JP4159385B2 - ポリオレフィンアームを持つ星型ポリマー - Google Patents

ポリオレフィンアームを持つ星型ポリマー Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中心核から3本以上のポリマー鎖が放射状に伸びた構造を有し、ポリマー鎖のうち少なくとも1本がポリオレフィン鎖である星型ポリマーに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンは、軽量かつ安価な上に、優れた物性と加工性を持つという特性を有するため、食品包装、飲料・化粧品・医療用容器、自動車部品、通信・電気機器部品、土木・建材、農業資材、医療機器などの幅広い分野に用いられており、汎用樹脂として非常に重要な地位を占めている。しかし近年、ポリオレフィンに対する物性の要求はますます多様化しており、例えば耐熱性に優れたポリオレフィン、軟質ポリ塩化ビニルのような柔軟な感触を有するポリオレフィンなど様々な性状のポリオレフィンも望まれている。
【0003】
ポリオレフィンの物性を改良する方法としては、モノマーの種類、モル比などを調整する方法、ランダム、ブロックなどのモノマー配列を変える方法、ポリオレフィンに極性モノマーをグラフト共重合する方法などがあり、従来から種々の方法が試みられている。一方、ポリオレフィンの物性を改良する別の手段として、通常は直鎖状のポリオレフィン鎖に長鎖分岐を導入し、分岐の量あるいは長さをコントロールすることによる物性改良も試みられている。このように、ポリオレフィンの構造を三次元的に制御する方法は、例えば高圧ラジカル法により枝分かれの多いポリエチレンを製造することや、特定の重合触媒を用いてポリエチレンに長鎖分岐を導入する方法などが挙げられる。このような分岐状ポリマーの一つの極限形態として、中心核から3本以上のポリマー鎖が放射状に伸びた構造の、いわゆる星型ポリマーが挙げられる。星型ポリマーは、同一分子量の直鎖状ポリマーと比較して、慣性半径の大きさから低粘度となることが知られており、直鎖状ポリマーとは異なる物性が発現することが報告されている。しかしながら、このような星型構造を有するポリマーについては、これまでラジカル重合やアニオン重合性のモノマー、たとえばポリスチレンやポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシドなどのポリマーについては多数報告例があるものの、ポリオレフィンに関する報告例はない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
かかる現状に鑑みて本発明者らは鋭意検討の結果、中心核としての多官能低分子量化合物と、放射状のポリマーアームとして官能基を有するポリオレフィンとを反応させることにより、中心核から3本以上のポリオレフィン鎖を含むポリマー鎖が放射状に伸びた星型ポリマー、およびその製造方法を発明するに至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る星型ポリマーは、中心核に結合している3本以上のポリマー鎖のうち、少なくとも1本がポリオレフィン鎖であることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る星型ポリマー中に含まれるポリオレフィン鎖としては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリヘキセンなどのα−オレフィンのホモ重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体などのエチレン系共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ヘキセン共重合体、プロピレン−オクテン共重合体などのプロピレン系共重合体などが挙げられる。
【0007】
本発明で用いられる多官能低分子量化合物(A)は、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、酸ハロゲン基、アミノ基、エポキシ基、イソシアナート基から選ばれる原子または基を3つ以上有する化合物であり、具体的には、例えば四塩化ケイ素、トリクロロシラン、クロロメチルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、ビス(トリクロロシリル)エタン、トリス(トリクロロシリルエチル)メチルシラン、テトラキス(トリクロロシリルエチル)シランなどのハロゲン化シラン類、四塩化チタン、四塩化ジルコニウム、塩化アルミニウムなどの金属ハロゲン化物類、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム類、グリセリン、ペンタエリトリトール、D−グルシトール、クエルシトール、イノシトール、トリヒドロキシベンゼン、ヘキサヒドロキシベンゼンなどの多価アルコール類、トリメシン酸、トリメリト酸、ピロメリト酸、メリト酸などの多価カルボン酸類、4、4’、4’’−トリアミノトリフェニルメタンなどの多価アミン類などの化合物が挙げられる。
【0008】
本発明に係る星型ポリマーの中心核は、例えば下記構造式(A)または(B)で表される構造を有する。
【化3】
Figure 0004159385
【0009】
以下に、本発明に係る星型ポリマーの製造法について具体的に説明する。本発明に係る星型ポリマーは、例えば下記一般式(I)
【0010】
【化4】
Figure 0004159385
