JP4159754B2 - 電子写真感光体及びその製造方法、並びにそれを用いた画像形成装置、プロセスカートリッジ - Google Patents
電子写真感光体及びその製造方法、並びにそれを用いた画像形成装置、プロセスカートリッジ Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体及びその製造方法、並びに電子写真感光体を用いた画像形成装置、プロセスカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、円筒状又はベルト状基体の外側面上に電子写真感光層用塗布液を塗布し、乾燥させて感光層塗膜を形成することにより電子写真用感光体を製造する方法として、浸漬塗工法、リング塗工法、スプレー塗工法などが知られている。
【0003】
浸漬塗工法では表面平滑性に優れた感光層塗膜が得られるが、大量の塗布液を必要とするという欠点を有している。更に、塗膜の均一性が塗布液の物性と塗工速度との二つの因子に大きく支配されるため、塗布液物性の経時変化による影響を受けやすく、製造ラインにおいて膜厚の均一な塗膜を得るための塗布液物性の制御が繁雑になるという欠点を有している。
【0004】
また、リング塗工法は、環状の塗布リングの中心と円筒状基体の中心とを合わせ、塗布リングと円筒状基体との間隙に塗布液を少量流し、塗布リング又は円筒状基体を移動させることによって基体上に感光層塗膜を形成する方法であるが、この塗工法ではリングと基体との間隙の僅かな変動が塗膜の均一性に大きく影響するため、塗工装置の精度を厳密に維持管理しなければならないという欠点を有している。更に、この塗工法ではベルト状基体に均一な塗布を行うことが非常に困難であるという欠点も有している。
【0005】
このような塗工法に対し、スプレー塗工法は少量の塗布液により様々な基体に対して感光層塗膜を形成することができ、また塗布液物性の制御や塗工装置の精度の維持管理が比較的容易に行えるという利点を有している。
【0006】
しかし、スプレー塗工法では、霧化された液滴が不均一に噴霧されると、それが膜厚の不均一さの原因となってしまうという欠点を有していた。
特に電荷発生層の膜厚が不均一だと、膜厚の厚いところは感度が速く、膜厚が薄いところは感度が遅くなり、電子写真装置で画像を出力した際に、画像濃度にムラが発生する原因となる場合がある。従来は膜厚ムラを抑えるために、塗工装置に依存する噴霧条件を経験的に変更するなどの方法がとられていたが、膜厚ムラと相関のあるような物性値がなかったため、製造工程においては、製造ラインで製品をサンプリングして膜厚ムラを調べるなどしており、生産性が悪く、不良品の発生も多くなり、コスト高につながっていた。
【0007】
さらに、近年の電子写真の高画質化、高解像度化、カラー化にともない、より均一な膜厚の塗膜を有する電子写真感光体が望まれるようになってきた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、スプレー塗工法における膜厚ムラ、特に電荷発生層のムラを抑えた電子写真感光体と、その製造方法、さらにはそれを用いた画像形成装置、画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することをその課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、導電性支持体上に1層以上の感光層を有し、該感光層がスプレー塗工方法によって塗布形成されたものである電子写真用感光体において、該感光層の少なくとも1つの層は、スプレー装置によって霧化された感光層形成用塗工液の粒度分布が、10μm以下の粒子が全体の体積の90%以上となるような粒度分布を示すスプレー塗工方法によって形成されたものであることを特徴とする電子写真感光体が提供される。
また、本発明によれば、上記構成において、前記感光層が電荷輸送層と電荷発生層とに機能分離されており、少なくとも該電荷発生層がスプレー塗工方法によって形成されたものであることを特徴とする電子写真感光体が提供される。
また、本発明によれば、電子写真感光体に少なくとも帯電、露光、現像、転写を繰り返し行う画像形成装置において、前記電子写真感光体を備えたことを特徴とする画像形成装置が提供される。
また、本発明によれば、上記構成において、ビームスポットの大きさが3.0×10-3mm2以下のレーザー光によって露光を行うことを特徴とする画像形成装置が提供される。
また、本発明によれば、前記電子写真感光体を備えたことを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジが提供される。
また、本発明によれば、導電性支持体上に1層以上の感光層を有し、該感光層の少なくとも1つの層は、スプレー塗工方法によって塗布形成する電子写真用感光体の製造方法において、スプレー装置によって霧化された感光層形成用塗工液の液滴の粒度分布が、10μm以下の粒子が粒子全体の体積の90%以上となるような粒度分布を示すスプレー塗工方法によって前記感光層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、上記構成において、前記感光層が電荷輸送層と電荷発生層とに機能分離されており、少なくとも該電荷発生層をスプレー塗工方法によって形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法が提供される。
【0010】
本発明に使用されるスプレーガンは、エアスプレー、エアレススプレー、静電スプレーのいずれのスプレーガンを用いてもよい。
これらを用いて霧化された感光層形成用塗工液の粒径分布を、レーザー光散乱方式粒度分布測定装置を用いて測定し、10μm以下の粒子が全体の体積の90%以上となるような粒度分布となるように霧化条件を調整することで膜厚ムラを抑えることができる。霧化工程で変更可能な因子としては、例えば、エアスプレーであれば、霧化エア圧力、霧化エア流量、吹き出し口のノズルの開度などが挙げられるが、粒度分布が特許請求の範囲に含まれる条件に設定することで膜厚ムラの少ない感光層を得ることができる。これは、所望の塗膜を得る際に、粒径の大きな液滴が少数付着する塗工条件と比較して、粒径の小さい液滴が数多く付着するような条件の方が、より均一な厚みのウェット膜を形成し、その結果、乾燥後の膜厚も均一になるためではないかと考えられる。
