本発明は、光ディスクの再生又は記録に用いられる光検出器、回折格子、光ピックアップ及び光ディスク装置に関する。
従来、2波長マルチレーザを搭載し、トラッキングエラー信号の生成にDPP方式、フォーカシングエラー信号の生成に非点収差方式を用いた光ピックアップが知られている。このような光ピックアップでは、光検出器の検出領域のパターンが3行2列とし、各検出領域からの信号によりトラッキングエラー信号やフォーカシングエラー信号が生成される (例えば、特許文献1(特開2003−272218号公報))。
また、特許文献1に記載された3行2列の検出領域のパターンを簡素化し、光検出器の低コスト化を図った技術が開示されている(例えば、特許文献2(特開2005−85369号公報))。
特開2003−272218号公報(第13項、第5図、第6図)
特開2005−85369号公報(第9項、第2図)
しかしながら、2波長マルチレーザ光源を使用する場合、DVDとCDの光路がほぼ一致するため、DVD専用の回折格子には、DVDの光ビームだけでなくCDの光ビームも入射し、CD専用の回折格子には、CDの光ビームだけでなくDVDの光ビームも入射する。その結果、例えば、DVDの光ビームはDVD専用の回折格子でサブ光ビーム1が生成され、かつ、CD専用の回折格子でサブ光ビーム2が生成されることになる。この場合、サブ光ビーム1はトラッキング制御に使用されるが、サブ光ビーム2は余計な外乱成分となってしまう。つまり、それぞれの回折格子を光ビームが通過する際に余計な外乱成分が発生してDVD用・CD用それぞれの光検出器に入光し、外乱成分が余計な信号成分として加算されてしまうおそれがある。
サブ光ビーム1とサブ光ビーム2が光検出器上でオーバーラップする領域が発生すると、このオーバーラップした領域でサブ光ビーム1とサブ光ビーム2は光路長が僅かに変化するだけで干渉することになる。このため、例えばディスクチルト、面ぶれなどが発生すると、光検出器で検出される光量が大きく変動し、トラッキングエラー信号やフォーカシングエラー信号の変動を引き起こし、安定した位置制御が困難となり、再生、記録を良好に行うことが出来なくなるおそれがある。
特許文献1及び特許文献2においてもこの問題は変わらない。例えば、特許文献1記載の技術では、図14に示すように、DVD用の検出領域(3行2列の検出領域のうち左側の検出領域)で、本来のサブ光ビーム1だけでなくサブ光ビーム2がオーバーラップすることになる。また、CD用の検出領域(3行2列の検出領域のうち右側の検出領域)でも、本来のサブ光ビーム1だけでなくサブ光ビーム2がオーバーラップする。
また、例えば特許文献2記載の技術では、図2(B)に示すように、CD専用の回折格子によってDVD光ビームからサブ光ビーム2として050、051が生成され、DVD専用の回折格子によってCD光ビームから光ビーム2として052、053が生成される。この結果、本来のサブ光ビーム1だけでなくサブ光ビーム2がオーバーラップする領域が発生する。
本発明は上記のような課題に鑑みなされたものであり、光学的情報記録媒体の安定した再生動作又は記録動作を実現できる光検出器、回折格子、光ピックアップ、光ディスク装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本願発明の光検出器は、第1の波長のレーザ光源から出射され、第1の回折格子及び第2の回折格子で分岐された光ビームを受光する第1の受光領域と、第1の波長よりも長波長である第2の波長のレーザ光源から出射され、第1の回折格子及び第2の回折格子で分岐された光ビームを受光する第2の受光領域と、を備える。また、第1の受光領域は、第1の波長のレーザ光源から光ビームが出射されたとき、前記第1の回折格子で分岐された光ビームは入光し、かつ、第2の回折格子で分岐された光ビームは入光しない位置に配置され、第2の受光領域は、第2の波長のレーザ光源から光ビームが出射されたとき、第1の回折格子で分岐された光ビームは入光せず、かつ、第2の回折格子で分岐された光ビームは入光する位置に配置される。
また、本願発明の回折格子は、第1の波長のレーザ光源から出射された光ビームを少なくとも3本の光ビームに分岐する第1の格子パターンと、第1の波長よりも長波長である第2の波長のレーザ光源から出射された光ビームを少なくとも3本の光ビームに分岐する第2の格子パターンと、を備える。第1の格子パターンの格子溝の幅と前記第2の格子パターンの格子溝の幅を異ならせている。
また、本願発明の光ピックアップは、第1の波長の光ビームを出射する第1のレーザ光源と、第1の波長よりも長波長である第2の波長の光ビームを出射する第2のレーザ光源と、第1のレーザ光源又は前記第2のレーザ光源から出射された光ビームを少なくとも3本の光ビームに分岐する上記の回折格子と、光ビームを光学的情報記録媒体に集光する対物レンズと、光学的情報記録媒体からの反射光を受光する上記の光検出器とを備える。
また、本願発明の光ディスク装置は、上記の光ピックアップと、情報信号を入力する情報入力部と、情報入力部から入力された情報から光学的情報記録媒体に記録する信号を生成し、光ピックアップに出力する記録信号生成部とを備える。
また、本願発明の光ディスク装置は、上記の光ピックアップと、情報信号を入力する情報入力部と、情報入力部から入力された情報から光学的情報記録媒体に記録する信号を生成し、光ピックアップに出力する記録信号生成部とを備える。
本発明によれば、光学的情報記録媒体の安定した再生動作又は記録動作を実現できる光検出器、回折格子、光ピックアップ、光ディスク装置の提供が可能になる。
本発明の各実施例では、DVD(デジタルバーサタイルディスク)とCD(コンパクトディスク)の記録または再生に対応した光ディスク装置、この光ディスクに搭載する光ピックアップ、この光ピックアップに搭載する光検出器、回折格子を例に説明する。
以下、図に示す実施例に基づいて詳細に説明する。なお、これによりこの発明が限定されるものではない。
本発明における実施例1について図を用いて詳細に説明する。ここでは光検出器について説明する。
図1は実施例1における光検出器を図示したものである。光検出器001には6個の検出領域002、003、004、005、006、007がある。また、各検出領域は4分割されており検出領域002は検出面A、B、C、D、検出領域003はE1、E2、E3、E4、検出領域004はF1、F2、F3、F4、検出領域005は、A'、B'、C'、D'、検出領域006はE'1、E'2、E'3、E'4、検出領域007は、F'1、F'2、F'3、F'4をもつ。
検出領域002、003、004はDVDの光ビームを受光する。検出領域002はDVDメイン光ビーム010を受光し、検出領域003、004はDVDサブ光ビーム011、012を各々受光するものである。
また検出領域005、006、007はCDの光ビームを受光する。検出領域005はCDメイン光ビーム013を受光し、検出領域006、007はCDサブ光ビーム014、015を各々受光するものである。
DVDおよびCDでは、フォーカシングエラー信号の生成に差動非点収差方式、トラッキングエラー信号の生成にDPPを採用することを想定している。尚、差動非点収差方式、は公知の技術なので詳細の説明は省略する。光検出器001より得られる検出信号は、DVD/CD光学系ともにメイン光ビームの総光量、フォーカシングエラー信号、トラッキングエラー信号が検出される。検出信号は以下の数1〜6の演算式にて検出することが出来る。
DVDメイン総光量=A+B+C+D (数1)
CDメイン総光量=A'+B'+C'+D' (数2)
DVDフォーカシング誤差信号=[(A+C)−(B+D)]+k×{[(E1+E3)−(E2+E4)]+[(F1+F3)−(F2+F4)]} (数3)
CDフォーカシング誤差信号=[(A'+C')−(B'+D')]+k'×{[(E'1+E'3)−(E'2+E'4)]+[(F'1+F'3)−(F'2+F'4)]} (数4)
DVDトラッキング誤差信号=[(A+D)−(B+C)]−k×{[(E1+E4)−(E2+E3)]+[(F1+F4)−(F2+F3)]} (数5)
CDトラッキング誤差信号=[(A'+D')−(B'+C')]−k'×{[(E'1+E'4)−(E'2+E'3)]+[(F'1+F'4)−(F'2+F'3)]} (数6)
なお、k、k'はメイン光ビームとサブ光ビームの光量比を補正する係数である。
さて、2波長マルチレーザを搭載し、トラッキングエラー信号の生成にDPPを採用する場合、図1のような3行2列の検出領域が必要となる。これは、2波長マルチレーザのDVD光ビームを出射する発光点位置とCD光ビームを出射する発光点位置とが異なるため2列の検出領域が必要であり、またDVD、CD共にDPPによるトラッキングエラー信号を生成するには、サブ光ビームが必要なためである。
DPPでは、メイン光ビームとサブ光ビームを生成するために回折格子を用いている。DVDとCDでは案内溝間隔が異なるため、DVDとCDとでディスク上のメイン光ビームとサブ光ビームの最適な照射位置が異なってしまう。このため、DVDで用いる回折格子とCDで用いる回折格子の格子パターンは異なるものを用いる必要がある。
