以下において、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1の光ピックアップの構成を示す概略図である。図1を参照して、光ピックアップ50は、集積化レーザユニット13、コリメートレンズ8、対物レンズ(集光部)9を備える。
図2は、図1の集積化レーザユニット13の詳細を示す図である。図2および図1を参照して、集積化レーザユニット13は、650nm帯の波長の光を発する半導体レーザ1と、半導体レーザ1と近接配置され、780nm帯の波長の光を発する半導体レーザ2と、回折格子3と、光検出器6と、基板7と、パッケージ14とを備える。
基板7は、ホログラム4,5を含む。基板7の上面、すなわち光ディスク10に対向する面にはホログラム4が形成される。基板7の下面、すなわち光検出器6に対向する面にはホログラム5と回折格子3とが形成される。
半導体レーザ1,2は、光ディスク10に対してレーザ光を照射する。光ビーム11,12は半導体レーザ1,2からそれぞれ発せられた光ビームを示す。
コリメートレンズ8は集積化レーザユニット13から照射された光ビーム11,12の各々を平行光に変換する。また、コリメートレンズ8は光ディスク10によって反射されて対物レンズ9を通過した光を集光する。
対物レンズ9はコリメートレンズ8により平行光に変換された光ビーム11,12を光ディスク10上に集光させる。光ディスク10によって反射された光ビーム11,12の反射光(第1および第2の反射光)は対物レンズ9およびコリメートレンズ8を通過し、集積化レーザユニット13に再び入射する。
なお、図1において示されるX軸方向およびY軸方向はそれぞれ光ディスク10のラジアル方向およびトラック方向に相当する。たとえば光ディスク10がDVDの場合、光ディスク10のラジアル方向(X軸方向)とはDVDの半径方向を示し、光ディスク10のトラック方向(Y軸方向)とはDVDのトラックに平行な方向(ラジアル方向と直交する方向)を示す。フォーカス方向(Z軸方向)は、対物レンズ9に導かれた光ビーム11の光軸に対して平行な方向である。言い換えれば、Z軸方向とは情報が記録されている光ディスク10の記録面に対して垂直な方向である。なお、図2において光軸Jは光ビーム11の光軸を示す。
ホログラム4は光ディスク10で反射されて対物レンズ9、コリメートレンズ8を通過した光ビーム11,12の各々を分割し、分割後の光ビームを光検出器6へと導く。ホログラム4は光ディスク10のラジアル方向に沿った線分で2つの領域に分割される。光ディスク10によって反射され、対物レンズ9を通過した光ビームはホログラム4の各領域において分割され、光検出器6の方向へと導かれる。
ホログラム5はホログラム4から導かれた光ビーム11,12を受け、光ビーム11の回折光のうちの透過光(0次光)を光検出器6に導くとともに、光ビーム12の回折光のうちの+1次光(または−1次光)を光検出器6に導く。つまり、光ビーム11はホログラム4によって光検出器6に導かれ、光ビーム12はホログラム4とホログラム5との両方により光検出器6に導かれる。
なお、ホログラム4、5に設けられるホログラムパターン(分割パターン)の詳細については後述する。
光検出器6は複数の受光素子を有する。光検出器6はホログラム4,5によって分離された複数の光ビームのいずれかを受光して電気信号を生成する。光検出器6は受光した光ビームの光強度を検出する。光検出器6の詳細な構成については後述する。
パッケージ14には、半導体レーザ1,2および光検出器6が収納される。パッケージ14において、半導体レーザ1,2から光ビーム11,12がそれぞれ出射する面に基板7が取付けられる。
光ディスク(光記録媒体)10は情報を記録するための記録層を有する。光ビーム11(第1の波長の光)により再生可能な光ディスク10の例としてはDVDが挙げられる。また、光ビーム12(第2の波長の光)により再生可能な光ディスク10の例としてはCDが挙げられる。
次に、半導体レーザ1,2からそれぞれ出射された光ビーム11,12について説明する。光ビーム11は回折格子3によって3つの光ビームに分割され、さらにホログラム4によって回折される。ホログラム4で回折した光のうちの0次光(透過光)はコリメートレンズ8および対物レンズ9を介して光ディスク10上に集光され、光ディスク10の記録層で反射される。光ディスク10で反射された光ビーム11は対物レンズ9、およびコリメートレンズ8を介してホログラム4に導かれる。ホログラム4に照射された光ビーム11は複数の光束に分割され、ホログラム5へと導かれる。
光ビーム11と光ビーム12とはともにホログラム5により回折される。光ビーム11に対してはホログラム5による回折光のうちの0次光(透過光)が光検出器6へと導かれ、光ビーム12に対してはホログラム5による回折光のうち、+1次光(または−1次光)が光検出器6へと導かれる。なお、半導体レーザ1,2の各々が光を出射する位置が互いに離れているため、ホログラム4上において光ビーム11,12の各々が形成する光スポットの中心位置は離れている。半導体レーザ1、2が光ディスク10のラジアル方向に沿って設置されている場合には、2つのスポットの各々の中心位置はラジアル方向に沿ってずれる。
フォーカスオフセットの検出は光検出器6により行なわれる。光ビーム11に対してはフォーカスオフセットを低減させるために基板7を光軸Jに対して垂直な面内に回転させて光ビーム11を移動させる。ホログラム5は光ビーム12に収差を付加して、この移動方向に沿って光ビーム12を広げることにより、光検出器6により検出されるフォーカスオフセットを低減させる。光ビーム12の場合には、基板7が回転してもフォーカスオフセットの変化が小さくなる。
図3は、図2に示す集積化レーザユニット13の斜視図である。図13を参照して、集積化レーザユニット13において、半導体レーザ1,2と、光検出器6とがパッケージ14に収納される。また、基板7はパッケージ14に取付けられる。基板7の上側の面にはホログラム4が設けられる。基板7の下側の面には回折格子3およびホログラム5が設けられる。なお、端子15は各種の電気信号を入出力するためのリード端子である。
図4は、図1の光検出器6に設けられる受光素子の配置を示す図である。図4を参照して、光検出器6は2分割検出器6A,6Bを含む。2分割検出器6Aは分割線L1により分割された受光素子6A1,6A2を含む。2分割検出器6Bは分割線L2により分割された受光素子6B1,6B2を含む。2分割検出器6A,6Bは光ディスク10のラジアル方向(X軸方向)に沿って配置される。すなわち、2分割検出器6A,6Bのそれぞれの分割線L1,L2は、ほぼX軸方向に沿った方向に設けられる。
光検出器6は、さらに3分割検出器6C,6Dを含む。3分割検出器6C,6Dは回折格子3によって3つに分割された光ビームのうち、トラッキング制御に用いられる±1次光を検出する。
光ピックアップ50は2分割検出器6Aに集光する光ビームを用い、シングルナイフエッジ法によってフォーカスエラー信号を生成する。受光素子6A1,6A2,6B1,6B2の出力信号をそれぞれI6A1,I6A2,I6B1,I6B2とする。シングルナイフエッジ法によるフォーカスエラー信号FESは以下の式(1)で表わされる。
FES=(I6A1−I6A2) …(1)
また、トラッキングエラー信号TESは2分割検出器6Bに集光される光ビーム、または、2分割検出器6Bおよび3分割検出器6C,6Dの各々に集光される光ビームを用いて生成される。3分割検出器6Cは分割線L11,L12により受光素子6C1〜6C3に分割される。3分割検出器6Dは分割線L21,L22により受光素子6D1〜6D3に分割される。なお、トラッキングエラー信号の生成方法については後述する。
次に、ホログラム4、5について説明する。図5は、図1のホログラム4を示す図である。図5を参照して、ホログラム4は線分Mで区切られた2つの分割部4A,4Bを備える。分割部4A,4Bの各々は光ディスク10から反射された光ビームが通過する領域であり、ホログラムパターンが形成されている。線分Mは光ビームの光軸を通り、かつ、光ディスク10のラジアル方向(X軸方向)に平行な線分である。
分割部4A,4Bの各々は、光ディスク10からの反射戻り光をホログラム5の方向に導く。分割部4Aには入射する光ビーム11,12に非点収差を付加するホログラムパターンが形成される。また、線分Mは光ビームの光軸に対して約45°の角度に設定されている。分割部4Aを通過した半円形の光ビームは線分Mに対して45°傾いた直線を軸として反転する。よって分割部4Aを通過する半円形状の光ビーム11は2分割検出器6A上において分割部4A上の光スポットに対して90°回転した半円形のスポットを形成する。
