JP4145173B2 - ポリオレフィンセグメント含有スリーアーム星型ポリマー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィンセグメントを含有する星型ポリマーに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンは、軽量かつ安価な上に、優れた物性と加工性を持つという特性を有するため、食品包装、飲料・化粧品・医療用容器、自動車部品、通信・電気機器部品、土木・建材、農業資材、医療機器などの幅広い分野に用いられており、汎用樹脂として非常に重要な地位を占めている。しかし近年、ポリオレフィンに対する物性の要求はますます多様化しており、例えば耐熱性に優れたポリオレフィン、軟質ポリ塩化ビニルのような柔軟な感触を有するポリオレフィンなど様々な性状のポリオレフィンも望まれている。
【0003】
ポリオレフィンの物性を改良する方法としては、モノマーの種類、モル比などを調整する方法、ランダム、ブロックなどのモノマー配列を変える方法、ポリオレフィンに極性モノマーをグラフト共重合する方法などがあり、従来から種々の方法が試みられている。一方、ポリオレフィンの物性を改良する別の手段として、通常は直鎖状のポリオレフィン鎖に長鎖分岐を導入し、分岐の量あるいは長さをコントロールすることによる物性改良も試みられている。このように、ポリオレフィンの構造を三次元的に制御する方法は、例えば高圧ラジカル法により枝分かれの多いポリエチレンを製造することや、特定の重合触媒を用いてポリエチレンに長鎖分岐を導入する方法などが挙げられる。このような分岐状ポリマーの一つの極限形態として、中心核から3本以上のポリマー鎖が放射状に伸びた構造の、いわゆる星型ポリマーが挙げられる。星型ポリマーは、同一分子量の直鎖状ポリマーと比較して、慣性半径の大きさから低粘度となることが知られており、直鎖状ポリマーとは異なる物性が発現することが報告されている。しかしながら、このような星型構造を有するポリマーについては、これまでラジカル重合やアニオン重合性のモノマー、たとえばポリスチレンやポリメチルメタクリレート、ポリエチレンオキシドなどのポリマーについては多数報告例があるものの、ポリオレフィンに関する報告例はない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
かかる現状に鑑みて本発明者らは鋭意検討の結果、少なくとも1本のポリオレフィン鎖をアームに有する、スリーアーム状の星型ポリマー、およびその製造方法を発明するに至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るスリーアーム星型ポリマーは、下記一般式(I)で表される。
【0006】
【化2】
〔式(I)中、Xは酸素原子を含む結合基であり、P1はCH2=CHR1(R1は炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖であり、P2はポリオレフィンまたは極性基を含有ポリマー鎖である。〕
【0007】
P1で表されるポリオレフィン鎖としては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリヘキセンなどのα−オレフィンのホモ重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体などのエチレン系共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ヘキセン共重合体、プロピレン−オクテン共重合体などのプロピレン系共重合体などが挙げられる。
【0008】
Xで表される酸素原子を含む結合基としては、具体的にはエーテル結合またはエステル結合を有する基である。
【0009】
P2で表される極性基含有ポリマー鎖としては、付加重合可能なモノマー(A)を重合して得られるポリマーまたは開環重合可能なモノマー(B)を重合して得られるポリマーが挙げられる。
【0010】
付加重合可能なモノマー(A)としては、炭素ー炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する有機化合物から選ばれる。炭素−炭素不飽和結合とは炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合である。このような有機化合物の例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン系モノマー、ブタジエン、イソプレン等のジエン系モノマー、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー、N−ビニルカルバゾール、インデン、イソブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。また、これらの有機化合物単独あるいは複数を重合して得られるポリマーの末端に重合性の(メタ)アクリロイル基やスチリル基などを有する化合物、すなわち、マクロモノマーも成分(A)として使用できる。これらの有機化合物は、単独で、または2種類以上を組み合わせて成分(A)として使用しても構わない。
【0011】
