JP4152721B2 - 接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムとその利用 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電極とセパレータが接着された高性能のゲル電解質電池の組み立てに有用である、熱架橋性接着剤組成物とゲル化剤とを担持させてなる多孔質フィルム(以下、接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムという。)とその利用、特に、そのような接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムを用いるゲル電解質電池の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、種々の電池が実用に供されているが、最近、電子機器のコードレス化等に対応するために、軽量で高起電力、高エネルギーを得ることができ、しかも、自己放電が少ないリチウムイオン二次電池が注目を集めている。このリチウムイオン二次電池は、例えば、コイン型(円筒型)電池として、携帯電話やノート型パソコン用として、現在、多量に用いられている。更に、リチウムイオン二次電池は、今後、電気自動車用バッテリーとして期待されている。
【0003】
このようなリチウムイオン二次電池の負極材料としては、金属リチウムをはじめ、リチウム合金やりチウムイオンを吸蔵放出できる炭素材料のような層間化合物を挙げることができる。他方、正極材料としては、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄等の遷移金属の化合物や、これら遷移金属とリチウムとの複合酸化物を挙げることができる。
【0004】
一般に、このようなリチウムイオン二次電池においては、上述したような正極と負極との間に、これらの電極間の直接接触による短絡を防止するために、セパレータが設けられている。このようなセパレータとしては、通常、正極負極間のイオンの透過性を確保するために、多数の微細孔を有する多孔質フィルムが用いられている。
【0005】
従来、電池の製造方法として、正極と負極との間にこれら電極間の短絡を防止するために上記セパレータを挟み、積層して、電極/セパレータ積層体を組み立て、必要に応じて、これを捲回し、又は積層した後、この電極/セパレータ積層体を電池容器内に組み込み、次いで、この電池容器内に電解液を注入して、電池を組み立てる方法が知られている。
【0006】
しかし、このような電池の製造方法においては、電極/セパレータ積層体の保管時や搬送時に電極やセパレータの各部材が相互にずり移動を起こしやすく、その結果、電池製造の生産性が低く、また、不良品が発生しやすい等の問題があった。また、このようにして得られた電池によれば、電極とセパレータとの密着性が悪く、使用時に電池特性が低下したり、また、内部短絡を生じて、電池が発熱昇温し、場合によっては、破壊するおそれさえあった。
【0007】
一方、近年、従来の電解液を用いた電池に比べて、液漏れのおそれがなく、また、薄型化も可能である等、形状の自由度が高い高分子型固体電解質を用いた電池が電池の薄型化や安全性の向上の要求に適うものとして、注目されている。しかしながら、従来より知られている高分子型固体電解質は、電解液に比べて、電導度が著しく低いという問題がある。
【0008】
そこで、例えば、ポリマーマトリックス中に電解液を保持させることによって、電解液に近い特性を有せしめたゲル電解質の実用化が進められている。このようなゲル電解質は、既に、種々のものが知られている。例えば、分子中にポリエチレンオキシドの3官能アクリルエステルを重合させてなる架橋ポリマーからなるマトリックス中にγ−ブチロラクトンを溶媒とする電解液を含有させたゲル電解質が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、4官能末端アクリロイル変性アルキレンオキシドからなるポリマーをマトリックスとするゲル電解質も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
このようなポリエーテル系ポリマーは、電解液との相溶性が高く、均一で電導度の高いゲル電解質を形成するが、しかし、このゲル電解質は、単独では、その機械的強度が低いので、正極負極を短絡が起こらないように隔離することは困難であり、セパレータとの併用が不可欠である。また、リチウムイオン二次電池においける一般的な電解質であるヘキサフルオロリン酸リチウムを電解質塩として用いた時、上記ポリマーの分解が起こるので、得られる電池の耐久性に問題がある。
【0010】
【特許文献1】
特開平8−298126号公報(第3〜4頁)
【特許文献2】
特開平1 1 −176452号公報(第1頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来のゲル電解質電池の製造における上述したような問題を解決するためになされたものであって、熱架橋性接着剤組成物とゲル化剤とを多孔質フィルムに担持させてなる接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムを提供することを目的とする。本発明によれば、このような接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムに電極を圧着し、加熱することによって、電極を多孔質フィルムに強固に接着させた多孔質フィルム/電極接合体を得ることができ、このような多孔質フィルム/電極接合体を用いることによって、部材の相互のずり移動なく、電池を効率よく組み立てることができ、しかも、電池を組み立てた後は、上記多孔質フィルムは電極に接着されたセパレータとして機能するゲル電解質電池を効率よく組み立てることができる。更に、本発明は、このような接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムを用いるゲル電解質電池の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、加熱によって架橋硬化する熱架橋性接着剤組成物とゲル化剤とを多孔質フィルムに担持させてなることを特徴とする接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムが提供され、上記熱架橋性接着剤組成物は、好ましくは、多官能イソシアネートとこの多官能イソシアネートのイソシアネート基と反応し得る官能基を有する反応性ポリマーとからなる。
