JP4142377B2 - トラクタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、キャビン内とボンネット内のエンジンルームとを仕切り、熱風や排気ガス等がキャビン内へ浸入することを防止する遮蔽板(エアカットプレート)の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ボンネット内のエンジンルームからの熱風や排気ガスなどがキャビン内に浸入することを防止するべく、エンジンルームとキャビン内とを仕切る技術として、特開2001−20754号公報に示される技術などが知られている。これは、エンジンルームに備えたエンジンの後方に遮蔽板(エアカットプレート)を備えたものであり、該遮蔽板の下部をクラッチハウジングの外形に沿って凹形状に形成してダッシュボードの前方に立設したものである。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−20754号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の技術においては、遮蔽板は平板状のものであり、十分な剛性を有するものではなかった。そこで本発明は、遮蔽板の剛性を十分に確保するとともに、この遮蔽板により充分な容量の燃料タンクを配設することのできるスペースを確保することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
請求項1においては、ダッシュボード(12)と座席(7)により構成する運転部を、防振部材(27)を介して防振支持したトラクタにおいて、機体前部に配置されるボンネット(4)内のエンジンルームと、該ボンネット(4)の後部の前記運転部との間に、遮蔽板であるエアカットプレート(32)を配設し、該エアカットプレート(32)は、凹凸を有するシェル形状に構成した前エアカットプレート(33)と後エアカットプレート(34)の2枚を、前後合わせて一体的に固定して構成し、該前エアカットプレート(33)の上部後面にダッシュボード(12)を固設し、該前エアカットプレート(33)とダッシュボード(12)の間に構成された上部空間に燃料タンク(25)を配設し、該燃料タンク(25)の前部分はボンネット(4)内部へ張り出して、該ボンネット(4)の内部に配置したものである。
【0007】
請求項2においては、請求項1記載のトラクタにおいて、前記前エアカットプレート(33)の下部後面に、該後エアカットプレート(34)を固定し、該後エアカットプレート(34)は、その中央部(34a)が後方へ突出し、且つ上方へ膨出する如く凸形状に形成し、該中央部の左右両側に配置される外周部(34b)は、中央部(34a)の前端位置で左右方向の垂直平面として、両側方へ張り出すように構成し、該左右両側の外周部(34b)の前面に、前記前エアカットプレート(33)の足部(33b)の後面をそれぞれ溶接固定したものである。
【0008】
請求項3においては、請求項2記載のトラクタにおいて、前記前エアカットプレート(33)または後エアカットプレート(34)の何れか一方に、平面断面視凸状の折り曲げ部を形成して、該前後のエアカットプレート(33・34)の間に空間(33c)を形成したものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明に係るトラクタの全体側面図、図2はボンネット後部の側面図、図3はエアカットプレートの斜視図、図4は同じく正面図、図5は同じく側面図、図6は図5におけるA−A矢視断面図、図7は図5における下部拡大図、図8はエアカットプレートの平面図、図9は回動軸の固定手段を示した図、図10は回動軸の回り止めの手段を示した図である。
【0010】
まず、トラクタ1の全体構成について、図1を用いて説明する。エンジンフレーム21にフロントアクスルケースを介して前輪2・2が支承され、該エンジンフレーム21の後部にクラッチハウジングを介してミッションケース11が配置され、該ミッションケース11の両側にリアアクスルケースを介して後輪3・3が支承されている。該ミッションケース11の後部にはトップリンク、ロワーリンク等からなる作業機装着装置を介して作業機を装着できるようにしている。また、該ミッションケース11の前下部には前輪駆動出力軸が前方に突出されて、ユニバーサルジョイント、伝動軸等を介して前輪2・2を駆動できるようにしている。
【0011】
また、前記エンジンフレーム21には、エンジン5が載置され、該エンジン5はボンネット4によって覆われて、該ボンネット4内をエンジンルームとしている。該ボンネット4の後部には後述する遮蔽板(エアカットプレート)32を介してダッシュボード12が連設されており、該ダッシュボード12の上部内には燃料タンク25が配設されていて、前記燃料タンク25の前部分はボンネット4内部に張り出している。ダッシュボード12上には操作パネルやステアリングハンドル6が配置され、その後方に座席7が配置され、これらダッシュボード12や座席7等の運転部はキャビン8によって覆われる構成としている。