また2波長マルチレーザ光源を使用する場合、DVDとCDの光路がほぼ一致する。このため、回折格子は必然的にDVDとCDの同一の光路上に配置しなければならない。
つまりDVD専用の回折格子には、DVD光ビームだけでなく、CD光ビームも入射し、CD専用の回折格子には、CD光ビームだけでなく、DVD光ビームも入射する。このためDVD光ビームはDVD専用の回折格子でDVDサブ光ビーム011、012が生成され、かつCD専用の回折格子で外乱光ビーム020、021が生成されてしまう。またCD光ビームはCD専用の回折格子でCD光ビーム014、015が生成され、かつDVD専用の回折格子で外乱光ビーム022、023が生成される。
このような外乱光ビームが光検出器上で例えば、サブ光ビームなどと重なると干渉によりトラッキングエラー信号、フォーカシングエラー信号を大きく変動させる要因となってしまう。この変動を回避するように、本実施例の光検出器は、外乱光ビームとメイン光ビーム、サブ光ビームが光検出器上で重ならないように考案されたものである。
本実施例では、所定の間隔を空けて3個1列に配置されたDVD光ビームを受光する検出領域002、003、004と、さらに検出領域002、003、004の隣に所定の間隔を空けて3個1列に配置されたCD光ビームを受光する検出領域005、006、007を具備する光検出器において、検出領域002、003、004と検出領域005、006、007との3個の検出領域の間隔を異ならせた。
より具体的には、検出領域002、003、004が、DVD用のレーザ光源から光ビームが出射されたとき、DVD用の回折格子で分岐された011、012が入光し、かつ、CD用の回折格子で分岐された光ビーム020、021が入光しない位置に配置するようにした。
即ち、CD用の回折格子により回折されたDVD光ビームが検出領域002〜004の領域外、具体的には検出領域002と003及び検出領域002と004の間の領域に照射され、DVD用の回折格子により回折されたCD光ビームが検出領域013〜015の領域外に照射されるような配置とした。図1に示すように光ビームが入射されるためには回折格子の構造を工夫する必要があるが、これについては後述する。
また、本実施例の光検出器では、DVD光ビームよりも長波長であるCD光ビームの検出領域005、006、007の3個の検出領域の間隔を小さくしたものである。
図2は従来例として特許文献2の光検出器の例を図示したものである。左図のAは理想的な回折格子を用いた場合の光検出器030上の光スポット配置を示し、右図のBは実際の回折格子を用いた場合の光検出器030上の光スポット配置を示したものである。
まず図2のAについて説明する。
光検出器030は3個の検出領域031、032、033で構成されている。検出領域031は検出面A、B、C、D、E、F、検出領域032はG1、H1、I1、J1、検出領域033はG2、H2、I2、J2をもつ。
検出領域031はDVDメイン光ビーム040とCDメイン光ビーム043を受光し、検出領域032、033は各々DVDサブ光ビーム041とCDサブ光ビーム044、DVDサブ光ビーム042とCDサブ光ビーム045を受光するものである。
光検出器030は光検出器001に対し、検出領域を6個から3個に減らす構成をとっている。
また光検出器030はDVDでは、フォーカシングエラー信号の生成に差動非点収差方式、トラッキングエラー信号の生成にDPP、CDでは、フォーカシングエラー信号の生成に非点収差方式、トラキングエラー信号の生成にDPP方を採用していることを想定している。このため検出領域044、045はDVDサブ光ビームのみに対して4分割の構成となっており、CDサブ光ビームに対しては2分割の構成となっている。
さて、2波長マルチレーザを搭載し、トラッキングエラー信号の生成にDPPを採用する場合、先述したように外乱光ビームが発生する。このため図2のBのようにCD専用の回折格子によってDVD光ビームから外乱光ビーム050、051が生成され、DVD専用の回折格子によってCD光ビームから外乱光ビーム052、053が生成される。
これら外乱光ビームはサブ光ビームとオーバーラップする領域が発生する。例えば、DVDサブ光ビーム041と外乱光ビーム050とがオーバーラップする領域が発生することが分かる。このように光検出器上で光ビームがオーバーラップすると、干渉により光量が大きく変動してしまう。このため、サブ光ビームによる検出信号を利用するトラッキングエラー信号、フォーカシングエラー信号が大きく変動する要因となり、安定した位置制御動作が出来なくなる。
なお、DVD(660nm)はCD(785nm)よりも短波長の光ビームであるため、外乱光ビーム050、051は、DVDサブ光ビーム041、042よりも回折角度が僅かに小さくなるものである。
さて、2本の光ビームの光強度をa2、b2とした場合、その2本の光ビームが干渉によって変動する光量Iは数7で表されるような関係がある。
I=a2+b2+2abcos(kσ) (数7)
ここでkは波数、δは2本の光ビームの光路長差を示すものである。
実際の回折格子では、外乱光ビームは僅かに発生するだけである。例えば、回折格子に入射する光量を100とした場合、メイン光ビームを91、サブ光ビームを8、外乱光ビームをわずかに1だけ発生するものだとする。メイン光ビームに対して外乱光ビームは1%程度だが、サブ光ビームに対して外乱光ビームは10%程度ある。この関係を数7に当てはめる(a2=8、b2=1)、光量Iは光路長変動の最悪を考えると最大約15、最小約3程度変動することになる。つまりサブ光ビームの光量が干渉により50%減ったり増えたりすることになり、安定したフォーカシングエラー信号とトラッキングエラー信号を生成することが困難になってしまう。
実施例1ではフォーカシングエラー信号の生成に差動非点収差方式を使用することを想定したため、検出領域003、004、006、007は4分割させているが、メイン光ビームのみを使用する非点収差方式を用いる場合は、もちろん上下に2分割させるだけでも良い。例えば、E1とE4、E2とE3を分割しない構成でもなんら構わない。
なお、光検出器001では、DVDメイン光ビーム010、CDメイン光ビーム013を受光する検出領域002、005は4分割されており、DVD−ROM、CD−ROMなどを再生するときに、トラッキングエラー信号の生成にDPDを用いることもできる。
実施例2ではDVDとCDの記録および再生が可能な光ディスクドライブに対応した2波長マルチレーザ搭載光ピックアップについて説明する。この光ピックアップでは、実施例1に記載した光検出器を備えている。
図3は光ピックアップ070の光学系構成を示す図である。情報の記録または情報の再生をDVD系の光ディスクに行うには、一般的に波長約660nmの半導体レーザを用いるのが一般的である。またCD系の光ディスクに行うには、一般的に波長約785nmの半導体レーザをもちいるのが一般的である。2波長マルチレーザ071はDVD用の波長約660nmの光ビームを発射するDVDレーザチップ072と、CD用の波長約785nmの光ビームを発射するCDレーザチップ073の2個のレーザチップを搭載したレーザ光源である。
さて、まずDVD光学系を説明する。2波長マルチレーザ071内に具備されたDVDレーザチップ072からDVD光ビームが発散光として出射される。図中の点線074はDVD光ビームの光路を示すものである。DVDレーザチップ072から出射したDVD光ビームは回折格子060に入射する。
回折格子060は、光ビームを3本に分岐させる機能があり、3本の光ビームはDPPによるトラッキングエラー信号や差動非点収差法によるフォーカシングエラー信号の生成に用いられる。回折格子060はDVD専用の回折格子とCD専用の回折格子を張り合わせたもので、DVD専用の回折格子であるDVD格子パターン076とCD専用の回折格子であるCD格子パターン077が配置されたものである。
このため回折格子060に入射したDVD光ビームはDVD格子パターン076によりDVDのDPPによるトラッキングエラー信号を生成するのに最適な3本の光ビームに分岐されることになる。DVD格子パターン076を通過したDVD光ビームはCD格子パターン077を通過する。CD格子パターン077は理想的にはDVD光ビームを100%透過されるように、溝深さ、デューティーなどを設定したとしても、実際には僅かに外乱光ビームを発生させる。
CD格子パターン077を通過したDVD光ビームはビームスプリッタ078を反射し、コリメートレンズ079に導かれ略平行な光ビームに変換される。コリメートレンズ079を出射したDVD光ビームは、立ち上げミラー080を図中z方向(紙面に垂直な方向)に反射しアクチュエータ(図示せず)に搭載された対物レンズ081により光ディスク(図示せず)上に集光される。
光ディスクでDVD光ビームは反射し、対物レンズ081、立ち上げミラー080、コリメートレンズ079、ビームスプリッタ078、検出レンズ082を経て、光検出器083に到達する。光ビームにはビームスプリッタ078を透過するとき所定の非点収差が与えられ、差動非点収差法による光ディスクのフォーカシングエラー信号の検出に使用される。検出レンズ082は非点収差の方向を所定の方向に回転させると同時に光検出器083上での光スポットの大きさを決める働きがある。光検出器083に導かれたDVD光ビームは、光ディスク上に記録されている情報信号の検出と、トラッキングエラー信号およびフォーカシングエラー信号など光ディスク上光スポットの位置制御信号の検出に使用される。
