JP4144941B2 - メッキ用樹脂組成物およびメッキ成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン−プロピレン系ゴムに芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を重合してなるグラフト重合体、いわゆるAES樹脂と特定の粒子径を有するアクリル酸エステル系ゴムグラフト重合体からなる組成物にポリオルガノシロキサンを配合してなるメッキ用樹脂組成物および該樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品にメッキを施してなるメッキ成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アクリロニトリルーブタジエンースチレン樹脂(ABS樹脂)は、従来から金属様外観を付与するためにメッキ装飾を行うケースが非常に多く、また比較的容易にメッキ加工が可能な材料として知られている。
近年、メッキ装飾に対する要望が強まり、成形品全体にメッキを施すだけでなく、一部分のみメッキ加工を施すいわゆる部分メッキや、また同一成形品に対してメッキと塗装とを併用する等、従来とは異なる仕様が増加しつつある。
特に部分メッキに関しては、一部分の樹脂が意匠面に露出することから、従来使用されていたABS樹脂では耐候性に劣るため、使用できる環境が限定されるという問題があった。
このような問題点に対して、ABS樹脂のゴム成分であるブタジエン成分をエチレン−プロピレン系ゴムに変更してなる耐候性に優れた樹脂である、いわゆるAES樹脂での代替え等が検討されているが、一般的なABS樹脂のメッキ条件ではメッキ金属膜と樹脂との密着性を高めるための手段であるエッチング工程において、エッチングが進みすぎたり(オーバーエッチング)、逆にエッチング不足等の不具合が発生しやすく、ABS樹脂と同等のメッキ性は得られていないのが現状である。
また、特にメッキ性については熱的な環境変化に対するメッキ膜のふくれや割れといったメッキ不良(ヒートサイクル性)についても問題となるケースがあり、これについても改良が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来のABS樹脂メッキと同様の条件で容易にメッキが可能な改良されたメッキ用AES系樹脂組成物、および該樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品にメッキを施してなるメッキ成形品を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、エチレン−プロピレン系ゴムに芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体またはこれらの単量体と共重合可能な他の単量体とを重合してなるグラフト重合体(A)10〜80重量部、重量平均粒子径が0.15〜0.25μmであるアクリル酸エステル系ゴムに芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体またはこれらの単量体と共重合可能な他の単量体とを重合してなるグラフト重合体(B)10〜60重量部および芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体またはこれらの単量体と共重合可能な他の単量体とを重合してなる共重合体(C)10〜80重量部からなる組成物100重量部((A)+(B)+(C)=100重量部)当たり、ポリオルガノシロキサン(D)0.01〜5.0重量部配合してなる樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品にメッキを施してなるメッキ成形品を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明におけるグラフト重合体(A)を構成するエチレン−プロピレン系ゴムとしては、エチレン−プロピレン系共重合体ゴム、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエン成分を導入してなるエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム等が挙げられる。
特にエチレン含有量30〜80重量%、ムーニー粘度(ML1+4 121℃)40〜80のものが好ましい。
【0006】
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル系単量体としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。
【0007】
本発明においては、上記グラフト重合体(A)を構成する単量体として、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体と共に共重合可能な他の単量体を使用することも可能である。このような単量体としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸が挙げられ、それらはそれぞれ一種又は二種以上用いることができる。
【0008】
上記芳香族ビニル系単量体(i)、シアン化ビニル系単量体(ii)および共重合可能な他の単量体(iii) の組成比率には特に制限はないが、(i)50〜95重量%、(ii)5〜50重量%および(iii) 0〜45重量%であることが好ましい。
また、エチレン−プロピレン系ゴムと単量体(合計)との組成比率についても特に制限はないが、エチレン−プロピレン系ゴムゴム状重合体10〜80重量%および単量体(合計)90〜20重量%であることが好ましい。
【0009】
また、グラフト重合体(A)のグラフト率には特に制限はないが、10〜150%が好ましく、特に成形性と強度のバランスから30〜100%の範囲が好ましい。
【0010】