【0011】
また、レーザー光散乱方式粒度分布測定装置は測定に用いるレーザーの照射方向、散乱光の受光部を、スプレーの吐出方向と垂直方向に設置することができるため、塗布しながら測定することも可能である。したがって、生産ラインで、感光層を塗布しながらその霧化粒子の粒度分布をリアルタイムにモニターすることができ、膜厚ムラによる不良品の発生を最小限に抑え、生産性を高めることが可能である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に沿って本発明を説明する。
図1は本発明の電子写真用感光体の模式断面図であり、導電性基体上に感光層を設けた構成のものである。図2〜4は各々本発明における電子写真用感光体の他の構成例を示すものであり、図2は感光層が電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)より構成される機能分離型タイプのもの、図3は導電性基体と機能分離型タイプの感光層のCGL、CTLの間に下引き層を入れたもの、図4は最表層に保護層を設けたものである。なお、導電性支持体上に少なくとも感光層を有していれば、上記のその他の層、及び感光層のタイプは任意に組み合わされていても構わない。
【0013】
本発明において電子写真用感光体に使用される導電性支持体としては、導電体あるいは導電処理をした絶縁体、例えばAl、Ni、Fe、Cu、Auなどの金属、あるいはそれらの合金の他、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ガラス等の絶縁性基体上にAl、Ag、Au等の金属あるいはIn2O3、SnO2等の導電材料の薄膜を形成したもの、導電処理をした紙等が使用できる。導電性支持体の形状は特に制約はなく、板状、ドラム状あるいはベルト状のいずれのものも使用できる。
【0014】
導電性支持体と感光層との間には、必要に応じて、下引き層を設けてもよい。設けられる下引き層は、接着性を向上する、モアレなどを防止する、上層の塗工性を改良する、残留電位を低減するなどの目的で設けられる。下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を、溶剤を用いて塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン、等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。また、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を分散し含有させてもよい。これらの下引き層は、適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。
【0015】
更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用して、例えばゾル−ゲル法等により形成した金属酸化物層も有用である。
この他に、本発明の下引き層にはAl2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物や、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。下引き層の膜厚は0.1〜20μmが適当であり、好ましくは1〜10μmである。
【0016】
次に、この導電性支持体に下引き層を介して設けられる感光層について以下に簡単に説明する。
本発明における感光層は、単層型でも積層型でもよいが、ここではまず積層型について述べる。
【0017】
はじめに、電荷発生層について説明する。電荷発生層は、電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を用いることもある。電荷発生物質としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0018】
また、必要に応じて電荷輸送物質を添加してもよい。また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、高分子電荷輸送物質が良好に用いられる。
これら有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂とともにテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、分散液を適度に希釈して電荷発生層形成用塗工液を作製する。この塗工液をスプレー塗工機によって、前記の必要ならば下引き層を設けた導電性支持体に、本発明の請求範囲に記載の範囲の粒度分布をもって塗布する。
【0019】
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
電荷輸送層は帯電電荷を保持させ、かつ露光により電荷発生層で発生分離した電荷を移動させて保持していた帯電電荷と結合させることを目的とする層である。帯電電荷を保持させる目的達成のために電気抵抗が高いことが要求され、また保持していた帯電電荷で高い表面電位を得る目的を達成するためには、誘電率が小さくかつ電荷移動性が良いことが要求される。
【0020】
これらの要件を満足させるための電荷輸送層は、電荷輸送物質及び必要に応じて用いられるバインダー樹脂より構成される。これらの電荷輸送物質及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。必要により電荷輸送物質及びバインダー樹脂以外に、可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
【0021】
電荷輸送物質としては、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0022】
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。たとえば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0023】
