本発明は、電子写真などに用いられ、画像濃度が高く、加熱により画像を消色でき、しかも熱消去後の残像が少ない、消去可能な画像形成材料である電子写真用トナーに関する。
地球環境の保護およびCO2による温室効果を抑制するためには森林の保護は絶対条件であり、新たな伐採を最低限に維持し、植林を含めた森林再生とのバランスを保つためには現在すでに保有している紙資源を如何に効率よく利用していくかが大きな課題となっている。現在の紙資源の再利用は、画像形成材料を剥離させる脱墨工程を経た紙繊維を質の悪い紙に漉き直して目的別に使い分ける「リサイクル」であり、脱墨工程のコスト高の問題や廃液の処理による新たな環境汚染の可能性などが指摘されている。
その一方で、これまでに古くは鉛筆とケシゴム、筆記用具に修正液にあるように、画像の修正によるハードコピーの再利用に関しては実用化がなされてきた。また、最近ではハードコピー用紙のリユースを目的とした特殊紙リライタブルペーパーなどが提案されてきた。ここで紙質の劣化を極力防ぎ同一の目的に複数回使用する「リユース」は、紙質を落としながら他の目的に使用する「リサイクル」とは異なる概念であり、紙資源の保護の観点からみればより重要な概念であるといえる。それぞれの「リサイクル」の前段階で有効な「リユース」が行われれば新たに必要な紙資源を最小限に抑えることができる。例えば、リライタブルペーパー技術を用いると、使用による皺や折れ曲がりなどの紙の痛みを気にしなければ100回以上の「リユース」が可能であるから、紙資源の利用効率は飛躍的に向上することになる。しかし上述のリライタブルペーパーは、特殊紙を使うために、「リユース」はできても「リサイクル」ができない技術であり、また熱記録以外の記録技術に適用できないという欠点を有していた。
本発明者らはすでに、呈色性化合物と顕色剤との相互作用が増大すると発色状態となり、相互作用が減少すると消色状態になることに着目して、呈色性化合物および顕色剤を含有する組成系に新たに顕色剤を捕獲する消色剤を加えることにより、室温付近の温度で発色状態が安定に存在し、かつ、熱や溶媒による処理で、実用温度において長期に消色状態を固定できる画像形成材料(たとえば特許文献1〜3参照)および画像消去方法(たとえば特許文献4参照)を提案している。これらの画像形成材料は、画像の発色・消色状態の安定性が高く、加えて材料も安全性が高く、電子写真用トナー、液体インク、インクリボン、筆記用具の全てに対応可能であり、しかも大規模消色処理が可能であるという従来の技術にないメリットを有している。このため、これらの画像形成材料を用いれば、現行のリサイクル技術に代わる有効な紙のリユース技術を実現でき、紙ゴミを著しく減少できることから、省資源に大きな効果がある。
さらに、本発明者らは、これらの消去可能な画像形成材料の特性向上を検討する過程で紙の構成要素であるセルロースが消色剤の機能を有することを見出し、被記録媒体に紙を用いる用途では消去剤を含有しない画像形成材料でも熱や溶媒による処理で消去できることを立証している。
しかし、実用的な観点から、高い画像濃度、良好な熱消去特性、および耐光性のすべてについて、さらなる改善が要求されている。
特開平10−88046号公報
特開平11−212295号公報
特開平11−268409号公報
特開平11−272133号公報
本発明の目的は、高い画像濃度、良好な熱消去特性、および良好な耐光性を併せ持つ、消去可能な画像形成材料である電子写真用トナーを提供することにある。
本発明の一態様に係る消去可能な電子写真用トナーは、呈色性化合物、顕色剤、およびバインダー樹脂を含有する粉体を少なくとも二種混合した混合物からなり、一種の粉体は前記呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトンを含有し、他の一種の粉体は前記呈色性化合物として3−(4−ジエチルアミノ2−アルキルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリドを含有し、前記呈色性化合物の全量に対する前記クリスタルバイオレットラクトンの重量比率が18%以上82%以下であることを特徴とする。
本発明の他の態様に係る消去可能な電子写真用トナーは、呈色性化合物、顕色剤、およびバインダー樹脂を含有する粉体を少なくとも二種混合した混合物からなり、一種の粉体は前記呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトンを含有し、他の一種の粉体は前記呈色性化合物として3−(4−ジエチルアミノ2−アルキルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリドおよびクリスタルバイオレットラクトンを含有し、前記呈色性化合物の全量に対する前記クリスタルバイオレットラクトンの重量比率が18%以上82%以下であることを特徴とする。