開環重合可能なモノマー(B)としては、オキシラン化合物、ラクトン化合物が挙げられる。具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリンなどのオキシラン化合物類、β−プロピオラクトン、α、α−ビス(クロロメチル)−β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、1,4−ジオキサン−2−オン、グリコリド、ラクチド、トリメチレンカーボネート、ε−カプロラクトンなどのラクトン化合物類などが挙げられる。
【0012】
以下に、本発明に係る星型ポリマーの製造法について具体的に説明する。上記一般式(I)で表される星型ポリマーは、例えば次に示される工程1、工程2および工程3を順次実施することによって製造される。
【0013】
(工程1)下記一般式(II)
【0014】
【化3】
〔式(II)中、Yは水酸基を含む基であり、P1は上記一般式(I)と同一である。〕
で表される末端に水酸基を2つ有するポリオレフィンを製造する工程。
【0015】
(工程2)前記一般式(II)中のYで示される水酸基を含む基を、ラジカル重合またはアニオン重合、開環重合開始能を有する基に変換する工程。
【0016】
(工程3)前記工程2で得られた、ラジカル重合またはアニオン重合、開環重合開始能を有する基を2つ持つポリオレフィンを重合開始剤として、上記の付加重合可能なモノマー(A)またはアニオン開環重合可能なモノマー(B)を重合する工程。
以下、各工程別に本発明の星型ポリマーの製造方法について詳細に述べる。
【0017】
◆ 工程1 ◆
工程1は、上記一般式(II)で示される、末端に水酸基を含む基を2つ有するポリオレフィンを製造する工程である。上記一般式(II)で示される末端に水酸基を含む基を2つ有するポリオレフィンは、例えば
(a)末端に水酸基を含む基と、13族元素を含む基とを一つずつ持つポリオレフィン(C)を製造し、次いで
(b)得られたポリオレフィンの末端に存在する13族元素を含む基を、水酸基を含む基に変換することにより製造される。
【0018】
(a)ポリオレフィン(C)の製造
末端に水酸基を含む基と13族元素を含む基とを一つずつ持つポリオレフィンの製造方法については、例えばJ. Am. Chem. Soc., 124, 1176 (2002)に示されるような方法を例示することができる。すなわち、既知のメタロセン触媒などのオレフィン重合触媒と13族元素を含む化合物の存在下、CH2=CHR2で示されるオレフィンと水酸基を有するオレフィン類とを共重合することによって製造することができる。R2は、炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子である。
【0019】
13族元素を含む化合物としては、例えば有機アルミニウム化合物や有機ホウ素化合物などが挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば下記式(III)で示される有機アルミニウム化合物を例示することができる。
Ra n AlA3-n ・・…(III)
〔式(III)中、Ra は炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、Aはハロゲンまたは水素であり、nは1〜3である。〕
Ra は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、例えばアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であるが、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などである。
【0020】
このような有機アルミニウム化合物として具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;トリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムジハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。
【0021】
また有機アルミニウム化合物として、下記式(IV)で示される化合物を用いることもできる。
Ra n AlB3-n ・・…(IV)
上記式(IV)において、Ra は上記と同様であり、Bは−ORb 基、−OSiRc 3 基、−OAlRd 2 基、−NRe 2 基、−SiRf 3 基または−N(Rg )AlRh 2 基であり、nは1〜2であり、Rb 、Rc 、Rd およびRh はメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などであり、Re は水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基などであり、RfおよびRgはメチル基、エチル基などである。
【0022】
このような有機アルミニウム化合物としては、具体的には、以下のような化合物を例示できる。
