JP4144136B2 - プリプレグ及び炭素繊維強化複合材料 - Google Patents
プリプレグ及び炭素繊維強化複合材料 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スポーツ用途、航空宇宙用途、一般産業用途に適したプリプレグ及び炭素繊維強化複合材料に関するものである。
【0002】
さらに詳細には、例えば、航空機、船舶、自動車、自転車等、及びポンプや刈払い機などの産業機械における各種フレーム、パイプ、シャフト、さらにそれらの曲円板、又は、ゴルフクラブ用シャフト、釣り竿、スキーポール、バトミントンラケット用シャフト、テントの支柱などの管状体、又は、スキー板、スノーボード、ゴルフクラブ用ヘッドなどの各種スポーツ/レジャー用品、又は、土木建築用資材とその補修・補強などに好適に使用できるプリプレグ及び炭素繊維強化複合材料に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
強化繊維とマトリックス樹脂とからなるプリプレグを中間基材とする繊維強化複合材料は、特にその機械強度特性が優れているために、スポーツ用途をはじめ、航空宇宙用途、一般産業用途に広く用いられている。特にスポーツ用途では、ゴルフクラブ用シャフト、釣り竿、テニスやバトミントンなどのラケット、ホッケーなどのスティックなどが重要な用途として挙げることができる。
【0004】
特にスポーツ用途では、強化繊維として炭素繊維、マトリックス樹脂としてはエポキシ樹脂が主として用いられる。
【0005】
繊維強化複合材料の製造には、各種の方式が用いられるが、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸されたシート状中間基材であるプリプレグを用いる方法が広く用いられている。この方法ではプリプレグを複数枚積層した後、加熱することによって成形体が得られる。
【0006】
スポーツ用の繊維強化複合材料すなわち、ゴルフクラブ用シャフト、釣り竿などは、軽量化が特に要求される分野であるが、軽量化の前提としては材料の強度を高めることが必要になる。
【0007】
そのための対応としては、強化繊維、特に炭素繊維の強度向上の努力が行われてきて、多くの成果が挙げられてきた。
【0008】
しかし、ゴルフクラブ用シャフトや釣り竿の、特にそれらの軽量品種の破壊現象の精密な解析によると、かならずしも炭素繊維の強度だけでは充分ではないことが明らかになってきた。
【0009】
ゴルフクラブ用シャフトや釣り竿は、通常、一方向プリプレグを方向を変えて数層捲回し積層することにより構成される。このような複合材料が破壊する場合は、材料の構成や外力のかかり方(曲げ、捻り、圧壊など)に依存して破壊モードが変化するが、いずれかの層の0度(強化繊維と平行な方向)圧縮又は90度(強化繊維と直交する方向)引張のいずれかの破壊モードが支配要因であることが多く、これらに次いで剪断による破壊モードが支配的である場合が見られる。
【0010】
このうち、0度圧縮強度は、強化繊維の圧縮強度、強化繊維とマトリックス樹脂との接着性、及びマトリックス樹脂の弾性率に依存し、これらの値を高めることにより0度圧縮強度を高めることができる。
【0011】
90度引張強度は、マトリックス樹脂の引張強度と強化繊維とマトリックス樹脂との接着性に依存し、これらの値が高いほど、90度引張強度を高めることができる。さらに、マトリックス樹脂の引張強度は、マトリックス樹脂の曲げ弾性率と引張伸度を高めることにより向上させることができる。
【0012】
したがって、材料の構成に依存せず高い強度特性を有する複合材料を安定して得るためには、強化繊維とマトリックス樹脂との接着性を高めることは極めて有効である。さらに、強化繊維とマトリックス樹脂との接着性を高めることは、複合材料の剪断強度を高める効果をも有し、さらに、これら静的な強度特性ばかりではなく、耐衝撃性など動的な強度特性を高める効果も有することが判っている。
【0013】
強化繊維とマトリックス樹脂との接着性を高めるために、強化繊維の表面処理が検討されており、炭素繊維の場合は、電解処理などが知られている。
【0014】
強化繊維の処理だけでは、前記接着性を向上させるには限界があり、昨今ますます厳しくなりつつある複合材料の物性向上への要求に応じるためには、樹脂の改質による手法が考えられるが、現在のところ、マトリックス樹脂として汎用されるエポキシ樹脂について、樹脂の改質により、強化繊維とマトリックス樹脂との接着性を高める手法としては、ある種の熱可塑性樹脂を配合させるのが有効であるという知見はあるものの、充分ではないのが現状である。
【0015】
繊維強化複合材料は、用途により多様な形状をとるが、形状が管状体の場合は、引張強度、圧縮強度、曲げ強度、捻り強度などの強度特性が重視され、それら強度特性を高めるために努力が払われている。
【0016】
しかし、近年、ゴルフクラブ用シャフトなど、設計自由度が制限される軽量部材では、前記強度特性に加えて、管状体の衝撃強度や、圧壊強度が注目されつつあるが、これら特性については、それらを高めるための要因が各種試験によっても特定し難いため、改良を加え、充分な強度特性を有するものを作り出すのが困難であった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、各種特性に優れた炭素繊維強化複合材料を得ることができるプリプレグ、及びそのような優れた特性を有する炭素繊維強化複合材料を提供せんとするものである。
【0018】
さらに詳しくは、本発明の目的は、前述した従来の問題を解決し、優れた特性を持つプリプレグと炭素繊維強化複合材料、例えば、曲げ強度、捻り強度に優れながら、円筒状成形体の圧壊強度、衝撃強度に優れるゴルフクラブ用シャフトを提供できるプリプレグと炭素繊維強化複合材料を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述した目的を達成するために以下の構成を有する。すなわち、次の(I)および/または(II)の条件を満たす炭素繊維に、次の構成要素(A)〜(C)を含むエポキシ樹脂組成物が含浸して構成されるプリプレグであり、
(I) X線光電子分光法により測定される表面比酸素濃度O/Cが0.02〜0.3である
(II)化学修飾X線光電子分光法により測定される表面カルボキシル基濃度 COOH /Cが0.2〜3.0%である
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
該プリプレグのマトリックス樹脂含有率Wr(重量%)と、該炭素繊維の0度引張弾性率E(GPa)及びプリプレグを加熱硬化して得られる炭素繊維強化複合材料の面内剪断強度S(MPa)が次式(1)と(2)を満足することを特徴とするプリプレグである。
【0020】
S≧−205×LOG(E)+610 …(1)
15≦Wr≦40 …(2)
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前記課題について鋭意検討し、特定の炭素繊維と特定の配合物からなるエポキシ樹脂組成物を構成要素とするプリプレグ及び炭素繊維強化複合材料によって、かかる課題を一挙に解決することを見い出し、本発明に到達した。
【0022】
ゴルフクラブ用シャフトは、シャフト軸方向に強化繊維を配向させたストレート層とシャフト軸方向に対し30度から60度に強化繊維を配向させたバイアス層を有するのが一般的である。
【0023】
繊維強化複合材料が、前記ゴルフクラブ用シャフトなどの管状体であるような場合、主として圧壊応力はバイアス層によって負担される。このときバイアス層の各単位層には、0度方向における引張応力と圧縮応力、90度方向における引張応力、圧縮応力、剪断応力、及び剥離応力など多様な応力が作用するが、発明者らの検討の結果、中でも剪断応力が強く作用する傾向があることが判明し、バイアス層に剪断強度に優れる材料を採用することで、シャフトなどの管状体としての圧壊強度が高まる事実を、見い出すに至った。
【0024】
さらに、ストレート層にもバイアス層との応力の交換作用があるため、剪断強度が高い材料をストレート層に用いても管状体全体としての圧壊強度が高められることが判った。
【0025】
一方、瞬時に作用する衝撃応力に対する強度特性、即ち衝撃強度は、その評価試験時に、ストレート層とバイアス層に応力が複雑に作用するため、強化繊維複合材料が備える諸特性の中で、衝撃強度を高めるための主要因を究明し難かった。衝撃強度は、従来、曲げ強度と正の相関関係があると考えられていたが、曲げ強度の強い材料を使用しても高めることは困難であった。しかし、ゴルフクラブ用シャフトなどの管状体では、衝撃強度は、圧壊強度と正の相関関係があるため、衝撃強度を高めるに当たって剪断強度を高めることが重要であることが判った。
