JP4146617B2 - 工作機械のツールアンクランプ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マシニングセンタ等の工作機械の主軸に装着したツールをアンクランプするための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
マシニングセンタの主軸にはドローバーが内蔵されており、このドローバーがツールホルダ末端のプルスタッドをコレットでつかみ、バネの力で引き込むことによってツールが主軸にクランプされる。このドローバーを、バネの力に抗して前方に押し出せば、コレットが開放されてツールはアンクランプされる。アンクランプの際のドローバーの押し出し動作は、以前は油圧シリンダーによって行っていたが、油圧シリンダーは応答性が悪いために、高速化するATC装置に対応できなくなり、近年ではドローバーの押し出し動作を、カムやリンク等を用いたメカ的な機構により、ATC装置と連動させて行うものが主流となっている。
【0003】
このタイプの従来例を図4に基づいて説明すると、ドーローバー3の末端には受動ピン4が直交して貫通しており、受動ピン4の両端は主軸1に設けた前後方向の長穴22を通して主軸1から突出している。この受動ピン4の両端部を、主軸頭10に揺動可能に軸支したアンクランプアーム40の腕41で直接押すことで、ドローバー3を前方に押し出してツール2をアンクランプするようになっている。ツール交換は、図5に示すように、主軸頭10をATC装置47近傍の自動ツール交換位置に移動させて、アンクランプアーム40のもう一方の腕42をATC装置47のアンクランプカム32に接する状態とし、アンクランプカム32とATCアーム46をカム機構により連動して回転させることで、ツール2のクランプ・アンクランプ動作とツール交換が連動して瞬間的に行われる。なお、図中の符号49はツールマガジンである。
【0004】
なお、主軸1の先端にはドライブキー45を有し、これをツールホルダのフランジ部48の周囲二箇所に形成してある切り欠きに嵌合することで、ツールの空回りを防止しているが、自動ツール交換時には、ATCアーム46がドライブキー45と干渉しないように、ATCアーム46にドライブキー45の逃げ50と、ツールホルダの切り欠きに嵌合させるATCアームキー51を設け、主軸1をこれに対応した一定の角度αで停止させた状態でツール2を把持するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような構成のツールアンクランプ装置は、スピンドルモータを主軸1に直結できることから、迅速な加減速の切り替えや精度の良い加工が可能となり、さらには主軸頭10がATC装置と独立して移動することが可能となるなどの利点があり、特に小型のマシニングセンタには最適な構造であったが、以下のような問題点があった。自動ツール交換時の主軸停止角度αは、その時の主軸頭10とATC装置47の位置関係(厳密には主軸1とATCアーム軸の配置角度γ)によって決まるが、ATC装置の設置場所は、マシニングセンタの機種によって異なり、主軸頭10とATC装置47の位置関係も変わってくるから、主軸停止角度αも機種によってまちまちなものとなる。上記のアンクランプ装置では、主軸1をまたぐようにしたアンクランプアーム40の腕41で受動ピン4を直接押す構造であるために、主軸1がどの角度で停止してもアンクランプできるわけではなく、主軸停止角度αに対して受動ピンの配置角度βを考慮しなければならない。よって、ATC装置47の設置場所が異なるごとに主軸1を設計しなおす必要があり、主軸1の共通化ができないという問題があった。また、別の問題点として、揺動するアンクランプアーム40を、一方の腕41が主軸頭10の内部に入り込み、もう一方の腕42が主軸頭から飛び出すような状態で軸支してあるために、主軸頭のケーシング17に開口43を設ける必要があり、これによって主軸頭10の剛性が不十分となったり、開口43から切り屑や切削油が主軸頭10内部に入り込み、主軸1などの損傷を招くことがあった。
【0006】
本発明は以上に述べたような実情に鑑みてなされたものであって、自動ツール交換時の主軸頭とATC装置の位置関係によらず主軸を共通化することができ、主軸頭の剛性を損なうこともなく、主軸頭内部への切り屑や切削油の侵入を防止できるツールアンクランプ装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を達成するために、請求項1記載の発明によるツールアンクランプ装置は、中空の主軸に内蔵され、主軸の軸方向に摺動してツールをクランプ・アンクランプするドローバーと、ドローバーを貫通して両端が主軸から突出する受動ピンと、受動ピンの両端を円筒形の収容部に収容して主軸の軸方向に移動する、主軸とともに回転しないアンクランプリングと、主軸に対して交差する向きで、主軸をはさんで平行に支持した2本のスライドシャフトを備え、アンクランプリングにはカム部が形成してあり、スライドシャフトはカム部に接するカムフォロワを有するとともに一端が主軸頭から突出しており、スライドシャフトを主軸頭の外側から押し込むと、カム部とカムフォロワを介してアンクランプリングが前方に押し出され、ツールがアンクランプされることを特徴とする。スライドシャフトを押し込む手段については限定しない。
