JP4158404B2 - 変速機構の潤滑装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、変速機構の潤滑装置に関し、特に、自動変速機の変速機構を構成するプラネタリギヤセットのピニオンギヤの回転支持部を潤滑するに適する潤滑装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動変速機の変速機構の軸支持部、歯車の支持部及び噛合い部、摩擦係合部材の当接部、スプライン係合部等の相対摺動部は、摩耗防止や冷却のために潤滑される。自動変速機における潤滑は、トルクコンバータのタービン出力軸の回転で駆動されるオイルポンプを油圧源とし、その吐出圧を調圧して生成される摩擦係合要素の油圧サーボ作動のためのライン圧と、その余剰圧により生成されるトルクコンバータへの供給のためのセカンダリ圧を生成させた残余の低圧の油圧の供給によりなされる。こうした潤滑用の油の機構各部への供給は、バルブボディから変速機ケース内油路を通り、変速機構の中心軸部を通る動力伝達軸内油路、その軸周に開口する径方向油孔を経て、軸の回転による遠心力で外径方向に放出されることでなされる。
【0003】
上記のような潤滑油の供給経路において、プラネタリギヤセットのピニオンギヤのように変速機構の中心軸に対して平行軸となるピニオンシャフトに支持されて回転する部材の支持部への潤滑油の供給には、一般に、変速機構の中心軸部を通る動力伝達軸の径方向油孔に軸周方向の溝を介して通じるキャリア内油路の形成を必要とする。また、キャリアの外部から潤滑油を供給する構成とする場合、変速機構の中心軸部を通る動力伝達軸の径方向油孔から放出される油を捕集してピニオンシャフトの軸内油路に導く油の捕捉手段を必要とする。こうした油の捕捉手段は、一般に、キャリアの一側に添設され、内周側が開いたレシーバで構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、構造が複雑になるキャリア内油路の形成を避けて、前記のようなレシーバを供給油路とする構成では、キャリアの一側にレシーバ配設のための軸方向スペースを必要とし、そのスペース確保のために変速機構の軸方向寸法の増加や他の部材配置の制約の要因となる。また、前記のようなレシーバで囲われる単一の環状空間に捕集された油を直接ピニオンシャフトの軸内油路に導く構成では、各軸内油路の孔径が同様とすると、各軸内油路に同様の油量が供給されることになり、所要潤滑部位に達する油量も同様となる。これに対して各軸内油路に対応する潤滑部位の所要潤滑量が異なる場合、全ての潤滑部位に達する油量が十分になるようにレシーバでの捕集油量を確保した場合、所要潤滑量が少ない部位への供給油量が過多になり、潤滑装置の効率の低下につながる。
【0005】
そこで、本発明は、変速機構の中心軸に対して平行軸となる軸を介して潤滑油を所要潤滑部位に供給する潤滑装置において、実質的な軸方向スペースを必要としない供給油路を構成することを第1の目的とする。次に本発明は、上記の潤滑装置において、各潤滑部位の所要潤滑量に合わせた油量の配分を可能とする供給油路を構成することを第2の目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の第1の目的は、請求項1に記載のように、潤滑油の放出口を有する第1の回転部材と、該第1の回転部材の外周側に位置する第2の回転部材と、該第2の回転部材に支持され、所要潤滑部位に潤滑油を供給するそれぞれの軸内油路を有する複数の軸と、前記第2の回転部材に隣接する摩擦係合要素を備える変速機構の潤滑装置において、前記第2の回転部材と前記摩擦係合要素を連結すると共に該摩擦係合要素の内周側を支持するハブに、該ハブを前記第2の回転部材に固定支持する径方向フランジ部の該第2の回転部材への当接面に形成された溝からなり、前記第1の回転部材の放出口から放出される潤滑油を捕集してそれぞれの前記軸内油路に供給する供給油路が形成されたことを特徴とする構成により達成される。
【0007】
