JP4149251B2 - 水素貯蔵合金利用の冷熱発生方法及びその装置 - Google Patents

水素貯蔵合金利用の冷熱発生方法及びその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素貯蔵合金利用の冷熱発生方法及びその装置に関し、環境保全及び省エネの効果を得ることができる水素貯蔵合金利用のケミカル又は吸着ヒートポンプと圧縮式又は吸収式ヒートポンプとを組み合わせた冷凍・冷蔵方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の水素貯蔵合金(MH)を利用した冷凍・冷蔵装置は、水素を吸蔵する機能のある金属(MH)が多量の水素ガスを吸着及び放出する際に化学反応熱つまり解離熱及び吸着熱を生ずる特性を利用し、排熱を含む熱を有用な冷熱に変換するケミカル又は吸着ヒートポンプである。
【0003】
このようなMH冷凍サイクルを利用した従来のMH冷凍装置(例えば、水素吸蔵合金 第632頁 1998年4月6日 株式会社エス・ティー・エス 発行)の基本構造を図9に示す。これは、特性が異なる2種類の水素貯蔵合金M1 H,M2 H、つまり平衡圧−組成−温度(P−C−T)特性の異なる2種類の水素貯蔵合金M1 H,M2 H又はP−C−T特性が温度によつて異なる同一種類の水素貯蔵合金をそれぞれ水素吸着合金収納高温タンク2a,3a(以下「高温MHタンク」に省略。)及び水素吸着合金収納低温タンク2b,3b(以下「低温MHタンク」に省略。)に収容させ、1対の高温MHタンク2a,3a及び低温MHタンク2b,3bを、MH冷凍サイクルの再生工程と冷凍工程とに合わせて交互作動が可能としたものである。
【0004】
MH冷凍サイクルの再生工程では、低温MHタンク2b又は3b内の水素吸着合金M2 Hに水素を吸着させ、その際に生じた吸着反応熱をブライン6’を介して冷熱源である冷却水4bにより除去させる。また、冷凍工程では、高温MHタンク2a又は3a内の水素吸着合金M1 Hによる水素吸着反応熱を冷熱源である冷却水4aにより除去させながら、低温MHタンク2b又は3b内の低温段水素貯蔵合金M2 Hから水素を放出させ、水素放出の際に生じた水素解離反応熱である冷熱をブライン6’を介して低温環境部5に供給して、低温環境部5内で冷蔵と冷凍が可能となる。
【0005】
このようなMH冷凍サイクルの再生工程及び冷凍工程は、1対の高温MHタンク2a/低温MHタンク2bともう1対の高温MHタンク3a/低温MHタンク3bを位相をずらせて同期して交互作動させることにより行われる。
【0006】
高温MHタンク2a又は3a及び低温MHタンク2b又は3bにおける再生工程は、高温熱源1を使用して図9の上半部に示すように行われる。先ず、一方の高温MHタンク2a内の高温段水素貯蔵合金M1 Hを多量の水素を吸着ないし吸蔵させている状態で、一旦、高温熱源1によつて加熱されて温度TH まで昇温させ、引き続き、高温熱源1から水素解離反応に必要な熱を継続的に供給して水素を放出させる。このようにして放出される水素は、少なくとも数気圧の比較的高圧にある。
【0007】
前記冷凍工程と再生工程を1組の高温MHタンク2a/低温MHタンク2bの場合において説明する。低温MHタンク2b内に収容されている水素貯蔵合金M2 Hは、温度TH よりも低く、基本的には室温よりも若干高い温度TM 、かつ、高温MHタンク2a内の水素圧よりもかなり低い圧力、例えば1気圧近辺において、水素吸蔵能力が与えられる温度TM 及び水素圧下で水素吸蔵飽和濃度よりかなり低い飢餓状態にある。この低温MHタンク2b内は、ブライン流路6を介して冷熱源である冷却水4bによつて冷却される。
【0008】
従つて、温度TM における低温MHタンク2b内の水素貯蔵合金M2 Hは、高温MHタンク2aから放出されて圧力差によつて流れ込む水素を容易に吸蔵する。その際、低温MHタンク2b内の水素貯蔵合金M2 Hからの水素吸着反応熱は、ブライン6’を介して冷却水4bにより速やかに除去され、低温MHタンク2b内は温度TM に維持される。
【0009】
このようにして、低温MHタンク2b内の水素貯蔵合金M2 Hに十分な量の水素を吸蔵させてから、1組の高温MHタンク2a/低温MHタンク2bの再生工程を終え、図9の下半部に示す様に再生工程から冷凍工程に切り換える。
【0010】
つまり、一旦、高温MHタンク2aと低温MHタンク2bとの間の水素流路を閉じると共に高温熱源1を冷却水4aに切換え、冷却水4aにより高温MHタンク2a内を温度TMOまで下げ、その中の水素貯蔵合金M1 HをP−C−T特性により水素吸着能力を有する飢餓状態にさせる。これにより、高温MHタンク2a内の水素圧が低温MHタンク2b内の水素圧よりも低くなる。なお、この高温MHタンク2a内の温度TMOは、冷却水4bにより冷却された低温MHタンク2b内の温度TM と同一にすることもできる。
【0011】
この状態において、低温MHタンク2bは、一旦、冷却水4bを止め、高温MHタンク2aとの間の水素流路を開ける。これにより、低温MHタンク2b内の水素貯蔵合金M2 Hが吸蔵の水素を放出し始め、放出される水素は圧力差により高温MHタンク2a内の飢餓状態の水素貯蔵合金M1 Hに吸蔵される。その際、低温MHタンク2b内の水素貯蔵合金M2 Hは、水素解離反応熱により自らの熱を奪つて吸熱し、その中の温度は温度TM よりも低い温度TL まで下がつてから、引き続き、ブライン6’を介して低温環境部5から吸熱し、低温環境部5に冷蔵を含む冷凍出力が可能になる。
【0012】
同時に、高温MHタンク2a内の水素貯蔵合金M1 Hは低温MHタンク2bから流れ込む水素を吸着し、吸着反応熱が発生する。高温MHタンク2a内の温度は、吸着反応熱が冷却水4aにより除去されることにより、温度TMOに維持される。
【0013】
このようにして、低温MHタンク2b内の水素貯蔵合金M2 Hの水素解離工程を終えたら、冷却水4aを高温熱源1に再度切換え、高温MHタンク2aは高温熱源1から加熱を受けることにより、再び水素放出が可能な状態になる。かくして、冷凍工程を終え、その時点で1つのMH冷凍サイクルを完了し、次のMH冷凍サイクルの繰り返しが可能になる。
【0014】
つまり、図9の下半部に示すように1対の高温MHタンク3a/低温MHタンク3bの冷凍工程−再生工程を、もう一対の高温MHタンク2a/低温MHタンク2bの再生工程−冷凍工程の順序にあわせて同期で交互に行わせる。
【0015】
このように、一対の高温MHタンク2a(,3a)/低温MHタンク2b(,3b)を同期させながら交互に作動させることにより、低温環境部5への連続的な冷凍出力が可能になり、低温環境部5内において冷蔵を含む冷凍を行うことができる。なお、高温MHタンク2a,3aに対する高温熱源1又は冷却水4aの切り替えは、通常、ブラインの循環装置59を介して行われ、また、低温MHタンク2b,3bに対する低温環境部5又は冷却水4bの切り替えは、通常、ブライン流路6の切り替えによつて行われる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
MH冷凍サイクルに用いられる冷媒ないし作動流体は水素である。水素はクリーンな燃料である一方、環境に優しい自然冷媒でもあるため、脱フロンの役割が大いに期待される。しかし、現段階では、冷凍の目的に開発された水素貯蔵合金は期待されるP−C−T特性を満たすものが少なく、エネルギー転換への応用には次のような課題が残されている。
【0017】
先ず、図9に示す従来のMH冷凍装置だけを用いて低温環境部5に効率的でより低温の冷熱を提供することが困難である。
一方、低温MHタンク2b,3b内の水素貯蔵合金M2 Hによる冷凍工程においては、低温MHタンク2b,3b内が、その中に収容されている水素貯蔵合金M2 HのP−C−T特性により真空の水素圧雰囲気に曝されることが多く、これに起因して、大気からの空気が低温MHタンク2b,3b内に侵入する恐れがある。しかも、低温MHタンク2b,3b内が低温になるほど水素圧が低下し、上述した真空の水素圧になる問題が顕著になる。
【0018】
また、低温MHタンク2b,3b内が低温になるほど、冷凍工程における温度降下及び温度回復に要する時間が長くなり、真の冷凍出力が可能な時間が相対的に短くなる。同時に、水素貯蔵合金M2 Hからの水素放出速度が遅くなり、限られた対数の高温MHタンク/低温MHタンクでは高温熱源1から供給される排熱を含む熱の利用効率の面で問題がある。
【0019】
また、低温になるほど、同一種類の水素貯蔵合金に関して利用されるP−C−T特性のプラトーの幅が大きくなる。これにより、その水素の吸・脱着と温度変化に伴う体積膨張・収縮が激しくなり、これが水素貯蔵合金の微粉化を促進する原因になり得る。
【0020】
また、低温MHタンク2b,3b内の水素貯蔵合金M2 Hからの水素解離反応熱は、熱損失を考慮しなければ、冷凍工程における低温MHタンク2b,3bとその中の水素貯蔵合金M2 Hとが比較的高い温度TM から低い温度TL までの温度変化に必要な全顕熱量と、温度TL 下で低温環境部5に供給可能な冷熱量つまり冷凍出力との和である。そして、顕熱量は、温度TM と温度TL との差TM −TL に比例するため、冷凍工程における低温MHタンク2b,3b内の温度TL が低いほど、顕熱量が大きくなり、低温環境部5への冷凍出力が相対的に少なくなる。要するに、低温MHタンク2b,3bに低温を与えるほど、有効冷凍出力が低下してしまう。