〔式(I)中、Xは水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸ハロゲン基、酸無水物基から選ばれる官能基を含む基であり、PはCH=CHR(Rは炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖である。〕で表される末端に官能基を有するポリオレフィンを製造し、次いで得られたポリオレフィンの末端官能基と上記多官能低分子量化合物(A)とを反応させることにより製造される。
【0011】
上記一般式(I)で示される末端に官能基を有するポリオレフィンは、例えば、a)13族元素を含む基を有するポリオレフィンを製造し、次いで該ポリオレフィンの13族元素を含む基と官能基構造を有する化合物との置換反応を行った後加溶媒分解するか、または、b)該ポリオレフィンの13族元素を含む基を加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応を行った後加溶媒分解することにより製造することができるが、本発明ではこれらの方法に何ら限定されるものではない。以下、上記の製造方法について詳細に説明する。
【0012】
13族元素を含む基を有するポリオレフィンの製造
13族元素を含む基を有するポリオレフィンの製造方法は、(A)13族元素を含む化合物の存在下で公知重合触媒によってオレフィン重合する方法と、(B)末端に不飽和結合を持つポリオレフィンと13族元素を含む化合物と反応によって製造する方法に大別される。以下、各々について説明する。
【0013】
〔(A)13族元素を含む化合物の存在下でオレフィン重合する方法〕
13族元素を含む基を有するポリオレフィンは、例えば既知のチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などのオレフィン重合触媒を用いて13族元素を含む化合物の存在下、CH=CHRで示されるオレフィンを単独重合または共重合させて製造される。Rは、炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子である。
このようなCH =CHR で示されるオレフィンとして具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセンなどが挙げられる。
【0014】
13族元素を含む化合物としては、例えば有機アルミニウム化合物または有機ホウ素化合物が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば下記式(II)で示される有機アルミニウム化合物を例示することができる。
AlA3−n ・・…(II)
〔式(II)中、R は炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、Aはハロゲンまたは水素であり、nは1〜3である。〕
は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、例えばアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であるが、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などである。
【0015】
このような有機アルミニウム化合物として具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;トリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムジハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。
【0016】
また有機アルミニウム化合物として、下記式(III)で示される化合物を用いることもできる。
AlB3−n ・・…(III)
上記式(III)において、R は上記と同様であり、Bは−OR 基、−OSiR 基、−OAlR 基、−NR 基、−SiR 基または−N(R )AlR 基であり、nは1〜2であり、R 、R 、R およびR はメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などであり、R は水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基などであり、RおよびRはメチル基、エチル基などである。
【0017】
このような有機アルミニウム化合物としては、具体的には、以下のような化合物を例示できる。
(i)R Al(OR3−nで表される化合物、例えば、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシドなど、(ii)R Al(OSiR3−nで表される化合物、例えば、EtAl(OSiMe)、(iso−Bu)Al(OSiMe)、(iso−Bu)Al(OSiEt)など、(iii)R Al(OAlR 3−nで表される化合物、例えば、 EtAlOAlEt、(iso−Bu)AlOAl(iso−Bu) など、(iv)R Al(NR 3−nで表される化合物、例えば、MeAlNEt、EtAlNHMe、MeAlNHEt 、EtAlN(MeSi) 、(iso−Bu)AlN(MeSi)など、(v)R Al(SiR 3−nで表される化合物、例えば、(iso−Bu)AlSiMeなど、(vi)R Al〔N(R)−AlR 3−nで表される化合物、例えば、EtAlN(Me)−AlEt、(iso−Bu)AlN(Et)Al(iso−Bu) など。
【0018】
