JP4154092B2 - 5−アルキル−2−アミノ−4−置換オキシフェノール化合物およびそのプロトン酸塩の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀感光材料に使用されるカラー拡散転写方式の色素供与性化合物の合成中間体およびフェノール型シアンカプラー等の合成中間体として有用な、5−アルキル−2−アミノ−4−置換オキシフェノール化合物およびそのプロトン酸塩の製造方法、その合成中間体である5−アルキル−1−ベンジルオキシ−2−ニトロ−4−置換オキシベンゼン化合物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
塩基性条件下での現像の結果として色素供与性化合物自身とは異なる拡散性を有するアゾ色素を与えるアゾ色素供与性化合物を用いたカラー拡散転写写真方式は従来から知られている。シアン色素を放出する色素供与性化合物として堅牢性の高い化合物が開発され、例えば特開平9−292684号、同11−44938号、同11−125888号、同11−125889号などに記載されている。これらに記載されている色素供与性化合物の合成中間体の1つとして、例えば2−アミノ−4−ヘキサデシルオキシ−5−t−オクチルフェノールおよび2−アミノ−5−t−ブチル−4−ヘキサデシルオキシフェノール等が使用されている。2−アミノ−4−ヘキサデシルオキシ−5−t−オクチルフェノールの合成法としては、その中間体である2−アルキル−1−ヘキサデシル−4−ピバロイルハイドロキノン化合物を合成する方法が、特開平11−158114号に記載されている。次に、ピバロイル基を脱保護した後アゾカップリング反応によりアゾ化合物とし、さらに還元反応を行うことにより2−アミノ−4−ヘキサデシルオキシ−5−t−オクチルフェノールおよびそのプロトン酸塩が合成されている。しかしながら、この方法は収率が低く、ジアゾ化工程、アゾカップリング工程および還元工程と反応工程数が多く操作も煩雑であるため生産性が低い。またジアゾ化工程で大量の酸を使用することおよび還元工程で不要なアニリン化合物が生成するため、廃棄物の処理が必要なことなどが問題であった。
一方、3−アルキル−4−置換オキシフェノールのニトロ化により、目的の5−アルキル−2−アミノ−4−置換オキシフェノールの前駆体である5−アルキル−2−ニトロ−4−置換オキシフェノールを合成する方法は、ニトロ化の反応収率が低いことが問題であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、反応工程が簡略で、収率が高くかつ不要な廃棄物を出さない5−アルキル−2−アミノ−4−置換オキシフェノール化合物およびそのプロトン酸塩の製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、反応工程が簡便で、収率が高く、しかも不要な廃棄物を出さない下記一般式(I)で表される5−アルキル−2−アミノ−4−置換オキシフェノール化合物およびそのプロトン酸塩の製造方法を提供することを目的に鋭意研究を行った。その結果、5−アルキル−1−ベンジルオキシ−2−ニトロ−4−置換オキシベンゼン化合物を合成中間体として経由することにより、前記の問題点を解決できる5−アルキル−2−アミノ−4−置換オキシフェノール化合物およびそのプロトン酸塩の製造方法を見出し、本発明をなすに至った。
一般式(I)
【0005】
【化4】
【0008】
すなわち本発明は、
(1)一般式(III)で表わされる5−アルキル−1−ベンジルオキシ−4−置換オキシベンゼン化合物をニトロ化することを特徴とする、一般式(II)で表わされる5−アルキル−1−ベンジルオキシ−2−ニトロ−4−置換オキシベンゼン化合物の製造方法。
一般式(II)
【化2】
一般式(III)
【0009】
【化6】
【0010】
(式中、R1は置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、R2は置換もしくは無置換のアルキル、アリールまたは複素環基を表わす。)を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において、前記一般式(I)、(II)および(III)で表される化合物中R1、R2、mおよびHXの好ましい具体例について詳しく述べる。
【0012】
一般式(I)、(II)および(III)で表される化合物中、R1は置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、具体的には炭素数1ないし30の直鎖または分岐鎖のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、1−メチルプロピル、1,1,−ジメチルエチル、ペンチル、イソペンチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル)、および炭素数3ないし8のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル)が含まれる。
