JP4161041B2 - 天井構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、木造住宅において、1階天井を2階床から離した状態で吊木受け材を介して吊り下げる天井構造に関し、特に、2階床に配列された床根太を補強する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、木造住宅の施工には、間柱に断面が2インチ×4インチの木材を主に用いる枠組壁工法(ツーバイフォー構法)を採用し、住宅を幾つかの構造に分割した上で、その分割された構造の枠組体に合板を貼り付けた組立構造を工場で予め生産し、これらの組立構造を現場で構築することによって施工期間の短縮を図るようにしている。
【0003】
ところで、従来、2階床と1階天井を施工するにあたって、床下地材に床根太を複数並べた床組みに天井下地を直接貼り付けるようにしていたが、このような構造では、床上歩行などの衝撃が、2階床自体を振動させたり天井に伝播するため、上下階の騒音対策が望まれていた。
【0004】
そのため、遮音対策用住宅の施工にあたっては、2階床の衝撃が1階天井に直接伝わらないようにする観点から、1階天井を2階床から離した状態で吊り下げる構造を適用するようになってきている。このような天井構造においては、外枠構造に床根太と同じ方向に取り付けた吊木受け材に対し、複数の吊木を介して天井野縁を組み付け、その天井野縁の間に遮音材を敷設した後、天井野縁に天井下地を貼り付けるようにしている(非特許文献1参照)。
【0005】
【非特許文献1】
ツーバイフォー住宅研究会著「ツーバイフォー住宅のトラブル対策案」株式会社井上書院発行、1994年2月25日、p.184
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の天井構造においては、2階床が階上の荷重に対して床根太の間隔の広がる方向に撓むため、互いに隣接する床根太の間を補強することが必要になる一方で、2階床と1階天井の間隔をできるだけ狭くする必要があることから吊木受け材を床根太の間に入り込ませると、その吊木受け材を介在させた状態で床根太の間を補強することが困難であった。
【0007】
他方、従来の施工方法では、階下で天井野縁の組み付けが終了しないとその天井野縁に天井下地を貼り付けることができないため、現場で行う作業が多くなる結果、施工期間が延びるおそれがあった。
【0008】
従って、本発明の第1の目的は、床根太の間を一体化して床構造の強度を維持しつつ、床材と天井材との間隔の狭小化及び階上の十分な騒音対策を図り得る天井構造を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、床構造及びその下に配置される天井構造を、それぞれ工場で一体的に製造して施工現場で行う作業を少なくすることにより、施工期間の短縮化を図り得る天井施工方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、所定の間隔毎に複数配設された床根太上に床材が敷設され、互いに隣接する該床根太の間に配置された吊木受け材を介して天井材が吊り下げられた天井構造において、前記吊木受け材を介在させて互いに隣接する前記床根太の間には、該床根太の双方をその長手方向と交差する方向に連結し且つ前記吊木受け材を跨ぐように構成された補強材が設けられており、前記補強材は、床受け材と、一対の固着斜材とから一体的に構成され、前記床受け材は、前記床根太の間で前記床材を受けるように配置される一方で、前記一対の固着斜材は、前記床受け材と前記床根太の双方とを固着し且つ前記床受け材又は前記床根太に対し前記吊木受け材と当接しない角度で傾斜して形成されていることを特徴とする天井構造を提供することにより前記第1の目的を達成したものである。
【0010】
この場合、補強材により、吊木受け材がある床根太の間を補強しつつ吊木受け材を跨いだ状態で通過させることによって、床根太の間を一体化して床構造の強度を維持しつつ、床材と天井材との間隔の狭小化及び上下階の騒音対策を図ることができる。
【0011】