【0013】
更に、本発明によれば、上記接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムに電極を接着してなる多孔質フィルム/電極接合体が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、上記接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムに電極を積層した後、加熱し、架橋硬化させて、多孔質フィルム/電極接合体とし、これを電池缶内に仕込んだ後、この電池缶中に電解液を注入し、加熱して、上記接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムの担持するゲル化剤を融解させ、電解液中に溶出させた後、冷却し、電解液をゲル化させると共に、ゲル化剤が溶出した後の多孔質フィルムをセパレータとして有するゲル電解質電池を得ることを特徴とする電池の製造方法が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明において、多孔質フィルムは、膜厚5〜200μmの範囲のものが好ましく用いられる。多孔質フィルムの厚みが5μmよりも薄いときは、強度が不十分であって、電池においてセパレータとして用いるとき、電極が内部短絡を起こすおそれがある。他方、多孔質フィルムの厚みが200μmを越えるときは、そのような多孔質フィルムをセパレータとする電池は電極間距離が大きすぎて、電池の内部抵抗が過大となる。また、多孔質フィルムは、平均孔径0.01〜5μmの細孔を有するものが好ましく用いられる。
【0016】
本発明によれば、多孔質フィルムは、上述したような特性を有すれば、特に、限定されるものではないが、耐溶剤性や耐酸化還元性を考慮すれば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなる多孔質フィルムが好適である。しかし、なかでも、加熱されたとき、樹脂が溶融して、細孔が閉塞する性質を有し、従って、電池に所謂シャットダウン機能を有せしめることができるところから、多孔質フィルムとしては、ポリエチレン樹脂フィルムが特に好適である。ここに、ポリエチレン樹脂には、エチレンのホモポリマーのみならず、プロピレン、ブテン、ヘキセン等のα−オレフィンとエチレンとのコポリマーを含むものとする。しかし、本発明によれば、ポリテトラフルオロエチレンやポリイミド等の多孔質フィルムと上記ポリオレフィン樹脂多孔質フィルムとの積層フィルムも、耐熱性にすぐれるところから、多孔質フィルムとして、好適に用いられる。
【0017】
本発明による接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムは、このような多孔質フィルムに加熱によって架橋硬化する熱架橋性接着剤組成物とゲル化剤とを担持させてなるものである。
【0018】
先ず、上記熱架橋性接着剤組成物について説明する。本発明によれば、熱架橋性接着剤組成物は、特に限定されるものではないが、しかし、多官能イソシアネートとこの多官能イソシアネートのイソシアネート基と反応し得る官能基を有する反応性ポリマーとからなる熱架橋性接着剤組成物が好ましく用いられる。特に、本発明においては、上記反応性ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステル成分と共に、前記多官能イソシアネートのイソシアネート基と反応し得る活性水素を有する反応性モノマー成分とを含むものであることが好ましい。
【0019】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等のように、アルキル基における炭素原子数が1〜12のアルキルエステルが好ましく用いられる。
【0020】
また、本発明によれば、上記反応性ポリマーは、そのガラス転移温度が0℃以下でもよく、この場合には、得られる接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムに室温にて電極を圧着して、いわば、電極を多孔質フィルムに仮接着することができるが、しかし、本発明によれば、上記反応性ポリマーは、0〜100℃、好ましくは、40〜100℃の範囲のガラス転移温度を有するものであることが好ましい。このように、反応性ポリマーが0〜100℃、好ましくは、40〜100℃の範囲のガラス転移温度を有する場合には、通常、得られる接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムに電極を圧着して、仮接着するためには、接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムを加熱することが必要であるが、反面、例えば、接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムを積層し、又はロールに捲回して保存する場合に、その接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルム間に剥離紙を挟む必要がない利点がある。
【0021】
より詳しくは、上記反応性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸のようなカルボキシル基含有共重合性モノマーや、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等に代表されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシル基含有共重合性モノマーを挙げることができる。しかし、これら以外にも、例えば、アミノ基を有する共重合性モノマーも、反応性モノマーとして用いることができる。