分割部4A,4Bに形成されている溝のパターン(ホログラムパターン)は光ビーム11に対して最適化されている。具体的には、分割部4Bを通過した光ビーム11の回折光のうちの0次光が2分割検出器6A上の位置S1で焦点を結ぶよう分割部4Bの溝のパターン(格子間隔や格子の曲率など)が設定される。また、分割部4Aを通過した光ビーム11の回折光のうちの0次光の最小錯乱円の中心位置が2分割検出器6A上の位置S2に等しくなるように分割部4Aの溝のパターンが設定される。分割部4Bを通過した光ビーム11の回折光のうちの0次光は光ディスク10における光ビーム11のフォーカス状態を検出するために用いられる。また、分割部4Aを通過した光ビーム11の回折光のうちの0次光は、光ディスク10における光ビーム11のトラッキング制御に用いられる。
位置S1,S2は半導体レーザ1,2からそれぞれ発せられる光ビーム11,12の波長がともに設計通りであり、かつ、光ピックアップ50を構成する各部品の公差や、組立公差が0という理想的な状態にあるときに、光ビーム11,12が集光する点である。通常、位置S1,S2はホログラム4の線分を伸ばした直線に重なるよう設定される。位置S1と位置S2との距離やホログラム4と位置S1(または位置S2)との距離は適切に定められる。
位置S1と位置S2とは図4に示す位置関係と逆であってもよい。実際の2分割検出器6A,6Bの形状や分割線L1,L2は、公差を考慮した場合に位置S1,S2からずれるビームスポットの位置に応じて決定される。
なお、このように溝のパターンを設定した場合、分割部4B,4Aのそれぞれを通過した光ビーム12は、ホログラム5が設けられていなければ位置T1,T2に光スポットを形成する。
図6は、図1のホログラム5の構成を示す図である。図6を参照して、ホログラム5は線分Lにより分割される2つの領域5A,5Bを含む。ホログラム5は光ビーム12に対して最適化されている。具体的には、ホログラム4の分割部4Aを通過した光ビーム12が領域5Aを通過するように領域5Aの大きさが設定される。また、ホログラム4の分割部4Bを通過した光ビーム12が領域5Bを通過するように領域5Bの大きさが設定される。
領域5A,5Bの各々における溝パターン(ホログラムパターン)はホログラム5によって回折された光ビーム12のうちの+1次光の光スポットの位置が光検出器6上で最適な位置になるよう定められる。領域5Aを通過した光ビーム12の光スポットの位置は図4の位置S2であり、領域5Bを通過した光ビーム12の光スポットの位置は図4の位置S1となる。つまり、領域5Aを通過した光ビーム12が、光ディスク10における光ビーム12のフォーカス状態を検出するために用いられる。なお、図4において光スポットSBは領域5Aを通過した光ビーム12により形成される光スポットを示す。光スポットSBは光ディスク10における光ビーム12のトラッキング制御に用いられる。
さらに、領域5Bのホログラムパターンは光ビームを光検出器6上の位置S1または位置S2に集光するとともに、光ビームに球面収差を付加する。領域5Bをほぼ2分割する線分Nを境界として2分割された領域5B1,5B2には、互いに符号が異なる球面収差を光ビームに付加するためのホログラムパターンが形成される。線分Nは集積化レーザユニット13が理想的な状態で組立てられた状態、すなわち組立時のずれがない状態において、ホログラム5上に形成される光ビーム12のスポットの原点を通る線分である。領域5B1,5B2の各々を通過する光ビームは互いに符号が異なる球面収差を有しながら2分割検出器6Aに集光される。
次にこの収差付加の効果について、シングルナイフエッジ法によるホログラムの調整を例に説明する。
図7は、光ビームが集光されている状態における2分割検出器6A上での光スポットを示す図である。図8は、2分割検出器6A上での光スポットの形状の変化を示す図である。
図7および図8を参照して、ホログラム4,5の調整は第1の波長の光である光ビーム11によって行なわれる。光ディスク10からの反射戻り光(光ビーム11)が集光する位置に2分割検出器6Aが設置されている場合には、2分割検出器6A上での光スポットSAの形状はほぼ点状になる。しかしながら集積化レーザユニット13の組立時において理想的な設計位置からのずれが生じるので、2分割検出器6Aの位置は光ビーム11の焦点位置からずれる。よって図8に示すように、2分割検出器6A上に形成される光スポットSAの形状が点状ではなく半円形状になる場合がある。
光スポットSAが半円形状となる状態でフォーカスエラー信号FESを生成した場合には光ディスク10上で光ビームが合焦位置にあっても、2分割検出器6Aの受光素子6A1,6A2の各々が光ビームの受光に応じて出力する信号の強度が互いに異なる。よって、式(1)に示されるフォーカスエラー信号FESにオフセットが生じるので正確にフォーカスサーボを行なうことができないという問題が生じる。
光ディスク上での光ビームのフォーカス状態に関する情報を正確に取得するためには、光検出器6あるいは半導体レーザ1,2の高さ調整が必要となる。シングルナイフエッジ法の場合、高さを調整する代わりに基板7を図1のXY平面内(図2において光軸Jに垂直な面内)で回転させてフォーカスオフセットを補正することができる。
図9は、基板7の回転によるフォーカスオフセットの補正を説明する図である。図9を参照して、基板7の回転により、分割線L1に対する光スポットSAの位置が変位する。具体的には光スポットSAは分割線L1に垂直な方向に移動する。光スポットSAを移動させ、分割線L1の左右に設けられた受光素子6A1,6A2の各々での受光量を等しくすることで、受光素子6A1,6A2の各々から出力される信号の強度が等しくなる。この場合、フォーカスエラー信号FESは0になる。よって、フォーカスオフセットを補正することができる。
実施の形態1においては基板7を回転させ、第1の波長の光である光ビーム11に対するフォーカスエラー信号FESが0になるよう調整が行なわれる。この場合、第2の波長の光である光ビーム12に対してはフォーカスエラー信号FESが0にならずフォーカスオフセットが残留する可能性がある。
図10は、光ビーム11を用いて基板7を調整した後に2分割検出器6A上に形成される光ビーム11のスポットを示す図である。図11は、基板7が調整された状態で2分割検出器6A上に形成される光ビーム12のスポットを示す図である。
図10および図11を参照して、4種類のずれ(公差)が生じた際の光スポットP1,P2,F1,F2が示される。光スポットP1,P2は集積化レーザユニット13の組立時のずれにより、光スポットの位置が+X軸方向および−X軸方向にそれぞれ最大にずれたときの光スポットを示す。光スポットF1,F2は集積化レーザユニット13の組立時のずれにより、フォーカスエラー信号FESの値が−方向および+方向にそれぞれ最大にずれたときの光スポットを示す。なお、説明の便宜上、ホログラム5の領域5Bには光ビームに収差(球面収差)を付加するためのパターンが形成されていないものとする。
図11に示す光スポットP1,F1の各々の強度分布は2分割検出器6Aの受光素子6A2側にずれている。また、図11に示す光スポットP2,F2の各々の強度分布は2分割検出器6Aの受光素子6A1側にずれている。よって、上述の式(1)に従って求められるフォーカスエラー信号FESの値は、光スポットP1,F1の場合には負の値となり、光スポットP2,F2の場合には正の値になる。
また、ホログラム5上では公差により光スポットの位置ずれが生じる。図11において各光スポットの強度分布がずれる理由は、ホログラム5上で光スポットの位置ずれが生じることによる。
図12は、ホログラム5上における光スポットの位置ずれを示す図である。図12を参照して、光スポット12Aは図11の光スポットP1,P2,F1,F2のいずれかに対応する光スポットである。光スポット12Aが領域5B2側に変位した場合には2分割検出器6Aにおいて光スポットP1,F1のいずれかが形成される。光スポット12Aが領域5B1側に変位した場合には2分割検出器6Aにおいて光スポットP2,F2のいずれかが形成される。
領域5Bを光ビームに球面収差を付加するホログラムパターンを有する場合、光スポットP1,F1は領域5B2により付加された球面収差を持ち、光スポットP2,F2は領域5B1により付加された球面収差を持つ。
