相接合するものである。この場合、摩擦撹拌ツール3を進行方向と反対方向に角度α(前進角α:3〜5°)だけ傾斜させることで摩擦撹拌ツール3の前方のメタルを摩擦撹拌ツール3のメタル溜めに導入し、撹拌ピン4が通過した部分への供給を可能にしている。このため、摩擦撹拌ツール3は通常ツール本体3Aの移動方向前端縁8が接合部5の表面より上方に位置する状態に保持されて移動し接合部5を摩擦撹拌接合する。なお、ここでは前進角αをもって傾斜させた状態で使用される摩擦撹拌ツール3を傾斜ツールと称する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の傾斜ツール3を用いた摩擦撹拌接合方法では、被接合材1,2の表面にアルマイト、塗装またはZn層等の表皮層7がある場合、この表皮層7はツール本体3Aの下面9側において撹拌ピン4によって剥ぎ取られるため可塑化したメタルM内に巻き込まれて撹拌されると接合部5に異物が混入するため耐食性および接合強度を低下させるという問題があった。そこで、摩擦撹拌接合する場合は被接合材1,2の表面を覆っている表皮層7を溶融溶接の場合と同様に予め機械加工によって除去する必要があった。このため、作業工程が1工程増え、その作業が煩わしいばかりか製造コストが高くなるという問題があった。
【0006】
摩擦撹拌接合に不適な表皮層7が接合部5に巻き込まれないようにするための対策の1つとしては、図6に二点鎖線で示すように摩擦撹拌ツール3の接合部5への押し込み量を増大させてツールの移動方向前端縁8を接合部5に押し込むことが考えられる。このようにすると、摩擦撹拌ツール3の移動方向前端縁8によって表皮層7を剥ぎ取ることができるため、前工程として機械加工によって表皮層7を除去する必要はなくなる。しかし、この場合は摩擦撹拌ツール3のメタル溜めにメタルを取り込むことができず表面欠陥を生じ、また押し込み量の増加によって接合部5の板厚がT1 からT2 に減少するため、接合部5の接合強度も低下するという問題が起きる。例えば、板厚が6mmの場合では接合部5の厚さが1mm程度減少してしまう。
【0007】
また、最近では接合部に略垂直に挿入して摩擦撹拌接合するようにした摩擦撹拌ツールが開発されている。この摩擦撹拌ツール20は、図7および図8に示すように柱状のツール本体20Aと、このツール本体20Aの平坦な底面21の中央に一体に突設された撹拌ピン20Bと、この撹拌ピン20Bを取り囲むように前記底面21に一体に突設された渦巻き状の撹拌用突条体20Cとで構成することにより、ここではスクロールツールと称する。スクロールツールは、接合部5に前記撹拌ピン20Bと撹拌用突条体20Cが略垂直(前進角α=0°)に挿入され、高速回転されつつ接合面に沿って移動されることにより接合部5を摩擦撹拌接合するものである。
【0008】
このようなスクロールツール20によれば、前進角(α)が零であるため、スクロールツール20の前方の接合部5の表面を覆っている例えばZnからなる接合に不適な表皮層7を前記撹拌用突条体20Cによって剥ぎ取ることができる。しかし、ツール本体20の底面21で接合部前方の表皮層7を押圧しているため、底面21側において撹拌用突条体20Cにより剥ぎ取られた表皮層7の一部が底面21の外側にはじき出されずスクロールツール20の回転に伴い可塑化したメタルM内に巻き込まれる。このため、図5および図6に示した傾斜ツール3による摩擦撹拌接合と同様に接合部5に表面欠陥や内部欠陥等が生じ接合部5の外観、耐食性および接合強度を低下させる。
【0009】
このため、接合部の表皮層をツールの進行方向の前側において剥ぎ取って可塑化したメタル内に混入させず、接合部に表面欠陥や内部欠陥等が生じないようにすることにより接合部の外観、耐食性および接合強度を向上させることができるようにした摩擦撹拌接合方法およびそのツールの開発が要請されている。
【0010】
