管を地中に埋設する工法として、管推進工法と称する工法が従来から知られている。この管推進工法では、カッタヘッドを有する先導体の後方にヒューム管等で形成した埋設管を順次連結し、推進ジャッキと押し輪を有し発進立坑に設置される元押し装置によりそれらの埋設管を推進しながら前方の地山をカッタヘッドで掘削して、各埋設管を順次地中に押し込んで埋設して行く方法が一般に用いられている。管推進機は、こうした管推進工法を実施するため、先導体と元押し装置とで構成された装置である。
出願人が従来開発したこの種の管推進機では、カッタヘッドで掘削した掘削土砂に、粘性付与液としての添加剤を掘削土砂に注入、撹拌混合することにより塑性流動性のある泥土を生成して、この泥土の圧力により切羽を支持する。そして、その泥土を、先導体胴部の外周と地山との間の間隙を通じて後方へ送ってその泥土の一部を先導体後部から取り込んで土砂圧送装置で地上に排出するとともに、残りを、先導体の後端部に取り付けられた埋設管の外周と地山との間隙に導くようにしている。そのため、埋設管を推進する際に、埋設管や先導体と周辺地山との摩擦抵抗を低減して埋設管の貫入抵抗を著しく軽減することができる。
こうした泥土圧により切羽を支持する土圧式の管推進機では、先導体から取り込んだ泥土を、埋設管内に敷設した排土管を通じて発進立坑側に土砂圧送装置で圧送した後に、発進立坑内の排土ホースに導いて地上に排出する。排土管は、先導体が所定距離掘進する都度、埋設管と共に継ぎ足されるので、こうした排土管の接続作業を可能にするように、前記排土ホースの入口側には、排土管の後端側に着脱可能に接続できる元押し排土管を取り付けてこれを元押し装置に付設している。本発明は、こうした元押し排土管を設けた管推進機の元押し装置を改良しようとするものである。
そこで、後述する従来の技術の問題点や本発明の技術内容の理解を容易にするため、出願人が従来開発した管推進機を例にして、前記土圧式の管推進機の一般的な技術内容やこの管推進機に設置される元押し装置につき、図17に基づいて概説する。図17は、従来の技術に係る管推進機の全体像を示す縦断面図である。
これらの図に示す管推進機は、大別すると、地山を掘進する先導体Eとこの先導体Eや埋設管50を推進する元押し装置Fとで構成される。この管推進機を使用して管推進工法を実施するときには、地中に埋設するためのヒューム管等で形成された埋設管50と、粘性付与液により泥土化され先導体E内に取り込まれた掘削土砂を地上に排出するための排土管40とが先導体Eの後端部に連結され、適宜継ぎ足される。排土管40は、埋設管50の内部に敷設される。
まず、管推進機の先導体Eやこれに関連する事項について説明する。
Eは前方にカッタヘッドE1を有し後端側に埋設管50を連結して地中を掘進する先導体、E1は地山を掘削するカッタヘッド、E2は地山に食い込ませることによりカッタヘッドE1の回転反力を地山に伝達する突起状をなす反力伝達板、E3は先導体Eの後部下側に設けられ先導体Eの胴体外周と地山との間の間隙を通じて後方へ送られる泥土の一部を先導体Eの内部に取り込む土砂取り込み口である。
カッタヘッドE1は、その掘削外径を先導体Eの胴体外径よりも大きくするように構成して、反力伝達板E2を設けたことと相俟って、先導体Eの胴体外周と掘削穴の孔壁との間に環状の泥土通路を形成するようにしている。カッタヘッドE1の中央部には、粘性付与液を放射状に噴射して掘削土砂に注入するための粘性付与液注入口を設けており、この粘性付与液注入口から粘性付与材を掘削土砂に注入すると、これら粘性付与材と掘削土砂とがカッタヘッドE1により撹拌混合されて、掘削土砂に粘性が付与される。その結果、塑性流動性のある泥土が切羽近傍で生成され、この泥土は、カッタヘッドE1の後方へ送られて先導体Eの胴体周囲の前記泥土通路を通過する。
反力伝達板E2は、地山に対向する側の面をカッタヘッドE1の掘削外径よりも若干突出するように形成している。そのため、反力伝達板E2の外周部が先導体Eの掘進時に掘削穴の周囲の地山に食い込んでカッタヘッドE1の回転トルクの反力を地山に伝達して先導体Eのローリングを防止するとともに、先導体Eを支持してその胴体の周囲に泥土通路を形成する働きをする。こうした反力伝達板E2は、先導体Eの胴体の同一外周面上に所定間隔を置いて複数個突設している。
従来の管推進機は、以上の構造を備えているので、先導体Eを、後述する元押し装置Fで推進しながらカッタヘッドE1を回転駆動して発進させると、先導体Eは、地山に掘削穴を形成しながら掘進する。こうして先導体Eを発進させた後は、埋設管50を排土管40と共に先導体Eの後端側に適宜連結して、今度は、埋設管50を元押し装置Fで推進することにより先導体Eを推進しつつカッタヘッドE1で地山を掘削する。その間、粘性付与液を掘削土砂へ注入てしカッタヘッドE1で撹拌混合することにより、塑性流動性のある泥土を切羽近傍で生成する。
そうすると、この泥土は、切羽の後方へ送られ、環状の泥土通路に圧入、充填されて同通路を通過する。そして、その泥土の一部は、先導体Eの後部の土砂取り込み口E3に取り込まれて、排土管40を通じて先導体E内の土砂圧送ポンプにより発進立坑T側から地上に圧送、排出され、残りは、先導体Eの胴体外周に充満させるとともに埋設管50の外周に導かれる。その間、土砂圧送ポンプで泥土の排出量を制御することにより、掘削穴と先導体Eの間に形成されたチャンバ内の泥土の圧力を調整して切羽を適正な泥土圧で支持する。従来の管推進機は、こうして地山を泥土圧で支持するとともに、埋設管50の外周に送られる泥土により埋設管50の貫入抵抗を軽減しながら掘進する。この種の管推進機は、例えば、特許文献1に開示されている。
