JP4159652B2 - 長期粘度安定性及び作業適性に優れたシーリング材組成物 - Google Patents

長期粘度安定性及び作業適性に優れたシーリング材組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は湿気硬化型シリコーン系シーリング材の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリル化ポリアルキレン系シーリング材は、分子末端にアルコキシシリル基を有し主鎖構造がアルキレン構造であるシリコーン系ポリマーを主成分とし、プロセスオイル等の可塑剤、無機充填材、必要に応じ、顔料、揺変剤、老化防止剤を配合したシーリング材組成物である。このシーリング材で市場導入段階にあるのが、アルコキシシリル基がメチルジメトキシシリル基であって、主鎖構造がポリイソブチレンのシリコーン系ポリマーを主成分とするシーリング材組成物である。このシーリング材の使用に当たっては、上記シーリング材組成物に、スズ系触媒及びアミン化合物を配合した硬化剤を混合する2成分形シーラントとして用いる。更に目的によっては、着色顔料を可塑剤等に分散した着色ペースト類を配合することもある。このシーリング材は、分子末端がアルコキシシリル基で主鎖構造が有機化合物系ポリマーであるため、変成シリコーン系シーラントに分類される。硬化機構はアルコキシシリル基が、湿気硬化によりシロキサン結合をつくりゴム状弾性体を形成することによる。その硬化物の特性は、親水性のポリエーテル化合物を主鎖構造とする市販の変成シリコーン系シーラントに比べ、疎水性の炭化水素を主鎖構造とするため、格段に耐候性、耐湿性、耐久性などが優れている。主鎖構造が炭化水素であることは、確かに一旦硬化すれば優れた耐湿性を与えるが、疎水性のため湿気硬化が深部まで至りにくいとの大きな難点がある。
【0003】
また、このシーリング材は、使用段階における総合的シール作業性に著しく難点が指摘されている。この総合的シール作業性とは、硬化剤配合時の混合容易性(以下、「混合性」という。)、目地充填時の作業のしやすさ(以下、「シール作業適性」という。)、垂直目地充填後の塑性流動による仕上がり不良(以下、「スランプ性」という。)に分類される。ところで、業界ではこの総合的シール作業性の良否は、硬化物性と同じくらい重視されている。この総合的シール作業性が劣る原因は、そのシーラントのベースポリマーが粘度が非常に高く、構造粘性の付与が困難なためである。そのため、混合加工したシーリング材は、業界でいう重たくキレの悪い粘性で、この改良が必要である。
【0004】
従来、この難点を改良すべき技術手段として、水を配合する試みがなされている。この水の配合で、内部硬化性が改良され、水による部分乳化に由来するためか構造粘性が向上し、総合的シール作業性も幾分改善する。しかし、加水分解性を持つアルコキシシリル基含有ポリマーに水分を配合することは、貯蔵時の大幅な粘度変化をまねき重大な品質低下の原因となる。つまり、貯蔵安定性(以下、「貯安性」という。)の維持に大きな問題点がある。しかしながら、このシーリング材の硬化後の優れた各種特性を維持し、内部硬化性、貯安性、総合的シール作業性などの諸問題を根本的に改良することができるなら、使いやすく今までにない高度な物性を持つ全く新しい変成シリコーン系シーラントを産業界に提供することになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
分子末端にアルコキシシリル基を有し主鎖構造がアルキレン構造であるシリコーン系ポリマーを主成分とするシーリング材の内部硬化性に配慮して貯安性を改良すると共に、上記の総合シール作業性を改良することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の従来のシーリング材の内部硬化性を改良する技術手段である水分の配合は、本質的に貯安性が乏しいため、発明者らは、これに代わる手段を探すこととした。一般に主鎖構造が親水性のポリエーテル化合物である変成シリコーン系シーラントにアルコールを配合することは、経時増粘、経時硬化遅延など貯安性の低下の原因となるため技術手段として避けられている。しかし、主鎖構造が疎水性のポリアルキレン化合物なら、アルコキシシリル基に与える影響が変わるのではないかと考えた。そこで、親水性を付与するため、低分子から高分子に至る各種アルコールを配合したところ、主鎖構造が疎水性のポリアルキレン構造なら内部硬化性を低下させず、貯安性を改良できることに気づいた。その実験過程で、特定のアルコールの配合が粘性までも著しく変化させることを発見した。その粘性の変化とは、構造粘性の付与であった。当初は内部硬化性を配慮した貯安性の改良しか考えていなかったが、この構造粘性を著しく変化させる予期せぬ特性を、懸案となっている総合的シール作業性の改良にまで利用できないかと考えた。この考えを基に、鋭意実験を重ねたところ、シーリング材に多価アルコールを配合する時に限り、内部硬化性を低下させることなく、貯安性の改良と著しい総合的シール作業性の改善を与えること、しかも硬化後の本来の物性になんら悪影響を与えないことを確認し、本発明を完成するに至った。