本発明によれば、画像濃度、熱消去特性および耐光性を総合的に見て、従来よりも優れた消去可能な画像形成材料である電子写真用トナーを提供することができる。
消去可能な画像形成材料に含有される呈色性化合物としてはロイコ染料が用いられている。ロイコ染料としては、たとえばロイコオーラミン類、ジアリールフタリド類、ポリアリールカルビノール類、アシルオーラミン類、アリールオーラミン類、ローダミンBラクタム類、インドリン類、スピロピラン類、フルオラン類などが知られている。
青発色のロイコ染料のうち、クリスタルバイオレットラクトン(CVL)は、熱消色特性に優れているが、光によって容易に分解するという欠点があった。
一方、耐光性が大幅に改善された青発色のロイコ染料として、3−(4−ジエチルアミノ2−アルキルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリドが開発された。これらのロイコ染料は、耐光性に優れているだけでなく、CVLに比較して画像濃度が高いという長所をもつ。しかし、これらのロイコ染料は、CVLに比較して熱消去特性の点で劣っているという課題があった。
これに対して、本発明者らは、呈色性化合物、顕色剤、およびバインダー樹脂を含有する粉体を少なくとも二種混合した混合物とし、一種の粉体には呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン(CVL)を含有させ、他の一種の粉体には呈色性化合物として3−(4−ジエチルアミノ2−アルキルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド(および必要に応じてCVL)を含有させ、呈色性化合物の全量に対するCVLの重量比率を18%以上82%以下とした消去可能な画像記録材料は、画像濃度、熱消去特性および耐光性のすべてに優れていることを見出した。
本発明の実施形態において、3−(4−ジエチルアミノ2−アルキルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリドには、以下のような化合物が含まれる。すなわち、
3−(4−ジエチルアミノ2−メトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3−(4−ジエチルアミノ2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3−(4−ジエチルアミノ2−プロポキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3−(4−ジエチルアミノ2−ペンチルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3−(4−ジエチルアミノ2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3−(4−ジエチルアミノ2−オクチルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリドなどである。
本発明の実施形態において、顕色剤としては、フェノール類、フェノール金属塩類、カルボン酸金属塩類、ベンゾフェノン類、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸類、リン酸金属塩類、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステル金属塩類、亜リン酸類、亜リン酸金属塩類などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。これらのうちでも特に好適な材料として以下のようなものが挙げられる。没食子酸または没食子酸エステル、たとえば没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸n−プロピル、没食子酸i−ブチルなど;ジヒドロキシ安息香酸またはそのエステル、たとえば2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸メチルなど;ヒドロキシアセトフェノン類、たとえば2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,6−ジヒドロキシアセトフェノン、3,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,3,4−トリヒドロキシアセトフェノンなど;ヒドロキシベンゾフェノン類、たとえば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなど;ビフェノール類、たとえば2,4’−ビフェノール、4,4’−ビフェノールなど;多価フェノール類、たとえば4−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4−[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,6−ビス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビス(ベンゼン−1,2,3−トリオール)]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビス(1,2−ベンゼンジオール)]、4,4’,4’’−エチリデントリスフェノール、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレントリス−p−クレゾールなどである。これらの顕色剤のうちで特に好適なものは、没食子酸エステル、たとえば没食子酸エチル、没食子酸n−プロピル、没食子酸i−プロピル、没食子酸ブチルなど;ヒドロキシベンゾフェノン類、たとえば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどである。
本発明の実施形態において、バインダー樹脂としては、ポリスチレン,ポリスチレン誘導体、およびスチレンの共重合体が好適である。スチレン系モノマーの具体例としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルステレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレンおよび3,4−ジクロルスチレンなどが挙げられる。これらのモノマーは単独でまたは2種以上組合せて用いることができる。共重合させることができるアクリレート系モノマーとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、メタアクリロニトリル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルおよびイソブチルエーテルなどが挙げられる。これらのビニル系モノマーは単独でまたは2種以上組合せて用いることができる。好適なバインダー樹脂の具体例としては、スチレン・n−ブチルメタクリレート、スチレン・イソブチルメタクリレート、スチレン・エチルアクリレート、スチレン・n−ブチルアクリレート、スチレン・メチルメタクリレート、スチレン・グリシジルメタクリレート、スチレン・ジメチルアミノエチルメタクリレート、スチレン・ジエチルアミノエチルメタクリレート、スチレン・ジエチルアミノプロピルアクリレート、スチレン・2−エチルヘキシルアクリレート、スチレン・ブチルアクリレート−N−(エトキシメチル)アクリルアミド、スチレン・エチレングリコールメタクリレート、スチレン・4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン三元共重合体、アクリロニトリル・スチレン・アクリル酸エステル三元共重合体、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・塩素化ポリスチレン・スチレン三元共重合体、アクリロニトリル・エチレン酢酸ビニル・スチレン三元共重合体、スチレン・p−クロロスチレン共重合体、スチレン・プロピレン共重合体、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・マレイン酸エステル共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。スチレンに対して、ブタジエン、マレイン酸エステル、クロロプレンなどを共重合させてもよいが、これらの成分の重量比は10%以下であることが好ましい。上記のアクリレートモノマーを重合させたポリマーをポリスチレンとブレンドして用いることもできる。この場合、ポリアクリレート成分は、ホモポリマーでもよいし、コポリマーでもよい。また、アクリレートに対して、ブタジエン、マレイン酸エステル、クロロプレンなどを10%以下の割合で共重合させたものを用いてもよい。
本発明の実施形態に係る消去可能な画像形成材料をトナーとして用いる場合、バインダー樹脂の熱特性をたとえば軟化点、ガラス転移点の値で評価する。軟化点は60〜190℃、ガラス転移点は20〜110℃であることが好ましい。軟化点としてはフローテスタ(島津製作所製CFT−500)を用いて、ノズル:1.0mmφ×10.0mm、荷重:30kg・f、昇温速度:3℃/min、サンプル量:1.0gの条件で、サンプル流出量が半分に達した時の温度(T1/2)が用いられる。ガラス点移転としてはDSCでメルトクエンチ後、ショルダー値として求めた温度が用いられる。