また、これに類似した化合物、例えば酸素原子、窒素原子を介して2以上のアルミニウムが結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。より具体的には、(CAlOAl(C 、(CAlOAl(C 、(CAlN(C)Al(C、など、さらにメチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類(有機アルミニウムオキシ化合物)を挙げることができる。
【0019】
また、下記式(IV)の有機アルミニウム化合物を用いることもできる。
AlAB ・・…(IV)
〔R、A、Bは上記式(II)または(III)と同様である。〕
【0020】
13族元素を含む化合物として、有機ホウ素化合物を用いることもできる。有機ホウ素化合物としては、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロン、テキシルボラン、ジシクロヘキシルボラン、ジシアミルボラン、ジイソピノカンフェニルボラン、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン、カテコールボラン、B−ブロモ−9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン、ボラン−トリエチルアミン錯体、ボラン−メチルスルフィド錯体などが挙げられる。
【0021】
また、有機ホウ素化合物としてイオン性化合物を使用してもよい。このような化合物としては、トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[トリ(n−ブチル)アンモンニウム]ノナボレート、ビス[トリ(n−ブチル)アンモンニウム]デカボレートなどが挙げられる。
また、これらの13族元素を含む化合物は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いることもできる。
【0022】
〔(B)末端に不飽和結合を持つポリオレフィンから製造する方法〕
また、13族元素を含む基を有するポリオレフィンは、末端に不飽和結合を持つポリオレフィンを用いて製造することもできる。具体的には、末端が不飽和結合であるポリオレフィンと、13族元素を含む化合物、例えば有機アルミニウム化合物または有機ホウ素化合物とを反応させて、13族元素を含む基を有するポリオレフィンとする方法である。
【0023】
片末端が不飽和結合であるポリオレフィン(末端不飽和ポリオレフィン)は、例えば既知のチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などのオレフィン重合触媒の存在下に炭素原子数2〜20のオレフィンを重合または共重合させて製造することができる。炭素原子数2〜20のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンなどが好ましく用いられる。
このようにして得られた末端不飽和ポリオレフィンと13族元素を含む化合物を反応させて13族元素を含む基を有するポリオレフィンに変換する。なお、得られたポリオレフィンが、片末端に13族元素が結合したものと、片末端が不飽和結合末端であるものとの混合物である場合にも、必要に応じて、片末端が不飽和結合末端であるポリオレフィンの末端を13族元素が結合した末端に変換してもよい。
【0024】
反応に用いられる13族元素を含む化合物は、有機アルミニウム化合物または有機ホウ素化合物が好ましく用いられる。中でも、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハイドライドまたは1つ以上の水素−ホウ素結合を有するホウ素化合物であることがより好ましく、有機アルミニウムとしてはジアルキルアルミニウムハイドライドが特に好ましく、有機ホウ素化合物としては9−ボラビシクロ[3,3,1]ノナンが特に好ましい。
【0025】
片末端が不飽和結合末端であるポリオレフィンと、13族元素を含む化合物との反応は、例えば以下のようにして行われる。
(i) 末端がビニリデン基であるポリプロピレン0.1〜50gと、ジイソブチルアルミニウムハイドライドの0.01〜5モル/リットル−オクタン溶液を5〜1000ミリリットルとを混合し、0.5〜6時間還流させる。
(ii) 末端がビニリデン基であるポリプロピレン0.1〜50gと、5〜1000ミリリットルの無水テトラヒドロフランと、0.1〜50ミリリットルの9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナンの0.05〜10モル/リットル−テトラヒドロフラン溶液とを混合し、20〜65℃で0.5〜24時間攪拌する。
以上のようにして、13族元素を含む基を有するポリオレフィンが製造される。
【0026】
水酸基含有ポリオレフィンへの変換
このようにして製造された13族元素を含む基を有するポリオレフィンは、
(方法1)該ポリオレフィンの13族元素を含む基と官能基構造を有する化合物との置換反応を行い、次いで加溶媒分解するか、または、
(方法2)該ポリオレフィンの13族元素を含む基を加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応を行い、次いで加溶媒分解することにより、一般式(I)におけるXが水酸基を含む基である下記一般式(V)で示されるポリオレフィンに変換することができる。
【0027】
【化5】
Figure 0004159385
式中、Pは前記と同様である。
【0028】