図13は、光ビーム12に対して球面収差を付加しない場合に2分割検出器6A上に形成される光スポットP1,P2を示す図である。図14は、光ビーム12に対して球面収差を付加した場合に2分割検出器6A上に形成される光スポットP1,P2を示す図である。
図13および図14を参照して、球面収差を付加した場合の光スポットP1,P2は球面収差を付加しない場合の光スポットP1,P2のそれぞれに対し、分割線L1に垂直な方向に光スポットの形状が広がる。たとえば図13に示すように収差が付加されていない場合の光スポットP1は受光素子6A2側の強度が強くなる。一方、図14に示すように収差が付加された場合の光スポットP1は分割線L1を超えて、受光素子6A1側にスポットの形状が広がる。よって受光素子6A1,6A2の各々から出力される信号I6A1,I6A2の強度差を式(1)に従って算出した場合、図14に示す光スポットP1の強度差は小さくなる。つまり、光ビームに収差を付加することによってフォーカスオフセットを小さくすることができる。
また、光スポットP2の場合には光ビームに収差を付加することで光スポットP1とは逆の方向(受光素子6A2側)にスポットの形状が広がる。よって、図14に示す光スポットP2の場合にも、信号I6A1,I6A2の強度差が小さくなるのでフォーカスオフセットを小さくすることができる。
球面収差の符号をホログラム5の領域5B1と領域5B2とで変える理由は、光ビーム12の広がる方向を制御するためである。また、図11に示す光スポットF1,F2についても、ビーム径を変化させる収差を領域5B1,領域5B2の各々に持たせることにより、フォーカスオフセットを小さくすることができる。
なおホログラム5に付加する収差の大きさと符号については、生じ得るすべての公差に対してフォーカスオフセットを0近傍に収めることができるような最適な値に設定される。また、ホログラム5の領域5B1,5B2に付加される収差の大きさは互いに等しくなくてもよい。
また、光ビーム12、すなわち第2の波長の光ビームに対してビーム径を広げる収差の種類は必ずしも球面収差である必要はなく、非点収差やコマ収差などであってもよい。また、光ビーム12に付加する収差は複数種類の収差を複合した収差であってもよい。光検出器6上での光ビーム12の位置ずれに応じて収差を適切に組合せることができる。
なお、DVDのほうがCDよりも高密度に情報が記録されるため、求められるフォーカス精度は、第1の波長の光ビームのほうが第2の波長の光ビームよりも高くなる。よって、第1の波長の光ビーム(光ビーム11)を用いてフォーカスオフセットを補正する場合には、基板7を回転させて調整することが必要になる。一方、第2の波長の光ビーム(光ビーム12)の場合には、第1の波長の光ビームよりも、求められるフォーカスの精度は低くなる。よって、光ビーム12に対して収差を付加することでフォーカスオフセットを低減させることが可能になる。
ホログラム5は光ビーム11を透過し、光ビーム12のみを回折する波長選択性を有することが好ましい。これにより、ホログラム5を通過する光ビーム11の強度損失、および光ビーム11の迷光の発生を抑制することができる。よって、良好なフォーカスサーボ信号およびトラッキングサーボ信号を得ることができる。なお、溝深さを適切に設定することにより、ホログラム5に波長選択性を持たせることができる。
以上のようにホログラム5に対して収差を付加することで、第1の波長の光(光ビーム11)に対しフォーカスオフセットが0になるように基板7を最適に調整した状態で第2の波長の光(光ビーム12)によるフォーカスオフセットの発生を抑制することができる。よって光集積化レーザユニットを備える2波長光ピックアップの生産効率を向上させることができる。
なお、実施の形態1の光ピックアップにおいて、プッシュプル法によるトラッキングエラー信号は、ホログラム4において非点収差が付加された分割部4Aを通過する光ビームを用いて生成される。
プッシュプル信号を得るためには、光ビームを光ディスク10のトラック方向と平行な方向に分割し、分割した各光ビームの強度差を求める必要がある。光ビームはホログラム4により分割することができる。しかしながら半導体レーザ1と半導体レーザ2とが光ディスク10のラジアル方向にそって配置されている場合、たとえば図5に示すように、ホログラム4に落射する光ビーム11に対して最適な線分Mを設定すると、光ビーム12に対し、線分Mは光ビーム12にとって最適な位置からずれた位置にある。よって光ビーム12を用いて生成されるプッシュプル信号にはオフセットが発生する。
このような問題を解決するため、ホログラム5の最適な位置で光ビーム12をさらに分割する必要がある。しかし、この場合にはホログラム5での回折角度が大きくなったり、光ビームの位置ずれに対する許容範囲が狭くなったりする。
一方、実施の形態1のように光ビームに対して分割部4Aで非点収差を発生させ、光スポットを2分割検出器6B上で90°回転させることにより、2分割検出器6Bの分割線L2で光スポットSBを分割すれば、光ビーム11,12の各々に対するトラッキングエラー信号を容易に得ることができる。光ビーム12が光検出器6に形成する光スポットSBに対する分割線L2の位置は、光ビームの落射位置を全体的にずらすことで相対的にずれるので容易に設定可能である。
図15は、トラッキングエラー信号を検出する際に第1および第2の光ビームが光検出器6上に形成する光スポットを示す図である。図15を参照して、2分割検出器6B上では第1および第2の光ビーム(光ビーム11,12)の各々により光スポットSBが形成される。トラッキングエラー信号TESは以下の式(2)に従って求められる。
TES=(I6B1−I6B2) …(2)
ホログラム4の分割部4Aに非点収差を持たせることで、第1の光ビームである光ビーム11は分割部4Aを通過した際に非点収差が付加される。よって、2分割検出器6B上では分割線L2をまたぐように光スポットSBが形成される。同様に、第2の光ビームである光ビーム12は分割部4Aを通過した際に非点収差が付加され、さらにホログラム5の領域5Aを通過する。光ビーム12が領域5Aを通過する際には収差が付加されない。よって、2分割検出器6B上では光ビーム12により、分割線L2をまたぐように光スポットSBが形成される。実施の形態1では、光ビーム11,12のいずれの場合であっても、同一の光検出器6を用い、式(1),(2)に従ってトラッキングエラー信号TESとフォーカスエラー信号FESとを生成することができる。
また、実施の形態1の光ピックアップではDPP(差動プッシュプル)法によるトラッキングエラー信号の検出も可能である。DPP法では対物レンズ9の移動により生じるトラッキングエラー信号のオフセットを補正するため、式(2)に示すメインビームによるプッシュプル信号(トラッキングエラー信号TES)から、メインビームに対して位相が180°ずれたサブビームのプッシュプル信号を減算することによりトラッキングエラー信号を得ることができる。なお、「メインビーム」とは図1の回折格子3により分割された3つの光ビームのうちの0次光であり、「サブビーム」とは3つの光ビームのうちの+1次光または−1次光である。
実施の形態1では、回折格子3の格子間隔は同一のピッチである。波長の違いにより光ビーム11と光ビーム12とでは回折角度が異なる。よって、光ビーム11のサブビームと光ビーム12のサブビームとを光検出器6上の同一の位置に落射させることはできない。実施の形態1では回折角度の違いに対応するため、サブビームを検出する検出器として3分割検出器6C、6Dが用いられる。
図15では3分割検出器6C、6Dの各々の分割線と、光ビーム11,12の各々のサブビームが形成する光スポットとの位置関係が示される。なお2分割検出器6Bは光ビーム11のメインビームおよび光ビーム12のメインビームとの双方の検出に用いられる。
3分割検出器6Cには光スポットSC1,SC2が形成され、3分割検出器6Dには光スポットSD1,SD2が形成される。光スポットSC1,SD1は第1の光ビームのうちの2つのサブビームにより形成される光スポットである。光スポットSC2,SD2は第2の光ビームのうちの2つのサブビームにより形成される光スポットである。
図16は、光ビーム11のサブビームによりホログラム4に形成される光スポットを示す図である。図16を参照して、Y軸方向に沿って、光ビーム11のメインビームにより形成される光スポット11Mの両側に、光ビーム11のサブビームにより光スポット11S1,11S2が形成される。図15に示す光スポットSC1は光スポット11S1,11S2の一方に対応し、光スポットSD1は光スポット11S1,11S2の他方に対応する。