【0012】
次に、本発明に係るボンネット後部の構造について、図2乃至図8より説明する。前記エアカットプレート32は、断熱と防音を兼用した遮蔽部材であり、エンジンルームからの熱風や排気ガスなどがキャビン8内(運転部側)に浸入することを防止するべく、ボンネット4後部に上下左右方向に配設されて、ボンネット4内部とキャビン8室内とを仕切っている。該エアカットプレート32は前エアカットプレート(前遮蔽板)33と後エアカットプレート(後遮蔽板)34から構成されており、該前エアカットプレート33の上部後面にダッシュボード12が連設され、該ダッシュボード12とエアカットプレート32の間の上部空間に燃料タンク25が配設される。
【0013】
そして、図4に示すように、前エアカットプレート33は正面視「門」字型に形成し、また、図5に示すように、その上部を前方へ膨出させ、側面視略逆L字型となるようにして構成している。該前エアカットプレート32上部の膨出部は、前記燃料タンク25の前部形状に沿わせた形状とし、前エアカットプレート33の上部をボンネット4内側へ凹む凹部33aを形成し、この凹部33a内に燃料タンク25の前部が挿入されるようにしている。
【0014】
図3及び図5に示すように、前記前エアカットプレート33の下部後面に後エアカットプレート34が固定されている。該後エアカットプレート34は、その中央部34aが後方に膨出する如く凸形状に形成され、中央部34aの左右両側に配置される外周部34bは中央部34aの前端位置で左右方向の垂直平面として、両側方へ張り出すように構成されており、該左右両側の外周部34bの前面に、前エアカットプレートの足部33b・33bの後面がそれぞれ溶接固定されている。なお、前エアカットプレート33と後エアカットプレート34とはリベット等の締結具で固設してもよい。
【0015】
また、前記前エアカットプレート33または後エアカットプレート34の何れか一方を平面断面視凸状の折り曲げ部を形成して、該前後のエアカットプレート33・34の間に空間を形成している。つまり、該前エアカットプレートの足部33bは、図6に示すように、その中央部が平面断面視でボンネット4内側に(前方へ)突出して凸形状に形成されており、該凸部と後エアカットプレートの外周部34bにより,上下方向に連通する空間33cが設けられている。外周部34bと足部33bとの間に設けられた空間33cは、エアカットプレート32下部において、パイプとしての機能を果たすため、前エアカットプレート33と後エアカットプレート34の接合による剛性をアップして、パイプを設ける必要がなくなり、部品点数及び溶接部を削減でき、コストの低減化を図ることができる。
【0016】
以上の如く、エアカットプレート32は、凹凸を有する形状にそれぞれ形成された前エアカットプレート33及び後エアカットプレート34からシェル構造に形成されたので、エアカットプレート32の剛性の向上を図ることができるとともに、燃料タンク25の設置スペースを確保することができる。また、燃料タンクを支持したり、ダッシュボードに取り付けるためのステー等の部品点数の削減を図ることができる。
【0017】
また、図7及び図8に示すように、前記エアカットプレート32の下端部は、フロントマウントプレート22とステー23を介してロアフレーム24に溶接固定される。そして、これらの部材上にフロアプレート26が戴置され、該フロアプレート26とそれぞれの部材が溶接固定される。なお、フロアプレート26は、エアカットプレート32と、フロントマウントプレート22と、ステー23とにリベット等の締結具で固定してもよい。
【0018】
前述のように、ロアフレーム24は前部上にエアカットプレート32とフロントマウントプレート22とフロアプレート26とステー23を配置して互いに溶接固定することで、エアカットプレート32のキャビン側への倒れに対する剛性の向上が図られている。つまり、前記エアカットプレート32と、フロントマウントプレート22と、ステー23と、ロアフレーム24とをそれぞれ溶接固定した後、フロアプレート26を戴置して各部材と溶接固定する構成としていることで、水平方向に配置されるフロアプレート26前端の左右辺が左右面の外周部34bと溶接固定され、フロアプレート26前端の前後辺が中央部34aの前後面と溶接固定されて、互いに強固に連結固定されて剛性が向上する。
【0019】
さらに、図7に示すように、フロントマウントプレート22はフロアプレート26に対して前方へ幅L1だけ突出して溶接固定されている。そのため、フロントマウントプレート22とフロアプレート26の溶接を上方から行うことが可能となり、溶接作業が容易となる。また、フロントガラス28の下端部がフロントマウントプレート22の突出部により保護される。