【0022】
特に、本発明においては、反応性ポリマーは、上述したような反応性モノマー成分を0.1〜30重量%の範囲で有すると共に、(メタ)アクリル酸エステル成分や、必要に応じて、ニトリル基を有する共重合性モノマー成分、好ましくは、(メタ)アクリロニトリル成分や、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニルのようなビニルモノマー成分を有するものであることが好ましい。特に、本発明においては、反応性ポリマーは、耐熱性と耐溶剤性にすぐれるように、ニトリル基を有する共重合性モノマー成分、好ましくは、(メタ)アクリロニトリル成分を80重量%まで、好ましくは、5〜70重量%の範囲にて有することが好ましい。反応性ポリマーにおいて、ニトリル基を有する共重合性モノマー成分の割合が5重量%以下のときは、耐熱性と耐溶剤性の向上に殆ど効果がなく、他方、80重量%を越えるときは、得られる反応性ポリマーのガラス転移温度が100℃を越える場合があるので好ましくない。特に、本発明によれば、反応性ポリマーは、反応性モノマー成分0.1〜30重量%、(メタ)アクリル酸エステル成分10〜95重量%及び(メタ)アクリロニトリル4.9〜60重量%からなることが好ましい。
【0023】
また、本発明によれば、分子中にヒドロキシル基を有するアクリル変性フッ素樹脂(例えば、セントラル硝子(株)製セフラルコートFG730B、ワニスとして入手することができる。)も、反応性ポリマーとして好適に用いることができる。
【0024】
前述したように、反応性ポリマーが0〜100℃、好ましくは、40〜100℃の範囲のガラス転移温度を有するものであるとき、多孔質フィルムに多官能性イソシアネートとそのような反応性ポリマーからなる熱架橋性接着剤組成物とゲル化剤を塗布して得られる本発明による接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムは、それ自体で安定に保存することができ、また、剥離紙を用いることなく、積層し、又はロール状に捲回して保管することができる。しかし、このような場合、多孔質フィルム/電極積層体を得るには、接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムを多官能性イソシアネートが反応しない温度での加熱下に電極に圧着し、仮接着することが必要である。
【0025】
上述したような反応性ポリマーは、例えば、べンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチルのような溶剤中で所要のモノマーを共重合させることによって、ポリマー溶液として得ることができる。他方、エマルジョン重合法によれば、反応性ポリマーの水分散液を得ることができる。このように、エマルジョン法によるときは、前述したモノマーに加えて、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレートのような多官能性架橋性モノマーを1重量%以下の割合で用いるのが好ましい。
【0026】
多官能性イソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の芳香族、芳香脂肪族、脂環族、脂肪族のジイソシアネートのほか、これらのジイソシアネートを所謂ブロック化剤とを反応させて得られるブロック化ジイソシアネートが用いられる。上記ブロック化剤としては、例えば、アルコール類、フェノール類、ε−カプロラクタム、オキシム類、活性メチロール化合物等が好ましく用いられる。
【0027】
本発明によれば、上述したようにして、反応性ポリマーを溶液又は水分散液として得た後、これに上記多官能性イソシアネートを配合することによって、多官能イソシアネートと上記コポリマーとからなる熱架橋性接着剤組成物を得る。
【0028】
本発明によれば、上記多官能性イソシアネートは、上記反応性ポリマーを溶液として用いるときは、好ましくは、油溶性の多官能性イソシアネートを用いて、油性の熱架橋性接着剤組成物を調製し、上記反応性ポリマーを水分散液として用いるときは、好ましくは、水溶性又は水分散性の多官能性イソシアネートを用いて、水性の熱架橋性接着剤組成物を調製する。また、このように、油性の熱架橋性接着剤組成物を調製する場合には、その塗工性を向上させるために、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのような有機溶剤を配合してもよく、また、重質炭酸カルシウムやケイ砂の微粉末のような無機質微粉末を流動性改質剤として、50重量%以下の割合で配合してもよい。
【0029】
このような熱架橋性接着剤組成物において、多官能性イソシアネートの割合は、反応性ポリマー100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部の範囲である。多官能性イソシアネートの割合が反応性ポリマー100重量部に対して、0.1重量部よりも少ないときは、反応性ポリマーの多官能性イソシアネートによる架橋が不十分であって、得られるフィルム/電極接合体において、多孔質フィルムと電極との間に強固な接着を得ることができない。しかし、多官能性イソシアネートの割合が反応性ポリマー100重量部に対して20重量部よりも多いときは、架橋後の接着剤組成物が硬すぎて、フィルムと電極間の密着性を阻害することがある。
【0030】
次に、ゲル化剤について説明する。ゲル化剤とは、一般的には、常温(25℃)で液体の有機物質に対して可逆的ゲル形成性を有する有機化合物をいい、本発明においては、特に、有機溶媒(好ましくは、非水系有機溶媒)に電解質塩を溶解させてなる溶液(即ち、電解液)にこれを配合して組成物とするとき、この組成物を室温(25℃)よりも高い温度、例えば、限定されるものではないが、40〜100℃に加熱するとき、均一な溶液を形成し、この溶液を室温(25℃)に冷却するとき、可逆的にゲル状組成物を形成する有機化合物をいう。
