JP4150882B2 - シアヌル酸誘導体の製造方法 - Google Patents
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- Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、電線ワニス、塩化ビニル樹脂の安定剤、塗料用原料、難燃剤などの分野に有用で、高い耐熱性と難燃性を持つトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート及びその関連化合物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シアヌル酸とアルキレンオキシドからトリス(2−ヒドロキシアルキル)イソシアヌレート等を製造する方法としては、特開昭56−81571号公報では、グリコールや芳香族置換低級アルコール系、メチルエチルケトンやn−プロピルケトン等のケトン類、テトラヒドロフランやジオキサン等のエーテル類の如き反応媒体にシアヌル酸と厳密に秤量されたエチレンオキシドを、水酸化アルカリ、アミン又は4級アンモニウム塩を触媒として付加反応させる製造方法が開示されている。
【0003】
また、ジャーナル・オブ・ザ・オーガニックケミストリー(28巻、85〜89頁、1963年)には、ジアルキルホルムアミド又はジアルキルアセトアミド中で加圧下又は常圧下にシアヌル酸とアルキレンオキシドを反応させる方法が開示されている。
【0004】
特公昭44−22497号公報には、シアヌル酸とアルキレンオキサイドとをアルキレンハロゲン化ヒドリンの存在下で反応させる方法が開示されている。
【0005】
特開平10−158252号公報には、シアヌル酸とアルキレンオキサイドとを、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン又は第4級ホスホニウム塩を触媒として溶媒中で反応させる方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開昭56−81571号公報では、反応中に溶媒の一部が塩基性物質に変化し易く生成物の一部が分解して不純物を副生し、精製に困難を生ずるという問題がある。また、シアヌル酸に対するアルキレンオキシド(特に、エチレンオキシド)を当量以上に添加すると急激に収率が低下するという問題がある。
【0007】
また、上記ジャーナル・オブ・ザ・オーガニックケミストリーに記載の方法では、溶媒自身が低活性の触媒作用を呈する為に通常は他の触媒(例えば塩基性触媒)の存在は必要としないが、N,N’−ジアルキルホルムアミド類を溶媒にする場合、又はジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドにベンゼンやトルエン等を混合して使用する場合には、シアヌル酸とアルキレンオキシドとの反応速度が著しく低下する。
【0008】
この様に従来の塩基性触媒ではシアヌル酸に対するアルキレンオキシドの添加量が当量比を越えると分解反応が急激に進む事と、溶媒乾固(溶媒の除去)の加熱状態により若干の分解が起こり、溶媒乾固して得られた製品の純度は不充分である。そのために、それらの物は再結晶法等により精製して製品化する。しかし、再結晶は結晶性の低い物質には適用し難い事や、再結晶法自体が収率の低下、溶媒の回収、溶解・冷却・濾過・乾燥という非常に長い工程となる欠点が有る。
【0009】
本願発明はシアヌル酸とエポキシ化合物とを反応してトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート及びその関連化合物であるシアヌル酸誘導体を製造する方法に関して、第4級ホスホニウム塩と塩酸を存在させる事により、それらの相互作用により効率的に製造しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願発明は第1観点として、シアヌル酸と式(1):
【0011】
【化3】
【0012】
(ただし、R1及びR2は、水素原子、アルキル基又は芳香族基を示す。)で示されるエポキシ化合物とを、第4級ホスホニウム塩と塩酸の存在下に溶媒中で反応させることを特徴とする式(2):
【0013】
【化4】
【0014】
で示されるシアヌル酸誘導体の製造方法、
第2観点として、式(1)で表されるエポキシ化合物が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、α−ブチレンオキシド、β−ブチレンオキシド、又はスチレンオキシドである第1観点に記載の製造方法、
第3観点として、塩酸の一部又は全部が式(1)のエポキシ化合物と反応して生成するクロルヒドリン化合物として存在する第1観点又は第2観点に記載の製造方法、
第4観点として、第4級ホスホニウム塩を、シアヌル酸に対して0.03〜10重量%の割合で存在させる第1観点乃至第3観点のいずれか一つに記載の製造方法、
第5観点として、塩酸をシアヌル酸に対して0.1〜10重量%の割合で存在させる第1観点乃至第4観点のいずれか一つに記載の製造方法、及び