【0026】
かかる繊維強化複合材料の剪断強度、特に面内剪断強度を向上させることで、圧壊強度、衝撃強度、さらに捻り強度も著しく向上することを見い出した。
【0027】
炭素繊維強化複合材料(以下、CFRPと略記)の面内剪断強度S(MPa)は、炭素繊維の0度引張弾性率E(GPa)とマトリックス樹脂含有率Wr(重量%)に応じて変化し、一般に、炭素繊維の0度引張弾性率E(GPa)が小さい程、また、マトリックス樹脂含有率Wrが大きい程、高くなる傾向が認められる。
【0028】
本発明のプリプレグが加熱硬化して得られるCFRPは、高い圧壊強度、衝撃強度を実現するために、マトリックス樹脂含有率Wr(重量%)、炭素繊維の0度引張弾性率E(GPa)、面内剪断強度S(MPa)が次式(1)と(2)を満足することが必要である。
【0029】
S≧−205×LOG(E)+610 …(1)
15≦Wr≦40 …(2)
CFRPの面内剪断強度Sが小さく上式(1)を満足しない場合、圧壊強度は小さくなり、変形応力に対する剛性も低くなり、衝撃強度も小さくなる。
【0030】
さらに、炭素繊維の0度引張弾性率E(GPa)とCFRPの面内剪断強度S(MPa)は、次式(4)を満足するのが好ましい。これにより、CFRPに、より良好な圧壊強度、衝撃強度が得られる。
【0031】
S≧−205×LOG(E)+620 …(4)
本発明のプリプレグは、炭素繊維にエポキシ樹脂組成物が含浸して構成されるものである。
【0032】
炭素繊維としては、具体的には、アクリル系、ピッチ系、レーヨン系等の炭素繊維が使用できる。中でも、引張強度の高いアクリル系が好ましい。炭素繊維の形態としては、有撚糸、解撚糸、無撚糸などが使用できるが、無撚糸又は解撚糸が、複合材料の成形性と強度特性のバランスを考慮すると好ましい。また、本発明における炭素繊維とは、黒鉛繊維を含むものである。
【0033】
本発明における炭素繊維としては、ゴルフクラブ用シャフト、釣り竿などのスポーツ用品に、少量の材料使用で充分な剛性を発現させ得るように、引張弾性率の高い炭素繊維を用いるのが好ましい。このような炭素繊維の引張弾性率は200GPa以上、好ましくは210〜800GPaであるのが好ましい。
【0034】
炭素繊維は、引張強度が高いほど剪断強度も高くなる傾向があるが、このとき引張弾性率が低くなる傾向にある。従って、剪断強度は引張弾性率とトレードオフの関係があるため、炭素繊維の引張弾性率を高く維持したままCFRPの剪断強度を向上させることが重要である。
【0035】
炭素繊維の形態としては、繊維方向がほぼ同方向に引き揃えられたものや、織物が使用できる。織物は、平織り、朱子織りなどいずれでも良い。
【0036】
炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性(以下、単に接着性と称す)を高めることで、CFRPの面内剪断強度は強くなる。接着性を高める手法としては、主に炭素繊維の表面を改質する方法、マトリックス樹脂を改質して炭素繊維との親和性や接着性を高める方法がある。
【0037】
本発明における炭素繊維は、X線光電子分光法により測定される表面比酸素濃度O/C(以下、O/Cと略記)が、0.02以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.06以上のものが良い。ここでO/Cの上限値としては0.3、好ましくは0.25であるのが良い。O/Cが0.02未満であると、後述するマトリックス樹脂との親和性が低下し、CFRPにおいて、面内剪断強度の向上が望めない場合がある。O/Cが0.3を超えると、炭素繊維とマトリックス樹脂との親和性は強固になるものの、炭素繊維自体の強度特性より大幅に低い強度特性を有する酸化物層が炭素繊維の表面を被うことになるため、得られるCFRPの強度特性が損なわれてしまう。
【0038】
また、本発明における炭素繊維は、化学修飾X線光電子分光法により測定される表面カルボキシル基濃度COOH/C(以下、COOH/Cと略記)が、0.2%以上、好ましくは0.5%以上のものが良い。ここで、COOH/Cの上限値としては3.0%、好ましくは2.0%であるのが良い。COOH/Cが0.2%未満であると、後述するマトリックス樹脂との親和性が低下し、CFRPにおいて、面内剪断強度の向上が望めない場合がある。COOH/Cが3.0%を超えると、炭素繊維とマトリックス樹脂との親和性は強固になるものの、炭素繊維自体の強度特性より大幅に低い強度特性を有する酸化物層が炭素繊維の表面を被うことになるため、得られるCFRPの強度特性が損なわれる傾向があり、またマトリックス樹脂の硬化速度を遅延させることもある。
【0039】
以下、アクリル系炭素繊維を例にとり、本発明における炭素繊維の製造方法について、詳細に説明する。
【0040】
ポリマー成分には、95モル%以上、好ましくは98モル%以上のアクリロニトリル(AN)と、5モル%以下、好ましくは2モル%以下の耐炎化を促進し、アクリロニトリル(AN)と共重合性のある、耐炎化促進成分を共重合したものが好適に使用できる。耐炎化促進成分としては、ビニル基含有化合物(以下ビニル系モノマーと云う)からなる共重合体が好適に使用できる。ビニル系モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などが挙げられる。また、一部又は全量を、アンモニアで中和したアクリル酸、メタクリル酸、又はイタコン酸のアンモニウム塩からなる共重合体は、耐炎化促進成分としてより好適に使用できる。なお、重合法については、従来知られている溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などを適用することができる。
【0041】
前記ポリマー成分から成る紡糸原液を、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法、又は溶融紡糸法により紡糸するが、中でも湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法が好ましく採用できる。紡糸原液に使用する溶媒としては、有機、無機の従来公知の溶媒が使用できるが、有機溶媒を使用するのが好ましく、具体的には、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。硝酸、ロダンソーダ水溶液、塩化亜鉛水溶液などの無機塩の濃厚水溶液を溶媒とすると、所望する表面粗さを有する炭素繊維を得られないときがある。紡糸後の凝固糸を、水洗、延伸、乾燥及び油剤付与などの製糸工程を経て、アクリル系プリカーサーを製造する。
【0042】
さらにこのアクリル系プリカーサーを耐炎化、炭化することによって、所望する性能を有する炭素繊維が得られる。耐炎化に供されるプリカーサーは、生産性の点から、その単糸繊度が3〜11μm、好ましくは3〜9μm、より好ましくは、3〜7μmのものが良い。また、1糸条当たりの単繊維本数が10000〜60000本、好ましくは12000〜48000本のものが良い。
【0043】
以下、耐炎化条件について具体的に示す。なお、耐炎化条件としては、これに限定されるものではない。
【0044】
耐炎化の延伸比としては、0.85〜1.0として耐炎化するのが好ましい。かかる延伸比は、糸束としての焼けムラを抑制するために、0.87〜0.94がより好ましい。かかる延伸比が0.85を下回ると、プロセス性が低下し、1.0を超えると糸束内への酸素の拡散が妨げられ、糸束中心部の焼けムラが顕著となる傾向がある。
【0045】
耐炎化温度は、200〜300℃が良く、それぞれの耐炎化進行度において、反応熱の蓄熱によって糸切れが生じる温度より10〜20℃低い温度で、耐炎化するのがコスト削減及び炭素繊維の性能を高める観点から好ましい。耐炎化進行度は、得られる耐炎化糸について後述する方法によって測定される炎収縮保持率によって観測することができる。
【0046】
本発明において、アクリル系プリカーサーの耐炎化は、かかる炎収縮保持率が、70〜90%、好ましくは74〜86%、より好ましくは76〜84%となるように耐炎化するのが良い。
【0047】
耐炎化時間は、生産性及び炭素繊維の性能を高める観点から、10〜100分間、好ましくは30〜60分間が良い。この耐炎化時間とは、プリカーサーが耐炎化炉内に滞留している全時間をさす。10分未満であると、繊維の焼けムラが顕著となり、得られる炭素繊維の性能が低下する場合がある。