【0013】
R1で表わされる基はさらに置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には同じであっても異なっていてもよい。好ましいい置換基としてはハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素)、アルキル基(R1で定義したアルキル基と同義の基を表わす)、アリール基(炭素数6ないし20のアリール基で、例えばフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル)、アルコキシ基(炭素数1ないし10のアルコキシ基で、例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、1−ブトキシ、1−ヘキシルオキシ)、シクロアルキルオキシ基(炭素数3ないし8のシクロアルキルオキシ基で、例えば、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(炭素数6ないし20のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ、2−メトキシフェノキシ、1−ナフトキシ)、カルボンアミド基(炭素数2ないし16のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド、プロピオンアミド、オクタノイルアミド)、スルホンアミド基(炭素数1ないし15のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド、プロパンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド)、アルコキシカルボニル基(炭素数2ないし10のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(炭素数7ないし11のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル、1−ナフチルオキシカルボニル)、カルボキシル基、ヒドロキシル基などが挙げられる。
【0014】
R1で表わされる好ましいアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、1−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、シクロヘキシル基を表わし、最も好ましいアルキル基は、1,1−ジメチルエチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基を表わす。
【0015】
一般式(I)、(II)および(III)で表される化合物中、R2はアルキル基(R1で定義したアルキル基と同義の基を表わす)、アリール基(炭素数6ないし20のアリール基で、例えばフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル)、複素環基(炭素数1ないし10の、5ないし8員環の芳香族複素環基を表わし、例えば、1−ピリジル、4−ピリジル、2−フリル、2−ピリミジル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、2−ベンゾチアゾリル)等が挙げられる。
R2で表わされる基はさらに置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には同じであっても異なっていてもよく、好ましいい置換基としてはR1で挙げた置換基と同義の基を表わす。
一般式(I)、(II)および(III)で表される化合物中、R2中で表わされる好ましい置換基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基が挙げられ、より好ましいのはヘキサデシル基、オクタデシル基である。
【0016】
一般式(I)で表わされる化合物中、mは0ないし1の数を表わす。一般式(I)で表わされる化合物中、HXはプロトン酸を表わし、好ましい具体例は、HCl、HBr、HI、HOOCCOOH、HOOCCC6H4COOH、HOOCCH=CHCOOH、H2SO4、CH3COOH、C6H5SO3H、p−CH3C6H4SO3H、CH3COOH、ClCH2COOH、Cl3COOH、CF3COOH、HO3SC10H6SO3H等が挙げられ、最も好ましいのは、HCl、HBr、H2SO4、p−CH3C6H4SO3Hである。
【0017】
前記一般式(I)で表わされる5−アルキル−2−アミノ−4−置換オキシフェノール化合物およびそのプロトン酸塩の代表的具体例を以下に示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0018】
【化7】
【0019】
【化8】
【0020】