本発明におけるグラフト重合体(B)を構成するアクリル酸エステル系ゴムとしては、架橋剤の存在下または非存在下にアルキル基の炭素数1〜16のアクリル酸エステル、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルなどの1種又は2種以上、さらには必要に応じて他の共重合可能な他の単量体、例えばスチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどの1種又は2種以上を重合もしくは共重合してなるゴム、さらには特開平1−190746号公報、特開平8−239531号公報等に記載のポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアクリル酸エステルゴム成分との複合ゴム(ポリアクリル酸エステルゴム成分が50重量%以上)が挙げられる。
【0011】
該アクリル酸エステル系ゴムの重量平均粒子径は0.1〜0.3μmである。該重量平均粒子径が0.1μm未満ではメッキ工程でのエッチング性に劣るため部分的にメッキが定着しない現象(スキップ)が発生しやすいため好ましくない。また、重量平均粒子径が0.3μmよりも大きい場合、逆にオーバーエッチングになりやすく、メッキ膜と樹脂との密着性が低下するため好ましくない。
メッキ性と強度の面から特に0.15〜0.25μmの範囲が好ましい。
【0012】
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル系単量体としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。
【0013】
本発明においては、上記グラフト重合体(B)を構成する芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体と共に共重合可能な他の単量体を使用することも可能である。このような単量体としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸が挙げられ、それらはそれぞれ一種又は二種以上用いることができる。
【0014】
上記芳香族ビニル系単量体(i)、シアン化ビニル系単量体(ii)および共重合可能な他の単量体(iii) の組成比率には特に制限はないが、(i)50〜95重量%、(ii)5〜50重量%および(iii) 0〜45重量%であることが好ましい。
また、アクリル酸エステル系ゴムと単量体(合計)との組成比率についても特に制限はないが、アクリル酸エステル系ゴム10〜80重量%および単量体(合計)90〜20重量%であることが好ましい。
【0015】
また、グラフト重合体(A)のグラフト率には特に制限はないが、10〜150%が好ましく、特に成形性と強度のバランスから20〜100%の範囲が好ましい。
【0016】
本発明における共重合体(C)を構成する芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル系単量体としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。
【0017】
本発明においては、上記共重合体(C)を構成する芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体と共に共重合可能な他の単量体を使用することも可能である。このような単量体としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸が挙げられ、それらはそれぞれ一種又は二種以上用いることができる。
【0018】
上記芳香族ビニル系単量体(i)、シアン化ビニル系単量体(ii)および共重合可能な他の単量体(iii) の組成比率には特に制限はないが、(i)50〜95重量%、(ii)5〜50重量%および(iii) 0〜45重量%であることが好ましい。
【0019】
また、共重合体(C)の固有粘度(30℃、ジメチルホルムアミド)には特に制限はないが、0.4〜1.0であることが好ましい。
【0020】
本発明で用いられる上記グラフト重合体(A)および(B)、さらに共重合体(C)の重合方法には制限は無く、公知の乳化重合法、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法あるいはこれらの重合法を任意に組み合わせた方法を採用することができる。
【0021】
本発明で用いられるポリオルガノシロキサン(D)とは、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。また、該ポリオルガノシロキサンは、25℃における粘度が10〜100,000であることが好ましい。
【0022】
本発明の樹脂組成物は、上記グラフト重合体(A)10〜80重量部、グラフト重合体(B)10〜60重量部および共重合体(C)10〜80重量部からなる組成物100重量部((A)+(B)+(C)=100重量部)当たり、ポリオルガノシロキサン(D)0.01〜5.0重量部配合してなるものである。
(A)、(B)および(C)からなる組成物の混合割合が該範囲外では良好なメッキ性が得られないため好ましくない。
また、ポリオルガノシロキサン(D)が、0.01重量部未満では、メッキ性、特にヒートサイクル性に劣り、また5.0重量部を超えると成形品外観に劣るため好ましくない。
【0023】
また、(A)、(B)および(C)からなる樹脂組成物中に占める(A)成分および(B)成分からもたらされるゴム成分の割合は10〜40重量%であることが好ましく、該割合が10重量%未満では成形品の強度が低下すると共にエッチング不足になり易く、また40重量%を超えると成形性が低下すると共にオーバーエッチングになり易く、メッキ膜と樹脂との密着性が低下するため好ましくない。
【0024】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド等の他の樹脂、着色剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤等の各種添加剤、あるいはガラス繊維、カーボン繊維、炭酸カルシウム等の各種補強材等を加えることができる。
