JP4144392B2 - 画像処理装置、画像形成システム、画像形成方法、およびプログラム - Google Patents
画像処理装置、画像形成システム、画像形成方法、およびプログラム Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像処理装置、画像形成装置、画像形成システム、およびプログラムに関し、特に、ページ順と異なる順序でファイル内に配置可能なオブジェクトと当該オブジェクトのファイル内での位置を示す参照情報とを備え、所定のオブジェクトから構成されるページを規定する文書ファイルを、プリントデータに変換せずに画像処理装置から画像形成装置に送信して、画像形成装置で印刷するための、画像処理装置、画像形成装置、画像形成システム、およびプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という)は、たとえばハードディスクに保存されている文書ファイルを、LANなどのネットワークを介してプリンタに送信して印刷することができる。
【0003】
この場合、文書ファイルは、通常、PCにインストールされているプリンタドライバによって、プリンタで解析可能なPS(PostScript(R))等のPDL(Page Description Language:ページ記述言語)で記述されたプリントデータに変換されてから、送信される。
【0004】
一方、インターネット上で配布される文書ファイルとして、ハードウェアやアプリケーションの種類にかかわらずにオリジナル文書と同じ体裁を再現できるPDF(Portable Document Format)ファイルが広く普及してきている。このPDFファイルは、ページ順と異なる順序でファイル内に配置可能なオブジェクトと当該オブジェクトのファイル内での位置を示す参照情報とを備え、所定のオブジェクトから構成されるページを規定している。
【0005】
ところで、PDFファイルは、たとえば数百ページものデータを有している場合がある。このような特にデータサイズの大きいPDFファイルをPCでプリントデータに変換すると、変換に時間がかかること、処理が複雑になること、および変換によりデータサイズが却って大きくなってデータ転送時間が増えることなどの理由により、PCの負荷が増大することになる。かかるPCの負荷を軽減するために、プリントデータに変換せずにPCからプリンタに送信されたPDFファイルを直接印刷すること(以下、「PDFダイレクトプリント」という)が可能なプリンタが提案されている。
【0006】
しかし、PDFファイルは印刷すべきデータに関するオブジェクトがファイル内でページ順とは関係なく配置可能であり、しかもオブジェクトのファイル内での位置を示す参照情報がファイルの末尾部分に配置されているため、プリンタはPDFファイル全体を受信した後でないと印刷することができない。このため、プリンタは、搭載されるメモリの容量(使用可能容量ないし空き容量)が足りないためにPDFファイル全体を受信できず、印刷を実行できない場合があった。
【0007】
この問題に関連して、PDFファイル全体を受信しなくても受信したデータから順にディスプレイ上での表示が可能となるように、PDFファイルの中身を変更して再構成する装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特表平11−502954号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載の装置にあっては、結果的に、ファイル転送前にPCなどの送信側で、PDFファイルを再構成するための処理が毎回行われることになる。したがって、上記装置の技術は、PDFファイルをPS等のPDLで記述されたプリントデータに変換することと比較して、必ずしもPCの負荷の軽減を図ることにはならず、また、プリンタで印刷が開始されるまでの時間が一律に長くなるという問題がある。
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、記憶部の使用可能容量が少ない画像形成装置に対して、PDFファイルなどの文書ファイルをプリントデータに変換せずに送信しても、送信側の負荷を軽減しつつ、迅速な印刷を実現することができる画像処理装置、画像形成装置、画像形成システム、およびプログラムを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0012】
(1)ページ順と異なる順序でファイル内に配置可能なオブジェクトと当該オブジェクトのファイル内での位置を示す参照情報とを備え、所定のオブジェクトから構成されるページを規定する文書ファイルを、プリントデータに変換せずに画像形成装置に送信するための画像処理装置であって、印刷すべき文書ファイルを前記画像形成装置に送信するための文書ファイル送信手段と、前記画像形成装置から、前記文書ファイルのデータ形式を変更することを要求する変更要求通知を受信するための変更要求通知受信手段と、前記変更要求通知を受信した場合、前記文書ファイルに対して、受信順にデータを処理することにより文書ファイルを解析できるデータ形式に変更するための変更処理を施した変更後文書ファイルを送信前に予め準備し、前記データ形式変更手段により前記文書ファイルに対して前記変更処理が施された場合、前記画像形成装置に対して、予め準備された前記変更後文書ファイルを送信するための変更後文書ファイル送信手段とを有する画像処理装置。
【0014】
(2)ページ順と異なる順序でファイル内に配置可能なオブジェクトと当該オブジェクトのファイル内での位置を示す参照情報とを備え、所定のオブジェクトから構成されるページを規定する文書ファイルを、プリントデータに変換せずに送信するための画像処理装置と、前記文書ファイルをプリントデータに変換されることなく前記画像処理装置から受信して印刷するための画像形成装置とを有する画像形成システムであって、前記画像処理装置は、印刷すべき文書ファイルを前記画像形成装置に送信するための文書ファイル送信手段と、前記画像形成装置から、前記文書ファイルのデータ形式を変更することを要求する変更要求通知を受信するための変更要求通知受信手段と、前記変更要求通知を受信した場合、前記文書ファイルに対して、受信順にデータを処理することにより文書ファイルを解析できるデータ形式に変更するための変更処理を施した変更後文書ファイルを送信前に予め準備し、前記変更要求通知を受信しない場合、前記文書ファイルに対して、前記変更処理を施さないデータ形式変更手段と、前記データ形式変更手段により前記文書ファイルに対して前記変更処理が施された場合、前記画像形成装置に対して、予め準備された前記変更後文書ファイルを送信するための変更後文書ファイル送信手段とを有し、前記画像形成装置は、前記画像処理装置から、前記印刷すべき文書ファイルを受信するための文書ファイル受信手段と、前記文書ファイル受信手段により受信された前記文書ファイルを記憶するための記憶手段と、前記記憶手段の使用可能容量が所定の基準値以下であるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により前記記憶手段の使用可能容量が所定の基準値以下であると判断された場合、前記変更要求通知を前記画像処理装置に送信するための変更要求通知送信手段と、前記画像処理装置から、前記変更後文書ファイルを受信するための変更後文書ファイル受信手段と、前記変更後文書ファイル受信手段により前記変更後文書ファイルが受信された場合、当該変更後文書ファイルに基づいて印刷を行う印刷手段とを有してなる画像形成システム。