また、前記第2の目的は、請求項2に記載のように、潤滑油の放出口を有する第1の回転部材と、該第1の回転部材の外周側に位置する第2の回転部材と、該第2の回転部材に支持され、少なくとも2つの所要潤滑量が異なる部位に潤滑油を供給する軸内油路をそれぞれが有する少なくとも2つの軸と、前記第2の回転部材に隣接する摩擦係合要素を備える変速機構の潤滑装置において、前記第2の回転部材と前記摩擦係合要素を連結すると共に該摩擦係合要素の内周側を支持するハブに、該ハブを前記第2の回転部材に固定支持する径方向フランジ部の該第2の回転部材への当接面に形成された溝からなり、第1の回転部材の放出口から放出される潤滑油を捕集して前記軸内油路に供給する供給油路が形成され、該供給油路にはそれぞれの前記軸内油路につながる導入路が設けられ、それぞれの前記導入路の径方向内周側の開口面積が、所要潤滑量の比率に合わせた面積比に設定されたことを特徴とする構成により達成される。
【0008】
また、前記第2の目的は、プラネタリギヤセットを対象とする場合、請求項3に記載のように、潤滑油の放出口を有する第1の回転部材と、該第1の回転部材の外周側に位置するプラネタリギヤセットのキャリアと、該キャリアに支持され、かつ、ロングピニオンギヤを支持する軸と、ロングピニオンギヤより軸方向長さの短いショートピニオンギヤを支持する軸と、該軸内にそれぞれ設けられた潤滑油を供給する軸内油路と、前記キャリアに隣接する摩擦係合要素を備える変速機構の潤滑装置において、前記キャリアと前記摩擦係合要素を連結すると共に該摩擦係合要素の内周側を支持するハブに、該ハブを前記キャリアに固定支持する径方向フランジ部の該キャリアへの当接面に形成された溝からなり、第1の回転部材の放出口から放出される潤滑油を捕集して前記軸内油路に供給する供給油路が形成され、該供給油路にはそれぞれの前記軸内油路につながる導入路が設けられ、前記ロングピニオンギヤを支持する軸の軸内油路に連通する導入路の径方向内周側の開口面積は、前記ショートピニオンギヤを支持する軸の軸内油路に連通する導入路の径方向内周側の開口面積より大きくされたことを特徴とする構成により達成される。
【0009】
これらの場合、具体的には、請求項4に記載のように、前記供給油路は、前記導入路の内周側に第1の回転部材の放出口から放出される潤滑油を捕集する捕集路を有し、該捕集路は、第1の回転部材の放出口に対向する内周側が開放された環状油路であり、前記導入路は、環状油路とそれぞれの軸内油路に連通する放射方向油路とされる。
【0010】
前記いずれかの構成において、請求項5に記載のように、前記第2の回転部材は、プラネタリギヤセットのキャリアであり、それぞれの前記軸は、ピニオンギヤをキャリアに回転自在に支持するピニオンシャフトである構成とすることができる。
【0011】
前記の各構成におけるそれぞれの前記軸は、ラビニョタイプのプラネタリギヤセットのロングピニオンギヤとショートピニオンギヤのピニオンシャフトであると共に、前記軸内油路とロングピニオンギヤ又はショートピニオンギヤの内周側に連通する径方向軸内油路を有し、ロングピニオンギヤとショートピニオンギヤをそれぞれ軸にベアリングを介して支持する構成とすることができる。
【0012】
【発明の作用及び効果】
前記請求項1記載の構成では、第1の回転部材の放出口から放出される潤滑油を捕集してそれぞれの軸内油路に供給する供給油路が、第2の回転部材と摩擦係合要素を連結すると共に該摩擦係合要素の内周側を支持するハブに、該ハブを第2の回転部材に固定支持する径方向フランジ部の該第2の回転部材への当接面に形成された溝として形成されているため、第2の回転部材と摩擦係合要素との間に、実質的な軸方向スペースを必要としない供給油路を構成することができる。したがって、この構成によれば、供給油路の配設に伴う変速機構の軸方向寸法の増加や他の部材配置の制約をなくすことができる。また、この構成によれば、第2の回転部材の端面と径方向フランジ部により供給油路が画成されるため、従来のレシーバに比べて複雑になる油路配置を、径方向フランジ部への溝形成により、簡単な加工でしかも低コストで実現することができる。
【0013】
次に、請求項2記載の構成では、第2の回転部材と摩擦係合要素との間に実質的な軸方向スペースを必要とせず、かつ簡単な加工で実現することができる供給油路において、それぞれの軸内油路につながる導入路の径方向内周側の部分で、油量が開口面積比に応じて配分されるため、所要潤滑量が異なる潤滑部位に達する油量が最適化され、特に、所要潤滑量が少ない部位への油供給の過多をなくすことができる。したがって、この構成によれば、潤滑過多による引き摺りロスを低減して、変速機構の動力伝達効率の低下を防ぐことができる。