管推進機の元押し装置Fやこれに関連する事項について説明する。
Fは後述するベースフレームA、押し輪B、推進ジャッキC及び元押し排土管200とを設けて構成され先導体Eや埋設管50を推進する従来の元押し装置、Aは発進立坑Tの底部に設置される架台(図2の符号1参照)及びこの架台の後部に立設され先導体Eや埋設管50の推進時の反力を受ける反力受け部材(図1の符号2参照)を有するベースフレーム、BはこのベースフレームAの架台で前後方向に移動可能に支持され前進時に先導体Eや埋設管50の後端側を押すことができる押し部材としての押し輪、Cはロッド部がベースフレームAの反力受け部材に取り付けられシリンダ部に押し輪Bを取り付けて伸長することにより押し輪Bを前進させて先導体Eや埋設管50に推進力を付与することができる油圧シリンダによる推進ジャッキ(元押しジャッキとも称する。)、200はこの推進ジャッキCの伸縮により前後に移動させて発進立坑T内の排土管40の後端側に接続したりその排土管40の後端側から切り離したりすることができる元押し排土管である。
押し輪Bは、推進ジャッキCのシリンダ部の後端部や前端部に適宜選択的に固定して推進ジャッキCで押すことができるようにしており、これにより、後述するように、埋設管50を、その管長よりも短いストロークの推進ジャッキCにより二段階で推進して、埋設管50のほぼ全体を埋設できるようにしている。元押し排土管200は、従来は、押し輪Bの後方に固定的に取り付けており、推進ジャッキCの伸縮により、押し輪Bに随伴して前後方向に移動させることができるようにしている。図示は省略しているが、元押し排土管200の出口側には、排土管40から送られた泥土を地上に排出するための排土ホースが常時接続されている。元押し排土管200は、排土管40に対し後述する短管やアダプタ管を介して着脱可能に接続できるようになっており、埋設管50の推進時には、泥土を地上に排出できるように排土管40に接続され、新たな埋設管や排土管の接続時には、これらの接続作業が行えるように排土管40から切り離される。なお、元押し装置Fの具体的な構造は、〔発明を実施するための最良の形態〕の項で述べる。
次に、こうした元押し装置Fを用いて先導体Eを発進させる手順について概説する。
図17には、継ぎ足された埋設管50を元押し装置FのベースフレームA上に設置して推進する直前の状態を図示している。この状態において、推進ジャッキCは縮められており、そのシリンダ部の後端部には、押し輪Bを固定している。その場合、押し輪Bは、推進ジャッキCを伸ばすときには、そのシリンダ部の前進に随伴し、推進ジャッキCを縮めるときにはそのシリンダ部の後退に随伴しないように固定している。この状態においてカッタヘッドE1を回転駆動しながら推進ジャッキCを伸ばすと、推進ジャッキCは、押し輪Bを前進させ、これに伴って、押し輪Bは、埋設管50を推進する。こうして推進ジャッキCを漸次伸ばして限界まで伸ばすと、継ぎ足された埋設管50が順次発進立坑Tの発進口を通過して、その埋設管50の前半部分が地山に埋設される。
推進ジャッキCを限界まで伸ばした後は、推進ジャッキCを限界まで縮める。そうすると、推進ジャッキCは、押し輪Bを置き去りにした状態でシリンダ部の前端部が後退し、やがて、このシリンダ部の前端部が押し輪Bの位置まで後退する。そこで、今度は、押し輪Bをシリンダ部の前端部に、推進ジャッキCの押し力を伝達できるように固定する。この状態において再び推進ジャッキCを伸ばすと、継ぎ足された埋設管50を押し輪Bにより更に推進することができ、推進ジャッキCを限界まで伸ばすと、その埋設管50のほぼ全体を地山に埋設することができる。
ところで、最近では、発進立坑を設置するための場所を交通量の多い道路上に確保せざるをえないこと、発進立坑の施工費を低減しなければならないこと等の必要性から、発進立坑の規模(径)を縮小化するニーズが高まっている。ここに例示した従来の技術では、前記したように、埋設管50を二段階で推進できるようにした元押し装置Fを採用しているので、推進ジャッキCのストロークを埋設管50の長さの略半分程度に短縮することができ、そのため、発進立坑T内における推進ジャッキCの占有空間を格段に小さくすることができて、発進立坑の規模の縮小化へのニーズに応えることができる。この種の元押し装置を採用した管推進機は、例えば、特許文献2に開示されている。
また、発進立坑の規模の縮小化を図るため、先導体を分割して発進させる技術も盛んに開発されている。こうした技術を実施すると、埋設管の長さを標準タイプの埋設管の半分程度に短縮することができるため、先導体を分割したことと相俟って、発進立坑の規模をますます縮小することができる。そのため、昨今では、全長1000mmの埋設管を直径2000mmの断面円形の発進立坑から推進する元押し装置も実施されている。こうした発進立坑の小規模化の現状を実感できるようにするため、先導体を分割発進するときに使用する埋設管(ヒューム管)の長さと発進立坑の直径との相関について、その一部を次の表1に示す。この表1において、埋設管長は、分割発進のために使用する半管(標準タイプの埋設管の半分程度の長さの管)の長さを意味する。