(i)Ra nAl(ORb)3-nで表される化合物、例えば、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシドなど、(ii)Ra nAl(OSiRc)3-nで表される化合物、例えば、Et2Al(OSiMe3)、(iso-Bu)2Al(OSiMe3)、(iso-Bu)2Al(OSiEt3)など、(iii)Ra nAl(OAlRd 2)3-nで表される化合物、例えば、 Et2AlOAlEt2、(iso-Bu)2AlOAl(iso-Bu)2 など、(iv)Ra nAl(NRe 2)3-nで表される化合物、例えば、Me2AlNEt2、Et2AlNHMe、Me2AlNHEt 、Et2AlN(Me3Si)2 、(iso-Bu)2AlN(Me3Si)2 など、(v)Ra n Al(SiRf 3)3-nで表される化合物、例えば、(iso-Bu)2AlSiMe3など、(vi)Ra n Al〔N(Rg )-AlRh 2 〕3-nで表される化合物、例えば、Et2AlN(Me)-AlEt2、(iso-Bu)2AlN(Et)Al(iso-Bu)2 など。
【0023】
また、これに類似した化合物、例えば酸素原子、窒素原子を介して2以上のアルミニウムが結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。より具体的には、(C2H5)2AlOAl(C2H5)2 、(C4H9)2AlOAl(C4H9)2 、(C2H5)2AlN(C2H5)Al(C2H5)2、など、さらにメチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類(有機アルミニウムオキシ化合物)を挙げることができる。
【0024】
また、下記式(V)の有機アルミニウム化合物を用いることもできる。
Ra AlAB ・・…(V)
〔Ra、A、Bは上記式(III)または(IV)と同様である。〕
【0025】
13族元素を含む化合物として、有機ホウ素化合物を用いることもできる。有機ホウ素化合物としては、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロン、テキシルボラン、ジシクロヘキシルボラン、ジシアミルボラン、ジイソピノカンフェニルボラン、9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン、カテコールボラン、B-ブロモ-9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン、ボラン-トリエチルアミン錯体、ボラン-メチルスルフィド錯体などが挙げられる。
【0026】
また、有機ホウ素化合物としてイオン性化合物を使用してもよい。このような化合物としては、トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、N,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[トリ(n-ブチル)アンモンニウム]ノナボレート、ビス[トリ(n-ブチル)アンモンニウム]デカボレートなどが挙げられる。
また、これらの13族元素を含む化合物は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いることもできる。
【0027】
CH2 =CHR2で示されるオレフィンとして具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセンなどが挙げられる。
共重合に用いられる水酸基を有するオレフィン類としては、アリルアルコール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、8−ノネン−1−オール、10−ウンデセン−1−オールなどの炭化水素部分が直鎖状である不飽和アルコール類などが挙げられる。
【0028】
(b)13族元素を含む基の水酸基を含む基への変換
上記の方法により得られる末端に水酸基を含む基と13族元素を含む基を一つずつ有するポリオレフィン(C)は、例えば、
(方法▲1▼)該ポリオレフィンの13族元素を含む基と官能基構造を有する化合物との置換反応を行い、次いで加溶媒分解するか、または、
(方法▲2▼)該ポリオレフィンの13族元素を含む基を加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応を行い、次いで加溶媒分解することにより、
上記一般式(II)で表される末端に水酸基を含む基を2つ持つポリオレフィンに変換される。
【0029】
(方法▲1▼)で用いられる、官能基構造を有する化合物としては、ハロゲンガス、メチルクロロホルミエート、フタル酸クロライドなどが挙げられる。また、(方法▲2▼)で用いられる、加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物としては、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素などが挙げられる。
【0030】
上記(a)で得られたポリオレフィン(C)の13族元素を含む基と、官能基構造を有する化合物または加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応は、通常0〜300℃、好ましくは10〜200℃の温度で、0〜100時間、好ましくは0.5〜50時間行われる。置換反応を行った後、加溶媒分解する際の温度は、通常0〜100℃、好ましくは10〜80℃の温度であり、加溶媒分解時間は、0〜100時間、好ましくは0.5〜50時間である。加溶媒分解に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、水などが挙げられる。
このようにして、上記一般式(II)で表される、末端に水酸基を含む基を2つ持つポリオレフィンが製造される。