本発明は上記した従来の問題および要請に応えるべくなされたもので、その目的とするところは、接合部の表面を覆っている接合に不適な表皮層が接合部に混入するのを防止し、接合部の品質、外観、耐食性、強度等を向上させることができるようにした摩擦撹拌接合方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために第1の発明に係る摩擦撹拌接合方法は、接合部表面に酸化膜層、異種金属層、塗料層等の表皮層が形成されている被接合材の前記接合部に沿って摩擦撹拌ツールを回転させつつ移動させることにより前記接合部を摩擦撹拌接合する方法であって、前記摩擦撹拌ツールは、柱状のツール本体と、このツール本体の底面中央に突設された撹拌ピンと、この撹拌ピンの周囲を取り囲むように前記底面に渦巻き状に突設された撹拌用突条体とを備え、前記摩擦撹拌ツールは、前記撹拌ピンおよび撹拌用突条体を接合部内に前進角が零で挿入して前記ツール本体を前記接合部の表面を覆っている表皮層の厚み分だけ接合部の表面に押し込み、前記ツール本体の最外周面でツールの進行方向の前側の接合部表面を覆っている前記表皮層を剥ぎ取りながら前記接合部を摩擦撹拌接合するものである。
【0012】
第1の発明においては、接合部の表面を覆っている接合に不適な表皮層を摩擦撹拌ツールの最外周面で剥ぎ取るため、剥ぎ取られた層が可塑化したメタル内に巻き込まれることがない。
【0013】
第2の発明に係る摩擦撹拌接合方法は、接合部表面に酸化膜層、異種金属層、塗料層等の表皮層が形成されている被接合材の前記接合部に沿って摩擦撹拌ツールを回転させつつ移動させることにより前記接合部を摩擦撹拌接合する方法であって、前記摩擦撹拌ツールは、柱状のツール本体と、このツール本体の底面中央に突設された撹拌ピンと、この撹拌ピンの周囲を取り囲むように前記底面に渦巻き状に突設された撹拌用突条体および前記底面の外周に突設された剥離用突条体とを備え、前記剥離用突状体は、前記底面からの突出寸法が前記撹拌用突条体の突出寸法よりも短く、外周面が前記ツール本体の外周面とともに摩擦撹拌ツールの最外周面を形成し、前記摩擦撹拌ツールは、前記撹拌ピンおよび撹拌用突条体を接合部内に前進角が零で挿入して前記剥離用突条体を前記接合部の表面を覆っている表皮層の厚み分だけ接合部の表面に押し込み、前記剥離用突条体の外周面でツールの進行方向の前側の接合部表面を覆っている前記表皮層を剥ぎ取りながら前記接合部を摩擦撹拌接合するものである。
【0014】
第2の発明においては、接合部の表面を覆っている接合に不適な表皮層を剥離用突条体の外周面によって剥ぎ取るため、剥ぎ取られた表皮層がツール本体の底面側に入り込み可塑化したメタル内に巻き込まれることがない。
【0015】
第3の発明に係る摩擦撹拌接合方法は、接合部表面に酸化膜層、異種金属層、塗料層等の表皮層が形成されている被接合材の前記接合部に沿って摩擦撹拌ツールを回転させつつ移動させることにより前記接合部を摩擦撹拌接合する方法であって、前記摩擦撹拌ツールは、柱状のツール本体と、このツール本体の底面中央に突設された撹拌ピンと、この撹拌ピンの周囲を取り囲むように前記底面に渦巻き状に突設された撹拌用突条体とを備え、前記撹拌ピン、前記撹拌用突条体および前記ツール本体の下部を接合部内に前進角が零で挿入して前記底面で接合部表面を押圧し、前記ツール本体の前記接合部内に挿入されている下端部外周面でツールの進行方向の前側の接合部表面を覆っている前記表皮層を剥ぎ取りながら前記接合部を摩擦撹拌接合するものである。
【0016】
第3の発明においては、接合部の表面を覆っている接合に不適な表皮層をツール本体の下端部外周面によって剥ぎ取るため、剥ぎ取られた表皮層がツール本体の底面側に入り込み可塑化したメタル内に巻き込まれることがない。
【0017】
第4の発明に係る摩擦撹拌接合方法は、上記第1の発明において、摩擦撹拌ツールの最外周面の被接合材への押込量を0.05〜0.5mmとしたものである。
第5の発明に係る摩擦撹拌接合方法は、上記第2の発明において、ツール本体の剥離用突状体の外周面の被接合材への押込量を0.05〜0.5mmとしたものである。
第6の発明に係る摩擦撹拌接合方法は、上記第3の発明において、ツール本体の下端部外周面の被接合材への押込量を0.05〜0.5mmとしたものである。
【0018】
