JP4155473B2 - 高密度窒化ホウ素および高密度凝集窒化ホウ素粒子の製造法 - Google Patents

高密度窒化ホウ素および高密度凝集窒化ホウ素粒子の製造法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、六方晶系窒化ホウ素を立方晶系窒化ホウ素に変換する際に前駆供給原料として使用するための高密度窒化ホウ素の製造方法、およびその様な方法から製造された、高熱伝導性充填材として使用するための高密度凝集窒化ホウ素粒子に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
六方晶系窒化ホウ素の通常の2種類の形態は、層状(turbostratic)窒化ホウ素および理想的な、またはグラファイト状窒化ホウ素である。六方晶系形態の窒化ホウ素は、立方晶系窒化ホウ素への変換に、および特に高熱伝導性および高電気抵抗が必要な、他の多くの用途に対する充填材として使用される。一般的に、層状(turbostratic)窒化ホウ素は、高温、典型的には約1800℃〜1900℃、で処理して揮発性不純物および表面酸化物汚染物を除去することにより、従来「高純度六方晶系窒化ホウ素」と呼ばれているものに先ず精製する。その様な高温処理により、窒化ホウ素は非常に固く凝集するので、適した商業的用途向けに粉砕しなければならない。そこで実際には、高純度窒化ホウ素を先ず細かい粉末にミリングし、次いで、取り扱い易くするために、冷間圧縮し、窒化ホウ素を1段階あるいは2段階以上で造粒する。ミリング操作により、典型的にはミリングされた粉末の99.9%が−325メッシュ未満である小粒子径の微粉末が形成される。ミリングされた粉末の平均粒子径は、5〜11ミクロンである。冷間圧縮操作から形成される窒化ホウ素ペレットの密度は、反復する造粒および冷間圧縮工程の数に関係なく、平均で約1.80g/cc、あるいは六方晶系窒化ホウ素の理論的密度の80%未満である。
【0003】
高純度六方晶系窒化ホウ素の立方晶系窒化ホウ素への変換では、圧縮により形成された窒化ホウ素のコンパクトまたはペレットに、立方晶系窒化ホウ素状態図の安定した領域内で極めて高い圧力および温度を作用させる。窒化ホウ素ペレットの密度は、立方晶系窒化ホウ素変換工程の経済性に重要である。
【0004】
本発明により、圧縮前に粒子径分布ができるだけ広くなる、好ましくは粒子の大部分が50ミクロンを超える粒子径を有する様に、窒化ホウ素粒子の粒子径分布を調整することにより、冷間圧縮窒化ホウ素粉末の密度は、少なくとも約1.86g/cc、1.9g/ccに近い密度、すなわち理論値の約85%に実質的に増加させることができる。粒子の大部分に対する好ましい粒子径範囲は、20〜500ミクロンにすべきである。さらに本発明により、冷間圧縮および造粒に続く広い窒化ホウ素粒子径分布から形成された窒化ホウ素の凝集粒子は、熱間圧縮で達成される平均密度に近い密度を有する。さらにその熱伝導性は、充填材として、特に重合体複合材料における充填材として、使用できる様に強化される。
【0005】
【課題を解決するための手段】
[発明の概要]
本発明の方法は、高純度六方晶系窒化ホウ素を形成させる工程、該高純度六方晶系窒化ホウ素を、粒子径が少なくとも100ミクロンの粒子径範囲を超えて広がり、および粒子の大部分が50ミクロンを超える粒子径を有する、窒化ホウ素粒子にクラッシングする工程、クラッシングした粒子を圧縮された形態に冷間圧縮する工程、圧縮された粒子を顆粒状粉末に造粒する工程を含んでなり、そして冷間圧縮および造粒の操作を1段階あるいは2段階以上で行なうことを含んでなるものである。
【0006】
また本発明により、即ち、高純度六方晶系窒化ホウ素を、粒子径が少なくとも100ミクロンの粒子径範囲を超えて広がり、および粒子の大部分が50ミクロンを超える粒子径を有する窒化ホウ素粒子にクラッシングする工程、クラッシングした粒子を圧縮された形態に冷間圧縮する工程、圧縮された粒子を顆粒状の粉末に造粒する工程を含んでなり、および高熱伝導性を有する充填材として使用するのに好適なサイズになる様に冷間圧縮および造粒の操作を1段階または2段階以上で行う方法により、冷間圧縮された六方晶系窒化ホウ素から、高密度および高熱伝導性を有する凝集窒化ホウ素粒子が形成される。