【0048】
このようにして、プリカーサーを耐炎化した後、続く炭化工程で炭化して炭素繊維とする。
【0049】
炭化工程では、不活性雰囲気中、300〜800℃で予備炭化し、さらに不活性雰囲気中、800〜1600℃で炭化する必要がある。後者の炭化温度は、1100℃以上、好ましくは1200℃以上とするのが良い。すなわち、1100℃未満では、得られる炭素繊維に含まれる水分率が高くなる場合がある。また、炭化温度の上限値は、1600℃、好ましくは1500℃とするのが良い。1600℃を超えると、繊維内において結晶の成長が顕著となり、圧縮強度、接着性が低下する傾向がある。
【0050】
予備炭化工程における延伸比は、1.0〜1.5、好ましくは1.02〜1.3、より好ましくは1.04〜1.15とするのが良い。かかる延伸比は高い程、引張弾性率発現の点で有利であるが、1.5を超えるとプロセス性の低下が顕著となる場合がある。
【0051】
炭化工程における昇温速度及び処理時間については、所望する炭素繊維の性能と所要コストを勘案の上、適宜選択できる。特に、300〜500℃/分及び1000〜1200℃/分の、通常採用する昇温速度を、それぞれ1000℃/分以下、好ましくは500℃/以下とするのが良い。また、炭化の処理時間は、炭化の程度が問題とならない範囲で、できるだけ短くするのが、コスト削減の観点から好ましい。
【0052】
さらに、本発明における炭素繊維は、不活性雰囲気中、2000〜3300℃、好ましくは2000〜3000℃、より好ましくは2000〜2800℃で黒鉛化することにより、従来の黒鉛繊維と比較して、強度特性が飛躍的に優れる黒鉛繊維を得ることが可能となる。
【0053】
前述したとおり、得られる繊維強化複合材料において、0度圧縮強度、90度引張強度を高めるには、接着性を高めることが好ましい。接着性を高めるために、炭素繊維としては、結晶が小さく、活性点が多いものが好ましい。かかる炭素繊維としては、広角X線により求めた炭素網面の結晶サイズLCが5〜40オングストローム、好ましくは10〜30オングストローム、より好ましくは15〜25オングストロームであるのが良い。
【0054】
前記O/CやCOOH/Cが特定範囲にある炭素繊維は、炭化後に電解酸化処理を施したり、気相又は液相での酸化処理を施すことにより容易に得られる。
【0055】
電解酸化処理の電解液としては酸性及びアルカリ性のどちらの水溶液でも良い。酸性水溶液の電解質としては、硫酸、硝酸、塩酸などを使用することができる。アルカリ水溶液の電解質としては、アンモニウムイオンを含む化合物が好ましく、具体的には、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム塩など、又はそれらの混合物を用いることができる。中でも、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムが好ましい。
【0056】
電解処理に要する電気量は、炭素繊維の炭化度に合わせて最適化するのが好ましいが炭素繊維基質の引張強度の低下を抑止し、かつ炭素繊維の表層の結晶性を低くする観点から、電解処理は小さい電気量で処理を複数回に分けて行うのが好ましい。具体的には電解槽1槽当たりの電気量は1クーロン/g・槽(炭素繊維1g、1槽当たりのクーロン数)〜40クーロン/g・槽が好ましい。
【0057】
通電方法としては、炭素繊維を電極ローラに直接接触させて通電させる直接通電、又は炭素繊維と電極の間に電解液を介して通電させる間接通電のいずれも採用することができるが、炭素繊維基質に高い引張強度を得るために、電解処理時の繊維束の毛羽立ち、電気スパークが押さえられる間接通電が好ましい。
【0058】
また、電解処理後は、水洗、乾燥するのが好ましい。この場合、後述する樹脂組成物との親和性や接着性を向上させるため、炭素繊維の表層面に存在する官能基が熱分解しないように、できるだけ低い温度で乾燥するのが望ましく、具体的には乾燥温度は180〜250℃、好ましくは180〜210℃であるのが良い。
【0059】
本発明のプリプレグ及びCFRPにおけるマトリックス樹脂は、次の構成要素(A)〜(C)を含むエポキシ樹脂組成物からなるものである。
【0060】
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)アクリルアミド化合物
本発明において、構成要素(A)であるエポキシ樹脂とは、分子内に2個以上のエポキシ基を有する、いわゆる2官能エポキシ樹脂を意味する。
【0061】
具体的には、ポリオールから得られるグリシジルエーテル、活性水素を複数有するアミンより得られるグリシジルアミン、ポリカルボン酸より得られるグリシジルエステルや、分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られるポリエポキシドなどが用いられる。
【0062】
グリシジルエーテルの具体例としては以下のようなものが挙げられる。
【0063】
まず、ビスフェノールAから得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFから得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールSから得られるビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAから得られるテトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂などが挙げられる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピコート”825(エポキシ当量172〜178)、“エピコート”828(エポキシ当量184〜194)、“エピコート”834(エポキシ当量230〜270)、“エピコート”1001(エポキシ当量450〜500)、“エピコート”1002(エポキシ当量600〜700)、“エピコート”1003(エポキシ当量670〜770)、“エピコート”1004(エポキシ当量875〜975)、“エピコート”1007(エポキシ当量1750〜2200)、“エピコート”1009(エポキシ当量2400〜3300)、“エピコート”1010(エポキシ当量3000〜5000)(以上、油化シェルエポキシ(株)製)、“エポトート”YD−128(エポキシ当量184〜194)“エポトート”YD−011(エポキシ当量450〜500)、“エポトート”YD−014(エポキシ当量900〜1000)、“エポトート”YD−017(エポキシ当量1750〜2100)、“エポトート”YD−019(エポキシ当量2400〜3000)、“エポトート”YD−022(エポキシ当量4000〜6000)、(以上、東都化成(株)製)、“エピクロン”840(エポキシ当量180〜190)、“エピクロン”850(、エポキシ当量184〜194)、“エピクロン”1050(エポキシ当量450〜500)、“エピクロン”3050(エポキシ当量740〜860)、“エピクロン”HM−101(エポキシ当量3200〜3900)(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、“スミエポキシ”ELA−128(エポキシ当量184〜194、住友化学工業(株)製)、DER331(エポキシ当量182〜192、ダウケミカル社製)などを使用することができる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピコート”806(エポキシ当量160〜170)、“エピコート”807(エポキシ当量160〜175)、“エピコート”E4002P(エポキシ当量610)、“エピコート”E4003P(エポキシ当量800)、“エピコート”E4004P(エポキシ当量930)、“エピコート”E4007P(エポキシ当量2060)、“エピコート”E4009P(エポキシ当量3030)、“エピコート”E4010P(エポキシ当量4400)(以上、油化シェルエポキシ(株)製)、“エピクロン”830(エポキシ当量165〜180、大日本インキ化学工業(株)製)、“エポトート”YDF−2001(エポキシ当量450〜500)、“エポトート”YDF−2004(エポキシ当量900〜1000)(以上、東都化成(株)製)などを使用することができる。ビスフェノールS型エポキシ樹脂の市販品としては、“デナコール”EX-251(ナガセ化成工業(株)製、エポキシ当量189)などを使用することができる。テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピコート”5050(油化シェルエポキシ(株)製、エポキシ当量380〜410)、“エピクロン”152(大日本インキ化学工業(株)製、エポキシ当量340〜380)、“スミ−エポキシ”ESB-400T(住友化学工業(株)製、エポキシ当量380〜420)、“エポトート”YBD-360(東都化成(株)製、エポキシ当量350〜370)などを使用することができる。