【0015】
(3)ページ順と異なる順序でファイル内に配置可能なオブジェクトと当該オブジェクトのファイル内での位置を示す参照情報とを備え、所定のオブジェクトから構成されるページを規定する文書ファイルを、プリントデータに変換せずに画像形成装置に送信するための画像処理装置を制御するためのプログラムであって、印刷すべき文書ファイルを前記画像形成装置に送信するための文書ファイル送信手順と、前記画像形成装置から、前記文書ファイルのデータ形式を変更することを要求する変更要求通知を受信するための変更要求通知受信手順と、前記変更要求通知を受信した場合、前記文書ファイルに対して、受信順にデータを処理することにより文書ファイルを解析できるデータ形式に変更するための変更処理を施した変更後文書ファイルを送信前に予め準備し、前記変更要求通知を受信しない場合、前記文書ファイルに対して、前記変更処理を施さないデータ形式変更手順と、前記データ形式変更手順において前記文書ファイルに対して前記変更処理が施された場合、前記画像形成装置に対して、予め準備された前記変更後文書ファイルを送信するための変更後文書ファイル送信手順とを前記画像処理装置に実行させるためのプログラム。
【0016】
(4)ページ順と異なる順序でファイル内に配置可能なオブジェクトと当該オブジェクトのファイル内での位置を示す参照情報とを備え、所定のオブジェクトから構成されるページを規定する文書ファイルを、プリントデータに変換せずに送信するための画像処理装置と、前記文書ファイルをプリントデータに変換されることなく前記画像処理装置から受信して印刷するための画像形成装置とを有する画像形成システムにおける画像形成方法であって、前記画像処理装置が、印刷すべき文書ファイルを前記画像形成装置に送信するための文書ファイル送信ステップと、前記画像形成装置が、前記画像処理装置からの前記文書ファイルを記憶手段に記憶するための記憶ステップと、前記画像形成装置が、前記記憶手段の使用可能容量が所定の基準値以下であるか否かを判断する判断ステップと、前記画像形成装置が、前記記憶手段の使用可能容量が所定の基準値以下であると判断した場合、前記文書ファイルに対して、受信順にデータを処理することにより文書ファイルを解析できるデータ形式に変更するための変更処理を施すことを要求する変更要求通知を、前記画像処理装置に送信するための変更要求通知送信ステップと、前記画像処理装置が、前記画像形成装置から、前記変更要求通知を受信した場合、前記文書ファイルに対して、前記変更処理を施した変更後文書ファイルを送信前に予め準備し、前記変更要求通知を受信しない場合、前記文書ファイルに対して、前記変更処理を施さないデータ形式変更ステップと、前記画像処理装置が、前記文書ファイルに対して前記変更処理を施した場合、前記画像形成装置に対して、予め準備された前記変更後文書ファイルを送信するための変更後文書ファイル送信ステップと、前記画像形成装置が、前記画像処理装置から、前記変更後文書ファイルを受信した場合、当該変更後文書ファイルに基づいて印刷を行う印刷ステップとを有する画像形成方法。
(5)前記文書ファイルは、PDF(Portable Document Format)ファイルである上記(1)に記載の画像処理装置。
(6)前記文書ファイルは、PDF(Portable Document Format)ファイルである上記(2)に記載の画像形成システム。
(7)前記文書ファイルは、PDF(Portable Document Format)ファイルである上記(3)に記載のプログラム。
(8)上記(3)記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
(9)前記文書ファイルは、PDF(Portable Document Format)ファイルである上記(4)に記載の画像形成方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るPCおよびプリンタが適用されたプリントシステムの構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、プリントシステムは、画像処理装置としての機能を有するPC100A、100Bと、画像形成装置としてのプリンタ200とを備え、これらはネットワーク300を介して相互に通信可能に接続されている。ネットワーク300は、イーサネット(R)、トークンリング、FDDI等の規格によるLANや、LAN同士を専用線で接続したWAN等からなる。
【0020】
なお、ネットワークに接続される機器の種類および台数は、図1に示す例に限定されない。また、本発明は、図2に示すような、ネットワーク300上のPC100A、100Bがサーバ400を介してプリンタ200と接続されているシステム、あるいは、図3に示すような、PC100Aがプリンタ200と1対1で接続されているシステムにも適用可能である。図2または図3において、サーバ400あるいはPC100Aと、プリンタ200とを接続する場合、たとえばUSB、IEEE1284等のインタフェースおよびプロトコルが使用される。
【0021】
図4は、図1に示されるPC100A、100Bの構成を示すブロック図である。図4に示すように、PC100A、100Bは、装置全体の制御および各種演算処理を行うCPU101、プログラムやデータを格納するためのROM102、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するためのRAM103、各種のプログラムやデータを保存するための外部記憶装置としてのハードディスク104、各種情報の表示のための液晶ディスプレイなどの表示部105、各種指示の入力のためのキーボードやマウスなどからなる入力部106、およびネットワーク300に接続するためのLANカードなどのネットワークインタフェース107を含み、これらは信号を遣り取りするためのバス108を介して相互に接続されている。
【0022】
図5は、図1に示されるプリンタ200の構成を示すブロック図である。図5に示すように、プリンタ200は、CPU201、ROM202、RAM203、操作パネル部204、印刷部205、およびネットワークインタフェース206を含み、これらは信号を遣り取りするためのバス207を介して相互に接続されている。なお、プリンタ200の構成要素のうち、PC100A、100Bの構成要素と同様の機能を有する部分についての重複する説明を省略する。
【0023】
RAM203は、PC100Aまたは100Bから受信したデータを一時的に記憶できる。ROM202には、文字の書体を示すフォントに関するフォント情報が格納され得る。なお、プリンタ200は、各種のプログラムやデータを保存するための外部記憶装置としてのハードディスクを有していてもよい。操作パネル部204は、各種情報の表示および各種指示の入力に使用される。印刷部205は、電子写真式プロセス等の周知の作像プロセスを用いて、各種データを用紙などの記録材上に印刷する。
【0024】