受光素子6C1〜6C3の出力信号をそれぞれI6C1〜I6C3とする。また、受光素子6D1〜6D3の出力信号をそれぞれI6D1〜I6D3とする。光ビーム11のサブビームに応じたプッシュプル信号SPP1は以下の式(3)で表わされる。
SPP1={(I6C1+I6D2)−(I6C2+I6D1)}…(3)
光ビーム12のサブビームに応じたプッシュプル信号SPP2は以下の式(4)で表わされる。
SPP2={(I6C2+I6D3)−(I6C3+I6D2)}…(4)
メインビームによるプッシュプル信号、すなわち式(2)に示すトラッキングエラー信号TESから、サブビームのプッシュプル信号(プッシュプル信号SPP1またはプッシュプル信号SPP2)を減算することにより、DPP法によるトラッキングエラー信号を得ることができる。
また、実施の形態1の光ピックアップでは、DPD(位相差)法によるトラッキングエラー信号の検出も行なうことができる。DPD法では、受光素子6B1,6B2の各々で受光に応じて生成される信号の位相差に基づいてトラッキングエラー信号が検出される。DPD法によるトラッキングエラー信号は、以下の式(5)により表わされる。
phase(I6B1−I6B2) …(5)
式(5)において記号「phase」は、受光素子6B1,6B2の各々で受光した光ビームの強度に応じて出力される信号の位相差を示す。
光ディスク10上に形成されたピットが光ビームのどの位置を通過するかに応じて位相差が変化する。よって位相差を求めることにより光ディスク10のトラックの位置情報を得ることができる。光ビームがちょうど光ディスク10のピット列(トラック)の中央を通過する場合に位相差が0となる。よって実施の形態1の光ピックアップでは、位相差が0となるように対物レンズ9を移動させることでトラッキングサーボを行なうことができる。
なお、フォーカス信号用の2分割検出器6Aと、トラッキングエラー信号用の2分割検出器6Bの位置関係は図13に示す2分割検出器6A,6Bの位置関係と逆であってもよい。
また、ホログラム4は、入射する光ビームの偏光状態に応じて回折効率を変化させることが好ましい。「回折効率」とは回折格子(特にホログラム)に単色光を照射するときに特定の方向への回折光と照明光との強度比のことである。半導体レーザ1,2から照射された光ビーム11,12の各々は光ディスク10での反射に応じて偏光状態を変化させる。ホログラム4は入射する光ビームの偏光状態に応じて回折効率を変えることにより、半導体レーザ1,2から照射された光ビーム11,12を透過させる一方で、光ディスク10から反射した光ビーム11,12を回折させることができる。
また、ホログラム4に入射する光ビームの偏光状態によって、回折の有無を変えることで、半導体レーザ1,2から光ディスク10までの間における光ビーム11,12の各々の光量の損失を抑えることが可能になる。よって光ディスク10により強い光ビームを照射することができるので、光ディスク10に対して高速に情報の記録を行なうことができる。
以上のように実施の形態1によれば、通過する光ビームに収差を付加するパターンをホログラムに形成することにより、1つの基板に複数のホログラムが形成され、第1波長の光ビームに対して最適なホログラム基板の調整を行なった場合にも第2の波長の光ビームに対するフォーカスオフセットの発生を抑制することができる。これにより波長が異なる2つの光ビームのいずれを用いても安定したフォーカスサーボを実現できるので、光集積化レーザユニットを用いた2波長光ピックアップの生産効率を向上させることができる。
また、実施の形態1によれば、第1の波長の光ビームか第2の波長の光ビームかのいずれかの光ビームを用いてフォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を生成する場合にも、同一の受光素子を用い、同一の演算方法により各信号を生成することができる。
また、実施の形態1によれば、ホログラムに偏光特性を付与することにより、光ディスクに入射される光ビームと光ディスクから反射される光ビームとで回折の有無を変えることができるので光ディスクに到達する光の損失を抑えることが可能になる。よって光ディスクに強い光ビームを照射することにより、光ディスクに対して高速に情報の記録を行なうことができる。
また、実施の形態1によれば、2つの光源(半導体レーザ)と光検出器とを集積化することにより、光ピックアップの小型化が実現可能になる。
[実施の形態2]
図17は、実施の形態2の光ピックアップの概略構成図である。
図17を参照して、光ピックアップ50Aは集積化レーザユニット13に代えて集積化レーザユニット13Aを備える点で図1に示す光ピックアップ50と相違する。光ピックアップ50Aの他の部分の構成は光ピックアップ50と同様であるので、以後の説明は繰り返さない。
図18は、図17の集積化レーザユニット13Aの詳細を示す図である。
図18を参照して、集積化レーザユニット13Aは、ホログラム4,5、光検出器6に代えてホログラム41,51および光検出器61をそれぞれ備える点で図2に示す集積化レーザユニット13と異なる。集積化レーザユニット13Aの他の部分の構成は集積化レーザユニット13と同様であるので、以後の説明は繰り返さない。なお、ホログラム41,51のホログラムパターン(分割パターン)および光検出器61の詳細な構成は後述する。
図19は、図18の光検出器61に設けられる受光素子の配置を示す図である。
図19を参照して、光検出器61は2分割検出器6A,6Bを備える。2分割検出器6A,6Bの各々は光ディスク10のラジアル方向に沿って配置される。
光検出器61は、さらに3分割検出器6C〜6Fを備える。実施の形態2では3ビーム用の回折格子3によって分けられた±1次光を検出する受光素子は3分割検出器6C〜6Fとなる。
実施の形態2では、2分割検出器6A,6Bに集光する光ビームを用い、非点収差法によってフォーカスエラー信号を生成する。受光素子6A1,6A2,6B1,6B2の出力信号をそれぞれI6A1,I6A2,I6B1,I6B2とすると、非点収差法によるフォーカスエラー信号FESは以下の式(6)で表わされる。
FES=(I6A1+I6B2)−(I6A2+I6B1) …(6)
実施の形態1では2分割検出器6Aに集光する光ビームを用い、シングルナイフエッジ法によってフォーカスエラー信号を生成する。この点で実施の形態2は実施の形態1と異なっている。
次に、実施の形態2におけるホログラム41,51について説明する。
図20は、図18のホログラム41の構成を示す図である。
図20を参照して、ホログラム41は光ディスク10で反射した光ビームが通過する領域に設けられ、線分Mで区切られた2つの分割部4A,4Bを有する。線分Mは光ビームの光軸を通り、ラジアル方向(X方向)に平行な方向の線分である。分割部4A,4Bの各々には、通過するディスクからの戻り光をホログラム51の方向へ導くとともに、通過する光ビームに非点収差を付与するホログラムパターンが形成されている。図5に示すホログラム4では非点収差を付与するホログラムパターンが分割部4Aのみに付与されている。この点でホログラム41はホログラム4と相違する。また、光ビームが反転する軸の方向は、線分Mに対して約45度の角度に設定されている。
ホログラム41に形成される溝のパターンは光ビーム11に対して最適化される。具体的には、分割部4Aを通過した光ビーム11の0次光の最小錯乱円が2分割検出器6A上の位置S1に形成され、分割部4Bを通過した光ビーム11の0次光の最小錯乱円が2分割検出器6Bの位置S2に形成されるよう、溝パターンが設定される。このとき、分割部4A,4Bのそれぞれを通過した光ビーム12は、ホログラム5が設けられていなければ位置T1,T2に光スポットを形成する。
図21は、図18のホログラム51の構成を示す図である。
図21を参照して、ホログラム51は光ディスク10のトラック方向(Y方向)に平行な方向の線分Lによって分割される2つの領域5A,5Bを含む。ホログラム5は光ビーム12に対して最適化されている。具体的には、ホログラム41の分割部4Aを通過した光ビーム12が領域5Aを通過するように領域5Aの大きさが設定される。また、ホログラム41の分割部4Bを通過した光ビーム12が領域5Bを通過するように領域5Bの大きさが設定される。
また、ホログラム51によって回折する光ビーム12の1次光の光スポットの位置は、領域5Aを通過した光ビームに対しては位置S1となり、領域5Bを通過した光ビームに対しては位置S2となる。このような関係を満たすように領域5A,5Bの各々の溝パターンが形成されている。