このように、発進立坑の小規模化は、種々の技術開発の積み重ねにより進展しており、これに伴って、発進立坑は、ますます手狭になっているが、こうした趨勢の中で、排土管の新設作業を行うための作業空間を発進立坑内に確保することは、管推進工法を実施する上で不可欠である。この排土管の新設作業は、本発明の目的に関係する事項であるので、すでに述べた図17を援用しながら図18に基づいて、排土管40の新設作業やこれに関連する現場の技術を以下に概説する。図18は、排土管同士を接続したときの状態を示す縦断面図である。
管推進工法では、埋設管50の推進の進展に応じて、単位長さの排土管40が埋設管50と共に発進立坑T内で継ぎ足されて行くが、排土管40は、先導体の掘進経路に沿って敷設するため、屈曲可能に接続できるようにすることが必要である。そのため、この単位長さの排土管40の前後両端の接続部には、排土管40同士を屈曲可能に接続できるようにするための構造上の特別の工夫が施されている。
この排土管40の接続部の構造について説明すると、排土管40は、後端部に、外周部に雄螺子を有する環状の被嵌入用継手部40aが付設され、前端部に、別の排土管40の被嵌入用継手部40aに揺動可能に嵌入することができる環状の嵌入用継手部40bが突設されている。そして、排土管40の前端部側には、環状のナット40cが排土管40の軸方向に移動可能に嵌め合わされており、このナット40cは、前端部の嵌入用継手部40bに係止させることができるようになっている。また、ナット40cには、別の排土管40の被嵌入用継手部40aの雄螺子と螺合させることができる雌螺子が内周部に形成されている。その場合、このナット40cを被嵌入用継手部40aの雄螺子と螺合させて規定の量だけ締め付けたときに、ナット40cとこれを係止するための嵌入用継手部40bとの間に、排土管40の軸方向に若干の遊びができるようにしている。
こうした接続部を有する排土管40同士を接続する場合には、一方の排土管40の前端部の嵌入用継手部40bを他方の排土管40の後端部の被嵌入用継手部40aに嵌入した後、一方の排土管40側のナット40cを他方の排土管40側の被嵌入用継手部40aの雄螺子と螺合させて規定の量だけ締め付ける。この状態において、一方の排土管40を他方の排土管40に対して引き寄せれば、排土管40の端面同士を密接させることができ、このときに、両方の排土管40の合計長さが最短となる。また、一方の排土管40を他方の排土管40から引き離せば、図18に示すように、一方の排土管40の嵌入用継手部40bがナット40cに当接して一方の排土管40の前端面と他方の排土管40の後端面との間に最大限のガタX(遊びの隙間)を生じさせることができ、このときに、両方の排土管40の合計長さが最長となる。
このように二つの排土管40の接続時に両排土管40の端面間にガタができるようにしているため、一方の排土管40の嵌入用継手部40bを他方の排土管40の被嵌入用継手部40aに揺動可能に嵌入していることと相俟って、一方の排土管40を他方の排土管40に対して上下左右の所望の方向に揺動させることができ、排土管40同士を屈曲可能に接続することができる。いま、埋設管50の単位長さをL、排土管40の単位長さ(排土管40の単位長さの有効値)をLpとすると、こうした構造を有する排土管40を製作する場合、L=Lp+Xとなるような関係で排土管40を製作する。すなわち、排土管40は、前記した最大限のガタXを生じさせない限り埋設管50と同等の長さの管路が得られないように、排土管40の単位長さLpが埋設管50の単位長さLよりも短くなるように製作される。
このように、排土管40は、埋設管50よりも単位長さを短く形成しているため、接続を繰り返すと、末尾の排土管40の後端が埋設管50の中に入り込む。そのため、仮に元押し排土管200を末尾の排土管40に直接接続する方式で、排土管40を継ぎ足すために元押し排土管200を末尾の排土管40から取り外したとすると、この排土管40から泥土が埋設管50内に漏出して管内を汚してしまう。管推進工法では、こうしたことを防止するため、末尾の排土管40の後端が埋設管50内に入り込む前に、この排土管40の後端部に所定長さの短管(排土管40を短くしたような管)を予め継ぎ足してこの短管を埋設管50の後方に突出させるようにする施工方法が通常採用されている。
一方、こうした施工方法を実施すると、元押し排土管200が接続される末尾の排土管40の後端側(短管の後端部乃至は末尾の排土管40の後端部)の埋設管50からの突出量が排土管40の接続作業のたびに変動するため、その排土管40の後端側に元押し排土管200を直接接続すると、埋設管50に対する元押し排土管200の位置を、押し輪Bでの埋設管50の推進に好適な所定の位置にセットすることができなくなる。管推進工法では、こうした問題に対応して、末尾の排土管40の後端側を元押し排土管200に接続する際には、その排土管40の後端側にアダプタ管(後述する図11乃至図16の符号41参照)を装着することにより、アダプタ管を介して接続する方法が採られている。
このアダプタ管は、元押し排土管200に差し込むことができ、その際、差し込み量を所定の範囲で自由に変えることができるようになっている。したがって、末尾の排土管40の後端側にアダプタ管を装着した後、押し輪Bを埋設管50に当接させるために前進させると、元押し排土管200は、押し輪Bと共に前進してその前進過程でアダプタ管が漸次差し込まれてゆき、押し輪Bが埋設管50に当接するに至るまで差し込まれる。そのため、末尾の排土管40の後端側の突出量が排土管40の接続作業のたびに変動しても、埋設管50への押し輪Bの当接時において、元押し排土管200を、押し輪Bでの埋設管50の推進に好適な位置に常に支障なく配置することができる。