【0007】
以下、本発明の具体的技術手段を説明する。
本発明は、分子末端にアルコキシシリル基を有し主鎖構造がアルキレン構造であるシリコーン系ポリマーを主成分とするシーリング材に分子量400以下の多価アルコール配合することを特徴とする長期粘度安定性に優れ、シーリング作業時の作業適性に優れたシーリング材組成物に関する。
【0008】
即ち、上記の分子末端にアルコキシシリル基を有し主鎖構造がアルキレン構造であるシリコーン系ポリマーとは、トリアルコキシシリル基、アルキルジアルコキシシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基の1種以上を分子末端に有し、主鎖構造がエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンのような繰り返し単位のポリアルキレン構造を持つ数平均分子量が1000〜30000のポリマーで、この内、アルコキシシリル基がメチルジメトキシシリル基であって、主鎖構造がポリイソブチレンであり数平均分子量が5000〜20000であるポリマーが耐候性、耐湿性、耐久性に優れるため好ましい。
【0009】
上記の分子量400以下の多価アルコールとは、−CH2−CH2O−を繰り返し単位とするエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、−CH2−CH(CH3)O−を繰り返し単位とするプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオールなどのアルキレングリコール、及びグリセリンがある。尚、本発明の効果は低分子量の多価アルコールに限られる。その分子量の上限は400である。400を超えた場合は内部硬化性が低下し、総合的シール作業性の改良効果も乏しく、実用的性能は得られない。この内、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンが本来の硬化物性を維持しながら内部硬化性、構造粘性の付与、総合的シール作業性の改良効果を与えるため好ましい。
【0010】
本発明のシーリング材ベースは、上記シリコーン系ポリマーに、炭酸カルシウム、タルク、クレーなどの無機充填材、プロセスオイルのようなパラフィン系可塑剤、ジオクチルフタレートのようなフタル酸エステル系可塑剤、必要に応じてチタン白などの着色顔料、脂肪酸アミド、無水シリカなどの揺変剤及び芒硝のような分子内に結晶水を有する化合物などを配合したものである。このシーリング材ベースは、シリコーン系ポリマー100質量部に対し、無機充填材50〜300質量部、可塑剤10〜200質量部が好ましい。
【0011】
本発明のシーリング材は、このシーリング材ベースの製造時又は製造後に上記の多価アルコールを配合したものである。本発明のシーリング材は、密閉容器に貯蔵し、使用時にスズ系触媒及びアミン化合物、また必要に応じてアルミニウムシリケートやケイ酸カルシウムを配合した公知の硬化剤を混合する2成分形シーラントとして用いる。
【0012】
すなわち、請求項1の発明は、アルコキシシリル基がメチルジメトキシシリル基であって、主鎖構造がポリイソブチレンである上記シリコーン系ポリマーを主成分とするシーリング材に、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンから選択した上記の多価アルコールを1種以上配合することを特徴とする上記に記載の中で、具体的なシーリング材組成物に関する。
【0013】
即ち、このシーリング材組成物が、優れた貯安性と総合的シール作業性を有し、内部硬化性と硬化物性に悪影響を与えない好ましい組成物である。
【0014】
さらに、請求項1の発明は、上記シーリング材において、上記シリコーン系ポリマー100質量部に対し、上記多価アルコール0.1〜50質量部配合することを特徴とするシーリング材組成物に関する。この範囲の配合をおこなったとき、本発明の効果が優れる範囲である。