実施の形態2における、プッシュプル法によるトラッキングエラー信号を生成する方法について説明する。
プッシュプル信号は、光ビームをディスクのトラック方向と平行な方向に分割して分割後の2つの光ビームの強度差を求めることによって得られる。実施の形態2では、光ビームに非点収差を持たせ、かつ、光スポットを光検出器61上で90度回転させる。これにより光ビームを2分割検出器6A、6B上の分割線で分割すれば、容易にトラッキング信号を得ることができるようになる。光ビーム11,12の各ビームの受光信号に対し、以下の式(7)に従う演算を行なうことでトラッキングエラー信号TESを生成することができる。
TES=(I6A1+I6B1)−(I6A2+I6B2) …(7)
よって非点収差を用いることで、光ビーム11,12に対して、同一の検出器、同一の演算でトラッキングエラー信号とフォーカスエラー信号とを得ることが可能となる。
さらに、ホログラム51の領域5A,5Bには、光ビーム12を光検出器61上のある点(位置S1,S2)へ回折させるとともに、光ビーム12に非点収差を持たせるようにホログラムパターンが形成される。領域5Aは付与されている非点収差の中心が光スポット12Aの中心12ACと一致し、収差の方向がラジアル方向(X軸方向)から−45°傾けられた方向tuaとなるようにパターンが形成されている。領域5Bは付与されている非点収差の中心がビームスポット12Bの中心12BCと一致し、収差の方向がラジアル方向とは+45°傾けられた方向tubとなるようにパターンが形成されている。中心12AC,12BCは、光集積レーザユニット13Aが理想的な状態で組み立てられた状態、すなわち組立時のずれがない状態のときに、ホログラム51上に形成される光スポット12A,12Bのそれぞれの中心である。
ホログラム5を通過した光ビーム12の回折光は、線分Lによって分けられる領域5A,5Bにおいて互いに方向が異なる非点収差が付加され、光検出器61に落射する。つまり、ホログラム51は分割部5A,5Bを通過する光ビーム12(第2の反射光)に対し、光検出器61に形成される光スポットの径を互いに逆向きに拡大する。これにより光ビーム11を用いてホログラム41,51を調整した状態で光ビーム12により得られるフォーカスエラー信号のオフセットを小さくすることができる。
なお、本実施の形態において「非点収差の中心」とはビームスポットの変形の基準となる点を意味する。また「収差の方向」とは非点収差によってビームが反転する際に反転する方向と垂直な方向を意味する。ホログラム上に入射した半円のビームの各点は非点収差によって「収差の方向」に対して垂直な方向に変位し、光検出器上では反転している。また「光スポットの径を互いに逆向きに拡大する」とは、具体的には図21において領域5Aを通過した光ビームを+Y方向に拡大し、領域5Bを通過した光ビームを−Y方向に拡大することを意味する。
次にこの収差付加の効果について説明する。
図22〜図24は、非点収差法によるホログラム調整を説明する図である。実施の形態2の光ピックアップにおいては、実施の形態1と同様にホログラム調整を光ビーム11(第1の波長の光)によって行なう。
図22は、ディスク上で光ビームが集光点にある場合における2分割検出器6A,6B上での光スポットを示す図である。図22を参照して、設計位置に2分割検出器6A,6Bが設けられている場合、各検出器上のビームスポットの形状は半円である。しかし、実際に光集積化レーザユニットを組み立てる際には、理想的な設計位置からのずれが生じるため、2分割検出器6A,6Bは設計位置からずれる。
図23は、2分割検出器6A,6Bが設計位置からずれたときの光スポットを示す図である。
図23を参照して、2分割光検出器6A,6Bが設計位置からずれた場合には、光スポットの形状が図22に示す半円形から変形し、ビームが落射する位置が図22と異なる場合が生じる。このような状態でフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号を生成した場合、ディスク上で光ビームが合焦位置にある状態でも2分割検出器6A,6Bの各々では左右の受光素子での強度バランスが異なるため、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号にオフセットが生じてしまう。よって、正確にフォーカスサーボおよびトラッキングサーボを行なうことができないという問題が生じる。
このとき、光ディスク上での光ビームのフォーカス状態やトラッキング状態に関する情報を正確に取得するためには、光検出器61あるいは半導体レーザ1,2の高さ調整が必要となる。非点収差法の場合には、この高さ調整を基板7の面内(XY平面)での回転方向とラジアル方向(X方向)とに位置調整を行なうことで代用できる。基板7(すなわちホログラム)の回転方向とラジアル方向との位置調整によって光検出器61上での光スポットの形状と位置とは変化する。
図24は、オフセット調整後の光スポットを示す図である。
図24を参照して、2分割検出器6A,6Bの各々の左右の受光素子では受光強度のバランスが調整されている。各受光素子の出力から生成されるフォーカスエラー信号FES=(I6A1+I6B2)−(I6A2+I6B1)、トラッキングエラー信号TES=(I6A1+I6B1)−(I6A2+I6B2)がともに0となるように基板7(ホログラム)の位置調整を行なうことで、フォーカスオフセット、トラッキングオフセットをともに0とすることができる。
しかしながら、実施の形態2では基板7のみ調整可能である。よって、実施の形態1と同様に光ビーム11に対してホログラムの調整を行なうと光ビーム12に対してはオフセットが残留する場合がある。この状態を図示しながら説明する。
図25は、光ビーム11を用いて基板7を調整したときに、光ビーム12により光検出器61上に形成される光スポットを示す図である。
図25を参照して、ホログラム51に収差(非点収差)を付加していない場合の2分割検出器6A,6Bの各々に形成される光ビーム12のスポットを示す。各検出器上の4つの光スポットは、4種類の異なる公差に対する光スポットをそれぞれ示す。光スポット(Pa1,Pb1)、(Pa2,Pb2)は、組立時に面内方向(X方向)のずれが+X方向および−X方向にそれぞれ最大となる場合の光スポットである。光スポット(Fa1,Fb1)、(Fa2,Fb2)はフォーカスオフセットが−方向および+方向にそれぞれ最大となる場合の光スポットである。
図26は、図25に示す光スポット(Fa1,Fb1)、(Fa2,Fb2)に収差を付加していない状態を示す図である。
図27は、図25に示す光スポット(Fa1,Fb1)、(Fa2,Fb2)に収差を付加した状態を示す図である。
図26および図27を参照して、収差を付加していない状態では光スポットFa1,Fa2は受光素子6A2側、受光素子6A1側にそれぞれ変位し、光スポットFb1,Fb2は受光素子6B2側、受光素子6B1側にそれぞれ変位する。なお、図27に示すように収差を付加することで光スポットの形状は大きくなる。
図28は、フォーカスオフセットが最大となるときに光ビーム12によってホログラム51上に形成されるスポットを示す図である。
図26から図28を参照して、光検出器61上のスポットが光スポット(Fa1,Fb1)に変位するときにはホログラム51上の光スポットは光スポット(12A1,12B1)にそれぞれ変位する。受光部6上のスポットが光スポット(Fa2,Fb2)に変位するときはホログラム51上のスポットは光スポット(12A2,12B2)に変位している。
上述のように、収差を付加することで光スポットの形状は大きくなる。たとえば光スポットFa1は、図26の状態では受光素子6A2側の強度が強いのに対し、図27では分割線を超えて受光素子6A1側にビーム形状が広がる。よって左右の受光素子の強度差をとった場合、図26の状態よりも図27の状態のほうが、その差は小さくなる。他の光スポットFa2,Fb1,Fb2についても同様に2分割検出器6A,6Bの左右の受光素子の強度差が小さくなる。よってフォーカスオフセットを低減することができる。
なお非点収差の方向を領域5A,5Bで互いに90°異ならせているのは、ビームの広がる方向(すなわち光スポットの径を拡大する方向)が互いに逆向きとなるように制御するためである。また、面内方向の位置ずれが最大となる公差についても同様なビーム形状の変化が生じ、オフセットは小さくなる。
ホログラム51に付加する収差の大きさは、すべての公差時においてフォーカスオフセットが0近傍におさまるような最適な値に設定する。また、ホログラム51の領域5A,5Bに付加される収差の大きさは同じでなくてもよい。