本発明の実施形態に係る消去可能な画像形成材料では、バインダー樹脂に含有される極性基の量が低いほど、混練により調製した画像形成材料による画像濃度が高くなると同時に、呈色性化合物との相溶性も高くなる。この観点から、高い発色・消色コントラストを与えるバインダー樹脂の代表例として、ポリスチレンのような非極性樹脂が挙げられる。トナー用途では、最も好適なバインダー樹脂として、ゴム成分の重量比率が約10wt%であるスチレン・ブタジエンゴム、スチレン・プロピレンゴムなどが挙げられる。
本発明の実施形態に係る消去可能な画像形成材料をトナーとして用いる場合、消去した際に色が残らないことが要求されるため、帯電制御剤は無色または透明のものが用いられる。負帯電の帯電制御剤としては、オリエント化学のE−89(カリックスアレーン誘導体)、日本カーリットのN−1、N−2、N−3(いずれもフェノール系化合物)、LR147(ホウ素系化合物)、藤倉化成のFCA−1001N(スチレンースルホン酸系樹脂)などが挙げられる。これらのうち、E−89やLR147が特に好適である。正帯電の帯電制御剤としては保土谷化学のTP−302(CAS#116810−46−9)、TP−415(同117342−25−2)、オリエント化学のP−51(4級アミン化合物)、AFP−B(ポリアミンオリゴマー)、藤倉化成のFCA−201PB(スチレンーアクリル四級アンモニウム塩系樹脂)などが挙げられる。
本発明の実施形態に係る消去可能な画像形成材料をトナーとして用いる場合、必要に応じて、定着性を制御するためのワックス類を配合してもよい。ワックス類としては、高級アルコール、高級ケトン、高級脂肪族エステルなどが挙げられる。ワックス類は呈色性化合物を発色させないことが要求され、その酸価が10以下であることが好ましい。また、ワックス類は、重量平均分子量が102〜105が好ましく、102〜104がより好ましい。重量平均分子量が上記の範囲であれば、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリブチレン、低分子量ポリアルカンなどを用いることもできる。ワックス類の添加量は、0.1〜30重量部が好ましく、0.5〜15重量部がより好ましい。
本発明の実施形態に係る消去可能な画像形成材料をトナーとして用いる場合、必要に応じて、流動性、保存性、耐ブロッキング性、感光体研磨性などを制御する外部添加剤を配合してもよい。外部添加剤としては、シリカ微粒子、金属酸化物微粒子、クリーニング助剤などが用いられる。シリカ微粒子としては、二酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウムなどが挙げられる。金属酸化物微粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムなどが挙げられる。クリーニング助剤としては、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂微粉末が挙げられる。これらの外部添加剤は、疎水化などの表面処理を施したものが好ましい。負帯電のトナーの場合には、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルなどの処理剤が用いられる。正帯電のトナーの場合には、アミノシラン系、側鎖にアミンを有するシリコーンオイルなどの処理剤が用いられる。これらの外部添加剤の添加量は、トナー100重量部に対して0.05〜5重量部が好ましく、0.1〜3重量部がより好ましい。シリカ微粒子は、一次粒子の個数平均粒径が10〜20nmのものが一般的に用いられるが、100nm程度のものも用いられる。シリカ以外の粒子は、一次粒子の個数平均粒径が0.05〜3μmのものが一般的に用いられる。
本発明の実施形態において、呈色性化合物と顕色剤をバインダー樹脂に混合・分散する方法としては、高速ディゾルバ、ロールミル、ボールミルなどの装置による溶媒(消色剤を含む場合には非極性溶媒)を用いた湿式分散法や、ロール、加圧ニーダー、インターナルミキサー、スクリュー型押し出し機などによる溶融混練法などを用いることができる。また、混合手段としては、ボールミル、V型混合機、フォルバーグミキサー、ヘンシェルミキサーなどを用いることができる。
実施例1
呈色性化合物としてクリスタルバイオレットラクトン(CVL)および山田化学製ロイコ染料Blue203(3−(4−ジエチルアミノ2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド)を用意した。