第6観点として、第4級ホスホニウム塩が、ハロゲン化エチルトリフェニルホスホニウムである第1観点乃至第5観点のいずれか一つに記載の製造方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本願発明に使用するシアヌル酸(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオール、C3H3N3O3)は、互変異性体であるイソシアヌル酸と平衡関係にあり、本願発明ではシアヌル酸、イソシアヌル酸又は両者の混合物を使用することが出来る。
【0016】
本願発明に使用する式(1)で表されるエポキシ化合物は、R1及びR2は水素原子、アルキル基又は芳香族基である。アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素数1〜8のアルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基である。芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、ピリジニル基等が挙げられる。
【0017】
更に上記R1及びR2は、水素原子、メチル基及びエチル基で有ることが好ましい。上記の式(1)で表されるエポキシ化合物の好ましい例示化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド(即ち、メチルオキシラン)、α−ブチレンオキシド(即ち、1,2−エポキシブタン)、β−ブチレンオキシド(即ち、2,3−ジメチルオキシラン)、スチレンオキシドが挙げられ、これらはそれぞれ単独でシアヌル酸との反応に使用するものである。
【0018】
上記エポキシ化合物はシアヌル酸の1.00モルに対して、3.00〜3.50モル、好ましくは3.05〜3.15モルの比率で用いる。
【0019】
シアヌル酸1.00モルに対して、当量比でエポキシ化合物を反応させる場合は3.00モルのエポキシ化合物を必要とする。
【0020】
本願発明に使用する触媒は、R3R4R5R6P+Y-で表される第4級ホスホニウム塩を用いることが出来る。
【0021】
R3R4R5R6P+Y-で表される第4級ホスホニウム塩において、R3、R4、R5及びR6は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基又はアラルキル基であるが、好ましくはR3、R4、R5及びR6の4つの有機基の内で3つの有機基が炭素数1〜18のアリール基又はアラルキル基であり、例えばフェニル基やトシル基等の置換されたフェニル基が挙げられる。そして4つの有機基の内の残り一つは炭素数1〜18のアルキル基が挙げられる。
【0022】
また、陰イオン(Y-)は、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨウ素イオン(I-)等のハロゲンイオンや、カルボキシラート(−COO-)、スルホナート(−SO3 -)、アルコラート(−O-)等の酸基を挙げることができる。第4級ホスホニウム塩は、例えばハロゲン化テトラn−ブチルホスホニウム、ハロゲン化テトラn−プロピルホスホニウム等のハロゲン化テトラアルキルホスホニウム、ハロゲン化ベンジルトリエチルホスホニウム等のハロゲン化ベンジルトリアルキルホスホニウム、ハロゲン化フェニルトリエチルホスホニウム等のハロゲン化フェニルトリアルキルホスホニウム、ハロゲン化メチルトリフェニルホスホニウム、ハロゲン化エチルトリフェニルホスホニウム等のハロゲン化モノアルキルトリフェニルホスホニウム、ハロゲン化ベンジルトリフェニルホスホニウム、ハロゲン化テトラフェニルホスホニウム、ハロゲン化モノアリールトリトリルホスホニウム、或いはハロゲン化モノアルキルトリトリルホスホニウム(ハロゲン原子は塩素原子又は臭素原子)が挙げられる。
【0023】
特にハロゲン化エチルトリフェニルホスホニウム等のハロゲン化モノアルキルトリフェニルホスホニウムが好ましい。
【0024】
上記の第4級ホスホニウム塩は、シアヌル酸とエポキシ化合物の反応における触媒として作用する。第4級ホスホニウム塩は、シアヌル酸に対して0.03〜10重量%の割合で存在させることが好ましい。0.03重量%未満では反応速度の促進が期待できず、また10重量%を越えて添加してもそれ以上の効果は期待できない。
【0025】
本願発明ではシアヌル酸とエポキシ化合物からトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート及びその関連化合物である式(2)で示されるシアヌル酸誘導体を製造する際に、第4級ホスホニウム塩と共に塩酸を存在させて反応を行う事により効率的にトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート及びその関連化合物である式(2)で示されるシアヌル酸誘導体が得られる。
【0026】
塩酸は、シアヌル酸とエポキシ化合物に第4級ホスホニウム塩と共に反応開始時点から添加して置くことが好ましい。
【0027】
塩酸の添加量は、シアヌル酸に対して0.1〜10重量%、好ましくは1.0〜5.0重量%の割合で存在させることができる。
【0028】