PC100A、100B、およびプリンタ200は、上述した構成要素以外の構成要素を含んでいてもよく、あるいは、上述した構成要素のうちの一部が含まれていなくてもよい。
【0025】
以下においては、たとえばPC100Aからプリンタ200にデータが送信されて印刷が行われる場合について説明する。
【0026】
図1に示されるプリントシステムでは、通常プリントと、PDFダイレクトプリントとの2種類の印刷が実行可能である。通常プリントを実行する場合、所定のファイルは、PC100Aのハードディスク104にインストールされたプリンタドライバによってPS等のPDLで記述されたプリントデータに変換された後、プリンタ200に送信される。一方、PDFダイレクトプリントを実行する場合、PDFファイルは、ハードディスク104にインストールされた後述するプログラムにしたがって、プリントデータに変換されることなく、PC100Aからプリンタ200に送信される。
【0027】
PC100Aとプリンタ200との間のデータ通信プロトコルとしては、双方向通信が可能な所定のプロトコルが使用される。なお、独自のプロトコルが使用されてもよい。
【0028】
ここで、図6および図7を参照して、標準的なPDFファイルの構造および解析方法について簡単に説明する。図6は、標準的なPDFファイルの構成を説明するための図、図7は、PDFファイルのサンプルを示す図である。なお、図6および図7は、「PDF Reference third edition Adobe Portable Document Format Version 1.4」(アドビシステムズ社)を参考にして作成されている。
【0029】
図6および図7に示すように、標準的なPDFファイル500は、ヘッダ510、ボディ520、相互参照表530、およびトレーラ540から構成される。
【0030】
ヘッダ510には、「%」で始まるコメントが記述される。図7のヘッダ510から、ファイルのフォーマットがPDFであること、および準拠するPDF仕様のバージョン(ここでは1.4)がわかる。
【0031】
ボディ520は、複数のオブジェクトから構成される(図7ではオブジェクト1〜6)。最初のオブジェクト1は、「1 0 obj」から「endobj」までの記述により定義され、他のオブジェクトも同様に定義される。ここで、たとえば「1 0 obj」における数字はオブジェクトの番号であり、最初の数字およびその次の数字は、それぞれオブジェクトのID番号および生成番号(generation)を表す。
【0032】
オブジェクトとは、文書を構成する個々の要素をいう。オブジェクトとしては、たとえば、ページオブジェクト、ページ一覧オブジェクト、カタログオブジェクト、およびデータオブジェクトなどが挙げられる。
【0033】
ページオブジェクトには、特定のページを構成するのに必要なオブジェクトの番号が列挙されたページ情報が記述されている。ページ一覧オブジェクトには、ページ順にページオブジェクトの番号が列挙されたページ番号情報が記述されている。つまり、ページ一覧オブジェクトには、各ページオブジェクトの番号と、そのページオブジェクトが示すページが文書全体の何ページ目に当たるかが記述される。カタログオブジェクトには、文書の構造情報が記述されており、ページ一覧オブジェクトの番号が含まれる。データオブジェクトには、ページオブジェクトにより参照される特定のページの中身が記述されており、当該ページを描画するために使用される。
【0034】
データオブジェクトには、画素の集まりで表された画像データを含む画像オブジェクト、文字コードで表された文字データを含む文字オブジェクト、および線などの図形の集まりで表された図形データを含む図形オブジェクトが含まれる。なお、図7において、オブジェクト1はカタログオブジェクト、オブジェクト3はページ一覧オブジェクト(図7の場合、文書は1ページのみで構成される)、オブジェクト4はページオブジェクト、オブジェクト5はデータオブジェクトである。
【0035】
相互参照表530は、ファイル内におけるオブジェクトの位置を示す参照情報である。相互参照表530において、各オブジェクトの位置がオフセットで表される。ここで、オフセットとは、ファイル先頭から注目するデータの先頭までのバイト数をいう。これにより、ボディ520に並んでいるオブジェクトに対して、ランダムにアクセスすることが可能となる。
【0036】
トレーラ540は、ファイルの解析開始時にアクセスすべき情報である。具体的には、トレーラ540には、ファイル内における相互参照表530の位置を示す情報、および最初に参照すべきオブジェクト(階層構造のルートとなるルートオブジェクト)の番号が記述される。「startxref」の次に示される数字は、相互参照表530のオフセットである。「Root」を含む行は、ルートオブジェクトの番号を示している。このトレーラ540は、ファイルの末尾部分に存在する。
【0037】
PDFファイルを解析する装置は、標準的なPDFファイルを解析する場合、まずファイルの末尾部分にあるトレーラ540を解析し、次いで相互参照表530を解析する。そして、これらの解析で得られた情報に基づいて、ボディ520に記述されたページの内容を解析することができる。オブジェクトには、次に必要となるデータが記述された別のオブジェクトの番号が含まれている。このため、次に必要なオブジェクトの番号をたどることにより、PDFファイルの全体的な解析が可能となる。したがって、オブジェクトは、PDFファイルのボディ内においてオブジェクト単位で任意の順序で記述されることができ、結果として、ページ順と異なる順序でファイル内に配置可能となる。
【0038】
次に、図8〜図11を参照して、PC100Aで行われる処理について説明する。なお、図8〜図11のフローチャートにより示されるアルゴリズムは、PC100Aのハードディスク104などの記憶部にプログラムとして記憶されており、CPU101により実行される。ただし、本発明が図2に示すシステムに適用される場合、図8〜図11のフローチャートにより示されるアルゴリズムは、PC100Aまたはサーバ400のいずれかの記憶部にプログラムとして記憶される。
【0039】
ここでは、PDFファイルに対して、プリンタドライバを使用した通常プリントではなく、PDFダイレクトプリントが実行され、プリンタ200でPDFファイルの印刷が行われる場合について説明する。
【0040】
図8に示すように、最初に、PC100Aは、ユーザによるPDFファイルに対するPDFダイレクトプリントの実行の指示を受け付ける(S101)。ここで、PC100Aのデスクトップ上には、PDFダイレクトプリントについてのアプリケーションプログラムファイルのアイコンがあらかじめ表示される。ユーザは、印刷すべきPDFファイルを当該アイコンにドラッグ&ドロップしてアプリケーションプログラムを起動することにより、PDFダイレクトプリントの実行の指示を行うことができる。なお、PDFダイレクトプリントの実行の指示は、他の方法により行われてもよい。
【0041】