次にCD光学系を説明する。2波長マルチレーザ071内に具備されたCDレーザチップ073からCD光ビームが発散光として出射される。図中の一点鎖線075はCD光ビームの光路を示すものである。CDレーザチップ073から出射したCD光ビームは回折格子060に入射する。DVD光ビームと比べCD光ビームは出射角度が傾いているが、これは、DVDレーザチップ072とCDレーザチップが図中x方向に110μm離れて配置されているためである。このためDVD光ビームの光軸を対物レンズ081の中心に垂直入射することを想定するとCD光ビームの光線中心が傾くことになる。またDVDレーザチップとCDレーザチップの間隔である110μmはレーザメーカが一般的に2波長マルチレーザに採用している間隔である。
回折格子060は、前述したように光ビームを3本に分岐させる機能があり、3本の光ビームはDPPによるトラッキングエラー信号や差動非点収差法によるフォーカシングエラー信号の生成に用いられる。回折格子060に入射したCD光ビームはまずDVD格子パターン076に入射する。DVD格子パターン076は理想的にはCD光ビームを100%透過されるように、溝深さ、デューティーなどを設定したとしても、実際には僅かに外乱光ビームを発生させる。DVD格子パターン076を通過したCD光ビームはCD格子パターン077に入射する。CD光ビームはCD格子パターン077によりCDのDPPによるトラッキングエラー信号を生成するのに最適な3本の光ビームに分岐される。
CD格子パターン077を通過したCD光ビームはビームスプリッタ078を反射し、コリメートレンズ079に導かれ略平行な光ビームに変換される。コリメートレンズ079を出射したCD光ビームは、立ち上げミラー080を図中z方向(紙面に垂直な方向)に反射しアクチュエータ(図示せず)に搭載された対物レンズ081により光ディスク(図示せず)上に集光される。
光ディスクによりCD光ビームは反射し、対物レンズ081、立ち上げミラー080、コリメートレンズ079、ビームスプリッタ078、検出レンズ082を経て、光検出器083に到達する。光ビームにはビームスプリッタ078を透過するとき所定の非点収差が与えられ、差動非点収差法による光ディスクのフォーカシングエラー信号の生成に使用される。検出レンズ082はCD光ビームに対しても、非点収差の方向を所定の方向に回転させると同時に光検出器083上での光スポットの大きさを決める働きがある。光検出器083に導かれたCD光ビームは、光ディスク上に記録されている情報信号の検出と、トラッキングエラー信号およびフォーカシングエラー信号など光ディスク上に集光された光スポットの位置制御信号の検出に使用される。
CD光ビームはCDレーザチップ073がDVDレーザチップ072と配置位置が異なるため、光検出器083上でDVD光ビームと異なる位置に集光される。このため、2波長マルチレーザを用いた光ピックアップでは、2列の光検出器を使用する必要がある。
以上のように2波長マルチレーザを搭載した光ピックアップでは、DVD光ビームとCD光ビームの光路が略一致するため、DVD光ビームはDVD格子パターンだけでなくCD用格子パターンを通過せざるを得ない。またCD光ビームはCD格子パターンだけでなくDVD格子パターンを通過さざるを得ない。このため外乱光が発生することが避けられない。
本実施例の光ピックアップでは実施例1で説明したように光検出器上で外乱光ビームが他の光と干渉することを回避するため、従来の光ピックアップと同様に高精度で安定したトラッキングエラー信号およびフォーカシングエラー信号の検出を可能にしている。
また実施例2ではDVDとCDの記録および再生が可能な光ディスクドライブに対応した光ピックアップについて説明したが、もちろんCDや、青色半導体レーザを用いた次世代の高密度光ディスクドライブ(BDやHD−DVD)に対応した光ピックアップにも適用が可能である。
なお、通常の光ピックアップを用いた情報の記録および再生装置においては、安定した記録再生処理を行うために光ディスクに照射する光ビームの光量を一定に制御する必要があり、光ピックアップ内にはレーザ光源から出射する光ビームの光量を検出する手段(一般的にフロントモニタと言う)を有しており、その検出された光量をレーザ光源にフィードバックすることで光ディスクに照射する光ビームの光量を正確に制御している。しかし本実施例とは直接関係がないため触れていないが、フロントモニタが配置されている光ピックアップにおいても本実施例の光ピックアップが使用されてもなんら構わない。
また、図2ではDVD光ビームとCD光ビームはビームスプリッタ078に45度入射する構成を図示してある。しかし45°よりも狭い角度40度や35度などの入射角度にしてもなんら構わない。このように入射角度を45度よりも小さくすることで、DHミラーの反射透過性能を決める反射透過膜特性の設計がしやすくなるという効果が得られるものである。
また、本実施例では、DVD回折パターンとCD回折パターンを1個の回折格子に形成させたが、もちろん、DVD専用の回折格子、CD専用の回折格子と2個回折格子を配置してもなんら問題ない。
実施例3では回折格子により発生する外乱光ビームについて図を用いて説明する。
図4は回折格子060により回折される光ビームの概略図を示すものである。図4は理想的な場合を想定したものである。(A)はDVD光ビームが入射した場合、(B)はCD光ビームが入射した場合を示している。
DVDとCDの両方を記録するには、回折格子はDVDとCDでトラッキングエラー信号の生成に最適な回折格子が異なるため、回折格子060はDVD格子パターン076とCD格子パターン077の2個の格子パターンが形成されている。
まず(A)について説明する。DVD光ビームが回折格子060に入射するとDVD格子面076にて、0次回折光(回折されずそのまま透過)と、±1次回折光が発生する。理想的な場合、DVD格子面076にて3本に分岐された0、±1次回折光はCD格子パターン077で回折することなく透過する。このため、回折格子060に入射したDVD光ビームは回折格子060を出射した時には3本の光ビームが出射することになる。なおこの0次回折光はメイン光ビーム010、±1次回折光はサブ光ビーム011、012に相当するものである。
次に(B)について説明する。CD光ビームが回折格子060に入射すると理想的なDVD格子面076では回折されること無く透過する。CD格子パターン077に入射したときに、0次回折光(回折されずそのまま透過)と、±1次回折光が発生する。このため、回折格子060に入射したCD光ビームは回折格子060を出射した時には3本の光ビームが出射することになる。なおCD光学系の0次回折光はメイン光ビーム013、±1次回折光はサブ光ビーム014、015に相当するものである。
またCD格子パターン077はDVD格子パターン076よりも格子ピッチが広くなっているためDVDの±1次回折光ビームよりもCDの±1次回折光ビームの方が回折角度は狭くなっている。
DVD格子パターンはCD光ビームの波長(785nm)では回折しないように、また、CD格子パターンはDVD光ビームの波長(660nm)では回折しないように波長選択性を持たせている。この排他的な作用(波長選択性)は、通常の回折格子よりも溝深さを深くするとともに格子間隔のデューティー比を0.5からずらした格子パターンとすることなどで実現することが出来る。
しかし実際は製造誤差(バラツキ)などにより完璧に波長選択性を持たせることは不可能である。
図5は回折格子060により回折される光ビームの概略図を示すものである。図5は実際の場合を想定したものである。(A)はDVD光ビームが入射した場合の回折、(B)はCD光ビームが入射した場合の回折を示している。
まず図4の理想的な場合と異なり、(A)のように回折格子060に入射したDVD光ビームはCD格子パターン077で回折し、不要な光である外乱光ビームが発生する。CD格子パターン077はDVD格子パターン076よりも格子ピッチが広くなっているためこの外乱光ビームは±1次回折光ビームよりも出射角度が小さいものとなっている。
なお、DVD光ビームがCD格子パターン077による回折によって発生する外乱光ビームは、外乱光ビーム020、021に相当するものである。
同様に図4の理想的な場合と異なり、(B)のように回折格子060に入射したCD光ビームはDVD格子パターン076で回折し、不要な光である外乱光ビームが発生する。DVD格子パターン076はCD格子パターン077よりも格子ピッチが狭くなっているためこの外乱光ビームは±1次回折光ビームよりも出射角度が大きいものとなっている。
なお、CD光ビームがDVD格子パターン076による回折によって発生する外乱光ビームは、外乱光ビーム022、023に相当するものである。また、一般的に回折光ビームの出射角度θは数8で示される関係がある。
dsinθ=nλ(n=0.1.2・・・・・) (数8)