【0064】
ここで、””で示した名称は、原料メーカー等の登録商標、商標、或いは商品名を示す。また、以下からの記載も同様とする。
【0065】
また、フェノールやアルキルフェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール誘導体から得られるノボラックのグリシジルエステルであるノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピコート”152(エポキシ当量172〜179)、“エピコート”154(エポキシ当量176〜181)(以上、油化シェルエポキシ(株)製)、DER438(エポキシ当量176〜181、ダウケミカル社製)、“アラルダイト”EPN1138(エポキシ当量176〜181、チバ社製)、“アラルダイト”EPN1139(エポキシ当量172〜179、チバ社製)、“エポトート”YCPN-702(エポキシ当量200〜230、東都化成(株)製)、BREN-105(エポキシ当量262〜278、日本化薬(株)製)などを使用することができる。
【0066】
その他にも、レゾルシンジグリシジルエーテルである“デナコール”EX-201(ナガセ化成工業(株)製、エポキシ当量118)、ヒドロキノンジグリシジルエーテルである“デナコール”EX-203(ナガセ化成工業(株)製、エポキシ当量112)、4,4'-ジヒドロキシ-3,3',5,5'-テトラメチルビフェニルジグリシジルエーテルである“エピコート”YX4000(油化シェルエポキシ(株)製、エポキシ当量180〜192)、1,6-ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテルである“エピクロン”HP-4032H(大日本インキ化学工業(株)製、エポキシ当量250)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルエオレンのジグリシジルエーテルである“エポン”HPTレジン1079(シェル社製、エポキシ当量250〜260)、トリス(p-ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテルであるTACTIX 742(ダウケミカル社製、エポキシ当量150〜157)、テトラキス(p-ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテルである“エピコート”1031S(油化シェルエポキシ(株)製、エポキシ当量196)、グリセリンのトリグリシジルエーテルである“デナコール”EX-314(ナガセ化成工業(株)製、エポキシ当量145)、ペンタエリスリトールのテトラグリシジルエーテルである“デナコール”EX-411(ナガセ化成工業(株)製、エポキシ当量231)などを使用することができる。
【0067】
グリシジルアミンの具体例としては、ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンである“スミ−エポキシ”ELM434(住友化学工業(株)製、エポキシ当量110〜130)、テトラグリシジルm-キシリレンジアミンであるTETRAD-X(三菱ガス化学(株)製、エポキシ当量90〜105)などが挙げられる。
【0068】
さらに、グリシジルエーテルとグリシジルアミンの両構造を併せ持つエポキシ樹脂として、トリグリシジル-m-アミノフェノールである“スミ−エポキシ”ELM120(エポキシ当量118、住友化学工業(株)製)、及びトリグリシジル-p-アミノフェノールである“アラルダイト”MY0510(チバガイギー社製、エポキシ当量94〜107)などが挙げられる。
【0069】
グリシジルエステルの具体例としては、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステルなどが挙げられる。
【0070】
さらに、これら以外のグリシジル基を有するエポキシ樹脂として、トリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0071】
分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られるポリエポキシドとしては、エポキシシクロヘキサン環を有するエポキシ樹脂などが挙げられ、具体例としては、ユニオンカーバイド社のERL-4206(エポキシ当量70〜74)、ERL-4221(エポキシ当量131〜143)、ERL-4234(エポキシ当量133〜154)などが挙げられる。さらにエポキシ化大豆油なども挙げられる。
【0072】
本発明において、構成要素(B)である硬化剤としては、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミンのような活性水素を有する芳香族アミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ポリエチレンイミンのダイマー酸エステルのような活性水素を有する脂肪族アミン、これらの活性水素を有するアミンにエポキシ化合物、アクリロニトリル、フェノールとホルムアルデヒド、チオ尿素などの化合物を反応させて得られる変性アミン、ジメチルアニリン、ジメチルベンジルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールや1−置換イミダゾールのような活性水素を持たない第三アミン、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物のようなカルボン酸無水物、アジピン酸ヒドラジドやナフタレンジカルボン酸ヒドラジドのようなポリカルボン酸ヒドラジド、ノボラック樹脂などのポリフェノール化合物、チオグリコール酸とポリオールのエステルのようなポリメルカプタン、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体、芳香族スルホニウム塩などが挙げられる。
【0073】
これらの硬化剤には、硬化活性を高めるために適当な硬化助剤を組合わせることができる。好ましい例としては、ジシアンジアミドに、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(DCMU)、3-(3−クロロ−4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエンのような尿素誘導体を硬化助剤として組合わせる例、カルボン酸無水物やノボラック樹脂に第三アミンを硬化助剤として組合わせる例などが挙げられる。
【0074】
本発明において、エポキシ樹脂組成物は、次の構成要素(C)を含む。
【0075】
(C)アクリルアミド化合物
本発明において、前記構成要素(C)は、接着性を高めるための高極性化合物として配合される。
【0076】
ここでいうアミド結合とは、カルボニル基とその炭素に単結合で結合する窒素原子からなる部分構造を意味する。
【0077】
アミド結合のカルボニル酸素は酸素又は窒素に結合した水素原子と強い水素結合を作る。従って、炭素繊維の表層面に存在するカルボキシル基や水酸基などの水素原子との水素結合が生じ接着性を高める。
【0078】
さらに、アミド結合のカルボニル基は強い永久双極子であるため、炭素繊維のように分極率の高い強化繊維に有機双極子を作り、双極子−双極子の電気的引力により接着性を高める。
【0079】
もし、アミド結合を持つ化合物がエポキシ樹脂又は硬化剤と反応しうる官能基を持たないと、相分離により接着性が充分発現しなかったり、可塑剤として働き耐熱性が著しく低下したりする恐れがあるが、アミド結合を持つ化合物がエポキシ樹脂又は硬化剤と反応しうる官能基を持つ場合は、樹脂組成物の硬化に伴い、エポキシ樹脂硬化物のネットワークの一部となるため前記のような弊害を生じる恐れがない。
【0080】
エポキシ樹脂又は硬化剤と反応しうる2個以上の官能基と1個以上のアミド結合を有する化合物を配合したエポキシ樹脂組成物をCFRPに用いることは公知であるが、これらの公知技術では、接着性の著しい改善は確認されていない。しかし、本発明者らの見出した、分子内にエポキシ樹脂又は硬化剤と反応しうる官能基1個と1個以上のアミド結合を有するアクリルアミド化合物を配合したエポキシ樹脂組成物では、著しい効果を有する。