こうした排土管40の新設作業を行うときには、埋設管50の後端と元押し排土管200の前端との間に、埋設管50からの短管の突出部やアダプタ管を配置するための前後方向の空間及びこれらの管の接続作業に必要な前後方向の若干の余裕空間(以下、これらの空間を「排土管の新設作業用空間」という。)を発進立坑T内に確保することが必要である。この排土管の新設作業用空間を小規模の発進立坑T内で確保するには、排土管40の新設作業を行う際に、押し輪Bを限界まで後退させることにより元押し排土管200を押し輪Bと共に後退させて、元押し排土管200を可能な限り後方に移転させる。こうした元押し排土管200の後退操作を行うことにより、発進立坑T内において、既設の埋設管50の後端と元押し排土管200との間に、新設の埋設管50を吊り降ろして設置する空間を確保できるのほか、この新設の埋設管50と元押し排土管200との間に排土管の新設作業用空間を確保することができる。
特開昭59−52098号公報(3頁、図1−4)
実願昭60−7655号(実開昭61−125594号)のマイクロフィルム(4−8頁、図1−10)
以下、本発明が実際上どのように具体化されるのかを図1乃至図16を用いて説明することにより、本発明を実施するための望ましい形態を明らかにする。
最初に、図1乃至図7に基づき、本発明を具体化した管推進機の元押し装置の構造について説明する。
図1は、本発明を具体化した管推進機の元押し装置の平面図、図2は、図1における矢印Z−Z方向の矢視図、図3は、図2における矢印G−G方向の矢視図、図4は、図1の管推進機の元押し装置における元押し排土ユニットを各方向から示した図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は背面図、図5は、図4(c)におけるH−H線断面図、図6は、図4の元押し排土ユニットにおける摺動子を各方向から示した図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は背面図、図7は、図4の元押し排土ユニットにおけるガイドユニットを各方向から示した図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は背面図である。
これらの図おいて既に述べた図17及び図18と同一の符号を付けた部分は、この図17と同等の部分を表す。
本発明を具体化した以下に示す例に係る管推進機の元押し装置は、すでに述べた従来の技術に係る管推進機の元押し装置と同様、発進立坑Tの底部に設置される架台1及びこの架台1の後部に立設され先導体Eや埋設管50の推進時の反力を受ける反力受け部材2を有するベースフレームAと、このベースフレームAの架台1で前後方向に移動可能に支持され前進時に先導体Eや埋設管50の後端側を押すことができる押し輪Bと、ロッド部が反力受け部材2に取り付けられシリンダ部に押し輪Bを取り付けて伸長することにより押し輪Bを前進させて先導体Eや埋設管50に推進力を付与することができる油圧シリンダによる推進ジャッキCと、この推進ジャッキCの伸縮により前後に移動させて発進立坑T内の排土管40の後端側に接続したりその排土管40の後端側から切り離したりすることができる元押し排土管200とを設けて構成されている。そして、この元押し排土管200の背後の発進立坑Tの後部にレーザ発信器100が配置されている。
本管推進機の元押し装置を構成する要素中、まず、元押し排土ユニットD以外の要素について詳説する。
Aは架台1とこの架台1の後端部に立設された反力受け部材2とを備え左右に一対平行に配置されるベースフレーム、Bは左右の下方に車輪B1を備え左右一対の架台1で前後方向に移動可能に支持され推進ジャッキCの伸長により先導体Eや埋設管50に推進力を付与する押し輪、Cはロッド部の後端部が反力受け部材2に揺動可能に取り付けられシリンダ部の前端部及び後端部に押し輪Bを選択的に固定して埋設管50を二段階で推進できるようにした既述の図17の推進ジャッキCと同様の推進ジャッキであり、左右一対の反力受け部材2にそれぞれ取り付けられている。
ベースフレームAの架台1は、複数の架台の分割片を着脱可能に連結して構成されて、発進立坑Tの底部に左右に一対並行に設置されている。また、ベースフレームAの反力受け部材2は、後方支圧壁3bを介して発進立坑Tの坑壁で支持されて、推進ジャッキCによる先導体Eや埋設管50の推進時に反力を取れるように左右に一対設置されている。一対の各反力受け部材2には、後述するストッパ2aが固定されている。ベースフレームAの前端側及び後端側には、それぞれ、前方支圧壁3a及び後方支圧壁3bが配置されている。そして、これら前方支圧壁3a及び後方支圧壁3bを、後述する反力螺子ジャッキ5により発進立坑Tの内壁に当接させて両支圧壁3a,3bでベースフレームAを挟持することにより、ベースフレームAを発進立坑T内に固定する。推進ジャッキCのシリンダ部の前端部には、押し輪Bが抜け出るのを防止するためのストッパC1が付設されている。このストッパC1には、推進ジャッキCのシリンダ部を支持しながらこれを前後に円滑に移動できるようにするための車輪C2が付設されている。