また、このようなビーム形状変化を生じさせる収差は必ずしも非点収差である必要はなく、球面収差やコマ収差などであってもよい。また、いくつかの収差が複合した収差であってもよい。光検出器61上での光ビーム12のずれ方にあわせて最適な収差の組み合わせを用いることができる。
また、ホログラム51に対しては、光ビーム11を透過し、光ビーム12のみ回折するように溝深さを設定して波長選択性を与えることが好ましい。これによりホログラム51を通過する光ビーム11の強度損失、および光ビーム11の迷光の発生を抑制することができる。よって良好なサーボ信号を得ることができる。
実施の形態2では、実施の形態1と同様にホログラム51に収差を付加する。これにより、光ビーム11(第1の波長の光)に対しフォーカスオフセットが0になるように基板7を最適に調整した状態で光ビーム12(第2の波長の光)によるフォーカスオフセットの発生を抑制することができる。よって実施の形態2によれば実施の形態1と同様に光集積化レーザユニットを備える2波長光ピックアップの生産効率を向上させることができる。
また、実施の形態1と同様に、実施の形態2の光ピックアップはDPP法によるトラッキングエラー信号の検出が可能である。実施の形態2では、DPP法によるトラッキングエラー信号は、((I6A1+I6B1)−(I6A2+I6B2))で得られるプッシュプル信号から位相が180度ずれたサブビームのプッシュプル信号を差し引くことで得られる。これにより、レンズシフトによって生じるトラッキング信号のオフセットを補正することができる。
波長の違いにより光ビーム11と光ビーム12とでは回折角度が異なる。よって、光ビーム11のサブビームと光ビーム12のサブビームとを光検出器61上の同一の位置に落射させることはできない。実施の形態2ではサブビームを検出する検出器として3分割検出器6C〜6Fが用いられる。
図29は、図19の3分割検出器6C〜6Fの各々の分割線と、光ビーム11,12による光スポットとの位置関係を示す図である。
図29を参照して、光スポットS11A,S11Bは回折格子3で回折した光ビーム11の+1次光のうち、分割部4A,4Bをそれぞれ通過した光ビームにより形成されるスポットである。光スポットS12A,S12Bは回折格子3で回折した光ビーム11の−1次光のうち、分割部4A,4Bをそれぞれ通過した光ビームにより形成されるスポットである。光スポットS21A,S21Bは回折格子3で回折した光ビーム12の+1次光のうち、分割部4A,4Bをそれぞれ通過した光ビームにより形成されるスポットである。光スポットS22A,S22Bは回折格子3で回折した光ビーム12の−1次光のうち、分割部4A,4Bをそれぞれ通過した光ビームにより形成されるスポットである。
受光素子6A,6Bは光ビーム11,12に共通に用いる。光ビーム11のサブビームによるプッシュプル信号SPP1、光ビーム12のサブビームによるプッシュプル信号SPP2は、式(8),(9)に従ってそれぞれ示される。なお、以下において出力信号I6E1〜I6E3,I6F1〜I6F3は受光素子6E1〜6E3,6F1〜6F3からそれぞれ出力される信号である。
SPP1=(I6C1+I6D2+I6E1+I6F2)−(I6C2+I6D3+I6E2+I6F3) …(8)
SPP2=(I6C2+I6D1+I6E2+I6F1)−(I6C3+I6D2+I6E3+I6F2) …(9)
メインビームによるプッシュプル信号から、これらを減算することによってDPP法によるトラッキングエラー信号を得ることができる。
また、実施の形態2の光ピックアップでは、実施の形態1と同様にDPD法によるトラッキングエラー信号の検出を行なうことができる。実施の形態2においてDPD法によるトラッキングエラー信号は、以下の式(10)により表わされる。
phase((I6A1+I6B2)−(I6A2+I6B1)) …(10)
実施の形態2の光ピックアップでは式(10)により得られる位相差が0になるように対物レンズ9を移動させてトラッキングサーボを行なうことができる。
また、光ディスクに記録された情報信号は、2分割検出器6A,6Bの出力から生成され、(I6A1+I6A2+I6B1+I6B2)となる。
また、ホログラム41は、ホログラム41を通過する光ビームの回折効率が、ホログラム41に入射する光ビームの偏光状態によって変化する構成を有することが好ましい。その理由は実施の形態1と同様であり、光ディスク10に対してより強い光ビームを照射することができるので、高速に情報の記録を行なうことができるためである。
以上のように実施の形態2によれば、第1および第2のホログラムの各々が光ディスクのラジアル方向に平行な方向の分割線によって2つの領域に分割され、各領域に非点収差を持たせるようにホログラムパターンが形成される。これにより、実施の形態2では第1の波長の光および第2の波長の光の両方に対して非点収差法によるフォーカスエラー信号の生成が可能になる。
また、実施の形態2によれば、第2のホログラムにおいて2つの分割領域を通過する第2の波長の光が互いに反対の方向に拡大するように各分割領域のホログラムパターンが形成される。これにより、第1の波長の光に対してフォーカスオフセットを低減するように第1および第2のホログラムを調整した状態で第2の波長の光に対してもフォーカスオフセットを低減することができる。
[実施の形態3]
実施の形態3の光ピックアップの全体構成は図1に示す光ピックアップ50と同様であるので以後の説明は繰り返さない。実施の形態3の光ピックアップは集積化レーザユニットの構成が光ピックアップ50と異なる。
図30は、実施の形態3の光ピックアップに含まれる集積化レーザユニットの構成図である。
図30を参照して、集積化レーザユニット13Bは、ホログラム4,5、光検出器6に代えてホログラム42,52および光検出器62をそれぞれ備える点で図2に示す集積化レーザユニット13と異なる。また、集積化レーザユニット13Bは、光検出器62の位置調整用の部材17をさらに備える点で集積化レーザユニット13と異なる。集積化レーザユニット13Bの他の部分については集積化レーザユニット13と同様であるので以後の説明は繰り返さない。なおホログラム42,52のホログラムパターン(分割パターン)および光検出器62の詳細な構成は後述する。
図31は、図30の光検出器62に設けられる受光素子の配置を示す図である。
図31を参照して、光検出器62は、4つの2分割検出器16A〜16Dを備える。各2分割検出器の分割線の方向は、光ディスク10のラジアル方向(X軸方向)にほぼ沿った方向である。
2分割検出器16Aは、分割線により受光素子16AS,16ARに分割される。2分割検出器16Bは分割線により受光素子16BS,16BRに分割される。2分割検出器16Cは分割線により受光素子16CS,16CRに分割される。2分割検出器16Dは分割線により受光素子16DS,16DRに分割される。
光検出器62は、光検出器16E1〜16E3,16F1〜16F3をさらに備える。光検出器16E1〜16E3,16F1〜16F3は3ビーム用の回折格子3によって分けられた光ビームの±1次光を検出する受光素子である。
実施の形態3における光ピックアップでは、光検出器62のうち、受光素子16AS,16BS,16CS,16DSの各々に集光する光ビームを用い、ダブルナイフエッジ法によってフォーカスエラー信号を生成する。受光素子16AS,16BS,16CS,16DSの出力信号をそれぞれI16AS,I16BS,I16CS,I16DSとする。フォーカスエラー信号FESはダブルナイフエッジ法により以下の式(11)に従って求められる。
FES=(I16AS+I16CS)−(I16BS+I6DS) …(11)
次に、実施の形態3のホログラム42、52について説明する。
図32は、図30のホログラム42の構成を示す図である。
図32を参照して、ホログラム42は、光ディスク10から反射された光ビームが通過する領域に、ラジアル方向(X方向)に平行な線分Nrおよびトラック方向(Y方向)に平行な線分Ntで区切られた4つの分割部14A,14B,14C,14Dを備えている。各分割部はホログラムパターンを有している。線分Nrは光ビーム11,12の光軸を通る線分である。線分Ntは光ビーム11の光軸を通る線分である。上記4つの分割部には、各領域を通過する光ディスク10からの戻り光をホログラム52の方向へ導くホログラムパターンが形成されている。
