JP4141813B2 - 投射型表示装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、調光素子及び照明装置並びに投射型表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
表示装置の分野では、大型化,高精細化に対するニーズが高く、このような大画面表示を容易に実現できる手段として、従来より液晶プロジェクタやDMD等の投射型表示装置が知られている。
このような投射型表示装置では、表示できる明るさの範囲(ダイナミックレンジ)の広い迫力のある映像表示が求められている。このため、光源とライトバルブとの間に光量調整用の液晶パネル(調光素子)を配置し、明るい映像に対しては液晶パネルの透過率を高めてより明るい表示とし、逆に暗い映像に対しては液晶パネルの透過率を小さくしてより暗い表示とすることで、見かけ上の階調数を増やす方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−100689号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般に液晶パネルには光透過率に波長依存性が存在するため、液晶パネルから出射される照明光に色付きが生じ、表示品質を損なう場合があった。このような問題を解決するために、例えば光源のスペクトルを適当に調整する等の方法が考えられるが、色付きの大きさ(分光特性変化の大きさ)は液晶パネルへの印加電圧の大きさにより変化するため、調光度合いを変化させた場合の色再現性の低下を回避することは困難である。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑み創案されたもので、調光の際の色付きを抑制できるようにした調光素子及び照明装置並びに投射型表示装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の調光素子は、光透過率に対する波長特性の異なる複数の光変調領域を備え、上記複数の光変調領域の内、少なくとも一つの光変調領域が他の光変調領域に対して相補的な波長特性を有するように構成されている。
本構成によれば、互いに相補的な波長特性を有する光変調領域を透過した光同士で波長特性が相殺され、全体として色付きの少ない光を出射することができる。
【0007】
具体的には、本発明の調光素子は、内面側に液晶層を挟持する一対の基板と、上記液晶層に電圧を印加可能な電圧印加部と、一方の基板の外面側に設けられた偏光板と、他方の基板の外面側に設けられ、入射された光を偏光成分毎に分離して上記液晶層の異なる領域に出射する偏光分離部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本構成の調光素子に偏光分離部側から無偏光状態の光が入射すると、この光は偏光分離部によって偏光成分毎に分離され、各偏光成分の光はそれぞれ液晶層の異なる領域に入射される。そして、各偏光成分の光は液晶層の旋光性やリタデーションにより光変調されて偏光板を透過する。この際、電圧印加部により液晶層への印加電圧を増減することで、この旋光度合いやリタデーションの大きさが調整され、入射光の光量が調整(即ち、調光)される。
ところで、本構成では、電圧印加部により液晶層の上記異なる領域に電圧を印加すると、各偏光成分の光は液晶層の配向変化に応じて光透過率を変化されるが、後述の[発明の実施の形態]の項で説明するように、その変化の方向は両領域で異なり、光透過率に対して互いに相補的な波長特性を示す。このため、両領域の波長特性は互いに相殺し合い、広い波長範囲に亘って波長特性が平坦化される。
【0009】
つまり、本構成では、液晶層の各領域に異なる偏光成分の光を入射することで、液晶層の各領域は、光透過率に対する波長特性が互いに相補的な異なる光変調領域として構成される。そして、これらの光変調領域から出射された光が重畳されて波長特性が互いに相殺されることで、調光による色付きを防止することができる。
【0010】
このとき、上記偏光分離部を複数設けてもよい。