【0031】
◆ 工程2 ◆
工程2は、前記工程1で得られたポリオレフィンの末端に存在する2つの水酸基を含む基をラジカル重合またはアニオン重合、開環重合開始能を有する基に変換する工程である。ラジカル重合開始能を有する基としては、例えばChem. Rev., 101, 3661 (2001)で開示されているように、ニトロキシドを有する基が結合し、熱的な開裂によりラジカルを発生させるものや、Chem. Rev., 101, 2921 (2001)やChem. Rev., 101, 3689 (2001)などで開示されているように、末端ハロゲン原子を有する基が結合し、ルテニウムや銅の塩化物またはそれらの遷移金属原子を有する錯体を添加することによりラジカルを発生させるものなどを例示することができる。
【0032】
これらのラジカル重合開始能を有する基への前記一般式(II)で表されるポリオレフィンの末端に存在する2つの水酸基を含む基の変換方法としては、例えばラジカル重合開始能を有する基と前記一般式(II)で表されるポリオレフィンの末端に存在する2つの水酸基を含む基と反応しうる官能基の両方を有する化合物(D)と、前記一般式(II)で表される末端に2つの水酸基を含む基を持つポリオレフィンとを反応させる方法が挙げられる。
ラジカル重合開始能を有する基と前記一般式(II)で表されるポリオレフィンの末端に存在する2つの水酸基を含む基と反応しうる官能基の両方を有する化合物(D)の具体例としては、例えば下図に示すような化合物を例示することができる。
【0033】
【化4】
【0034】
上記一般式(II)で表されるポリオレフィンの末端に存在する2つの水酸基を含む基を、アニオン重合または開環重合開始能を持つ官能基に変換する方法としては、例えば金属リチウムや金属カリウムなどのアルカリ金属類、水素化リチウムや水素化カリウムなどのアルカリ金属の水素化物類、上記一般式(III)、(IV)および(V)で表されるアルキルアルミニウム化合物類などと反応させることによって金属アルコキシド含有ポリオレフィンとする方法が挙げられる。
【0035】
上記一般式(II)で表されるポリオレフィンの末端に存在する2つの水酸基を含む基をラジカル重合開始能を持つ基に変換する際の、上記一般式(II)で表されるポリオレフィンの末端に存在する2つの水酸基を含む基に対する上記ラジカル重合開始能を有する基と前記一般式(II)で表されるポリオレフィンの末端に存在する2つの水酸基を含む基と反応しうる官能基の両方を有する化合物(D)の使用量は、少なすぎるとポリオレフィン中に含まれる水酸基の変換率が低くなるため、工程3で得られる星型ポリマーの収量が低下し、多すぎると未反応の化合物(D)が残留し、工程3においてホモポリマーが副成する可能性があるため、上記一般式(II)で表されるポリオレフィンの末端に存在する2つの水酸基を含む基に対して、通常0.1〜100倍モル、好ましくは0.3〜50倍モル、さらに好ましくは0.5〜10倍モルである。
【0036】
反応溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカンなどの脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロヘキセンなどの脂環族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、2,4-ジクロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても、複数を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上記一般式(II)で表される末端に2つの水酸基を含む基を有するポリオレフィンと、上記化合物(D)との反応においては、反応に関与する官能基の種類にもよるが、縮合剤や塩基性触媒の存在下で行われることが好ましい。
縮合剤としては、例えば濃硫酸、五酸化二リン、無水塩化亜鉛などの無機脱水縮合剤類、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド)塩酸塩などのカルボジイミド類、ポリリン酸、無水酢酸、カルボニルジイミダゾール、p−トルエンスルホニルクロリドなどが挙げられる。
【0038】
塩基性触媒としては、具体的には、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピペリジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、トリ−n−ブチルアミン、N−メチルモルホリンなどの有機アミン類、水素化ナトリウム、n−ブチルリチウムなどのアルカリ金属化合物類などが挙げられる。
【0039】
反応温度は、通常−100〜200℃であり、好ましくは−50〜150℃である。反応時間は、反応温度や使用する化合物(D)および水酸基を有するポリオレフィンの種類や量によって異なるが、通常1〜48時間である。
【0040】
◆ 工程3 ◆
工程3は、上記工程1および2で得られたラジカル重合またはアニオン重合、開環重合開始能を有する官能基を2つ持つポリオレフィンをマクロ開始剤として、ラジカル重合またはアニオン重合、開環重合することにより上記一般式(I)で表されるスリーアーム星型ポリマーを製造する工程である。
【0041】