(方法1)で用いられる、官能基構造を有する化合物としては、ハロゲンガス、メチルクロロホルミエート、フタル酸クロライドなどが挙げられる。また、(方法2)で用いられる、加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物としては、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素などが挙げられる。
【0029】
上記のようにして得られた13族元素を含む基を有するポリオレフィンの13族元素を含む基と、官能基構造を有する化合物または加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応は、通常0〜300℃、好ましくは10〜200℃の温度で、0〜100時間、好ましくは0.5〜50時間行われる。置換反応を行った後、加溶媒分解する際の温度は、通常0〜100℃、好ましくは10〜80℃の温度であり、加溶媒分解時間は、0〜100時間、好ましくは0.5〜50時間である。加溶媒分解に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、水などが挙げられる。
【0030】
また、上記一般式(I)で示される官能基を有するポリオレフィンのうち、Xがエポキシ基であるポリオレフィンは、前記の方法で製造された末端不飽和ポリオレフィンを、例えば特開昭63−305104号公報などに示される方法を用いて不飽和結合をエポキシ化することによっても製造することができる。
具体的には、上記の方法で製造された末端不飽和ポリオレフィンに、1) ギ酸、酢酸などの有機酸と過酸化水素との混合物を反応させる、あるいは、2) m−クロロ過安息香酸などの有機過酸化物を反応させることによって製造することができる。
【0031】
さらに、上記一般式(I)で示される官能基を有するポリオレフィンのうち、Xが酸無水物基であるポリオレフィンは、上記の方法で製造された末端不飽和ポリオレフィンを、例えばMakromol. Chem. Macromol. Symp., 48/49, 317 (1991)、あるいはPolymer, 43, 6351 (2002) などに示される方法を用いて、例えば無水マレイン酸などと熱反応させることにより末端に酸無水物を導入する方法を用いて製造することができる。
また、上記一般式(I)で示される官能基を有するポリオレフィンのうち、Xがカルボキシル基であるポリオレフィンは、上記一般式(V)で示される水酸基を有するポリオレフィンを酸化することにより水酸基をカルボキシル基に変換する方法を用いて製造することができる。
【0032】
また、上記一般式(I)で示される末端に官能基を有するポリオレフィンは、既知のチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などのオレフィン重合触媒を用い、CH=CHRで示されるオレフィンと官能基を有するオレフィン類とを共重合することによっても製造することが可能である。官能基を有するオレフィン類を末端に選択的に導入する方法については、例えばJ. Am. Chem. Soc., 124, 1176 (2002)に示されるような方法を例示することができる。Rは、炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子である。
【0033】
このようなCH =CHRで示されるオレフィンとして具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセンなどが挙げられる。
共重合に用いられる官能基を有するオレフィン類としては、アリルアルコール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、8−ノネン−1−オール、10−ウンデセン−1−オールなどの炭化水素部分が直鎖状である不飽和アルコール類、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸などの不飽和カルボン酸類、アリルアミン、5−ヘキセンアミン、6−ヘプテンアミンなどの不飽和アミン類、(2,7−オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物および上記不飽和カルボン酸類にある化合物の例示において、カルボン酸基をカルボン酸無水物基に置き換えた化合物などの不飽和酸無水物類、上記不飽和カルボン酸類にある化合物の例示において、カルボン酸基をカルボン酸ハライド基に置き換えた化合物などの不飽和カルボン酸ハライド類、4−エポキシ−1−ブテン、5−エポキシ−1−ペンテン、6−エポキシ−1−ヘキセン、7−エポキシ−1−ヘプテン、8−エポキシ−1−オクテン、9−エポキシ−1−ノネン、10−エポキシ−1−デセン、11−エポキシ−1−ウンデセンなどの不飽和エポキシ化合物類などが挙げられる。
【0034】
本発明に係る星型ポリマーを製造する際の、上記多官能低分子量化合物(A)と上記一般式(I)で示される末端に官能基を有するポリオレフィンとの組み合わせについては、例えば下記に示される組み合わせが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