第4の発明においては、押込量が0.05〜0.5mmであるため、酸化膜層、異種金属層、塗料層等の接合に不適な表皮層を確実に剥ぎ取ることができる。押込量が0.05mm以下では表面層の摩擦撹拌ツールのメタル溜めへの導入を確実に防止することが困難となり、接合部への混入を生じさせやすくなる。押込量が0.5mm以上ではバリの発生が増え、また摩擦撹拌ツールの移動負荷が大きくなり、接合が困難となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は第1の発明に係る摩擦撹接合方法を示す平面図、図2は摩擦撹拌ツールの使用状態を示す断面図である。これらの図において、符号30,31で示すものはアルミニウム合金の押出形材によって矩形板状に形成された被接合材で、その長手方向の一端面が互いに突き合わされ、この突き合わせ側端縁とその付近が摩擦撹拌接合される接合部32を形成し、突き合わせ面が接合面32Aを形成している。また、被接合材30,31の表面には、厚さが0.1mm程度のZn層(表皮層)33が形成されている。一方、被接合材30,31の裏面側には、銅からなる裏当て34が接合部32に沿って密接されている。
【0020】
前記被接合材30,31の接合面32Aを摩擦撹拌接合するために用いられる摩擦撹拌ツール36は、被接合材30,31より融点が高い金属、例えば工具鋼等によって製作されたもので、円柱状のツール本体36Aと、このツール本体36Aの底面37の中央に一体に突設された撹拌ピン36Bと、同じく前記底面37に一体に突設され前記撹拌ピン36Bの周囲を取り囲み、撹拌ピン36Bに向かって求心する渦巻き状の撹拌用突条体36Cと、前記底面37の外周に一体に突設された剥離用突条体36Dとで構成されている。ツール本体36Aは円柱形に限らず四角柱、六角柱等の多角柱を含む。ツール本体36Aの底面37は平坦面に形成されている。撹拌ピン36Bは、被接合材30,31の板厚より短い長さを有し、その外周には撹拌効果を高めるために雄ねじ38が形成されている。撹拌ピン36Bは、ツール本体36Aと略軸線が一致するものに限らずツール本体36Aに対して若干偏心しているものであってもよい。撹拌用突条体36Cは、前記撹拌ピン36Bより低く形成されている。前記剥離用突条体36Dは前記撹拌用突条体36Cより低く形成されている。
【0021】
このような摩擦撹拌ツール36を用いて被接合材30,31の接合面32Aを摩擦撹拌接合するには、摩擦撹拌ツール36をモータによって500〜10000rpm程度の回転数で回転させながら撹拌ピン36Bを接合面32A上に位置させて接合部32表面に押し付け、摩擦熱によって接合部32の撹拌ピン36Bによって押し付けられている表面部分およびその近傍を加熱、可塑化させ、撹拌ピン36B、撹拌用突条体36Cおよび剥離用突条体36Dを接合部32内に徐々に押し込む。剥離用突条体36Dが接合部32の表面に押し込まれる量(押込量)は、Zn層33を確実に剥ぎ取ることができる量で、必要以上に押し込み量を大きくすると、被接合材の厚さが必要以上に薄くなり、また摩擦撹拌接合を円滑に行えなくなることがあるため好ましくない。また、摩擦撹拌ツール36は、底面37の全面が接合部32の表面を均一に押圧するように接合部32の表面に対して略垂直に押し込まれる。
【0022】
撹拌ピン36B、撹拌用突条体36Cおよび剥離用突条体36Dが接合部32内に所定量押し込まれると、この状態で摩擦撹拌ツール36を接合面32Aに沿って矢印A方向に8.5〜3m/min程度の送り速度(接合速度)で移動させることで、接合部32を摩擦撹拌接合する。すなわち、摩擦撹拌ツール36を高速回転させながら接合面32Aに沿って移動させると、接合面32Aとその近傍部は、撹拌ピン36Bおよび撹拌用突条体36Cによって加熱されることにより可塑化され、水平および垂直方向に流動化する。そして、流動化したメタルMは、撹拌ピン36Bが通過することにより加熱源を失って冷却し固化する。
【0023】
摩擦撹拌ツール36を矢印A方向に移動させると、剥離用突条体36Dは接合部32に押し込まれているので、ツール前方側のZn層33を外周面によって剥ぎ取る。剥離用突条体36Dの外周面は、ツール本体36Aの外周面とともに摩擦撹拌ツール36の最外周面を形成している。剥ぎ取られたZn層33は、ツール本体36Aの底面37が前記剥離用突条体36Dより内側に位置しているため、剥離用突条体36Dの下方を通って底面37の下側に入り込むことがなく、可塑化したメタルMに混入することがない。したがって、接合部32の外観、耐食性および接合強度を増大させることができる。
【0024】