【0021】
従つて、水の氷点温度より大きく離れた低温の温度TL 下での冷凍出力が必要な場合、従来のMH冷凍装置のみでは、高温熱源1から供給される排熱を含む熱の有効利用率又は冷凍出力の向上に限界があることになる。
【0022】
更に、再生工程において、冷却水4bのみの使用により水素吸着合金M2 Hに生じた吸着反応熱を除去させるので、低温MHタンク2b,3b内の水素吸着合金M2 Hに短時間で期待される水素吸蔵濃度まで水素を急増させることが困難であり、再生工程に時間を要して非能率的である。
【0023】
本発明は、上述の技術的課題の解決、低温環境部5に省エネで効率的に冷熱を提供し、MH冷凍装置に対し、環境に優しい冷媒(二酸化炭素、アンモニア、炭化水素等の自然冷媒)を低温冷媒に用いる冷凍装置又は冷凍機を組み合わせる水素貯蔵合金利用の冷熱発生方法及びその装置を提供することをその目的としている。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような従来の技術的課題に鑑みてなされたものであり、その構成は次の通りである。
本発明の請求項1は、高温段の水素駆動用合金収納高温タンク(2a(又は3a))及び低温段の冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))を1組とするMH冷凍装置(I)が備えられ、該水素駆動用合金収納高温タンク(2a(又は3a))を加熱及び冷却させて、その中の高温段水素貯蔵合金(M1 H)とこれに対応する冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)との間で水素の授受を行わせ、その中から冷熱を取出し、低温環境部(5)に冷熱を与えるように冷凍工程を行う水素貯蔵合金利用の冷熱発生方法であつて、
該冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内に、水素貯蔵合金用ブライン冷却装置(30)に付属する該冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))の低温段水素貯蔵合金(M2 H)との間で熱交換を行う低温MHタンク/ブライン熱交換器(37)を内装し、
その中のブラインを循環させ、
前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)の再生過程において、
このブラインがブライン/冷却水熱交換器(32)により冷却されてから、前記低温MHタンク/ブライン熱交換器(37)を介して前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を冷却し、引き続き、冷凍機(31)により、前記低温MHタンク/ブライン熱交換器(37)を介して前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を十分に冷却し、低温段水素貯蔵合金(M2 H)に水素を十分に吸着させ、
前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)の冷凍過程において
該低温段水素貯蔵合金(M2 H)の解離反応による冷熱を前記低温MHタンク/ブライン熱交換器(37)を介してブライン/低温環境部熱交換器(22)により、低温環境部(5)に与えることを特徴とする水素貯蔵合金利用の冷熱発生方法である。
本発明の請求項は、高温段の水素駆動用合金収納高温タンク(2a(又は3a))及び低温段の冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))を1組とするMH冷凍装置(I)が備えられ、該水素駆動用合金収納高温タンク(2a(又は3a))を加熱及び冷却させて、その中の高温段水素貯蔵合金(M1 H)とこれに対応する冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)との間で水素の授受を行わせ、その中から冷熱を取出し、低温環境部(5)に冷熱を与えるように冷凍工程を行う水素貯蔵合金利用の冷熱発生装置であつて、
該冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内に、水素貯蔵合金用ブライン冷却装置(30)に付属する該冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))の低温段水素貯蔵合金(M2 H)との間で熱交換を行う低温MHタンク/ブライン熱交換器(37)を内装し、
その中のブラインを循環させ、
前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)の再生過程において、
このブラインがブライン/冷却水熱交換器(32)により冷却されてから、前記低温MHタンク/ブライン熱交換器(37)を介して前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を冷却し、引き続き、冷凍機(31)により、前記低温MHタンク/ブライン熱交換器(37)を介して前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を十分に冷却し、低温段水素貯蔵合金(M2 H)に水素を十分に吸着させ、
前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)の冷凍過程において、
該低温段水素貯蔵合金(M2 H)の解離反応による冷熱を前記低温MHタンク/ブライン熱交換器(37)を介してブライン/低温環境部熱交換器(22)により、低温環境部(5)に与えることを特徴とする水素貯蔵合金利用の冷熱発生装置である。
本発明の請求項は、前記水素貯蔵合金用ブライン冷却装置(30)が、低温環境部(5)との間で熱交換を行うブライン/低温環境部熱交換器(22)を備え、前記低温MHタンク/ブライン熱交換器(37)内のブラインをブライン/低温環境部熱交換器(22)に循環させて、冷却状態の該冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))から低温環境部(5)に冷熱を与えることを特徴とする請求項の水素貯蔵合金利用の冷熱発生装置である。
本発明の請求項は、高温段の水素駆動用合金収納高温タンク(2a又は3a)及び低温段の冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)を1組とするMH冷凍装置(I)が備えられ、該水素駆動用合金収納高温タンク(2a又は3a)を加熱及び冷却させて、その中の高温段水素貯蔵合金(M1 H)とこれに対応する冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)との間で水素の授受を行わせ、その中から冷熱を取出し、低温環境部(5)に冷熱を与えるように冷凍工程を行う水素貯蔵合金利用の冷熱発生方法であつて、
該冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内に、水素貯蔵合金用ブライン循環装置(IIIb)に付属する該冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)の低温段水素貯蔵合金(M2 H)との間で熱交換を行う低温MH/ブライン熱交換器(13a、13b)を内装し、水素貯蔵合金用ブライン循環装置(IIIb)に付属するブライン/冷却水熱交換器(33)により、前記ブラインを冷却水(4b)により冷却可能であり、
また、第1の流路切り換え用電磁弁(26a、26b)の切り替えにより、前記ブラインにより前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)を冷却、又は低温環境部(5)への冷凍出力可能であり、
また、前記冷却水(4b)は、前記ブラインの冷却と機械圧縮型冷凍装置(IIb)のコンデンサー(7)の冷却の二重役割を果たし、第2の流路切り換え用電磁弁(25 a、25 b)の切り替えにより前記ブライン/冷却水熱交換器(33)又は前記コンデンサー(7)の冷却水側の流路(35)へ交替で流すことが可能であり、
また、前記機械圧縮型冷凍装置(IIb)の冷媒蒸発器(12a又は12b)をそれぞれ前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内に、その中の前記低温段水素貯蔵合金(M2 H)をブラインを介しないで冷却できるように設置し、
その中のブラインをブライン用ポンプ(18a,18b)により循環させ、
前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)の再生過程において、