【0031】
特に、本発明によれば、室温(25℃)よりも高い温度域、好ましくは、60〜100℃の範囲の温度では電解液に溶解するが、室温ではその電解液と共に固化して、可逆的にゲル状組成物、即ち、物理ゲルを形成することができる有機化合物であって、オイルゲル化剤として知られている一群の有機化合物が好ましく用いられる。オイルゲル化剤は、例えば、「高分子加工」第45巻第1号第21〜26頁(1996年)に記載されているように、油類に少量添加することによって、油全体をゼリー状に固めることができる薬剤であって、既に、種々のものが知られている。
【0032】
本発明においては、このように、ゲル化剤として、上述したように、オイルゲル化剤として知られているものであれば、特に、限定されることなく、いずれでも用いることができるが、好ましい具体例として、例えば、12−ヒドロキシステアリン酸、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−α,γ−ビス−n−ブチルアミド、ジアルキルリン酸アルミニウム、2,3−ビス−n−ヘキサデシロキシアントラセン、トリアルキル−シス−1,3,5−シクロヘキサントリカルボキシアミド、
【0033】
【化1】
【0034】
で表される化合物(1)、
【0035】
【化2】
【0036】
で表される化合物(2)、
【0037】
【化3】
【0038】
で示されるジベンジリデンソルビトール(3)、
【0039】
【化4】
【0040】
で示されるトリベンジリデンソルビトール(4)、
【0041】
【化5】
【0042】
のようなコレステロール誘導体(5)や(6)等を挙げることができる。
【0043】
前述した熱架橋性接着剤組成物とこのようなゲル化剤とを適宜の手段にて多孔質フィルムに担持させることによって、本発明による接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムを得ることができる。
【0044】
本発明によれば、多孔質フィルムの表裏両面に上記熱架橋性接着剤組成物とゲル化剤とを担持させて接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムとし、その表裏両面に電極、即ち、負極と正極をそれぞれ圧着し、接着して、多孔質フィルム/電極積層体としてもよく、また、多孔質フィルムの一方の表面にのみ、上記熱架橋性接着剤組成物とゲル化剤とを担持させて接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムとし、その表面に電極、即ち、負極又は正極のいずれかを圧着し、接着して、多孔質フィルム/電極積層体としてもよい。
【0045】
多孔質フィルムへの熱架橋性接着剤組成物の担持量は、多ければ多い程、得られるゲル電解質において、電極との接着性にはすぐれるが、反面、接着剤組成物による多孔質フィルムの被覆率が高くなるので、得られる電池の特性が低下するおそれがある。反対に、接着剤組成物の多孔質フィルムへの担持量が少なすぎるときは、得られる電池において、多孔質フィルム(セパレータ)が電極との接着性に劣ることとなり、場合によっては、多孔質フィルム(セパレータ)と電極との間に接着が得られない。同様に、多孔質フィルムへのゲル化剤の担持量も、多ければ多い程、電解液を容易にゲル化することができるが、しかし、余りに多すぎるときは、得られる電池の特性が低下する。他方、ゲル化剤の担持量が少なすぎるときは、得られる電池の特性には有害な影響はないが、電解液をゲル化させ難い。
【0046】
そこで、本発明によれば、熱架橋性接着剤組成物とゲル化剤とを多孔質フィルムに担持させる際に、例えば、熱架橋性接着剤組成物とゲル化剤とを多孔質フィルムに塗布して担持させる際に、部分的に、即ち、例えば、斑点状、格子目状、縞状、亀甲模様状等に部分的に塗布するのが好ましく、特に、接着剤組成物とゲル化剤とを塗布する多孔質フィルムの表面の面積の5〜50%の範囲で上記熱架橋性接着剤組成物とゲル化剤とを塗布することによって、多孔質フィルムと電極との間に強固な接着を得ると共に、そのような多孔質フィルム/電極接合体を用いることによって、すぐれた特性を有する電池を得ることができる。
【0047】
更に、本発明によれば、電池の組み立てに際して、接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムを用いて、熱架橋性接着剤組成物にて電極を強固に接着すると共に、後述するように、ゲル化剤にて電解液をよくゲル化するために、熱架橋性接着剤組成物とゲル化剤を熱架橋性接着剤組成物/ゲル化剤重量比で3/97〜80/20、好ましくは、5/95〜25/75にて0.4〜40g/m2 、好ましくは、0.8〜20g/m2 の担持率にて担持させることが好ましい。
【0048】
次に、本発明によるこのような接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムを用いる電池の製造(組立て)方法について説明する。
【0049】
本発明によれば、上述したようにして得られる接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムを挟んで、負極と正極とをこのセパレータに沿わせ、好ましくは、多官能性イソシアネートが反応しない温度に加熱しながら、圧着して、多孔質フィルム/電極積層体を得る。従って、本発明によれば、この多孔質フィルム/電極積層体において、熱架橋性接着剤組成物中の多官能性イソシアネートは、実質的に未反応の状態にあり、接着剤組成物は、架橋、硬化していない。
【0050】