(1)カルボキシル基を有する上記多官能低分子量化合物(A)と、上記一般式(I)において、Xが水酸基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(2)カルボキシル基を有する上記多官能低分子量化合物(A)と、上記一般式(I)において、Xがアミノ基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(3)水酸基を有する上記多官能低分子量化合物(A)と、上記一般式(I)において、Xがエポキシ基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(4)水酸基を有する上記多官能低分子量化合物(A)と、上記一般式(I)において、Xがカルボキシル基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(5)水酸基を有する上記多官能低分子量化合物(A)と、上記一般式(I)において、Xが酸無水物基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(6)水酸基を有する上記多官能低分子量化合物(A)と、上記一般式(I)において、Xが酸ハロゲン基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(7)酸ハロゲン基を有する上記多官能低分子量化合物(A)と、上記一般式(I)において、Xが水酸基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(8)酸ハロゲン基を有する上記多官能低分子量化合物(A)と、上記一般式(I)において、Xがアミノ基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(9)ハロゲンを含む基を有する上記多官能低分子量化合物(A)と、上記一般式(I)において、Xが水酸基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(10)エポキシ基を有する上記多官能低分子量化合物(A)と、上記一般式(I)において、Xが水酸基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(11)アミノ基を有する上記多官能低分子量化合物(A)と、上記一般式(I)において、Xがカルボキシル基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(12)アミノ基を有する上記多官能低分子量化合物(A)と、上記一般式(I)において、Xが酸ハロゲン基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(13)アミノ基を有する上記多官能低分子量化合物(A)と、上記一般式(I)において、Xが酸無水物基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
(14)イソシアナート基を有する上記多官能低分子量化合物(A)と、上記一般式(I)において、Xが水酸基である末端に官能基を有するポリオレフィン。
【0035】
本発明の星型ポリマーを製造する際の上記多官能低分子量化合物(A)に対する上記一般式(I)で示される末端に官能基を有するポリオレフィンの使用量は、上記多官能低分子量化合物(A)中に含まれる官能基の種類や量にもよるが、上記多官能低分子量化合物(A)中の官能基1個に対して、通常0.01〜100倍モル、好ましくは0.1〜50倍モルである。
【0036】
反応溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカンなどの脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロヘキセンなどの脂環族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、2,4−ジクロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても、複数を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上記一般式(I)で示される末端に官能基を有するポリオレフィンと上記多官能低分子量化合物(A)との反応に際しては、反応を効率よく進行させるために、必要に応じて縮合剤を添加することができる。
縮合剤としては、例えば濃硫酸、五酸化二リン、無水塩化亜鉛などの無機脱水縮合剤類、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド)塩酸塩などのカルボジイミド類、ポリリン酸、無水酢酸、カルボニルジイミダゾール、p−トルエンスルホニルクロリドなどが挙げられる。
【0038】
また、上記一般式(I)で示される末端に官能基を有するポリオレフィンと上記多官能低分子量化合物(A)との反応は塩基性触媒の存在下で行うこともできる。具体的には、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピペリジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、トリ−n−ブチルアミン、N−メチルモルホリンなどの有機アミン類、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム、n−ブチルリチウムなどのアルカリ金属化合物類などが挙げられる。
【0039】
なお、上記一般式(I)で示される末端に官能基を有するポリオレフィンおよび上記多官能低分子量化合物(A)のうち、官能基としてカルボキシル基を持つ場合には、まず、例えば五塩化リンや塩化チオニルなどと反応させて酸クロリド化合物とし、これとそれぞれ対応する上記一般式(I)で示される末端に官能基を有するポリオレフィンおよび上記多官能低分子量化合物とを適当な溶媒中、反応させることによっても製造することができる。