【化9】
【0021】
【化10】
【0022】
前記一般式(II)で表わされる5−アルキル−1−ベンジルオキシ−2−ニトロ−4−置換オキシベンゼン化合物の代表的具体例を以下に示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0023】
【化11】
【0024】
【化12】
【0025】
【化13】
【0026】
前記一般式(III)で表わされる5−アルキル−1−ベンジルオキシ−4−置換オキシベンゼン化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
【化14】
【0028】
【化15】
【0029】
【化16】
【0030】
本発明の方法は、下記の反応工程式で表わすことができる。
反応工程式
【0031】
【化17】
【0032】
(式中、R1、R2、mおよびHXは前記と同じ意味をもつ)
上記反応工程式に従い、本発明を詳細に説明する。
【0033】
一般式(III)で表わされる2−アルキル−4−ベンジルオキシ−4−置換オキシベンゼン化合物は、2−アルキルハイドロキノン化合物を出発原料として、2工程で合成することができる。フェノール類のO−アルキル化は一般的に知られる方法(「新実験化学講座」第14巻、566ページ、1977、丸善)により合成することができる。2−アルキルハイドロキノン化合物に対して同じ当量数の塩基の存在下、ハロゲン化ベンジル等との反応により2−アルキル−4−ベンジルオキシフェノール化合物を合成した後、もう一方のヒドロキシル基に置換基を導入する方法により、一般式(III)で表わされる2−アルキル−4−ベンジルオキシ−4−置換オキシベンゼン化合物を合成することができる。2−アルキルハイドロキノン化合物の2位のアルキル基が3級アルキル基のように嵩高い置換基を有する場合の方が、立体的に小さいアルキル基を有するの場合に比べて、4位のヒドロキシル基をより選択的にベンジル化することができるため有利である。
【0034】
一般式(III)で表わされる2−アルキル−4−ベンジルオキシ−4−置換オキシベンゼン化合物をニトロ化することにより、一般式(II)で表わされる5−アルキル−1−ベンジルオキシ−2−ニトロ−4−置換オキシベンゼン化合物を合成する方法において、ニトロ化剤として硝酸、テトラフルオロホウ酸ニトロニウム、硝酸アセチル等を用いることができるが、硝酸を用いるのがより好ましい。一般式(III)で表わされる2−アルキル−4−ベンジルオキシ−4−置換オキシベンゼン化合物に対するニトロ化剤の好ましいモル比は、1.0〜1.5、より好ましいのは1.0〜1.3の範囲である。また、好ましい反応溶媒としては酢酸、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸メチル、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム等が挙げられ、これらの溶媒を混合して用いることもできる。より好ましい反応溶媒としては酢酸、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルムが挙げられ、最も好ましいのは酢酸および酢酸エチルである。
【0035】
一般式(III)で表わされる5−アルキル−1−ベンジルオキシ−4−置換オキシベンゼン化合物をニトロ化することにより、一般式(II)で表わされる5−アルキル−1−ベンジルオキシ−2−ニトロ−4−置換オキシベンゼン化合物を合成する方法において、好ましい反応温度は−10〜100℃の範囲であり、より好ましい反応温度は−10〜70℃の範囲であり、反応物により選択される。また、好ましい反応時間は、5分〜10時間の範囲であり、より好ましくは10分ないし5時間の範囲であり、反応物により選択される。
【0036】
一般式(II)で表わされる5−アルキル−1−ベンジルオキシ−2−ニトロ−4−置換オキシベンゼン化合物を還元することにより、一般式(I)で表わされる5−アルキル−2−アミノ−4−置換オキシフェノール化合物およびそのプロトン酸塩を合成する方法において、ニトロ基の還元および水素化分解による脱ベンジル化を同時に行うことが可能である。その方法の1つの方法として、一般的によく知られているようにPd−Cもしくはラネーニッケル触媒の存在下、接触還元による方法が適用できる。使用する触媒は反応の進行の速いPd−Cを用いるのがより好ましい。またもう1つの方法として、Synthesis,1988年,91頁に記載されている方法、すなわちPd−C触媒の存在下で、ぎ酸アンモニウムを用いて還元する方法を適用することができる。
また段階的に行うことも可能であるが、反応工程が簡略である点で前者の方が有利である。