【0081】
この理由としては、エポキシ樹脂又は硬化剤と反応しうる官能基を2個以上有する化合物は、エポキシ樹脂のネットワークと2カ所以上で化学結合するため、アミド結合の酸素原子が炭素繊維表面に充分接近できないのに対し、エポキシ樹脂又は硬化剤と反応しうる官能基を有する化合物は、エポキシ樹脂のネットワークと一カ所だけで化学結合するため、その化合物に由来する部分構造の運動の自由度が大きく、カルボニル基の酸素原子が炭素繊維表面に接触しやすいためと本発明者らは推定している。
【0082】
さらに構成要素(C)の配合は、接着性を高めるだけではなく、エポキシ樹脂組成物の硬化物の曲げ弾性率を高める効果も有する。これは、エポキシ樹脂中に存在する水酸基とカルボニル基の酸素が強い水素結合を作り分子運動を拘束するためと考えられる。
【0083】
エポキシ樹脂と反応しうる官能基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、アミノ基、第2アミン構造、メルカプト基などが挙げられる。また硬化剤とし反応しうる官能基としては、エポキシ基、カルボニル基と共役した二重結合などが挙げられる。カルボニル基と共役した二重結合は、硬化剤中のアミノ基やメルカプト基とマイケル付加反応を行う。
【0090】
カルボニル基と共役した二重結合を1個有し、アミド結合を有する化合物は、二重結合と共役するカルボニル基がアミド結合のカルボニル基と同一であってもよく、異なってもよい。二重結合と共役するカルボニル基がアミド結合のカルボニル基と同一である化合物としては、α,β−不飽和カルボン酸のアミド及びその窒素原子上に置換基を有する誘導体が該当する。その具体例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-n-プロポキシメチルアクリルアミド、N-n-ブトキシメチルアクリルアミド、N-イソブトキシメチルアクリルアミド、N-ベンジロキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、1-アクリロイルモルホリン、1-アクリロイルピペリジンなどが挙げられる。またそれ以外にもマレイミド、N-エチルマレイミド、N-フェニルマレイミドのような不飽和ジカルボン酸のイミドも該当する。二重結合と共役するカルボニル基がアミド結合のカルボニル基と同一でない化合物としては、2-( フェニルカルバモイルオキシ) エチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0091】
本発明において、前記構成要素(C)は1種でも、複数種配合しても良いが、構成要素(C)の配合量(複数種用いる場合はその合計)は、構成要素(A)100重量部に対し0.5〜15重量部、好ましくは1〜10重量部であるのが良い。0.5重量部未満であると接着性向上効果が充分に発現されず、15重量部を超えると耐熱性低下などの弊害が生じることがある。
【0092】
なお、構成要素(C)は、室温で液状のものも固形のものも使用できる。構成要素(C)として固形のものを用いる場合は、エポキシ樹脂組成物に配合した後、加熱撹拌などの手段で溶解してもよく、溶解せずに配合してもよい。固形の構成要素(C)を溶解せずに配合する場合は、粒径10μm以下に粉砕して使用するのが好ましい。
【0102】
本発明においては、エポキシ樹脂組成物には、前記構成要素(A)、(B)、(C)の他に、任意の成分として高分子化合物、有機又は無機の粒子などの他成分を配合することができる。
【0103】
高分子化合物としては、熱可塑性樹脂が好適に用いられる。熱可塑性樹脂を配合することにより、樹脂の粘度制御やプリプレグの取扱い性制御、あるいは接着性改善の効果が増進される。
【0104】
ここで用いる熱可塑性樹脂は、本発明の目的である接着性の改善の相乗効果が期待できる水素結合性の官能基を有する熱可塑性樹脂が特に好ましい。
【0105】
水素結合性官能基としては、アルコール性水酸基、アミド結合、スルホニル基などが挙げられる。
【0106】
アルコール性水酸基を有する熱可塑性樹脂としては、ポリビニルホルマールやポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂、アミド結合を有する熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリイミド、スルホニル基を有する熱可塑性樹脂としては、ポリスルホンなどが挙げられる。ポリアミド、ポリイミド及びポリスルホンは主鎖にエーテル結合、カルボニル基などの官能基を有してもよい。ポリアミドは、アミド基の窒素原子上に置換基を有してもよい。
【0107】
エポキシ樹脂に可溶で、水素結合性官能基を有する熱可塑性樹脂の市販品を例示すると、ポリビニルアセタール樹脂として、“デンカブチラール”及び“デンカホルマール”(電気化学工業(株)製)、“ビニレック”(チッソ(株)製)、フェノキシ樹脂として、“UCAR”PKHP(ユニオンカーバイド社製)、ポリアミド樹脂として“マクロメルト”(ヘンケル白水(株)製)、“アミラン”CM4000(東レ(株)製)、ポリイミドとして“ウルテム”(ジェネラル・エレクトリック社製)、“Matrimid”5218(チバ社製)、ポリスルホンとして“Victrex”(三井化学(株)製)、“UDEL”(ユニオン・カーバイド社製)などが挙げられる。
【0108】
熱可塑性樹脂を含有する場合は、熱可塑性樹脂の配合量をエポキシ樹脂100重量部に対して1〜20重量部とするのが、エポキシ樹脂組成物に適度な粘弾性を与え、良好な複合材料物性が得られる点で好ましい。
【0109】
エポキシ樹脂組成物に配合する有機粒子としては、ゴム粒子及び熱可塑性樹脂粒子が用いられる。これらの粒子は樹脂の靭性向上、CFRPの耐衝撃性向上の効果を有する。
【0110】
ゴム粒子としては、架橋ゴム粒子、及び架橋ゴム粒子の表面に異種ポリマーをグラフト重合したコアシェルゴム粒子が好ましく用いられる。
【0111】
市販の架橋ゴム粒子としては、カルボキシル変性のブタジエン−アクリロニトリル共重合体の架橋物からなるXER−91(日本合成ゴム工業(株)製)、アクリルゴム微粒子からなるCX−MNシリーズ(日本触媒(株)製)、YR−500シリーズ(東都化成(株)製)などが挙げられる。
【0112】
市販のコアシェルゴム粒子としては、例えば、ブタジエン・メタクリル酸アルキル・スチレン共重合体からなる“パラロイド”EXL−2655(呉羽化学工業(株)製)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体からなる“スタフィロイド”AC−3355、TR−2122(武田薬品工業(株)製)、アクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共重合体からなる“PARALOID”EXL−2611、EXL−3387(Rohm & Haas社製)などが挙げられる。
【0113】
熱可塑性樹脂粒子としては、ポリアミドあるいはポリイミドの粒子が好ましく用いられる。市販のポリアミド粒子として、東レ(株)製SP-500、ATOCHEM社製“オルガソール”などが挙げられる。
【0114】
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、スメクタイト、合成マイカなどを配合することができる。これらの無機粒子は、主としてレオロジー制御すなわち増粘や揺変性付与のために配合される。
【0115】
CFRPの面内剪断強度を高めるためには、接着性を高めると共に、樹脂組成物について、その硬化物の曲げ弾性率が高く、かつ引張伸度及び塑性変形能力が高いことが好ましい。
【0116】
硬化物の曲げ弾性率は、3.1GPa以上、好ましくは3.3GPa以上、より好ましくは3.3GPa以上であるのが良い。また硬化物の引張伸度は8%以上、好ましくは10%以上であるのが良い。
【0117】
また塑性変形能力の指標としては、硬化物の3点曲げ撓み量や動的粘弾性測定より得られるゴム状態の弾性率G'を用いることができ、3点曲げの撓み量が10〜25mm、好ましくは15〜25mmであるか、又は、周波数0.5Hzでの動的粘弾性におけるゴム状態弾性率G'(MPa)が次式(3)、好ましくは次式(5)を満足するのが良い。
【0118】
1≦G'≦8 …(3)
1≦G'≦5 …(5)
本発明において、樹脂組成物について、引張伸度と塑性変形能力を高めるには、全エポキシ樹脂中、70〜100重量%、好ましくは80〜100重量%が2官能エポキシ樹脂であるのが良い。