ここでdは回折格子パターンの格子ピッチ、λは波長、nはn次の回折という意味を示している。つまり±1次回折光ビームの出射角度θは波長が大きいほど、大きく、格子ピッチdが大きいほど小さくなる関係がある。
このように同一の光路に2枚の格子面を持つ回折格子、または回折格子を2枚置くような構成では、外乱光ビームの発生が避けられない。このため、図1で説明した光検出器では、外乱光ビームが光検出器上の干渉に寄与しないように検出領域の配置を工夫していることは説明した。
なお、本実施例では回折格子060の入射面に近い側にDVD格子パターン076を配置し、出射面に近い側にCD格子パターン077を配置したが、もちろんDVD格子パターンを回折格子の出射面に近い側に配置したとしてもなんら構わない。
次に、本実施例の回折格子の詳細について説明する。図6は回折格子060の格子パターンを示すものである。(a)はDVD格子パターン076、(b)はCD格子パターン077を示すものである。なお、DVD格子パターンはDVD±R/RWに対応し、CD格子パターンはCD−R/RWに対応したものである。
DVD格子パターン076は(a)で示すように格子ピッチがd1であり、そのピッチの角度がθDVDだけ傾けてられている。これに対し、CD格子パターン077は(b)で示すように格子ピッチがd2であり、そのピッチの角度がθCDだけ傾けられている。d1とd2は異なるピッチであり、光検出器上001で外乱光ビームとサブ光ビームが重ならないようにd1とd2のピッチを変えたところに特徴がある。特にd1をd2よりピッチを小さく設定すると光検出器上で検出領域を小さく配置できるという効果が得られる。このことは後で説明する。
DVD格子パターン076とCD格子パターン077は各々異なる角度(θDVD、θCD)で傾けられている。これはDPPを行う場合の最適な角度がDVDとCDで異なるためである。
つまり本実施例の回折格子は2個の格子パターンを貼り合わせたもので、格子パターンは互いに格子ピッチと、ピッチの角度を異ならせている。このような回折格子を用いることで、DVDとCDで互いに外乱光ビームによる干渉のない、DPPによる高精度で安定したトラッキングエラー信号を検出できる効果が得られる。
次に図7を用いDVDとCDで最適なDPPを行うためには各格子パターンのピッチ角度が異なる理由を説明する。図7は光ディスク上のスポット配置を示したものである。(A)はDVD−Rを示し、(B)はCD−Rを示すものである。DVD−Rは(A)のように案内溝080が形成されている。この案内溝080に沿ってデータを記録するものである。DVD−Rはこの案内溝080の間隔が0.74μmと極めて小さい。DPPは前述したように光ディスク上のメイン光スポットに対してサブ光スポットを光ディスク半径方向に案内溝の1/2だけ空けて配置する技術である。このため、(A)でもメイン光スポット081に対してサブ光スポット082、083を光ディスク半径方向(図中左右)に案内溝の1/2だけ空けて配置している。このためDVD−Rでは案内溝と平行な方向に対してメイン光スポット081とサブ光スポット082,083の成す角度がθDVDだけ傾くことになる。
さて(B)のCD−RではDVD−Rと較べ案内溝090の間隔が1.6μmと大きい。このためDPPを行うには図のようにメイン光スポット091に対してサブ光スポット092、093を光ディスク半径方向(図中左右)に案内溝の1/2だけ空けて配置する必要がある。CD−Rでは案内溝と平行な方向に対してメイン光スポット091とサブ光スポット092,093の成す角度がθDVDと異なる角度θCDだけ傾くことになる。つまりDVD−RとCD−Rでは案内溝間隔が異なるため、DPPに最適なディスク上3ビーム角度も異なるものである。このような理由のため、DVD−RとCD−Rを2波長マルチレーザ搭載の光ピックアップで記録を実現するには、2枚の格子パターンが必要となる。
実施例4ではスーパーマルチ対応光ディスクドライブに対応した2波長マルチレーザ搭載光ピックアップに搭載する回折格子について説明する。実施例4では実施例3のDVD格子パターン076とは異なるDVD格子パターン099を搭載したところが新しく、これによって、スーパーマルチ対応光ディスクドライブに搭載することを実現した光ピックアップを実現することができる。
さて、DVDには複数の規格、DVD―R/RW、DVD−RAM、DVD−ROMなどがある。これらのDVDの規格およびCDの規格全てに対応することをスーパーマルチ対応光ディスクドライブという。特にDVD−R/RWとDVD−RAMは案内溝間隔が異なる規格のディスクである。DPPは前述したようにメイン光ビームとサブ光ビームをディスク上の所定位置に照射する必要があるため、案内溝間隔毎にメイン光ビームとサブ光ビームの照射位置が異なる。このため、DPPは案内溝間隔の異なる規格のディスクに対応できないという課題があった。
さて、図8は回折格子060の格子パターンを示すものである。(a)はDVD格子パターン099、(b)はCD格子パターン077を示すものである。CD格子パターンは実施例3と同じ格子パターンなので説明は省略する。
DVD格子パターン099は図6(a)で示すようにDVD格子パターン076は格子ピッチがd1であるが、ピッチの角度は角度がついていない。このため、DVD格子パターンとCD格子パターンの相対角度はθCDだけ傾くことになる。d1とd2は異なるピッチであり、光検出器上001で外乱光ビームとサブビームが重ならないようにd1とd2のピッチを設定したところに特徴がある。特にd1をd2よりピッチを小さく設定すると光検出器上で検出領域を小さく配置できるという効果が得られる。このことは後で説明する。
DVD格子パターン099は3つの領域A、B、Cに分割されており、各々は90度ずつ位相を異ならせた格子パターン(領域Aと領域Cとでは光ビームに対して与える位相変化がそれぞれほぼ90度ずれており、領域Bと領域Cとでは光ビームに対して与える位相変化がそれぞれほぼ90度ずれている。領域A、Bは回折パターン099の両端にそれぞれ配置され、領域Cは領域AとBの間に配置されている)であり、この回折格子を用いることで位相差DPPによるトラッキングエラー信号を検出できる。つまりDVD−R/RWとDVD−RAMの両方からトラッキングエラー信号が検出できる。このようにDVD格子パターン099と格子角度θCDだけ傾けた直線状の回折格子を張り合わせることで、スーパーマルチ対応の光ピックアップを実現できる。
実施例5ではスーパーマルチ対応光ディスクドライブに対応した2波長マルチレーザ搭載光ピックアップについて説明する。
図9は光ピックアップ100の光学系構成を示す図である。実施例2の光学系と機能が同じものには同じ番号を付与した。
実施例2と同様に2波長マルチレーザ071はDVD用の波長約660nmの光ビームを発射するDVDレーザチップ072と、CD用の波長約785nmの光ビームを発射するCDレーザチップ073の2個のレーザチップを搭載したレーザ光源である。
さて、まずDVD光学系を説明する。2波長マルチレーザ071内に具備されたDVDレーザチップ072からDVD光ビームが発散光として出射される。図中の点線074はDVD光ビームの光路を示すものである。DVDレーザチップ072から出射したDVD光ビームはコリメートレンズ079に入射し略平行な光ビームに変換される。続けて光ビームは回折格子060に入射する。回折格子060は位相差DPPにより最適なトラッキングエラー信号が生成できるDVD格子パターン099と、CDでDPPによるトラッキングエラー信号が生成できるCD格子パターン077が配備されている。
このため回折格子060に入射したDVD光ビームはDVD格子パターン099により位相差DPP法に最適な3本の光ビームに分岐されることになる。DVD格子パターン099を通過したDVD光ビームはCD格子パターン077を通過する。CD格子パターン077は理想的にはDVD光ビームを100%透過されるように設計されているが、実際には僅かに外乱光ビームを発生させる。
CD格子パターン077を通過したDVD光ビームは、ビームスプリッタ078を反射、立ち上げミラー080を図中z方向(紙面に垂直な方向)に反射しアクチュエータ(図示せず)に搭載された対物レンズ081により光ディスク(図示せず)上に集光される。
光ディスクによりDVD光ビームは反射し、対物レンズ081、立ち上げミラー080、ビームスプリッタ078、検出レンズ105、検出レンズ107を経て、光検出器082に到達する。DVD光ビームにはビームスプリッタ078を通過するとき所定の非点収差が与えられ、差動非点収差法によるフォーカシングエラー信号の生成に使用される。検出レンズ105と検出レンズ107は非点収差の方向を所定の方向に回転させると同時に光検出器082上での光スポットの大きさを決める働きがある。
また2個の検出レンズを使用することで、ビームスプリッタ078と光検出器082の間隔を小さくできるという効果も得られる。
光検出器082に導かれたDVD光ビームは、光ディスク上に記録されている情報信号の検出と、トラッキングエラー信号およびフォーカシングエラー信号など光ディスク上に集光された光スポットの位置制御信号の検出に使用される。