使用される好ましい反応溶媒としては、酢酸エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル等)、低級アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等)、エーテル系溶媒(テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、アミド系溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルホアセトアミド等)が挙げられるが、より好ましい溶媒は酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン等であり、反応物により選択される。好ましい反応温度は、10〜130℃、より好ましくは20〜100℃であり、反応物により選択される。また、好ましい反応時間は5分〜10時間であり、より好ましいのは10分〜5時間の範囲であり、反応物により選択される。
一般式(II)で表わされる5−アルキル−1−ベンジルオキシ−2−ニトロ−4−置換オキシベンゼン化合物を還元することにより、一般式(I)で表わされる5−アルキル−2−アミノ−4−置換オキシフェノール化合物およびそのプロトン酸塩を製造する方法において、還元により生成する一般式(I)で表わされる5−アルキル−2−アミノ−4−置換オキシフェノール化合物は、空気中の酸素により極めて酸化され易いため、反応、後処理および取り出しを不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、生成した5−アルキル−2−アミノ−4−置換オキシフェノール化合物を単離することなしに次工程の反応に供することも好ましい方法の1つである。
【0037】
一方、酸化に対して不安定な5−アルキル−2−アミノ−4−置換オキシフェノール化合物を、そのプロトン酸塩とすることにより、安定な化合物として単離することができる。その際、反応溶媒は先に述べた好ましい溶媒を使用するが、プロトン酸塩の結晶をより析出させ易くするため、5−アルキル−2−アミノ−4−置換オキシフェノール化合物を合成する際に使用した種類と異なる溶媒を加えるか、あるいは反応に使用した溶媒を異なる溶媒に置き換えることによる等の方法が効果的である。
【0038】
一般式(I)で表わされる5−アルキル−2−アミノ−4−置換オキシフェノール化合物のプロトン酸塩を合成する反応において、用いることのできるプロトン酸としては塩化水素、臭化水素、よう化水素、硫酸、炭酸等の無機酸、酢酸クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、蓚酸、マレイン酸、安息香酸、フタル酸等の有機カルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸等が挙げられる。好ましいプロトン酸としては塩化水素、臭化水素、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸であり反応物により選択される。
【0039】
上記プロトン酸の使用量のモル比は、5−アルキル−2−アミノ−4−置換オキシフェノール化合物に対して、好ましくは0.35〜1.5の範囲であり、より好ましくは0.5〜1.3の範囲である。
【0040】
【実施例】
次に、本発明の具体例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
参考例1(例示化合物P−1の合成)
1)2−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−ハイドロキノン6.67g(0.03モル)にN,N−ジメチルアセトアミド30mlを加え溶解させた。窒素雰囲気下、氷冷下で攪拌しながら水素化ナトリウム1.2g(0.036モル)を分割添加した。反応温度を5〜10℃に保ちながら臭化ベンジル5.13g(0.03モル)を5分で滴下した。同温度で4時間攪拌した後、希塩酸水溶液を加えた。酢酸エチルで抽出し、水洗した。有機溶媒層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下で留去し、カラム精製した後n−ヘキサンに加熱溶解した。氷冷して析出した結晶を濾過することにより、4−ベンジルオキシ−2−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール5.4g(収率57.6%)を得た。融点は89〜90℃であった。生成物の構造は 1H−NMR、マススペクトルにより確認した。 1H−NMR(CDCl3)σ(ppm)(多重度、積分値)7.50〜7.22(m,5H)、6.91(d,1H)、6.65(dd,1H)、6.50(d,1H)、5.00(s,2H)、4.50(s,1H)、1.92(s,2H)、1.40(s,6H)、0.74(s,9H)