【0119】
以下、本発明のプリプレグの製造方法、及びこれを積層して加熱硬化してCFRPを得る方法について説明する。
【0120】
プリプレグの製造方法は、マトリックス樹脂をメチルエチルケトン、メタノールなどの溶媒に溶解して低粘度化し、含浸させるウエット法と、加熱により低粘度化し、含浸させるホットメルト法などの方法により製造される。
【0121】
ウェット法は、炭素繊維をエポキシ樹脂組成物からなる液体に浸漬した後、引き上げ、オーブンなどを用いて溶媒を蒸発させてプリプレグを得る方法である。
【0122】
ホットメルト法は、加熱により低粘度化したエポキシ樹脂組成物を直接炭素繊維に含浸させる方法、あるいは一旦エポキシ樹脂組成物を離型紙などの上にコーティングしたフィルムをまず作成し、ついで炭素繊維の両側あるいは片側から該フィルムを重ね、加熱加圧することにより樹脂を含浸させたプリプレグを製造する方法である。ホットメルト法には、プリプレグ中に残留する溶媒がないため好ましい。
【0123】
プリプレグを用いたCFRPの成形は、プリプレグを積層後、積層物に圧力を付与しながら樹脂を加熱硬化させる方法などにより作製できる。
【0124】
熱及び圧力を付与する方法には、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法などがあり、特にスポーツ用品に関しては、ラッピングテープ法、内圧成形法が好ましく採用される。
【0125】
ラッピングテープ法は、マンドレルなどの芯金にプリプレグを巻いて、円筒状成形体を得る方法であり、ゴルフクラブ用シャフト、釣り竿などの棒状体を作製する際に好適である。具体的には、マンドレルにプリプレグを巻き付け、プリプレグの固定及び圧力付与のために、プリプレグの外側に熱可塑性樹脂フィルムからなるラッピングテープを巻き付け、オーブン中で樹脂を加熱硬化させた後、芯金を抜き去って円筒状成形体を得る。
【0126】
また、内圧成形法は、熱可塑性樹脂のチューブなどの内圧付与体にプリプレグを巻きつけたプリフォームを金型中にセットし、次いで内圧付与体に高圧の気体を導入して圧力をかけると同時に金型を加熱し成形する方法である。ゴルフクラブ用シャフト、バット、テニスやバトミントンなどのラケットのような複雑な形状物を成形する際に好適に用いられる。
【0127】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。樹脂硬化物の物性測定、プリプレグの作製、CFRP面内剪断強度の測定、円筒状CFRPの作製、円筒状CFRPの物性測定は次の方法で行った。なお、物性測定はすべて温度23℃、相対湿度50%の環境で行った。
(1)樹脂硬化物の物性測定
A.曲げ弾性率の測定
樹脂組成物を80℃に加熱してモールドに注入し、130℃の熱風乾燥機中で2時間加熱硬化して厚さ2mmの樹脂硬化板を作製した。次に、樹脂硬化板から幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、試験速度2.5mm、支点間距離32mmで3点曲げ試験を行い、JIS K7203に従い、曲げ弾性率と曲げ撓み量を求めた。
【0128】
B.引張伸度の測定
Aと同様にして作製した樹脂硬化板より、JIS K7113に従い、小型1(1/2)号形試験片を切り出し、引張伸度を求めた。
【0129】
C.ゴム状態弾性率の測定
Aと同様にして作製した樹脂硬化板より、SACMA SRM18R−94に従い、DMA法によりゴム状態の弾性率G'を求めた。G’曲線においてガラス転移領域の直線部分を延長した線とゴム状態領域の直線部分を延長した線との交点の弾性率値をゴム状態の弾性率G'とし、塑性変形能力の指標とした。ここでは、Rheometric Scientific社製粘弾性測定システム拡張型“ARES”を用い、昇温速度5℃/分、周波数1Hzで測定した。
(2)プリプレグの作製
樹脂組成物をリバースロールコーターを用いて離型紙上に塗布し、樹脂フィルムを作製した。次に、シート状に一方向に整列させた炭素繊維に樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね、加熱加圧して樹脂組成物を含浸させ、炭素繊維目付125g/m2のプリプレグを得た。
(3)面内剪断強度の測定
一方向プリプレグを炭素繊維の方向が±45°になるよう所定枚数積層し、オートクレーブ中で温度135℃、圧力290Paで2時間加熱加圧して硬化して作製したサンプルについて、JIS K7079に従って測定した。
(4)円筒状CFRPの作製
下記(a)〜(e)の操作により、円筒軸方向に対して[03/±453]の積層構成を有し、内径が6.3mm及び10mmの2種類の円筒状CFRPを作製した。マンドレルには直径6.3mm及び10mm(いずれも長さ1000mm)のステンレス製丸棒を使用した。
(a)一方向プリプレグを繊維の方向がマンドレルの軸方向に対して45度になるように、直径6.3mmのマンドレルでは縦800mm×横68mm、直径10mmのマンドレルでは縦800mm×横103mmの長方形に2枚切り出した。この2枚を繊維方向が互いに交差するように、かつ横方向に直径6.3mmのマンドレルでは10mm、直径10mmのマンドレルでは16mm(マンドレル半周分に対応)ずらして貼り合わせた。
(b)貼り合わせたプリプレグを離型処理したマンドレルに、プリプレグの縦方向とマンドレルの軸方向が一致するように巻き付けた。(バイアス材)
(c)その上に、プリプレグを繊維の方向が縦方向になるように、直径6.3mmのマンドレルでは縦800mm×横77mm、直径10mmのマンドレルでは縦800mm×横112mmの長方形に切り出したものをプリプレグの縦方向とマンドレルの軸方向が一致するように巻き付けた。(ストレート材)
(d)ラッピングテープ(耐熱性フィルムテープ)を巻きつけ、硬化炉中で130℃、2時間加熱成形した。
(e)成形後、マンドレルを抜き取り、ラッピングテープを除去して円筒状CFRPを得た。
(5)円筒状CFRPの物性測定
A.曲げ強度の測定
内径10mmの円筒状CFRPを用い、「ゴルフクラブ用シャフトの認定基準及び基準確認方法」(製品安全協会編、通商産業大臣承認5産第2087号、1993年)に記載の3点曲げ試験方法に基づき曲げ破壊荷重を測定し、該荷重値を曲げ強度とした。支点間距離300mm、試験速度5mm/分とした。
【0130】
B.捻り強度の測定
内径10mmの円筒状CFRPから長さ400mmの試験片を切り出し、「ゴルフクラブ用シャフトの認定基準及び基準確認方法」(製品安全協会編、通商産業大臣承認5産第2087号、1993年)に記載の方法に従い、捻り試験を行った。試験片ゲージ長は300mmとし、試験片両端の50mmを固定治具で把持した。捻り強度は次式により求めた。
【0131】
捻り強度(N・m・deg)=破壊トルク(N・m)×破壊時の捻れ角(deg)
C.圧壊強度の測定
内径10mmの円筒状CFRPから長さ15mmの試験片を切り出し、ステンレス平板を介して円筒の半径方向に圧縮荷重を加えて破壊し、破壊時の荷重を圧壊強度とした。試験速度は5mm/分とした。
【0132】
D.シャルピー衝撃強度の測定
円筒状CFRPを試験片に用いたこと以外はJIS K7077記載の方法に従い、シャルピー衝撃試験を行った。内径6.3mmの円筒状CFRPから長さ90mmの試験片を切り出し、支点間距離40mm、ハンマー振り上げ角135度、秤量300kg・cmで円筒軸方向と垂直な方向から衝撃を与え、最大衝撃荷重を測定し、該荷重値を衝撃強度とした。
(6)炭素繊維表面の官能基量測定
A.表面比酸素濃度O/C
表面比酸素濃度O/Cは、次の手順に従ってX線光電子分光法により求めた。
【0133】
先ず、測定する炭素繊維束から、溶媒でサイジング剤などを除去後、適当な長さにカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げて並べた後、下記条件にて測定した。
【0134】
・光電子脱出角度:90度
・X線源:MgKα1,2
・試料チャンバー内真空度:1×10-8Torr
次に、測定時の帯電に伴うピークの補正のため、C1Sの主ピークの結合エネルギー値B.E.を284.6eVに合わせた。
【0135】
次いで、C1sピーク面積[O1s]は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引いて求め、O1sピーク面積[C1s]は、528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引いて求めた。