次にCD光学系を説明する。2波長マルチレーザ071内に具備されたCDレーザチップ073からCD光ビームが発散光として出射される。図中の点線075はCD光ビームの光路を示すものである。図中の一点鎖線075はCD光ビームの光路を示すものである。CDレーザチップ073から出射したCD光ビームはコリメートレンズ079に入射し略平行な光ビームに変換される。DVD光ビームと比べCD光ビームは出射角度が傾いているが、これは、DVDレーザチップ072とCDレーザチップが図中y方向に110μm離れて配置されているためである。このためDVD光ビームの光軸を対物レンズ081の中心に垂直入射することを想定するとCD光ビームの光線中心が傾くことになる。
コリメートレンズ079を通過した光ビームは回折格子060に入射する。回折格子060に入射したCD光ビームはDVD格子パターン099を通過する。DVD格子パターン090は理想的にはCD光ビームを100%透過されるように設計されているが、実際には僅かに外乱光ビームを発生させる。DVD格子パターン099を通過したCD光ビームはCD格子パターン077に入射する。CD格子パターン077に入射したCD光ビームはCD格子パターン077によりCDのDPPに最適な3本の光ビームに分岐される。
CD格子パターン077を透過したCD光ビームは、ビームスプリッタ078を反射、立ち上げミラー080を図中z方向(紙面に垂直な方向)に反射しアクチュエータ(図示せず)に搭載された対物レンズ081により光ディスク(図示せず)上に集光される。
光ディスクによりCD光ビームは反射し、対物レンズ081、立ち上げミラー080、ビームスプリッタ078、検出レンズ105、検出レンズ107を経て、光検出器082に到達する。CD光ビームもビームスプリッタ078を透過するとき所定の非点収差が与えられ、差動非点収差法によるフォーカシングエラー信号の生成に使用される。検出レンズ105と検出レンズ107は非点収差の方向を所定の方向に回転させると同時に光検出器082上での光スポットの大きさを決める働きがある。また2個の検出レンズを使用することで、ビームスプリッタ078と光検出器082の間隔を小さくさせる機能を持たせた。光検出器082に導かれたCD光ビームは、光ディスク上に記録されている情報信号の検出と、トラッキングエラー信号およびフォーカシングエラー信号など光ディスク上に集光された光スポットの位置制御信号の検出に使用される。
以上のように2波長マルチレーザを搭載した光ピックアップでは、DVD光ビームとCD光ビームの光路が略一致するため、DVD光ビームはDVD格子パターンだけでなくCD用格子パターンを通過せざるを得ない。またCD光ビームはCD格子パターンだけでなくDVD格子パターンを通過さざるを得ない。このため外乱光ビームの発生を回避できない。
本実施例の光ピックアップでは実施例1で説明したように光検出器上で外乱光ビームが他の光ビームと干渉することを回避することで、従来の光ピックアップと同様に高精度で安定したトラッキングエラー信号、フォーカシングエラー信号の生成が実現できる。
実施例5の光ピックアップ100は実施例2の光ピックアップ070とは回折格子060、コリメートレンズ079、ビームスプリッタ078の配置位置関係が異なっている。光ピックアップ100では出射した光ビームが先にコリメートレンズ079に入射し、2番目に回折格子060に入射し、最後にビームスプリッタ078に入射する構成となっている。即ち、回折格子060は、レーザ光源から出射された光ビームがコリメートレンズ079で平行な光ビームに変換された後に入光する位置に配置されており、レーザ光源から出射された光ビームは、コリメートレンズ079、回折格子060、ビームスプリッタ078、対物レンズ081の順に通過して光学的情報記録媒体に入光する。このような構成とすることで、回折格子077がコリメートレンズ079出射後に配置されることになるため、回折格子には略平行な光ビーム中が入射することになる。これは光ビームの有効径が最も大きい位置に回折格子077が配置されていることになる。
DVD格子パターン099は3分割されたパターンであるため、光ビームの中心と回折格子の中心位置に誤差が発生すると、トラッキングエラー信号の振幅が減少する課題がある。
図10はDVD格子パターン099とDVD格子パターン099に入射する光ビームの関係を示したものである。(a)は入射する光ビームの有効径が小さい場合、(b)は大きい場合を図示したものである。DVD格子パターン099の領域Cの幅は有効径に対して所定の割合で設定されるものである。このため(a)では有効形の小さい光ビーム120がDVD格子パターン099に入射するため領域Cの幅Aも小さくなっている。逆に(b)では光ビーム120よりも有効径の大きい光ビーム121が、DVD格子パターン099に入射するため領域Cの幅Bが幅Aよりも大きい。
光ピックアップの組み立て時には、DVD格子パターンが図中左右に取り付け誤差が避けられず、光ビームの中心とDVD格子パターンの中心とに位置誤差が発生する。この誤差によりTES信号振幅が減少してしまう。取り付け誤差δが発生すると、光ビームの中心とDVD格子パターン099の中心とがδだけずれることになる。(a)の光ビーム120が取り付け誤差δだけずれると光ビーム122の位置に移動することになる。また(b)の光ビーム121が取り付け誤差δだけずれると光ビーム123の位置に移動することになる。図のように同じ取り付け誤差δが発生した場合、光ビーム122は有効径が小さいため、光ビーム122と領域Cとのずれが大きく見える。これに対し、光ビーム123は有効径が大きいため、領域Cとのずれが小さくみえる。このように有効径が大きいと、部品取り付け誤差の影響が小さくなる。このため図9のように回折格子077をコリメートレンズ079出射後に配置すると、回折格子077に入射する光ビームの有効径を大きくする構成とすると、部品取り付け誤差の影響を小さくする効果が得られる。
なお、実施例5のように回折格子077をコリメートレンズ079出射後に配置すると、回折格子077に入射する光ビームの有効径を最も大きくできるため、部品取り付け誤差の影響を最も小さくすることができるが、回折格子077に入射する光ビームの有効径を大きくすることで、部品取り付け誤差の影響を小さくする効果が得られるため、例えば、回折格子077をコリメートレンズ079と2波長マルチレーザ071の間に配置しても良く、この場合、回折格子077をコリメートレンズ079に近づけるほど、部品取り付け誤差の影響を小さくすることができる。
また実施例5ではDVDとCDの記録および再生が可能な光ディスクドライブに対応した光ピックアップについて説明したが、もちろんCDや、青色半導体レーザを用いた次世代の高密度光ディスクドライブ(BDやHD−DVD)に対応した光ピックアップにも適用が可能である。
なお、通常の光ピックアップを用いた情報の記録および再生装置においては、安定した記録再生処理を行うために光ディスクに照射する光ビームの光量を一定に制御する必要があり、光ピックアップ内にはレーザ光源から出射する光ビームの光量を検出する手段(一般的にフロントモニタと言う)を有しており、その検出された光量をレーザ光源にフィードバックすることで光ディスクに照射する光ビームの光量を正確に制御している。しかし本実施例とは直接関係がないため触れていないが、フロントモニタが配置されている光ピックアップにおいても本実施例の光ピックアップが使用されてもなんら構わない。
また、本実施例では、DVD格子パターンとCD回折パターンを1個の回折格子に形成させたが、もちろん、DVD専用の回折格子、CD専用の回折格子と2個回折格子を配置してもなんら問題ない。
実施例6では本実施例の光検出器の信号出力について説明する。図11は光検出器150の検出パターンおよび内部結線を示すものである。
光検出器150には6個の検出領域151、152、153、154、155、156がある。また、各検出領域は4分割されており検出領域151は検出面A、B、C、D、検出領域152はE1、E2、E3、E4、検出領域153はF1、F2、F3、F4、検出領域155は、A'、B'、C'、D'、検出領域156はE'1、E'2、E'3、E'4、検出領域157は、F'1、F'2、F'3、F'4をもつ。これら検出領域の検出面からの全ての信号を外部に出力すると24個の出力ピンが必要となるため、光検出器150の内部で出力信号を演算することで、出力ピンを8ピンに減らしたことを特徴とする。以下では出力ピンを減らすための演算を説明する。
検出面AとA'は光検出器150の内部に配備された加算回路157にて加算させることで、出力ピン158からは(A+A')の信号が出力される。
検出面BとB'は光検出器150の内部に配備された加算回路159にて加算させることで、出力ピン160からは(A+A')の信号が出力される。
検出面CとC'は光検出器150の内部に配備された加算回路161にて加算させることで、出力ピン162からは(A+A')の信号が出力される。
検出面DとD'は光検出器150の内部に配備された加算回路163にて加算させることで、出力ピン164からは(A+A')の信号が出力される。