シアヌル酸とエポキシ化合物からトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート及びその関連化合物を製造する際に、添加された塩酸は生成したトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート及びその関連化合物の分解を抑制する作用がある。この際、添加された塩酸は塩酸自体で作用を発揮することも考えられるが、塩酸がエポキシ化合物と反応してクロルヒドリン化合物に変化して作用することも考えられる。添加した塩酸或いは、その塩酸がエポキシ化合物と反応して生成したクロルヒドリン化合物は、第4級ホスホニウム塩との相乗効果により効率的に純度の高いトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート及びその関連化合物を製造することが出来る。
【0029】
塩酸は市販の35%塩酸水溶液を直接に添加して行われる。
本願発明において塩酸の代わりに96%硫酸、希硫酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸、塩化亜鉛等では分解抑制効果がない。
【0030】
シアヌル酸は殆どの有機溶媒に不溶乃至僅かに溶解する為に、円滑に反応を進行させるため種々の反応媒体が提案されているが、本件発明に用いられる溶媒としては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、脂肪族ニトリル、モルホリン、ジメチルスルホキシド、水、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、エーテル、テトラヒドロフラン、アルキレンハライド、ジアルキルカーボネート等がある。
【0031】
上記のシアヌル酸とエポキシ化合物との反応は、オートクレーブ等の反応容器を用い、1気圧〜10気圧の圧力下で、40〜150℃の温度で、4〜50時間で行うことが出来る。
【0032】
本願発明において、シアヌル酸とエチレンオキシドを、上記触媒と塩酸の存在下に反応させることにより、式(3):
【0033】
【化5】
【0034】
で表されるトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートが高純度・高収率で生成する。
【0035】
シアヌル酸とプロピレンオキシドを、上記触媒と塩酸の存在下に反応させることにより、式(4):
【0036】
【化6】
【0037】
で表されるトリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートが高純度・高収率で生成する。
【0038】
シアヌル酸とα−ブチレンオキシドを、上記触媒と塩酸の存在下に反応させることにより、式(5):
【0039】
【化7】
【0040】
で表されるトリス(2−ヒドロキシブチル)イソシアヌレートが高純度・高収率で生成する。
【0041】
シアヌル酸とβ−ブチレンオキシドを、上記触媒と塩酸の存在下に反応させることにより、式(6):
【0042】
【化8】
【0043】
で表されるトリス(α−メチル−β−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートが高純度・高収率で生成する。
【0044】
また、シアヌル酸とスチレンオキシドを、上記触媒と塩酸の存在下に反応させることにより、式(7):
【0045】
【化9】
【0046】
で示されるトリス(2−フェニル−2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートが高純度・高収率で生成する。
【0047】
【実施例】
実施例1
オートクレーブにシアヌール酸129g(1.0モル)、プロピレンオキシド177g(3.05モル)、メチルセロソルブ129g、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド1.29g、35%塩酸1.29gを添加後に窒素置換を行い撹拌しながら加熱を行い、120℃に達してから20時間の反応を自生蒸気圧下で行った。反応完結後、温度計を付けたナスフラスコに反応物を移し、バキュームエバポレーターにて溶媒を留去した。最終的には110℃/5torr下で60分間、溶媒を留去して、トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート302gを得た。
【0048】
得られた生成物は高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等の分析結果により、トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートとして同定された。収率は99.7%であった。
【0049】
以下同様に原料とその使用量を示し反応条件を変えて、実施例、参考例、及び比較例を実施してその結果を表1〜5に記載した。使用した原料は以下に記載した。
CA:シアヌル酸
PO:プロピレンオキシド
BO:ブチレンオキシド
EO:エチレンオキシド
TEP:エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド
HCl:塩酸
CH:プロピレンクロロヒドリン
HS:96%硫酸
AA:酢酸