また本発明の樹脂組成物の混合は、通常使用されるロール、バンバリーミキサー、押出機、ニーダー等公知の方法で実施できる。
【0025】
このようにして得られた樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、ブロー成形等により成形され、得られた樹脂成形品は、公知のメッキ方法、例えば通常のABS樹脂のメッキ条件と同様の条件にてメッキ加工される。
【0026】
〔実施例〕
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。なお、実施例中にて示す部および%は重量に基づくものである。
【0027】
−グラフト重合体(A)−
A−1:エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンゴム(エチレン含有量60重量%、ムーニー粘度65)50重量部、スチレン35部およびアクリロニトリル15部を公知の溶液重合法によりグラフト重合し、グラフト重合体(A−1)を得た。
【0028】
−グラフト重合体(B)−
B−1:アクリル酸エステル系ゴム(重量平均粒子径0.15μm)50部、スチレン35部およびアクリロニトリル15部を公知の乳化重合法によりグラフト重合し、グラフト重合体(B−1)を得た。
B−2:アクリル酸エステル系ゴム(重量平均粒子径0.25μm)50部、スチレン35部およびアクリロニトリル15部を公知の乳化重合法によりグラフト重合し、グラフト重合体(B−2)を得た。
B−i:アクリル酸エステル系ゴム(重量平均粒子径0.05μm)50部、スチレン35部およびアクリロニトリル15部を公知の乳化重合法によりグラフト重合し、グラフト重合体(B−3)を得た。
B−ii:アクリル酸エステル系ゴム(重量平均粒子径0.35μm)50部、スチレン35部およびアクリロニトリル15部を公知の乳化重合法によりグラフト重合し、グラフト重合体(B−4)を得た。
【0029】
−共重合体(C)−
C−1:スチレン40部、アクリロニトリル25部およびメチルメタアクリレート35部を公知の乳化重合法により重合し、共重合体(C−1)を得た。
C−2:スチレン75部およびアクリロニトリル25部を公知の塊状重合法により重合し、共重合体(C−2)を得た。
【0030】
−ポリオルガノシロキサン(D)−
D−1:ポリジメチルシロキサン(東芝シリコーン(株)製、TSF451 粘度100センチストークス)
【0031】
〔実施例1〜4および比較例1〜5〕
上記のグラフト共重合体(A−1)、グラフト共重合体(B−1〜2、B〜i〜ii)、共重合体(C−1〜2)およびポリオルガノシロキサン(D−1)を表1示す配合割合で混合し、40mm二軸押出機を用いて230℃で溶融混合、ペレットとした後、射出成形機にてメッキ用成形品(100×50×3mm)を成形し、以下の方法にてメッキを施し、メッキ成形品を得た。以下の方法により、各特性を測定した。結果を表1に示す。
【0032】
メッキ処理プロセス:▲1▼脱脂(界面活性剤水溶液、55℃×3分間)、▲2▼エッチング(硫酸−無水クロム酸混液、65〜70℃×15分間)、▲3▼中和(塩酸水溶液、室温×3分間)、▲4▼キャタリスト(塩化パラジウム−塩化第一スズ−塩酸水溶液、室温×2分間)、▲5▼アクセレーター(硫酸水溶液、45℃×3分間)、▲6▼無電解メッキ(硫酸ニッケル−次亜燐酸ソーダ−クエン酸ソーダを主体とするニッケルメッキ液)、▲7▼電気メッキ(硫酸銅浴→硫酸ニッケル浴→無水クロム酸浴)
【0033】
oエッチング後の表面光沢:上記▲2▼エッチング後、ハンディ光沢計((株)堀場製作所製 グロスチェッカIG−310)で表面光沢(%)を測定した。
oピーリング強度:JIS H−8630に基づき、メッキ膜の密着強度(メッキ成形品の金属膜に基材に達する1cm間隔の切傷を入れ、金属膜を垂直な方向に引き剥がす時の応力で示した)を測定した(kg/cm2 )。
o成形品外観:メッキ後の外観(メッキ未着)を目視により、以下の判定基準にて判定した。
○;全体にメッキが着いており良好。
△;一部メッキ未着の状態でやや不良。
×;メッキ未着の状態で不良。
oヒートサイクル性:メッキされた試験片につき、1サイクルが、−30℃×2時間→80℃×2時間であるヒートサイクル試験を合計10サイクル実施し、試験片のメッキ膜のふくれ、割れの発生の有無につき目視にて判定した。
○;異常なし。
×;ふくれ、割れの発生。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明における樹脂組成物は、耐候性に優れたAES系樹脂組成物であって、従来のABS樹脂メッキと同様の条件で容易にメッキが可能なメッキ性に優れた樹脂組成物であり、部分メッキであっても環境(屋外)に制限されることなく使用できるものであり、各種メッキ成形品として有効に利用できる。
Claims (1)
- エチレン−プロピレン系ゴムに芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体またはこれらの単量体と共重合可能な他の単量体とを重合してなるグラフト重合体(A)10〜80重量部、重量平均粒子径が0.15〜0.25μmであるアクリル酸エステル系ゴムに芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体またはこれらの単量体と共重合可能な他の単量体とを重合してなるグラフト重合体(B)10〜60重量部および芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体またはこれらの単量体と共重合可能な他の単量体とを重合してなる共重合体(C)10〜80重量部からなる組成物100重量部((A)+(B)+(C)=100重量部)当たり、ポリオルガノシロキサン(D)0.01〜5.0重量部配合してなる樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品にメッキを施してなるメッキ成形品。
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