JP4157934B2 - 金属単結晶製造方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属単結晶製造方法及び装置に関し、特に、一度溶融して凝固させた凝固金属体を上下反転させて再びるつぼの内孔内に装入し、再度溶融/凝固することにより全体がほぼ単結晶化した金属単結晶を、るつぼの成分が不純物として入ることのない高純度に製造するための新規な改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、用いられていたこの種の金属単結晶製造方法及び装置としては、図9に示すチョクラルスキー法(例えば、非特許文献1参照)及び図10に示すブリッジマン法(例えば、非特許文献2参照)を挙げることができる。
【0003】
図9のチョクラルスキー法において、符号1で示されるものは、金属からなる未溶解原料(原料金属)3Aを溶解するためのるつぼであり、2は加熱装置、3は溶融原料、4は結晶の育成方位を決めるための種結晶、5は種結晶4を取り付けるための引き上げ軸、6は引き上げ軸5を回転するための回転装置、7は種結晶4、引き上げ軸5、回転装置6を上下に移動する昇降装置、8は昇降装置7を支える支柱、9は育成された金属単結晶である。
次に、ブリッジマン法の構成を図10に従って説明する。図10において、1は原料を溶解するためのるつぼ、2は加熱装置、3は溶融原料、4は結晶の育成方位を決めるための種結晶、5はるつぼ1を吊り下げるための吊り下げ軸、6は吊り下げ軸5を回転するための回転装置、7はるつぼ1、引き上げ軸5、回転装置6を上下に移動する昇降装置、8は昇降装置7を支える支柱、9はるつぼ1中に育成された金属単結晶である。
【0004】
次に、動作について説明する。
まず、チョクラルスキー法の動作を図9、及び図11に従って説明する。図11の(a)のように、るつぼ1中に原料を溶解し、上方より種結晶4を静かに近づける。やがて種結晶4は溶融原料3の液面に触れて図11の(b)のごとく種結晶4と溶融原料3が溶融原料3の表面張力によりつながった状態となる。通常、種結晶4は育成しようとする結晶と同材質であるので、溶融原料液面付近の温度分布を制御し、種結晶4は溶けないが、るつぼ1中の原料は溶けている、という状態にしておく。また通常、種結晶4は一定の回転数で回転しておく。やがて、種結晶4に接して種結晶4と結晶方位が一致した結晶が成長し始める。この状態から、図11の(c)、(d)、(e)のごとく種結晶4を固定した引き上げ軸5を徐々に上方に引き上げることにより、金属単結晶9を徐々に大きく成長させる。金属単結晶9が所望の大きさに達したら、引き上げ軸5を引き上げて、溶融原料から金属単結晶9を切り離す。このようにして結晶方位が指定された金属単結晶が育成できる。
【0005】
次に、ブリッジマン法の動作を図10、及び図12に従って説明する。図12の(a)のように、るつぼ1底部の所定の位置に種結晶4を設置し、その上に原料3を入れ、加熱装置2により加熱して原料3を溶解する。通常、種結晶4は育成しようとする結晶と同材質であるので、種結晶4と原料3の接触する位置付近の温度分布を制御し、種結晶4は溶けないが、るつぼ1中の原料は溶けている、という状態にしておく。やがて、種結晶4に接して種結晶4と結晶方位が一致した結晶が成長し始める。この状態から、図12の(b)、(c)、(d)のごとくるつぼ1を吊り下げた吊り下げ軸5を徐々に下方に引き下げることにより、金属単結晶9を徐々に大きく成長させる。吊り下げ軸5を一定速度で回転させる場合もある。金属単結晶9が所望の大きさに達したら、(あるいはるつぼ内の原料がすべて結晶化し終わったら)育成作業を終了する。このようにして結晶方位が指定された金属単結晶9が育成できる。
【0006】
【非特許文献1】
「結晶育成基礎技術」東京大学出版会 1980年5月30日発行の第108頁
【非特許文献2】
前記非特許文献1の第109頁
