JP4155678B2 - 外壁改修構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は建築、構築物の既存外壁面、特にALC部材(軽量気泡コンクリート)を中心とした既存外壁面を新規外壁で改修するための工法に関するものである。さらに詳しくは、新規の乾式壁材を取り付けるための固定具を確実に建物の躯体(下地材)に直接固定することによって、ALC外壁に損傷を与えず、しかも、新規外壁材の取付強度も充分な外壁改修構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ALC部材を使用した外壁の改修は、古くなった既存のALC外壁をすべて撤去して、既存の躯体や胴縁等の壁下地材に新規外壁を形成する工法や、ALC外壁面に直接新規の乾式壁材を当接して、乾式壁材をコンクリートアンカー等の固定具を用いて、ALC壁そのものを壁下地材として利用して改修した工法が一般的に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように古くなった既存のALC等の外壁をすべて撤去して、既存の躯体や胴縁等の壁下地材に新規外壁を形成した工法では、撤去のための費用の増大や撤去した廃材の処理に課題があると共に、工事中は外壁が無い状態となり、工事期間中は建物内部を利用することができなくなる課題があった。
【0004】
また、ALC外壁をそのまま壁下地材として利用し、新規外壁材を施工する工法では、そもそも古くなったALC外壁は、その性質により凍害や経時変化で、ひび割れや一部脱落、強度劣化が進んでおり、これを壁下地として利用することは、取り付けられた新規壁材の取り付け強度に問題が有り、台風や地震等の外的衝撃により脱落したり、剥がれたりする危険を伴っていた。さらに、ALC外壁の表面には凹凸があり、そのまま新規外壁を施工すると凹凸による不陸調整が困難で、張り上がった新規壁面にも凹凸が発生し、美観性にも劣るものであった。
【0005】
本発明はこのような欠点を除去するため、頭部にネジ部と工具の打ち込み部と合致する形状の保持部を形成し、軸体を既存外壁を貫通させて下地材に固定する固定具と、固定具のネジ部と合致するネジ部を有し外方に平滑面を有する取付キャップと、取付キャップの平滑面に取り付けられる胴縁と、胴縁に固定して既存外壁を覆う新規外壁材とから構成し、キャップ材は回転させることによって平滑面の位置を移動させることができることにより、工事中も建物内部の使用が可能で、施工が容易で取り付け強度も確実となり、平滑面の位置を内外の方向に移動可能とすることでALC外壁の厚みの違いへの対応や不陸の調整も可能となることにより、新規外壁材の張り上がりの美観性も向上させることができる外壁改修構造を提案する。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を用いて本発明に係る外壁改修構造について詳細に説明する。図1は本発明を用いてALC外壁を改修した代表的な一例を示す斜視図、図2はその断面図を表す説明図であり、Aは改修外壁、Bは下地材、Cは既存外壁、Dは固定具、Eは取付キャップ、Fは胴縁、Gは新規外壁材である。
【0007】
下地材Bは、建物の躯体および既存外壁Cの取り付け下地となるもので、図に示すような水平方向に配置された横架材からなり、さらに具体的にはH型鋼材、もしくは図示しないが角型鋼材、C型鋼材(リップ溝型鋼材)、L字アングル材、溝型鋼材等の鉄骨の下地材、もしくは木質の柱材等からなるものである。
【0008】
既存外壁Cは、H型鋼材等からなる下地材Bにアングルa、タテカベプレートbを介して固定されているものである。なお、図2は改修時期にきている一般的な挿入筋工法にて取り付けられているALC外壁の例を示しており、この他にも既存外壁Cの取り付け方は種々あり、これに限定されるものではない。また、cは既存外壁Cの目地部に充填される充填目地材である。
【0009】
固定具Dは、素材としては強度に優れた各種鋼材や、鉄、ステンレス、アルミニウム、チタン、繊維強化された各種合成樹脂等からなるもので、例えば図3(a)に示すように、少なくとも軸体1の先端部と頭部4の近傍にネジ部2、3を形成し、また頭部5には内方から順にワッシャ5、保持部6、ネジ部7を有する構成のものを使用する。ワッシャ5は既存外壁Cに当接する部分で保持部6、ネジ部7と一体化していても分離していても良いもので、ワッシャ5を既存外壁Cの表面に当接しつつネジ部2を下地材Bに到達させることによって、固定具Dを強固に固定する。保持部6は固定具Dを打ち込む際に、工具の打ち込み部と合致する形状に形成するものであるが、ここでは六角ナット状に形成したものを使用する。ネジ部7は保持部6の外方に形成し、取付キャップDに形成したネジ部8とねじ結合する部分であり、その内部を空洞化することができる。
【0010】