また、上記多官能低分子量化合物(A)のうち、ハロゲン原子を含む基を持つ場合には、まず、Xが水酸基を含む基である上記一般式(I)で示される官能基を有するポリオレフィンを、金属アルコキシド化剤でアルコキシドに変換し、これと上記多官能低分子量化合物(A)とを適当な溶媒中、反応させることによっても製造することができる。金属アルコキシド化剤としては、例えば金属ナトリウム、金属カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ソーダアミドなどが挙げられる。
【0040】
また、本発明に係る星型ポリマーは、上記多官能低分子量化合物(A)に、少なくとも1種類の上記一般式(I)で表される末端に官能基を有するポリオレフィンに加えて、末端に官能基を有する極性ポリマー(B)を反応させて製造することもできる。
【0041】
末端に官能基を有する極性ポリマー(B)としては、付加重合可能なモノマー(C)を重合することにより得られるポリマーや、開環重合可能なモノマー(D)を開環重合することにより得られるポリマーであれば何でもよいが、具体的には、ポリ(メタ)アクリレート系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリ(メタ)アクリルアミド系ポリマー、ポリ(メタ)アクリロニトリル系ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー、ポリオキシアルキレン系ポリマー、ポリエステル系ポリマーなどを例示することができる。
【0042】
付加重合可能なモノマー(C)は、炭素炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する有機化合物から選ばれる。炭素−炭素不飽和結合とは炭素炭素二重結合または炭素−炭素三重結合である。このような有機化合物の例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン系モノマー、ブタジエン、イソプレン等のジエン系モノマー、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー、N−ビニルカルバゾール、インデン、イソブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらの有機化合物は、単独で、または2種類以上を組み合わせて成分(C)として使用しても構わない。
【0043】
開環重合可能なモノマー(D)としては、オキシラン化合物、ラクトン化合物が挙げられる。具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリンなどのオキシラン化合物類、β−プロピオラクトン、α、α−ビス(クロロメチル)−β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、1,4−ジオキサン−2−オン、グリコリド、ラクチド、トリメチレンカーボネート、ε−カプロラクトンなどのラクトン化合物類などが挙げられる。
【0044】
末端に官能基を有する極性ポリマー(B)は、例えばラジカル重合開始能を有する基と、水酸基、カルボキシル基、酸ハロゲン基、アミノ基、エポキシ基から選ばれる官能基の両方を有する構造を持つ化合物を開始剤として上記付加重合可能なモノマー(C)をラジカル重合することにより得られる。そのような開始剤の具体的な構造としては、下図に示す構造が例示される。
【0045】
【化6】
Figure 0004159385
【0046】
また、ラジカル重合開始能を有する基と、水酸基、カルボキシル基、酸ハロゲン基、アミノ基、エポキシ基から選ばれる官能基の両方を有する構造を持つ化合物の具体例としては、2,2’アゾビス(2−シアノプロパノール)、3,3’−アゾビス(3−シアノブタノール)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノール)、5,5’−アゾビス(5−シアノヘキサノール)、6,6’−アゾビス(6−シアノヘプタノール)、7,7’−アゾビス(7−シアノオクタノール)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、5,5’−アゾビス(5−シアノヘキサン酸)、6,6’−アゾビス(6−シアノヘプタン酸)、7,7’−アゾビス(7−シアノオクタン酸)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸クロリド)、5,5’−アゾビス(5−シアノヘキサン酸クロリド)、6,6’−アゾビス(6−シアノヘプタン酸クロリド)、7,7’−アゾビス(7−シアノオクタン酸クロリド)などの官能基含有アゾ化合物類なども挙げられる。
【0047】
本発明に係るラジカル重合は、必要に応じて触媒の共存下で実施される。このような触媒としては、CuBr、CuCl、RuCl、RuCl2、FeCl、FeCl2などを例示することができる。触媒を用いる場合、その使用量はポリオレフィン末端に存在するラジカル重合開始能を有する末端基の量によるが、通常、ラジカル重合開始能を有する末端基の量に対し、0.1〜100等量、好ましくは0.5〜50等量である。また、反応系中での触媒の溶解性を上げるために、配位性の脂肪族アミン類や芳香族アミン類などを添加することや、反応促進剤としてのアルコキシアルミニウムを添加することもできる。
【0048】