本構成によれば、相補的な波長特性を有する各光変調領域をそれぞれ微細化して複数形成することができる。これにより、例えば光変調装置の画素毎に波長特性を相殺された光を出射することで、本調光素子を複数の表示画素を有する投射型表示装置に適用することができる。
【0011】
なお、上記電圧印加部を、上記偏光成分の光が出射される上記液晶層の上記異なる領域にそれぞれ異なる電圧を印加可能に構成し、上記異なる領域の光透過率が略等しくなるように上記各領域の印加電圧を制御するようにしてもよい。
本構成によれば、出射光量を均一化して照明光の輝度むらを防止することができる。この電圧印加部は、例えばいずれか一方の基板に設けられた透明な共通電極と、他方の基板に分割して形成された複数の透明電極とにより構成される。この他方の基板に設けられた透明電極は、例えば櫛歯部が噛み合うようにパターン形成された複数の櫛歯状の透明電極として構成することができる。この場合、上記偏光分離手段は、上記複数の櫛歯状の透明電極に対してそれぞれ上記異なる偏光成分の光を出射する。これにより、隣接する櫛歯部の領域において、光透過率に対する波長特性がよりよく相殺される。
【0012】
また、上記偏光分離部を、所定の偏光方向を有する第1の偏光を上記液晶層の所定の領域に向けて透過し上記第1の偏光の偏光方向に垂直な偏光方向を有する第2の偏光を反射する反射偏光膜と、上記反射偏光膜により反射された上記第2の偏光を上記液晶層の所定の領域とは異なる領域に向けて反射する反射膜とを備えた構成としてもよい。
【0013】
本構成によれば、簡単な構成で入射される光を偏光成分毎に分離することができる。これらの反射偏光膜と反射膜とは、例えば基板面に対して同一方向に略45°傾斜して並置される。この場合、偏光分離部に入射した無偏光状態の光は、反射偏光膜により一方の偏光成分の光(第1の偏光)を透過され、他方の偏光成分の光(第2の偏光)は反射される。そして、反射された第2の偏光は反射膜により更に反射され、第1の偏光が透過された液晶領域とは異なる領域に入射される。そして、第1の偏光が入射された領域と第2の偏光が入射された領域とにより、波長特性が相補的な関係を有した異なる光変調領域が形成される。なお、本構成では、上述の反射偏光膜と反射膜とをアレイ状に複数配置することで、複数の偏光分離部を容易に形成することができる。
【0014】
また、本発明の照明装置は、光源と、上記光源から出射された光を変調する上述の調光素子とを備えたことを特徴とする。
本構成によれば、調光による色付きの少ない照明光を出射することができる。
また、本発明の投射型表示装置は、上述の照明装置と、上記照明装置から出射された光を変調して画像光を形成する光変調装置と、上記光変調装置から出射された画像光を拡大投影する投射光学系とを備えたことを特徴とする。
本構成によれば、調光による画像の色変化の少ない高品質な表示が得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図8を参照しながら本発明の一実施形態に係る投射型表示装置について説明する。図1は本実施形態の投射型表示装置の全体構成を示す概略図、図2は本投射型表示装置に適用される調光素子の一部を拡大して示す概略断面図で図3のI−I断面、図3は調光素子の下基板側の電極構造を上基板側から見た平面図、図4〜図8はいずれも調光素子の作用を説明するための模式図である。
なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。また、各図面では、紙面に平行な振動面を有する偏光をP偏光とし、紙面に垂直な振動面を有する偏光をS偏光として示している。さらに、本明細書では、本調光素子を構成する各部材の液晶層側の面を「内面」、それと反対側の面を「外面」という。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の投射型表示装置は、R(赤)、G(緑)、B(青)の異なる色毎に透過型液晶ライトバルブ22〜24を備えた3板式の投射型カラー液晶表示装置であり、光源2,フライアイレンズ3,4,調光素子5を有する照明装置1と、ダイクロイックミラー13,14,反射ミラー15〜17,レンズ18〜20,液晶ライトバルブ(光変調装置)22〜24,クロスダイクロイックプリズム25を有する色分離合成系30と、投射レンズ26を有する投射光学系40とを備えて構成されている。