また、高分子電荷輸送層物質は、以下のような構造を有する。
(a)カルバゾール環を有する重合体
例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、特開昭50−82056号公報、特開昭54−9632号公報、特開昭54−11737号公報、特開平4−175337号公報、特開平4−183719号公報、特開平6−234841号公報に記載の化合物等が例示される。
【0024】
(b)ヒドラゾン構造を有する重合体
例えば、特開昭57−78402号公報、特開昭61−20953号公報、特開昭61−296358号公報、特開平1−134456号公報、特開平1−179164号公報、特開平3−180851号公報、特開平3−180852号公報、特開平3−50555号公報、特開平5−310904号公報、特開平6−234840号公報に記載の化合物等が例示される。
【0025】
(c)ポリシリレン重合体
例えば、特開昭63−285552号公報、特開平1−88461、特開平4−264130、特開平4−264131、特開平4−264132、特開平4−264133、特開平4−289867に記載の化合物等が例示される。
【0026】
(d)トリアリールアミン構造を有する重合体
例えば、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノポリスチレン、特開平1−134457号公報、特開平2−282264号公報、特開平2−304456号公報、特開平4−133065号公報、特開平4−133066号公報、特開平5−40350号公報、特開平5−202135号公報に記載の化合物等が例示される。
【0027】
(e)その他の重合体
例えば、ニトロピレンのホルムアルデヒド縮重合体、特開昭51−73888号公報、特開昭56−150749号公報、特開平6−234836号公報、特開平6−234837号公報に記載の化合物等が例示される。
【0028】
本発明に使用される電子供与性基を有する重合体は、上記重合体だけでなく、公知単量体の共重合体や、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマーや、また、例えば特開平3−109406号公報に開示されているような電子供与性基を有する架橋重合体等を用いることも可能である。
【0029】
また、本発明に用いられる高分子電荷輸送物質として更に有用なトリアリールアミン構造を有するポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテルとしては以下に記載の化合物が例示される。
例えば、特開昭64−1728号公報、特開昭64−13061号公報、特開昭64−19049号公報、特開平4−11627号公報、特開平4−225014号公報、特開平4−230767号公報、特開平4−320420号公報、特開平5−232727号公報、特開平7−56374号公報、特開平9−127713号公報、特開平9−222740号公報、特開平9−265197号公報、特開平9−211877号公報、特開平9−304956号公報等に記載の化合物がある。
【0030】
また、電荷輸送層に併用できるバインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリスチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、フェノキシ樹脂などが用いられる。これらのバインダーは、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0031】
本発明における電荷輸送層中に、ゴム、プラスチック、油脂類などに用いられる他の酸化防止剤や可塑剤を添加していてもかまわない。
【0032】
電荷輸送層中にレベリング剤を添加してもかまわない。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して、0〜1重量部が適当である。
【0033】
この電荷輸送層は適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができるが、スプレー塗工法を行う際には、前出の電荷発生層を形成したときと同様にレーザー光散乱方式粒度分布測定装置(東日コンピュータアプリケーションズ社製)を用いて粒度分布を測定し、10μm以下の粒子が全体の体積の90%以上となるような粒度分布となるように霧化条件を調整することで、膜厚ムラを抑えることができる。
【0034】
電荷輸送層の膜厚は、5〜100μm程度が適当であり、好ましくは15〜30μmである。
【0035】
次に、感光層が単層構成の場合について述べる。
スプレー塗工によって単層感光層を設ける場合、多くは電荷発生物質と低分子ならびに高分子電荷輸送物質を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。電荷発生物質ならびに電荷輸送物質には、前出の材料を用いることができる。
【0036】
この場合も、前出の電荷発生層を形成したときと同様にレーザー光散乱方式粒度分布測定装置(東日コンピュータアプリケーションズ社製)を用いて粒度分布を測定し、10μm以下の粒子が全体の体積の90%以上となるような粒度分布となるように霧化条件を調整することで、膜厚ムラを抑えることができる。
【0037】
また、必要により可塑剤を添加することもできる。更に、必要に応じて用いることのできるバインダー樹脂としては、先に電荷輸送層で挙げたバインダー樹脂をそのまま用いる他に、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。単層感光体の膜厚は、5〜100μm程度が適当であり、好ましくは15〜30μmである。
【0038】
保護層は感光体の耐久性向上の目的で設けられ、これに使用される材料としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等に樹脂が挙げられる。
【0039】