【0015】
即ち、多価アルコールが0.1質量部以下の場合は、構造粘性に導く粘性改良効果が少ないため総合的シール物性の改良効果が不足しがちとなり、50質量部以上の場合は、硬化後の耐候性、耐湿性、耐久性が不足しがちとなる。このうち、特に好ましくは0.5〜30質量部が本発明の効果が最も発揮される。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のシリル化ポリアルキレン系シーリング材の実施の形態を記述する上で、ベストモードとなる製造方法で説明をする。シリル化ポリアルキレン系ポリマーは、アルコキシシリル基がメチルジメトキシシリル基であって主鎖構造がポリイソブチレンであり、数平均分子量が5000〜20000のもの(以下、このポリマーを「PIBポリマー」という。)が市販されているのでこれを用いて説明する。この市販品は、取り扱いやすい液状にするため、プロセスオイルと呼ばれるパラフィン系可塑剤を希釈剤として10〜40質量%含有している。このポリマーを窒素気流装置、攪拌機、減圧脱水装置及び加熱装置を備えたシーラント製造装置に仕込む。この装置はウレタンシーリング材又は変成シリコーンシーリング材を製造する装置でよい。この装置にプロセスオイルで希釈してあるPIBポリマーを仕込み、攪拌しながら炭酸カルシウムなどの無機充填材、必要に応じて可塑剤、揺変剤、老化防止剤などを順次仕込み、均質混合を行う。この中で本発明の多価アルコールの混合時期は特に定めがない。
【0017】
本発明のシーリング材を使用する方法は、上記のようにして製造したシーリング材を主剤として、シーラント工事等の施工前に市販の混合装置を用いて硬化剤を配合すればよい。この硬化剤は、スズ触媒などの金属系化合物、アミン化合物など、公知のものを適宜選択すればよい。また、必要に応じて着色カラーペーストなどの着色剤を適宜配合することもできる。混合後は、定められた可使時間内に通常業界で実施されている方法でシーラント工事する。
【0018】
【実施例】
(実施例1)
市販のシール混合機である加熱、攪拌、減圧、窒素気流装置を備えた5Lプラネタリーミキサー(商品名プラネタリーミキサーPLM5:井上製作所製)に、数平均分子量(以下、「Mn」という。)20000の分子末端がメチルジメトキシシリル基で主鎖がポリイソブチレンであるシリコーン系ポリマー100質量部を含むパラフィン系可塑剤溶液(商品名エピオン:鐘淵化学工業社製)150質量部、可塑剤としてパラフィン系プロセスオイル(商品名ダイアナプロセスオイルPS−32:出光興産社製)50質量部、コロイド炭酸カルシウム(商品名MC−K:丸尾カルシウム社製)150質量部、エチレングリコール10質量部を加え、粗練り工程として50Torrの減圧下で室温にて攪拌を30分間行った。
【0019】
その後、パラフィン系プロセスオイル(商品名ダイアナプロセスオイルPS−32:出光興産社製)20質量部を加え、50Torrの条件で攪拌を60分間行い、2成分形シーリング材の基剤を作製した。
【0020】
(比較例1)
実施例1の製造工程において,エチレングリコールの代わりにポリエチレングリコール(Mn=400)10質量部を加え、それ以外は実施例1と同じ方法で2成分形シーリング材の基剤を得た。
【0021】
(比較例2)
実施例1の製造工程において,エチレングリコールの代わりに水10質量部を加え、それ以外は実施例1と同じ方法で2成分形シーリング材の基剤を得た。
【0022】
(比較例3)
実施例1の製造工程において,エチレングリコールを配合せず、それ以外は実施例1と同じ方法で2成分形シーリング材の基剤を得た。
【0023】
このようにして得られた2成分形シーリング材の基剤について硬化性、粘性、貯安性、総合的シール作業性、シール物性を下記の方法にて評価した。
【0024】
シーラント作業に用いる硬化性を備えたシーリング材(以下、「硬化性試料」という。)は、実施例及び比較例の基剤100質量部に対して、硬化剤(硬化剤はスズ触媒アミン化合物、及び、アルミニウムシリケート、プロセスオイルの混合物で構成したペースト状のもの)を10質量部配合した。硬化性は、それぞれの硬化性試料を深さ15mm、直径50mmの円柱型の容器に充填する。充填したものを標準条件(22±1℃,55±5%RH)に調整された屋内に放置し、24時間後と48時間後にJIS K6301のスプリング式硬さ試験機A形を押しあてて、測定値が1以上を示したときをゴム弾性発現とみなした。