【0017】
光源2は高圧水銀ランプ或いはメタルハライドランプ等からなるランプ7と、ランプ7の光を反射するリフレクタ8とから構成されている。また、光源光の照度分布を被照明領域である液晶ライトバルブ22,23,24において均一化させるための均一照明手段として、光源2側から第1フライアイレンズ3、第2フライアイレンズ4が順次設置されている。各フライアイレンズ3,4は、複数(本実施形態では例えば6×8個)のレンズ9,10から構成されている。そして、光源2から射出された光は、フライアイレンズ3,4によって被照明領域である液晶ライトバルブ22〜24において照度分布を均一化されるようになっている。
【0018】
調光素子5は、図2に示すように、対向して配置されたガラス等の透明な基板110,120の間に、誘電異方性が正のネマチック液晶Mからなる液晶層150が挟持され、上基板120と下基板110との外面側にそれぞれ偏光板124,偏向ビームスプリッタ(PBS)114が配置されて構成されている。
上基板120の内面側には、ITO(インジウム錫酸化物)等からなる透明な共通電極121と配向膜123とが順次積層されており、上基板120の外面側には偏光板124が設けられている。
【0019】
一方、下基板110の内面側には、ITO等からなる透明電極111,112が形成され、この透明電極111,112を覆うように配向膜113が積層されている。そして、上基板120に設けられた共通電極121と、下基板110に設けられた透明電極111,112(より詳しくは、各透明電極111,112の櫛歯部111a,112a)とにより本発明の電圧印加部が構成される。なお、図2,図3は本調光素子5の一部を拡大して示しており、各透明電極111,112の櫛歯部111a,112aの数はそれぞれ、第一フライアイレンズ3のレンズ10の数に対応して決められる。櫛歯部111a,112aに対応する各領域A1,A2から出射された光はライトバルブ22〜24の全領域に照明されるようになっている。
【0020】
各基板110,120の配向膜113,123は、その配向方向が下基板110と上基板120とで略直交するように配向処理が施されており、非電圧印加(電圧オフ)時に、液晶分子Mを基板110,120間で略90°ツイスト配向させるようになっている。このように液晶分子Mを配向させる手段としては、一般にポリイミド膜をラビングする方法が用いられているが、この他にも、光反応性重合基を備える高分子を基板110,120上に成膜後、偏光性紫外線を照射したり、二酸化珪素等の無機膜を基板110,120上に斜方蒸着したり、或いは基板110,120上に溝構造を形成したりすることによっても、液晶分子Mを配向させることができる。イミド結合は光や熱等により分解され易いことが知られており、特に調光素子を光束密度が2lm/mm2以上の強度の強い光が照射される投射型表示装置に搭載する場合に、ポリイミドによらない上述の配向手段を用いることで調光素子の耐光性や耐熱性等を高めることができる。
【0021】
また、偏光板124の透過軸方向は、上述の配向膜113,123の配向方向と略平行あるいは90°をなすように、例えば図1における紙面に垂直な方向に配されている。
さらに、下基板110の透明電極111,112は、図3に示すように、それぞれ櫛歯状にパターニングされており、一定間隔で複数形成された各櫛歯部111a,112aは互いに噛み合うように配置されている。
【0022】
PBS114には、基板面に対してそれぞれ略45°傾斜した反射偏光膜114aと反射膜114bとが一定間隔でストライプ状に交互に配置されており、PBS114の外面側から入射した無偏光状態の光(即ち、P偏光とS偏光とが混在した光)を偏光成分毎に分離して液晶層150側に出力するようになっている。これらの反射偏光膜114a,反射膜114bは、それぞれ上述の櫛歯部111a,112aに対向する位置に設けられており、櫛歯部111a,112aに対して異なる振動面を有する偏光を入射するようになっている。つまり、光源2からPBS114に無偏光状態の光が入射されると、その一方の偏光成分(例えばP偏光;第1の偏光)は反射偏光膜114aをそのまま透過して液晶層150に入射され、反射偏光膜114aにより反射された他方の偏光成分(例えばS偏光;第2の偏光)は反射膜114bにより更に反射されて液晶層150に入射される。これにより、下基板110には、各櫛歯部111a,112aに対応して、P偏光とS偏光とが入射される領域がストライプ状に交互に形成されるようになっている。