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の金属単結晶製造方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
まず、チョクラルスキー法の場合について述べる。この方法では、原料をるつぼで溶解するため、るつぼの成分が溶融原料に混入し、育成した結晶に不純物としてとり込まれる。この不純物は単結晶を機能部品、構造部品として使用する際に性能を劣化させる原因となる。
また、図11の(f)に描いたように溶融した原料のすべてを単結晶として引き上げることは通常不可能で、溶融した原料のかなりの部分をるつぼ内に残留した状態で結晶育成を終了せざるを得ないのが普通である。このため原料が無駄になる。
また、動作の説明において、「溶融原料液面付近の温度分布を制御し、種結晶は溶けないが、るつぼ中の原料は溶けている、という状態にしておく。」と述べたが、これはかなり熟練を要する作業で、温度条件がわずかに不適当であると、種結晶が溶解、消失してしまうという事故がおきる。
また、引き上げ軸を一定速度で回転しつつ微速で上方に引き上げるという機械的動きを精度よく行う必要があるので、装置が大掛かりで高価となる。また特別の温度制御をしないと、図11(f)に描いたような太さが一定の結晶を得ることはできないので、装置はさらに複雑、高価となる。
また、一般にこの方法は結晶育成に長時間を要する。
次に、ブリッジマン法の場合について述べる。この方法でも、原料をるつぼで溶解するため、るつぼの成分が溶融原料に混入し、育成した結晶に不純物としてとり込まれる。この不純物は単結晶を機能部品、構造部品として使用する際に性能を劣化させる原因となる。
また、動作の説明において「種結晶と原料の接触する位置付近の温度分布を制御し、種結晶は溶けないが、るつぼ中の原料は溶けている、という状態にしておく。」と述べたが、これはかなり熟練を要する作業で、温度条件がわずかに不適当であると、種結晶が溶解、消失してしまうという事故がおきる。また、もし種結晶が消失しても外部からはそれが見えないので、そのまま作業を行ってしまうこともある。
また、るつぼに入ったまま結晶化するため、室温まで冷却する過程でひずみが入ることがある。(るつぼ材質と、結晶との熱膨張率の違いに起因する熱応力のため。)このひずみは単結晶を機能部品、構造部品として使用する際に性能を劣化させる原因となる。また極端な場合は、育成した単結晶が双晶となったり、積層欠陥が入ったりする。
また、るつぼを微速で上方に引き上げるという機械的動き(時には回転もあり)を精度よく行う必要があるので、装置が大掛かりで高価となる。
また、一般にこの方法も結晶育成に長時間を要する。
従って、前述の従来方法及び装置においては、
(A) るつぼからの不純物の混入があり、機能部品、構造部品としての性能が低下する。
(B) るつぼとの熱膨張率の違いにより、結晶にひずみが入る。
(C) 精密な機械的動作を必要とするので、装置が複雑で高価である。
(D) 結晶育成の作業は熟練を要する。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、るつぼに起因する不純物の混入やひずみの発生がなく、機械的動作がないので装置が簡単(従って安価)で非熟練者でも作業が可能で、かつ、大型の結晶を短時間で製造できる金属単結晶製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明による金属単結晶製造方法は、コイルが配設されたるつぼの内孔内に未溶解原料を装入し、コールドクルーシブル法によって前記未溶解原料を溶解/凝固させ、金属単結晶を得るようにした金属単結晶製造方法において、前記内孔内で一度溶解/凝固され上部に単結晶である結晶粒を有すると共に下部に多結晶体を有す凝固金属体を上下反転させ、上部に前記多結晶体を有し下部に前記結晶粒を有する状態で前記凝固金属体を再度前記内孔内に装入し、前記凝固金属体を再度溶解して凝固させることにより前記金属単結晶を得る方法であり、また、前記内孔の底面形状を前記凝固金属体に対して隙間ができるように形成している方法であり、また