JP4152806B2 - レーザ光照射装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学部品およびレーザ光照射装置に関し、特にレーザ光を整形するための光学系に用いるレンズを固定するための光学部品および、その光学部品を有するレーザ光照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
薄膜トランジスタ(TFT)等の半導体装置の作製工程において、結晶化や活性化等の工程には、レーザ光を照射する方法(レーザアニール法)が用いられている。
【0003】
半導体装置の作製工程において、レーザ光を被処理基板上に照射した場合、照射されたレーザ光の一部は反射光や戻り光となる。
【0004】
入射したレーザ光と被処理基板裏面からの反射光とが半導体膜上で重なり、干渉すると、例えば半導体膜の結晶化工程において、膜の結晶性が不均一になるなどの問題がある。半導体膜の結晶性が不均一になると、TFTの特性ばらつきが生じる。
【0005】
また、レーザ光照射装置を構成する光学部品に、反射光が照射されると、光学部品が損傷する等の問題もある。光学部品の損傷により発生したダストが、不純物として半導体膜中に混入した場合にも、TFTの特性ばらつきが生じる。
【0006】
上記のようなTFTの特性ばらつきは、回路の誤動作を引き起こしたりする。そのため、レーザ光の干渉を防ぎ、また光学部品にも損傷を与えることなく、或いは損傷を出来る限り抑制してレーザ光照射をすることができる装置の開発が求められる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上の問題に鑑み、本発明では、入射光と被処理基板裏面からの反射光との干渉を防ぎ、また反射光による光学部品への損傷を抑制できるようなレーザ光照射装置、及びそれに用いる光学部品を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の光学部品は、レンズを固定するための光学部品であって、基部と、留具と、締結具とで構成されている。前記基部は、曲部を有する凹型の形状の側面と、複数の第1の挿入孔とを有する。また、前記留具は、円筒形であり、上面または下面の少なくともひとつの面の中心部を貫通する第2の挿入孔を有する。前記基部のうち、前記側面の縁から内側に延びた部分であり、且つ前記挿入孔のいずれとも外接する円を描いたときに前記円の内側に相当する部分の一部と、前記留具とによって、前記レンズは挟まれ、前記第1の挿入孔と前記第2の挿入孔とに挿入した前記締結具により、前記基部と前記留具とは締結される。
【0009】
なお、前記留具は、樹脂材料、金属材料又はこれら以外のいずれの材料で形成されていても構わないが、レンズへの損傷を防止するために樹脂材料で形成されていることが好ましい。樹脂材料としては、テトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等が挙げられるが、この他の材料でも構わない。また、前記留具の上面または下面と、側面が交わる部分であり、前記レンズと接する部分は、曲率を有する形状になっていることが好ましい。これにより、前記基部と前記留具とで前記レンズを挟んだとき、前記レンズと前記留具とが接する部分において、前記留具と前記レンズとが擦れ、前記レンズが損傷することを防げる。
【0010】
また、前記締結具としては、螺子やボルト等を用いることができる。これら以外に弾力性を有する挟み具等を用いても構わない。
【0011】
以上に示したような本発明の光学部品を用いてレンズを固定し、当該レンズに斜め方向からレーザ光を入射して被処理物上にレーザ光を照射したとき、被処理物上で反射したレーザ光(反射光)の光路に当該光学部品を有しない光学系を設計できる。従って、反射光が光学部品に照射されることにより、光学部品が損傷することを防止できる。
【0012】
また、本発明の別の構成は、上記の光学部品を備えたレーザ光照射装置である。
【0013】
前記レーザ光照射装置は、レーザ発振器と、光路調整用のミラーとレーザ光整形用のレンズとからなる光学系と、前記レンズを固定するための前記光学部品と、載置台とから構成される。前記レーザ発振器から出たレーザ光は、前記ミラーにより光路を調整され、前記レンズに対し斜め方向から入射する。また、前記光学部品は、前記基部が前記レンズへ入射するレーザ光の光路側にくるように設けられている。なお、前記ミラーは複数設けられていてもよい。
【0014】
上記レーザ光照射装置は、被処理物上に入射したレーザ光と、被処理基板裏面からの反射光との干渉を抑制し、また被処理物上で生じた反射光による光学部品への損傷を抑制できるものである。
【0015】