このブラインがブライン/冷却水熱交換器(33)により冷却されてから、前記低温MH/ブライン熱交換器(13a又は13b)を介して前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を第1ステップで冷却し、その後、前記第2の流路切り換え用電磁弁(25 a、25 b)の切り替えにより前記冷却水(4b)を前記コンデンサー(7)の冷却水側流路(35)に流し、同時に、前記機械圧縮型冷凍装置(IIb)を作動させて、冷媒蒸発器(12a又は12b)により、前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を、第2のステップで前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を十分に冷却し、低温段水素貯蔵合金(M2 H)に水素を十分に吸着させ、
前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)の冷凍過程において、
前記機械圧縮型冷凍装置(IIb)と冷却水(4b)の流れを止め、第1の流路切り換え用電磁弁(26a及び26b)を切り換え、
該低温段水素貯蔵合金(M2 H)の解離反応による冷熱をブライン/低温環境部熱交換器(57)を介して、低温環境部(5)に与えることを特徴とする水素貯蔵合金利用の冷熱発生方法である。
本発明の請求項は、高温段の水素駆動用合金収納高温タンク(2a又は3a)及び低温段の冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)を1組とするMH冷凍装置(I)が備えられ、該水素駆動用合金収納高温タンク(2a又は3a)を加熱及び冷却させて、その中の高温段水素貯蔵合金(M1 H)とこれに対応する冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)との間で水素の授受を行わせ、その中から冷熱を取出し、低温環境部(5)に冷熱を与えるように冷凍工程を行う水素貯蔵合金利用の冷熱発生装置であつて、
該冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内に、水素貯蔵合金用ブライン循環装置(IIIb)に付属する該冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)の低温段水素貯蔵合金(M2 H)との間で熱交換を行う低温MH/ブライン熱交換器(13a、13b)を内装し、水素貯蔵合金用ブライン循環装置(IIIb)に付属するブライン/冷却水熱交換器(33)により、前記ブラインを冷却水(4b)により冷却可能であり、
また、第1の流路切り換え用電磁弁(26a、26b)の切り替えにより、前記ブラインにより前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)を冷却、又は低温環境部(5)への冷凍出力可能であり、
また、前記冷却水(4b)は、前記ブラインの冷却と機械圧縮型冷凍装置(IIb)のコンデンサー(7)の冷却の二重役割を果たし、第2の流路切り換え用電磁弁(25 a、25 b)の切り替えにより前記ブライン/冷却水熱交換器(33)又は前記コンデンサー(7)の冷却水側の流路(35)へ交替で流すことが可能であり、
また、前記機械圧縮型冷凍装置(IIb)の冷媒蒸発器(12a又は12b)をそれぞれ前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内に、その中の前記低温段水素貯蔵合金(M2 H)をブラインを介しないで冷却できるように設置し、
その中のブラインをブライン用ポンプ(18a,18b)により循環させ、
前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)の再生過程において、
このブラインがブライン/冷却水熱交換器(33)により冷却されてから、前記低温MH/ブライン熱交換器(13a又は13b)を介して前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を第1ステップで冷却し、その後、前記第2の流路切り換え用電磁弁(25 a、25 b)の切り替えにより前記冷却水(4b)を前記コンデンサー(7)の冷却水側流路(35)に流し、同時に、前記機械圧縮型冷凍装置(IIb)を作動させて、冷媒蒸発器(12a又は12b)により、前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を、第2のステップで前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を十分に冷却し、低温段水素貯蔵合金(M2 H)に水素を十分に吸着させ、
前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)の冷凍過程において、
前記機械圧縮型冷凍装置(IIb)と冷却水(4b)の流れを止め、第1の流路切り換え用電磁弁(26a及び26b)を切り換え、
該低温段水素貯蔵合金(M2 H)の解離反応による冷熱をブライン/低温環境部熱交換器(57)を介して、低温環境部(5)に与えることを特徴とする水素貯蔵合金利用の冷熱発生装置である。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1参考例を示す。図1中において符号IはMH冷凍装置を示し、IIは機械圧縮型冷凍装置を示す。
【0026】
MH冷凍装置Iは、実質的に従来例と同様の構造を有し、同一機能部分には同一符号を付してある。すなわち、MH冷凍装置Iは、1つの組をなす水素駆動用合金収納高温タンク2a,3a(高温MHタンク)及び冷熱取出用合金収納低温タンク2b,3b(低温MHタンク)を図1の上半部及び下半部に示すように複数(図上では一対)備える。
【0027】
各高温MHタンク2a,3aは、高温段水素貯蔵合金M1 Hを収容し、高温熱源1又は冷熱源である冷却水4aにブライン循環装置59を介して選択的に接続可能である。高温熱源1(例えば120℃以上)には、工場排熱、焼却排熱(ガス)、バイオガス燃焼排熱ガス、蒸気等の熱を使用できる。冷却水4aには、地下水、工業用水、上水道、クーリングタワーの冷却水等を使用できる。
【0028】
ブライン循環装置59は、冷却水/ブライン熱交換器51及びブライン/M1 H熱交換器52を有するブライン流路6cと、高温熱源/ブライン熱交換器53及びブライン/M1 H熱交換器54を有するブライン流路6dとを切り換え可能に備え、熱交換器51を冷却水4a(冷熱源)と熱交換可能に配置し、熱交換器52を一方の高温MHタンク2aと熱交換可能に配置し、熱交換器53を高温熱源1と熱交換可能に配置し、熱交換器54を他方の高温MHタンク3aと熱交換可能に配置すると共に、高温段ブラインポンプ49a,49bを図示のように備える。50a,50b,50c,50dはそれぞれ3方バルブであり、3方バルブ50a,50b,50c,50dを適宜に切り替えると共に、ブラインポンプ49a,49bを適宜に駆動することにより、一方の高温MHタンク2aを高温熱源1又は冷却水4aに選択的に接続させて熱交換を行わせ、また、他方の高温MHタンク3aを高温熱源1又は冷却水4aに選択的に接続させて熱交換を行わせることができる。
【0029】
各低温MHタンク2b,3bは、上記水素貯蔵合金M1 Hとは水素吸着特性の異なる或いは特性が温度によつて異なる低温段水素貯蔵合金M2 Hを収容し、対応する高温MHタンク2a,3aに水素流路用バルブ70,71を備える水素流路20,21によつて接続されると共に、ブライン流路6a,6bを介して冷熱源である冷却水4bに接続する。冷却水4bには、地下水、工業用水、上水道等が使用できる。
【0030】
これにより、各組の高温MHタンク2a,3aと低温MHタンク2b,3bとの間で、水素流路20,21を通じて水素の授受を行わせ、低温MHタンク2b,3bから冷熱を取出可能にするように各組の高温MHタンク2a,3a/低温MHタンク2b,3bから交互作動が可能なMH冷凍装置Iを構成する。
【0031】
機械圧縮型冷凍装置IIは、低温MHタンク2b,3b内の水素貯蔵合金M2 Hと熱交換可能に配置されたコンデンサー7a,7b、冷媒圧縮機11、冷媒を溜めるレシーバー10、膨張弁9及び低温環境部5と熱交換可能に配置した冷媒蒸発器12を、図示のように3方切換弁として機能する第1,第2の電磁弁8a,8bを備える冷媒配管16a,16b、17によつて接続して構成される。コンデンサー7a,7bは、それぞれ低温MHタンク2b,3bの内部に設置する。或いは、後記するブライン循環装置IIIを介して、低温MHタンク2b,3bと熱交換できるように設置する。コンデンサー7a,7bの作動は、1対の低温MHタンク2b,3bにおける再生工程と冷凍工程との交互作動に対応して切り換え可能である。
【0032】