、前記凝固金属体を再度溶解して凝固させる際に、前記内孔の底部に、前記結晶粒の一部を未溶融で残留するようにし、次工程の金属単結晶製造時の種結晶として働かせる方法であり、また、前記金属単結晶を最終的に前記るつぼから取り出す前に、前記金属単結晶を前記るつぼ内で熱処理する方法であり、また、本発明による金属単結晶製造装置は、コイルが配設されたるつぼの内孔内に未溶解原料を装入し、コールドクルーシブル法によって前記未溶解原料を溶解/凝固させ、金属単結晶を得るようにした金属単結晶製造装置において、前記るつぼの内孔の底面と前記金属単結晶の結晶底面との間には、隙間が形成されるように前記内孔の形状が設定されている構成である
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面と共に本発明による金属単結晶製造方法及び装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1及び図2は、周知(例えば、1999年3月に東北大学出版会発行の「材料電磁プロセッシング」の第2頁から第5頁に開示されている)のコールドクルーシブル法による金属単結晶育成装置を示している。
本発明は、この金属単結晶育成装置を用いて、金属単結晶製造装置100として金属単結晶9を製造するものである。
【0011】
図1において符号1で示されるものはるつぼであり、このコイル2が配設されたるつぼ1自体は冷却水通路20によって水冷されており、また電気抵抗の低い金属(たとえば銅)製であるので、るつぼ1自体の温度は原料金属と反応するほどの高温とはならない。また、るつぼ1と、溶融金属原料とのあいだに、電磁気的な斥力が働き、溶融金属原料はるつぼ1と実質的に接触しない状態となるのが、コールドクルーシブル法の特徴である。
本発明の発明者は、コールドクルーシブル法のこの特徴を活かして、単結晶育成の原料を溶解することにより、溶融金属原料にるつぼの成分が不純物として溶け込むのを防ぐことができるようにした。
また、コールドクルーシブル法のこの特徴を活かして、溶融金属原料を金属単結晶として凝固させることにより、育成された単結晶にひずみが入るのを防ぐことができるようにした。
また、るつぼ1底の形状をるつぼ内で凝固した金属のメニスカスの形状とほぼ一致するように形作ることにより、凝固金属の一部を次工程の種結晶として用い、再溶解/再凝固の過程を経て、容易に単結晶を育成することができるようにした。
また、コールドクルーシブル法のこの特徴を活かして、溶融金属原料を金属単結晶として凝固させることにより、機械的な動作がない装置で単結晶を製造できるようにした。またそのような装置を、構造が簡単で、操作が簡単で、かつ低価格で構成できるようにした。
また、容易に大型結晶を作製するようなこの種の装置を構成でき、従来よりも短時間で単結晶育成ができることを明らかにした。
また、内孔1aを有する前記るつぼ1には、平面的にみると、半径方向に所定角度毎に形成されたスリット21が設けられている。
尚、前述の金属単結晶製造装置100に金属単結晶9を形成した状態を断面構成として図3に示している。
【0012】
次に、動作について述べる。尚、図4の (a) から (c 2) は一回目の溶解凝固を示し、図4の (d) から (g) は二回目の溶解凝固を示している。まず、図4の(a)はるつぼ1に未溶解原料からなる原料金属3Aを投入し溶解を開始する状況を示している。この状態で誘導加熱装置であるコイル2に高周波電流を通電すると、るつぼ1に誘導電流が発生する。さらにこの誘導電流により、原料に誘導電流が発生する。るつぼ1は電気抵抗の低い銅で作られており、また冷却水を通じて冷却する構造になっているため、るつぼ1自身の温度は原料金属3Aと反応するほどの高温とはならない。一方原料金属3Aは誘導電流により加熱され温度が上がる。