ホログラム42に形成されている溝のパターンは光ビーム11に対して最適化されている。ホログラム42の分割部14A,14B,14C,14Dで回折された光ビーム11はそれぞれ2分割検出器16A,16B,16C,16D上の位置u1,u2,u3,u4にそれぞれ集光するように溝パターンが設定されている。このとき、光ビーム12に対する光スポットの位置は、分割部14A,14B,14C,14Dを通過する光ビームに対してはそれぞれ位置v1,v2,v3,v4となる。
図33は、図30のホログラム52の構成を示す図である。
図33を参照して、ホログラム52はラジアル方向に平行な方向の線分Lr、トラック方向に平行な方向の線分Ltによって分割される4つの分割部15A,15B,15C,15Dを有する。分割部15A〜15Dの各々は、さらに、トラック方向に平行な分割線により第1および第2の部位に分割される。具体的には、分割部15Aは線分O1により部位15A1,15A2に分割され、分割部15Bは線分N1により部位15B1,15B2に分割され、分割部15Cは線分N2により部位15C1,15C2に分割され、分割部15Dは線分O2により部位15D1,15D2に分割される。
ホログラム52は光ビーム12に対して最適化されている。ホログラム42において分割部14A,14B,14C,14Dを通過した光ビーム12は、ホログラム52においてそれぞれ分割部15A,15B,15C,15Dを通過する。また、ホログラム52によって回折された光ビーム12の1次光が光検出器62上に形成する光スポットの集光位置が、分割部15A,15B,15C,15Dを通過した光ビームに対してはそれぞれ位置u1,u2,u3,u4となるように、分割部15A,15B,15C,15Dの各々における溝パターンが形成されている。
実施の形態3における、プッシュプル法によるトラッキングエラー信号を生成する方法について説明する。
プッシュプル信号を得るため、光検出器62上では光ビーム11,12の各々によって図31に示す光スポットが形成される。トラッキングエラー信号TESは、以下の式(12)に従う演算により生成される。
TES=(I16AS+I16DS)−(I16BS+I16CS) …(12)
よって実施の形態3によれば実施の形態2と同様に光ビーム11,12に対して、同一の検出器、同一の演算でトラッキングエラー信号とフォーカスエラー信号とを得ることが可能である。
さらに、ホログラム52の分割部15A,15B,15C,15Dにおけるホログラムパターンには、光ビームを光検出器62上の位置(u1,u2,u3,u4)へ回折させるとともに、球面収差を付与するパターンが形成されている。また、付与されている球面収差は分割部15A,15B,15C,15Dのそれぞれをほぼ2分割する線分O1,N1,N2,O2を境として符号が異なる。よって、ホログラム52を通過した光ビーム12の回折光は、線分O1,N1,N2,O2によって分けられる領域において、それぞれ符号の異なる球面収差が付加されて光検出器62に落射する。
つまり、ホログラム52は分割部15Aの部位15A1,15A2を通過した光ビーム12(第2の反射光)に対し、光検出器62上に形成される光スポットの径を互いに逆向きに拡大する。これにより光ビーム11を用いてホログラム42,52を調整した状態で光ビーム12により得られるフォーカスエラー信号のオフセットを小さくすることができる。分割部15B〜15Cについても同様である。
なお、実施の形態2と同様に、「光スポットの径を互いに逆向きに拡大する」とは、具体的には、図33において、部位15A1を通過した光ビームを−Y方向に拡大し、部位15A2を通過した光ビームを+Y方向に拡大することを意味する。
次にこの収差付加の効果について説明する。
図34〜36は、ダブルナイフエッジ法による組立調整を説明する図である。実施の形態3の光ピックアップにおいては、実施の形態1,2と同様にホログラム調整を光ビーム11(第1の波長の光)によって行なう。
図34は、ディスク上で光ビームが集光点にある場合における2分割検出器16A〜16D上での光スポットを示す図である。
図34を参照して、設計位置に2分割検出器16A〜16Dが設けられている場合には、各2分割検出器において光スポットは点となる。しかし、実際に集積化レーザユニットを組み立てる際には、理想的な設計位置からのずれが生じるため、2分割検出器16A〜16Dは設計位置からずれる。
図35は、2分割検出器16A〜16Dが設計位置からずれたときの光スポットを示す図である。
図35を参照して、2分割検出器16A〜16Dが設計位置からずれた場合、スポット形状が図34に示す形状から変形するとともに異なる位置にビームが落射することがある。このような状態でフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号を生成した場合、ディスク上で光ビームが合焦位置にある状態でも2分割検出器の左右の受光素子では強度のバランスが異なるため、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号にオフセットが生じてしまう。よって、正確にフォーカスサーボ、トラッキングサーボを行なうことができないという問題が生じる。
このとき、光ディスク上での光ビームのフォーカス状態やトラッキング状態に関する情報を正確に取得するためには、基板7、光検出器62または半導体レーザ1,2の高さ方向の位置調整が必要となる。ダブルナイフエッジ法の場合には、この高さ調整を、光検出器62の高さ方向(Z方向)、および光検出器62の面内(XY平面)のラジアル方向(Y方向)の位置調整によって行なう。部材17を高さ方向(Z方向)および面内(XY平面)のラジアル方向(Y方向)に調整することによって、部材17上に設置された光検出器62の位置を調整し、受光素子上での光スポットの形状と位置を変化させる。
図36は、オフセット調整後の光スポットを示す図である。
図36を参照して、受光素子16AS,16BS,16CS,16DSでは受光強度のバランスが調整されている。そして、各受光素子の出力から生成されるフォーカスエラー信号FES=(I6A1+I6B2)−(I6A2+I6B1)、トラッキングエラー信号TES=(I6A1+I6B1)−(I6A2+I6B2)がともに0となるように光検出器62の位置調整を行なうことで、フォーカスオフセット、トラッキングオフセットをともに0とすることができる。
しかしながら、実施の形態3において位置調整が可能な部位は光検出器62のみである。このため、実施の形態1,2と同様に光ビーム11に対してホログラムの調整を行なった場合、光ビーム12に対しては、オフセットが残留する場合がある。
図37は、光ビーム11を用いて光検出器62を調整したときに、光ビーム12により光検出器62上に形成される光スポットを示す図である。
図37を参照して、ホログラム52に収差(球面収差)を付加していない場合の2分割検出器16A〜16Dの各々に形成される光ビーム12のスポットを示す。各検出器上の4つの光スポットは、4種類の異なる公差に対する光スポットをそれぞれ示す。光スポット(Pa3,Pb3,PC3,PD3)、光スポット(Pa4,Pb4,PC4,PD4)は組立時に面内方向(X方向)のずれが+X方向および−X方向にそれぞれ最大となる場合の光スポットである。光スポット(Fa3,Fb3,Fc3,Fd3)、光スポット(Fa4,Fb4,Fc4,Fd4)はフォーカスオフセットが−方向および+方向にそれぞれ最大となる場合の光スポットである。
図38は、図37に示す光スポット(Fa3,Fb3,Fc3,Fd3)、光スポット(Fa4,Fb4,Fc4,Fd4)に収差を付加していない状態を示す図である。
図39は、図37に示す光スポット(Fa3,Fb3,Fc3,Fd3)、光スポット(Fa4,Fb4,Fc4,Fd4)に収差を付加した状態を示す図である。
図38および図39を参照して、収差を付加していない状態では、光スポットFa3,Fb3,Fc3,Fd3は受光素子16AR,16BS,16CR,16DS側にそれぞれ変位する。また、光スポットFa4,Fb4,Fc4,Fd4は受光素子16AS,16BR,16CS,16DR側にそれぞれ変位する。なお、図39に示すように収差を付加することで光スポットの形状は大きくなる。
図40は、フォーカスオフセットが最大となるときに光ビーム12によってホログラム52上に形成されるスポットを示す図である。
図38から図40を参照して、光検出器62上のスポットが光スポット(Fa3,Fb3,Fc3,Fd3)に変位するときは、ホログラム52上の光スポットは光スポット(12A3,12B3,12C3,12D3)に変位している。また、光検出器62上のスポットが光スポット(Fa4,Fb4,Fc4,Fd4)に変位するときは、ホログラム52上の光スポットは光スポット(12A4,12B4,12C4,12D4)に変位している。