本発明によれば、上記電極としては、集電体の表面に結着樹脂と共に活物質を圧着してなるシート状電極が用いられる。リチウムイオン二次電池の場合であれば、通常、正極集電体にはアルミニウム箔が用いられ、正極活物質としては、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄等の遷移金属の化合物や、これら遷移金属とリチウムとの複合酸化物が単独で、又は黒鉛粉末等の導電性物質と混合して用いられる。なかでも、コバルト酸リチウムが現在、最も一般的に用いられている。他方、負極集電体には銅箔が用いられ、負極活物質としては、リチウム合金のほか、リチウムを吸蔵放出できる炭素系材料のよう層間化合物が用いられる。なかでも、黒鉛粉末が最も一般的に用いられている。結着樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン樹脂が一般的に用いられている。電極は、活物質と結着樹脂をN−メチル−2−ピロリドン等の溶媒にてスラリーとし、これを集電体の表面に塗布した後、圧着することによって得ることができる。
【0051】
本発明によれば、このように、熱架橋性接着剤組成物中の多官能性イソシアネートが実質的に未反応の状態で、接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムの表面に負極を沿わせると共に、接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムの裏面に正極を沿わせ、好ましくは、熱架橋性接着剤組成物中の多官能性イソシアネートが反応しない温度で加熱しつつ、圧着し、電極中に接着剤組成物を一部、圧入して、いわば、電極を多孔質フィルムに仮接着して、多孔質フィルム/電極積層体とし、その後、この積層体を加熱し、多官能イソシアネートを反応性ポリマーと反応させ、熱架橋性接着剤組成物を架橋、硬化させ、多孔質フィルムに電極を接着して、多孔質フィルム/電極接合体を得る。即ち、接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムに電極をいわば本接着させる。従って、このような多孔質フィルム/電極接合体においては、多孔質フィルムに電極が強固に接着されている。前述したように、本発明において、多孔質フィルム/電極接合体は、多孔質フィルムに電極が接合されておればよく、従って、負極/多孔質フィルム/正極接合体のみならず、多孔質フィルム/負極/多孔質フィルム/正極接合体、負極/多孔質フィルム/正極/多孔質フィルム接合体や、更には、多孔質フィルム/負極又は正極のいずれか一方の電極接合体をも含むものとする。
【0052】
本発明によれば、上述したように、接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムに電極を圧着して、電極中に接着剤組成物を一部、圧入して、多孔質フィルム/電極積層体とし、次いで、この積層体を加熱し、多孔質フィルム/電極積層体中の熱架橋性接着剤組成物を架橋、硬化させて、多孔質フィルム/電極接合体を得る。従って、本発明によれば、熱架橋性接着剤組成物の多孔質フィルムへの塗布厚みは、それほど大きくなくとも、例えば、5μm程度の塗布厚みであっても、多孔質フィルムと電極との間に実用的に十分な強度の接着を得ることができる。
【0053】
電池を組み立てるには、上述したようにして、多孔質フィルム/電極接合体を調製した後、これを電池の電極板を兼ねる電池缶内に仕込んだ後、この電池缶中に電解液を注入し、加熱して、上記接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムの担持するゲル化剤を融解させて電解液中に溶出させ、次いで、室温まで放冷すれば、ゲル化剤が電解液をゲル化させる。即ち、ゲル電解質を形成する。他方、ゲル化剤が溶出した後の多孔質フィルムは、依然として、正負電極と接着を保持しつつ、これらを隔離し、その短絡を防止するセパレータとして機能し、かくして、ゲル電解質電池を得ることができる。
【0054】
本発明によれば、上述したようにして、多孔質フィルム/電極積層体を得た後、これを加熱して、接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムが担持する熱架橋性接着剤組成物を架橋、硬化させて、多孔質フィルム/電極接合体を得る。ここに、熱架橋性接着剤組成物の架橋、硬化は、通常、40〜60℃の範囲の温度で行わせるのが好ましい。この架橋、硬化を余りに高い温度で行わせるときは、電池素子の劣化を引き起こすおそれがある。熱架橋性接着剤組成物の架橋、硬化は、例えば、熱架橋性接着剤組成物として、多官能イソシアネートとこの多官能イソシアネートのイソシアネート基と反応し得る官能基を有する反応性ポリマーとからなるものであるときは、上記多官能イソシアネートと反応性ポリマーとの反応によって行われる。
【0055】
本発明によれば、電池の組み立てにおいて、接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムの担持するゲル化剤を融解させ、電解液中に溶出させるには、通常、電解液中の接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムを温度60〜100℃で10分から2時間程度加熱することが好ましい。上記温度が高すぎるときは、電池素子を劣化させるおそれがあり、他方、上記温度が低すぎるときは、得られる電池において、ゲル電解質が形成されないおそれがある。また、上記時間が長すぎるときも、電池素子を劣化させるおそれがあり、他方、上記時間が短すぎるときは、得られる電池において、ゲル電解質が形成されないおそれがある。このようにして、電解液中の接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムからゲル化剤を電解液中に溶出させた後、実恩まで冷却すれば、ゲル化剤は電解液をゲル化して、ゲル電解質が形成される。他方、このようにして、ゲル化剤が溶出した後の多孔質フィルムには、依然として、電極が接着されており、このような多孔質フィルムは、得られる電池において、セパレータとして機能する。
【0056】