また、このようなレーザ光照射装置を用いて膜の結晶化を行った場合においては、入射光と被処理基板裏面からの反射光との干渉に起因した結晶化状態の不均一性を抑制し、また反射光による治具の損傷に起因した不純物の混入を抑制した、結晶質半導体膜を形成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
本発明の一態様として、レンズを固定するための光学部品(治具)について、図1(A)〜(C)を用いて説明する。なお、図1(B)は、図1(A)のB−B’における断面図であり、図1(C)は、図1(A)のA−A’における断面図である。
【0017】
本発明の光学部品は、基部10、留具11(11a、11b)、締結具12a、12bとから構成されている。また、本実施の形態においては、凸型レンズを固定するものとする。
【0018】
基部10のひとつの側面は、曲部を有する凹型の形状となっている。また、基部10には挿入孔が二箇所設けられている。基部10の上面のうち、凹型形状を有する側面の縁から内側に延びた部分であり、且つ前記挿入孔のいずれとも外接する円を描いたときに当該円の内側に相当する部分は、レンズを載置するための載置部として機能する。なお、上記側面と異なる側面において、形状は特に限定されない。また基部10の表面を、アルマイトのような皮膜で覆って保護してもよい。アルマイトを用いる場合、白アルマイトのような炭素を含有しない材料を用いることが好ましい。
【0019】
また、留具11は円筒状であり、下面(レンズを固定したときにレンズと接する側の面)の中心部には挿入孔が設けられている。留具11の下面と側面とからなる角部(レンズと接する部分)は曲率を持った形状となっている。また、留具11は、テトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、クロロトリフルオロエチレンなどの樹脂材料で形成されている。
【0020】
図1(A)に示すように、レンズ13は、基部10の上面の一部と、レンズ13の一部とが重なるように載置される。なお、基部10の上面のうちレンズ13の一部と重なるのは、上記載置部として機能する部分においてである。
【0021】
図1(B),(C)に示すように、基部10と留具11とは、レンズ13を挟んだ状態で、基部10と留具11の各々に設けられた挿入孔に締結具12を挿入することにより締結される。このとき、留具11が下面と側面とからなる角部(レンズと接する部分)がレンズ13と接している。なお、留具11の角部が曲率を有し、さらに留具11が樹脂材料で形成されていることにより、留具11によるレンズ13の損傷を防ぐことができる。また、以上のような構成とすることにより、特に凸型のレンズを、水平にした状態でも、安定して固定できる。但し、凸型レンズに限らず平面レンズの固定に用いても構わない。平面レンズを固定する場合は、留具11の下面とレンズの表面とが接するようにして固定される。
【0022】
なお、本実施の形態おいて、基部10には、締結具12を挿入して締結する部分(締結部)が二箇所設けられているが、これに限らず、三箇所以上の締結部を設けてもよい。また、本実施の形態では、締結具12の頭部が基部10の下部に接する構成で締結されているが、これに限らず、図2に示すように締結具12の頭部が留具11の上面(レンズ13と接していない側)に接する構成で締結されていてもよい。
【0023】
さらに、本実施の形態において、基部10には、本発明の光学部品を支持するための支持部14が設けられている。当該支持部14は、基部10内に挿入された状態で取り付けられている。支持部14の取り付け部分において基部10は、レンズ13の載置部よりも厚みを有する構造になっている。しかし、これに限らず支持部と載置部の厚みが同じ厚みを有する構造であってもよい。但し、載置部の厚みは締結具12の挿入が簡便になる程度のものであることが好ましい。
【0024】
以上に示したような本発明の光学部品を用いてレンズを固定し、当該レンズに斜め方向からレーザ光を入射して被処理物上にレーザ光を照射したとき、被処理物上で反射したレーザ光(反射光)の光路上に当該光学部品を有しない光学系を設計できる。従って、反射光が光学部品に照射されることにより、光学部品が損傷することを防止できる。
【0025】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1とは異なる構成の本発明の光学部品について説明する。
【0026】
本実施の形態において、本発明の光学部品は、対になった基部30a、30b、および基部30aと基部30bとを締結するための締結具31および留具32とで構成されている。
【0027】