【0014】
また、請求項3記載の構成では、キャリアと摩擦係合要素との間に実質的な軸方向スペースを必要とせず、かつ簡単な加工で実現することができる供給油路において、ショートピニオンギヤ側の軸内油路につながる導入路の径方向内周側の部分で、ロングピニオンギヤ側の軸内油路につながる導入路の径方向内周側の部分より油量が開口面積の違いにより絞られるため、特に、相対的に所要潤滑量が少ないショートピニオンギヤ側への油供給の過多をなくすことができる。したがって、この構成によれば、ショートピニオン側の潤滑過多による引き摺りロスを低減して、変速機構の動力伝達効率の低下を防ぐことができる。
【0015】
更に、請求項4記載の構成では、捕集路において、捕集された油の分布が第2の回転部材の回転により周方向に均一化され、それにより開口面積比に応じた放射方向油路への油の導入配分が適正化される。また、導入路が放射方向に指向するため、第2の回転部材の回転による遠心力で軸内油路への油の供給が促進され、油路断面積の小さな油路によっても十分な油の供給が可能となる。
【0016】
また、請求項5記載の構成によれば、第2の回転部材をプラネタリギヤセットのキャリアとし、それぞれの軸をピニオンギヤをキャリアに回転自在に支持するピニオンシャフトとする変速機構において、前記の各効果を達成することができる。
【0019】
更に、請求項6記載の構成では、ラビニョタイプのプラネタリギヤセットにおいて、回転負荷が大きく異なるロングピニオンギヤとショートピニオンギヤをそれぞれキャリアに支持するベアリングの潤滑を効率良く適正化して、それらの耐久性を確保することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面に沿い、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の適用に係る変速機構の一例としての自動変速機におけるラビニョタイプのプラネタリギヤセットとその関連部分の部分断面を示す。この変速機構は、その中心軸線上に配置された第1の回転部材としての入力軸1と、その外周に配置され、第2の回転部材としてのキャリア25と所要潤滑部位に潤滑油を供給するそれぞれの軸内油路B,Cを有する複数の軸としてのピニオンシャフト25C,25Dを備えるラビニョタイプのプラネタリギヤセット2と、それに隣接する摩擦係合要素としてのクラッチ3とを構成要素として備える。
【0021】
この機構の入力軸1は、機構各部への潤滑油の供給のために、その軸心に沿って延びる軸内油路Aを備えており、この軸内油路Aは、従来の一般的自動変速機の場合と同様に、図示しないバルブボディの潤滑油圧供給油路に連結されており、潤滑部位に応じた軸方向位置に形成された多数の径方向油孔を経て軸周に開口している。これら径方向油孔のうち、符号Aaで示す油孔が、本発明に係る第1の回転部材の放出口を構成する。
【0022】
プラネタリギヤセット2は、大径のサンギヤ21と、小径のサンギヤ22と、互いに噛合して且つ小径のサンギヤ22に噛合するショートピニオンギヤ23と、大径のサンギヤ21に噛合するロングピニオンギヤ24からなる3対のピニオンギヤと、それら3対のピニオンギヤを支持するキャリア25と、各ロングピニオンギヤ24に噛合するリングギヤ26から構成されている。そして、小径のサンギヤ22は、その内周面をブッシュ41を介して入力軸1の外周面に支持され、大径のサンギヤ21は、同様に内周面をブッシュ42を介して小径のサンギヤ22の延長軸部の外周面に支持されている。
【0023】
キャリア25は、その本体25Aと、その一端を閉じるキャリアカバー25Bと、それらに両端を支持され、ロングピニオンギヤ24を複列のニードルベアリング51を介して回転自在に支持する周方向等間隔配置の3本のピニオンシャフト25C、ショートピニオンギヤ23をニードルベアリング52を介して回転自在に支持する周方向等間隔配置の3本のピニオンシャフト25Dとから構成されている。また、各ピニオンギヤ23,24の端面とキャリア本体25Aの内端面及びキャリアカバー25Bの内端面の間には、各ピニオンギヤ23,24を軸方向支持するサイドワッシャ43,44が配置されている。そして、キャリア25は、キャリアカバー25B側では、キャリアカバーのボス部内周面をブッシュ45を介して入力軸1の外周面に支持され、キャリア本体25A側では、本体のボス部内周面をブッシュ46を介して大径のサンギヤ21の延長軸部の外周面に支持されている。