PTS:パラトルエンスルホン酸
ZC:塩化亜鉛
MS:メチルセロソルブ(溶媒)
生成物(1):トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート
生成物(2):トリス(2−ヒドロキシブチル)イソシアヌレート
生成物(3):トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート
また、表中の(−−)はそれらの成分を添加しない事を示す。
【0050】
純度の測定は高速液体クロマトグラフィー内標分析法(HPLC−IS法)に基づき行った。即ち、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用し、検出器として島津社製、商品名SPD−10Avpを用い、検出波長210nmで行った。また使用カラムはGLサイエンス社製、商品名Inertsil ODS−2を用い、カラム温度は40℃であった。そして溶離液はメタノール:水=1:6であり、流量が1ml/分で行った。
【0051】
内標液としてレゾルシン0.1gをメタノールにて500mlに溶解、希釈して用いた。
【0052】
実施例1の純度測定は、まず再結晶を数十回繰り返したトリス−(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート0.2gをメタノールにて100mlに溶解、希釈し、この標品液10mlと内標液10mlを併せメタノールにて50mlに希釈した。HPLCに10μL注入し、これを検量線とした。実施例1で得られたトリス−(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート0.2gをメタノールで100mlに溶解、希釈し、この分析液10mlと内標液10mlを併せメタノールで50mlに希釈した。HPLCに10μL注入し、その結果から検量線を用い純度を計算した。
【0053】
また、標品液と分析液を対応する実施例及び比較例の分析液に変えて同様に純度測定を行った。
【0054】
また、分解物の測定もHPLCによって行い、「なし」とは210nmの検出波長で検出されないことを示し、「有り」とは210nmの検出波長で検出されたことを示す。
【0055】
【表1】
表1
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
例 実施例1 実施例2 実施例3 実施例4 実施例5
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
CA 129g 129g 129g 129g 129g
PO 177g 203g −− −− −−
BO −− −− 220g 252g 252g
EO −− −− −− −− −−
MS 129g 129g 129g 129g 129g
TEP 1.29g 1.29g 1.29g 1.29g 1.29g
HCl 1.29g 1.29g 1.29g 1.29g 1.29g
CH −− −− −− −− −−
HS −− −− −− −− −−
AA −− −− −− −− −−
PTS −− −− −− −− −−
ZC −− −− −− −− −−
反応温度℃ 120℃ 120℃ 120℃ 120℃ 120℃
反応時間H 20H 20H 20H 20H 48H
生成物 (1) (1) (2) (2) (2)
収率% 99.7% 99.7% 99.5% 99.5% 99.0%
純度 95.0% 95.0% 95.0% 95.0% 95.0%
分解物 なし なし なし なし なし
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0056】
【表2】
表2
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
例 実施例6 実施例7 実施例8 実施例9 実施例10
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
CA 129g 129g 129g 129g 129g
PO −− −− 203g −− −−
BO 252g 252g −− −− −−
EO −− −− −− 135.5g 145.2g
MS 129g 129g 129g 129g 129g
TEP 1.29g 1.29g 1.29g 1.29g 1.29g
HCl 6.45g 12.9g −− 1.29g 1.29g
CH −− −− 1.29g −− −−
HS −− −− −− −− −−
AA −− −− −− −− −−
PTS −− −− −− −− −−
ZC −− −− −− −− −−
反応温度℃ 120℃ 120℃ 120℃ 120℃ 120℃
反応時間H 48H 48H 20H 20H 20H
生成物 (2) (2) (1) (3) (3)
収率% 99.3% 99.5% 95.0% 99.5% 99.5%
純度 95.0% 95.0% 95.0% 95.0% 95.0%
分解物 なし なし なし なし なし
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0057】