図3において、レンズ33は、締結具31によって締結された基部30aおよび基部30bに狭持されることよって固定されている。なお、基部30aの側面とレンズ33の側面とは二箇所で接し、さらに基部30bの側面とレンズ33の側面も二箇所で接している。
【0028】
なお、基部30a、30bにおいて、レンズ33と接する部分には、テトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、クロロトリフルオロエチレンなどの樹脂材料からなる平板が設けられていてもよい。これにより、基部30a、30bとレンズ33とが接する部分において、レンズ33が損傷するのを防止することができる。
【0029】
以上に示したような本発明の光学部品を用いてレンズを固定し、当該レンズに斜め方向からレーザ光を入射して被処理物上にレーザ光を照射したとき、被処理物上で反射したレーザ光(反射光)の光路に当該光学部品を有しない光学系を設計できる。従って、反射光が光学部品に照射されることにより、光学部品が損傷することを防止できる。
【0030】
【実施例】
(実施例1)
本実施例では、本発明を適用した連続発振型のレーザ光照射装置を用いてレーザアニールし、半導体膜の結晶化を行う方法について図4を用いて説明する。
【0031】
本発明を適用したレーザ照射装置は、載置台107、レーザ発振器101、ミラー103、レーザ光の形状を加工するためのレンズ104とから構成されている。レンズ104は図1に示したのと同様の治具105により固定されている。ここで、レンズ104はレーザ光が入射する側が凸状、出射する側が平面状になった球面レンズであり、大きさφが15mm、焦点距離fが20mm、中心厚tcが5.2mm、縁厚teが2.0mm、後側焦点距離fbが16.6mm、曲率半径rが10.38mmの仕様となっている。なお、載置台107上に載った被処理基板106と、レンズ104のうち被処理基板106と対向した側の面との距離は12mmである。
【0032】
被処理基板106上には非晶質珪素膜が成膜されており、被処理基板106上に照射されたレーザ光102によって、非晶質珪素膜は、結晶化される。なお、非晶質珪素膜に限らずゲルマニウムを含有した非晶質珪素膜など、他の半導体膜を用いてもよい。また、本実施例では、被処理基板106を載せた載置台107は、水平方向に可動する載置台108、109上に設けられており、載置台108、109が移動することによって、レーザ光の照射位置が被処理基板106に対して相対的に変化する構成となっている。
【0033】
レーザ発振器101から射出されたレーザ光102は、ミラー103で光路を調整された後、レンズ104に斜め方向から入射する。これにより、入射したレーザ光と被処理基板裏面からの反射光との干渉を防ぐことができる。なお、本実施例において、レーザ光102は、Nd:YVO4レーザの第2高調波である。また、レンズ102を通ったレーザ光は、アスペクト比(長径/短径)が10以上の楕円状のビームスポットを有する。
【0034】
なお、レーザ光は、ビームスポットの長径と垂直な方向に、被処理基板106の端部からもう一方の端部へ相対的に移動した後、ビームスポットの長径とほぼ同じ長さ分移動し、さらにビームスポットの長径と垂直な方向に、被処理基板106の端部からもう一方の端部への相対的な移動を繰り返し、被処理基板106に設けられた非晶質珪素膜を結晶化する。
【0035】
図5(A)〜(C)は、それぞれ入射角度がx1、x2、x3度のときのレーザ光のエネルギー分布図であり、15<x1<x2<x3<35度、である。斜め方向から入射する場合、図5(A)〜(C)に示すように、入射角度によってレーザ光のエネルギー密度分布が異なる。このため、結晶粒の大きさが10μm以上となるために必要なエネルギー密度以上のエネルギー密度をもつ領域(大粒径領域)の大きさも入射角度により変化する。ここで、大粒径領域の長径を大粒径領域の幅という。大粒径領域の幅の入射角度依存性は、図5(D)の模式図のように表され(但し、入射角度を15〜35度の間で変化させたとき)、ある入射角度において、大粒径領域の幅(W)は最大値を示す。なお、図5(E)に示すように、レーザ光の入射角度は、被処理基板表面の法線と、被処理基板に入射するレーザ光の入射方向とのなす角度である。
【0036】
上記構成の光学系において、大粒径領域の幅が最大値を示すのは、入射角度が26度のときである。このため、本実施例では、レーザ光の入射角度は26度とした。なお、上記構成と異なる仕様のレンズ等を用いた場合には適宜入射角度を調整すればよい。26度の入射角度で入射することにより、ビームスポットは、短径が20μm、長径が400μmの楕円状となる。
【0037】