検出面E1とE'1は光検出器150の内部に配備された加算回路165にて加算させ、検出面F1とF'1は光検出器150の内部に配備された加算回路166にて加算させ、加算回路165と166のから出力された信号をさらに光検出器150の内部に配備された加算回路167にて加算させることで、出力ピン168からは(E1+E'1+F1+F'1)の信号が出力される。
検出面E2とE'2は光検出器150の内部に配備された加算回路169にて加算させ、検出面F2とF'2は光検出器150の内部に配備された加算回路170にて加算させ、加算回路169と170のから出力された信号をさらに光検出器150の内部に配備された加算回路171にて加算させることで、出力ピン172からは(E2+E'2+F2+F'2)の信号が出力される。
検出面E3とE'3は光検出器150の内部に配備された加算回路173にて加算させ、検出面F3とF'3は光検出器150の内部に配備された加算回路174にて加算させ、加算回路173と174のから出力された信号をさらに光検出器150の内部に配備された加算回路175にて加算させることで、出力ピン176からは(E3+E'3+F3+F'3)の信号が出力される。
検出面E4とE'4は光検出器150の内部に配備された加算回路177にて加算させ、検出面F4とF'4は光検出器150の内部に配備された加算回路178にて加算させ、加算回路177と178のから出力された信号をさらに光検出器150の内部に配備された加算回路179にて加算させることで、出力ピン180からは(E3+E'3+F3+F'3)の信号が出力される。
なお、各検出信号は数9〜数14で検出することができる。なお以下の数9〜数14では出力ピン180などはP180と記すこととする。
DVDメイン総光量=P158+P160+P162+P164=A+B+C+D+A'+B'+C'+D'=A+B+C+D (数9)
ここで、DVDを記録、再生する場合、CDのレーザ光源は光らせないため、検出領域154、155、156からの検出信号は0である。
CDメイン総光量=P158+P160+P162+P164=A+B+C+D+A'+B'+C'+D'=A'+B'+C'+D' (数10)
ここで、CDを記録、再生する場合、DVDのレーザ光源は光らせないため、検出領域151、152、153からの検出信号は0である。
DVDフォーカシング誤差信号=[(P158+P162)−(P160+P164)] +k×[(P168+P176)−(P172+P180)]=[(A+C)−(B+D)] +k×{[(E1+E3)−(E2+E4)]+[(F1+F3)−(F2+F4)]}+[(A'+C')−(B'+D')] +k'×{[(E'1+E'3)−(E'2+E'4)]+[(F'1+F'3)−(F'2+F'4)]}=[(A+C)−(B+D)] +k×{[(E1+E3)−(E2+E4)]+[(F1+F3)−(F2+F4)]} (数11)
ここで、DVDを記録、再生する場合、CDのレーザ光源は光らせないため、検出領域154、155、156からの検出信号は0である。
CDフォーカシング誤差信号=[(P158+P162)−(P160+P164)] +k×[(P168+P176)−(P172+P180)]=[(A+C)−(B+D)] +k×{[(E1+E3)−(E2+E4)]+[(F1+F3)−(F2+F4)]}+[(A'+C')−(B'+D')] +k'×{[(E'1+E'3)−(E'2+E'4)]+[(F'1+F'3)−(F'2+F'4)]}=[(A'+C')−(B'+D')] +k'×{[(E'1+E'3)−(E'2+E'4)]+[(F'1+F'3)−(F'2+F'4)]} (数12)
ここで、CDを記録、再生する場合、DVDのレーザ光源は光らせないため、検出領域151、152、153からの検出信号は0である。
DVDトラッキング誤差信号=[(P158+P164)−(P160+P162)] +k×[(P168+P180)−(P172+P176)]=[(A+D)−(B+C)] −k×{[(E1+E4)−(E2+E3)]+[(F1+F4)−(F2+F3)]}+[(A'+D')−(B'+C')] −k'×{[(E'1+E'4)−(E'2+E'3)]+[(F'1+F'4)−(F'2+F'3)]}=[(A+D)−(B+C)] −k×{[(E1+E4)−(E2+E3)]+[(F1+F4)−(F2+F3)]} (数13)
ここで、DVDを記録、再生する場合、CDのレーザ光源は光らせないため、検出領域154、155、156からの検出信号は0である。
CDトラッキング誤差信号=[(P158+P164)−(P160+P162)] +k×[(P168+P180)−(P172+P176)]=[(A+D)−(B+C)] −k×{[(E1+E4)−(E2+E3)]+[(F1+F4)−(F2+F3)]}+[(A'+D')−(B'+C')] −k'×{[(E'1+E'4)−(E'2+E'3)]+[(F'1+F'4)−(F'2+F'3)]}=[(A'+D')−(B'+C')] −k'×{[(E'1+E'4)−(E'2+E'3)]+[(F'1+F'4)−(F'2+F'3)]} (数14)
ここで、CDを記録、再生する場合、DVDのレーザ光源は光らせないため、検出領域151、152、153からの検出信号は0である。
なお、k、k'はメイン光ビームとサブ光ビームの光量比を補正する係数である。
実施例7では、これまでに説明した光ピックアップを搭載した、光ディスク装置200について説明する。
図12に光ピックアップ070を搭載した記録および再生用光ディスク装置200の概略ブロック図を示す。光ピックアップ070から検出された信号は光ディスク装置200内に配備されたサーボ信号生成回路207、フロントモニタ用回路206、情報信号再生回路208に送られる。サーボ信号生成回路207では、これら検出信号から各光ディスクに適したフォーカシングエラー信号やトラッキングエラー信号が生成され、生成されたサーボ信号はコントロール回路212から必要に応じて、アクチュエータ駆動回路203へ送られ光ピックアップ070内の対物レンズアクチュエータを駆動し、対物レンズの位置制御を行う。フロントモニタ用回路206では、フロントモニタからの検出信号からレーザ光源の光量モニタ信号を検出し、これをもとにレーザ光源制御回路205を駆動し光ディスク213上の光量を正確に制御する。また情報信号再生回路208では前記検出信号から光ディスク213に記録された情報信号が再生され、その情報信号は情報信号出力端子210へ出力される。
また記録情報が記録情報入力端子211から入力されると、記録情報信号変換回路209で所定のレーザ駆動用記録信号に変換される。このレーザ駆動用記録信号はコントロール回路212に送られ、レーザ光源制御回路205を駆動させレーザ光源の光量制御を行い、光ディスク213に記録信号を記録する。なお、このコントロール回路212にはアクセス制御回路202とスピンドルモータ駆動回路201が接続されており、それぞれ光ピックアップ070のアクセス方向の位置制御や光ディスク213のスピンドルモータ214の回転制御が行われる。
なお、サーボ信号生成回路207から生成されるフォーカシングエラー信号などからコントロール回路212は、セットされている光ディスク213がどの種類かを判別する機能を有しており、DVDとCDのどちらの光検出器を有効にするか、またDVD光ビームとCD光ビームのどちらを出射するかを判断しDVD/CD切り替え回路204を駆動する。
実施例8では、DVD用格子パターン076の格子ピッチd1よりもCD用格子パターン077の格子ピッチd2を小さくすると光検出器上で検出領域を小さく配置できる理由について説明する。
図13は光検出器上の光スポットの照射位置の概略を図示したものである。(A)はd1よりもd2が小さい場合、(B)はd1よりもd2が大きい場合である。
図13はDVDメイン光ビーム010、DVDサブ光ビーム011、012、CDメイン光ビーム013、CDサブ光ビーム014、015、および外乱光ビーム020、021、023、024が光検出器上に照射されている図である。
(A)の場合、d1よりもd2が小さいため、CDサブ光ビーム014、015の方がDVDサブ光ビーム011、012よりも回折角度が小さく、光ビームの中心に近い位置に照射される。なお回折角度は数7で記した関係式がある。
DVDよりもCDの方が波長が長いため、外乱光ビーム020、021は、CDサブ光ビーム014、015よりも中心に近い位置に照射される。また、外乱光ビーム020、021とCDサブ光ビーム014、015の間隔をΔ1とする。
同様に外乱光ビーム022、023は、DVDサブ光ビーム011、012よりも中心から遠い位置に照射される。また、外乱光ビーム022、023とDVDサブ光ビーム011、012の間隔をΔ2とする。格子ピッチが小さいほど、回折角度が大きいため、Δ1よりもΔ2の方が大きい。(A)のように格子ピッチd1よりもd2が小さい場合、光検出器の全体の受光領域の大きさはDVDサブ光ビーム011、012により決まり、図のようにDaで示される大きさになる。
(B)の場合、d1よりもd2が大きいため、CDサブ光ビーム014、015の方がDVDサブ光ビーム011、012よりも回折角度が大きく、光ビームの中心に遠い位置に照射される。
