JP4147507B2 - 米菓用乳化組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は米菓用水性乳化組成物、特に米菓の表面保護機能を有する乳化組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
米菓の製造においては、表面の艶出しやひび割れ防止のためのサラダ掛けが一般的に行われている。サラダ掛けでは、通常、焼き上げた米菓生地に、調味料を掛け、乾燥後、サラダ油や酸化防止剤を添加した専用油を掛けている。
しかし、この方法では、2度手間を要する上に、調味料のノリが悪くなったり、ムラが出来たりする一方で、食塩、砂糖やアミノ酸等を含む水溶性の調味料を使用すると、米菓の表面にひび割れが生じ易くなり、著しく商品価値を低下させるという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
こうした問題を解決するために、以下の改良策が提案されている。
すなわち、▲1▼醤油、食用油、澱粉を特定比率で配合した米菓用乳化調味料(特公昭49−46915号)、▲2▼レシチン、親油性ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルおよびプロピレングリコール脂肪酸エステル等の親油性乳化剤を液体油脂に添加してなる油側成分と水、多価アルコール、糖類、親水性乳化剤とからなる水側成分とを配合してなる、水に容易に乳化する油脂組成物の製造法(特開昭59−32094号)、▲3▼醤油および食用油脂にジアセチル酒石酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルの1種または2種以上の乳化剤を使用して乳化するか、これに膨潤抑制され、かつα化された澱粉、カゼインナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルの1種または2種以上の安定剤を併用して乳化せしめて乳化調味料を製造する方法(特公昭61−48902号)等である。
【0004】
しかし、これらの方法も一長一短があり十分ではなく、種々の問題点を有している。
例えば▲1▼では食用油に乳化剤が入っていないので、調味料全体の馴染みが悪く、米菓へのノリが悪くなりムラを生ずる。
▲2▼では、澱粉の如き高分子化合物が配合されていないため、表面の被覆力が弱く、米菓の表面にひび割れが生じ商品価値を著しく損なう。▲3▼では、レシチンが配合されていないため、調味料のノリが悪くムラができ易い。
こうした実情により、作業が簡便で、艶が良くひび割れを生ぜず見栄えの良い米菓を製造し得る掛け油が求められた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、米菓用掛け油の製造に際して、食用油脂、調味料に加えて、レシチンと加工澱粉を特定量併用してなる乳化組成物を用いることにより、油の塗布と調味を同時に行い、かつ充分な米菓のひび割れ防止効果が得られることを見出し本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、食用油脂100重量部に対して、レシチン0.1〜20重量部、加工澱粉5〜100重量部及びレシチン以外の乳化剤0.01〜10重量部を配合してなる米菓用乳化組成物である。
【0006】
本発明の乳化組成物が優れた性能を示すのは、以下の理由であると推定される。
1)レシチンは、ホスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミンなどの混合物で、単一の成分ではないため、HLBが親油性の領域にありかつその幅が広く、米菓に対する調味料のノリを良くし、その結果、ムラができにくくなる。
特に精製レシチンを使用すると上記の特質は更に強調される。更に、精製レシチンは、クルードレシチンと乳化性能は変わらず、加熱により容易に褐変する植物由来の糖やアミノ化合物などの多種の不純物が除去されているため、異味、異臭がなく、米菓等の表面に塗布するのに最適である。
本発明において精製レシチンとは、特開平5−176687号公報に記載されているもので、植物由来のクルードレシチンを低級アルコールにて抽出し、該抽出液を酢酸あるいは重炭酸塩型とした強塩基性陰イオン交換樹脂と接触させた後、得られたろ過液から溶媒を除去して得られるものである。
【0007】
乳化調味料においては、増粘、艶出しのために澱粉を添加することがあるが、米菓用掛け油の場合には、調味料製造時および塗布後の加熱・乾燥の過程で澱粉粒子が膨潤、崩壊し、米菓の表面を充分に被覆しきれず、その結果ひび割れを生じてしまう。
加工澱粉を使用すると、未変性の澱粉に比べて澱粉粒子の保形性が優れているため、加熱・乾燥の工程においても粒子が膨潤、崩壊し難く、ひび割れを生じない。特に架橋澱粉の場合には、澱粉粒子を構成するアミロースとアミロペクチンとの間が架橋されているため、米菓の表面が完全、強固に被覆されひび割れを生じない。
【0008】
一方、乳化剤はレシチンの沈殿防止を目的として添加するものである。乳化剤が共存しないと、乳化組成物からレシチンが分離、沈殿し商品価値を損ねることになる。
このように、本発明においては、食用油脂、レシチン、加工澱粉および乳化剤の4種の構成物質が独自の機能を発揮すると共に、これに加えられる調味料の各構成物質が共存、混ぜん一体となって相乗的に効果を発揮するものと判断される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する食用油脂としては、食用に供することのできる油脂であれば特に限定されることはなく、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ油、綿実油、落花生油、コーン油、紅花油、オリーブ油、米油、ゴマ油、パーム油、シア油、イリッペ油、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等の植物油脂、乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物油脂が例示でき、原料に応じて硬化、分別、エステル交換を施すことができる。これらは単独あるいは2種以上を混合して使用できる。そのうち、ナタネ油、大豆油、コーン油、綿実油、紅花油、米油、ゴマ油などの液状油が好ましい。
【0010】