このように、アスペクト比の高いビームスポット形状を有するレーザ光を用いることにより、レーザ光照射工程のスループットを上げることができる。通常、アスペクト比の高いビームスポット形状を有するレーザ光を形成するためには、レンズ102の焦点距離が短いことが好ましい。しかし、焦点距離の短いレンズを用いてレーザ光を整形する場合、基板と、レンズを固定するための治具とが近接する。このとき、反射光110の光路にレンズを固定するための治具が設けられていると、エネルギー密度の高い状態の反射光が治具に照射され、治具が損傷してしまう。しかしながら、本発明を適用したレーザ光照射装置では、反射光の光路上にレンズを固定する為の治具が設けられておらず、基板と、レンズを固定するための治具とが近接した構成においても、治具の損傷を防ぐことができる。
【0038】
以上のように、本発明を適用した連続発振型のレーザ光照射装置を用いて、結晶質珪素膜を結晶化することにより、入射光と被処理基板裏面からの反射光との干渉に起因した結晶化状態の不均一性を抑制し、また反射光による治具の損傷に起因した不純物の混入を抑制した、結晶質珪素膜を形成することができる。また、このようにして形成した結晶質珪素膜を用いて作製したTFT等の結晶質半導体膜を用いた素子においては、結晶化状態の不均一性や、結晶質珪素膜中への不純物混入に起因した特性ばらつきを抑制できる。
【0039】
なお、本実施例では、本発明のレーザ光照射装置を結晶化工程に適用する場合について説明したが、これに限らず、活性化工程等、他の工程に適用しても構わない。いずれにしても、反射光による治具の損傷を防ぐことができる。また、本実施例では、連続発振型のレーザ光照射装置を用いた場合について述べているが、これに限らずパルス発振型のレーザ光照射装置に適用しても構わない。
【0040】
【発明の効果】
本発明により、レーザ光の干渉を防ぎ、また反射光に起因した光学部品への損傷を抑制できるようなレーザ光照射装置及び光学部品が得られる。また、本発明のレーザ光照射装置を用いることにより、入射光と被処理基板裏面からの反射光との干渉に起因した結晶化状態の不均一性を抑制し、また反射光による治具の損傷に起因した不純物の混入を抑制した、結晶質半導体膜を形成することができる。
【0041】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学部品について説明する図。
【図2】本発明の光学部品について説明する図。
【図3】本発明の光学部品について説明する図。
【図4】本発明のレーザ光照射装置を用いてレーザアニールする方法について説明する図。
【図5】レーザ光の入射角度と大粒径領域の幅との関係について説明する図。

Claims (5)

  1. レーザ光発振器と、
    光路調整用のミラーとレーザ光整形用のレンズとからなる光学系と、
    前記レンズを固定するための光学部品と、
    被処理基板を載せる載置台と
    を有するレーザ光照射装置において、
    前記光学部品は、
    曲部を有する凹型の側面と、複数の第1の挿入孔とを有する一の基部と、
    円筒形であり、上面または下面の少なくともひとつ面の中心部を貫通する第2の挿入孔を有する留具と、
    締結具とを有し、
    前記基部のうち、前記側面の縁から内側に延びた部分であり、且つ前記挿入孔のいずれとも外接する円を描いたときに前記円の内側に相当する部分の一部と、
    前記留具とによって、前記レンズが挟まれ、
    前記第1の挿入孔と前記第2の挿入孔とに挿入した前記締結具により、前記基部と前記留具とが締結されることにより前記レンズを固定するものであり、
    前記レンズに斜め方向から入射するレーザ光の光路側に、前記基部が設けられているとともに、前記被処理基板上において反射する前記レーザ光の光路側に前記基部が設けられていないことを特徴とするレーザ光照射装置。
  2. 請求項に記載のレーザ光照射装置において、前記留具は樹脂材料で形成されていることを特徴とするレーザ光照射装置。
  3. 請求項または請求項に記載のレーザ光照射装置において、前記留具の上面または下面と、側面とが交わる部分は曲率を有する形状であることを特徴とするレーザ光照射装置。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のレーザ光照射装置において、
    前記基部の表面が白アルマイト膜により覆われていることを特徴とするレーザ光照射装置。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のレーザ光照射装置において、
    前記レンズの一部が前記基部の外側より突出するように配置されていることを特徴とするレーザ光照射装置。
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