また、本発明は、所定の間隔毎に複数配設された床根太上に床材が敷設され、互いに隣接する該床根太の間に配置された吊木受け材を介して天井材が吊り下げられた天井構造において、前記吊木受け材を介在させて互いに隣接する前記床根太の間には、該床根太の双方をその長手方向と交差する方向に連結し且つ前記吊木受け材を跨ぐように構成された補強材が設けられており、前記補強材は、床受け部と、固着部と、連結部とを具備した補強体が一対をなして互いに固定されるように構成され、前記床受け部は、前記床根太の間で前記床材を受けるように形成される一方で、前記固着部は、前記床根太を固着するように形成され、さらに、前記連結部は、前記床根太の間で前記吊木受け材が占める領域外において前記固着部と前記床受け部とを連結するように形成されていることを特徴とする天井構造を提供することにより前記第1の目的を達成したものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に係る天井構造の好ましい一実施形態(第1実施形態)を図面を参照して説明する。
図1又は図2に示すように、第1実施形態の天井構造1は、所定の間隔に複数配設された床根太2上に床下地材(床材)3が敷設され、互いに隣接する床根太2の間に配置された吊木受け材4を介して天井下地材(天井材)21が吊り下げられた構造に対し、吊木受け材4を介在させた床根太2の間に補強材30が設けられていることにある。以下、かかる天井構造1の詳細を説明する。
【0014】
各床根太2は、例えば、縦6インチ〜12インチ×横2インチの角材で、その断面の長辺が床下地材3と直行する方向に立設した状態で固定され、断面の短辺の方向に所定の間隔をおいて互いに平行に配列されている。これにより、各床根太2は、床下地材3を受けるようになっている。
【0015】
各床根太2の間のうち吊木受け材4を通さない箇所のすべてには、転び止め5が複数設けられている。この転び止め5は、床根太2の横倒れを防止して床根太2の間を補強するとともに床下地材3を受けるためのもので、床根太2と同じ寸法の長方外形を有する平板状に形成されている。各転び止め5は、床根太2の長手方向と直交する方向に床根太2の間を完全に埋めた状態で固定されている。
【0016】
補強材30は、各床根太2の間のうち吊木受け材4を通すべき箇所のすべてに固定され、転び止め5と同一列上に配置されている。
この補強材30は、転び止め5と同様に床根太2の間を補強しつつ床下地材3を受ける機能と、その床根太2の間で吊木受け材4を跨ぐように通過させる機能とを有する部材で、床受け材31と、一対の固着斜材32、32とから一体的に構成される。
【0017】
床受け材31は、床根太2の内側面のうちの上端部分を互いに結合させた状態で床下地材3を受ける観点から、例えば、木材を用いて、横方向の長さを4インチとし、縦方向の長さを所定の強度を有する値(例えば2インチ)とした長方形の一側面を有する平板状に形成されている。
【0018】
固着斜材32は、床受け材31の下面の片側半分と、床根太2の内側面のうちの上端部分を除くすべての部分を連結し、かつ、吊木受け材4の通過領域をできるだけ上方側(床下地材3側)に配置する観点から、例えば、木材を用いて、床根太2の断面における縦長さから床受け材31の側面における縦長さを減じた値(8インチ)を一辺(縦方向の辺)の長さとし、床受け材31の側面における横長さの半分の値(2インチ)を他辺(横方向の辺)の長さとする直角三角形の一側面を有する平板状に形成されている。
【0019】
このような一対の固着斜材32、32は、床受け材31の下面において互いに左右対称となった状態で配置され、釘や木ビスなどを用いて床受け材31に固定されている。
そして、補強材30は、床下地材3及び床根太2の間に固定されることにより、床下地材3を受けてその床根太2の間を補強するとともに、吊木受け材4の通過領域の断面を三角形状に形成するようになっている。
【0020】
天井下地材21の裏面上には、複数の天井野縁22が、床根太2の間隔とほぼ同一の間隔をおいて互いに平行又は直交に配列された状態で固定されている。各天井野縁22は、床根太2の長手方向と平行又は直交になって床根太2と交互に並ぶかあるいは直交するような位置に配置されている。天井野縁22の間には、それぞれ、例えばロックウールやグラスウールのように、遮音性又は断熱性を有する綿塊状の遮音・断熱材23が敷設されている。
【0021】
以下、本発明に係る天井施工方法を説明する。
工場において、床下地材3と、床根太2と、転び止め5及び補強材30とをユニット化した2階床構造10を製造し、また、天井地材21と、天井野縁22と、遮音・断熱材23とをユニット化した1階天井構造20を製造する。
【0022】
そして、床下地材3及び天井下地材21に対して塗壁又は梁付仕上材料を施すことにより2階床及び1階天井を仕上げておき、その後、2階床構造10及び1階天井構造20を必要な時期に施工現場に搬入する。
【0023】
一方、施工現場において、コンクリートを用いた布基礎に土台を敷設した後、1階床組みを行ったり、複数の柱を立設したりすることによって、住宅の外枠構造を構築しておく。