【0008】
以上の構成のツールアンクランプ装置によれば、主軸が如何なる角度で停止しても、受動ピンが必ずアンクランプリングに係合するので、ATC装置との関係で主軸の停止角度を変更しなければならないとしても、受動ピンの配置角度を気にする必要がなく、主軸を共通化することができる。また、スライドシャフトの往復運動によってアンクランプするようにしたので、主軸頭のケーシングに開口を設ける必要がなくなり、主軸頭の剛性を高めるとともに、主軸頭内部への切り屑等の侵入を阻止できることとなった。
【0009】
請求項2記載の発明は、スライドシャフトの押し込み力が解除された時に、ドローバー、アンクランプリング、及びスライドシャフトが、ツールクランプ時の位置に自動的に戻るように、バネにより付勢してあることを特徴とする。このことは、ツールのクランプ・アンクランプ動作を、ATC装置とメカ的な機構により連動して行う上で有利である。
【0010】
さらに請求項3に記載したように、前記アンクランプリングは、アウターリングとインナーリング、及びボールガイドとで構成することが好ましい。このようにすると、インナーリングは軸方向に移動するだけでなく、回転も可能なように案内されることとなり、2本のスライドシャフトのカムフォロワの位置が、加工や組み付けの精度誤差のために多少ずれていたとしても、インナーリングが回転して、片方のカムフォロワのみがカム部に強く当るのを防止できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明のツールアンクランプ装置を備えた主軸頭10の軸方向の断面図であり、図2は図1のA−A断面図である。なお、図1と図2は、ツールをクランプしている時の状態を示している。この主軸頭10はマシニングセンタの主軸として、サーボモータとボールネジを用いたスライドユニットを介して、三次元的に移動及び位置決めができる状態で設置される。
【0012】
主軸頭10のケーシング17には、主軸1がベアリング18を介して回転自在に支持されており、主軸1はカップリング19で主軸モーター20に直結してある。主軸1は中空になっていて、ドローバー3を主軸1の軸方向に摺動可能に内蔵している。ツール2のクランプは、ドローバー3先端のコレット21でツール末端のプルスタッド33をつかみ、ドローバー3を主軸1に内蔵した皿バネ11の力で後方に引き込むことによってなされる。ドローバー3を、皿バネ11の力に抗して前方に押し出すとコレット21が解放され、ツール2はアンクランプされる。このドローバー3の押し出し動作を行う機構が今回の発明の要部である。
【0013】
ドローバー3の後部には受動ピン4が貫通しており、受動ピン4の両端は主軸1に設けた前後方向の長穴22を通して主軸1から突出し、その周囲にはアンクランプリング6が主軸1を挿通させて設けられている。アンクランプリング6は、アウターリング14とインナーリング15を有し、両者の間には多数の鋼球をリテーナで保持したボールガイド16を介在させてあり、インナーリング15は主軸1に沿って前後に移動し、且つ回転可能な状態となっている。インナーリング15には前側が開放する円筒形の収容部5を設けてあり、そこに受動ピン4を収容している。またインナーリング15は、先端にツバ23を設けてコイルバネ12を当接させ、後方に向かって付勢してあり、ツールクランプ時にはツバ23がアウターリング14に係止し、インナーリング15は主軸1及び受動ピン4と非接触の状態で保持される。さらに図3に示すように、インナーリング15の後側の面には段差を設けるとともに、段差面を斜面24で緩やかに連続させ、カム部8を形成している。
【0014】
インナーリング15の後方には、主軸1を両側からはさむように、2本の平行なスライドシャフト7を、主軸1に対して交差する向きで設置してある。スライドシャフト7は、ケーシング17に嵌入したブッシュ25に挿通され、摺動自在に支持されている。両スライドシャフト7には、インナーリング15のカム部8に接するカムフォロワ9を有している。また、スライドシャフト7はケーシング17の外側で、回り止めロッド26により互いに連結されている。回り止めロッド26とケーシング17との間には、コイルバネ13が介在しており、スライドシャフト7をケーシング17から突き出る向きに付勢している。
【0015】
ケーシング17外側のスライドシャフト7が突出する面には、L型のアンクランプアーム27が回動自在に軸支してある。アンクランプアーム27の一方の腕28にはカムフォロワ30を取り付けて、スライドシャフト7の端面に当接させ、もう一方の腕29にはローラーフォロワ31を軸支してある。主軸頭10を自動ツール交換位置に移動させると、ATC装置のアンクランプカム32に、ローラーフォロワ31が近接する状態となる。
【0016】