【0023】
そして、この結果、櫛歯部111aの形成された領域では、入射光の偏光方向に対して偏光板124の透過軸方向が略直交することとなり、電極111,121間の電圧印加に伴って光透過率Lが低下するノーマリホワイト(NW)モードの光変調領域A1が形成されている。一方、櫛歯部112aの形成された領域では、入射光の偏光方向に対して偏光板124の透過軸方向が略平行となるため、電極112,121間の電圧印加に伴って光透過率Lが増大するノーマリブラック(NB)モードの光変調領域A2が形成されている。
すなわち、本実施形態では、一対の反射偏光膜114aと反射膜114bとにより本発明の偏光分離部が構成され、各櫛歯部111a,112aに対応する領域の液晶層150により、異なる電圧−透過率特性を有する光変調領域A1,A2が構成されている。
【0024】
また、本実施形態では、透明電極111,112は印加電圧をそれぞれ独立に制御され、各領域A1,A2から出射される光量を等しくするようになっている。つまり、本調光素子5では、図4に示すように、調光を複数レベル(図4では、550nmの波長の緑色光に対してL0〜L15までの16レベル)で行なえるようになっているが、例えばレベルL13の調光を行なう場合には、櫛歯部111a(即ち、透明電極111),112a(即ち、透明電極112)に対してそれぞれ電圧Va,Vbを印加することで、各領域A1,A2の光透過率Lを等しくしている。
この場合、各領域A1,A2における光透過率LNW,LNBは、光の波長をλ,液晶層150の屈折率異方性をΔn,液晶層厚をdとして、下記の式(1),(2)で示される。
【0025】
【数1】
Figure 0004141813
【0026】
【数2】
Figure 0004141813
【0027】
図5,図6は上式(1),(2)に基づいてシミュレーションした領域A1,A2における光透過率Lに対する波長特性である。図5,図6からわかるように、各領域A1,A2では、可視光領域(波長λ=400〜800nm)において光透過率に大きな波長依存性(波長特性)を有しており、又、波長λが500nm近傍において階調反転(例えば、領域A1では500nm以下の波長領域において、レベルL15よりもレベル9〜レベル14の方が高い光透過率を示す)が生じている。このため、領域A1,A2を単独で用いた場合には、従来のように、調光度合いに応じて色付きが生じてしまう。
【0028】
これに対して、本実施形態のように領域A1,A2の双方により光量を調整する場合、領域A1と領域A2とでは互いに相補的な波長特性を有する(即ち、領域A1では、光の波長λが短波長側から長波長側に変化するにつれて光透過率は概ね低くなる傾向にあり、領域A2では逆に、長波長側で光透過率が高くなる傾向にある)ため、一対の領域A1,A2からなる光変調領域Aでは、図7に示すように、両領域A1,A2の波長特性が互いに相殺し合い、広い波長範囲に亘って波長特性が平坦化される。この結果、光変調領域Aにおいて調光による色付きを抑制でき、又、広い波長範囲に亘って階調反転の発生を防止することができる。
【0029】
また図1において、ダイクロイックミラー13,14は、例えばガラス表面に誘電体多層膜を積層したもので、所定の色光を選択的に反射し、それ以外の波長の光を透過するようになっている。すなわち、青色光・緑色光反射のダイクロイックミラー13は、光源2からの光束のうちの赤色光LRを透過させるとともに、青色光LBと緑色光LGとを反射するようになっている。また、緑色光反射のダイクロイックミラー14は、ダイクロイックミラー13で反射された青色光LBと緑色光LGの内、青色光LBを透過し緑色光LGを反射するようになっている。
【0030】
これにより、照明装置1から入射された光の内、赤色光LRはダイクロイックミラー13を透過した後、反射ミラー17で反射され、赤色光用ライトバルブ22に入射される。緑色光LGはダイクロイックミラー14に反射されて緑色光用ライトバルブ23に入射される。青色光LBはダイクロイックミラー14を透過した後、リレーレンズ18、反射ミラー15、リレーレンズ19、反射ミラー16、リレーレンズ20からなるリレー系21を経て、青色光用ライトバルブ24に入射されるようになっている。