【0007】
【発明の具体的な説明】
以下、添付図面を参照しながら、下記の本発明の詳しい説明により本発明の利点を詳細に説明する。
【0008】
図1で記号Aを付けたフローダイアグラムは、高純度窒化ホウ素材料から出発して冷間圧縮した窒化ホウ素の圧縮物を形成させる現行の方法を示すものである。例えば高速インパクトミルを使用する従来のミリング操作を使用してBNを微粉末にすることにより、高純度窒化ホウ素材料を非常に細かい高純度六方晶窒系化ホウ素(hBN)粉末に変換する。細かい高純度BN粉末の代表的な特性は、表Iに示す通りである。
【0009】
Figure 0004155473
【0010】
図1のA欄に関連する上記の表Iから明らかな様に、ミリング操作から形成される微粉末は、99.9%が−325メッシュ(44ミクロン)未満にミリングされ、平均粒子径が5〜11ミクロンであり、最大粒子径が約42ミクロン以下である様な粒子径分布を有する。この大きさの粉末は、取り扱いおよび圧縮が困難である。粉末が非常に細かいので、圧縮の前に脱気(予備圧縮)する必要がある。脱気しておかないと、粉末は圧縮の際にプレスダイの外に流れ出る傾向がある。脱気は、典型的には大型の単軸プレスで比較的高い圧力で粉末を圧縮することにより行なう。次いで、得られたケーキを造粒する。この供給原料を自動化された単軸プレスのホッパー中に入れ、粉末を連続的に圧縮して、例えば直径2.25”x長さ2”の材料の小さなペレットまたはプラグを形成させる。最初の圧縮の後、圧縮した窒化ホウ素(BN)を再度造粒し、自動化された単軸プレス中で再度圧縮することができる。実際、脱気/圧縮/造粒手順は何度でも反復することができる。図4から分かる様に、ミリングした粉末から形成されたコンパクトに関して達成される最高未焼密度は1.74g/ccまたは理論値の77.3%であった。圧縮/造粒工程を繰り返すことにより、表Iの試料4で示す様に、密度は1.81g/ccに僅かに増加する。追加の圧縮/造粒工程では、図4に確認される様に、この密度に影響を与えない。また、圧縮されたペレットの上部は剥離する傾向があるという観察から、圧縮後の跳ね返りを示している。圧縮の前に粒子径の範囲を少なくとも100ミクロンを超える範囲に広げて窒化ホウ素の粒子径分布を調整することにより、圧縮したペレットの密度を約1.9g/ccに、すなわち理論値の85%まで増加しうることが分かった。広い粒子径分布を達成するための好ましい方法は、低純度窒化ホウ素の高温処理から得られる高純度BNの硬い固まりをクラッシングすることである。これによって、下記の表IIおよび図3で明らかな様に、広い粒子径分布が得られる。これは、本発明の方法により、図1のそれぞれのフローシークエンスB、C、およびDから明らかな様に、ミリング操作の代わりにクラッシング操作を行なうことにより達成される。フローダイアグラムBに示す様に、図1の標準的なフローダイアグラムAで使用する様なクラッシング操作に続いて標準的な脱気/造粒−圧縮/造粒工程を行なうか、あるいは図1のフローダイアグラムシークエンスCまたはDに示す様に、脱気工程を行なわずに圧縮/造粒工程だけを行なうこともできる。図1のフローダイアグラムシークエンスDの最終工程は、凝集した窒化ホウ素粒子の広い粒子径分布を得るためのクラッシング操作である。凝集窒化ホウ素粒子は、特に重合体を充填するための熱伝導性充填材として特に有用である。
【0011】
Figure 0004155473
注:試料1は、クラッシングおよびスクリーニングにより微粉末を除去した。試料2および3はその処理を行なっていない。
【0012】
上記の表IIは、ロールクラッシングした高純度窒化ホウ素に代表的な特性を示すものである。表IIから明らかな様に、高純度窒化ホウ素材料をクラッシングすることにより、粒子径分布がはるかに広くなり、タップ密度が大きくなり、その両方が圧縮密度をより高くしている。クラッシングした粒子のタップ密度は少なくとも0.76g/ccである。試料1のロットはスクリーニングして微粉末を除去したのに対し、試料2、3、および4はスクリーニングしていない。試料1のタップ密度および予備圧縮密度はミリングした試料よりも大きいが、試料2、3、および4よりも小さい。ロールクラッシングしたロットの試料1〜3では、脱気工程を無くし、材料をミリングする工程で述べたように単軸圧縮、造粒および単軸圧縮手順を使用して圧縮した。圧縮密度は表Iのそれよりも著しく高い。また、これらの試料では剥離が起きず、跳ね返りの傾向が少ないことを示している。ロールクラッシングした材料における圧縮密度が高く、跳ね返りの傾向が低いことは、立方晶系窒化ホウ素への変換に有効である。図1のフローダイアグラムDは、熱伝導性の高い充填材としてクラッシングした窒化ホウ素凝集粒子の製造に使用することができる。