また、ユーザによるPDFダイレクトプリントの実行の指示の際、プリントオプションの設定が行われてもよい。このプリントオプションは、入力部106を通したユーザの操作に基づいて設定される。プリントオプションには、たとえば印刷部数の指定、部単位で出力するためのコレートの指定、両面印刷の指定、最終ページから先頭ページに向かって順番に印刷するためのフェイスアップの指定、および1枚の用紙に複数ページ(Nページ)を縮小して印刷するためのNin1の指定などが含まれる。ただし、プリントオプションには、他の属性が含まれていてもよく、上記した属性の一部が省略されていてもよい。なお、プリントオプションは、プリンタ200において操作パネル部204を通して設定されてもよい。
【0042】
続いて、PDFダイレクトプリントの対象とされたPDFファイルのプリンタ200への送信が開始される(S102)。このとき、PC100Aは、PDFファイルに対して何ら変更処理を施さず、そのまま送信し始める。なお、一度に送信されるPDFファイルは、複数であってもよい。この場合、プリントオプションの設定が行われたときは、すべてのPDFファイルに同一のプリントオプションが設定される。
【0043】
ステップS103では、ジョブ情報を送信するか否かが判断される。ジョブ情報としては、印刷すべきPDFファイルのデータサイズ、およびプリントオプションの設定が挙げられる。ここで、プリントオプションの設定が既に行われている場合、あるいは、印刷すべきPDFファイルのデータサイズを含むジョブ情報を送信することの指定が予め行われている場合、ジョブ情報を送信するものと判断される。
【0044】
ジョブ情報を送信するものと判断された場合(S103でYES)、印刷すべきPDFファイルに関するジョブ情報がプリンタ200に送信される(S104)。一方、ジョブ情報を送信しない場合(S103でNO)、ステップS105に進む。なお、プリントオプションの設定が行われなかった場合、プリンタ200においてデフォルト値が使用される。
【0045】
次に、データ形式に関する変更要求通知の受信処理が行われる(S105)。ここで、データ形式とは、ファイル内におけるデータの配置順序に関連する形式をいう。図9は、図8のステップS105におけるデータ形式に関する変更要求通知の受信処理の内容を示すフローチャートである。図9に示すように、プリンタ200から、データ形式に関する変更要求通知を受信した場合(S201でYES)、当該変更要求通知の内容がRAM103などの記憶部に保存され(S202)、変更要求通知受信フラグがONに設定される(S203)。変更要求通知受信フラグは、初期値としてOFFに設定されており、プリンタ200から、データ形式に関する変更要求通知を受信したことを示すフラグである。一方、データ形式に関する変更要求通知を受信しない場合(S201でNO)、そのまま図8のフローチャートに戻る。
【0046】
データ形式に関する変更要求通知には、印刷すべきPDFファイルのデータ形式を変更することの要求の有無を示す項目が含まれる。また、この変更要求通知には、プリントオプションの設定に応じて、コレートが指定されたときのページ展開情報、およびたとえば両面印刷が指定されたときのページに関する出力順序変更情報が付加され得る。
【0047】
ここで、ページ展開情報は、コレートの指定が行われたとき、受信順にページを出力すれば部単位の出力が可能となるように、複数回同一ページを展開して送信するための情報である。また、ページに関する出力順序変更情報は、たとえば両面印刷の指定が行われたとき、プリンタ200の印刷部205の特性に応じて、ファイル内における配置順序を、元のファイルのページ順ではなく、ページに関する出力順序に変更するための情報である。
【0048】
次に、データ形式の変更処理が行われる(S106)。すなわち、データ形式に関する変更要求通知を受信した場合には、受信した変更要求通知の内容に基づいて、印刷すべきPDFファイルに対して、受信順にデータを処理することによりファイルを解析できるデータ形式(以下、「逐次解析可能なデータ形式」という。)に変更するための変更処理が施される。すなわち、逐次解析可能なデータ形式とは、受信順にデータを処理すれば、必要最小限のデータを処理して1ページ分の出力が可能となるデータ形式である。この変更処理には、ネットワーク環境下での効率的なアクセスを可能とすべくPDFファイルを最適化するためのリニアライズ処理が含まれる。ただし、変更処理後のファイルは、必ずしもPDFファイルの形式を保っていなくてもよく、たとえばPSファイルなどであってもよい。ここで、データ形式に関する変更要求通知を受信しない場合には、印刷すべきPDFファイルに対して、変更処理は施されない。このデータ形式の変更処理についての詳細は後述する。
【0049】
そして、PDFファイルに対して変更処理が施された場合には、プリンタ200に対して、データ形式の変更処理が施されたPDFファイルが送信される(S107)。ここで、PDFファイルに対してデータ形式の変更処理が施されていない場合には、ステップS102で開始されたPDFファイルのプリンタ200への送信が続けられる。なお、1回の処理で送るデータのサイズは、プリンタ200の処理に都合の良いサイズにすることができ、送信処理の間に変更することができる。
【0050】
ステップS108では、プリンタ200へのPDFファイルの送信がすべて完了したか否かが判断される。送信が完了していない場合(S108でNO)、ステップS105に戻り、送信が完了した場合(S108でYES)、プログラムの実行が終了する。
【0051】
次に、図10および図11を参照して、図8のステップS106におけるデータ形式の変更処理について説明する。
【0052】
まず、データ形式に関する変更要求通知の内容が取得される(S301)。ここで、図9のステップS202でデータ形式に関する変更要求通知が保存された場合には、データ形式の変更要求の有無を示す項目などの情報が取得される。続いて、変更要求通知受信フラグが取得される(S302)。
【0053】
変更要求通知受信フラグがONである場合(S303でYES)、変更要求通知受信フラグをOFFにして(S304)、プリンタ200に対して、データ形式に関する変更通知を送信する(S305)。ここで、データ形式に関する変更通知は、図9のステップS201でプリンタ200から受信した、データ形式に関する変更要求通知と同じ内容である。プリンタ200は、データ形式に関する変更通知を受信することにより、受信されたPDFファイルのデータ形式が変更されていることを知ることができる。このデータ形式に関する変更通知は、ステップS107におけるPDFファイルの送信とは、別のインタフェースおよびプロトコルを用いて送信されてもよい。あるいは、データ形式に関する変更通知は、ステップS107においてPDFファイルと共に送信されてもよい。一方、変更要求通知受信フラグがOFFである場合(S303でNO)、ステップS306に進む。
【0054】
ステップS306では、ステップS301で取得されたデータ形式に関する変更要求通知の内容に基づいて、PDFファイルのデータ形式を変更する必要があるか否かが判断される(S306)。PDFファイルのデータ形式を変更する必要がない場合(S306でNO)、図8のフローチャートに戻る。
【0055】
PDFファイルのデータ形式を変更する必要がある場合(S306でYES)、さらに、データ形式に関する変更要求通知の内容に基づいて、コレート用のページ展開を行う必要があるか否かが判断される(S307)。
【0056】