上述のように、収差付加後のスポットは収差付加前と比較してビーム形状が大きくなっている。たとえば光スポットFa3は、図38の状態では受光素子16ARの強度が強いのに対し、図39の状態では分割線を超えて受光素子16AS側の領域にビーム形状が広がっている。よって左右の受光素子の強度差をとった場合、図38の状態よりも図39の状態のほうが、その差は小さくなる。
同様に他の光スポットFb3,Fc3,Fd3,Fa4,Fb4,Fc4,Fd4についても、2分割光検出器16A,16B,16C,16Dの左右の受光素子の強度差が小さくなり、受光素子16AS,16BS,16CS,16DSの強度に基づいて生じるフォーカスオフセットを小さくすることができる。また、面内方向の位置ずれが最大となる公差についても同様なビーム形状の変化が生じるため、オフセットは小さくなる。
ホログラム52に付加する収差の大きさは、すべての公差時においてフォーカスオフセットが0近傍におさまるような最適な値に設定する。また、ホログラム15のそれぞれの領域に付加される収差の大きさは同じでなくてもよい。
また、このようなビーム形状変化を生じさせる収差は必ずしも球面収差である必要はなく、非点収差やコマ収差などであってもよい。また、いくつかの収差が複合した収差であってもよい。光検出器62上での光ビーム12のずれ方にあわせて最適な収差の組み合わせを用いることができる。
また、実施の形態1,2と同様にホログラム52に対しては、光ビーム11を透過し、光ビーム12のみ回折するように溝深さを設定して波長選択性を付与することが好ましい。これによりホログラム52を通過する光ビーム11の強度損失、および光ビーム11の迷光の発生を抑制することができるので良好なサーボ信号を得ることができる。
実施の形態3では、実施の形態1,2と同様にホログラム52に収差を付加する。これによって光ビーム11に対して最適となるように光検出器62の位置調整を行なった場合に、光ビーム12に対してもフォーカスオフセットの発生を抑制することができる。よって、実施の形態3によれば実施の形態1,2と同様に集積化レーザユニットを用いた2波長光ピックアップの生産効率を向上させることができる。
また、実施の形態1,2と同様に、実施の形態3の光ピックアップはDPP法によるトラッキングエラー信号の検出が可能である。実施の形態3ではDPP法によるトラッキングエラー信号は、((I6AS+I6DS)−(I6BS+I6CS))で得られるプッシュプル信号から位相が180度ずれたサブビームのプッシュプル信号を差し引くことで得られる。これにより、レンズシフトによって生じるトラッキング信号のオフセットを補正することができる。
波長の違いにより光ビーム11と光ビーム12とでは回折角度が異なる。よって、光ビーム11のサブビームと光ビーム12のサブビームとを光検出器61上の同一の位置に落射させることはできない。実施の形態3ではサブビームを検出する検出器として光検出器16E1〜16E3,16F1〜16F3が用いられる。
図41は、図31の光検出器16E1〜16E3,16F1〜16F3の各々の分割線と、光ビーム11,12による光スポットとの位置関係を示す図である。
図41を参照して、光スポットS31A〜S31Dは回折格子3で回折した光ビーム11の+1次光のうち、分割部14A〜14Dをそれぞれ通過した光ビームにより形成されるスポットである。光スポットS32A〜S32Dは回折格子3で回折した光ビーム11の−1次光のうち、分割部14A〜14Dをそれぞれ通過した光ビームにより形成されるスポットである。光スポットS41A〜S41Dは回折格子3で回折した光ビーム12の+1次光のうち、分割部14A〜14Dをそれぞれ通過した光ビームにより形成されるスポットである。光スポットS42A〜S42Dは回折格子3で回折した光ビーム12の−1次光のうち、分割部14A〜14Dをそれぞれ通過した光ビームにより形成されるスポットである。
なお、図41では光検出器16E2,16F2上の各々には4つの点が示されているが、これらの点の一部または全部が重なるようにホログラム42の回折角度が設定されてもよい。
2分割検出器16A,16Bは光ビーム11,12に共通に用いる。光ビーム11,12の各々のサブビームによるプッシュプル信号は以下の式(13)に従う。なお、以下において出力信号I16E1〜I16E3,I16F1〜I16F3は受光素子16E1〜16E3,16F1〜16F3からそれぞれ出力される信号である。
(I16E1+I16E2+I16E3)−(I16F1+I16F2+I16F3) …(13)
メインビームによるプッシュプル信号から、サブビームのプッシュプル信号を差し引くことによって、DPP法によるトラッキングエラー信号を得ることができる。
また、実施の形態3の光ピックアップでは、実施の形態1,2と同様にDPD法によるトラッキングエラー信号の検出も行なうことができる。実施の形態3においてDPD法によるトラッキングエラー信号は、以下の式(14)により表わされる。
phase((I16AS+I16CS)−(I16BS+I16DS)) …(14)
実施の形態3の光ピックアップでは、上記位相差が0になるように対物レンズ9を移動させることによりトラッキングサーボを行なう。
また、光ディスクに記録された情報信号は2分割検出器16A〜16Dの出力により生成され、(I16AS+I16BS+I16CS+I16DS+I16AR+I16BR+I16CS+I16DS)となる。
また、ホログラム41は、ホログラム41を通過する光ビームの回折効率が、ホログラム41に入射する光ビームの偏光状態によって変化する構成を有することが好ましい。その理由は実施の形態1と同様であり、光ディスク10に対してより強い光ビームを照射することができるので、高速に情報の記録を行なうことができるためである。
以上のように実施の形態3によれば、第1および第2のホログラムの各々が光ディスクのラジアル方向およびトラック方向のそれぞれに平行な方向の2つの分割線によって4つの領域に分割される。これにより、実施の形態3では第1の波長の光および第2の波長の光の両方に対してダブルナイフエッジ法によるフォーカスエラー信号の生成が可能になる。
また、実施の形態3によれば、第2のホログラムにおいて4つの分割領域の各々がさらに、トラック方向に平行な分割線により2つの部位に分割され、各部位には互いに符号が逆となる球面収差が付与される。これによりこれら2つの部位を通過する第2の波長の光が互いに反対の方向に拡大する。よって実施の形態3によれば第1の波長の光に対してフォーカスオフセットを低減するように第1および第2のホログラムを調整した状態で第2の波長の光に対してもフォーカスオフセットを低減することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,2,101,102 半導体レーザ、3,103 回折格子、4,5,41,42,51,52,104,105 ホログラム、4A〜4D,14A〜14D,15A〜15D 分割部、5A,5B,5B1,5B2 領域、6,106,16E1〜16E3,16F1〜16F3,61,62 光検出器、6A,6B,16A〜16D 2分割検出器、6C〜6F 3分割検出器、6A1,6A2,6B1,6B2,6C1〜6C3,6D1〜6D3,16AS,16AR,16BS,16BR,16CS,16CR,16DS,16DR 受光素子、7,107A,107B 基板、8,108 コリメートレンズ、9,109 対物レンズ、10,110 光ディスク、11,12,111,112 光ビーム、12A 光スポット、12AC,12BC 中心、13,113 集積化レーザユニット、14 パッケージ、15 端子、15A1,15A2,15B1,15B2,15C1,15C2,15D1,15D2 部位、17 部材、50,50A,150 光ピックアップ、J 光軸、L1,L2,L11,L12,L21,L22 分割線、L,M,N,Lr,Lt,N1,N2,O1,O2 線分、P,Q 点、11M,11S1,11S2,12A,P1,P2,F1,F2,SA,SB,SC1,SC2,SD1,SD2,Fa1〜Fa4,Fb1〜Fb4,Fc1〜Fc4,Fd1〜Fd4,S11A,S11B,S12A,S12B,S21A,S21B,S22A,S22B,S31A-S31D,S32A-S32D,S41A-S41D,S42A-S42D 光スポット、S1,S2,T1,T2,tua,tub 方向、u1〜u4,v1〜v4 位置。