4は一対の架台1上にそれぞれ敷設され押し輪Bの車輪B1を係合させることにより押し輪Bを摺動させつつガイドするレール、5は架台1の前端部や後端部に螺合させ回動させて突出量を調節することにより前方支圧壁3aや後方支圧壁3bを移動して発進立坑Tの内壁に当接させる働きをする反力螺子ジャッキ、6はローラ6a、ブラケット6b、ガイド6c等を有してベースフレームAの架台1の前端部に左右に一対設置され押し輪Bと協働して先導体Eや埋設管50を水平に支持する働きをするガイドローラ、7はベースフレームAの架台1に螺合され回動することにより架台1の上下方向の位置を調節する働きをするレベルジャッキである。
本管推進機の元押し装置を構成する要素中、最大の特徴をなす元押し排土ユニットDにつき、図3乃至図7に基づいて説明する。
元押し排土ユニットDは、大別すると、摺動子20とガイドユニット30とからなり、図5に示すようにガイドユニット30のガイドロッド34を摺動子20のボス部211に摺動可能に挿通することにより、摺動子20をガイドユニット30に対して摺動させながら前後方向に移動させることができるように構成されている。この摺動子20は、パイプフランジ22、排土パイプ23及びボールバルブ24を有する元押し排土管200(図3及び図4参照)を備えている。一方、ガイドユニット30は、摺動子20を介して元押し排土管200を前後方向に移動可能に支持する元押し排土管の支持装置としての働きをする。このガイドユニット30は、押し輪Bで支持して、押し輪Bの前後の移動に伴って前後に移動させることができるように構成している。そのため、ガイドユニット30は、押し輪Bの前面に螺着することができるプッシャプレート31を備えている。
まず、摺動子20の詳細を説明すると、21はパイプフランジ22が螺着され左右の各端部にボス部211を設けた元押し排土ユニットDの基板をなす正面視椀状のスライドプレート、22は排土管40からの泥土を導入するための泥土導入パイプ220を有し螺着時にスライドプレート21に当接するためのフランジを泥土導入パイプ220に設けたパイプフランジ、23はこのパイプフランジ22に連結して立設され泥土を上方へ送る排土パイプ、24はこの排土パイプ23の上端部に付設され排土管40の接続作業時に閉じることにより上方からの泥土の逆流を防ぐボールバルブである。
スライドプレート21には、左右に一対当て棒210が付設され、これら一対の当て棒210は、それぞれ排土パイプ23の後方まで延びている。これらの当て棒210に対向する各当て棒210の後方位置には、それぞれ、ストッパ2a(図1参照)が反力受け部材2に固定されている。これらの当て棒210は、摺動子20を後退させたときに後方のストッパ2aに当接させて元押し排土管200をレーザ発信器210に干渉させないように位置決めするための干渉防止手段としての働きをする。図5に示すように、スライドプレート21に設けたボス部211には、これに挿通したガイドロッド34で支持して案内するためのブッシュ213を内周部に配設している。また、ボス部211の両端部には、それぞれシールケース212が螺着され、このシールケース212の内周部には、ボス部211内への異物の浸入を防ぐための環状のシール214を設けている。
パイプフランジ22の泥土導入パイプ220は、排土管40の接続作業時に既述のアダプタ管41(図11、図12等参照)を適宜着脱可能に接続できるように構成されている。ボールバルブ24は、取っ手の回動操作により開閉できるようになっており、その上部には、泥土を地上に排出するための排土ホース(図示せず)が接続される。パイプフランジ22と排土パイプ23とボールバルブ24とからなる元押し排土管200は、従来の技術の元押し装置Fでは押し輪Bの後方に取り付けているのに対し、本元押し装置では摺動子20に組み込まれて押し輪Bに対し前後に相対移動できるようにしており、本元押し装置には、この点に、従来の技術の元押し装置Fにはみられない特徴がある。元押し排土管200の背後の発進立坑Tの後部には、汎用型のレーザ発信器100が配置され、台座101上に設置されている。このレーザ発信器100は、先導体Eの位置や姿勢を検出ために先導体Eに向けてレーザビームを照射し、ことより、先導体Eが、決められた掘進経路に沿って正しく掘進するように、先導体Eの掘進経路の制御を行っている。
ガイドユニット30の詳細を説明すると、31はガイドロッド34の前端部が固定され摺動子20の前方への移動を規制するとともに押し輪Bと共に前進して埋設管50を押す働きをする正面視U字状のプッシャプレート、32はガイドロッド34の後端部が固定され摺動子20の後方への移動を規制する背面視U字状のストッパプレート、33は円弧状に湾曲して形成されプッシャプレート31とストッパプレート32とを連結し固定する連結部材としての円弧板、34は前端部及び後端部がそれぞれプッシャプレート31及びストッパプレート32で支持され摺動子20を支持して前後に摺動させるようにガイドするガイドロッドである。
図7(b)に示すように、プッシャプレート31には、その左右に多数の螺子孔310を形成しており、これらの螺子孔310にそれぞれピン(図示せず)を螺着して突設し、多数のピンで埋設管50の後端外周部を把持することにより、埋設管50の推進時におけるプッシャプレート31に対する埋設管50のぶれを防げるようにしている。こうした螺子孔310は、種々の外径の埋設管50をピンで把持できるようにするため、ここに示す例では、プッシャプレート31内の異なる円周上の位置にペアで設けている。また、プッシャプレート31には、これを押し輪Bの前面に螺着できるようにするため、プッシャプレート31の周縁に沿って多数のボルト孔311を形成している。プッシャプレート31は、これらのボルト孔311を利用して押し輪Bの前面にボルトで締結される。円弧板33の後端側の底部には、排土管40の接続作業時に円弧板33上に堆積された泥土を排出するための排出孔330を形成している。ガイドロッド34は、これを挿通するためのボス部211と対応するように左右に一対設けている。