コレート用のページ展開を行う必要がある場合(S307でYES)、後述するステップS311でデータ形式の変更を行う際に、コレート用のページ展開を行うことを設定する(S308)。一方、コレート用のページ展開を行う必要がない場合(S307でNO)、ステップS309に進む。
【0057】
続いて、データ形式に関する変更要求通知の内容に基づいて、ページに関する出力順序の変更を行う必要があるか否かが判断される(S309)。
【0058】
たとえば、両面印刷、あるいはフェイスアップの指定がある場合など、ページに関する出力順序の変更を行う必要がある場合(S309でYES)、後述するステップS311でデータ形式の変更を行う際に、ページに関する出力順序の変更を行うことを設定する(S310)。一方、ページに関する出力順序の変更を行う必要がない場合(S309でNO)、ステップS311に進む。
【0059】
そして、ステップS311では、印刷すべきPDFファイルが、逐次解析可能なデータ形式に変更される。
【0060】
次に、図12〜図15を参照して、データ形式の変更処理の具体的な方法について説明する。
【0061】
図12は、データ形式の変更処理が施されていない通常のPDFファイルのボディの一例を示す。図12に示すデータは、そのページ数が2であり、第1ページ(ページオブジェクト1に対応しており、ページ番号が1)を描画するために3個のオブジェクト(データオブジェクト1〜3)が必要で、第2ページ(ページオブジェクト2に対応しており、ページ番号が2)を描画するために2個のオブジェクト(データオブジェクト4および5)が必要なデータである。
【0062】
前述したように、通常のPDFファイルでは、ファイル内におけるオブジェクトの記述順(配置順)は任意であるため、ページ順と一致しない場合がある。図12の例では、第1ページを出力するために、ページオブジェクト1を参照して必要なデータオブジェクトが1〜3であることを判別し、その後、データオブジェクト1〜3を解析しなければならない。この例では、ページオブジェクト1が第2ページに関するデータオブジェクトよりも後ろに配置されているため、第1ページの出力は、第2ページに関するデータオブジェクトの取得後になる。
【0063】
図13は、データ形式の変更処理が施されたPDFファイルのボディの一例を示す。図13に示すPDFファイルのボディは、図12に示すPDFファイルに対して、逐次解析可能なデータ形式に変更するための変更処理を施したものである。図13の例では、ページごとに、出力に必要なオブジェクトであるページオブジェクト、およびデータオブジェクトが連続して配置されているため、受信順にファイルの先頭から解析すれば、必要最小限のデータを処理して1ページ分の出力が可能となる。
【0064】
図14は、データ形式の変更処理が施されたPDFファイルのボディの他の例を示す。図14に示すPDFファイルのボディは、図12に示すPDFファイルに対して、ページに関する出力順序の変更をともなう逐次解析可能なデータ形式に変更するための変更処理を施したものである。たとえばプリントオプションの設定として両面印刷の指定が行われた場合、印刷部205の特性上、両面印刷時におけるページに関する出力順序を変更しなければならない場合がある。この場合、ファイル内におけるページ(ページオブジェクトおよびデータオブジェクト)の配置順を、出力順序と一致させることにより、必要最小限のデータを取得し処理して1ページ分の出力が可能となる。図14の例では、ページ番号を用いて、2、1、4、3、…(ただし、図14ではデータのページ数は2である。)と並ぶように、ファイル内におけるページの配置順が入れ替えられる。なお、プリントオプションの設定としてたとえばフェイスアップなどのページに関する出力順序の変更が必要となる指定が行われた場合も、同様な方法によりファイル内におけるページの配置順が入れ替えられる。
【0065】
図15は、データ形式の変更処理が施されたPDFファイルのボディのさらに他の例を示す。図15に示すPDFファイルのボディは、図12に示すPDFファイルに対して、コレート用のページ展開をともなう逐次解析可能なデータ形式に変更するための変更処理を施したものである。プリントオプションの設定として、複数部数の指定およびコレートの指定が行われた場合、受信順にページを出力すれば部単位の出力が可能となるように、印刷部数分だけ同一ページが展開されてファイル内に配置される。図15の例では、たとえばファイル内に2ページ分のデータが含まれており、ページ番号を用いて、1、2、1、2、…(ただし、図15では印刷部数は2である。)と並ぶように、ファイル内に同一ページが展開されて配置される。この場合、PC100Aは、複数回同一ページを展開して送信することになるが、プリンタ200は、受信したデータのうち、一旦出力したデータを破棄することができるので、記憶部の容量上の支障はない。
【0066】
次に、図16〜図20を参照して、プリンタ200で行われる処理について説明する。なお、図16〜図20のフローチャートにより示されるアルゴリズムは、プリンタ200のROM202などの記憶部にプログラムとして記憶されており、CPU201により実行される。
【0067】
ここでは、プリンタ200が、PC100Aから送信される印刷すべきPDFファイルを受信して、受信したPDFファイルに対して、PDFダイレクトプリントを実行する場合について、以下に説明する。
【0068】
まず、プリンタ200は、PC100Aから送信されるPDFファイルの受信を開始する(S401)。
【0069】
続いて、印刷すべきPDFファイルのデータ形式に関する変更要求処理が行われる(S402)。すなわち、受信されたPDFファイルの保存に使用される記憶部の使用可能容量が所定の基準値以下であると判断された場合、印刷すべきPDFファイルに対して、逐次解析可能なデータ形式に変更するための変更処理を施すことを要求する変更要求通知が、PC100Aに送信される。受信されたPDFファイルの保存に使用される記憶部としては、通常、メモリ(RAM203)の一部が割り当てられる。ただし、プリンタ200にハードディスクが搭載されている場合、ハードディスクが受信されたPDFファイルの保存に使用されてもよい。このデータ形式に関する変更要求処理についての詳細は後述する。
【0070】
ステップS402において変更要求通知がPC100Aに送信された場合、PC100Aから、変更処理が施されたPDFファイルが受信される(S403)。ここで、変更要求通知がPC100Aに送信されていない場合には、ステップS401で開始されたPC100Aから送信されるPDFファイルの受信が続けられる。
【0071】
続いて、データの保存処理が行われる。すなわち、受信されたPDFファイルのデータが順次記憶部に保存される(S404)。
【0072】
ステップS405では、受信されたPDFファイルのデータ形式が変更されているか否かが判断される。ここで、PC100Aから、データ形式に関する変更通知が受信された場合(後述のS508参照)、データ形式が変更されていると判断される。
【0073】