この状態でATC装置を起動すると、ATC装置に内蔵した複合カムの働きにより、アンクランプカム32がATCアームに連動して回転し、ローラーフォロワ31を押しながらアンクランプアーム27を前方に向けて傾倒させる。すると、スライドシャフト7がアンクランプアーム27に押されてケーシング17内部に向って摺動し、カムフォロワ9がインナーリング15のカム部8に接しながら移動するので、インナーリング15は前方に向って押し出される。この時、受動ピン4がインナーリング収容部5の後壁に係止して、ドローバー3もインナーリング15といっしょに前方に押し出されるので、ツール2がアンクランプされる。ATCアームは、アンクランプしたツール2を抜き取って別のツールを主軸1に挿入する。アンクランプカム32が一回転すると、スライドシャフト7の押し込み力が解除されるので、皿バネ11、コイルバネ12,13の働きにより、ドローバー3、インナーリング15、スライドシャフト7は元の位置に自動的に復帰し、ツール2が再びクランプされる。こうしてATC装置による一連のツール交換の動作が行われる。
【0017】
本発明のツールアンクランプ装置は、以上に述べた実施形態に限定するものではない。例えば、アンクランプアーム27を油圧シリンダーによって動かしてアンクランプしても良いし、アンクランプアーム27を主軸頭10に設置しないで、スライドシャフト7をカムやシリンダーで直接押す構成にしても良い。
【0018】
【発明の効果】
請求項1記載の発明による工作機械のツールアンクランプ装置は、ドローバーを貫通させた受動ピンを、アンクランプリングで押してアンクランプするようにしたので、主軸がどんな角度で停止してもアンクランプすることができ、自動ツール交換時における主軸頭とATC装置の位置関係によらず、主軸を共通化できる。アンクランプリングは、主軸とともに回転しないので、主軸のイナーシャを大きくすることがない。また、スライドシャフトの往復運動を、カムによってアンクランプリングの往復運動に変換する構造とすることで、主軸頭の開口をなくすことができ、主軸頭の剛性および耐久性を高めることができる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、ツールのクランプ・アンクランプ動作を、ATC装置と連動して高速且つ正確に行うことができる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、インナーリングが、軸方向に移動するばかりでなく、回転も可能なようにボールガイドで転がり案内されているので、インナーリングがスライドシャフトの動きに合わせて、小さな摩擦抵抗でスムーズに動作し、ツールのクランプ・アンクランプ動作の確実性と信頼性が高まる。また、ボールガイドは、摺動軸受けよりも定格荷重が大きく取れるため、ATC装置による強大なアンクランプ力に対しても十分な耐久性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のツールアンクランプ装置を用いた主軸頭の軸方向の断面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】本発明の主要な部分を示す斜視図である。
【図4】従来のツールアンクランプ装置の構造を示す主軸頭の断面図である。
【図5】自動ツール交換時における主軸頭とATC装置の取り合いを示す正面図である。
【符号の説明】
1 主軸
2 ツール
3 ドローバー
4 受動ピン
5 収容部
6 アンクランプリング
7 スライドシャフト
8 カム部
9 カムフォロワ
10 主軸頭
11 皿バネ(バネ)
12,13 コイルバネ(バネ)
14 アウターリング
15 インナーリング
16 ボールガイド

Claims (3)

  1. 中空の主軸(1)に内蔵され、主軸(1)の軸方向に摺動してツール(2)をクランプ・アンクランプするドローバー(3)と、ドローバー(3)を貫通して両端が主軸(1)から突出する受動ピン(4)と、受動ピン(4)の両端を円筒形の収容部(5)に収容して主軸(1)の軸方向に移動する、主軸(1)とともに回転しないアンクランプリング(6)と、主軸(1)に対して交差する向きで、主軸(1)をはさんで平行に支持した2本のスライドシャフト(7)を備え、アンクランプリング(6)にはカム部(8)が形成してあり、スライドシャフト(7)はカム部(8)に接するカムフォロワ(9)を有するとともに一端が主軸頭(10)から突出しており、スライドシャフト(7)を主軸頭(10)の外側から押し込むと、カム部(8)とカムフォロワ(9)を介してアンクランプリング(6)が前方に押し出され、ツール(2)がアンクランプされることを特徴とする工作機械のツールアンクランプ装置。
  2. スライドシャフト(7)の押し込み力が解除された時に、ドローバー(3)、アンクランプリング(6)、及びスライドシャフト(7)が、ツールクランプ時の位置に自動的に戻るように、バネ(11,12,13)により付勢してあることを特徴とする請求項1記載の工作機械のツールアンクランプ装置。
  3. 前記アンクランプリング(6)が、アウターリング(14)とインナーリング(15)、及びボールガイド(16)とからなることを特徴とする請求項1又は2記載の工作機械のツールアンクランプ装置。
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