すなわち、冷媒蒸発器12の一端部が、冷媒レシーバー10、冷媒圧縮機11及び冷媒配管17を介して第1の電磁弁8aに接続され、冷媒蒸発器12の他端部が膨張弁9を介して第2の電磁弁8bに接続されている。また、第1の電磁弁8aと第2の電磁弁8bとの間は、それぞれコンデンサー7a,7bを介在する冷媒配管16a,16bによつて接続されている。従つて、第1の電磁弁8a及び第2の電磁弁8bを切り換えて、各低温MHタンク2b又は3bに対応するコンデンサー7a又は7bが、冷媒配管16a又は16bにより冷媒蒸発器12に接続される。MH冷凍装置Iの1つの組をなす高温MHタンク2a又は3a/低温MHタンク2b又は3bにおいて冷凍工程を行うとき、低温MHタンク2b又は3bに対応するコンデンサー7a又は7bを冷媒蒸発器12に連通させる。
【0033】
ここで、図1に実線で示す冷媒配管16aと破線で示す冷媒配管16bは、それぞれコンデンサー7a,7bの作動状態と作動停止状態も表し、また、実線で示す冷媒配管17は、冷媒配管16a,16b以外の第1の電磁弁8aと第2の電磁弁8bの間の配管であり、コンデンサー7a,7bの交互作動を行う機械圧縮型冷凍装置IIの運転が連続可能であることをも示している。つまり、機械圧縮型冷凍装置IIの冷媒は、実線で示す冷媒配管16a及び冷媒配管17内で循環する。
【0034】
このようにして、MH冷凍装置I及び機械圧縮型冷凍装置IIにより、低温MHタンク2b,3bとコンデンサー7a,7bとはそれらの間の熱交換ができるようにMH/冷媒カスケード2段冷凍サイクルが構成されている。
【0035】
このように、機械圧縮型冷凍装置IIにおいて、低温環境部5内に配置した冷媒蒸発器12を吸熱部とし、かつ、コンデンサー7a,7bとの間で熱交換を行う低温MHタンク2b又は3bを放熱部とし、MH/冷媒カスケード冷凍装置の2段冷凍サイクルを作動させることにより、低温環境部5内の温度TLLを冷凍工程時の低温MHタンク2b,3b内の水素貯蔵合金M2 Hの温度TL よりも低くすることができる。
【0036】
MH/冷媒カスケード冷凍装置の冷凍能力は、熱損失及び低温環境部5への冷熱出力以外の熱回収を考慮しなければ、次のように算出される。先ず、低温MHタンク2b,3bからコンデンサー7a,7bに伝えられる冷熱量QL は、次式で表される。
【0037】
L =nΔHTL−CPm(TM −TL ) ・・・・・(1)
ここで、ΔHTLは温度TL 下での低温段水素貯蔵合金M2 Hの脱水素反応熱、nは脱水素量、CPmは水素貯蔵合金M2 Hを収容している低温MHタンク2b,3bの全熱容量、TM は再生工程時の低温MHタンク2b,3b内の水素貯蔵合金M2 Hの温度である。但し、CPmは、厳密にいえば、コンデンサー7a,7b等の付属部品の熱容量も考慮する必要がある。
【0038】
また、機械圧縮型冷凍装置IIの冷媒冷凍サイクルの成績係数COPは、蒸発器12から低温環境部5への冷凍出力QLLと圧縮機11から加えられる圧縮仕事Wとにより、次式のように表される。
COP=QLL/W ・・・・・(2)
【0039】
そして、低温MHタンク2b,3bと対応するコンデンサー7a,7bとの間の熱交換におけるエネルギー収支により、この間の冷熱量QL は、次式のように冷凍出力QLLと圧縮仕事Wとの和でなければならない。つまり、
L =QLL+W ・・・・・(3)
【0040】
式(1)と式(3)より、次式が得られる。
LL+W=nΔHTL−CPm(TM −TL )・・・・・(4)
式(4)は、第1参考例に係るMH/冷媒カスケード冷凍装置の冷凍サイクルが成立する条件である。そして、第1参考例における冷熱発生装置の冷凍出力QLLは、式(5)により推算される。
LL=nΔHTL−CPm(TM −TL )−W・・・・・(5)
【0041】
式(5)から分かるように、如何に顕熱量CPm(TM −TL )を減らすかは、冷凍出力QLLの向上に重要である。但し、機械圧縮型冷凍装置IIに加えた圧縮仕事Wは、その冷媒冷凍サイクルの高温熱源温度となる温度TL が高くなるにつれて増加する傾向にある。
【0042】
また、冷凍工程における低温MHタンク2b,3b内の水素圧が高い真空度にならないように、低温MHタンク2b,3bから高温MHタンク2a,3aに向かう水素放出流速を制御することができる。低温MHタンク2b,3bから高温MHタンク2a,3aに向かう水素放出流速及び低温MHタンク2b,3b内の温度TL は、水素流路用バルブ70,71により低温MHタンク2b,3b内の圧力を制御することと、圧縮機11の圧縮仕事又は回転数に関係するコンデンサー7a、7bから低温MHタンク2b,3b内への放熱量を制御することにより、低温段水素貯蔵合金M2 Hからの水素解離速度を制御することによつて実現することが可能である。また、同様に、水素放出流速と圧縮機11の圧縮仕事Wを制御することにより、低温環境部5の温度を制御することもできる。
【0043】
次に作用について説明する。
低温環境部5に冷熱を提供する冷凍工程について説明する。MH冷凍装置Iの1つの組をなす高温MHタンク2a及び低温MHタンク2bが冷凍工程を行うとき、両電磁弁8a,8bを切換え、低温MHタンク2bに対応するコンデンサー7aを冷媒蒸発器12及び冷媒圧縮機11に連通させる。すなわち、冷凍工程においては、図1の下半部に示す再生工程を行つて十分量の水素を低温MHタンク2b,3b内の水素貯蔵合金M2 Hに吸蔵させた状態から、図1の上半部に示す組のように水素を放出させて冷凍工程が実行される。そのとき、温度TL の低温MHタンク2b,3bが機械圧縮型冷凍装置IIの高温熱源となり、温度TLLの低温環境部5が機械圧縮型冷凍装置IIの低温熱源となる。
【0044】
冷媒蒸発器12で生じた冷媒蒸気は、冷媒レシーバー10を経て圧縮機11に吸引され、圧縮・昇圧されると、比較的高圧かつ高温の蒸気になつてコンデンサー7a,7bに流入する。高圧かつ高温の蒸気がコンデンサー7a,7bで放熱して凝縮すると、比較的高圧かつ比較的高温の液体冷媒となる。この高圧液体冷媒は、膨張弁9を通して断熱膨張されると、より低い温度の気液混合物になる。この気液混合状態の冷媒が蒸発器12を通つて蒸発する際、低温環境部5から熱を奪うことによつて冷凍出力QLLが得られる。
【0045】
このように冷凍工程をMH冷凍装置Iの1つの組をなす高温MHタンク2a及び低温MHタンク2bが行うとき、高温MHタンク2a内の水素吸着合金M1 Hによる水素吸着反応熱をブライン流路6cを介して冷熱源である冷却水4aにより除去させながら、低温MHタンク2b内の水素貯蔵合金M2 Hから水素が放出され、水素放出の際に水素解離反応熱である冷熱を生じる。
【0046】
また、同時に、他の組をなす高温MHタンク3a及び低温MHタンク3bは、従来例と同様の再生工程を行う。再生工程では、図1の下半部に示すように、高温MHタンク3aを高温熱源1によつて加熱しながら、高温MHタンク3a内の水素貯蔵合金M1 Hから放出された水素を低温MHタンク3b内の水素貯蔵合金M2 Hに吸蔵させる。そのとき、低温MHタンク3b内の水素吸着合金M2 Hに生じた吸着反応熱は、ブライン流路6bを介して冷熱源である冷却水4bにより除去させる。
【0047】
図2は、MH冷凍装置Iの低温MHタンク2b,3bと機械圧縮型冷凍装置IIのコンデンサー7a,7bとの間にブライン循環装置IIIを介在させる構造例の要部を示し、低温MHタンク2b,3bとコンデンサー7a,7bとの間の熱伝達がブラインを介して行われる。すなわち、各ブライン流路6a,6bの低温MH/ブライン熱交換器13a,13bを各低温MHタンク2b,3b内に熱交換可能に配置し、各ブライン流路6a,6bのブライン側流路23a,23bをそれぞれコンデンサー7a,7bと熱交換可能に配置する。また、ブライン流路6a,6bは、3方切換弁からなる第3,第4の電磁弁15a,15bによつてブライン/冷却水熱交換器14a,14bに切換えて接続させることが可能であり、ブライン用ポンプ24a,24bを駆動し、ブライン/冷却水熱交換器14a,14bを介して冷却水4bによつて冷却されるブライン流路6a,6b内のブラインを循環させて低温MHタンク2b又は3b内の低温段水素貯蔵合金を冷却することができる。
【0048】
このように、ブライン流路6a,6bを介して、各低温MHタンク2b,3bに熱交換可能に配置した低温MH/ブライン熱交換器13a,13bと、ブライン/冷却水熱交換器14a,14b及びコンデンサーのブライン側流路23a,23bとの間で熱交換を行わせることにより、冷却水4b又はコンデンサー7a又は7bと各低温MHタンク2b又は3b内と熱交換可能構造が得られる。
【0049】
再生工程と冷凍工程における低温MHタンク2b,3bと冷却水4b又はコンデンサー7a,7bとの間の熱交換は、それぞれブライン流路6a,6bを介し、冷却水4bとコンデンサー7a又は7bの作動の切り換えにより行われる。ブライン流路6a,6bのブラインは、常時、液状を保つものである。
【0050】
再生工程においては、図2の下半部に示すように第4の電磁弁15bを切り換えて低温MH/ブライン熱交換器13bをブライン/冷却水熱交換器14bに接続した状態で、ブライン用ポンプ24bを駆動し、冷却水4bによつて冷却したブライン流路6b内のブラインにより、1つの組をなす低温MHタンク3b内の水素貯蔵合金M2 Hを冷却する。他の組をなす低温MHタンク2b内の水素貯蔵合金M2 Hも同様の操作で冷却し、再生工程を行うことができる。