次に、図8及び図9に基づき、本管推進機の元押し装置を利用して管推進工法を実施する際に使用するアタッチメントについて説明する。
図8は、埋設管の推進開始時に使用する当て板を各方向から示した図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は背面図、図9は、埋設管の推進完了間際に使用するストラットを各方向から示した図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は背面図である。
まず、図8に基づき当て板70について説明する。当て板70は、埋設管50の後端側に当接させることができる正面視倒U字状の当接部70aと、この当接部70aの後部の左右にそれぞれ取り付けられスライドプレート21の上部に係止させることができる左右のアーム70bとを備えている。これら左右のアーム70bの下側には、それぞれ、当て板70をスライドプレート21に係止させるための凹部70cを設けている。
すでに述べたように、新たに接続された埋設管50を推進する際には、アダプタ管41(図11、図12等参照)を、末尾の排土管40の後端側に装着する。しかる後、摺動子20とガイドユニット30とからなる元押し排土ユニットDを押し輪Bと共に前進させてガイドユニット30のプッシャプレート31を埋設管50に推進用カラー60(図10乃至図16参照)を介して当接させ、その過程で、摺動子20の元押し排土管200(泥土導入パイプ220)にアダプタ管41を差し込んでゆくが、その場合、プッシャプレート31が埋設管50に当接した状態、すなわち埋設管50の推進開始の準備が完了した状態において、元押し排土管200へのアダプタ管41の差し込み量が許容範囲内に納まるようにする必要がある。そのためには、埋設管50の推進開始の準備完了時における元押し排土管200の前端と埋設管50の後端との間隔が適切になるように、元押し排土管200が組み込まれている摺動子20をガイドユニット30上の適切な位置に位置決めすることが必要である。
当て板70は、こうした要求に応えるために設けられたアタッチメントであって、アーム70bをスライドプレート21に係止させることにより摺動子20に着脱可能に取り付けて使用する。そして、押し輪Bの前進を開始した後、摺動子20と共に前進する当接部70aを、新しく接続した埋設管50の後端側(推進用カラー60の後端)に当接させて、摺動子20がガイドユニット30と共に前進するのを阻止して摺動子20を同ユニット30に対して後方に摺動させることにより、埋設管50の推進開始の準備完了時において摺動子20をガイドユニット30上の適切な位置に位置決めする働きをする。摺動子20をこうして位置決めした状態でこれの後方への位置ずれを防ぐため、ここに示す例では、位置決めされた摺動子20を当接させるためのストッパプレート32をガイドユニット30に設けている。
図9に基づきストラット80について説明する。ストラット80は、プッシャプレート31と埋設管50側とで挟持される所定の厚み(後述の「ダメ押し」に必要な厚み)を有する正面視倒U字状の挟持部材80aと、この挟持部80aの後部の左右にそれぞれ取り付けられスライドプレート21の上部に係止させることができる左右のアーム80bとを備えている。これら左右のアーム80bの下側には、それぞれ、ストラット80をスライドプレート21に係止させるための凹部80cを設けている。
小規模の発進立坑Tでは、排土管40の接続作業を行うための前述の作業代を確保する必要上、新規に接続した埋設管50を地山に十分に押し入れて、推進完了時に、その埋設管50の後端部をできるだけ発進立坑T内に突出させないようにする必要がある。しかしながら、実際には、推進ジャッキCのストローク等との関係で埋設管50を完全には推進できずにその後端部が発進立坑T内に突出せざるを得ない場合がある。こうした場合に、その埋設管50を更に推進して発進立坑T内への埋設管50の突出量をできるだけ少なくする作業を、ここでは「ダメ押し」と称する。
ストラット80は、こうしたダメ押しを行うとともに、ダメ押しの際、摺動子20が、前進するガイドユニット30に随伴せずに後方に摺動して置き去りにされるのを防ぐためのアタッチメントであって、挟持部材80aをプッシャプレート31と埋設管50側との間に挟み込むとともにアーム80bをスライドプレート21に係止させて使用する。後に詳述するように、埋設管50を限界まで推進して前進した押し輪Bを後退させて、このストラット80を摺動子20に係止させた後、推進ジャッキCで埋設管50を推進すると、挟持部材80aの厚み分だけダメ押しを行うことができるとともに、ストラット80が推進ジャッキCで押されて前進するときに、摺動子20をこのストラット80に随伴させて前進させることができるため、摺動子20が置き去りにされるようなことはない。その結果、ダメ押し時に、元押し排土管200の泥土導入パイプ220がアダプタ管41から離脱するのを防止することができる。