本発明に係るラジカル重合は、必要に応じて触媒の共存下で実施される。このような触媒としては、CuBr、CuCl、RuCl、RuCl2、FeCl、FeCl2などを例示することができる。触媒を用いる場合、その使用量はポリオレフィン末端に存在するラジカル重合開始能を有する末端基の量によるが、通常、ラジカル重合開始能を有する末端基の量に対し、0.1〜100等量、好ましくは0.5〜50等量である。また、反応系中での触媒の溶解性を上げるために、配位性の脂肪族アミン類や芳香族アミン類などを添加することや、反応促進剤としてのアルコキシアルミニウムを添加することもできる。
【0042】
ラジカル重合において使用できる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば何れでも使用することができるが、例えば、具体例として、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロルエチレン等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノールおよびtert-ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチルおよびジメチルフタレート等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキシアニソールのようなエーテル系溶媒等をあげることができる。また、水を溶媒として、懸濁重合、乳化重合することもできる。これらの溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの溶媒の使用によって、反応液が均一相となることが好ましいが、不均一な複数の相となっても構わない。
【0043】
反応温度はラジカル重合反応が進行する温度であれば何れでも構わず、所望する重合体の重合度、使用するラジカル重合開始剤および溶媒の種類や量によって一様ではないが、通常、−100℃〜250℃である。好ましくは−50℃〜180℃であり、更に好ましくは0℃〜160℃である。反応は場合によって減圧、常圧または加圧の何れでも実施できる。上記重合反応は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0044】
アニオン重合および開環重合においては、使用できる溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、モノグリム、ジグリムなどのエーテル系溶媒などが用いられる。これらの溶媒は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。中でも、芳香族炭化水素とエーテル系溶媒が好ましく用いられる。重合は、通常−100℃〜100℃、好ましくは−80℃〜80℃、より好ましくは−70℃〜70℃の重合温度で、1分間〜500時間、好ましくは10分間〜300時間、より好ましくは15分間〜150時間かけて実施される。
上記工程1〜3を順次実施することにより、上記一般式(I)で表される星型ポリマーが製造される。
【0045】
また、本発明に係る、上記一般式(I)で表される星型ポリマーは、例えば次に示される工程1’、工程2’および工程3’を順次実施することによっても製造できる。
【0046】
(工程1’)上記一般式(II)で表される末端に2つの水酸基を含む基を有するポリオレフィンを製造する工程。
【0047】
(工程2’)下記一般式(VI)
【0048】
【化5】
〔式(VI)中、Zはカルボキシル基、酸ハロゲン基、エポキシ基、ハロゲン原子を含む基であり、P3は付加重合可能なモノマー(A)を重合することにより得られるポリマー鎖である。〕
で表される末端に官能基を有するポリマーを製造する工程。
【0049】
(工程3’)上記一般式(II)で表される末端に2つの水酸基を含む基を有するポリオレフィンと、上記一般式(VI)で表される末端に官能基を有するポリマーとを結合する工程。
以下、各工程別に本発明のグラフトポリマーの製造方法について詳細に述べる。
【0050】
◆ 工程1’◆
工程1’は、前記工程1と同様の方法を用いることができる。
【0051】
◆ 工程2’◆
工程2’は、末端に官能基を有するポリマーを製造する工程である。このようなポリマーを製造する方法としては、例えば前記工程2において使用した、ラジカル重合開始能を有する基と上記一般式(II)で表されるポリオレフィンの末端に存在する2つの水酸基を含む基と反応しうる官能基の両方を有する化合物(D)を開始剤として、上記の付加重合可能なモノマー(A)を重合することにより製造される。得られた上記一般式(VI)で表されるポリマーは、その末端に開始剤に由来する官能基を有する。
【0052】
また、末端に官能基を有するポリマーとしては、例えば下記一般式(VII)
【0053】
【化6】
〔式(VII)中、Wはエポキシ基、カルボキシル基、酸ハロゲン基、酸無水物基から選ばれる官能基を含む基であり、P4はCH2=CHR3(R3は炭素原子数が1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子)で示されるオレフィンを単独重合または共重合させてなるポリマー鎖である。〕
で表される末端に官能基を有するポリオレフィンが挙げられる。
【0054】