【0051】
冷凍工程においては、図2の上半部に示すように第3の電磁弁15aを切り換えて低温MH/ブライン熱交換器13aとコンデンサー7aとを接続した状態で、ブライン用ポンプ24aを駆動し、ブライン流路6a内のブラインを介して低温MHタンク2bからコンデンサー7aに冷熱量QL が伝えられる。これにより、上記第1参考例と同様に、低温環境部5から熱を奪い、冷凍出力QLLを得ることができる。他組をなす低温MHタンク3b内の水素貯蔵合金M2 Hも同様の操作で、冷凍工程を行うことができる。かくして、MH冷凍装置Iと機械圧縮型冷凍装置IIとの間の熱伝達をブライン流路6a,6b内のブラインを介して行いながら、低温環境部5への冷凍出力QLLを得ることができる。
【0052】
図3は、図2に示す構造例と違つて、低温MHタンク2b、3bがそれぞれブライン循環装置IIIaを介して機械圧縮型冷凍装置IIaに備えられる一つのコンデンサー7だけにカスケードされて熱交換を行う本発明の水素貯蔵合金利用の冷熱発生装置の構造例を示すものである。低温MHタンク2b,3bと低温環境部5又は冷却水4bとの間の熱伝達の切り替えを、図2に示した構造例のブライン流路6a,6bに代えて、ブライン流路6の切り替えによつて行う。このため、ブライン循環装置IIIa、機械圧縮型冷凍装置IIaのコンデンサー7、冷媒配管16等の部材についての詳細な説明は、省略してある。
【0053】
低温MHタンク2b,3b内の水素貯蔵合金M2 Hとブライン循環装置IIIaを介して機械圧縮型冷凍装置IIaに熱交換可能に配置したコンデンサー7、冷媒圧縮機11、冷媒を溜めるレシーバー10、膨張弁9及び低温環境部5と熱交換可能に配置した冷媒蒸発器12を、冷媒配管16,17によつて接続させてある。
【0054】
また、ブライン循環装置IIIaは、各低温MHタンク2b,3b内にそれぞれ熱交換可能に配置した低温MH/ブライン熱交換器13a,13b、コンデンサー7と熱交換可能に配置したコンデンサーのブライン側流路23及び冷却水4bとの間で熱交換を行うブライン/冷却水熱交換器14を有する。
【0055】
47a,47b,47c,47dはそれぞれ4方バルブであり、4方バルブ47a,47b,47c,47dを適宜に切り替えると共に、低温段ブラインポンプ48a,48bを適宜に駆動することにより、一方の低温MHタンク2bをブライン流路6を介してコンデンサー7のブライン側流路23又はブライン/冷却水熱交換器14に選択的に接続して熱交換を行わせ、また、他方の低温MHタンク3bをブライン流路6を介してコンデンサー7のブライン側流路23又はブライン/冷却水熱交換器14に選択的に接続して、熱交換を行わせることができる。
【0056】
従つて、ブライン流路6を通じて低温MHタンク2b又は3bとの熱交換が行われるコンデンサー7が、冷媒蒸発器12に接続され、両者7,12内を冷媒が循環可能である。すなわち、冷媒蒸発器12の一端部が冷媒配管17、冷媒レシーバー10と冷媒圧縮機11を介してコンデンサー7の一端部に接続し、冷媒蒸発器12の他端部が膨張弁9を介してコンデンサー7の他端部に接続されている。
【0057】
かくして、図2に示す構造例と比較して、1つのブライン/冷却水熱交換器14a、コンデンサー7b及び冷媒配管16bに相当する部材を省略して構造簡素としながら、冷凍工程及び再生工程に関して同様の作用を得ることができる。但し、ブライン循環装置59は、上記従来例に使用され、ただし、ブライン流路6は、低温MHタンク2b又は3bと低温環境部5との間の熱伝達を行うものとして上記従来例に使用されている。
【0058】
図4は、機械圧縮型冷凍装置II又はIIaにおける冷媒冷凍サイクルの温度−エントロピー線図と、蒸発器12内の冷媒蒸発温度TCO2.L 、MH冷凍装置Iと機械圧縮型冷凍装置IIとの間にブライン循環装置IIIを介在させる場合のコンデンサー7a,7b又は7内の冷媒凝縮温度T’CO2.H と介在させない場合のコンデンサー7a,7b内の冷媒凝縮温度TCO2.H 、高温熱源温度となる低温MHタンク2b,3b内の温度TL 、低温熱源温度となる低温環境部5内の温度TLLとの間の関係を示す。
【0059】
図4に示すように、冷媒冷凍サイクルは、理論的に冷媒圧縮機11による等エントロピー圧縮(A〜B,A〜B’)、コンデンサー7a,7b又は7内の等圧放熱(B〜C,B’〜C’)、膨張弁9による断熱膨張(C〜D,C’〜D’)と冷媒蒸発器12内の等圧吸熱(D〜A,D’〜A)という4つの工程から構成される。
【0060】
従つて、冷媒冷凍サイクルの作動状態では、蒸発器12内の冷媒蒸発温度がTCO2.L であり、低温環境部5に温度TLLを生じさせる場合、図1に記載するようにブライン循環装置IIIを省略するときは、コンデンサー7a,7bから低温MHタンク2b,3b内の水素吸着合金M2 Hへ直接的に放熱又は熱伝達できるように、コンデンサー7a,7b内の冷媒凝縮温度TCO2.H が低温MHタンク2b,3b内の温度TL より高い状態になければならない。そのとき、低温MHタンク2b,3bでの放熱は、温度差TCO2.H −TL により行われる。一方、図2,図3に示すようにブライン循環装置III又はIIIaを備える場合、低温MHタンク2b,3bでの放熱は、温度差T’CO2.H −TL により行われる。
【0061】
勿論、冷媒凝縮温度がTCO2.L の蒸発器12が温度TLLの低温環境部5から吸熱して冷凍出力QLLが得られるように、蒸発器12内の冷媒蒸発温度TCO2.L が低温環境部5の温度TLLより低くならなければならない。このとき、蒸発器12の低温環境部5からの吸熱つまり両者間の熱伝達は、温度差TLL−TCO2.L により行われる。
【0062】
さらに、図5に示すように蒸発器12から低温環境部5への冷凍出力が低温ブライン循環装置IVを介する場合には、蒸発器12内の冷媒蒸発温度をTCO2.L よりも低くしなければならない、あるいは蒸発器12から低温環境部5への冷熱を(TLL−TCO2.L )よりも大きい温度差で与える必要がある。この場合、低温ブライン循環装置IVのブライン循環用配管19、ブライン/低温環境部熱交換器58内のブラインは、ブライン用ポンプ18の駆動によつて循環し、冷媒蒸発器12からの冷熱がその蒸発器のブライン側流路29内のブラインに伝わつてブライン/低温環境部熱交換器58を通じて、低温環境部5への冷凍出力QLLされる。
【0063】
なお、機械圧縮型冷凍装置II又はIIa内に使われる冷媒としては、CO2 の他、アンモニア、プロパンにより代表される炭化水素等の自然冷媒を使用することが可能である。
【0064】
図6は、本発明の第実施の形態を示し、第1参考例と実質的に同一機能部分には同一符号を付してそれらの詳細な説明は省略する。
【0065】
実施の形態にあつては、高温段の高温MHタンク2a及び低温段の低温MHタンク2bを1組とするMH冷凍装置Iが備えられている。なお、実際は、上記第1参考例と同様に複数組の高温MHタンク2a,3a及び低温MHタンク2b,3bが備えられ、1の組の高温MHタンク2a及び低温MHタンク2bが冷凍工程を行うとき、他の組の高温MHタンク3a及び低温MHタンク3bが再生工程を行う。
【0066】
高温MHタンク2a及び低温MHタンク2bは、第1参考例と同様に高温MHタンク2a(又は3a)を高温熱源1又は冷熱源である冷却水4aに選択的に接続して、高温MHタンク2a内の高温段水素貯蔵合金M1 Hとこれに対応する低温MHタンク2b内の低温段水素貯蔵合金M2 Hとの間で水素の授受を行わせ、低温MHタンク2bからの冷熱を低温環境部5に冷蔵を含む冷凍の目的で提供することができる。
【0067】
低温MHタンク2bは、水素貯蔵合金用ブライン冷却装置30を付属する。水素貯蔵合金用ブライン冷却装置30は、低温MHタンク2bの水素貯蔵合金M2 Hとの間で熱交換を行う低温MHタンク/ブライン熱交換器37、低温MHタンク/ブライン熱交換器37内のブラインを冷却する冷凍機31及び低温MHタンク/ブライン熱交換器37内のブラインを冷却するブライン/冷却水熱交換器32を有する。すなわち、低温MHタンク2b内に設置した低温MHタンク/ブライン熱交換器37の両端部は、ブライン用ポンプ34及び圧縮式又は吸収式の冷凍機31を有するブライン循環用配管35に接続されると共に、第1,第2の3方切換電磁弁40,41を介して、プレート式の熱交換器32を有するブライン循環用配管38に接続される。ブライン/冷却水熱交換器32は、冷熱源である冷却水4bとの間で熱交換を行つてブラインを冷却する。冷却水4bには、地下水、工業用水、上水道等の他、クーリングタワーの冷却水を使用できる。
【0068】
また、低温MHタンク/ブライン熱交換器37の両端部は、第3,第4の3方切換電磁弁44,45を介して、低温環境部5との間で熱交換を行う低温環境部5用のブライン/低温環境部熱交換器22を有するブライン循環用配管46に接続される。
【0069】