【0020】
また、フロントマウントプレート22は、防振ゴム等からなる防振部材27を介して支持ブラケット29上に支持され、該支持ブラケット29はクラッチハウジングまたはエンジンのフライホイルケースに固設される。また、図2及び図3に示すように、前記左右のロアフレーム24はその前後中途部の下部に防振部材27を介して支持ブラケット42に支持され、該支持ブラケット42はミッションケース11に固設されている。そして、前記フロアプレート26の外端部にキャビン8の前支柱が立設され、ロアフレーム24後部上にキャビン8の後支柱が立設され、本機側に防振部材27・27・27・27を介してキャビン8(運転部)が防振支持される構成としている。よって、機体の振動がキャビン8に伝達しにくく、また、キャビン8内の騒音を低減するようになる。なお、前記ロアフレーム24は側面視逆「へ」字状に構成して前後方向に延出して、左右平行に配置し、前後中途部の折れ曲がり部には前記防振部材27を取り付けるための支持体43によって補強している。そして、前記防振部材27の略直上方の、前記フロントマウントプレート22と、エアカットプレート32と、ロアフレーム24とにより溶接固定されて形成された箱状のスペース30(図8)をフロント側のマウント位置としていることにより、前記箱状のスペース30は剛性が高く維持された部位となり、マウント材に対して防振構造が有利に働くのである。
【0021】
また、図5に示すように、前記後エアカットプレート34の上部後面にはペダルシャフトステー35が後方へ突出して固設され、該ペダルシャフトステー35に左ブレーキペダル36、右ブレーキペダル37、クラッチペダル38の回動軸39が、パイプを介して回動自在に枢支されている。該左ブレーキペダル36、右ブレーキペダル37には、それぞれブレーキ作動アーム45・45の一端が、又クラッチペダル38にはクラッチ作動アームの一端が固着されている。
【0022】
前記クラッチ作動アーム他端にはクラッチリンク46が回動自在に係止され、該クラッチリンク46よりアーム等を介してクラッチハウジング内のメインクラッチと連結される。また、左右のブレーキ作動アーム45・45の他端にはそれぞれ上ブレーキリンク47・47が回動自在に係止されている。ブレーキペダルのリンク機構は左右略対称に配置されているので、左側について説明すると、該上ブレーキリンク47は、ブレーキアーム48を介して下ブレーキリンク49に連結され、該下ブレーキリンク49の後端はリアアクスルケース内に配置したブレーキ装置と連結して制動可能としている。
【0023】
前記ブレーキアーム48は前記ステー23に枢支された回動軸31に固着され、該回動軸31を回動支点として回動するように構成されたものであり、一端に戻しバネ45が設けられ、他端に設けられたアーム48a・48bにそれぞれ上ブレーキリンク47と下ブレーキリンク49が回動自在に係止されている。そして、上ブレーキリンク47と下ブレーキリンク49を連結するブレーキアーム48の回動支点を、前記防振部材27により防振支持されたキャビン側に配置することで、ブレーキペダル操作時に、上下方向へ力がかからないようにして、エンジン等の振動が防振部材27により抑えられることで、ブレーキペダル36・37を踏んで操作するときに悪影響が及び難い構造としている。
【0024】
このような構成において、前述の如くエアカットプレート32の取付剛性の向上を図るステー23は、ブレーキペダル36・37のリンク機構の構成部材であるブレーキアーム48の回動支点となる回動軸31を支持する支持ステーとしての役割を兼ねる構成としているので、部品点数を削減できるとともに、十分な剛性も確保することができる。また、本実施例では吊りペダル式に構成しているが、ブレーキリンク機構を用いずにブレーキペダルを直接回動軸31に枢支し、ブレーキペダルの回動支点をステー23で支持する構成とすることも可能である。
【0025】
なお、前記回動軸31の固定手段としては、図9(a)に示すように、回動軸31の一端にステー51を固着し、該ステー51をステー23にボルトで固定することによって回動軸31を固定する手段や、図9(b)に示すように、スプリングピン52をステー23と回動軸31に挿通することによって回動軸31を固定する手段などがある。また、回動軸31の回り止めの手段として、図10に示すように、回動軸31の一端部をDカット形状に形成し、該端部にC形状の止め輪53を嵌装して、回動軸31がステー23から抜脱しないように構成している。
【0026】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0027】