そして、階上では、外枠構造に2階床構造10を取り付けるとともに、吊木受け材4を所定数だけ取り付ける。この場合、吊木受け材4を、施工計画に従い、床根太2の間に補強材30がある箇所に通し、床根太2と平行になるように配置する。この場合、吊木受け材4を補強材30の通過領域内でできるだけ上方に設置する。
また、階下では、吊木受け材4と天井野縁22との間に複数の吊木24を介在させることによって、1階天井構造20を吊木受け材4から吊り下げる。
【0024】
以下、このように施工された天井構造の作用を説明する。
2階床に荷重が加わった場合、吊木受け材4がない床根太2の間では、転び止め5が床下地材3を受けつつ床根太2の間を補強する一方で、吊木受け材4がある床根太の間では、補強材30が床下地材3を受けつつ床根太2の間を補強するため、2階床が床根太2の間隔が広がる方向にほとんど撓まない。
また、2階床に衝撃が加わった場合、2階床自体の振動により発生した騒音が、遮音・断熱材23に吸収され、また、2階床の振動が1階天井に伝播しないため、その振動に起因する騒音が発生することもほとんどない。
【0025】
以上述べたように本実施形態によれば、床根太2の間に吊木受け材4を介在させる構造を適用するにあたって、吊木受け材4がない床根太2の間を転び止め5により補強することに加えて、吊木受け材4がある床根太2の間を補強材30により補強しつつ吊木受け材4を通過させるようにしたことから、床根太2の間を一体化して2階床構造10の強度を維持しつつ、2階床と1階天井との間隔の狭小化及び階上の騒音対策を十分に図ることができる。
【0026】
また、本実施形態によれば、補強材30の外形を、転び止め5の場合と同様、床根太2の間にぴったり嵌まる大きさにしたことから、吊木受け材4の取り付け位置や取り付ける数に変更が生じても、補強材30と転び止め5を交換すれば足りるため、施工計画の変更に柔軟に対応することができる。
【0027】
さらに、本実施形態によれば、2階床構造10及び1階天井構造20を、それぞれ、ユニット化にして工場で製造できるようにしたことから、施工現場で行う作業が少なくなるため、施工期間の短縮化を図ることができる。
【0028】
本発明に係る天井構造の好ましい他の一実施形態(第2実施形態)を説明する。
図3に示すように、第2実施形態の場合、補強材35の構成のみが上記第1実施形態と異なっている。
すなわち、本実施形態の補強材35は、左補強体35Aと、右補強体35Bとから一対をなしている。左補強体35Aは、長方形状の金属板を直角に折り曲げた形状につき、一方側に床根太2を固着する固着部36が形成され、かつ、他方側に床下地材3を受ける床受け部37が形成されたものと、固着部36と床受け部37とを連結する連結部38とが、例えば溶接により一体的に構成されている。
【0029】
固着部36の長さは、床根太2の断面における縦長さとほぼ同一に設定されている。固着部36には、床根太2に釘打ちするための釘孔36aが複数形成されている。
床受け部37の長さは、床根太2の間隔の半分より幾分長めに設定されている。床受け部37の先端部分には、長孔状の調整孔37aが複数形成されている。
連結部38は、固着部36及び床受け部37の双方を互いに連結するのに十分な2辺をもち、吊木受け材4を通過させるのに必要な角度で傾いた斜辺をもつ直角三角形板状に形成されている。
【0030】
右補強体35Bは、左補強体35Aと略左右対称形状であり、対応する部分に同一の名称及び符号を付するが、床受け部37の長さが床根太2の間隔の半分程度に設定されている点と、床受け部37の先端部分の下面にねじ37bが複数固定されている点とが左補強体35Aと異なっている。
【0031】
図4に示すように、このような補強材35を床根太2の間に固着する際には、まず、右補強体35Bを釘打ちにより一方の床根太2に固定し、次いで、左補強体35Aをその調整孔37aに右補強体35Bのねじ37bを嵌めた状態で釘打ちにより他方の床根太2に固定する。その後、右補強体35Bのねじ37bにナット39を締め付けることにより、左補強体35Aと右補強体35Bとを一体化して固定する。
【0032】
以上述べたように本実施形態によれば、補強材35を、左補強体35A及び右補強体35Bを互いに接近又は離間させつつこれらの間隔について調整できるようにしたことから、床根太2の間隔が数種ある場合であっても、同一の補強材35を用いて施工することができ、ひいては、施工期間の短縮、施工計画の変更への柔軟な対応等を図ることができる。
【0033】