また、剥離用突条体36Dの突出寸法を撹拌用突条体36Cの突出寸法より短くしているので、摩擦撹拌ツール36の中心より進行方向の後方側において撹拌用突条体36Cの内側から外側に押し出された可塑化したメタルMは剥離用突条体36Dの下面高さまで上昇する。言い換えれば、剥離用突条体36Dの下面は摩擦撹拌接合後の接合部32の厚さTを規定する。したがって、接合部32の板厚の厚さは、Zn層33の厚さ以上に不必要に取り除かれることがなく、被接合材の接合部32の強度低下を軽減することができる。
【0025】
図3は第2の発明に係る摩擦撹拌接合方法を示す平面図、図4は摩擦撹拌ツールの使用状態を示す断面図である。これらの図において、アルミニウム合金の押出形材によって矩形板状に形成された被接合材30,31は、その長手方向の一端面が互いに突き合わされることにより、この突き合わせ側端縁とその付近が摩擦撹拌される接合部32を形成し、突き合わせ面が接合面32Aを形成している。また、被接合材30,31の表面には、厚さが0.1mm程度のZn層33が形成されている。一方、被接合材30,31の裏面側には、銅からなる裏当て34が接合部32に沿って密接されている。
【0026】
前記被接合材30,31の接合面32Aを摩擦撹拌接合するために用いられる摩擦撹拌ツール40は、図7および図8に示した従来のスクロールツール20と同一形状に形成されることにより、円柱状のツール本体40Aと、このツール本体40Aの底面41の中央に一体に突設された撹拌ピン40Bと、同じく前記底面41に前記撹拌ピン40Bの周囲を取り囲むように渦巻き状に一体に突設された撹拌用突条体40Cとで構成されている。ツール本体40Aの底面41は平坦面に形成されている。撹拌ピン40Bは、被接合材30,31の板厚と略等しい長さを有し、外周に雄ねじ42が形成されている。撹拌用突条体40Cは、前記撹拌ピン40Bより低く形成されている。
【0027】
このような摩擦撹拌ツール40を用いて被接合材30,31の接合面32Aを摩擦撹拌接合するには、摩擦撹拌ツール40をモータによって500〜10000rpm程度の回転数で回転させながら撹拌ピン40Bを接合面32A上に位置させて接合部32の表面に押し付け、摩擦熱によって接合部32の撹拌ピン40Bによって押し付けられている表面部分およびその近傍を加熱、可塑化させ、撹拌ピン40Bと撹拌用突条体40Cを接合部32内に徐々に押し込む。ツール本体40Aが接合部32の表面に押し込まれる量(押込量)は、Zn層33を確実に剥ぎ取ることができる量で、必要以上に押し込み量を大きくすると、被接合材の厚さが必要以上に薄くなり、また摩擦撹拌接合を円滑に行えなくなることがあるため好ましくない。また、摩擦撹拌ツール40は、底面41の全面が接合部32の表面を均一に押圧するように接合部32の表面に対して略垂直に押し込まれる。
【0028】
撹拌ピン40Bと撹拌用突条体40Cが接合部32内に所定量押し込まれると、この状態で摩擦撹拌ツール40を接合面32Aに沿って矢印A方向に0.5〜3m/min程度の接合速度で移動させることで、接合部32を摩擦撹拌接合する。すなわち、摩擦撹拌ツール40を高速回転させながら接合面32Aに沿って移動させると、接合面32Aとその近傍部は、撹拌ピン40Bおよび撹拌用突条体40Cによって加熱されることにより可塑化され、水平および垂直方向に流動化する。そして、流動化したメタルMは、撹拌ピン40Bが通過することにより加熱源を失って冷却し固化する。
【0029】
摩擦撹拌ツール40を矢印A方向に移動させると、ツール本体40Aは下端部が接合部32に押し込まれているので、下端部外周面によってツール前方側のZn層33を剥ぎ取る。すなわち、この第2の発明は、最外周面であるツール本体40Aの下端部外周面で表皮層33を剥ぎ取るものであるから、この点で図7および図8に示した従来のスクロールツール20による摩擦撹拌接合方法と異なっている。ツール本体40Aの下端部外周面によって剥ぎ取られたZn層33は、ツール本体40Aの底面41が接合部32の表面を押圧しているため、底面41と接合部32の表面との間に入り込むことがなく、可塑化したメタルMに混入することがない。したがって、上記した第1の実施の形態と同様に摩擦撹拌接合された接合部32の表面に、剥ぎ取られたZn層33が混入することがなく、良好かつ確実に接合することができ、接合部32の外観、耐食性および接合強度を増大させることができる。
【0030】
【実施例1】