やがて原料金属3Aは完全に溶融し、図4の(b)の溶融金属53の状態となる。この状態では、るつぼ1に流れる誘導電流と、溶融金属53に流れる誘導電流とのあいだに電磁気的な斥力が働くために、溶融金属53はるつぼ1内壁から遠ざけられるような力を受ける。その結果、るつぼ1内の側面部では溶融金属53と内壁1Aとが図4(b)に図示したように完全に離れた状態となる。またるつぼ1内の底部1Bでは溶融金属53とるつぼ1の底部1Bとは接触しているが、前述のようにるつぼ1の温度は原料金属3Aと反応するほどの高温とはならないので、溶融金属53と反応して結晶に不純物となって入り込むということは起こらない。
図4の(b)の状態に一定時間保持した後、予め設定された所定の温度/時間プログラムに従って降温すると、るつぼ1内の溶融金属53は下部より徐々に凝固し始め、最終的には全体が凝固して、図4の(c)のような状態となる。すなわち、ここでは、凝固金属体53aの下部の約1/3位が内孔1aの底部1Bに付着している。この状態における凝固金属体53aの内部の金属組織を模式的に図示すると、図4の(c−2)のように形成されている。すなわち、るつぼ1に接する部分は多結晶体60であるが、凝固金属体53aの内部から上面に向かって成長した上部の大型の結晶粒61が形成される。また前述の電磁気的斥力の作用下で凝固するために、図4の(c)に示したように凝固金属体53aの下部、約3分の1のみがるつぼ1に接し、上部はるつぼ1の内壁1Aに接しない状態になっている。すなわち、前記結晶粒61は一回目の溶解凝固における前記凝固金属体53aのうちの前記大型の結晶粒61のことである。
次に、次工程である二回目の溶解凝固として、図4の(d)のようにこの凝固金属体53aをるつぼ1から取り出し、この凝固金属体53aの上下を反転し、図4の(e)のように再度るつぼ1にセットする。るつぼ1の内壁1Aの面は、凝固金属体53aの周知のメニスカスとほぼ一致するように作られている。具体的には図4の(e)に示したように、反転して再装入された凝固金属体53aがるつぼ1と角部62のみにて接触しており、内孔1aの底部との間にわずかな隙間63ができるような形状に構成されている。
【0013】
この状態で、再度昇温を開始し凝固金属体53aを再度溶解させる。しかし、この再溶解においては、凝固金属体53aを完全には溶融させず、前記の大型の結晶粒61の一部が未溶融で残留するような状態、すなわち図4の(f)に図示したような状態にとどまるように昇温プログラムを設定する。この状態では、前記のるつぼ1と溶融金属53間の電磁気的斥力により、溶融金属53はるつぼ1の壁面すなわち内壁1Aから遠ざけられ、図4の(f)に図示したような状態となる。すなわち、大型の結晶粒61の一部がるつぼ1底部に存在し、その上にるつぼ1の内壁1Aと接触しないような状態で溶融金属53が乗ったようになる。
また、隙間63には溶融金属が流れ込むが直ちに凝固する。この凝固部は多結晶体609であるが、大型の結晶粒61とるつぼ1とをしっかりと固定し、かつ結晶粒61からるつぼ1への熱の移動を確実にするという重要な役割を果たす。
図4の(f)の状態に一定時間保持した後、所定の温度/時間プログラムに従って降温すると、るつぼ1内の溶融金属は残存結晶粒との接触面より徐々に凝固し始め、最終的には全体が凝固して、図4の(g)のような状態となる。
この凝固が進む過程で、るつぼ1底部に残した結晶粒61の一部は、次工程の単結晶育成における種結晶として働く。すなわち、るつぼ1内の温度分布の影響で、溶融金属の凝固は、結晶粒61との接触面から上方に向かって進む。(逆に言えば、溶融金属の凝固が、結晶粒61との接触面から上方に向かって進むような温度分布がるつぼ1内にできるように、加熱方法を調整する。)このようにすると、凝固する金属は結晶粒61の結晶方位、結晶構造と整合した状態で凝固が進む。その結果、凝固金属体53の全体が、最初に存在した結晶粒61と同じ結晶方位を持った、単一の結晶、すなわち金属単結晶となる。すなわち、前述の二回目の溶解凝固において、前記金属単結晶9が得られる。
尚、この最終的に製造された金属単結晶9を図4の(g)のるつぼ1から外に取り出す前に、必要に応じて加熱等の熱処理を行い、素性を向上させることもできる。
【0014】
実施例