また、本実施形態の場合、床下地材3に接合する床受け部37が、第1実施形態の床受け材31より薄いため、吊木受け材4をより床下地材3に接近させることができ、その結果、2階床と1階天井との間隔を狭小化する上で有利である。その他の構成及び作用効果は、前記第1実施形態と同様であるためその説明を省略する。
【0034】
本発明は、上記第1、第2実施形態に限られることなく、種々の変更等を行うことができる。
例えば、図5に示すように、天井構造において床根太の代わりに断面H型状の鋼材51を用いた場合には、第2実施形態で示した補強材35のうち固着部36をその鋼材51にねじ止め可能な構成にすればよい。
【0035】
また、補強材30、35は、床根太2の間を補強し、かつ、吊木受け材4を跨ぐような形状であればよく、例えば、補強材30、35の下縁部分をアーチ状にすることもできる。
【0036】
さらに、第2実施形態の補強材35を用いる場合において、固着部36を保持可能な部材を予め床根太2に取り付けておけば、左補強体35Aと右補強体35Bを仮ねじ止めした状態で床根太2の間に装着できるため、このような作業を効率よく行うことができる。
【0037】
さらにまた、左補強体35Aと右補強体35Bの間隔を調整する機構については、例えば、その幅方向に移動するねじ機構を適用したり、あるいは、左補強体35Aと右補強体35Bとの間にリンク機構を用いてこれらを一体的に幅方向に移動可能にすることもできる。
【0038】
さらに加えて、本発明の天井構造は、2階床及び1階天井にだけでなく、3階床及び2階天井にも適用することができる。
【発明の効果】
本発明によれば、床根太の間を一体化して床構造の強度を維持しつつ、床材と天井材との間隔の狭小化及び階上の十分な騒音対策を図り得る天井構造を得ることができる。
また、本発明によれば、床構造及びその下に配置される天井構造を、それぞれ工場で一体的に製造して施工現場で行う作業を少なくすることにより、施工期間の短縮化を図り得る天井施工方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の天井構造の概略構成を示す斜視図である。
【図2】同天井構造の概略構成を示す断面図である。
【図3】第2実施形態の天井構造の補強材の概略構成を示す図である。
【図4】同補強材の取り付け方法を説明するための図である。
【図5】本発明に係る天井構造の補強材の変更例を示す図である。
【符号の説明】
2 床根太
3 床下地材(床材)
4 吊木受け材
10 2階床構造
20 1階天井構造
21 天井下地材(天井材)
22 天井野縁
23 遮音・断熱材
24 吊木
30、35 補強材
31 床受け材
32 固着斜材
36 固着部
37 床受け部
38 連結部
Claims (3)
- 所定の間隔毎に複数配設された床根太上に床材が敷設され、互いに隣接する該床根太の間に配置された吊木受け材を介して天井材が吊り下げられた天井構造において、
前記吊木受け材を介在させて互いに隣接する前記床根太の間には、該床根太の双方をその長手方向と交差する方向に連結し且つ前記吊木受け材を跨ぐように構成された補強材が設けられており、
前記補強材は、床受け材と、一対の固着斜材とから一体的に構成され、前記床受け材は、前記床根太の間で前記床材を受けるように配置される一方で、前記一対の固着斜材は、前記床受け材と前記床根太の双方とを固着し且つ前記床受け材又は前記床根太に対し前記吊木受け材と当接しない角度で傾斜して形成されていることを特徴とする天井構造。 - 所定の間隔毎に複数配設された床根太上に床材が敷設され、互いに隣接する該床根太の間に配置された吊木受け材を介して天井材が吊り下げられた天井構造において、
前記吊木受け材を介在させて互いに隣接する前記床根太の間には、該床根太の双方をその長手方向と交差する方向に連結し且つ前記吊木受け材を跨ぐように構成された補強材が設けられており、
前記補強材は、床受け部と、固着部と、連結部とを具備した補強体が一対をなして互いに固定されるように構成され、前記床受け部は、前記床根太の間で前記床材を受けるように形成される一方で、前記固着部は、前記床根太を固着するように形成され、さらに、前記連結部は、前記床根太の間で前記吊木受け材が占める領域外において前記固着部と前記床受け部とを連結するように形成されていることを特徴とする天井構造。 - 前記補強材は、前記一対の補強体の何れか一方が他方の補強体に対し接近又は離間する方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項2記載の天井構造。
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