被接合材として亜鉛精錬に使用された陰極板からなる素材を切り出して互いに突き合わせ、その突き合わせ接合部を摩擦撹拌接合した。素材は、Al純度が高くSi含有量の低い板厚6mmのJIS A1070−Oである。摩擦撹拌接合に当たっては、図2に示した剥離用突条体付きスクロールツール36と、図6に示した従来の傾斜ツール3と、図7に示した従来のスクロールツール20を用いて行った。図2に示すスクロールツール36は剥離用突条体36DをZn層33を確実に剥ぎ取ることができる量だけ被接合部材30,31の接合部32内に押し込んで摩擦撹拌接合を行う。傾斜ツール3は、進行方向と反対方向に前進角度α(=3〜5°)だけ傾斜させることで進行方向前方のメタルを摩擦撹拌ツール3のメタル溜まり部Dに導入し、撹拌ピン4が通過した部分へ供給しながら摩擦撹拌接合を行う。図7に示すスクロールツール20は、前進角α=0°で渦巻き状の撹拌用突条体20Cを表皮層7より下方に押し込んで摩擦撹拌接合を行う。各ツールの回転速度と接合速度は、それぞれ900rpmと300mm/minである。その結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
この表1から明らかなように、剥離用突条体付きスクロールツール36を使用すると、従来の傾斜ツール3およびスクロールツール20に比べて接合部の品質が良好で表面欠陥や内部欠陥が生じることがなく、外観、耐食性および強度を向上させることができる。また、接合部の板厚の減少を少なくすることができるので、所要の強度を有する接合部を得ることができる。なお、表1の三段目の従来のスクロールツール標準はツール本体の最外周が被接合材の表面と接しないもの、四段目の従来のスクロールツール大はツール本体の最外周が被接合材の表面より埋没するものである。
【0033】
【実施例2】
被接合材として表面に9μmの酸化膜層が形成された板厚6mmのJIS A6063−T5からなる素材を互いに突き合わせ、その突き合わせ接合部を摩擦撹拌接合した。摩擦撹拌接合に当たっては、上記した実施例1と同様に図1に示した本発明ツール36と、図5および図6に示した従来の傾斜ツール3と、図7および図8に示した従来のスクロールツール20を用いて上記した実施例1と同様に摩擦撹拌接合を行った。ツールの回転速度と接合速度は、それぞれ900rpmと300mm/minである。その結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
この表2から明らかなように、剥離用突条体付きスクロールツール36を使用すると、上記した実施例1と同様に従来の傾斜ツール3およびスクロールツール20に比べて接合部の品質が良好で表面欠陥や内部欠陥が生じることがなく、外観、耐食性および強度を向上させることができる。また、接合部の板厚の減少を少なくすることができるので、所要の強度を有する接合部を得ることができる。
【0036】
なお、上記した実施の形態においては、接合部の表皮層がZn層、酸化膜層である場合について説明したが、本発明はこれに限らずアルマイト処理によって酸化被膜が形成され、さらにその上に塗装膜が形成されているものであってもよく、要は摩擦撹拌接合に不適な表皮層が形成されている金属部材であればよい。
また、第1の実施の形態においては、摩擦撹拌ツール36のツール本体36Aの底面37に突設される撹拌用突条体36Cを同心円状からなる大小2つのリング状突条体で構成した例を示したが、これに限らず1つのリング状突条体であってもよく、また図8に示す渦巻き状の突条体20Cであってもよい。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る摩擦撹拌接合方法によれば、接合部表面に存在する摩擦撹拌接合に不適な酸化膜層、異種金属層、塗料層等の表皮層をツールの移動方向前方側の最外周面によって剥ぎ取ることができるので、可塑化したメタル内に剥ぎ取られた表皮層が混入することがない。したがって、接合部の表面や内部に欠陥が生じたりすることがなく、接合部の外観、耐食性および強度を向上させることができる。
また、摩擦撹拌ツールの最外周面の被接合材への押込量を0.05〜0.5mmとしているので、確実に摩擦撹拌接合することができ、また被接合材の板厚の減少量が少なく、所要の強度を有する接合部を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の発明に係る摩擦撹接合方法を示す平面図である。
【図2】 摩擦撹拌ツールの使用状態を示す断面図である。