ラジカル重合において使用できる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば何れでも使用することができるが、例えば、具体例として、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロルエチレン等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノールおよびtert−ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチルおよびジメチルフタレート等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−アミルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキシアニソールのようなエーテル系溶媒等をあげることができる。また、水を溶媒として、懸濁重合、乳化重合することもできる。これらの溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの溶媒の使用によって、反応液が均一相となることが好ましいが、不均一な複数の相となっても構わない。
【0049】
反応温度はラジカル重合反応が進行する温度であれば何れでも構わず、所望する重合体の重合度、使用するラジカル重合開始剤および溶媒の種類や量によって一様ではないが、通常、−100℃〜250℃である。好ましくは−50℃〜180℃であり、更に好ましくは0℃〜160℃である。反応は場合によって減圧、常圧または加圧の何れでも実施できる。上記重合反応は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0050】
このようにして得られた極性ポリマーは、重合に用いた開始剤に由来する水酸基、カルボキシル基、酸ハロゲン基、アミノ基、エポキシ基から選ばれる官能基を末端に有する。
【0051】
また、末端に官能基を有する極性ポリマー(B)は、例えば開環重合可能なモノマー(D)を適当な開始剤の存在下、開環重合することにより得ることもできる。開環重合を行うための開始剤としては、例えばカリウムt−ブトキシドやカリウムsec−ブトキシドのようなアルカリ金属アルコキシドが挙げられる。このようにして得られたポリマーは、末端に水酸基を有する。
【0052】
上記の方法により得られた末端に官能基を有する極性ポリマー(B)と、上記多官能低分子量化合物(A)および少なくとも1種類の上記一般式(I)で表される末端に官能基を有するポリオレフィンとの反応は、例えば上記多官能低分子量化合物(A)と上記一般式(I)で表される末端に官能基を有するポリオレフィンとの反応と同様の条件で実施され、結果として、上記多官能低分子量化合物残基を中心核とし、少なくとも1種類の上記一般式(I)で表される末端に官能基を有するポリオレフィンに由来するポリオレフィンアームと、上記末端に官能基を有する極性ポリマー(B)に由来する極性ポリマーアームとを合計3つ以上有する構造の星型ポリマーとなる。
【0053】
上記の方法により生成した星型ポリマーは、重合に用いた溶媒や未反応のモノマーの留去あるいは非溶媒による再沈殿などの公知の方法を用いることにより単離される。
【0054】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0055】
〔実施例1〕
[末端Al化エチレン−プロピレン共重合体(EPR)の合成]
充分に窒素置換した内容積1リットルのガラス製オートクレーブに精製トルエン800mlを入れ、エチレン10リットル/h、プロピレン90リットル/hを吹き込むことにより液相および気相を飽和させた。その後、50℃にてMAOをAl換算で10ミリモルおよびジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド0.01ミリモルを加えて重合を開始した。常圧下、50℃で5時間重合させた後、引き続きジイソブチルアルミニウムヒドリド50mlを加えて110℃で6時間加熱攪拌を行った。このようにして末端Al化EPRを含むトルエン溶液を得た。
【0056】
[末端OH化EPRの合成]
上記にて得られたトルエン溶液を100℃に保ち、窒素ガスを乾燥空気に切り替え、該温度を保ちながら100リットル/hの流量で6時間供給しつづけた後、メタノール5mlを加えて反応を停止した。反応液を1リットルのメタノール中に注ぎ、1N塩酸水溶液20mlを入れて終夜攪拌した。ヘキサン1リットル、水1リットルを加えてさらに攪拌し、その後、分液漏斗に移して有機層を水200mlで3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。グラスフィルター(G3)で硫酸マグネシウムをろ別した後、ろ液を濃縮し、さらに10時間真空乾燥して47.0gの黄色オイル状ポリマーを得た。該ポリマーの分子量(EPR換算)をGPCにより測定したところ、Mwが2200、Mnが520、Mw/Mn=4.3であった。該ポリマー100mgを25℃で0.6mlの重クロロホルムに溶解させて得たサンプルを1H−NMR(日本電子製JEOL GSX−270)を用いて分析をおこなったところ、3.3−3.6ppmにヒドロキシル基に隣接するメチレン基に基づくシグナルが認められた。すなわち、以下の構造の末端を有するEPRが存在することを確認した。また、積分値からOH基含量は2.4mol%と算出された。
【0057】
【化7】
Figure 0004159385
【0058】
[星型ポリマーの合成]