【0013】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を示す。
【0014】
<実施例1>
高度に凝集した高純度窒化ホウ素粉末を、ロールミル中でクラッシングして、図3に示す粒子径分布、およびを表IIの第3欄に示す特性、の粉末にした。この粉末を、水平プレスを使用して、19,000 psiの圧力で圧縮した。圧縮片を、開口約1/2 インチのスクリーンを強制的に通過させて造粒した。造粒した粒子を再度19,000 psiで圧縮した。この手順を図1にフローダイアグラムCで略示してある。得られた圧縮物の密度は1.91g/ccであった。
【0015】
比較のため、高度に凝集した高純度窒化ホウ素粉末を、図1のフローシークエンスAに示す標準的なミリング手順を使用してミリングして微粉末にした。この粉末試料4の特性は、表Iの第4欄に示す。この粉末の粒子径分布を、図2の「ミリングした微粉末4」の曲線として示す。この微粉末を、図1のフローダイアグラムに略示されている様に2500 psiで脱気し、造粒し、続いて再度圧縮、造粒および圧縮を行なった。得られた圧縮物の密度は、1.81g/ccに過ぎなかった。
【0016】
<実施例2>
高度に凝集した高純度窒化ホウ素粉末を、2本ロールミル中でクラッシングして、図3に「クラッシングした粉末4」として示す粒子径分布の粉末にした。この粉末の特性を表IIの第4欄に示す。この粉末を、水平プレスを使用し、19,000 psiの圧力で圧縮した。さらに、実施例1に記載する様な4つの追加の造粒/圧縮工程を行なった。得られた圧縮密度は、1.91g/ccであった。圧縮物の密度と圧縮サイクルの関係を、図4の「ロールクラッシングした粉末4」の曲線で示す。
【0017】
比較試験では、高度に凝集した高純度窒化ホウ素粉末を微粉末にミリングした。この粉末の特性を表Iの第4欄に示す。この粉末の粒子径分布を、図2の「ミリングした微粉末4」の曲線として示す。この微粉末を、2500 psiで脱気し、造粒し、続いてクラッシングした粉末に行なったのと同じ5サイクルの造粒および圧縮を行なった。得られた圧縮物の密度は、1.84g/ccに過ぎなかった。圧縮物の密度と圧縮サイクルの関係を、図4の「予備圧縮し、ミリングした粉末4」の曲線で示す。
【0018】
<実施例3>
高度に凝集した高純度窒化ホウ素粉末をロールミル中でクラッシングして、図3に「クラッシングした粉末2」として示す粒子径分布の粉末にした。この粉末の特性を表IIの第2欄に示す。この粉末を、水平プレスを使用し、19,000 psiの圧力で圧縮した。圧縮片を、開口約1/2 インチのスクリーンを強制的に通過させて造粒した。造粒した粒子を再度19,000 psiで圧縮した。得られた圧縮物の密度は、1.89g/ccであった。この密度は、表1に示す異なる4種類のミリングした粉末の圧縮密度、それぞれ1.80、1.79、1.77および1.81g/cc、と比較すべきである。
【0019】
<実施例4>
表2の第4欄に特性を示す高度に凝集した高純度六方晶系窒化ホウ素粉末を、ロールミルを使用してクラッシングして、図3に「クラッシングした粉末4」として示す粒子径分布の粉末にした。このクラッシングした粉末を、粉末圧縮プレス(単軸プレス)を使用し、19,000 psiの圧力で圧縮し、次いで、造粒機を使用して1/16インチ以下の顆粒を形成した。顆粒を再度19,000 psiで圧縮した。これらの圧縮物を、鋸歯およびロールクラッシャーを使用してクラッシングし、120メッシュスクリーンを通してスクリーニングして、タップ密度0.68m 2 /gを有する粉末を得た。スクリーニングした粒子を、フェノールノボラック硬化剤を含むクレゾールノボラック熱硬化性エポキシ組成物に、65重量%BN濃度になる様に加え、次いでトランスファープレス中で成形した。成形した混合物の熱伝導性は7.4 W/m℃であった。