最後に、図10乃至図16に基づき、新設の排土管40や埋設管50の接続作業に着手してから新設の埋設管50のダメ押し工程を終了するまでの作業手順ついて、以上述べた管推進機の元押し装置の使用方法を説明しながら詳述する。
図10は、図1の管推進機の元押し装置を用いて排土管や埋設管の接続作業を行う手順を説明するための縦断面図、図11は、図1の管推進機の元押し装置を用いて新設の埋設管の推進の準備作業を行う手順を説明するための縦断面図、図12は、図11の主要部を示す同図における矢印I−I方向の矢視図、図13は、図1の管推進機の元押し装置を用いて新設の埋設管の推進開始の準備作業を完了させた状態を示す縦断面図、図14は、図13の主要部を示す同図における矢印J−J方向の矢視図、図15は、図1の管推進機の元押し装置を用いて新設の埋設管のダメ押し工程を終了させたときの状態を示す縦断面図、図16は、図15の主要部を示す同図における矢印K−K方向の矢視図である。
発進立坑Tから地山内に押し込んだ既設の埋設管50に新設の埋設管50を継ぎ足すときには、まず、推進ジャッキCを縮めて押し輪Bや更には元押し排土ユニットDを限界まで後退させるとともに、摺動子20をガイドユニット30に対して摺動させながら最後方まで移動させる。そうすると、摺動子20のスライドプレート21に付設された一対の当て棒210が、反力受け部材2に固定されたストッパ2aに当接し、これにより、レーザ発信器210への元押し排土管200の干渉を防止するのに必要な距離だけ、摺動子20をガイドユニット30に対して前方に相対移動させる。この状態において、元押し排土ユニットDと既設の埋設管50との間には、埋設管50の単位長さL相当分の空間及び排土管40や埋設管50の新設に伴う種々の作業を行うための作業代Y(作業用空間)を確保することができる。なお、新設の埋設管50の後端部には、埋設管50の継手部を管推進時に損傷させないようにするための環状の推進用カラー60を付設している。
次いで、排土管40を内蔵した新設の埋設管50を図10に鎖線で示すようにクレーンで吊った後、図10に実線で示すように、その埋設管50を元押し排土ユニットDと既設の埋設管50との間の極力後方寄りに吊り降ろして発進立坑T内に設置する。この状態において、新設の埋設管50の前方には、作業代Yを確保することができるので、この作業代Yを利用して、最初に、先導体E側に圧油や電気信号等を送るための油圧ホースや電気ケーブル(図示せず)を継ぎ足し、次いで、新設の排土管40を既設の排土管40に継ぎ足す。図10には、これらの作業が終了し、埋設管50の接続作業が未だ終了していない状態を図示している。
この状態において、新設の埋設管50をクレーンで前方に移動して、図11及び図12に示すように既設の埋設管50に継ぎ足す。そうすると、図10の例では、排土管40の接続端面間に最大限のガタXを生じさせているので、最後尾の排土管40(新設の排土管40)の後端は、新設の埋設管50の後端とほぼ揃う位置に位置することとなる。また、この新設の埋設管50と元押し排土管200との間には、作業代Yを確保することができるので、この作業代Yを利用することにより、押し輪Bの前進時に最後尾の排土管40を元押し排土管200の泥土導入パイプ220に連結できるようにするためのアダプタ管41の装着等の後述する種々の作業を行うことができる。
こうして埋設管50の後方に作業代Yを確保した後は、この作業代Yを利用して、図11及び図12に示すように最後尾の排土管40の後端部にアダプタ管41を装着する。図に示す例では、最後尾の排土管40の後端が埋設管50の中に入り込んでおらず、また、次回の排土管40の接続時にも、その後端が埋設管50の中に入り込む恐れがないものとみて、排土管40の後端部に前述した短管を接続していないが、そうでない場合には、最後尾の排土管40の後端部に短管を事前に接続した上でこの短管の後端部にアダプタ管41を装着する。一方、摺動子20には、作業代Yを利用して、図11及び図12に示すように当て板70を取り付け、こうして、新設の埋設管50を推進するための準備作業の最初の段階が調えられる。なお、この段階では、押し輪Bは、推進ジャッキCのシリンダ部の後端部に固定している。
しかる後、推進ジャッキCを伸ばして押し輪Bを前進させることにより、元押し排土ユニットDを押し輪Bと共に前進させて元押し排土管200(泥土導入パイプ220)にアダプタ管41を差し込んでゆく。こうして元押し排土ユニットDを所定の距離だけ前進させると、当て板70の当接部70aが、新設の埋設管50の後端部に付設している推進用カラー60に当接し、この状態から元押し排土ユニットDを更に前進させると、元押し排土ユニットDのうちの摺動子20の前進が当て板70により阻止され、ガイドユニット30だけが前進する。その結果、元押し排土管200の前端と埋設管50(推進用カラー60)の後端との間隔が一定に保たれた状態で、摺動子20がガイドユニット30に対して後方に相対移動する。そのため、元押し排土管200へのアダプタ管41の差し込み量を許容範囲内に納めることができる。