上記一般式(VII)で示される末端官能基含有ポリオレフィンは、例えば、a)13族元素を含む基を有するポリオレフィンを製造し、次いで該ポリオレフィンの13族元素を含む基と官能基構造を有する化合物との置換反応を行った後加溶媒分解するか、または、b)該ポリオレフィンの13族元素を含む基を加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応を行った後加溶媒分解することにより製造される末端に水酸基を有するポリオレフィンを経て製造することができるが、本発明ではこれらの方法に何ら限定されるものではない。以下、上記の製造方法について詳細に説明する。
【0055】
13族元素を含む基を有するポリオレフィンの製造
13族元素を含む基を有するポリオレフィンの製造方法は、(A)13族元素を含む化合物の存在下で公知重合触媒によってオレフィン重合する方法と、(B)末端に不飽和結合を持つポリオレフィンと13族元素を含む化合物と反応によって製造する方法に大別される。以下、各々について説明する。
【0056】
〔(A)13族元素を含む化合物の存在下でオレフィン重合する方法〕
13族元素を含む基を有するポリオレフィンは、例えば既知のチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などのオレフィン重合触媒を用いて13族元素を含む化合物の存在下、CH2=CHR4で示されるオレフィンを単独重合または共重合させて製造される。R4は、炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子である。
このようなCH2 =CHR4 で示されるオレフィンとして具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセンなどが挙げられる。
【0057】
13族元素を含む化合物としては、例えば上記の有機アルミニウム化合物または有機ホウ素化合物が挙げられる。
【0058】
〔(B)末端に不飽和結合を持つポリオレフィンから製造する方法〕
また、13族元素を含む基を有するポリオレフィンは、末端に不飽和結合を持つポリオレフィンを用いて製造することもできる。具体的には、末端が不飽和結合であるポリオレフィンと、13族元素を含む化合物、例えば有機アルミニウム化合物または有機ホウ素化合物とを反応させて、13族元素を含む基を有するポリオレフィンとする方法である。
【0059】
片末端が不飽和結合であるポリオレフィン(末端不飽和ポリオレフィン)は、例えば既知のチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などのオレフィン重合触媒の存在下に炭素原子数2〜20のオレフィンを重合または共重合させて製造することができる。炭素原子数2〜20のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテンなどが好ましく用いられる。
このようにして得られた末端不飽和ポリオレフィンと13族元素を含む化合物を反応させて13族元素を含む基を有するポリオレフィンに変換する。なお、得られたポリオレフィンが、片末端に13族元素が結合したものと、片末端が不飽和結合末端であるものとの混合物である場合にも、必要に応じて、片末端が不飽和結合末端であるポリオレフィンの末端を13族元素が結合した末端に変換してもよい。
【0060】
反応に用いられる13族元素を含む化合物は、有機アルミニウム化合物または有機ホウ素化合物が好ましく用いられる。中でも、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハイドライドまたは1つ以上の水素−ホウ素結合を有するホウ素化合物であることがより好ましく、有機アルミニウムとしてはジアルキルアルミニウムハイドライドが特に好ましく、有機ホウ素化合物としては9-ボラビシクロ[3,3,1]ノナンが特に好ましい。
【0061】
片末端が不飽和結合末端であるポリオレフィンと、13族元素を含む化合物との反応は、例えば以下のようにして行われる。
(i) 末端がビニリデン基であるポリプロピレン0.1〜50gと、ジイソブチルアルミニウムハイドライドの0.01〜5モル/リットル−オクタン溶液を5〜1000ミリリットルとを混合し、0.5〜6時間還流させる。
(ii) 末端がビニリデン基であるポリプロピレン0.1〜50gと、5〜1000ミリリットルの無水テトラヒドロフランと、0.1〜50ミリリットルの9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナンの0.05〜10モル/リットル−テトラヒドロフラン溶液とを混合し、20〜65℃で0.5〜24時間攪拌する。
以上のようにして、13族元素を含む基を有するポリオレフィンが製造される。
【0062】
一般式( VII )で示される官能基含有ポリオレフィンへの変換
このようにして製造された13族元素を含む基を有するポリオレフィンは、
(方法a)該ポリオレフィンの13族元素を含む基と官能基構造を有する化合物との置換反応を行い、次いで加溶媒分解するか、または、
(方法b)該ポリオレフィンの13族元素を含む基を加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応を行い、次いで加溶媒分解することにより、一般式(VII)におけるWが水酸基である下記一般式(VIII)で示されるポリオレフィンに変換することができる。
【0063】
【化7】
式中、P4は前記と同様である。
【0064】