受信されたPDFファイルのデータ形式が変更されている場合(S405でYES)、データ形式の変更があった場合の出力処理が行われる(S406)。この場合、図19に示すように、PDFファイルが受信開始されてすぐに、PDFファイルの解析処理が行われる(S701)。これは、データ形式の変更があった場合には、受信されたPDFファイルを受信順に処理できることが保証されているからである。続いて、解析処理によって得られた解析結果、すなわち印刷部205に出力するためのデータが記憶部に保存され(S702)、解析処理の終わった受信データが記憶部から削除される(S703)。1ページ分のデータの解析処理が完了した場合(S704でYES)、解析処理が完了して記憶部に保存されているページが印刷部205に出力されて(S705)、図16のフローチャートに戻る。このとき、印刷部205は、転送されてきたページのデータを、用紙上に印刷する。1ページ分のデータの解析処理が完了していない場合(S704でNO)、そのまま図16のフローチャートに戻る。
【0074】
図16のステップS407では、受信されたPDFファイルの全ページの印刷部205への出力が完了したか否かが判断される。全ページの出力が完了していない場合(S407でNO)、ステップS403に戻り、全ページの出力が完了した場合(S407でYES)、プログラムの実行が終了する。
【0075】
一方、受信されたPDFファイルのデータ形式が変更されていない場合(S405でNO)、データ形式の変更がない場合の出力処理が行われる(S408)。この場合、PDFファイルの全体が受信された後でないと解析処理を行うことができない。したがって、図20に示すように、PDFファイルの全データがまだ保存されていない場合(S801でNO)、そのまま図16のフローチャートに戻る。PDFファイルの全データが保存された後に(S801でYES)、PDFファイルの解析処理が行われる(S802)。続いて、解析処理によって得られた解析結果、すなわち印刷部205に出力するためのデータが記憶部に保存され(S803)、解析処理の終わった受信データが記憶部から削除される(S804)。1ページ分のデータの解析処理が完了した場合(S805でYES)、解析処理が完了して記憶部に保存されているページが印刷部205に出力される(S806)。このとき、印刷部205は、転送されてきたページのデータを、用紙上に印刷する。1ページ分のデータの解析処理が完了していない場合(S805でNO)、ステップS802に戻る。ステップS807では、まだ印刷部205に出力されていないページが残っているか否かが判断され、未出力ページがある場合(S807でYES)、ステップS802に戻る。
【0076】
次に、図17を参照して、図16のステップS402におけるデータ形式に関する変更要求処理について説明する。
【0077】
まず、プリンタ200の記憶部の空き容量が所定の基準値以下であるか否かが判断される(S501)。ここで、記憶部の空き容量とは、記憶部における、受信されたデータの保存に使用できる容量(使用可能容量)である。
【0078】
記憶部の空き容量が所定の基準値よりも大きい場合(S501でNO)、PDFファイルの受信が現状において可能であると判断されて、図16のフローチャートに戻る。
【0079】
記憶部の空き容量が所定の基準値以下である場合(S501でYES)、PC100Aから、印刷すべきPDFファイルのデータサイズが通知されているか否かが判断される(S502)。ここで、PDFファイルのデータサイズは、PC100Aからジョブ情報(S104参照)が受信されている場合、当該ジョブ情報から取得され得る。PDFファイルのデータサイズが通知されていない場合(S502でNO)、ステップS505に進む。
【0080】
PDFファイルのデータサイズが通知されている場合(S502でYES)、PDFファイルのうち現時点で未だ受信されていないデータのサイズと記憶部の空き容量とが比較される(S503)。
【0081】
記憶部の空き容量が未受信分のデータのサイズ以上である場合(S504でNO)、PDFファイルの受信が可能であると判断されて、図16のフローチャートに戻る。一方、未受信分のデータのサイズの方が記憶部の空き容量よりも大きい場合(S504でYES)、ステップS505に進む。
【0082】
ステップS505では、印刷すべきPDFファイル全体の保存が不可能と判断される。したがって、変更処理が施されていないPDFファイルの受信は中止される。そして、変更処理が施されたPDFファイルの受信が行われることになる。
【0083】
なお、ステップS503において、未受信分のデータのサイズと、記憶部の空き容量の所定割合(たとえば90%)とが比較されてもよい。さらに、ステップS502〜S504が省略されて、記憶部の空き容量が所定の基準値以下である場合(S501でYES)、ただちに印刷すべきPDFファイル全体の保存が不可能と判断されてもよい。
【0084】
ステップS506では、プリントオプションの解析処理が行われる。プリントオプションの解析処理においては、PC100Aに対してのPDFファイルのデータ形式に関する変更要求通知に、データ形式を変更することの要求の有無を示す項目が設定される。また、変更要求通知には、プリントオプションの設定に応じて、ページ展開情報、およびページに関する出力順序変更情報が付加され得る。このプリントオプションの解析処理についての詳細は後述する。
【0085】
プリントオプションの解析処理後、PC100Aに対して、PDFファイルのデータ形式に関する変更要求通知が送信される(S507)。
【0086】
PC100Aへ変更要求通知を送信後、PC100Aから、PDFファイルのデータ形式に関する変更通知が受信されるまで待機する(S508)。
【0087】
PC100AからPDFファイルのデータ形式に関する変更通知を受信した後、当該変更通知が記憶部に保存される(S509)。PC100Aからの変更通知は、PDFファイルのデータ形式が変更されていることを保証でき(S405参照)、変更通知に含まれ得るプリントオプションに関係する情報は、印刷部205へのページの出力時に参照され得る。
【0088】
次に、図18を参照して、図17のステップS506におけるプリントオプションの解析処理について説明する。
【0089】
まず、PC100Aからプリントオプションが通知されているか否かが判断される(S601)。ここで、プリントオプションは、PC100Aからジョブ情報が受信されている場合、当該ジョブ情報から取得され得る。
【0090】
PC100Aからプリントオプションが通知されている場合(S601でYES)、PC100Aから通知された値が、使用すべきプリントオプションとして取得される(S603)。一方、PC100Aからプリントオプションが通知されていない場合(S601でNO)、プリンタ200で予め設定されているデフォルト値が、使用すべきプリントオプションとして取得される(S602)。
【0091】
取得されたプリントオプションにおいて、複数部数の印刷が指定されており(S604でYES)、かつ、コレートの指定が行われている(S605でYES)場合、PDFファイルのデータ形式に関する変更要求通知に、受信順にページを出力すれば部単位の出力が可能となるように、複数回同一ページを展開して送信するためのページ展開情報が付加される。プリンタ200は、記憶部の使用可能容量が十分でない場合、受信したデータのうち一旦出力したデータを消去するため、2部目以降の印刷の際に、PC100Aから再び同じデータを送信してもらう必要があるからである。