【0020】
ペレットまたは圧縮物は、広い粒子径分布を有する凝集物の粉末混合物に再度クラッシングすることができる。これらの凝集物は、同じ工程を経たミリングした粉末から形成された対応する凝集物よりも密度が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、高純度窒化ホウ素を冷間圧縮するための、標準的な先行技術の圧縮方法Aおよび本発明の方法B、C、およびDそれぞれを比較する4種類のフローダイアグラムA、B、C、およびDを示すものである。
【図2】図2は、図1の標準的な圧縮方法Aで使用するミリング操作から形成される高純度窒化ホウ素の代表的な粒子径分布曲線を示すものである。
【図3】図3は、図1に示すそれぞれの方法B、CおよびDで高純度窒化ホウ素のクラッシングから形成された高純度窒化ホウ素粒子に対応する粒子径分布曲線を示すものである。
【図4】図4は、ミリングおよびクラッシングした粉末に対する、密度と粉末圧縮サイクル、すなわち粉末圧縮工程の数の関係、を示すグラフである。

Claims (7)

  1. 高純度六方晶系窒化ホウ素を形成させる工程、前記高純度六方晶系窒化ホウ素をクラッシングして、粒子径が少なくとも100ミクロンの粒子径範囲を超えて広がり、粒子の少なくとも80%の粒子が44ミクロンを超える粒子径を有する窒化ホウ素粒子にする工程、クラッシングした粒子を冷間圧縮して圧縮された形態にする工程、圧縮された粒子を顆粒状粉末に造粒する工程、冷間圧縮および造粒の操作を1段階または2段階以上で行なって、窒化ホウ素のペレットまたは高密度窒化ホウ素の凝集物を形成させることを特徴とする、高密度窒化ホウ素のペレットまたは凝集物を製造する方法。
  2. クラッシングした後の窒化ホウ素粒子の少なくとも53%が177ミクロンを超える粒子径を有する、請求項1に記載の方法。
  3. クラッシングした後の窒化ホウ素粒子の粒子径範囲が20ミクロン未満〜400ミクロンを超えるまで広がっている、請求項2に記載の方法。
  4. クラッシングした後の窒化ホウ素粒子の粒子径範囲が500ミクロンまで広がっている、請求項3に記載の方法。
  5. 高純度六方晶系窒化ホウ素の比較的大きな凝集した固まりをクラッシングして、最小から最大までの粒子径が少なくとも100ミクロンの粒子径範囲超えて広がり、粒子の少なくとも80%の粒子が44ミクロンを超える粒子径を有する窒化ホウ素粒子にする工程、クラッシングした粒子を冷間圧縮して圧縮された形態にする工程、圧縮された粒子を顆粒状粉末に造粒する工程、造粒された粉末を冷間圧縮して最終的に圧縮された形態にする工程、最終的に圧縮された形態をクラッシングして、高熱伝導性粒子の凝集した充填材粒子にする工程、冷間圧縮およびクラッシングの工程を、密度が1.86g/cc以上になるまで繰り返すことを含んでなる、常温で行なわれる冷間成形工程によって形成させたことを特徴とする、高熱伝導性充填材として使用するための、密度が少なくとも1.86g/cc超過である六方晶系窒化ホウ素の高密度凝集粒子。
  6. 重合体中に混合した時に、少なくとも7.4W/m℃の熱伝導性を与える、請求項5に記載の窒化ホウ素の高密度凝集粒子。
  7. 高純度六方晶系窒化ホウ素をクラッシングして、粒子径が少なくとも100ミクロンの粒子径範囲を超えて広がり、粒子の少なくとも80%の粒子が44ミクロンを超える粒子径を有する窒化ホウ素粒子にする工程、クラッシングした粒子を冷間圧縮して圧縮された形態にする工程、圧縮された粒子を造粒して顆粒状粉末にする工程、造粒された粉末を冷間圧縮してペレットにする工程を含んでなり、冷間圧縮および造粒の操作を1段階または2段階以上で行なうことからなる方法によって形成させた六方晶系窒化ホウ素を立方晶系窒化ホウ素に変換する際に使用するための、密度が少なくとも1.86〜1.91g/ccである窒化ホウ素ペレット。
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