(方法a)で用いられる、官能基構造を有する化合物としては、ハロゲンガス、メチルクロロホルミエート、フタル酸クロライドなどが挙げられる。また、(方法b)で用いられる、加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物としては、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素などが挙げられる。
【0065】
上記のようにして得られた13族元素を含む基を有するポリオレフィンの13族元素を含む基と、官能基構造を有する化合物または加溶媒分解により官能基を形成する構造を有する化合物との置換反応は、通常0〜300℃、好ましくは10〜200℃の温度で、0〜100時間、好ましくは0.5〜50時間行われる。置換反応を行った後、加溶媒分解する際の温度は、通常0〜100℃、好ましくは10〜80℃の温度であり、加溶媒分解時間は、0〜100時間、好ましくは0.5〜50時間である。加溶媒分解に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、水などが挙げられる。
上記一般式(VII)で示される官能基を有するポリオレフィンのうち、Wがカルボキシル基であるポリオレフィンは、上記一般式(VIII)で示される水酸基を有するポリオレフィンを酸化することにより水酸基をカルボキシル基に変換する方法を用いて製造することができる。
【0066】
また、上記一般式(VII)で示される官能基を有するポリオレフィンのうち、Wがエポキシ基であるポリオレフィンは、前記の方法で製造された末端不飽和ポリオレフィンを、例えば特開昭63−305104号公報などに示される方法を用いて不飽和結合をエポキシ化することによっても製造することができる。
具体的には、上記の方法で製造された末端不飽和ポリオレフィンに、1) ギ酸、酢酸などの有機酸と過酸化水素との混合物を反応させる、あるいは、2) m−クロロ過安息香酸などの有機過酸化物を反応させることによって製造することができる。
【0067】
さらに、上記一般式(VII)で示される官能基を有するポリオレフィンのうち、Wが酸無水物基であるポリオレフィンは、上記の方法で製造された末端不飽和ポリオレフィンを、例えばMakromol. Chem. Macromol. Symp., 48/49, 317 (1991)、あるいはPolymer, 43, 6351 (2002) などに示される方法を用いて、例えば無水マレイン酸などと熱反応させることにより末端に酸無水物を導入する方法を用いて製造することができる。
【0068】
また、上記一般式(VII)で示される官能基を有するポリオレフィンは、既知のチーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などのオレフィン重合触媒を用い、CH2=CHR4で示されるオレフィンと官能基を有するオレフィン類とを共重合することによっても製造することが可能である。R4は、炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子から選ばれる基または原子である。
【0069】
このようなCH2 =CHR4 で示されるオレフィンとして具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセンなどが挙げられる。
共重合に用いられる官能基を有するオレフィン類としては、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸などの不飽和カルボン酸類、(2,7−オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物および上記不飽和カルボン酸類にある化合物の例示において、カルボン酸基をカルボン酸無水物基に置き換えた化合物などの不飽和酸無水物類、上記不飽和カルボン酸類にある化合物の例示において、カルボン酸基をカルボン酸ハライド基に置き換えた化合物などの不飽和カルボン酸ハライド類、4−エポキシ−1−ブテン、5−エポキシ−1−ペンテン、6−エポキシ−1−ヘキセン、7−エポキシ−1−ヘプテン、8−エポキシ−1−オクテン、9−エポキシ−1−ノネン、10−エポキシ−1−デセン、11−エポキシ−1−ウンデセンなどの不飽和エポキシ化合物類などが挙げられる。
◆ 工程3’◆
工程3’は、前記工程1’により得られた末端に2つの水酸基を含む基を有するポリオレフィンと、前記工程2’により得られた末端に官能基を有するポリマーとのカップリング反応を行う工程である。上記一般式(II)で表される末端に2つの水酸基を含む基を有するポリオレフィンと、上記一般式(VI)および(VII)で表される末端に官能基を有するポリマーとの反応に際しての反応溶媒、反応温度、反応時間、用いる縮合剤や塩基性触媒などの各反応条件は、例えば上記工程2における上記一般式(II)で表される末端に2つの水酸基を含む基を有するポリオレフィンと上記化合物(D)との反応条件をラジカル重合またはアニオン重合、開環重合開始能を持つ基に変換する際の反応条件と同一の条件を適用できる。
上記工程1’〜3’を順次実施することにより、上記一般式(I)で表される星型ポリマーが製造される。
【0070】
上記の方法(工程1〜3、または工程1’〜3’)により生成したブロックポリマーは、重合に用いた溶媒や未反応のモノマーの留去あるいは非溶媒による再沈殿などの公知の方法を用いることにより単離される。