請求項1に記載の如く、ダッシュボード(12)と座席(7)により構成する運転部を、防振部材(27)を介して防振支持したトラクタにおいて、機体前部に配置されるボンネット(4)内のエンジンルームと、該ボンネット(4)の後部の前記運転部との間に、遮蔽板であるエアカットプレート(32)を配設し、該エアカットプレート(32)は、凹凸を有するシェル形状に構成した前エアカットプレート(33)と後エアカットプレート(34)の2枚を、前後合わせて一体的に固定して構成し、該前エアカットプレート(33)の上部後面にダッシュボード(12)を固設し、該前エアカットプレート(33)とダッシュボード(12)の間に構成された上部空間に燃料タンク(25)を配設し、該燃料タンク(25)の前部分はボンネット(4)内部へ張り出して、該ボンネット(4)の内部に配置したので、遮蔽板(エアカットプレート)の剛性の向上を図ることができるとともに、シェル構造部分に、燃料タンクやクラッチハウジング等の立体物の設置スペースを確保することができる。また、部品点数の削減を図ることができる。
【0028】
請求項2に記載の如く、前記前エアカットプレート(33)の下部後面に、該後エアカットプレート(34)を固定し、該後エアカットプレート(34)は、その中央部(34a)が後方へ突出し、且つ上方へ膨出する如く凸形状に形成し、該中央部の左右両側に配置される外周部(34b)は、中央部(34a)の前端位置で左右方向の垂直平面として、両側方へ張り出すように構成し、該左右両側の外周部(34b)の前面に、前記前エアカットプレート(33)の足部(33b)の後面をそれぞれ溶接固定したので、エアカットプレートのキャビン側への倒れに対する剛性が向上する。さらに、各部材間の固定形状が凸又は凹形状となり、剛性の向上を図ることができる。
【0029】
請求項3に記載の如く、前記前エアカットプレート(33)または後エアカットプレート(34)の何れか一方に、平面断面視凸状の折り曲げ部を形成して、該前後のエアカットプレート(33・34)の間に空間(33c)を形成したので、パイプ状に構成できて剛性をアップすることができ、部品点数及び溶接部を削減でき、コストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るトラクタの全体側面図。
【図2】 ボンネット後部の側面図。
【図3】 エアカットプレートの斜視図。
【図4】 同じく正面図。
【図5】 同じく側面図。
【図6】 図5におけるA−A矢視断面図。
【図7】 図5における下部拡大図。
【図8】 エアカットプレートの平面図。
【図9】 回動軸の固定手段を示した図。(a)はボルトを用いて回動軸を固定するように構成した図。(b)はスプリングピンを用いて回動軸を固定するように構成した図。
【図10】 回動軸の回り止めの手段を示した図。
【符号の説明】
4 ボンネット
22 フロントマウントプレート
23 ステー
24 ロアフレーム
26 フロアプレート
32 エアカットプレート

Claims (3)

  1. ダッシュボード(12)と座席(7)により構成する運転部を、防振部材(27)を介して防振支持したトラクタにおいて、機体前部に配置されるボンネット(4)内のエンジンルームと、該ボンネット(4)の後部の前記運転部との間に、遮蔽板であるエアカットプレート(32)を配設し、該エアカットプレート(32)は、凹凸を有するシェル形状に構成した前エアカットプレート(33)と後エアカットプレート(34)の2枚を、前後合わせて一体的に固定して構成し、該前エアカットプレート(33)の上部後面にダッシュボード(12)を固設し、該前エアカットプレート(33)とダッシュボード(12)の間に構成された上部空間に燃料タンク(25)を配設し、該燃料タンク(25)の前部分はボンネット(4)内部へ張り出して、該ボンネット(4)の内部に配置したことを特徴とするトラクタ。
  2. 請求項1記載のトラクタにおいて、前記前エアカットプレート(33)の下部後面に、該後エアカットプレート(34)を固定し、該後エアカットプレート(34)は、その中央部(34a)が後方へ突出し、且つ上方へ膨出する如く凸形状に形成し、該中央部の左右両側に配置される外周部(34b)は、中央部(34a)の前端位置で左右方向の垂直平面として、両側方へ張り出すように構成し、該左右両側の外周部(34b)の前面に、前記前エアカットプレート(33)の足部(33b)の後面をそれぞれ溶接固定したことを特徴とするトラクタ。
  3. 請求項2記載のトラクタにおいて、前記前エアカットプレート(33)または後エアカットプレート(34)の何れか一方に、平面断面視凸状の折り曲げ部を形成して、該前後のエアカットプレート(33・34)の間に空間(33c)を形成したことを特徴とするトラクタ。
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