上記電解液は、電解質塩を適宜の有機溶媒に溶解してなる溶液である。上記電解質塩としては、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム等アルカリ金属、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、第三級又は第四級アンモニウム塩等をカチオン成分とし、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、ヘキサフルオロリン酸、過塩素酸等の無機酸、カルボン酸、有機スルホン酸又はフッ素置換有機スルホン酸等の有機酸をアニオン成分とする塩を用いることができる。これらのなかでは、特に、アルカリ金属イオンをカチオン成分とする電解質塩が好ましく用いられる。
【0057】
このようなアルカリ金属イオンをカチオン成分とする電解質塩の具体例としては、例えば、過塩素酸リチウム、過塩素醗ナトリウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸アルカリ金属、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム等のテトラフルオロホウ酸アルカリ金属、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム等のへキサフルオロリン酸アルカリ金属、トリフルオロ酢酸リチウム等のトリフルオロ酢酸アルカリ金属、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等のトリフルオロメタンスルホン酸アルカリ金属を挙げることができる。
【0058】
特に、本発明に従って、リチウムイオン二次電池を得る場合には、電解質塩ととしては、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム等が好適に用いられる。
【0059】
更に、本発明において用いる上記電解質塩のための溶媒としては、上記電解質塩を溶解するものであればどのようなものでも用いることができるが、非水系の溶媒としては、エチレンカーポネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−プチロラクトン等の環状エステル類や、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類や、ジメチルカーボネート、ジエチルカーポネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状エステル類を単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0060】
また、上記電解質塩は、用いる溶媒の種類や量に応じて適宜に決定されるが、通常、得られるゲル電解質において、1〜50重量%の濃度となる量が用いられる。
【0061】
【実施例】
以下に参考例と共に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。以下において、用いた多孔質フィルムの物性は、下記のようにして評価した。また、電極と参照電池は、下記のようにして製造し、実施例で得られた電池の特性は、上記参照電池に対して以下のようにして評価した。
【0062】
(厚み)
1/10000mmシックネスゲージによる測定と多孔質フィルムの断面の10000倍走査型電子顕微鏡写真に基づいて求めた。
【0063】
(空孔率)
多孔質フィルムの単位面積S(cm2)当たりの重量W(g)、平均厚みt(cm)及び多孔質フィルムを構成する樹脂の密度d(g/cm3)から次式にて算出した。
【0064】
空孔率(%)=(1−(100W/S/t/d))×100
【0065】
参考例1
(熱架橋性接着剤組成物の調製)
アクリロニトリル 10部
メタクリル酸 5部
アクリル酸ブチル 30部
アクリル酸エチル 60部
ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル 3部
n−ドデシルメルカプタン 0.08部
過硫酸カリウム 0.3部
イオン交換水 300部
【0066】
上記配合物を常法にてエマルジョン重合に付して、反応性ポリマーの水分散液を得た。この反応性ポリマーの重量平均分子量は約85万であり、ガラス転移温度は−13℃であった。この反応性ポリマーの水分散液に10%塩酸を加えて、反応性ポリマーを沈殿させ、取り出して、十分に水洗した後、減圧乾燥させた。
【0067】
このようにして得られた反応性ポリマー100部に平均粒子径12μmのケイ砂微粉末15部を加え、これをトルエン/メチルエチルケトン(重量比75/25)混合溶剤に溶解させて、上記反応性ポリマーの20%濃度の溶液を調製した。
【0068】
次に、この反応性ポリマー溶液にその固形分100部に対して、ヘキサメチレンジイソシアネート3モル部にトリメチロールプロパン1モル部を付加させてなるブロック化ヘキサメチレンジイソシアネート2.7部を配合して、熱架橋性接着剤組成物を調製した。
【0069】
参考例2
(電極の調製)
コバルト酸リチウム(LiCoO2、平均粒径15μm)と黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデン樹脂を重量比85:10:5で混合して、これを固形分濃度15重量%となるように、N−メチル−2−ピロリドンを用いてスラリーとした。このスラリーを厚み20μmのアルミニウム箔上に塗工機にて厚み200μmに塗布し、80℃で1時間乾燥し、120℃で2時間乾燥した後、ロールプレスにて加圧して、厚み100μmの正極シートを得た。
【0070】
黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデン樹脂を重量比95:5で混合して、これを固形分濃度15重量%となるように、N−メチル−2−ピロリドンを用いてスラリーとした。このスラリーを厚み20μmの銅箔上に塗工機にて厚み200μmに塗布し、80℃で1時間乾燥し、120℃で2時間乾燥した後、ロールプレスにて加圧して、厚み100μmの負極シートを得た。
【0071】
(参照電池の作製)