充分窒素置換した50mlシュレンク管に、上記にて得られた末端OH化EPR3.0gを入れ、乾燥トルエン20mlおよび四塩化ケイ素0.05mlを加えて50℃で2時間攪拌した。得られた反応液からトルエンおよび未反応の四塩化ケイ素を留去し、10時間真空乾燥を行って、褐色オイル状ポリマー2.9gを得た。該ポリマーの分子量(EPR換算)をGPCにより測定したところ、Mwが3700、Mnが560、Mw/Mn=6.5であった。該ポリマー100mgを25℃で0.6mlの重クロロホルムに溶解させて得たサンプルを1H−NMR(日本電子製JEOL GSX−270)を用いて分析をおこなったところ、3.6−3.9ppmにSi−O基に隣接するメチレン基に基づくシグナルが認められ、また、原料の末端OH化EPRの水酸基に隣接するメチレン基に基づくシグナルが消失していた。該ポリマーのIR分析の結果、3350cm−1付近のOH基に基づくピークが消失し、1100cm−1付近にSi−O結合に基づく振動ピークが検出された。また、[η]の値も原料の末端OH化EPRの値0.05に対し、該ポリマーで0.08と上昇していた。すなわち、以下の構造の星型ポリマーが存在することを確認した。
【0059】
【化8】
Figure 0004159385
【0060】
〔実施例2〕
[末端Al化エチレン−プロピレン共重合体(EPR)の合成]
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブに精製トルエン400mlを入れ、エチレン20リットル/h、プロピレン80リットル/hを吹き込むことにより液相および気相を飽和させた。その後、50℃にてMAOをAl換算で10ミリモルおよびビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド0.01ミリモルを加えて重合を開始した。常圧下、50℃で120分間重合させた後、引き続きジイソブチルアルミニウムヒドリド50mlを加えて100℃で4.5時間加熱攪拌を行った。このようにして末端Al化EPRを含むトルエン溶液を得た。
【0061】
[末端OH化EPRの合成]
上記にて得られたトルエン溶液を100℃に保ち、窒素ガスを乾燥空気に切り替え、該温度を保ちながら100リットル/hの流量で14時間供給しつづけた後、メタノール200mlを加えて反応を停止した。析出した黄色固体をグラスフィルター(G3)でろ過した後、ヘキサン500mlで3回洗浄し、EPRを抽出した。得られたヘキサン溶液を濃縮し、さらに10時間真空乾燥して53.1gの淡黄色オイル状ポリマーを得た。該ポリマーの分子量(EPR換算)をGPCにより測定したところ、Mwが3700、Mnが1100、Mw/Mn=3.4であった。該ポリマー100mgを25℃で0.6mlの重クロロホルムに溶解させて得たサンプルを1H−NMR(日本電子製JEOL GSX−270)を用いて分析をおこなったところ、3.3−3.6ppmにヒドロキシル基に隣接するメチレン基に基づくシグナルが認められた。すなわち、以下の構造の末端を有するEPRが存在することを確認した。また、積分値からOH基含量は1.3mol%と算出された。
【0062】
【化9】
Figure 0004159385
【0063】
[星型ポリマーの合成]
充分窒素置換した100mlシュレンク管に、上記にて得られた末端OH化EPR5.0gを入れ、乾燥トルエン10mlおよび1,2−ビス(トリクロロシリル)エタンのトルエン溶液(0.20M)2.3mlを加えて100℃で5時間攪拌した。得られた反応液からトルエンを留去し、10時間真空乾燥を行って、粘性の高い淡黄色オイル状ポリマーを得た。該ポリマーの分子量(EPR換算)をGPCにより測定したところ、Mwが5100、Mnが1300、Mw/Mn=4.0であった。該ポリマー100mgを25℃で0.6mlの重クロロホルムに溶解させて得たサンプルを1H−NMR(日本電子製JEOL GSX−270)を用いて分析をおこなったところ、3.6−3.9ppmにSi−O基に隣接するメチレン基に基づくシグナルが認められ、また、原料の末端OH化EPRの水酸基に隣接するメチレン基に基づくシグナルが消失していた。該ポリマーのIR分析の結果、3350cm−1付近のOH基に基づくピークが消失し、1100cm−1付近にSi−O結合に基づく振動ピークが検出された。また、[η]の値も原料の末端OH化EPRの値0.11に対し、該ポリマーで0.15と上昇していた。すなわち、以下の構造の星型ポリマーが存在することを確認した。
【0064】
【化10】
Figure 0004159385
【0065】
【発明の効果】
ポリオレフィン製造用触媒として工業的に広く用いられている固体状チタン触媒やメタロセン触媒等の遷移金属化合物を成分として含有する配位重合触媒により製造したポリオレフィンに官能基を導入した官能基含有ポリオレフィンを用い、3つ以上の官能基を有する多官能低分子化合物と反応させることにより、特異構造を有する分岐重合体の一つである星型ポリマー、およびその製造方法を提供することができる。

Claims (2)

  1. 下記構造式(A)で表される中心核にポリマー鎖が4本結合した構造または構造式(B)で表される中心核にポリマー鎖が6本結合した構造を有し、該中心核に結合しているポリマー鎖が、CH=CHR(Rは炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリオレフィン鎖であることを特徴とする星型ポリマー。
    Figure 0004159385
  2. 下記一般式(I)
    Figure 0004159385
    〔式(I)中、PはCH=CHR(Rは炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖であり、Xは水酸基である。〕で表される末端に官能基を有するポリオレフィンと、四塩化ケイ素または1、2−ビス(トリクロロシリル)エタンとの反応により製造されることを特徴とする請求項1に記載の星型ポリマー。
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