【0024】
ロングピニオンギヤ24の各ピニオンシャフト25Cは、キャリアカバー25B側を入口として軸長を概ね全通する軸内油路Bを有し、その中央部から径方向に開く径方向軸内油路としての油孔Baが複列のベアリング51の間に出口を形成している。ショートピニオンギヤ23の各ピニオンシャフト25Dは、同じくキャリアカバー25B側を入口として軸長の概ね半分まで延びる軸内油路Cを有し、その終端部手前で径方向に開く径方向軸内油路としての油孔Caが単列のベアリング52の中央に出口を形成している。
【0025】
図示されていないが、プラネタリギヤセット2の小径のサンギヤ22は、入力軸1の回転を減速して出力する減速プラネタリギヤの出力要素にクラッチを介して連結され、大径のサンギヤ21は、他のクラッチを介して減速プラネタリギヤの同じく出力要素に連結されている。キャリア25は、更に他のクラッチとしての前記クラッチ3を介して入力軸1に連結されている。また、リングギヤ26は、出力軸に連結されている。
【0026】
クラッチ3は、ディスク31とセパレータプレート32を交互に軸方向に並べた摩擦部材30と、摩擦部材30を内周側でスプライン係合支持するハブ33と、摩擦部材30を外周側でスプライン係合支持するドラム34と、図示しないクラッチ操作機構としての油圧サーボで構成されている。このクラッチ3は、前述のようにプラネタリギヤセット2のキャリア25と入力軸1を連結するクラッチであることから、クラッチ3のハブ33は、それを連結部材としてプラネタリギヤセット2のキャリア25にボルト止め連結されている。
【0027】
こうした構成からなる変速機構において、本発明に従い、キャリア25とクラッチ3の摩擦部材30を連結するハブ33に、入力軸1の放出口Aaから放出される潤滑油を捕集してそれぞれの軸内油路A,Bに供給する供給油路が形成されている。この供給油路は、キャリア25の一側に設けられており、入力軸1の放出口Aaから放出される潤滑油を捕集する捕集路Dと、捕集路Dとそれぞれの軸内油路B,Cをつなぐ導入路E,Fからなる。詳しくは、捕集路Dは、入力軸1の放出口Aaに対向する内周側が開放された環状油路とされ、導入路E,Fは、環状油路とそれぞれの軸内油路B,Cに連通する放射方向油路とされている。そして、それぞれの導入路E,Fが捕集路Dに連通する部分の開口面積が、所要潤滑量の比率に合わせた面積比に設定されている。
【0028】
この形態においては、プラネタリギヤセット2のロングピニオンギヤ24をピニオンシャフト25Cに支持するベアリング51がギヤの長さに合わせて複列配置とされ、プラネタリギヤセット2のショートピニオンギヤ23をピニオンシャフト25Dに支持するベアリング52が単列配置とされていることから、所要潤滑量が2対1の関係になる。また、図の断面形状からも分かるように、ロングピニオンギヤ24側のピニオンシャフト25Cは、ショートピニオンギヤ23側のピニオンシャフト25Dより外径が大きいことから、これに合わせて両ベアリング51,52のニードルローラのコロ数もロングピニオンギヤ24側が多く、更に、両ピニオンギヤ23,24の空転時の回転数が、ロングピニオンギヤ24側の方が大きくなる。これらの条件を総合すると、本形態の場合、所要潤滑量は、3対1の関係になる。
【0029】
こうした条件から、ハブ33を径方向フランジ部33a側からみた正面を図2に示すように、この形態において、ハブ33をキャリア25に固定支持する径方向フランジ部33aのキャリア25への当接面に形成された溝と、キャリア25の端面とで画成される供給油路は、ロングピニオンギヤ24側のピニオンシャフト25Cの軸内油路Bに通じる導入路Eが捕集路Dに連通する部分の開口面積を3として、ショートピニオンギヤ23側のピニオンシャフト25Dの軸内油路Cに通じる導入路Fが捕集路Dに連通する部分の開口面積を1とする3対1の比率に設定されている。この形態では、各導入路E,Fの軸方向幅すなわち溝の深さが等しく設定されているため、開口部の周方向幅すなわち溝の幅We,Wfによりこの比率が設定されており、これにより流量比率が定まることから、図示のように、ロングピニオンギヤ24側のピニオンシャフト25Cの軸内油路Bに通じる導入路Eについては、軸内油路Bにつながる側の溝幅を軸内油路Bの直径に実質上対応する幅として、開口部から放射方向に順次直線的に狭まる溝幅とし、ショートピニオンギヤ23側のピニオンシャフト25Dの軸内油路Cに通じる導入路Fついては、軸内油路Cの直径に実質上対応する一定幅としている。