保護層には、そのほか耐摩耗性を向上させる目的でポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂、シリコーン樹脂、また酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム等の無機材料等を添加することができる。保護層の形成法としては、適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができるが、この場合も、前出の電荷発生層を形成したときと同様にレーザー光散乱方式粒度分布測定装置(東日コンピュータアプリケーションズ社製)を用いて粒度分布を測定し、10μm以下の粒子が全体の体積の90%以上となるような粒度分布となるように霧化条件を調整することで膜厚ムラを抑えることができる。なお、保護層の厚さは0.1〜10μmが適当である。
【0040】
図5は、本発明の画像形成装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図5において、感光体1は本発明にて製造された電子写真感光体が設けられてなる。感光体1はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。帯電チャージャ3、転写前チャージャ7、転写チャージャ10、分離チャージャ11、クリーニング前チャージャ13には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャ)、帯電ローラを始めとする公知の手段が用いられる。
【0041】
転写手段には、一般に上記の帯電器が使用できるが、図に示されるように転写チャージャと分離チャージャを併用したものが効果的である。
また、画像露光部5、除電ランプ2等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0042】
かかる光源等は、図5に示される工程の他に光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体に光が照射される。
【0043】
さて、現像ユニット6により感光体1上に現像されたトナーは、転写紙9に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体1上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニングブラシ14及びブレード15により、感光体より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
【0044】
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。
これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0045】
図6には、本発明による画像形成装置の別のプロセスの例を示す。感光体16は本発明にて製造された電子写真感光体を有しており、駆動ローラ17a、17bにより駆動され、帯電チャージャ18による帯電、光源19による像露光、現像(図示せず)、転写チャージャ20を用いる転写、光源21によるクリーニング前露光、ブラシ22によるクリーニング、光源23による除電が繰返し行なわれる。図6においては、感光体16(勿論この場合は支持体が透光性である)に支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。
【0046】
これら図で示した画像形成装置は、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。例えば、図6において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは感光層側から行ってもよいし、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。
【0047】
一方、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、及びその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行なうこともできる。
【0048】
以上に示すような画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図7に示すものが挙げられる。感光体24は、導電性支持体上に本発明にて製造された電子写真感光体を有してなるものである。
以上に示す本発明による画像形成装置を用いることで、良好な画像を提供できることを見出した。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、これにより本発明の態様が限定されるものではない。なお、以下に示す部はいずれも重量基準である。
【0050】
実施例1
アルキッド樹脂(ベッコゾール1307−60−EL(大日本インキ化学工業社製))15重量部、メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60(大日本インキ化学工業社製))10重量部をメチルエチルケトン150重量部に溶解し、これに酸化チタン粉末(タイペールCR−EL(石原産業社製))90重量部を加えボールミルで12時間分散し、下引き層用塗工液を作製した。
これをφ92mm、長さ367mm、厚み30μmのニッケルシームレスベルトに浸漬塗工法によって塗工し130℃20分間乾燥し、厚み3.5μmの下引き層を形成した。
次にポリビニルブチラール樹脂(エスレックHL−S(積水化学工業社製))4重量部をシクロヘキサノン150重量部に溶解し、これを下記構造式(1)に示すトリスアゾ顔料に10重量部を加え、ボールミルで48時間分散後、さらにシクロヘキサノン210重量部を加えて3時間分散を行った。
【化1】
これを容器に取り出し固形分が1.5重量%となるようにシクロヘキサノンで稀釈した。こうして得られた電荷発生層用塗工液を前記下引き層上にエアスプレーを用いて塗工し、130℃20分間乾燥し、厚み0.2μmの電荷発生層を形成した。