従つて、第1,第2の3方切換電磁弁40,41を切り換えてブライン用ポンプ34を駆動することにより、低温MHタンク/ブライン熱交換器37内のブラインを熱交換器32において冷却水4bで冷却し、また、3方切換電磁弁40,41を切り換えてブライン用ポンプ34を駆動することにより、低温MHタンク/ブライン熱交換器37内のブラインを冷凍機31で冷却し、低温MHタンク2bの低温段水素貯蔵合金M2 Hを十分に冷却して再生工程を行うことができる。後記する第実施の形態のケースを含め、水素貯蔵合金用ブライン冷却装置30のブラインとしては、不凍液のメタノール、メタノール水溶液、エチレングリコール水溶液等を使用することが可能である。
【0070】
かくして、低温MHタンク2b(又は3b)は低温MHタンク/ブライン熱交換器37内のブラインを循環させながら、熱交換器32を介して冷却水4bによつて十分に冷却してから、引き続き、冷凍機31によつて冷却して低温MHタンク2b(又は3b)内の低温段水素貯蔵合金M2 Hに水素を十分に吸着させかつ望ましい低温まで下げた後、再生過程を終え、次に、第1,第2、第3,第4の切換電磁弁40,41、44,45を通じてブライン用ポンプ34を駆動することにより、ブライン/低温環境部熱交換器22を介して低温環境部5に冷凍出力することができる。
【0071】
また、前記第1参考例及び本発明の第1実施の形態にあつては、機械圧縮型冷凍装置IIによつて構成したが、機械圧縮型冷凍装置IIを吸収式冷凍機によつて構成することも可能である。その場合には、冷媒として、臭化リチウム、アンモニア等を使用することが可能である。
【0072】
図7は本発明の第実施の形態を示し、第1参考例及び第1実施形態と実質的に同一機能部分には同一符号を付してそれらの詳細な説明は省略する。
また、MH冷凍装置Iの基本構造が変わらないとして、その詳細な説明も省略する。
【0073】
実施の形態にあつては、第1参考例及び実施形態の場合と同様に、1の組の高温MHタンク2a及び低温MHタンク2bが冷凍工程を行うとき、他の組の高
温MHタンク3a及び低温MHタンク3bが再生工程を行う。
【0074】
高温MHタンク2a及び低温MHタンク2bは、第1参考例及び実施形態と同様に高温MHタンク2a又は3aを高温熱源1又は冷熱源である冷却水4aに選択的に接続して、高温MHタンク2a内の高温段水素貯蔵合金M1 Hとこれに対応する低温MHタンク2b内の低温段水素貯蔵合金M2 Hとの間で水素の授受を行わせ、低温MHタンク2bからの冷熱を低温環境部5に冷蔵を含む冷凍の目的で提供することができる。
【0075】
低温MHタンク2b,3bは、水素貯蔵合金用ブライン循環装置IIIbを付属する。水素貯蔵合金用ブライン循環装置IIIbは、低温MHタンク2b,3b内の水素貯蔵合金M2 Hとの間で熱交換を行う低温MH/ブライン熱交換器13a,13b、ブラインを冷却するためのブライン/冷却水熱交換器33を有する。すなわち、低温MHタンク2b,3b内に設置した低温MH/ブライン熱交換器13a,13bは、第1のブライン流路切り換え用電磁弁26a,26bを介して前記ブライン/冷却水熱交換器33又はブライン/低温環境部熱交換器57に連続される。
【0076】
従つて、水素貯蔵合金用ブライン循環装置IIIbのブライン流路切り換え用電磁弁26a,26bは、低温MH/ブライン熱交換器13a,13bを、ブライン/冷却水熱交換器33に接続し、冷却水4bを介して冷却したブラインにより水素貯蔵合金M2 Hを冷却し、また、低温MH/ブライン熱交換器13a,13bを、低温環境部5と熱交換可能に配置したブライン/低温環境部熱交換器57に接続し、水素貯蔵合金M2 Hを介して冷却したブラインにより低温環境部5を冷却する。ブライン用ポンプ18a,18bは、水素貯蔵合金用ブライン循環装置IIIbのブラインを循環させる。
【0077】
また、冷却水4bは、第2の流路切り換え用電磁弁25a,25bを介して前記ブライン/冷却水熱交換器33又は前記機械圧縮型冷凍装置IIbのコンデンサー7の冷却水流路側35に交替で流せるように、前記ブライン循環装置IIIb内のブラインの冷却とコンデンサー7の冷却との二重の役割を果たせる。前記冷却水4bには、地下水、工業用水、上水道等の他、クーリングタワーの冷却水を使用できる。すなわち、第2の流路切り換え用電磁弁25a,25bは、コンデンサー7の冷却水流路側35を有する冷却水流路28に冷却水4bを流すことにより、コンデンサー7を冷却し、また、ブライン/冷却水熱交換器33を有する冷却水流路27に冷却水4bを流すことにより、低温MHタンク2b,3bの水素貯蔵合金M2 Hを冷却することができる。冷却水用ポンプ(図示せず)の駆動及び第2の流路切り換え用電磁弁25a,25bの切り換えにより、外部からの冷却水4bを冷却水流路側35に流し、また、ブライン/冷却水熱交換器33に流すことができる。
【0078】
この様に、第1の流路切り換え用電磁弁26a,26b及び第2の流路切り換え用電磁弁25a,25bの切り替えによるブライン循環装置IIIb内のブラインの切り換え及びブライン流路27,28の切り換えにより、低温MHタンク2b,3bの水素貯蔵合金M2 Hを十分に冷却した後、ブライン循環装置IIIbを介して低温環境部5への冷凍出力が可能となる。
【0079】
低温MHタンク2b又は3b内の低温段水素貯蔵合金M2 Hの再生過程において、このブラインがブライン/冷却水熱交換器33により冷却されてから、ブライン用ポンプ18aの駆動により、前記低温MH/ブライン熱交換器13a又は13bを介して前記低温MHタンク2b又は3b内の低温段水素貯蔵合金M2 Hを第1ステップで冷却し、その後、前記流路切り換え用電磁弁25 a、25 bの切り替えにより前記冷却水4bを前記コンデンサー7の冷却水側流路35に流し、同時に、前記機械圧縮型冷凍装置IIbを作動させて、冷媒蒸発器12a又は12bにより、前記低温MHタンク2b又は3b内の低温段水素貯蔵合金M2 Hを、第2のステップで前記低温MHタンク2b又は3b内の低温段水素貯蔵合金M2 Hを十分に冷却し、低温段水素貯蔵合金M2 Hに水素を十分に吸着させることができる。コンデンサー7を介して冷却水4bからの冷却効果を受けることにより、冷媒圧縮機11から吐出される冷媒蒸気が液状になるように冷却され、この液状冷媒を膨張弁9によつて減圧膨張させて冷媒蒸発器12a又は12bに導いて蒸発させることにより、低温MHタンク2b,3b内の低温段水素貯蔵合金M2 Hを十分に冷却することができる。
【0080】
前記低温MHタンク2b又は3b内の低温段水素貯蔵合金M2 Hの冷凍過程において、前記機械圧縮型冷凍装置IIbと冷却水4bの流れを止め、第1のブライン用流路切替弁26a及び26bを切り換え、ブライン用ポンプ18bの駆動により、該低温段水素貯蔵合金M2 Hの水素解離反応による冷熱でブライン/低温環境部熱交換器57を介して、低温環境部5に冷凍出力することができる。
【0081】
図8には、第2参考例を示し、第1参考例及び第実施の形態と同一機能部分には同一符号を付してある。第2参考例にあつては、その構成が第1参考例及び第実施の形態に近似し、その作用が第実施の形態及び第実施の形態に近似している。
【0082】
すなわち、第1参考例と同様にMH冷凍装置Iを設けるが、各低温MHタンク2b,3b内に機械圧縮型冷凍装置IIbの冷媒蒸発器12a,12bを配置し、各低温段水素貯蔵合金M2 Hと冷媒蒸発器12a,12bとの間で選択的に熱交換を行わせる。また、機械圧縮型冷凍装置IIbの1つのコンデンサー7は、冷熱源である冷却水4bとの間で熱交換を行う。なお、コンデンサー7は、冷却水4bによる冷却に代えて、空気を冷熱源とすることもできる。従つて、第2参考例にあつては、第実施の形態と同様に、機械圧縮型冷凍装置IIbの冷媒圧縮機11が、第1参考例と比較して、逆向きに冷媒を送るように冷媒レシーバー10よりも下流側に配置されている。
【0083】
また、低温MHタンク2b,3bには、それぞれ低温ブライン流路66a,66bが熱交換可能に配置され、両低温ブライン流路66a,66bは、その間に配置した3方切換バルブ67,68を介して、低温ブライン/低温環境部熱交換器72を有する低温ブライン循環用配管76に接続される。該熱交換器72は、低温環境部5との間で熱交換を行うように低温環境部5内に配置され、低温ブライン循環用配管76には、低温ブライン用ポンプ74が配置されている。
【0084】
従つて、機械圧縮型冷凍装置IIbでは、両電磁弁8a,8bを切換え、一方の低温MHタンク2b又は3bに対応する冷媒蒸発器12a又は12bを冷媒圧縮機11及びコンデンサー7に連通させ、低温MHタンク2b又は3b内を十分に冷却することにより、各低温MHタンク2b,3b内の水素貯蔵合金M2 Hに十分量の水素を吸蔵させかつ望ましい低温まで下げて再生工程を行うことができる。このとき、コンデンサー7を介して冷却水4bからの冷却効果を受けることにより、冷媒圧縮機11から吐出される冷媒蒸気が液状になるように冷却され、この液状冷媒を膨張弁9によつて減圧膨張させて冷媒蒸発器12a又は12bに導いて蒸発させることにより、低温MHタンク2b,3b内の低温段水素貯蔵合金M2 Hを十分に冷却することができる。この状態から、水素貯蔵合金M2 Hから水素を放出させれば、冷凍工程が実行される。
【0085】