【0030】
以上のように構成された潤滑装置では、入力軸1の放出口Aaから軸の回転による遠心力で放出される油が、ブッシュ45の開口を通してキャリアカバー25Bのボス部内周の溝に入り、径方向油孔から排出される。こうして排出された油は、捕集路Dに捕捉されて周方向に環状に溜まり、キャリア25の回転につれて開口面積比に見合った流量で各導入路E,Fに流れ込み、各ピニオンシャフト25C,25Dの軸内油路B,Cの入口に導かれる。各軸内に溜まる油は、それにかかる遠心油圧で出口Ba,Caから排出され、軸方向両側に流れて各ベアリング51,52を潤滑し、更に径方向に流れて、下流側の各サイドワッシャ43,44の摺動部を潤滑し、最終的に外部に放出される。こうした一連の流れから、各軸内油路B,Cに供給される油量が、ベアリング51,52の潤滑油量となり、サイドワッシャ43,44の潤滑油量ともなる。
【0031】
かくしてこの実施形態の潤滑装置によれば、入力軸1の放出口Aaから放出される潤滑油を捕集してそれぞれの軸内油路B,Cに供給する供給油路が、キャリア25とクラッチ3を連結するハブ33に形成されていることで、キャリア25とクラッチ3との間に、実質的な軸方向スペースを必要としない供給油路が構成される。したがって、この構成により、供給油路の配設に伴う変速機構の軸方向寸法の増加や他の部材配置の制約をなくすことができる。
【0032】
また、供給油路において、捕集路Dから導入路E,Fにつながる部分で、油量が開口面積比に応じて配分されるため、所要潤滑量が異なる潤滑部位に達する油量が最適化され、特に、所要潤滑量が少ないショートピニオン23側への油供給の過多がなくなる。したがって、この構成により、ショートピニオン23側の潤滑過多による引き摺りロスを低減して、変速機構の動力伝達効率の低下を防ぐことができる。また、これにより相対的に負荷の大きなロングピニオン24側の潤滑量を増すことができるため、基となる捕集路Dへの油の供給量が同じとしたときのロングピニオン24側の潤滑量の確保も容易となる。
【0033】
更に、捕集路Dにおいて、捕集された油の分布がキャリア25の回転により周方向に均一化され、それにより開口面積比に応じた放射方向油路への油の導入配分が適正化される。また、導入路E,Fが放射方向に指向するため、キャリア25の回転による遠心力で軸内油路B,Cへの油の供給が促進され、油路断面積の小さな油路によっても十分な油の供給が可能となる。
【0034】
更に、供給油路が、本来ハブ33をキャリア25に連結するに必須の径方向フランジ部33aを利用して形成されるため、供給油路配設スペースの削減効果が一層増大する。また、この構成により、キャリア25の端面と径方向フランジ部33aにより供給油路が画成されるため、従来のレシーバに比べて複雑になる油路配置を、ハブ33の径方向フランジ部33aへの溝形成により、簡単な加工でしかも低コストで実現することができる。
【0035】
以上、本発明を実施形態を挙げて詳説したが、本発明の思想は例示の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の事項に基づく種々の具体的構成の変更を包含するものである。例えば、第1の回転部材は、入力軸に限らず中間軸や出力軸とすることができる。また、例示の形態では、第2の回転部材としてのキャリアのボス部が、第1の回転部材としての入力軸の放出口に被さることから、捕集路の内周側がボス部の外周で閉じられた空間となっているが、一般にはこの空間は開放空間とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の適用に係る実施形態の変速機構の軸方向部分断面図である。
【図2】実施形態の供給油路の形状を示す連結部材の正面図である。
【符号の説明】
Aa 放出口