また、この時の霧化エア圧は6.5kgf/cm2、エア流量は20l/minで、霧化された塗工液の粒度分布をレーザー光散乱方式粒度分布測定装置(東日コンピュータアプリケーションズ社製)を用いて測定したところ、5.5μm以下の粒子が全体の体積の90%となるような粒度分布を示した。さらにこのとき形成された電荷発生層は目視において、濃度ムラは見られなかった。
次に、テトラヒドロフラン83部に、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂10部、シリコーンオイル(KF−50(信越化学工業社製))0.002部を溶解し、これに下記構造式(2)の電荷輸送物質8部を加えて、電荷輸送層用塗工液を作製した。こうして得られた電荷輸送層用塗工液を電荷発生層上に浸漬塗工後、110℃20分間乾燥し、厚み20μmの電荷輸送層を形成した。
【化2】
以上のようにして、実施例1の電子写真感光体を作製した。
【0051】
実施例2〜4、比較例1〜2
霧化エア圧とエア流量を表1の様に変更して、スプレー塗工し、電荷発生層を形成した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4及び比較例1〜2の電子写真感光体を作製した。
この時霧化された塗工液の粒度分布において、全体の体積の90%以上となる粒径D90と、塗膜の濃度ムラ、さらに、こうして得られたそれぞれの感光体をフルカラーレーザープリンターIPSIO Color 5000(リコー製(λ=80nm、600dpi、ビーム径76×76μm)を用いて、ハーフトーンの画像を出力し、画像濃度ムラをしらべた。
結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例5
電荷発生物質(1)を下記構造式(3)の物質に変えた以外は実施例1と同様にして実施例5の電子写真感光体を作製した。
【化3】
【0054】
実施例6〜8、比較例3〜4
霧化エア圧、エア流量を表2の様に変更して、スプレー塗工し、電荷発生層を形成した以外は実施例6と同様にして、実施例6〜8、比較例3〜4の電子写真感光体を作製した。
このスプレー塗工時の粒度分布において、全体の体積の90%となる粒径D90と、塗膜の濃度ムラ、さらに、こうして得られたそれぞれの感光体をフルカラーレーザープリンターIPSIO Color 5000の改造機(リコー製(λ=655nm、1200dpiビーム径50×65μm)を用いて、ハーフトーンの画像を出力し、画像濃度ムラをしらべた。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
【発明の効果】
実施例より明らかなように、本発明の特許請求の範囲の要件を満たす実施例の電子写真感光体及び画像形成装置は、電荷発生層の濃度ムラが少なく、画像においても濃淡ムラのない良好な画像が得られることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の層構成を例示する断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の別の層構成を例示する断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の別の層構成を例示する断面図である。
【図4】本発明の電子写真感光体の別の層構成を例示する断面図である。
【図5】本発明の画像形成装置を例示する概略図である。
【図6】本発明の画像形成装置の別のプロセスを例示する概略図である。
【図7】本発明の画像形成装置内に組み込まれるプロセスカートリッジを例示する概略図である。
【符号の説明】
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
4 イレーサ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 クリーニングブラシ
15 ブレード
16 感光体
17a、17b 駆動ローラ
18 帯電チャージャ
19 像露光光源
20 転写チャージャ
21 クリーニング前露光
22 クリーニングブラシ
23 除電露光
Claims (7)
- 導電性支持体上に1層以上の感光層を有し、該感光層がスプレー塗工方法によって塗布形成されたものである電子写真用感光体において、該感光層の少なくとも1つの層は、スプレー装置によって霧化された感光層形成用塗工液の粒度分布が、10μm以下の粒子が全体の体積の90%以上となるような粒度分布を示すスプレー塗工方法によって形成されたものであることを特徴とする電子写真感光体。
- 前記感光層が電荷輸送層と電荷発生層とに機能分離されており、少なくとも該電荷発生層がスプレー塗工方法によって形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 電子写真感光体に少なくとも帯電、露光、現像、転写を繰り返し行う画像形成装置において、請求項1又は2に記載の電子写真感光体を備えたことを特徴とする画像形成装置。
- ビームスポットの大きさが3.0×10-3mm2以下のレーザー光によって露光を行うことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
- 請求項1又は2に記載の電子写真感光体を備えたことを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
- 導電性支持体上に1層以上の感光層を有し、該感光層の少なくとも1つの層は、スプレー塗工方法によって塗布形成する電子写真用感光体の製造方法において、スプレー装置によって霧化された感光層形成用塗工液の液滴の粒度分布が、10μm以下の粒子が粒子全体の体積の90%以上となるような粒度分布を示すスプレー塗工方法によって前記感光層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
- 前記感光層が電荷輸送層と電荷発生層とに機能分離されており、少なくとも該電荷発生層をスプレー塗工方法によって形成することを特徴とする請求項6に記載の電子写真感光体の製造方法。
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