【0092】
一方、取得されたプリントオプションにおいて、複数部数の印刷が指定されていない場合(S604でNO)、あるいはコレートの指定が行われていない場合(S605でNO)、ステップS607に進む。
【0093】
ステップS607では、取得されたプリントオプションにおいて、両面印刷の指定が行われているか否かが判断される。
【0094】
両面印刷の指定が行われている場合(S607でYES)、PDFファイルのデータ形式に関する変更要求通知に、ファイル内における配置順序を、元のファイルのページ順ではなく、ページに関する出力順序に変更するための情報が付加される(S608)。両面印刷を行う場合、印刷部205の特性によっては、第1ページから順番に印刷することが適当でないことがあるからである。なお、フェイスアップの指定など、第1ページから順番に印刷することが適当でない他のプリントオプションが設定されている場合も同様に、PDFファイルのデータ形式に関する変更要求通知に、ページに関する出力順序変更情報が付加される。
【0095】
このように本実施形態によれば、プリンタは、記憶部の使用可能容量が所定の基準値以下である場合、PCから受信した印刷すべきPDFファイルに対して逐次解析可能なデータ形式に変更するための変更処理を施すことを要求する変更要求通知を、PCに送信する。そして、PCは、変更要求通知を受信した場合には、印刷すべきPDFファイルに対して逐次解析可能なデータ形式への変更処理を施した上で、変更処理後のPDFファイルをプリンタに送信し、変更要求通知を受信しない場合には変更処理を行わない。
【0096】
したがって、記憶部の使用可能容量が少ないプリンタに対して、PDFファイルなどの文書ファイルをプリントデータに変換せずに送信しても、プリンタでの印刷を保証することができる。
【0097】
しかも、プリンタの記憶部の使用可能容量が所定の基準値以下となる場合にのみ、送信側であるPCは文書ファイルに対して逐次解析可能なデータ形式への変更処理を施すので、PCの負荷が軽減されるとともに、プリンタでの迅速な印刷を実現することができる。
【0098】
さらに、PCはプリントオプションに応じて変更処理を行うことができ、各種の印刷要求に対応することが可能となる。
【0099】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。
【0100】
たとえば、画像処理装置としての機能を有する装置として、PCの代わりに、たとえばワークステーション、サーバなどのコンピュータが用いられてもよい。また、プリンタの代わりに、ファクシミリ装置、コピー機、およびそれらを複合した機能を有する多機能周辺機器(MFP:Multi-Function Peripheral)などの画像形成装置が用いられてもよい。
【0101】
また、上述した実施形態では、PCでの操作に基づいてPCからプリンタにPDFファイルを送信する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、プリンタで印刷したいPDFファイルの保存場所を指定することにより、印刷すべきPDFファイルが保存されている保存装置から当該PDFファイルを取得してプリンタで印刷する場合にも適用することができる。
【0102】
本発明において、PDFファイルをプリントデータに変換せずに画像処理装置から画像形成装置に送信して印刷するための各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウェア回路、またはプログラムされたコンピュータのいずれによっても実現することが可能である。上記プログラムは、例えばフレキシブルディスクやCD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスク等の記憶装置に転送されて記憶される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、装置の一機能としてその装置のソフトウェアに組み込まれてもよい。
【0111】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、記憶部の使用可能容量が少ない画像形成装置に対して、PDFファイルなどの文書ファイルをプリントデータに変換せずに送信しても、画像形成装置での印刷を保証することができる。
【0112】
しかも、画像形成装置の記憶部の使用可能容量が所定の基準値以下となる場合にのみ、送信側である画像処理装置は文書ファイルに対して逐次解析可能なデータ形式への変更処理を施すので、画像処理装置の負荷が軽減されるとともに、画像形成装置での迅速な印刷を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係るPCおよびプリンタが適用されたプリントシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】 本発明のプリントシステムの他の例を示す図である。
【図3】 本発明のプリントシステムのさらに他の例を示す図である。
【図4】 図1に示されるPCの構成を示すブロック図である。
【図5】 図1に示されるプリンタの構成を示すブロック図である。
【図6】 標準的なPDFファイルの構成を説明するための図である。
【図7】 PDFファイルのサンプルを示す図である。
【図8】 PCで行われる処理について説明するためのフローチャートである。
【図9】 図8に示されるデータ形式に関する変更要求通知の受信処理について説明するためのフローチャートである。
【図10】 図8に示されるデータ形式の変更処理について説明するためのフローチャートである。
【図11】 図10から続く、図8に示されるデータ形式の変更処理について説明するためのフローチャートである。
【図12】 データ形式の変更処理が施されていない通常のPDFファイルのボディの一例を示す図である。
【図13】 データ形式の変更処理が施されたPDFファイルのボディの一例を示す図である。
【図14】 データ形式の変更処理が施されたPDFファイルのボディの他の例を示す図である。
【図15】 データ形式の変更処理が施されたPDFファイルのボディのさらに他の例を示す図である。
【図16】 プリンタで行われる処理について説明するためのフローチャートである。
【図17】 図16に示されるデータ形式に関する変更要求処理について説明するためのフローチャートである。
【図18】 図17に示されるプリントオプションの解析処理について説明するためのフローチャートである。
【図19】 図16に示されるデータ形式の変更があった場合の出力処理について説明するためのフローチャートである。
【図20】 図16に示されるデータ形式の変更がない場合の出力処理について説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
100A、100B…PC、
101、201…CPU、
102、202…ROM、
103、203…RAM、
104…ハードディスク、
105…表示部、
106…入力部、
107、206…ネットワークインタフェース、
108、207…バス、
200…プリンタ、
204…操作パネル部、
205…印刷部、
300…ネットワーク、
500…標準的なPDFファイル、