【0031】
ライトバルブ22〜24は、例えばアクティブマトリクス型の透過型液晶装置として構成され、信号処理された映像信号VS′に基づいて後述のライトバルブドライバ54により駆動されるようになっている。そして、各ライトバルブ22〜24で変調された色光LR,LG,LBは、クロスダイクロイックプリズム25に入射されるようになっている。
【0032】
クロスダイクロイックプリズム25は、直角プリズムが貼り合わされた構造となっており、その内面に赤色光LRを反射するミラー面と青色光LBを反射するミラー面とが十字状に形成されている。そして、三つの色光LR,LG,LBがこれらのミラー面によって合成されてカラー画像を表わす光が形成された後、投射レンズ26によりスクリーン27上に拡大投射されるようになっている。
【0033】
以下、本実施形態の投射型表示装置の動作について図1,図8を用いて説明する。
まず、本投射型表示装置に画像信号が入力されると、この画像信号に基づいて画像の明るさが解析される。そして、この画像の明るさに応じて調光素子5の光透過率が制御される。
【0034】
具体的には、図8に示すように、ランプ7から出射された無偏光状態(P偏光WpとS偏光Wsとを含む)の白色光Wは、照度分布を均一化するために設けられている各フライアイレンズ3,4を通過し、調光素子5のPBS114に向けて略垂直に入射される。そして、PBS114の反射偏光膜114aに入射された光Wは、そのP偏光成分Wpがそのまま透過されて、NWモードの光変調領域A1に入射される。一方、白色光WのS偏光成分Wsは反射偏光膜114aにより反射されるとともに反射膜114bによって反射され、NBモードの光変調領域A2に入射される。
【0035】
このとき、画像が明るい場合(図8参照)には、透明電極111は低電圧側に制御され、領域A1では液晶の旋光性によりP偏光Wpの偏光方向は紙面に略垂直な方向に回転される。これにより、液晶層150を透過した光は偏光板124に殆ど吸収されることなく透過する。一方、透明電極112は高電圧側に制御され、領域A2ではS偏光Wsは偏光面を殆ど回転されることなくそのまま偏光版124を透過する。この際、領域A1,A2から出射された光は、その波長特性が互いに相殺されて平坦化される結果、全体として色付きが少なくなり、調光度合いによる色付きの変化幅も小さくなる。
【0036】
逆に、画像が暗い場合(図示略)には、透明電極111,112はそれぞれ高電圧側,低電圧側に制御され、領域A1,A2を透過した各光は偏光板124により一部吸収される。この場合も、領域A1,A2から出射された光は、その波長特性が互いに相殺されて平坦化されるため、色付きや調光度合いによる色付きの変化幅が小さくなる。
【0037】
そして、調光素子5から出射された白色光はダイクロイックミラー13,14により、R,G,Bの各色光LR,LG,Lbに分離され、反射ミラー15〜17やレンズ18〜20により、対応する液晶ライトバルブ22〜24にそれぞれ入射される。この際、隣接する一対の領域A1,A2により全体として色補償された光は、ライトバルブ22〜24の全体を照明する。
【0038】
一方、液晶ライトバルブ22〜24には、調光度合いに応じて伸長処理を施された画像信号が入力され、この画像信号に基づいて入射光LR〜LBが変調される。具体的には、画像が暗い場合には、画像信号内で最も暗い階調値が、液晶ライトバルブ22〜24が出力できる最小の階調値に伸長(黒側伸長)される。逆に、画像が明るい場合には、画像信号内で最も明るい階調値が液晶ライトバルブ22〜24が出力できる最大の階調値に伸長(白側伸長)される。このような伸長処理と調光素子5による調光とを組み合わせることで、見かけ上の階調数を増やし、ダイナミックレンジの広い画像を出力することができる。
そして、液晶ライトバルブから出力された各色画像は、ダイクロイッククロスプリズム25により合成され、投射レンズ26によりスクリーン27上に拡大投影される。
【0039】