尚、前述の部分と同一部分には同一符号を付していると共に、金属単結晶製造装置100としては、図1及び図2の構成を用いる。
図5から図8で示されるように、まず、図1、図2及び図5において、1はるつぼ、20はるつぼ1を冷却するための冷却水の通路、21はるつぼ1に設けられたスリット、2は誘導加熱のためのコイルである。本実施例ではアルミニウムの純度を向上させることと単結晶を育成することの両方を狽ったので、この図の装置全体を図示しない真空チャンバに格納し、高真空の条件下ですべての作業を行った。るつぼ1は銅製で、その概略寸法は内径6cm、深さ13cm、内容積は約370cmである。このるつぼ1を用いてアルミニウムを溶かす場合の高周波電力(以後溶解電力とする)と、それを凝固さすときの電力(以後凝固電力とする)は、あらかじめ調べておき、実際の溶解ではそれらの条件で行った。
るつぼ1内に未溶解原料(原料金属)3Aとしての約600gのアルミニウム(純度99.99%)を図5のように装入した。図5はるつぼ1を真上から見たもので、1はるつぼ、3Aがアルミニウム素材、2はコイルである。一回目の溶解凝固における溶解では、電力をすばやく溶解電力まで上げ、ほぼ全体を溶解した。横方向から見た溶解中の様子を図6に示しており、上に丸く突き出ている53が溶融金属である液体アルミニウム、1はるつぼ、2はコイルである。なお、図4の(b)に示したのは図6の状態の概略である。その後、電力を凝固電力まで徐々に降下し、アルミニウム全体が凝固するまで凝固電力で保持した。この間に要した時間は約30分であった。一回目溶解後のアルミニウム塊を上下方向に切断して、結晶粒を観察した一例を図7に示す。この例はアルミニウム塊の上部約2/3の部分を示しており、61の部分が大きい結晶粒となっている。
【0015】
次に、二回目の溶解凝固における溶解のために、アルミニウム塊を上下逆にして、るつぼ1に装入した。この状態で図7の大型の結晶粒61の部分は、図4の(e)で示されるように、るつぼ1底にほぼぴったりとはまるようになっている。ただし、るつぼ1の底部の形状は、結晶粒61との間にごくわずかの隙間ができるような形状に作られている。二回目の溶解では、一回目の溶解同様電力をすばやく溶解電力まで上げた。そして、アルミニウム塊の下部を残してその上部が完全に溶解したことを確認した後、電力を凝固電力まで徐々に降下し、その電力を保持したままアルミニウム全体が凝固するのを待った。全体が凝固した後は、凝固電力をそのまま保持してアルミニウム塊を高温に保ち、凝固時に発生する内部歪や各種欠陥の除去、いわゆる焼鈍を行った。その後、電力を凝固電力から零まで徐々に降下し、アルミニウム塊を徐冷した、二回目の溶解に要した時間は、焼鈍と徐冷を含めて約1時間であった。
最終的に得られたアルミニウム塊の結晶組織を図8に示しており、図8の結晶粒61の大部分が大型単結晶である。この部分が金属単結晶9であることは、エッチングによる転位の腐食孔の形状、およびX線ラウェ写真により確認している。前記結晶粒61の下部の一部は二回目の溶解時に種結晶とるつぼ底との隙間にアルミニウムが垂れ込んだところで、この部分での結晶粒は小さく多結晶体60となっている。
【0016】
【発明の効果】
本発明による金属単結晶製造方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、
A コールドクルーシブル法を用い、
B るつぼの底面の形状を、育成しようとしている金属の凝固時のメニスカスの形状とほぼ一致するように、かつ、ごくわずかの隙間ができるように、形作り、
C 適切な温度/時間プログラムによって一度原料を溶解、凝固させ、
D 次いで、この凝固金属体を取り出して、上下を反転させ、再度るつぼに装入し、
E 適切な温度/時間プログラムにより再度この凝固金属体を溶解させ、
F 凝固金属体の一部を未溶解のまま残すようにして次の工程で用い、
G 適切な温度/時間プログラムによって凝固させること、
によって、金属単結晶を容易に製造することができる。