上記正極シートと負極シートをそれぞれ直径15mmの円盤に打ち抜いた。また、直径20mm、厚さ25μm、空孔率50%のポリエチレン樹脂製の多孔質フィルムからなる円盤状のセパレータを用意した。上記負極、セパレータ及び正極をこの順序に積層し、これを電池容器内に収容して、電池容器内に電解液を注入した後、封口して、2016サイズのコイン型リチウムイオン二次電池を組み立てた。この電池について、0.2CmAのレートにて5回充放電を行って、放電容量を求めた。
【0072】
(電池特性の評価)
以下の実施例にて得られたコイン型リチウムイオン二次電池を0.2CmAのレートにて5回充放電を行ったときの放電容量を求め、上記参照電池の放電容量に対する百分比(%)にて電池特性を評価した。
【0073】
実施例1
(多孔質フィルム/電極接合体の作製)
上記熱架橋性接着剤組成物15重量部と前記ゲル化剤(3)85重量部とを均一に混合し、これをポリエチレン樹脂製多孔質膜(厚さ25μm、空孔率50%、平均孔径0.1μm)の表裏の両面の全面に10g/m2 の割合でそれぞれ塗布した後、乾燥し、溶剤を除去して、ポリエチレン樹脂製多孔質膜に熱架橋性接着剤組成物とゲル化剤とを担持させて接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムを得た。
【0074】
この接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムの表面に正極を沿わせると共に、裏面に負極を沿わせた後、温度80℃、圧力5kg/cm2 で5分間加熱、加圧し、正負の電極を上記多孔質フィルムに圧着し、更に、この後、温度50℃の恒温器中に7日間投入して、多官能性イソシアネートを反応性ポリマーと反応させ、架橋させて、かくして、多孔質フィルム/電極接合体を得た。
【0075】
(電池の組立てと得られた電池の評価)
アルゴン置換したグローブボックス中、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート混合溶媒(容量比1/1)に1.0モル/L濃度となるように電解質塩ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6) を溶解させて、電解液を調製した。
【0076】
上記多孔質フィルム/電極接合体を正負電極板を兼ねる2016サイズのコイン型電池用缶に仕込み、上記電解液を上記多孔質フィルムに対して100g/m2 の割合でこのコイン型電池の缶内に注入した後、電池用缶を封口し、85℃で1時間加熱して、上記多孔質フィルム/電極接合体が担持するゲル化剤を融解させ、電解液中に溶出させ、この後、室温にまで放冷して、コイン型リチウムイオン二次電池を組立てた。
【0077】
このようにして得られた電池の放電容量は、前述した参照電池の放電容量に対する百分比にて(以下、同じ)97%であった。また、電池を分解して調べた結果、多孔質フィルムと電極の接着が保持されていると共に、電解液が電解質ゲルを形成していることが確認された。
【0078】
実施例2
実施例1と同様にして、前記熱架橋性接着剤組成物10重量部と前記ゲル化剤(4)トリベンジリデンソルビトール90重量部とを均一に混合し、これをポリエチレン樹脂製多孔質膜(厚さ25μm、空孔率50%、平均孔径0.1μm)の表裏の両面の全面に15g/m2 の割合でそれぞれ塗布した後、乾燥し、溶剤を除去して、ポリエチレン樹脂製多孔質膜に熱架橋性接着剤組成物とゲル化剤とを担持させて接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムを得た。
【0079】
実施例1と同様にして、多孔質フィルム/電極接合体を得た後、これをコイン型電池用缶に仕込み、前記電解液を上記多孔質フィルムに対して90g/m2 の割合でこのコイン型電池の缶内に注入した後、電池用缶を封口し、90℃で1.5時間加熱して、上記多孔質フィルム/電極接合体が担持するゲル化剤を融解させ、電解液中に溶出させ、この後、室温にまで放冷して、コイン型リチウムイオン二次電池を組立てた。
【0080】
このようにして得られた電池の放電容量は、前述した参照電池の放電容量に対する百分比にて97%であった。また、電池を分解して調べた結果、多孔質フィルムと電極の接着が保持されていると共に、電解液が電解質ゲルを形成していることが確認された。
【0081】
実施例3
実施例1と同様にして、前記熱架橋性接着剤組成物5重量部と前記ゲル化剤(1)95重量部とを均一に混合し、これをポリエチレン樹脂製多孔質膜(厚さ25μm、空孔率50%、平均孔径0.1μm)の表裏の両面の全面に5g/m2 の割合でそれぞれ塗布した後、乾燥し、溶剤を除去して、ポリエチレン樹脂製多孔質膜に熱架橋性接着剤組成物とゲル化剤とを担持させて接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムを得た。
【0082】
実施例1と同様にして、多孔質フィルム/電極接合体を得た後、これをコイン型電池用缶に仕込み、前記電解液を上記多孔質フィルムに対して90g/m2 の割合でこのコイン型電池の缶内に注入した後、電池用缶を封口し、95℃で1時間加熱して、上記多孔質フィルム/電極接合体が担持するゲル化剤を融解させ、電解液中に溶出させ、この後、室温にまで放冷して、コイン型リチウムイオン二次電池を組立てた。
【0083】
このようにして得られた電池の放電容量は、前述した参照電池の放電容量に対する百分比にて99%であった。また、電池を分解して調べた結果、多孔質フィルムと電極の接着が保持されていると共に、電解液が電解質ゲルを形成していることが確認された。
【0084】
実施例4
実施例1と同様にして、前記熱架橋性接着剤組成物25重量部と前記ゲル化剤(2)75重量部とを均一に混合し、これをポリエチレン樹脂製多孔質膜(厚さ25μm、空孔率50%、平均孔径0.1μm)の表裏の両面の全面に10g/m2 の割合でそれぞれ塗布した後、乾燥し、溶剤を除去して、ポリエチレン樹脂製多孔質膜に熱架橋性接着剤組成物とゲル化剤とを担持させて接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムを得た。