B,C 軸内油路
Ba,Ca 油孔(径方向軸内油路)
D 捕集路(供給油路)
E,F 導入路(供給油路)
1 入力軸(第1の回転部材)
2 プラネタリギヤセット
3 クラッチ(摩擦係合要素)
23 ショートピニオンギヤ
24 ロングピニオンギヤ
25 キャリア(第2の回転部材)
25C,25D ピニオンシャフト(軸)
33 ハブ(連結部材)
33a 径方向フランジ部
43,44 サイドワッシャ
51,52 ニードルベアリング
Claims (6)
- 潤滑油の放出口を有する第1の回転部材と、該第1の回転部材の外周側に位置する第2の回転部材と、該第2の回転部材に支持され、所要潤滑部位に潤滑油を供給するそれぞれの軸内油路を有する複数の軸と、前記第2の回転部材に隣接する摩擦係合要素を備える変速機構の潤滑装置において、
前記第2の回転部材と前記摩擦係合要素を連結すると共に該摩擦係合要素の内周側を支持するハブに、該ハブを前記第2の回転部材に固定支持する径方向フランジ部の該第2の回転部材への当接面に形成された溝からなり、前記第1の回転部材の放出口から放出される潤滑油を捕集してそれぞれの前記軸内油路に供給する供給油路が形成されたことを特徴とする変速機構の潤滑装置。 - 潤滑油の放出口を有する第1の回転部材と、該第1の回転部材の外周側に位置する第2の回転部材と、該第2の回転部材に支持され、少なくとも2つの所要潤滑量が異なる部位に潤滑油を供給する軸内油路をそれぞれが有する少なくとも2つの軸と、前記第2の回転部材に隣接する摩擦係合要素を備える変速機構の潤滑装置において、
前記第2の回転部材と前記摩擦係合要素を連結すると共に該摩擦係合要素の内周側を支持するハブに、該ハブを前記第2の回転部材に固定支持する径方向フランジ部の該第2の回転部材への当接面に形成された溝からなり、第1の回転部材の放出口から放出される潤滑油を捕集して前記軸内油路に供給する供給油路が形成され、該供給油路にはそれぞれの前記軸内油路につながる導入路が設けられ、
それぞれの前記導入路の径方向内周側の開口面積が、所要潤滑量の比率に合わせた面積比に設定されたことを特徴とする変速機構の潤滑装置。 - 潤滑油の放出口を有する第1の回転部材と、該第1の回転部材の外周側に位置するプラネタリギヤセットのキャリアと、該キャリアに支持され、かつ、ロングピニオンギヤを支持する軸と、ロングピニオンギヤより軸方向長さの短いショートピニオンギヤを支持する軸と、該軸内にそれぞれ設けられた潤滑油を供給する軸内油路と、前記キャリアに隣接する摩擦係合要素を備える変速機構の潤滑装置において、
前記キャリアと前記摩擦係合要素を連結すると共に該摩擦係合要素の内周側を支持するハブに、該ハブを前記キャリアに固定支持する径方向フランジ部の該キャリアへの当接面に形成された溝からなり、第1の回転部材の放出口から放出される潤滑油を捕集して前記軸内油路に供給する供給油路が形成され、該供給油路にはそれぞれの前記軸内油路につながる導入路が設けられ、
前記ロングピニオンギヤを支持する軸の軸内油路に連通する導入路の径方向内周側の開口面積は、前記ショートピニオンギヤを支持する軸の軸内油路に連通する導入路の径方向内周側の開口面積より大きくされたことを特徴とする変速機構の潤滑装置。 - 前記供給油路は、前記導入路の内周側に第1の回転部材の放出口から放出される潤滑油を捕集する捕集路を有し、該捕集路は、第1の回転部材の放出口に対向する内周側が開放された環状油路であり、前記導入路は、環状油路とそれぞれの軸内油路に連通する放射方向油路である、請求項2又は3記載の変速機構の潤滑装置。
- 前記第2の回転部材は、プラネタリギヤセットのキャリアであり、それぞれの前記軸は、ピニオンギヤをキャリアに回転自在に支持するピニオンシャフトである、請求項1又は2記載の変速機構の潤滑装置。
- それぞれの前記軸は、ラビニョタイプのプラネタリギヤセットのロングピニオンギヤとショートピニオンギヤのピニオンシャフトであると共に、前記軸内油路とロングピニオンギヤ又はショートピニオンギヤの内周側に連通する径方向軸内油路を有し、ロングピニオンギヤとショートピニオンギヤをそれぞれ軸にベアリングを介して支持する、請求項1〜5のいずれか1項記載の変速機構の潤滑装置。
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