本発明で使用するレシチンは、植物由来で、そのうちクルードレシチンを低級アルコールで抽出し、該抽出液を酢酸或いは重炭酸塩型とした強塩基性陰イオン交換樹脂と接触させた後、得られた濾過液から溶媒を除去してなるレシチンが特に好ましい。
レシチンの配合量は、食用油脂100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは1.0〜5.0重量部である。0.1重量部より少ないと調味料のノリが悪くなり、20重量部より多いと保存中に沈殿を生じ商品価値を損ねることになる。
【0011】
本発明に使用する加工澱粉としては、とうもろこし、もちとうもろこし、米、もち米、小麦、甘藷、馬鈴薯、もち馬鈴薯、タピオカ、サゴヤシなどの各種澱粉をエステル化、エーテル化、架橋、酸化あるいは酸変性処理をしたもの、あるいはこれらの処理を組み合わせて施したものが使用できる。これらは単独あるいは2種以上を混合して使用できる。その中でも、架橋澱粉を含むものが好ましく、特に架橋小麦澱粉を含むものが最適である。
なお、エステル化澱粉のうち、オクテニルコハク酸エステル化澱粉は乳化作用を有するため、乳化剤と併用することもできる。
加工澱粉の配合量は、食用油脂100重量部に対して5〜100重量部、好ましくは20〜60重量部である。
5重量部より少ないと米菓への被覆力が少なくひび割れが生じ、100重量部より多いと乳化組成物の粘度が高すぎて使用し難くなる。
【0012】
本発明における乳化剤としては、食品分野で使用される乳化剤を用いることが出来、親油性ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルおよびプロピレングリコール脂肪酸エステル等を挙げることが出来、これらは1種単独又は2種以上併用しても良い。
レシチン以外の乳化剤の配合量は、食用油脂100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。0.01重量部より少ないとレシチンの沈殿を防止できず、10重量部より多いと米菓の風味が低下する。
【0013】
本発明における調味料としては、醤油、砂糖、食塩、アミノ酸類、みりん等、米菓の分野で使用される調味料を使用することが出来る。
これらの全体としての配合量は、対象とする米菓および使用する調味料によって異なるが、食用油脂100重量部に対して50〜300重量部の範囲で使用される。50重量部より少ないと味付けが薄く食味に満足感が得られず、300重量部より多いと米菓本来の味わいを損ねる場合がある。
その他、必要に応じて増粘多糖類等の各種添加剤を併用しても良い。
なお、本発明の水性乳化組成物は、O/W型乳化物であり、濃度は40〜60%が望ましい。水分が60重量%以上になると米菓表面にひび割れを生じ易くなり、40重量%以下では安定性に問題が生ずる虞がある。
【0014】
本発明における米菓用水性乳化組成物の調製方法には特に制限はなく、各成分を同時に混合乳化しても、或いは特定成分のみのを予め混合しておいて、それらを更に混合乳化させる方法の何れでも良いが、各構成成分を所定量の水と共に混合し、必要に応じて加熱攪拌した後、ホモジナイザー等により機械的に乳化するのが一般的な調製方法である。
乳化組成物の粘度は、適用する米菓によって異なるが100〜1000cps/30℃の範囲、好ましくは300〜400cps/30℃程度のものとするとよい。
【0015】
本発明の米菓用乳化組成物は、煎餅、かき餅、あられ等種々の米菓に適用出来る。適用方法としては、例えば、通常の煎餅の場合、うるち米の粉を蒸して搗いて餅とし、適当な厚さに延して円形等に打ち抜き乾燥したものを焼きあげるが、この焼きあげたもの(素焼き生地)に、本発明の乳化組成物を噴霧、刷毛塗り、浸漬等によって行うことが出来る。
適用後は、通常は適当な手段によって加熱乾燥させるが、米菓によっては焼き上げ時の余熱のためにその後の乾燥が不要のものもある。
【0016】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の主旨はもとよりこれに限定されるものではない。
実施例および比較例
乳化調味料の調製
表1に示す配合の構成成分をそれぞれ所定量、加熱鍋に測り取り、良く攪拌して90℃で10分間加熱攪拌した。
室温に冷却後、上記混合物200gをTKホモミキサー(特殊機工工業 (株)製 MARKII)により、10000回転、3分間の条件で乳化させて実施例1〜4(本発明の水性乳化組成物)および比較例1〜8の各乳化調味料を調製した。
【0017】
表1において
【0018】
性能試験
米菓として、8mm×25mm×3mmのあられの素焼き生地を用い、この素焼き生地約300gと上記乳化調味料60gとをビニール袋に取り、よく振り生地に調味料を充分に付着させた。
次にアルミホイルを敷いた天板の上に、上記の調味料付き生地を均一に敷き、80℃の恒温器で60分間乾燥させた。
調味料のノリとムラおよび風味は10人のパネラーによる試食試験の結果を総合した結果である。結果は5点法による平均値を示す。
なお、ひび割れ試験は、200ml蓋付きプラスチックカップに上記あられを約40gづつ入れたもの各6個を段ボール箱に入れ、1mの高さから2回落下させて割れ率を測定した。割れ率は、落下後、欠損部位の生じたあられを取り除き、減少重量と供試重量の比率とした。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
Claims (4)
- 食用油脂100重量部に対して、レシチン0.1〜20重量部、酸化澱粉、アセチル化澱粉及び架橋澱粉から選ばれる1種または2種の加工澱粉5〜100重量部及びレシチン以外の乳化剤0.01〜10重量部を配合してなる米菓用水性乳化組成物。
- レシチンが、精製レシチンである請求項1に記載の米菓用水性乳化組成物。
- 加工澱粉が、架橋小麦澱粉を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の米菓用水性乳化組成物。
- レシチン以外の乳化剤がグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルのうちから選ばれる1種または2種以上の乳化剤である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の米菓用水性乳化組成物。
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