したがって、本発明によれば、調光素子5の光変調領域A1と光変調領域A2とは液晶ライトバルブ22〜24上において重畳され、各領域の光透過率に対する波長特性が互いに相殺されることで可視光の広い波長範囲で波長特性が平坦化されるため、調光による画像の色変化の少ない高品質な表示が得られる。
【0040】
[変形例]
次に、図9〜図11を用いて本発明の変形例について説明する。なお、本変形例では、上記実施形態と同様の部位については、同じ符号を付し、その説明を省略する。
本変形例は、上記実施形態における調光素子の液晶層150を変形したものであり、本調光素子は、二枚の基板を、各基板の配向膜の配向方向がアンチパラレルとなるように貼り合わせ、これらの基板間に上述の液晶層150を挟持して構成されている。すなわち、本調光素子は、電圧印加による液晶層150の複屈折変化を利用して偏光板からの出射光量を調節(調光)する電界制御複屈折型(ECB型)の液晶素子として構成されている。そして、これ以外は上記実施形態と同様に構成されている。
【0041】
図9,図10は領域A1,A2における光透過率Lに対する波長特性である。これらの図9,図10からわかるように、本変形例でも、各領域A1,A2では可視光領域において光透過率に大きな波長依存性を有し、波長λが500nm近傍において階調反転が生じている。しかし、各領域A1,A2の波長特性は互いに相補的な関係を有しており、両領域A1,A2から出射された光が重畳された場合には、図11に示すように、両領域A1,A2の波長特性が互いに相殺し合い、広い波長範囲(図11では、例えば波長λが500nmよりも大きな波長域)に亘って波長特性が平坦化される。
【0042】
したがって、本変形例によっても、調光による色付きの発生を抑制できる。これにより、本調光素子を投射型表示装置に適用した場合、調光による画像の色変化の少ない、高品質な表示が得られる。
【0043】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、上記実施形態では、調光素子5の下基板110の透明電極を櫛歯状の電極構造としたが、この代わりに、ストライプ状の電極構造とすることも可能である。この場合、隣接するストライプ電極に異なる電圧を印加して各ストライプ電極により駆動される液晶層150の光透過率を互いに等しくする。このような構成によっても、透明電極111,112を櫛歯状構造とした上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0044】
また、上記実施形態では、隣接する一対の領域A1,A2によりライトバルブ22〜24の全画素を照明するようにしているが、この代わりに、領域Aがライトバルブの一部を照明するようにしてもよい。この場合でも、各画素には全体として色補償された光が入射され、色付きを抑制される。具体的には、各領域Aを画素配列に平行に設け、隣接する一対の領域A1,A2により1列の画素が照明されるようにしてもよい。
【0045】
さらに、上記実施形態では、調光素子に偏光板を設けた構成を示したが、この調光素子の偏光板を省略し、液晶ライトバルブの入射面側に配された偏光板を調光素子の偏光板として兼用してもよい。すなわち、調光素子は、液晶層150を挟持する一対の基板110,120と、液晶層150に電圧を印加可能な電圧印加部と、一方の基板の外面側に配された光変調装置の入射面側の偏光板と、他方の基板の外面側に設けられ、入射光を偏光成分毎に分離して液晶層150の異なる領域に出射する偏光分離部とを備えた構成となる。なお、この場合、光変調装置の入射面側の偏光板の透過軸方向は、配向膜113,123の配向方向に対し、用いる液晶モードにより適宜設定する必要がある
【0046】
また、上記実施形態では、光変調装置として透過型液晶ライトバルブ22〜24を用いた例を挙げたが、反射型液晶ライトバルブやDMD(Digital Mirror Device)を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る投射型表示装置の概略構成図である。
【図2】 同、投射型表示装置に適用される調光素子の断面図である。
【図3】 同、調光素子の電極構造を示す平面図である。
【図4】 同、調光素子の電圧−透過率特性を示す図である。