510…ヘッダ、
520…ボディ、
530…相互参照表、
540…トレーラ。
Claims (9)
- ページ順と異なる順序でファイル内に配置可能なオブジェクトと当該オブジェクトのファイル内での位置を示す参照情報とを備え、所定のオブジェクトから構成されるページを規定する文書ファイルを、プリントデータに変換せずに画像形成装置に送信するための画像処理装置であって、
印刷すべき文書ファイルを前記画像形成装置に送信するための文書ファイル送信手段と、
前記画像形成装置から、前記文書ファイルのデータ形式を変更することを要求する変更要求通知を受信するための変更要求通知受信手段と、
前記変更要求通知を受信した場合、前記文書ファイルに対して、受信順にデータを処理することにより文書ファイルを解析できるデータ形式に変更するための変更処理を施した変更後文書ファイルを送信前に予め準備し、前記変更要求通知を受信しない場合、前記文書ファイルに対して、前記変更処理を施さないデータ形式変更手段と、
前記データ形式変更手段により前記文書ファイルに対して前記変更処理が施された場合、前記画像形成装置に対して、予め準備された前記変更後文書ファイルを送信するための変更後文書ファイル送信手段と
を有する画像処理装置。 - ページ順と異なる順序でファイル内に配置可能なオブジェクトと当該オブジェクトのファイル内での位置を示す参照情報とを備え、所定のオブジェクトから構成されるページを規定する文書ファイルを、プリントデータに変換せずに送信するための画像処理装置と、前記文書ファイルをプリントデータに変換されることなく前記画像処理装置から受信して印刷するための画像形成装置とを有する画像形成システムであって、
前記画像処理装置は、
印刷すべき文書ファイルを前記画像形成装置に送信するための文書ファイル送信手段と、
前記画像形成装置から、前記文書ファイルのデータ形式を変更することを要求する変更要求通知を受信するための変更要求通知受信手段と、
前記変更要求通知を受信した場合、前記文書ファイルに対して、受信順にデータを処理することにより文書ファイルを解析できるデータ形式に変更するための変更処理を施した変更後文書ファイルを送信前に予め準備し、前記変更要求通知を受信しない場合、前記文書ファイルに対して、前記変更処理を施さないデータ形式変更手段と、
前記データ形式変更手段により前記文書ファイルに対して前記変更処理が施された場合、前記画像形成装置に対して、予め準備された前記変更後文書ファイルを送信するための変更後文書ファイル送信手段と
を有し、
前記画像形成装置は、
前記画像処理装置から、前記印刷すべき文書ファイルを受信するための文書ファイル受信手段と、
前記文書ファイル受信手段により受信された前記文書ファイルを記憶するための記憶手段と、
前記記憶手段の使用可能容量が所定の基準値以下であるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記記憶手段の使用可能容量が所定の基準値以下であると判断された場合、前記変更要求通知を前記画像処理装置に送信するための変更要求通知送信手段と、
前記画像処理装置から、前記変更後文書ファイルを受信するための変更後文書ファイル受信手段と、
前記変更後文書ファイル受信手段により前記変更後文書ファイルが受信された場合、当該変更後文書ファイルに基づいて印刷を行う印刷手段と
を有してなる画像形成システム。 - ページ順と異なる順序でファイル内に配置可能なオブジェクトと当該オブジェクトのファイル内での位置を示す参照情報とを備え、所定のオブジェクトから構成されるページを規定する文書ファイルを、プリントデータに変換せずに画像形成装置に送信するための画像処理装置を制御するためのプログラムであって、
印刷すべき文書ファイルを前記画像形成装置に送信するための文書ファイル送信手順と、
前記画像形成装置から、前記文書ファイルのデータ形式を変更することを要求する変更要求通知を受信するための変更要求通知受信手順と、
前記変更要求通知を受信した場合、前記文書ファイルに対して、受信順にデータを処理することにより文書ファイルを解析できるデータ形式に変更するための変更処理を施した変更後文書ファイルを送信前に予め準備し、前記変更要求通知を受信しない場合、前記文書ファイルに対して、前記変更処理を施さないデータ形式変更手順と、
前記データ形式変更手順において前記文書ファイルに対して前記変更処理が施された場合、前記画像形成装置に対して、予め準備された前記変更後文書ファイルを送信するための変更後文書ファイル送信手順と
を前記画像処理装置に実行させるためのプログラム。 - ページ順と異なる順序でファイル内に配置可能なオブジェクトと当該オブジェクトのファイル内での位置を示す参照情報とを備え、所定のオブジェクトから構成されるページを規定する文書ファイルを、プリントデータに変換せずに送信するための画像処理装置と、前記文書ファイルをプリントデータに変換されることなく前記画像処理装置から受信して印刷するための画像形成装置とを有する画像形成システムにおける画像形成方法であって、
前記画像処理装置が、印刷すべき文書ファイルを前記画像形成装置に送信するための文書ファイル送信ステップと、
前記画像形成装置が、前記画像処理装置からの前記文書ファイルを記憶手段に記憶するための記憶ステップと、
前記画像形成装置が、前記記憶手段の使用可能容量が所定の基準値以下であるか否かを判断する判断ステップと、
前記画像形成装置が、前記記憶手段の使用可能容量が所定の基準値以下であると判断した場合、前記文書ファイルに対して、受信順にデータを処理することにより文書ファイルを解析できるデータ形式に変更するための変更処理を施すことを要求する変更要求通知を、前記画像処理装置に送信するための変更要求通知送信ステップと、
前記画像処理装置が、前記画像形成装置から、前記変更要求通知を受信した場合、前記文書ファイルに対して、前記変更処理を施した変更後文書ファイルを送信前に予め準備し、前記変更要求通知を受信しない場合、前記文書ファイルに対して、前記変更処理を施さないデータ形式変更ステップと、
前記画像処理装置が、前記文書ファイルに対して前記変更処理を施した場合、前記画像形成装置に対して、予め準備された前記変更後文書ファイルを送信するための変更後文書ファイル送信ステップと、
前記画像形成装置が、前記画像処理装置から、前記変更後文書ファイルを受信した場合、当該変更後文書ファイルに基づいて印刷を行う印刷ステップと
を有する画像形成方法。 - 前記文書ファイルは、PDF(Portable Document Format)ファイルである請求項1に記載の画像処理装置。
- 前記文書ファイルは、PDF(Portable Document Format)ファイルである請求項2に記載の画像形成システム。
- 前記文書ファイルは、PDF(Portable Document Format)ファイルである請求項3に記載のプログラム。
- 請求項3記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
- 前記文書ファイルは、PDF(Portable Document Format)ファイルである請求項4に記載の画像形成方法。
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