【0071】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0072】
〔実施例1〕
(1)末端に水酸基とアルキルアルミニウム末端とを有するポリエチレン(PE)の合成
充分に窒素置換した内容量1Lのガラス製重合器にトルエン900mlを装入し、窒素を20リットル/hの量で流通させ、50℃で10分間保持させておいた。これにトリエチルアルミニウム(48mmol)、アリルアルコール(40mmol)を加え5分間攪拌した後、窒素の流通を停止し、エチレンを2リットル/hの量で流通させた。次いで、下記式で表されるジメチルシリレン(2−メチル−4,5−ベンズ−1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド0.0008mmolとメチルアルミノキサン0.43mmolとを室温で10分間接触したトルエンスラリー溶液を添加し、重合を開始し、常圧下50℃で100分間重合を行った。このようにして、末端に水酸基とジエチルアルミニウム基とを有するPEのトルエンスラリーを得た。
【0073】
【化8】
【0074】
(2)末端に水酸基を2つ有するPEの合成
上記(1)で得られたトルエンスラリーを100℃に加熱し、該温度を保ちながら乾燥空気を100リットル/hの量で6時間供給しつづけた後、少量のイソブチルアルコールを添加した。さらに、濃塩酸水溶液5mlを含むイソブチルアルコール溶液50mlを添加し、窒素下75℃で加熱した。ポリマー溶液を大過剰のメタノールに加え、ポリマーを析出させ、80℃で12時間、減圧乾燥を行い目的とするポリマーを得た。13C−NMR分析より、δ43ppmに2つのヒドロキシメチレン基が結合したメチン基のシグナルが、δ65.6ppmに2つのヒドロキシメチレン基のシグナルが検出された。このことから、下記に示す構造を有するPEの生成を確認した。
【0075】
【化9】
【0076】
(3)末端に2−ブロモイソブチリル基を2つ有するPEの合成
上記で得られた、末端に水酸基を2つ有するPE(Mw:11000,Mw/Mn:2.4, 水酸基含量: 0.88mol%)5.0gを、メカニカルスラーラーをとり付けた500mL2口ナスフラスコに入れ、十分窒素置換した。乾燥トルエン300mlを加え、90℃でポリマーが均一に分散するまで、2時間加熱撹拌し、80℃まで降温した後、トリエチルアミン1.26ml、2−ブロモイソブチリルブロミド0.93mlをそれぞれ添加し、80℃で5時間加熱撹拌した。反応液をメタノール2Lに注ぎ析出したポリマーをグラスフィルターで濾過した。このとき、グラスフィルター上のポリマーをメタノール100mlで3回、1N塩酸水溶液100mlで1回、メタノール100mlで2回順次洗浄した。ポリマーを50℃で10時間乾燥させた。1H−NMRの結果から、δ4.0−4.1ppmに末端メチレン(-CH2-OCOCBr(CH3)2)が、δ1.8ppmに末端メチル(-CH2-OCOCBr(CH3)2)基が観察され、原料のヒドロキシメチレンピークが観察されないことから、ヒドロキシル基が2つとも修飾された2−ブロモイソブチリル基修飾PEが得られたものと同定された。
【0077】
(4)PEアーム1本とポリメタクリル酸メチルアーム2本を有する星型ポリマーの合成
脱気窒素置換された100mlシュレンクフラスコに、末端に2つの2−ブロモイソブチリル基を有するPE 0.22g(末端Br:0.07mmol)をいれ、真空ポンプで脱気、窒素置換を5回繰り返した。窒素気流下、臭化銅(I) 10 mg(0.07mmol)、o−キシレン 6.3ml、N,N,N',N',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン(0.5M o-キシレン溶液)0.28ml(0.14mmol)、メタクリル酸メチル(MMA)0.37ml(3.49mmol)を順次加え、セプタムキャップを取り付けた。120℃に昇温し、撹拌しながら7時間反応させた。シュレンクフラスコを氷水で冷却した後、メタノール約5mlを加え反応を停止させ、更に、500mlのメタノールに注ぎ一晩撹拌した。析出したポリマーをグラスフィルターで濾別し、ポリマーを80℃、15Torrの減圧条件下で10時間乾燥させ、0.50gのポリマーを得た。1H−NMR測定より、エチレン:MMA(wt%)=52:48の組成のPE−(PMMA)2星型ポリマーを得た。
【0078】
【発明の効果】
本発明により、1本のポリオレフィンアームP1と2本のポリマーアームP2よりなるスリーアーム星型ポリマーが提供される。
Claims (4)
- 上記一般式(I)において、P2で示される極性基含有ポリマー鎖が、付加重合可能なモノマー(A)または開環重合可能なモノマー(B)を重合することにより得られることを特徴とする請求項1に記載のスリーアーム星型ポリマー。
- 付加重合可能なモノマー(A)が、炭素−炭素不飽和結合を少なくとも一つ有する有機化合物であり、開環重合可能なモノマー(B)が、オキシラン化合物またはラクトン化合物である請求項2に記載のスリーアーム星型ポリマー。
- 上記一般式(I)において、Xで表される結合基が、エーテル結合またはエステル結合を含む基である請求項1から3に記載のスリーアーム星型ポリマー。
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