【図5】 同、調光素子の光透過率に対する波長依存性を示す図である。
【図6】 同、調光素子の光透過率に対する波長依存性を示す図である。
【図7】 同、調光素子の光透過率に対する波長依存性を示す図である。
【図8】 同、投射型表示装置の動作を説明するための図である。
【図9】 調光素子の他の構成例における透過率の波長特性を示す図である。
【図10】 同、透過率の波長特性を示す図である。
【図11】 同、透過率の波長特性を示す図である。
【符号の説明】
1 照明装置、 2 光源、 5 調光素子、 22〜24 光変調装置、 40 投射光学系、 110,120 基板、 111,112透明電極、 111a,112a 櫛歯部、 114 PBS、 114a 反射偏光膜、 114b 反射膜、 121 共通電極、 124 偏光板、 150 液晶層、A,A1,A2 光変調領域、 Wp P偏光(第1の偏光)、 Ws S偏光(第2の偏光)

Claims (5)

  1. 光源と、画像光を形成する光変調装置と、前記光源から出射された光の光軸上において前記光源と前記光変調装置との間に設けられ、第1の光変調領域と第2の光変調領域とを有し且つ前記光源から出射された光の光量を調節する調光素子と、を備えた投射型表示装置であって、
    前記調光素子は、液晶層と、該液晶層を挟持する一対の基板と、該液晶層に電圧を印加可能な電圧印加部と、偏光板と、偏光分離部とを備え、
    前記偏光板は、前記光源から出射された光の光軸上において、前記液晶層と前記光変調装置との間に設けられ、
    前記偏光分離部は、前記光源から射出された光の光軸上において、前記液晶層と前記光源との間に設けられ、
    前記偏光分離部は、前記光源から入射した光を第1偏光と第2偏光とに分離するとともに、該第1偏光を前記第1の光変調領域に出射し、該第2偏光を前記第2の光変調領域に出射し、
    前記第1の光変調領域で変調されて前記偏光板から出射する第1の出射光の波長特性は、可視光領域において光の波長が短波長側から長波長側に変化するにつれて光透過率が概ね低くなり、
    前記第2の光変調領域で変調されて前記偏光板から出射する第2の出射光の波長特性は、可視光領域において光の波長が短波長側から長波長側に変化するにつれて光透過率が概ね高くなり、
    前記第1の出射光と前記第2の出射光とは、前記光変調装置上で重畳されていることを特徴とする投射型表示装置。
  2. 前記偏光分離部が複数設けられたことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
  3. 前記電圧印加部が、前記第1の光変調領域と前記第2の光変調領域にそれぞれ異なる電圧を印加可能に構成され、前記第1の出射光の光透過率と前記第2の出射光の光透過率とが互いに略等しくなるように制御されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の投射型表示装置。
  4. 前記電圧印加部が、
    前記一対の基板のうち一方の基板に設けられた透明な共通電極と、
    前記一対の基板のうち他方の基板に設けられた第1の櫛歯状透明電極と第2の櫛歯状透明電極と、から構成され、
    前記第1の櫛歯状透明電極と前記第2の櫛歯状透明電極とは、互いの櫛歯部が噛み合うようにパターン形成され、
    前記第1の櫛歯状透明電極は前記第1の光変調領域に設けられ、前記第2の櫛歯状透明電極は前記第2の光変調領域に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の投射型表示装置。
  5. 前記偏光分離部は反射偏光膜と反射膜とを有し、
    前記反射偏光膜は、前記第1偏光を前記第1の光変調領域に向けて透過するとともに、前記第1偏光の偏光方向に垂直な偏光方向を有する前記第2偏光を前記反射膜に向けて反射し、
    前記反射膜は、前記反射偏光膜により反射された前記第2偏光を前記第2の光変調領域に向けて反射することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
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