DVDよりもCDの方が波長が長いため、外乱光ビーム020、021は、CDサブ光ビーム014、015よりも中心に近い位置に照射される。(A)とは逆に外乱光ビーム020、021とCDサブ光ビーム014、015の間隔がΔ1となる。
同様に外乱光ビーム022、023は、DVDサブ光ビーム011、012よりも中心から近い位置に照射される。また、外乱光ビーム022、023とDVDサブ光ビーム011、012の間隔をΔ1となる。格子ピッチが小さいほど、回折角度が大きいため、Δ1よりもΔ2の方が大きいのは(A)と同じである。(B)のように格子ピッチd1よりもd2が大きい場合、光検出器の全体の受光領域の大きさはCDサブ光ビーム014、015により決まり、図のようにDbで示される大きさになる。
上述した(A)と(B)を較べれば分かるように、DbよりもDaの方が短い。これは、DVDとCDの波長に起因するものであり、光検出器の受光領域の大きさを小さくするには、(A)のようにDVD格子パターンの格子ピッチd1をCD格子パターンの格子ピッチd2よりも小さくすると良い。
以上のように、本発明の実施例に記載した2波長マルチレーザを搭載した光ピックアップは、干渉による光量変動がない高精度なトラッキングエラー信号とフォーカシングエラー信号が生成できるようになる。
実施例9では実施例2で説明した光ピックアップの変形例について説明する。図15は光ピックアップ300の光学系構成を示す図である。光ピックアップ300は実施例2の光ピックアップ070の回折格子060とは異なる構成の回折格子301を搭載している。
回折格子301は、回折格子060と同様に光ビームを分岐させる機能があり、分岐された光ビームをDPPによるトラッキングエラー信号の生成に用いられるのは同じである。しかし回折格子060はDVD格子パターン076とCD格子パターン077の2個の格子面があったが、回折格子301はDVD/CD共通格子パターン302の1個の格子面しかない点が異なっている。
ところで、光ディスクには様々な種類があるが、一般的に光ディスク記録とは、光で照射された領域の組成を変化させるため、大きな光量を光ディスクへ照射するものである。また光ディスクの高速記録を行うには、より大きな光量を光ディスクへ照射する必要がある。最近では多層の光ディスクなども製品化されており、さらに大きな光量を光ディスクへ照射しなければならなくなっている。一般的に光ディスクへ照射する光量は、レーザ光源の出射光量とレーザ光源から光ディスクまでの間にある光学部品の透過効率と、対物レンズのカップリング効率の積で決まるものである。このため、光学部品の透過効率はより大きくしなければならない。
さて、波長選択性のない2個の格子面が有る場合、2個の格子面各々で回折するため、メイン光ビーム(光ディスクへの記録に寄与する0次回折光)の光量減少が大きく、透過効率が小さい。つまり光ディスクへ十分な光量を伝達できなくなる。このため、2個の格子面は各々波長選択性をもたせ、外乱光ビームの発生を小さくすることで、従来の光ピックアップ並の透過効率とすることができる。このような理由に基づき、実施例3では波長選択性を持つ回折格子を使用する例について説明した。しかし、波長選択性を有する素子は格子面が2個あるため、回折格子の製造工程が長くなりコスト低減が困難である。このため、光ピックアップ300の回折格子301のように1個の格子面とすると、従来通り透過効率が高く、かつコスト低減可能な簡素な回折格子を実現できる。もちろん、回折格子301になんの工夫もなしに搭載すると、DVDとCDの両方でDPPを実現することはできない。以降回折格子301のDVD/CD共通格子パターン302について説明する。
図16はDVD/CD共通格子パターン302を説明する図である。(A)はDVD/CD共通格子パターン302の構成を示す概略図、(B)はDVD/CD共通格子パターンに光ビームが入射したときに分岐される光ビームを示す概略図である。
まず(A)を用いDVD/CD共通格子パターン302の構成について説明する。DVD/CD共通格子パターン302はDVD最適パターン303とCD最適パターン304の2個の領域に分割されている。DVD最適パターン303はDVD格子面076と同じ格子ピッチd1、角度θDVDであり、CD最適パターン304はCD格子面077と同じ格子ピッチd2、角度θCDである。また、DVD最適パターン303とCD最適パターン304の境界は、対物レンズシフト方向と一致させると良い。こうすることでトラッキングエラー信号(プッシュプル信号)が生成できるようになる。また対物レンズシフト時の検出信号変動を抑制できるという効果も得られるためである。
次に(B)を用い回折格子301に入射した光ビームと出射する光ビームについて説明する。入射する光ビーム310の中心は、DVD最適パターン303とCD最適パターン304との境界を一致させるようにする。これは、DVDのトラッキングエラー信号とCDのトラッキングエラー信号の振幅をバランス良く取ることが出来るためである。入射した光ビーム310は、回折せずに透過する0次回折光である光ビーム311と、DVD用最適パターン303に入射し回折する+1次回折光である光ビーム312とー次回折光である光ビーム313と、CD用最適パターン304に入射し回折する+1次回折光である光ビーム314とー次回折光である光ビーム315に分岐される。また、光ビーム311に比べ、光ビーム312、313、314、315の大きさが小さくなっているのは、1個の格子面にDVD/CD共通格子パターン302のように2個のパターンがあるためである。なお、DVD最適パターン303により分岐された光ビーム312,313の方が光ビーム311の進行方向に対して大きく角度を持った方向へと進行するのは、DVD最適パターン303の格子ピッチd1が狭いためである。
図17は光ピックアップ300において光検出器001に照射される光ビームの概略を図示したものである。
さて、DVDの光ビームが回折格子301に入射すると、図16(B)で説明したようにDVDメイン光ビーム311D(光ビーム311に相当)、DVDサブ光ビーム312D(光ビーム312に相当)、313D(光ビーム313に相当)、DVD外乱光ビーム314D(光ビーム314に相当)、315D(光ビーム315に相当)とに分岐される。この時、DVDメイン光ビーム311Dは検出領域002へ、DVDサブ光ビーム312Dは検出領域003へ、DVDサブ光ビーム313Dは検出領域004へ照射されるようにする。この時DVD外乱光ビーム314D、315Dは光検出器で受光しないようにする。
また、CDの光ビームが回折格子301に入射すると、同様にCDメイン光ビーム311C(光ビーム311に相当)、CDサブ光ビーム314C(光ビーム314に相当)、315C(光ビーム315に相当)、CD外乱光ビーム312C(光ビーム312に相当)、313C(光ビーム313に相当)、とに分岐される。この時、CDメイン光ビーム311Cは検出領域005へ、CDサブ光ビーム314Cは検出領域006へ、CDサブ光ビーム315Cは検出領域007へ照射されるようにする。この時CD外乱光ビーム312C、313Cは光検出器で受光しないようにする。
DVDサブ光ビーム312Dを例に説明すると、検出面E1+E4とE2+E3とで分割されていることが分かる。トラッキングエラー信号(特にプッシュプル信号)を生成するには、演算式数5、6のように検出面E1+E4とE2+E3との差出力が必要なため、検出面E1+E4とE2+E3とで分割されるように、DVD最適パターン303とCD最適パターン304の境界は、対物レンズシフト方向と一致させている。なお、回折格子は図中上下に分割されているのに対し、光検出器上のサブ光ビームが左右に分割されているのは、フォーカシングエラー信号の検出に非点収差を用いているためである。
上記のように、DVDサブ光ビーム312D、313DとCDサブ光ビーム314C、315Cが、トラッキングエラー信号(プッシュプル信号)が生成できるように回折格子のDVD最適パターン303とCD最適パターン304の境界は、対物レンズシフト方向と一致させている。
また、DVDサブ光ビーム312DとCDサブ光ビーム314Cは図中左右対称になっているが、これは入射する光ビーム310の中心と、DVD最適パターン303とCD最適パターン304との境界を一致させたためである。例えば、入射する光ビーム310の中心が、DVD最適パターン303側へずれると光検出上のCDサブ光ビーム314Cが小さくなり、逆にDVDサブ光ビーム312Dが大きくなる。例えばCDサブ光ビーム314Cが小さくなるとCDのトラッキングエラー信号の振幅が小さくなってしまう。逆にDVDのトラッキングエラー信号の振幅は大きくなる。このため、DVD最適パターン303とCD最適パターン304との境界を一致させることで、DVDサブ光ビーム312DとCDサブ光ビーム314Cとを図中左右対称にすることができ、DVDのトラッキングエラー信号とCDのトラッキングエラー信号の振幅をバランス良く取ることが出来る。
このように図16(A)のように回折格子に工夫することで、1個の格子面だけで、DVDとCDで各々最適なDPPを実現することができる。もちろん図16(A)のような回折格子を用いるのは、図1のような光検出器をもちいることで、外乱光ビームは光検出器上でサブ光ビームとオーバーラップすることないようにする工夫も必要である。