【0085】
実施例1と同様にして、多孔質フィルム/電極接合体を得た後、これをコイン型電池用缶に仕込み、前記電解液を上記多孔質フィルムに対して70g/m2 の割合でこのコイン型電池の缶内に注入した後、電池用缶を封口し、90℃で1時間加熱して、上記多孔質フィルム/電極接合体が担持するゲル化剤を融解させ、電解液中に溶出させ、この後、室温にまで放冷して、コイン型リチウムイオン二次電池を組立てた。
【0086】
このようにして得られた電池の放電容量は、前述した参照電池の放電容量に対する百分比にて95%であった。また、電池を分解して調べた結果、多孔質フィルムと電極の接着が保持されていると共に、電解液が電解質ゲルを形成していることが確認された。
【0087】
比較例1
実施例1において、前記熱架橋性接着剤組成物90重量部と前記ゲル化剤(3)10重量部とを用いた以外は、実施例1と同様にして、コイン型リチウムイオン二次電池を組立てた。このようにして得られた電池の放電容量は、前述した参照電池の放電容量に対する百分比にて58%であった。また、電池を分解して調べた結果、多孔質フィルムと電極の接着が保持されていたが、電解液は電解質ゲルを形成していなかった。
【0088】
比較例2
実施例2において、前記熱架橋性接着剤組成物1重量部と前記ゲル化剤(4)99重量部とを用いた以外は、実施例2と同様にして、コイン型リチウムイオン二次電池を組立てた。このようにして得られた電池の放電容量は、前述した参照電池の放電容量に対する百分比にて98%であった。また、電池を分解して調べた結果、電解液が電解質ゲルを形成していることが確認されたが、多孔質フィルムは電極に接着していなかった。
【0089】
比較例3
実施例3において、前記熱架橋性接着剤組成物と前記ゲル化剤(1)とをポリエチレン樹脂製多孔質膜(厚さ25μm、空孔率50%、平均孔径0.1μm)に0.2g/m2 の割合でそれぞれ塗布した以外は、実施例3と同様にして、コイン型リチウムイオン二次電池を組立てた。このようにして得られた電池の放電容量は、前述した参照電池の放電容量に対する百分比にて98%であった。また、電池を分解して調べた結果、多孔質フィルムと電極の接着が保持されていたが、電解液は電解質ゲルを形成していなかった。
【0090】
比較例4
実施例4において、前記熱架橋性接着剤組成物と前記ゲル化剤(2)とをポリエチレン樹脂製多孔質膜(厚さ25μm、空孔率50%、平均孔径0.1μm)に50g/m2 の割合でそれぞれ塗布した以外は、実施例4と同様にして、コイン型リチウムイオン二次電池を組立てた。この電池を分解して調べた結果、多孔質フィルムと電極の接着が保持されていると共に、電解液が電解質ゲルを形成していることが確認されたが、しかし、電池の放電容量は、前述した参照電池の放電容量に対する百分比にて36%であった。
【0091】
【発明の効果】
本発明による接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムは、多官能イソシアネートとこの多官能イソシアネートのイソシアネート基と反応し得る官能基を有する反応性ポリマーとからなる熱架橋性接着剤組成物と物理ゲルを与えるゲル化剤とを多孔質フィルムに担持させてなるものである。本発明によれば、このように、熱架橋性接着剤組成物とゲル化剤とを担持させた多孔質フィルムに電極を圧着し、更に、これを加熱して、上記多官能イソシアネートを反応性ポリマーに反応させ、接着剤組成物を架橋、硬化させて、電極を多孔質フィルムに接着させて、多孔質フィルム/電極接合体を得る。
【0092】
従って、本発明の多孔質フィルム/電極接合体によれば、部材が相互にずりを起こすことがなく、電池缶中に仕込むことができ、しかも、これより得られる電池においては、電極とセパレータとの間に強固な接着を得ることができ、効率よく電池の組み立てを行うことができる。
Claims (5)
- 加熱によって架橋硬化する熱架橋性接着剤組成物とゲル化剤とを多孔質フィルムに担持させてなる接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムにおいて、熱架橋性接着剤組成物が
(a)多官能イソシアネートと
(b)(メタ)アクリル酸成分とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート成分とから選ばれる少なくとも1種の反応性モノマー成分と(メタ)アクリル酸エステル成分とを有する反応性ポリマーとからなることを特徴とする接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルム。 - 反応性ポリマーが(メタ)アクリロニトリル成分を有するものである請求項1に記載の接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルム。
- 反応性ポリマーが0〜100℃の範囲のガラス転移温度を有するものである請求項1又は2に記載の接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルム。
- 請求項1から3のいずれかに記載の接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムを電極に接着してなる多孔質フィルム/電極接合体。
- 請求項1から3のいずれかに記載の接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムに電極を積層した後、加熱し、熱架橋性接着剤組成物を架橋硬化させて、多孔質フィルム/電極接合体を得、これを電池缶内に仕込んだ後、この電池缶中に電解液を注入し、加熱して、上記接着剤/ゲル化剤担持多孔質フィルムの担持するゲル化剤を融解させ、電解液中に溶出させた後、冷却して、電解液をゲル化させると共に、ゲル化剤が溶出した後の多孔質フィルムをセパレータとして有するゲル電解質電池を得ることを特徴とする電池の製造方法。
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