また、固定具Dの取り付けピッチとしては、後記する新規外壁材Gに必要充分な取付強度(耐風圧強度)を満たす範囲内であれば任意で、例えば、水平方向のピッチは600、900、1200、1500mm位、垂直方向のピッチは、建物の種類によっても異なるが、一般的には1階層分の高さ3500mm位である。
【0011】
取付キャップEは、例えば図3(b)、(c)に示すような短尺筒状の形状のものを使用する。すなわち、取付キャップEの内面にはネジ部7とネジ結合する形状のネジ部8を形成し、また外方には平滑面9を形成する。固定具Dと取付キャップEは、図3(d)に示すようにネジ部7、8を合致させ、取付キャップEを回転させることで平滑面9の内外方についての位置を調整することができる。なお、既存外壁Cと胴縁Fの間には、少なくともワッシャ5、保持部6、取付キャップFの厚さを合わせた分の幅を有する通気空間13が確保される。
【0012】
図4は、胴縁Fの一例を示すものである。胴縁Fは、平滑面9上に縦方向に取り付けられ、新規外壁材Gを取り付ける下地として機能するもので、断面略法ハット状の長尺体であり、平滑な固定面11と、固定面11と平行で固定面11よりも外方に突出した取付面12を有する。
【0013】
図5は、新規外壁材Gの一例を示すものである。すなわち、新規外壁材Gは、表面材23と裏面材24によって芯材25をサンドイッチした構造であり、その上下端にはそれぞれ嵌合可能な形状の雄型連結部21、雌型連結部22を形成するものである。新規外壁材Gを各雄型連結部21と雌型連結部22を係合しつつ上下に連続して配することで既存外壁Cの全面を覆い隠し、美観の良い改修外壁Aを完成させるものである。
【0014】
表面材23は金属板、例えば鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板、ホーロー鋼板の一種(勿論、これらを各種色調に塗装したカラー板も含む)や、プラスチック薄板、FRP、塩化ビニル、ポリカーボネイト等の合成樹脂板等からなるもの、およびこれらを組み合わせたものであり、これらの一種以上をロール成形、プレス成形、押出成形等によって形成したものである。雄型連結部21、雌型連結部22は、表面材23の上下端をそれぞれ嵌合可能な形状に形成したものである。
【0015】
裏面材24はアスベスト紙、クラフト紙、アスファルトフェルト、金属箔(Al、Fe、Pb、Cu)、合成樹脂シート、ゴムシート、布シート、石膏紙、水酸化アルミ紙、ガラス繊維不織布等の1種、または2種以上をラミネートしたもの、あるいは防水処理、難燃処理されたシート状物からなるもの、もしくは表面材23と同様の材質からなるものである。
【0016】
芯材25は新規外壁材Gに断熱性及び防、耐火性を有させるものであり、ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム、塩化ビニルフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ユリアフォーム等からなるものである。芯材25を有する新規外壁材Gを既存外壁Cの全表面に配することにより、改修外壁Aの断熱性、及び防、耐火性を向上させることができる。
【0017】
以下に、本発明の改修外壁Aを形成する工程について説明する。まず図6のように、所定の工具を用いて固定具Dの軸体1を既存外壁Cを貫通させつつネジ部2の範囲を下地材Bまで到達させ、かつワッシャ5を既存外壁Cの表面に当接させるように固定する。なお、固定具Dの打ち込みは、保持部6を工具の打ち込み部と合致させて行う。
【0018】
次に図7に示すように、ネジ部7とネジ部8をネジ結合して回転させることで、取付キャップEを既存外壁Bの表面側に取り付ける。ネジ部7とネジ部8をネジ結合としたことにより、取付キャップEの回転を調整することで平滑面9の位置の内外方向へ移動させることができることから、ALC外壁の厚みの違いへの対応や不陸の調整も可能となり、新規外壁材の張り上がりの美観性を向上させることができる。
【0019】
次に図8に示すように、平滑面9上に固定面11を当接しつつ固定具α(ヘクス、テクス、スクリュウビス等)を打ち込むことにより、胴縁Fを固定する。そして図9に示すように、新規外壁材Gを取付面12上に固定具βによって固定し、下方から上方に雄型連結部21と雌型連結部22を係合しつつ貼り合わせていくことによって、図1に示すような改修外壁Aを形成するものである。
【0020】