【0136】
表面比酸素濃度O/Cは、上記O1sピーク面積[O1s]、C1sピーク面積[C1s]の比、及び装置固有の感度補正値より、次式により求めた。
【0137】
O/C=([O1s]/[C1s])/(感度補正値)
なお、ここでは、測定装置として島津製作所(株)製、ESCA−750を用い、前記装置固有の感度補正値を2.85とした。
B.表面カルボキシル基濃度COOH/C
表面カルボキシル基濃度COOH/Cは、次の手順に従って化学修飾X線光電子分光法により求めた。
【0138】
先ず、測定する炭素繊維束から、溶媒でサイジング剤などを除去後、適当な長さにカットして白金製の試料支持台上に拡げて並べた後、0.02モル/Lのジシクロヘキシルカルボジイミド気体及び0.04モル/Lのピリジン気体を含む空気中に60℃で8時間曝露して化学修飾処理した後、下記条件にて測定した。
【0139】
・光電子脱出角度:35度
・X線源:AlKα1,2
・試料チャンバー内真空度:1×10-8Torr
次に、測定時の帯電に伴うピークの補正のため、C1Sの主ピークの結合エネルギー値B.E.を284.6eVに合わせた。
【0140】
次いで、C1sピーク面積[C1s]は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引いて求め、F1sピーク面積[F1s]は、682〜695eVの範囲で直線のベースラインを引いて求めた。
【0141】
さらに、比較サンプルとして、化学修飾処理したポリアクリル酸のC1sピーク分割から反応率rを、O1sピーク分割からジシクロヘキシルカルボジイミド誘導体の残存率mを求めた。次に、表面カルボキシル基濃度COOH/Cを、次式により求めた。
【0142】
COOH/C=〔[F1s]/[(3k[C1s]-(2+13m)[F1s])r]〕×100(%)
ここで、米国SSI社製モデルSSX-100-206を用いた。本装置固有のC1sピーク面積に対するF1sピーク面積の感度補正値kは3.919であった。
【0143】
以下、実施例、比較例について説明する。実施例、比較例中に記載の部数はすべて重量部を表す。実施例、比較例は表1〜3に示した。
【0144】
なお、実施例4〜6と比較例3〜5は、炭素繊維の引張弾性率を変えた例であり、表2に示した。実施例7と比較例6は、炭素繊維の表面官能基量を変えた例であり、表3に示した。
(実施例1)下記原料をニーダーで混合して樹脂組成物を得た。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 40部 (“エピコート”828、油化シェルエポキシ(株)製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 50部 (“エピコート”1001、油化シェルエポキシ(株)製)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂 10部 (“エピコート”154、油化シェルエポキシ(株)製)
ジシアンジアミド 5部 (DICY7、油化シェルエポキシ(株)製)
3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素 3部 (DCMU99、保土ヶ谷化学工業(株)製)
N−n−ブトキシメチルアクリルアミド 5部 (笠野興産(株)製)
ポリビニルホルマール 7部 (“ビニレック”K、チッソ(株)製)
この樹脂組成物を用いて、前記した方法に従い、樹脂硬化物、及びプリプレグを作製した。ここで、プリプレグは、強化繊維として引張弾性率が294GPaの炭素繊維を用い、マトリックス樹脂含有率を24%とした。このプリプレグから得られたCFRPの面内剪断強度は140MPaで、式(1)を満足した。
【0145】
また、ストレート材及びバイアス材としてこのプリプレグを用いて得られた円筒状CFRPの圧壊強度と衝撃強度は良好であった。
(実施例2)
下記原料をニーダーで混合して樹脂組成物を得た。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 40部
(“エピコート”828、油化シェルエポキシ(株)製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 50部
(“エピコート”1001、油化シェルエポキシ(株)製)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂 10部
(“エピコート”154、油化シェルエポキシ(株)製)
ジシアンジアミド 5部
(DICY7、油化シェルエポキシ(株)製)
3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素 3部
(DCMU99、保土ヶ谷化学工業(株)製)
N,N−ジエチルアクリルアミド 5部
((株)興人製)
ポリビニルホルマール 7部
この樹脂組成物を用いて、前記した方法に従い、樹脂硬化物、及びプリプレグを作製した。ここで、プリプレグは、強化繊維として引張弾性率が294GPaの炭素繊維を用い、マトリックス樹脂含有率を24%とした。このプリプレグから得られたCFRPの面内剪断強度は150MPaで、式(1)を満足した。
【0146】
また、ストレート材及びバイアス材としてこのプリプレグを用いて得られた円筒状CFRPの圧壊強度と衝撃強度は良好であった。
(実施例3)
下記原料をニーダーで混合して樹脂組成物を得た。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 40部
(“エピコート”828、油化シェルエポキシ(株)製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 50部
(“エピコート”1001、油化シェルエポキシ(株)製)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂 10部
(“エピコート”154、油化シェルエポキシ(株)製)
ジシアンジアミド 5部
(DICY7、油化シェルエポキシ(株)製)
3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素 3部
(DCMU99、保土ヶ谷化学工業(株)製)
N−イソプロピルアクリルアミド 5部
((株)興人製)
ポリビニルホルマール 7部
(“ビニレック”K、チッソ(株)製)
この樹脂組成物を用いて、前記した方法に従い、樹脂硬化物、及びプリプレグを作製した。ここで、プリプレグは、強化繊維として引張弾性率が294GPaの炭素繊維を用い、マトリックス樹脂含有率を24%とした。このプリプレグから得られたCFRPの面内剪断強度は120MPaで、式(1)を満足した。
【0147】
また、ストレート材及びバイアス材としてこのプリプレグを用いて得られた円筒状CFRPの圧壊強度と衝撃強度は良好であった。
【0148】
(比較例1)下記原料をニーダーで混合して樹脂組成物を得た。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 10部 (“エピコート”828、油化シェルエポキシ(株)製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 40部 (“エピコート”1001、油化シェルエポキシ(株)製)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂 10部 (“エピコート”154、油化シェルエポキシ(株)製)
レゾルシンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂 20部 (“デナコール”EX201、ナガセ化成工業(株)製)
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂 10部 (“エピクロン”152、大日本インキ化学工業(株)製)
ジシアンジアミド 5部 (DICY7、油化シェルエポキシ(株)製)
3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素 3部 (DCMU99、保土ヶ谷化学工業(株)製)
ポリビニルホルマール 7部 (“ビニレック”K、チッソ(株)製)
この樹脂組成物を用いて、前記した方法に従い、樹脂硬化物、及びプリプレグを作製した。ここで、プリプレグは、強化繊維として引張弾性率が294GPaの炭素繊維を用い、マトリックス樹脂含有率を24%とした。このプリプレグから得られたCFRPの面内剪断強度は102MPaで、式(1)を満足しなかった。