また、図16(A)のようなDVD/CD共通格子パターンは、1個の格子面だけなので、波長選択性を持たせた2個の格子面を持つ回折格子とほぼ同じ透過効率を実現できる。
さらに、格子面が1個のため、回折格子の作製が容易となりコスト低減を実現できる。
実施例10では実施例1、実施例9で説明した光検出器001の変形例を説明する。図18は光検出器350の概略を説明する図である。光検出器001と比べ検出領域003、004、005、006の検出面が異なるものである。
各検出領域は2分割されており、検出領域002は検出面E5、E6、検出領域003はF5、F6、検出領域005は検出面E'5、E'6、検出領域006はF'5、F'6をもつ。検出領域003、004は実施例9と同様に、DVDサブ光ビーム312Dは検出領域003へ、DVDサブ光ビーム313Dは検出領域004へ照射されるようにする。この時DVD外乱光ビーム314D、315Dは光検出器で受光しないようにする。
また、検出領域005、006も実施例9と同様に、CDサブ光ビーム314Cは検出領域006へ、CDサブ光ビーム315Cは検出領域007へ照射されるようにする。この時CD外乱光ビーム312C、313Cは光検出器で受光しないようにする。
さて、トラッキングエラー信号の生成にDPP、フォーカシングエラー信号の生成に非点収差方式を想定した光ピックアップにおいては、サブ光ビームを受光する受光領域はトラッキングエラー信号(プッシュプル信号)の生成のみに使用されるため、サブ光ビームからトラッキングエラー信号(プッシュプル信号)を検出できる方向(図中上下)に2分割すれば良い。このため、検出領域002、003、005、006は検出面を2分割しただけの構成となっている。もちろん、図18のように外乱光ビームが検出領域に入光しないように工夫しないと、安定したトラッキングエラー信号とフォーカシングエラー信号を生成することが出来なくなる。なお、各検出信号は数15〜18の演算式にて検出することが出来る。
DVDフォーカシング誤差信号=[(A+C)−(B+D)] (数15)
CDフォーカシング誤差信号=[(A'+C')−(B'+D')] (数16)
DVDトラッキング誤差信号=[(A+D)−(B+C)]−k×[(E5−E6)]+[(F5−F6)] (数17)
CDトラッキング誤差信号=[(A'+D')−(B'+C')]−k'×[(E'5−E'6)]+[(F'5−F'6)] (数18)
なお、k、k1' はメイン光ビームとサブ光ビームの光量比を補正する係数である。実施例1と異なり、サブ光ビーム312Dなどは、サブ光ビーム003などと比べて光量が約半分となっているので、実施例1などのkとは大きさが異なるものとなっている。
実施例18のような光検出器350をもちいると光検出器001に対して検出領域の分割数を少なく出来るため、内部結線が簡素になり作製の容易な光検出器を実現できる。
なお、対応する光ディスクによっては、必要なフォーカシングエラー信号、トラッキングエラー信号の生成方式が変わるが、光検出器001のように外乱光ビームが検出領域に入光しないように検出領域を配置すれば、光検出器350のように検出領域の分割はどのように分割しても良い。
実施例11では実施例9で説明した回折格子の変形例を説明する。図19は回折格子301のDVD/CD共通格子パターンの様々な変形例を図示したものである。
図19(A)はDVD/CD共通格子パターン355を図示したものである。DVD/CD共通格子パターン355は、DVD/CD共通格子パターン302と同様1個の格子面の構成となっているが、CD最適パターン304をDVD最適パターン303にて挟んだ点が異なっている。なお、CD最適パターン304の中心と入射する光ビームの中心を合わせ、CD最適パターン304とDVD最適パターン303の境界を対物レンズシフトの方向と一致させると良い。
DVD/CD共通格子パターン355を用いると、差動非点収差方式においてフォーカシングエラー信号へのトラッキングエラー信号漏れ込みを最も抑圧することが可能になるという効果が得られる。
つまり、第1の格子パターンが刻まれた第1の格子パターン領域と、第2の格子パターンが刻まれた第2の格子パターン領域とを、1個の平面内に配置させ、その第2の格子パターン領域は、第1の格子パターン領域の間に配置させることで、差動非点収差方式を用いた時に、フォーカシングエラー信号へのトラッキングエラー信号漏れ込み抑圧効果も得られる。
図19(B)はDVD/CD共通格子パターン356を図示したものである。DVD/CD共通格子パターン356も、DVD/CD共通格子パターン302と同様1個の格子面の構成となっているが、CD最適パターン304とDVD最適パターン303を交互に配置した点が異なっている。このように1個の格子面に複数のパターンを交互に配置すると、入射する光ビームの中心と、回折格子の中心と矢印の方向に合わせなくても良くなる。これは領域を多くすると、回折光ビームの光量を平均化することができるため、、回折格子の矢印の方向に取り付け時の調整が必要なくなる。つまり、光ピックアップを容易に組み立てできるという効果が得られる。なお、図で矢印の方向に5分割としたが、4分割、6分割でもなんら構わない。
図19(C)はDVD/CD共通格子パターン357を図示したものである。DVD/CD共通格子パターン357も、DVD/CD共通格子パターン302と同様1個の格子面の構成となっているが、DVD最適パターン303と異なるDVD最適パターン360を配置した点が異なっている。DVD最適パターン360は、DVD格子パターン099と同じ格子パターンで、DVDのトラッキングエラー信号の生成に位相差DPPを使用することができる。つまり、トラッキングエラー信号の検出に位相差DPPを使用することができるため、スーパーマルチ対応が可能となる。
図19(D)はDVD/CD共通格子パターン358を図示したものである。DVD/CD共通格子パターン358も、DVD/CD共通格子パターン357と同様1個の格子面の構成となっているが、CD最適パターン304をDVD最適パターン360で挟んだ点が異なっている。なお、CD最適パターン304の中心と入射する光ビームの中心を合わせ、CD最適パターン304とDVD最適パターン360の境界を対物レンズシフトの方向と一致させると良い。
DVD/CD共通格子パターン358を用いると、差動非点収差方式においてフォーカシングエラー信号へのトラッキングエラー信号漏れ込みを抑圧する効果が得られる。また、DVD最適パターン360としたことで、トラッキングエラー信号の検出に位相差DPPを使用することができ、スーパーマルチ対応が可能となる。
つまり図19(D)のDVD/CD共通格子パターン358の回折格子を搭載した光ピックアップにおいては、DVD/CDスーパーマルチ対応が可能であり、メイン光ビームを光ディスクへ効率よく照射することができ、かつ、差動非点収差方における漏れ込み抑圧効果も得られる。
なお、図19のDVD最適パターン304、360や、CD最適パターン304を1個の格子面に配置するとき、格子面を等分割しているが、例えば、CD最適パターン304の幅が広く、DVD最適パターン360の幅が狭いなど、どのように幅を設定しても良い。
なお、回折格子の格子ピッチd1は格子ピッチd2に対し1/2程度に設定するのが良い。こうすると、光検出器上の外乱光ビーム020が検出領域002と003のちょうど真ん中に配置され、かつ外乱光ビーム021が検出領域002と004のちょうど真ん中に配置されるため、対物レンズシフトを考慮しても最も検出領域に入射しにくい構成とできる効果が得られるためである。
実施例1における光検出器を説明する図である。
従来例の光検出器を説明する図である。
実施例2における光ピックアップの概略構成を示した図である。
実施例3における理想的な回折格子を説明する図である。
実施例3における実際の回折格子における外乱光ビームを説明する図である。
実施例3における回折格子の格子パターンを説明する図である。
実施例3における光ディスク上のスポット配置を示した図である。
実施例4における回折格子の格子パターンを説明する図である。
実施例5における光ピックアップの概略構成を示した図である。
実施例5における回折格子への入射光ビームの有効径と部品誤差の関係を説明する図である。
実施例6における光検出器の内部結線を示す図である。
実施例7における光ディスク装置の概略構成を示す図である。
実施例8における光検出器上に照射される光ビームの配置関係を説明する図である。
従来の光検出器を説明する図である。
実施例9における光ピックアップの概略構成を示した図である。
実施例9における回折格子の格子パターンと回折格子により分岐される光ビームの概略を示す図である。
実施例9における光検出器上に照射される光ビームの配置関係を説明する図である。
実施例10における光検出器の概略構成を示した図である。
実施例11における回折格子の格子パターンを説明する図である。
符号の説明
001…光ディスク、100…光ピックアップ、104…案内溝、a…メイン光スポット、b…サブ光スポットb、c…サブ光スポットc、d…サブ光スポットd、e…サブ光スポットe。