冷凍工程では、3方切換バルブ67,68を切り換えて低温ブライン用ポンプ74を駆動することにより、低温MHタンク2b,3b内の水素解離反応に基づいて冷却された低温ブライン流路66a,66b内のブラインが低温ブライン/低温環境部熱交換器72に導かれる。これにより、低温ブライン/低温環境部熱交換器72を介して低温環境部5に冷凍出力することができる。低温ブライン流路66a,66b、低温ブライン循環用配管76及び低温ブライン/低温環境部熱交換器72内のブラインとしては、不凍液のメタノール、メタノール水溶液、エチレングリコール水溶液等を使用することが可能である。
【0086】
【発明の効果】
以上の説明により理解されるように、本発明に係る水素貯蔵合金利用の冷熱発生方法及びその装置によれば、MH冷凍装置に対し、環境に優しい冷媒を低温冷媒に用いる冷凍装置又は冷凍機を組み合わせる水素貯蔵合金利用の冷熱発生方法及びその装置により、低温環境部に省エネで効率的に冷熱を提供することができるという効果を奏する。
【0097】
また、請求項1,の発明によれば、冷却水及び冷凍装置又は冷凍機の併用による冷却により、再生過程における低温MHタンク内の水素貯蔵合金の放熱を十分に行なうことができ、これにより、冷凍過程における低温MHタンク内の水素貯蔵合金からの冷熱放熱量を増大させることができ、低温環境部に効果的に冷凍出力できると共に、低温MHタンク内の水素貯蔵合金の冷却用と機械圧縮型冷凍装置又は冷凍機の熱源あるいはその蒸発器の加熱用のものとして地下水等の安価の水や自然エネルギーを用いることによる運転コストダウンと省エネの効果図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1参考例に係り、複数の低温MHタンク内にそれぞれ複数のコンデンサーを設置して熱交換を行う本発明の水素貯蔵合金利用の冷熱発生装置を示す図。
【図2】 同じく複数の低温MHタンクがそれぞれブライン循環装置を介して機械圧縮型冷凍機の複数のコンデンサーにカスケードされて熱交換を行う本発明の水素貯蔵合金利用の冷熱発生装置を示す図。
【図3】 同じく複数の低温MHタンクがそれぞれブライン循環装置を介して機械圧縮型冷凍機に備えられる一つのコンデンサーだけにカスケードされて熱交換を行う水素貯蔵合金利用の冷熱発生装置を示す図。
【図4】 温度−エントロピー特性を示し、CO2 冷凍サイクルと、CO2 蒸発器内のCO2 蒸発温度T CO2,L CO2 蒸発器内と低温環境部との間の熱伝達がブラインを介するとしない場合のCO2 コンデンサー内のCO2 凝縮温度T ' CO2,H 、T CO2,H 、CO2 冷凍サイクルに関してその高温熱源とされる冷凍過程の低温MHタンク内の温度T L 、その低温熱源温度とされる低温環境部内の温度T LLとの関係を示す線図。
【図5】 同じく冷媒蒸発器と低温環境部との間に設けるブライン循環装置の構造例を示す図。
【図6】 本発明の第実施の形態に係る水素貯蔵合金利用の冷熱発生装置を示す図。
【図7】 本発明の第実施の形態に係る水素貯蔵合金利用の冷熱発生装置を示す図。
【図8】 本発明の第2参考例に係る水素貯蔵合金利用の冷熱発生装置を示す図。
【図9】 従来例を示す図。
【符号の説明】
1:高温熱源
2a,3a:高温MHタンク(水素駆動用合金収納高温タンク)
2b,3b:低温MHタンク(冷熱取出用合金収納低温タンク)
4a,4b:冷却水(冷熱源)
5:低温環境部
6a,6b,6c,6d,6:ブライン流路
7a,7b,7:コンデンサー
8a,8b,15a,15b:電磁弁
9:膨張弁
10:冷媒レシーバー
11:冷媒圧縮機
12a,12b,12:冷媒蒸発器
13a,13b:低温MH/ブライン熱交換器
14a,14b,14:ブライン/冷却水熱交換器
16,16a,16b,17:冷媒配管
19,35,38,46:ブライン循環用配管
18,18a,18b,24a,24b,34:ブライン用ポンプ
20,21:水素流路
22:ブライン/低温環境部熱交換器
23,23a,23b:コンデンサーのブライン側流路
25:第2の流路切り換え用電磁弁
26:第1の流路切り換え用電磁弁
27,28:冷却水流路
30:水素貯蔵合金用ブライン冷却装置
31:冷凍機
32,33:ブライン/冷却水熱交換器
35:冷却水側の流路
37:低温MHタンク/ブライン熱交換器
40,41,44,45:3方切換電磁弁
47a,47b,47c,47d:4方バルブ
48a,48b:低温段ブラインポンプ
49a,49b:高温段ブラインポンプ
50a,50b,50c,50d:3方バルブ
51:冷却水/ブライン熱交換器
53:高温熱源/ブライン熱交換器
52,54:ブライン/M1 H熱交換器
57,58:ブライン/低温環境部熱交換器
59:ブライン循環装置
70,71:水素流路用バルブ
66a,66b:低温ブライン流路
67,68:3方切換バルブ
72:低温ブライン/低温環境部熱交換器
74:低温ブライン用ポンプ
76:低温ブライン循環用配管
I:MH冷凍装置
II,IIa,IIb:機械圧縮型冷凍装置(冷媒冷凍装置)
III,IIIa,IIIb:ブライン循環装置
IV:低温ブライン循環装置
1 H:高温段水素貯蔵合金
2 H:低温段水素貯蔵合金

Claims (5)

  1. 高温段の水素駆動用合金収納高温タンク(2a(又は3a))及び低温段の冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))を1組とするMH冷凍装置(I)が備えられ、該水素駆動用合金収納高温タンク(2a(又は3a))を加熱及び冷却させて、その中の高温段水素貯蔵合金(M1 H)とこれに対応する冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)との間で水素の授受を行わせ、その中から冷熱を取出し、低温環境部(5)に冷熱を与えるように冷凍工程を行う水素貯蔵合金利用の冷熱発生方法であつて、
    該冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内に、水素貯蔵合金用ブライン冷却装置(30)に付属する該冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))の低温段水素貯蔵合金(M2 H)との間で熱交換を行う低温MHタンク/ブライン熱交換器(37)を内装し、
    その中のブラインを循環させ、
    前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)の再生過程において、
    このブラインがブライン/冷却水熱交換器(32)により冷却されてから、前記低温MHタンク/ブライン熱交換器(37)を介して前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を冷却し、引き続き、冷凍機(31)により、前記低温MHタンク/ブライン熱交換器(37)を介して前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を十分に冷却し、低温段水素貯蔵合金(M2 H)に水素を十分に吸着させ、
    前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)の冷凍過程において
    該低温段水素貯蔵合金(M2 H)の解離反応による冷熱を前記低温MHタンク/ブライン熱交換器(37)を介してブライン/低温環境部熱交換器(22)により、低温環境部(5)に与えることを特徴とする水素貯蔵合金利用の冷熱発生方法。
  2. 高温段の水素駆動用合金収納高温タンク(2a(又は3a))及び低温段の冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))を1組とするMH冷凍装置(I)が備えられ、該水素駆動用合金収納高温タンク(2a(又は3a))を加熱及び冷却させて、その中の高温段水素貯蔵合金(M1 H)とこれに対応する冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)との間で水素の授受を行わせ、その中から冷熱を取出し、低温環境部(5)に冷熱を与えるように冷凍工程を行う水素貯蔵合金利用の冷熱発生装置であつて、
    該冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内に、水素貯蔵合金用ブライン冷却装置(30)に付属する該冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))の低温段水素貯蔵合金(M2 H)との間で熱交換を行う低温MHタンク/ブライン熱交換器(37)を内装し、
    その中のブラインを循環させ、
    前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)の再生過程において、
    このブラインがブライン/冷却水熱交換器(32)により冷却されてから、前記低温MHタンク/ブライン熱交換器(37)を介して前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を冷却し、引き続き、冷凍機(31)により、前記低温MHタンク/ブライン熱交換器(37)を介して前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を十分に冷却し、低温段水素貯蔵合金(M2 H)に水素を十分に吸着させ、