【0149】
また、ストレート材及びバイアス材としてこのプリプレグを用いて得られた円筒状CFRPの圧壊強度と衝撃強度は不良であった。
(比較例2)
下記原料をニーダーで混合して樹脂組成物を得た。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 30部
(“エピコート”828、油化シェルエポキシ(株)製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 40部
(“エピコート”1001、油化シェルエポキシ(株)製)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂 30部
(“エピコート”154、油化シェルエポキシ(株)製)
ジシアンジアミド 5部
(DICY7、油化シェルエポキシ(株)製)
3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素 3部
(DCMU99、保土ヶ谷化学工業(株)製)
ポリビニルホルマール 7部
(“ビニレック”K、チッソ(株)製)
この樹脂組成物を用いて、前記した方法に従い、樹脂硬化物、及びプリプレグを作製した。ここで、プリプレグは、強化繊維として引張弾性率が294GPaの炭素繊維を用い、マトリックス樹脂含有率を24%とした。このプリプレグから得られたCFRPの面内剪断強度は95MPaで、式(1)を満足しなかった。
【0150】
また、ストレート材及びバイアス材としてこのプリプレグを用いて得られた円筒状CFRPの圧壊強度と衝撃強度は不良であった。
(実施例4)実施例1と同一の樹脂組成物と、引張弾性率377GPaの炭素繊維を用い、前記した方法に従い、マトリックス樹脂含有率を24重量%として、プリプレグを作製した。プリプレグから得られた、CFRPの面内剪断強度は92MPaで、式(1)を満足した。
【0151】
また、ストレート材として実施例1のプリプレグ、バイアス材としてこのプリプレグをそれぞれ用いて得られた円筒状CFRPの圧壊強度と衝撃強度は良好であった。
(比較例3)比較例2と同一の樹脂組成物と、引張弾性率377GPaの炭素繊維を用い,前記した方法に従い、マトリックス樹脂含有率を24重量%として、プリプレグを作製した。プリプレグから得られた、CFRPの面内剪断強度は72MPaで、式(1)を満足しなかった。また、ストレート材として比較例2のプリプレグ、バイアス材としてこのプリプレグをそれぞれ用いて得られた円筒状CFRPの圧壊強度と衝撃強度は不良であった。
(実施例5)実施例1と同一の樹脂組成物と、引張弾性率475GPaの炭素繊維を用い、前記した方法に従い、マトリックス樹脂含有率を24重量%として、プリプレグを作製した。プリプレグから得られた、CFRPの面内剪断強度は90MPaで、式(1)を満足した。また、ストレート材として実施例1のプリプレグ、バイアス材としてこのプリプレグをそれぞれ用いて得られた円筒状CFRPの圧壊強度と衝撃強度は良好であった。
(比較例4)比較例2と同一の樹脂組成物と、引張弾性率475GPaの炭素繊維を用い,前記した方法に従い、マトリックス樹脂含有率を24重量%として、プリプレグを作製した。プリプレグから得られた、CFRPの面内剪断強度は58MPaで、式(1)を満足しなかった。また、ストレート材として比較例2のプリプレグ、バイアス材としてこのプリプレグをそれぞれ用いて得られた円筒状CFRPの圧壊強度と衝撃強度は不良であった。
(実施例6)実施例1と同一の樹脂組成物と、引張弾性率539GPaの炭素繊維を用い、前記した方法に従い、マトリックス樹脂含有率を33重量%として、プリプレグを作製した。プリプレグから得られた、CFRPの面内剪断強度は63MPaで、式(1)を満足した。また、ストレート材として実施例1のプリプレグ、バイアス材としてこのプリプレグをそれぞれ用いて得られた円筒状CFRPの圧壊強度と衝撃強度は良好であった。
(比較例5)比較例2と同一の樹脂組成物と、引張弾性率539GPaの炭素繊維を用い,前記した方法に従い、マトリックス樹脂含有率を33重量%として、プリプレグを作製した。プリプレグから得られた、CFRPの面内剪断強度は47MPaで、式(1)を満足しなかった。また、ストレート材として比較例2のプリプレグ、バイアス材としてこのプリプレグをそれぞれ用いて得られた円筒状CFRPの圧壊強度と衝撃強度は不良であった。
(実施例7)実施例1と同一の樹脂組成物と、引張弾性率230GPa、表面比酸素濃度O/Cが0.16、表面カルボキシル基濃度COOH/Cが2.5%である炭素繊維を用い、前記した方法に従い、マトリックス樹脂含有率を24重量%として、プリプレグを作製した。プリプレグから得られた、CFRPの面内剪断強度は153MPaで、式(1)を満足した。また、ストレート材及びバイアス材としてこのプリプレグを用いて得られた円筒状CFRPの圧壊強度と衝撃強度は良好であった。
(比較例6)実施例1と同一の樹脂組成物と、引張弾性率230GPa、表面比酸素濃度O/Cが0.01、表面カルボキシル基濃度COOH/Cが0.05%である炭素繊維を用い、前記した方法に従い、マトリックス樹脂含有率を24重量%として、プリプレグを作製した。プリプレグから得られた、CFRPの面内剪断強度は111MPaで、式(1)を満足しなかった。また、ストレート材及びバイアス材としてこのプリプレグを用いて得られた円筒状CFRPの圧壊強度と衝撃強度は不良であった。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
【発明の効果】
本発明によれば、強化繊維とマトリックス樹脂との接着性、及びマトリックス樹脂の曲げ弾性率と引張伸度に優れた樹脂組成物が得られる。この樹脂組成物と炭素繊維とから良質なプリプレグを作製することができ、さらにこのプリプレグを積層して成形することにより、強度特性に優れた繊維強化複合材料を作製することができる。
【0156】
本発明のプリプレグは高い面内剪断強度を有するため、これにより、優れた圧壊強度や衝撃強度を有し、軽量化も達成されたCFRP管状体が得られるようになる。
【0157】
本発明によるプリプレグ及びCFRPは、ゴルフクラブ用シャフト、釣り竿、自転車用フレーム、バトミントンラケット用シャフト、自転車用フレーム・ハンドル、車椅子用フレーム、ホッケー用スティックなどに好適に用いることができる。
Claims (7)
- 次の(I)および/または(II)の条件を満たす炭素繊維に、次の構成要素(A)〜(C)を含むエポキシ樹脂組成物が含浸して構成されるプリプレグであり、
(I) X線光電子分光法により測定される表面比酸素濃度O/Cが0.02〜0.3である
(II)化学修飾X線光電子分光法により測定される表面カルボキシル基濃度 COOH /Cが0.2〜3.0%である
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)アクリルアミド化合物
該プリプレグのマトリックス樹脂含有率Wr(重量%)と、該炭素繊維の0度引張弾性率E(GPa)及びプリプレグを加熱硬化して得られる炭素繊維強化複合材料の面内剪断強度S(MPa)が次式(1)と(2)を満足することを特徴とするプリプレグ。
S≧−205×LOG(E)+610 ・・・(1)
15≦Wr≦40 ・・・(2) - 前記構成要素(C)の配合量が前記構成要素(A)100重量部に対して0.5〜15重量部である請求項1記載のプリプレグ。
- 前記エポキシ樹脂組成物を130℃で2時間硬化して得た硬化物の引張伸度が8%以上である請求項1または2に記載のプリプレグ。
- 前記エポキシ樹脂組成物を130℃で2時間硬化して得られた硬化物の3点曲げの撓み量が10〜25mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプリプレグ。
- 前記エポキシ樹脂組成物を130℃で2時間硬化して得られた硬化物の測定周波数0.5Hzでの動的粘弾性におけるゴム状態の弾性率G'(MPa)が次式(3)を満足する請求項1〜4のいずれかに記載のプリプレグ。
1≦G'≦8 ・・・(3) - 前記エポキシ樹脂組成物を130℃で2時間硬化して得た硬化物の曲げ弾性率が3.1GPa以上である請求項1〜5のいずれかに記載のプリプレグ。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のプリプレグが、硬化されてなることを特徴とする炭素繊維強化複合材料。
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