【図3】 第2の発明に係る摩擦撹接合方法を示す平面図である。
【図4】 摩擦撹拌ツールの使用状態を示す断面図である。
【図5】 従来の傾斜ツールによる摩擦撹拌接合の状態を示す斜視図である。
【図6】 傾斜ツールの使用状態を示す断面図である。
【図7】 従来のスクロールツールによる摩擦撹拌接合の状態を示す斜視図である。
【図8】 スクロールツールの使用状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1,2…接合材、3…傾斜ツール、5…接合部、6…接合面、7…Zn層、20…スクロールツール、30,31…接合材、32…接合部、32A…接合面、34…裏当て、36…摩擦撹拌ツール、36A…ツール本体、36B…撹拌ピン、36C…撹拌用突条体、36D…剥離用突条体、37…底面、40…摩擦撹拌ツール、40A…ツール本体、40B…撹拌ピン、40C…撹拌用突条体、41…底面。
Claims (6)
- 接合部表面に酸化膜層、異種金属層、塗料層等の表皮層が形成されている被接合材の前記接合部に沿って摩擦撹拌ツールを回転させつつ移動させることにより前記接合部を摩擦撹拌接合する方法であって、
前記摩擦撹拌ツールは、柱状のツール本体と、このツール本体の底面中央に突設された撹拌ピンと、この撹拌ピンの周囲を取り囲むように前記底面に渦巻き状に突設された撹拌用突条体とを備え、
前記摩擦撹拌ツールは、前記撹拌ピンおよび撹拌用突条体を接合部内に前進角が零で挿入して前記ツール本体を前記接合部の表面を覆っている表皮層の厚み分だけ接合部の表面に押し込み、前記ツール本体の最外周面でツールの進行方向の前側の接合部表面を覆っている前記表皮層を剥ぎ取りながら前記接合部を摩擦撹拌接合することを特徴とする摩擦撹拌接合方法。 - 接合部表面に酸化膜層、異種金属層、塗料層等の表皮層が形成されている被接合材の前記接合部に沿って摩擦撹拌ツールを回転させつつ移動させることにより前記接合部を摩擦撹拌接合する方法であって、
前記摩擦撹拌ツールは、柱状のツール本体と、このツール本体の底面中央に突設された撹拌ピンと、この撹拌ピンの周囲を取り囲むように前記底面に渦巻き状に突設された撹拌用突条体および前記底面の外周に突設された剥離用突条体とを備え、
前記剥離用突状体は、前記底面からの突出寸法が前記撹拌用突条体の突出寸法よりも短く、外周面が前記ツール本体の外周面とともに摩擦撹拌ツールの最外周面を形成し、
前記摩擦撹拌ツールは、前記撹拌ピンおよび撹拌用突条体を接合部内に前進角が零で挿入して前記剥離用突条体を前記接合部の表面を覆っている表皮層の厚み分だけ接合部の表面に押し込み、前記剥離用突条体の外周面でツールの進行方向の前側の接合部表面を覆っている前記表皮層を剥ぎ取りながら前記接合部を摩擦撹拌接合することを特徴とする摩擦撹拌接合方法。 - 接合部表面に酸化膜層、異種金属層、塗料層等の表皮層が形成されている被接合材の前記接合部に沿って摩擦撹拌ツールを回転させつつ移動させることにより前記接合部を摩擦撹拌接合する方法であって、
前記摩擦撹拌ツールは、柱状のツール本体と、このツール本体の底面中央に突設された撹拌ピンと、この撹拌ピンの周囲を取り囲むように前記底面に渦巻き状に突設された撹拌用突条体とを備え、
前記撹拌ピン、前記撹拌用突条体および前記ツール本体の下部を接合部内に前進角が零で挿入して前記底面で接合部表面を押圧し、前記ツール本体の前記接合部内に挿入されている下端部外周面でツールの進行方向の前側の接合部表面を覆っている前記表皮層を剥ぎ取りながら前記接合部を摩擦撹拌接合することを特徴とする摩擦撹拌接合方法。 - 請求項1記載の摩擦撹拌接合方法において、
摩擦撹拌ツールの最外周面の被接合材への押込量が0.05〜0.5mmであることを特徴とする摩擦撹拌接合方法。 - 請求項2記載の摩擦撹拌接合方法において、
ツール本体の剥離用突状体の外周面の被接合材への押込量が0.05〜0.5mmであることを特徴とする摩擦撹拌接合方法。 - 請求項3記載の摩擦撹拌接合方法において、
ツール本体の下端部外周面の被接合材への押込量が0.05〜0.5mmであることを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
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