    前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)の冷凍過程において、
    該低温段水素貯蔵合金(M2 H)の解離反応による冷熱を前記低温MHタンク/ブライン熱交換器(37)を介してブライン/低温環境部熱交換器(22)により、低温環境部(5)に与えることを特徴とする水素貯蔵合金利用の冷熱発生装置。
  3. 前記水素貯蔵合金用ブライン冷却装置(30)が、低温環境部(5)との間で熱交換を行うブライン/低温環境部熱交換器(22)を備え、前記低温MHタンク/ブライン熱交換器(37)内のブラインをブライン/低温環境部熱交換器(22)に循環させて、冷却状態の該冷熱取出用合金収納低温タンク(2b(又は3b))から低温環境部(5)に冷熱を与えることを特徴とする請求項の水素貯蔵合金利用の冷熱発生装置。
  4. 高温段の水素駆動用合金収納高温タンク(2a又は3a)及び低温段の冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)を1組とするMH冷凍装置(I)が備えられ、該水素駆動用合金収納高温タンク(2a又は3a)を加熱及び冷却させて、その中の高温段水素貯蔵合金(M1 H)とこれに対応する冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)との間で水素の授受を行わせ、その中から冷熱を取出し、低温環境部(5)に冷熱を与えるように冷凍工程を行う水素貯蔵合金利用の冷熱発生方法であつて、
    該冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内に、水素貯蔵合金用ブライン循環装置(IIIb)に付属する該冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)の低温段水素貯蔵合金(M2 H)との間で熱交換を行う低温MH/ブライン熱交換器(13a、13b)を内装し、水素貯蔵合金用ブライン循環装置(IIIb)に付属するブライン/冷却水熱交換器(33)により、前記ブラインを冷却水(4b)により冷却可能であり、
    また、第1の流路切り換え用電磁弁(26a、26b)の切り替えにより、前記ブラインにより前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)を冷却、又は低温環境部(5)への冷凍出力可能であり、
    また、前記冷却水(4b)は、前記ブラインの冷却と機械圧縮型冷凍装置(IIb)のコンデンサー(7)の冷却の二重役割を果たし、第2の流路切り換え用電磁弁(25 a、25 b)の切り替えにより前記ブライン/冷却水熱交換器(33)又は前記コンデンサー(7)の冷却水側の流路(35)へ交替で流すことが可能であり、
    また、前記機械圧縮型冷凍装置(IIb)の冷媒蒸発器(12a又は12b)をそれぞれ前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内に、その中の前記低温段水素貯蔵合金(M2 H)をブラインを介しないで冷却できるように設置し、
    その中のブラインをブライン用ポンプ(18a,18b)により循環させ、
    前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)の再生過程において、
    このブラインがブライン/冷却水熱交換器(33)により冷却されてから、前記低温MH/ブライン熱交換器(13a又は13b)を介して前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を第1ステップで冷却し、その後、前記第2の流路切り換え用電磁弁(25 a、25 b)の切り替えにより前記冷却水(4b)を前記コンデンサー(7)の冷却水側流路(35)に流し、同時に、前記機械圧縮型冷凍装置(IIb)を作動させて、冷媒蒸発器(12a又は12b)により、前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を、第2のステップで前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を十分に冷却し、低温段水素貯蔵合金(M2 H)に水素を十分に吸着させ、
    前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)の冷凍過程において、
    前記機械圧縮型冷凍装置(IIb)と冷却水(4b)の流れを止め、第1の流路切り換え用電磁弁(26a及び26b)を切り換え、
    該低温段水素貯蔵合金(M2 H)の解離反応による冷熱をブライン/低温環境部熱交換器(57)を介して、低温環境部(5)に与えることを特徴とする水素貯蔵合金利用の冷熱発生方法。
  5. 高温段の水素駆動用合金収納高温タンク(2a又は3a)及び低温段の冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)を1組とするMH冷凍装置(I)が備えられ、該水素駆動用合金収納高温タンク(2a又は3a)を加熱及び冷却させて、その中の高温段水素貯蔵合金(M1 H)とこれに対応する冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)との間で水素の授受を行わせ、その中から冷熱を取出し、低温環境部(5)に冷熱を与えるように冷凍工程を行う水素貯蔵合金利用の冷熱発生装置であつて、
    該冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内に、水素貯蔵合金用ブライン循環装置(IIIb)に付属する該冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)の低温段水素貯蔵合金(M2 H)との間で熱交換を行う低温MH/ブライン熱交換器(13a、13b)を内装し、水素貯蔵合金用ブライン循環装置(IIIb)に付属するブライン/冷却水熱交換器(33)により、前記ブラインを冷却水(4b)により冷却可能であり、
    また、第1の流路切り換え用電磁弁(26a、26b)の切り替えにより、前記ブラインにより前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)を冷却、又は低温環境部(5)への冷凍出力可能であり、
    また、前記冷却水(4b)は、前記ブラインの冷却と機械圧縮型冷凍装置(IIb)のコンデンサー(7)の冷却の二重役割を果たし、第2の流路切り換え用電磁弁(25 a、25 b)の切り替えにより前記ブライン/冷却水熱交換器(33)又は前記コンデンサー(7)の冷却水側の流路(35)へ交替で流すことが可能であり、
    また、前記機械圧縮型冷凍装置(IIb)の冷媒蒸発器(12a又は12b)をそれぞれ前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内に、その中の前記低温段水素貯蔵合金(M2 H)をブラインを介しないで冷却できるように設置し、
    その中のブラインをブライン用ポンプ(18a,18b)により循環させ、
    前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)の再生過程において、
    このブラインがブライン/冷却水熱交換器(33)により冷却されてから、前記低温MH/ブライン熱交換器(13a又は13b)を介して前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を第1ステップで冷却し、その後、前記第2の流路切り換え用電磁弁(25 a、25 b)の切り替えにより前記冷却水(4b)を前記コンデンサー(7)の冷却水側流路(35)に流し、同時に、前記機械圧縮型冷凍装置(IIb)を作動させて、冷媒蒸発器(12a又は12b)により、前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を、第2のステップで前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)を十分に冷却し、低温段水素貯蔵合金(M2 H)に水素を十分に吸着させ、
    前記冷熱取出用合金収納低温タンク(2b又は3b)内の低温段水素貯蔵合金(M2 H)の冷凍過程において、
    前記機械圧縮型冷凍装置(IIb)と冷却水(4b)の流れを止め、第1の流路切り換え用電磁弁(26a及び26b)を切り換え、
    該低温段水素貯蔵合金(M2 H)の解離反応による冷熱をブライン/低温環境部熱交換器(57)を介して、低温環境部(5)に与えることを特徴とする水素貯蔵合金利用の冷熱発生装置。
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