第1の粉体を以下のようにして調製した。呈色性化合物としてCVL 4.15重量部、顕色剤として没食子酸エチル2重量部、ワックス成分としてポリプロピレンワックス5重量部、バインダー樹脂としてブタジエンゴム含有量10wt%のスチレン・ブタジエンゴム87.85重量部、帯電制御剤(日本カーリット社、商品名LR−147)1重量部を計量した。計量後の材料をヘンシェルミキサーにより混合した後、2軸押し出し機により混練した。混練物を微粉砕機と風力分級機にかけて10.5±0.5μmの微粉を含む第1の粉体を得た。
第2の粉体を以下のようにして調製した。呈色性化合物としてCVL 4.15重量部の代わりにBlue203 4.15重量部を用いたが、その他は第1の粉体と同じ成分を第1の粉体と同じ配合割合で用いた。計量後の材料をヘンシェルミキサーにより混合した後、3本ロール混練機により混練した。混練物を微粉砕機と風力分級機にかけて10.5±0.5μmの微粉を含む第2の粉体を得た。
第1の粉体と第2の粉体の比率を変えて混合し、9種の粉体を得た。得られた各々の粉体に疎水性シリカを2wt%外添して、青色の電子写真用トナー粉体を調製した。これらの9種の粉体における呈色性化合物の全量に対するCVLの重量比率は、それぞれ、0wt%(Blue203のみ100wt%)、6wt%、12wt%、18wt%、50wt%、76wt%、82wt%、88wt%、100wt%である。
次に、調製した各々のトナーをプリンタ(東芝テック製MFPプリマージュ351)にセットし、数種のコピー用紙上に数段階の画像濃度を持つベタパターンを印刷して、加熱して消去することにより、熱消去特性を評価した。熱消去は、恒温槽に印刷したコピー用紙を入れ、130℃で2時間保持するという条件で実施した。各評価紙について、横軸に熱消去前の[(元の画像濃度)−(紙の画像濃度)]、縦軸に熱消去後の[(残像の画像濃度)−(紙の画像濃度)]をプロットしたデータの回帰直線の傾きを測定し、数種の紙の相加平均値を消去率として採用した。この数値は、元の画像濃度に対する残像の画像濃度を比率で示しており、その数値が小さいほど消去性能が高いことを意味する。例えば、消去率0.05とは、画像濃度1.0の画像を熱消去した時に残る残像の画像濃度が0.05であることを意味する。
図1に、呈色性化合物の全量に対するCVLの重量比率と消去率との関係を示す。図1から、呈色性化合物の全量に対するCVLの重量比率に対する消去率の変化は線形ではないことがわかる。この場合、呈色性化合物の全量に対するCVLの重量比率が18wt%以上であれば、呈色性化合物としてBlue203のみを含むトナー粉体と比較して消去率がかなり低く実用上は十分な熱消去特性を示す。
次いで、調製した各々のトナーを太陽灯光源下に置いて加速試験を行い、耐光性を評価した。照度を20000Luxに固定して経時的に画像濃度を測定し、画像保持率[(元の画像濃度−退色後の画像濃度)/(元の画像濃度)]を調べた。耐光性は画像の退色率[1−画像保持率]で評価した。代表値として、上記の照度で3時間の光照射を行ったときの退色率を比較した。このときの光照射量(60000Lux・h)は、通常オフィスの条件(照度を平均500Luxとして1日12時間照射として計算)で10日間放置したことに相当する。
図2に、呈色性化合物の全量に対するCVLの重量比率と退色率との関係を示す。図2から、呈色性化合物の全量に対するCVLの重量比率に対する退色率の変化は線形ではないことがわかる。この場合、呈色性化合物の全量に対するCVLの重量比率が82wt%以下であれば、退色率が20%以下であり、実用上は十分な耐光性を示す。
以上の結果から、呈色性化合物としてCVLを含む第1のトナー粉体と、呈色性化合物としてBlue203を含む第2のトナー粉体との混合トナー粉体では、呈色性化合物の全量に対するCVLの重量比率が18wt%以上82wt%以下であれば、熱消去特性と耐光性のバランスが良好であるといえる。
実施例2
実施例1と同様にして第1の粉体を調製した。また、呈色性化合物としてBlue203単独の代わりに、Blue203とCVLとを94:6の割合で用いた以外は実施例1と同様にして第2の粉体を調製した。
第1の粉体と第2の粉体の比率を変えて混合し、8種の粉体を得た。得られた各々の粉体に疎水性シリカを2wt%外添して、青色の電子写真用トナー粉体を調製した。これらの8種の粉体における呈色性化合物の全量に対するCVLの重量比率は、それぞれ、6wt%、12wt%、18wt%、50wt%、76wt%、82wt%、88wt%、100wt%である。
本実施例においても、実施例1と同様の方法で、各々のトナーの熱消去特性と耐光性を評価した。本実施例においても、実施例1と同様な結果が得られた。
なお、呈色性化合物がBlue203リッチとなる組成範囲の本実施例のトナー粉体は、実施例1のトナー粉体と比較して、粉体の発色濃度に数パーセントの改善が見られた。
呈色性化合物の全量に対するCVLの重量比率と消去率との関係を示す図。
呈色性化合物の全量に対するCVLの重量比率と退色率との関係を示す図。