【表3】
表3
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
例 参考例1 参考例2 参考例3 参考例4 参考例5
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
CA 129g 129g 129g 129g 129g
PO 177g 203g −− −− −−
BO −− −− 220g 252g 252g
EO −− −− −− −− −−
MS 129g 129g 129g 129g 129g
TEP 1.29g 1.29g 1.29g 1.29g 1.29g
HCl −− −− −− −− −−
CH −− −− −− −− −−
HS −− −− −− −− −−
AA −− −− −− −− −−
PTS −− −− −− −− −−
ZC −− −− −− −− −−
反応温度℃ 120℃ 120℃ 120℃ 120℃ 120℃
反応時間H 20H 20H 20H 20H 48H
生成物 (1) (1) (2) (2) (2)
収率% 90.2% 62.1% 89.5% 68.5% 4.0%
純度 90% 60% 90% 65% 4%
分解物 有り 有り 有り 有り 有り
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0058】
【表4】
表4
――――――――――――――――――――――――――――――――――
例 参考例6 参考例7 比較例1 比較例2 比較例3
CA 129g 129g 129g 129g 129g
PO −− −− 203g 203g 203g
BO −− −− −− −− −−
EO 135.5g 145.2g −− −− −−
MS 129g 129g 129g 129g 129g
TEP 1.29g 1.29g 1.29g 1.29g 1.29g
HCl なし なし −− −− −−
CH −− −− −− −− −−
HS −− −− 1.29g −− −−
AA −− −− −− 1.29g −−
PTS −− −− −− −− 1.29g
ZC −− −− −− −− −−
反応温度℃ 120℃ 120℃ 120℃ 120℃ 120℃
反応時間H 20H 20H 20H 20H 20H
生成物 (3) (3) (1) (1) (1)
収率% 90% 20% 0% 55.4% 71.7%
純度 90% 20% −− 50% 70%
分解物 有り 有り −− 有り 有り
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0059】
【表5】
表5
――――――――――――――――――――――――――――――
例 比較例4 比較例5 比較例6 比較例7
――――――――――――――――――――――――――――――
CA 129g 129g 129g 129g
PO 203g 180g 180g 180g
BO −− −− −− −−
EO −− −− −− −−
MS 129g −− 129g 129g
TEP 1.29g −− −− −−
HCl −− −− −− −−
CH −− 129g 1.29g 1.29g
HS −− −− −− −−
AA −− −− −− −−
PTS −− −− −− −−
ZC −− −− −− −−
反応温度℃ 120℃ 120℃ 120℃ 120℃
反応時間H 20H 5H 5H 24H
生成物 (1) (1) (1) (1)
収率% 79.9% 0.4% 0.2% 2.2%
純度 80% −− −− −−
分解物 有り −− −− −−
――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1〜4では、参考例1〜4との対比から、エポキシ化合物と塩酸が共存する系では、シアヌル酸に対して当量以上のエポキシ化合物を反応系に添加しても得られたトリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート及びトリス(2−ヒドロキシブチル)イソシアヌレートの分解を抑制する事が可能である事が分かる。また、実施例5と参考例5との対比から、実施例5のエポキシ化合物と塩酸が共存する系では、長時間の反応を行っても生成物の分解が発生しないことが分かる。即ち、シアヌル酸とエポキシ化合物に第4級ホスホニウム塩の存在下で反応させる場合(参考例)に比べて、本願発明の第4級ホスホニウム塩と塩酸を併存させておくことにより反応のコントロールが容易であるばかりか、反応中間体を削減、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート及びその関連化合物の分解抑制ができ製品の純度が向上する。
【0060】
また、比較例1〜4に示される様に、第4級ホスホニウム塩が存在していても塩酸以外の酸性物質では収率が低く、そして比較例5〜7に示される様に、プロピレンオキシドにプロピレンクロロヒドリンを共存させプロピレンクロロヒドリンを溶媒自体に使用した場合や、プロピレンオキシドの一部が塩酸添加によってプロピレンクロロヒドリンに変化した場合でも、第4級ホスホニウム塩が存在しなければほとんど反応が進行しない。