こうした状態の下で元押し排土ユニットDの前進を続行すると、やがて、プッシャプレート31が埋設管50に当接し、丁度このとき、ガイドユニット30に対して後方に相対移動している摺動子20がガイドユニット30のストッパプレート32に当接する。かくして、新設の埋設管50の推進開始の準備が完了し、以後、推進ジャッキCを更に伸ばせば、埋設管50を推進することができる。図13及び図14には、こうした推進開始の準備完了時の状態を図示している。次いで、埋設管50を押し輪Bで推進した後、既述の従来の技術と同様にして、この押し輪Bを推進ジャッキCのシリンダ部の前端部に固定し直すことにより埋設管50を更に推進して埋設管50を二段階で推進する。そして、最終的には、推進ジャッキCをフルストローク伸ばして新設の埋設管50を地山に押し込み、この埋設管50の後端部をできるだけ発進立坑T内に突出させないようにする。
しかしながら、実際には、埋設管50を完全には地山に押し込むことができずにその後端部が発進立坑T内に若干突出することもある。こうした場合には、ストラット80を用いてダメ押し工程を実施するが、図15及び図16には、このダメ押し工程を終了させたときの状態を図示している。このダメ押し工程を実施するときには、人力では移動不能な摺動子20を、これのスライドプレート21にストラット80を係止させることが可能な位置まで前進させるため、まず、元押し排土ユニットDを限界まで後退させて図10のような状態にセットする。すなわち、推進ジャッキCを限界まで縮めた後、この推進ジャッキCのシリンダ部の前端部に固定されている押し輪Bの固定を解除し、次いで、推進ジャッキCを限界まで伸ばしてこの推進ジャッキCのシリンダ部の後端部を押し輪Bの位置まで前進させ、しかる後、押し輪Bをそのシリンダ部の後端部に固定してから、推進ジャッキCを縮めて押し輪Bや元押し排土ユニットDを限界まで後退させる。
そうすると、すでに述べたように、摺動子20のスライドプレート21に付設された一対の当て棒210がストッパ2aに当接して摺動子20をガイドユニット30に対して前進させる。この状態においてストラット80をスライドプレート21に係止させることが可能となるので、当て板70を取り外した後、ストラット80をスライドプレート21に係止させる。このように、摺動子20の当て棒210は、元押し排土管200をレーザ発信器210に干渉させないようにするための前述の干渉防止手段の働きをするほか、ストラット80を係止させ得るように摺動子20を位置決めするためのストラット係止用の位置決め手段としての働きもする。
こうした方法によりストラット80をスライドプレート21に係止させた後、前記の手順と逆の手順で、押し輪Bや元押し排土ユニットDを、推進ジャッキCのシリンダ部の後端部から前端部に途中で付け変えながら推進ジャッキCの伸長により前進させると、やがて、ストラット80の挟持部材80aが、すでに地山に押し込まれている前記埋設管50の後端に推進用カラー60を介して当接する。そして、推進ジャッキCを引き続き伸ばすと、挟持部材80aがプッシャプレート31と埋設管50側(推進用カラー60)との間に挟持部材80aを挟み込まれた状態でストラット80の挟持部材80aの厚み分だけダメ押しを行うこととなる。その間、摺動子20は、ストラット80に牽引されて前進するため、元押し排土管200がアダプタ管41から離脱することはない。
以上、本発明を具体化した管推進機の元押し装置について優れた特徴を種々述べたが、その最大の特徴は、「押し輪Bに取り付けられ摺動子20を前後方向に摺動可能に支持するガイドユニット30を設けてその摺動子20に元押し排土管200を組み込むことにより、元押し排土管200をガイドユニット30に前後方向に相対移動できるように設置するとともに、押し輪Bを限界まで後退させたときに反力受け部材2のストッパ2aに当接させることにより元押し排土管200をガイドユニット30に対し前方に相対移動させてレーザ発信器100に干渉させないようにするための干渉防止手段としての当て棒210を摺動子20に設けた」点にある。
この管推進機の元押し装置では、このように元押し排土管200をガイドユニット30に対して前後方向に相対移動できるように設置しているので、押し輪Bをガイドユニット30と共に限界まで後退させたときでも、元押し排土管200をガイドユニット30に対し、レーザ発信器100の厚みに応じて前方に相対移動させることにより、元押し排土管200がレーザ発信器100に干渉するのを防ぐことができる。この元押し排土管200は、通常、上部にかなりの長さの排土ホースが接続されているため、人力で移動させることは困難である。しかるに、この管推進機の元押し装置では、ガイドユニット30に加えて、干渉防止手段としての当て棒210を摺動子20に設けているので、押し輪Bを限界まで後退させことにより、元押し排土管200がガイドユニット30に随伴して限界まで後退しようとしたときには、当て棒210が反力受け部材2側に当接し、これにより、元押し排土管200をガイドユニット30に対し、人力によることなく自動的に前方に相対移動させることができる。
そして、元押し排土管200をレーザ発信器100に干渉させないようにするためのガイドユニット30に対する元押し排土管200の相対移動量は、レーザ発信器100の厚みに応じて当て棒210の長さを調整することにより適宜設定すればよい。したがって、この管推進機の元押し装置によれば、発進立坑T内に設置するレーザ発信器100の厚みに設計上の特別の配慮をしなくても、元押し排土管200がレーザ発信器100に干渉するのを確実に防止することができる。そのため、この管推進機の元押し装置によれば、レーザ発信器100を小規模の発進立坑T内に配置する場合でも、従来のように厚みの薄い高価なレーザ発信器を特別注文により配備するようなことは要せず、安価な汎用のレーザ発信器を入手すれば済み、管推進機の製作費を節減することができる。