以上説明したのは、本発明にかかる外壁改修構造の一実施例であり、図10(a)〜(e)〜図14(a)〜(c)に示すような部材を用いた構造とすることができる。図10(a)〜(e)に示す例は、固定具Dとキャップ材Eの変形例であり、図10(a)は、ネジ部7を軸体1と同じ径に成型し、キャップ材Eのネジ部8もネジ結合し得る径に形成したもので、平滑面9はネジ部8の径よりも大きくした例である。図10(b)はネジ部7を内側に、ネジ部8を外側に形成した例である。図10(c)は頭部4の内方から順にワッシャ5、ネジ部7、保持部6を形成し、またキャップ材Eの溝部10を深く形成してネジ部8を内方寄りに形成することでネジ結合するようにした例である。図10(d)は、ワッシャ5とネジ部7の径を同一化(一体化)し、ネジ部7とネジ結合し得る大きさの径にキャップ材Eのネジ部8を形成した例である。図10(e)は保持部6の内部にネジ部7を形成し、ネジ部8とネジ結合するようにした例である。
【0021】
図11(a)〜(j)は、平滑面9の形状の変形例である。平滑面9を変形することにより、胴縁Fの取り付けが容易になるのみならず、キャップ材Eを回転させやすくなり、平滑面9の不陸調整が容易になるものである。
【0022】
図12(a)〜(j)は、胴縁Fの変形例である。胴縁Fを変形することにより、胴縁Fの取り付けが容易になるのみならず、新規外壁材Gの取り付けも容易ならしめることができる。
【0023】
図13(a)〜(g)、および図14(a)〜(c)は、新規外壁材Gの変形例である。新規外壁材Gの形状をを任意に選択することで、外観の優れた壁構造Aを形成することができるものである。なお、図14(b)に示す新規外壁材Gは、雄型連結部21内には防水性と耐火性を有する耐火性パッキング材26を、雌型連結部22内には防水性シーリング材27をそれぞれ介在させて、連結目地部の防水性と耐火性を向上し、さらに雄型連結部21と雌型連結部22の形状に合致するように任意に形成した不燃部材28を各連結部内に装着した例であり、不燃部材28は、新規外壁材G同士で形成される連結目地部の防火性、耐火性を向上するものであり、また、雄型連結部21と雌型連結部22の端部に充填することから、新規外壁材G端部における芯材25の欠肉を防止し、芯材25の発泡性や延展性をも向上させるものである。なお、不燃部材28はケイ酸カルシウム板、高密度フェノール樹脂板、木毛セメント板、ロックウール板、水酸化アルミニウム板等の1種以上の不燃性部材からなるものである。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る外壁改修構造によれば、▲1▼既存外壁を解体する必要がないので、施工工数を省略できると共に、工期を大幅に短縮することができ、しかも施工中の居住や利用に何等支障を来さない。▲2▼既存外壁上に新規外壁を形成するので、施工が簡単でコストを節約できる。▲3▼既存外壁と新規外壁材との2重壁工法となり、断熱性、防音性、防火性に富む工法となる。▲4▼固定具と取付キャップをネジ結合とし、伸縮機能を持たせることで、下地材の不陸の調整が容易に行え、施工が容易となると共に、乾式壁材の張り上がりの美観性が向上する。等の特徴、効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る外壁改修構造の代表例を示す説明図である。
【図2】本発明に係る外壁改修構造の代表例を示す説明図である。
【図3】固定具と取付キャップの説明図である。
【図4】胴縁の説明図である。
【図5】新規外壁材の説明図である。
【図6】本発明に係る外壁改修構造の改修手順を示す説明図である。
【図7】本発明に係る外壁改修構造の改修手順を示す説明図である。
【図8】本発明に係る外壁改修構造の改修手順を示す説明図である。
【図9】本発明に係る外壁改修構造の改修手順を示す説明図である。
【図10】固定具と取付キャップのその他の例である。
【図11】取付キャップの平滑面のその他の例である。
【図12】胴縁のその他の例である。
【図13】新規外壁材のその他の例である。
【図14】新規外壁材のその他の例である。
【符号の説明】
α 固定具
β 固定具
a アングル
b タテカベプレート
c 充填目地材
A 改修外壁
B 下地材
C 既存外壁
D 固定具
E 取付キャップ
F 胴縁
G 新規外壁材
1 軸体
2 ネジ部
3 ネジ部
4 頭部
5 ワッシャ
6 保持部
7 ネジ部
8 ネジ部
9 平滑面
11 固定面
12 取付面
13 通気空間
21 雄型連結部
22 雌型連結部
23 表面材
24 裏面材
25 芯材
26 耐火性パッキング材
27 防水性シーリング材
28 不燃材
Claims (1)
- 頭部にネジ部と工具の打ち込み部と合致する形状の保持部を形成し、軸体を既存外壁を貫通させて下地材に固定する固定具と、固定具のネジ部と合致するネジ部を有し外方に平滑面を有する取付キャップと、取付キャップの平滑面に取り付けられる胴縁と、胴縁に固定して既存外壁を覆う新規外壁材とから構成し、キャップ材は回転させることによって平滑面の位置を移動させることができることを特徴とする外壁改修構造。
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