【0061】
参考例1〜5の方法では反応が進行し、未反応物がなくなり酸価がほぼゼロに近づくと生成物の分解による塩基性分解物(アミン系化合物)が発生する。この塩基性分解物の混入を避けるために酸価がゼロに近づく前(酸価=0.005付近)で反応を止め、あえて未反応物(例えば未反応物とはシアヌル酸の3個の水素の少なくとも一つが残っている状態である。)を少し残す方法で生成物を得ていた。
【0062】
ところが、本願発明では生成物の酸価は検出限界以下である。(0.1NのKOH水溶液で中和滴定を行い、0.001モル/kg以下を検出限界とした。)本願発明は酸価の値が検出限界以下となる終点まで反応を完結し、場合によっては終点を越え加熱を行っても塩基性分解物の発生がない。これは塩酸酸性下又は塩酸とアルキレンオキシドが反応して生ずるアルキレンクロルヒドリンの存在によって、この塩基性分解物の発生を抑制できるものである。
【0063】
本願発明は第4級ホスホニウム塩の触媒作用により反応を促進し99%以上の高収率を達成し、且つ反応終点に達しても塩酸乃至アルキレンクロルヒドリンの存在によって塩基性分解物の発生がないため純度も95%以上である。
【0064】
この様に第4級ホスホニウム塩と、塩酸又はアルキレンクロルヒドリンとが両者同時に存在して互いに機能を発揮し相乗効果をもたらし、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート及びその関連化合物の製造が収率良く純度の高いものとすることを見出した。
【0065】
そして、第4級ホスホニウム塩と組み合わせる事が可能な成分は、硫酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸等の酸では効果がなく、第4級ホスホニウム塩と塩酸又はその塩酸とエポキシ化合物が反応して生ずるアルキレンクロルヒドリンによってのみ相乗効果が得られるものである。
【0066】
この様に本願発明は、反応の終点の手前で反応を止める必要がないので反応操作が簡単である。また、酸価がほぼゼロに近いため未反応物が残留することがなく、しかも生成物の分解による塩基性分解物の混入もないので、得られる生成物の純度が高いため、従来品はガラス状の半固化体でしかなかった性状のものが、完全な固化体として取り扱えるため、生成物の回収という点で工程上、有利である。
【0067】
【発明の効果】
従来は分解を抑制するためにアルキレンオキシドの添加量を精度良くコントロールする必要があり、場合によっては反応の途中でサンプリングが必要であり、分解させないために反応が完結する手前で終了させ、それによって多量の反応中間体が残存していた。
【0068】
本願発明は、シアヌル酸とエポキシ化合物とを、第4級ホスホニウム塩と塩酸の存在下に溶媒中で反応させることによるトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート及びその関連化合物の製造方法である。
【0069】
本願発明では塩酸を共存させておくことにより、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート及びその関連化合物の分解を抑制することができることから、シアヌル酸に対して当量以上のエポキシ化合物を反応系に添加する事が可能であり、その結果、反応中間体を削減でき製品の純度が向上する。
【0070】
従って、本願発明で得られた製品は高純度であることから、溶媒を除去した製品は容易に結晶化できることが分かり、従来はガラス状の半固化状態であった製品が、本件製法によれば精製工程を追加しなくても得られた製品は粉体として扱える。
【0071】
本発明の製造工程では生成物のトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート及びその関連化合物は、143℃で70時間に及ぶ反応でも分解しない熱安定性を有している。
Claims (6)
- 式(1)で表されるエポキシ化合物が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、α−ブチレンオキシド、β−ブチレンオキシド、又はスチレンオキシドである請求項1に記載の製造方法。
- 塩酸の一部又は全部が式(1)のエポキシ化合物と反応して生成するクロルヒドリン化合物として存在する請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
- 第4級ホスホニウム塩を、シアヌル酸に対して0.03〜10重量%の割合で存在させる請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 塩酸をシアヌル酸に対して0.1〜10重量%の割合で存在させる請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 第4級ホスホニウム塩が、ハロゲン化エチルトリフェニルホスホニウムである請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の製造方法。
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