この方法によれば、溶解時にるつぼと金属が反応することがないので、るつぼの成分が金属単結晶に不純物として入ることはない。
また、凝固時、および冷却時にるつぼから熱応力を受けることがないので、ひずみが入ることはない。
また、育成後の金属単結晶を(もし必要があれば)引き続きそのまま熱処理(焼鈍など)することができる。
また、結晶育成中にるつぼや結晶の移動や回転など、機械的な動きを一切行わないので、作業が容易である。
また、構造が簡単で価格の安い結晶育成装置を構成することができる。
また、大型の金属単結晶を容易に製造できる。
また、原材料として装入するものの形状を問わないため、原料の適用が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の装置を説明する構成図である。
【図2】 図1の要部の平面図である。
【図3】 本発明の金属単結晶製造装置を示す構成図である。
【図4】 図3の動作工程図である。
【図5】 本発明の実施例を説明するためのもので、るつぼ内に原料を挿入した状態の平面図である。
【図6】 本発明の実施例を説明するためのもので、原料が溶解している斜視図である。
【図7】 本発明の実施例を説明するためのもので、一回目に溶解した凝固金属体を切断し、切断面を研磨し、凝固金属体の中に大きな結晶粒が存在する状態を示した断面図である。
【図8】 本発明の実施例を説明するためのもので、最終的な凝固金属体を切断し、切断面を研磨し、凝固金属体全体がほぼ一つの結晶粒となっていることを示す構成図である。
【図9】 従来のチョクラルスキー法を説明する構成図である。
【図10】 従来のブリッジマン法を説明する構成図である。
【図11】 従来のチョクラルスキー法の動作を説明する工程図である。
【図12】 従来のブリッジマン法の動作を説明する工程図である。
【符号の説明】
1 るつぼ
1A 内壁
1B 底部
1a 内孔
2 コイル
3A 未溶解原料
9 金属単結晶
53a 凝固金属体
60 多結晶体
61 結晶粒
63 隙間

Claims (5)

  1. コイル(2)が配設されたるつぼ(1)の内孔(1a)内に未溶解原料(3A)を装入し、コールドクルーシブル法によって前記未溶解原料(3A)を溶解/凝固させ、金属単結晶(9)を得るようにした金属単結晶製造方法において、
    前記内孔(1a)内で一度溶解/凝固され上部に単結晶である結晶粒(61)を有すると共に下部に多結晶体(60)を有す凝固金属体(53a)を上下反転させ、上部に前記多結晶体(60)を有し下部に前記結晶粒(61)を有する状態で前記凝固金属体(53a)を再度前記内孔(1a)内に装入し、前記凝固金属体(53a)を再度溶解して凝固させることにより前記金属単結晶(9)を得ることを特徴とする金属単結晶製造方法。
  2. 前記内孔(1a)の底面形状を前記凝固金属体(53a)に対して隙間(63)ができるように形成していることを特徴とする請求項1記載の金属単結晶製造方法。
  3. 前記凝固金属体 (53a) を再度溶解して凝固させる際に、前記内孔(1a)の底部(1B)に、前記結晶粒 (61a)の一部を未溶融で残留するようにし、次工程の金属単結晶(9) 製造時の種結晶として働かせることを特徴とする請求項1又は2記載の金属単結晶製造方法。
  4. 前記金属単結晶(9)を最終的に前記るつぼ(1)から取り出す前に、前記金属単結晶(9)を前記るつぼ(1)内で熱処理することを特徴とする請求項1ないしの何れかに記載の金属単結晶製造方法。
  5. コイル(2)が配設されたるつぼ(1)の内孔(1a)内に未溶解原料(3A)を装入し、コールドクルーシブル法によって前記未溶解原料(3A)を溶解/凝固させ、金属単結晶(9)を得るようにした金属単結晶製造装置において、
    前記るつぼ(1)の内孔(1a)の底面と前記金属単結晶(9)の結晶底面との間には、隙間(63)が形成されるように前記内孔(1a)の形状が設定されていることを特徴とする金属単結晶製造装置。
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