2)得られた4−ベンジルオキシ−2−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール5.4g(0.0173モル)をN,N−ジメチルホルムアミド27mlに溶解した。室温で攪拌下、水酸化ナトリウム1.4g(0.035モル)および水1.4mlを添加した。45〜50℃に加熱し、セチルブロマイド6.1g(0.02モル)を滴下した。50℃で4時間攪拌を行った後、室温まで冷却し希塩酸水溶液を添加した。酢酸エチルで抽出し、水洗した。有機溶媒層を乾燥した後、溶媒を減圧下で留去した。メタノール35mlを加え加熱した。室温まで冷却して析出した結晶を濾過して4−ベンジルオキシ−1−ヘキサデシルオキシ−2−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−ベンゼン8.73g(収率94%)を得た。融点は39〜40℃であった。生成物の構造はマススペクトルで確認した。
【0041】
実施例1(例示化合物N−1の合成)
4−ベンジルオキシ−1−ヘキサデシルオキシ−2−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−ベンゼン7g(0.013モル)に酢酸30mlを加え、室温で攪拌した。60%硝酸1ml(0.013モル)を5分かけて滴下した。発熱により30℃まで温度が上昇し、原料の結晶が溶解した。反応温度を30〜35℃に保ちながら3時間反応を行った。反応時間の経過とともに結晶が析出した。温度を室温まで冷却した後、析出した結晶を濾過して4−ベンジルオキシ−1−ヘキサデシルオキシ−5−ニトロ−2−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−ベンゼン6.7g(収率88%)を得た。融点は57〜58℃であった。生成物の構造は 1H−NMR、マススペクトルにより確認した。 1H−NMR(CDCl3)σ(ppm)(多重度、積分値)7.53〜7.22(m,6H)、7.00(s,1H)、5.21(s,2H)、3.95(t,2H)、1.95(s,2H)、1.90〜1.77(m,2H)、1.62〜1.45(m,2H)、1.33(s,6H)、1.40〜1.18(m,24H)、0.90(t,3H)、0.61(s,9H)
【0042】
参考例2(例示化合物M−1の合成)
4−ベンジルオキシ−1−ヘキサデシルオキシ−5−ニトロ−2−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−ベンゼン8.7g(0.015モル)を酢酸エチル80mlに溶解し、200mlオートクレーブに仕込んだ。10%Pd−C0.45gを添加した。水素のガス圧を15kg/cm2に導入し、30〜35℃で3時間攪拌を行った。理論量の水素圧が消費されたのを確認し、室温まで冷却した後触媒を除去した。溶媒を減圧留去して1−アミノ−4−ヘキサデシルオキシ−2−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールの結晶6.9g(収率100%)を得た。融点は84〜85℃であった。生成物の構造は 1H−NMR、マススペクトルにより確認した。 1H−NMR(DMSO−d6)σ(ppm)(多重度、積分値)8.10(s,1H)、6.55(br,1H)、6.20(br,1H)、4.29(br,2H)、3.77(br,2H)、2.00〜1.60(m,4H)、1.59〜1.08(m,32H)、0.86(t,3H)、0.67(br,9H)
【0043】
参考例3(例示化合物M−2の合成)
参考例2で、溶媒を留去して得られた1−アミノ−4−ヘキサデシルオキシ−2−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールの結晶にイソプロパノール15mlとアセトニトリル50mlを加え加熱溶解した。この溶液にパラトルエンスルホン酸1水和物2.85g(0.015モル)を添加すると結晶が析出した。室温で15分間攪拌した後、アセトニトリルを更に25ml添加した。析出した結晶を濾過して目的の1−アミノ−4−ヘキサデシルオキシ−2−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールの1パラトルエンスルホン酸塩8.0g(収率84.5%)を得た。融点は178〜181℃であり、従来から知られている方法で合成したサンプルの融点と一致した。
【0044】
【発明の効果】
本発明により、ハロゲン化銀感光材料のカラー拡散転写方式に用いられらる色素供与性化合物およびフェノール型シアンカプラーの重要な中間体である5−アルキル−2−アミノ−4−置換オキシフェノール化合物およびそのプロトン酸塩を製造するにあたり、新規な化合物である5−アルキル−1−ベンジルオキシ−2−ニトロ−4−置換オキシベンゼン化合物を中間体として経るという全く新しい合成法を提供することができた。
これまでに知られていた5−アルキル−2−アミノ−4−置換オキシフェノール化合物およびそのプロトン酸塩の合成法に比べて工程が簡略で、不要な廃棄物を出すことなく、しかも高収率で目的物を合成することができる。
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