【0025】
粘性は、上記の硬化性試料にて、BS型回転粘度計(商品名ビスコメーターBS:トキメック社製)の回転数10r/minおよび2r/minにおける粘度(23℃)を測定し、(2r/minにおける粘度)/(10r/minにおける粘度)の値を小数点下一桁のところまで計算した。この値は通常その数値が大きい方が一般的に保形性などのシール作業性が良いことを示しているが、絶対的な指標とならないため、総合的シール作業性の項目でも作業性を確認した。
【0026】
貯安性は、硬化剤を配合しないそれぞれの基剤を深さ100mm、直径150mmの円柱形ふた付き金属容器中に上記基剤を500g入れ、50℃のオーブン(商品名パーフェクトオーブン:田葉井製作所社製)に放置し、3日後、30日後に各基剤を50℃のオーブンから取出した後、23℃に24時間放置した。その後、上記粘度計にて各基剤の回転数2r/minの粘度を測定した。
【0027】
総合的シール作業性は、粘性に示した値だけでは、シール作業性の絶対的な指標にはならないので、それぞれの硬化性試料での実際の作業性を評価した。評価は、金属製のヘラで基剤300gと硬化剤30gとを3分間混合することで行った。即ち、混合性は、上記のヘラでの混合初期に大きな抵抗感を示すかどうかを評価し、ヘラ切れ性は、硬化性試料を上記のヘラですくい取った時の糸引き性(糸が引かない方がよい)を評価し、保形性は、上記のヘラ上での硬化性試料の形状保持性を評価した。評価は、○、△、×の3段階とした。○は良好、△は実用上の下限だが、実用範囲にあり、×は実用上使用困難であることを示す。また、スランプ性はJIS A1439に準拠して行った。即ち、長さ150mm、両端が開き、底面の一方が50mm長く、幅10mm、深さ10mmに金属製溝形容器に試料を溝形容器の内側に充填する。試料の表面は溝形容器の上面及び両端と同一になるように平滑にならす。
【0028】
【表1】
Figure 0004159652
【0029】
その試験体を長さ方向に鉛直に懸垂して(容器の底面の長い方を下にして)、50℃の上記と同様のオーブンに24時間置き、充填した試料が溝部分の下端から垂れ下がった先端までの距離を測定した。
【0030】
シール物性はJIS A1439(引張接着性試験)に準拠して行った。即ち、試験体は、2枚の被着体(アルミニウム製、50×50×3mm、試料との接着面にはコニシ社製プライマーを使用)と2枚の試験体作製用スペーサー(50×19×12mm、試料が接着しないもの)を組み合わせて作った50×12×12mmのスペースに硬化性試料を充填し、23℃×7日+50℃×7日間養生させたものを使用した。この試験体を引張試験機(商品名オートグラフAGS500G:島津製作所社製)にて引張速度50mm/minで引張試験を行った。
【0031】
表1において、M50は目地幅が初期の目地幅の150%の時の引張応力、Tmaxは硬化物の破断時の引張応力を示し、Emaxは初期の目地幅に対する破断時の目地幅の伸び率を、また破壊状態は試験後の状態を目視にて確認した。破壊状態の凝集破壊は、硬化物の破断を示す。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のシーリング材は、分子末端にアルコキシシリル基を有し主鎖構造がアルキレン構造であるシリコーン系ポリマーを主成分とするシーリング材に分子量400以下の多価アルコール、特にモノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールを1種以上配合してなるシーリング材組成物であり、構造粘性に優れ、さらに貯蔵安定性に優れると共に、ヘラ切れ性、保形性、混合性、スランプ性などの総合的シール作業性においても改良されている。特に、請求項3の発明のシーリング材組成物は、従来のシーリング材組成物に比し、優れた総合的シール作業性と粘度安定性を有し、内部硬化性と硬化物性にも悪影響を与えない最も優れた効果を奏する。

Claims (1)

  1. 分子末端にメチルジメトキシシリル基を有し主鎖構造がポリイソブチレンであるシリコーン系ポリマー100質量部に対し、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンから選択した多価アルコールの1種以上を0.1〜50質量部配合することを特徴とする長期粘度安定性に優れ、シーリング作業時の作業適性に優れたシーリング材組成物。
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