以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施の形態に係る負極活物質は、リチウムなどと反応可能なものであり、第1の構成元素として、スズを含んでいる。スズは単位重量あたりにおけるリチウムなどと
の反応量が高く、容量を高くすることができるからである。
この負極活物質は、また、第2の構成元素として、ホウ素,炭素,アルミニウムおよびリンからなる群のうちの少なくとも1種を含んでいる。負極活物質が、結晶性の低いあるいは非晶質な構造を有するようにすることができ、リチウムが円滑に吸蔵および放出されると共に、電解質との反応性を低減させることができるからである。
負極活物質における第2の構成元素の含有量は、9.8質量%以上49質量%以下であることが好ましい。これよりも少ないと低結晶化、あるいは非晶質な構造とする効果が十分でなく、また、多くてもサイクル特性が低下してしまうからである。
この負極活物質は、更に、第3の構成元素として、ケイ素,マグネシウム,チタン,バナジウム,クロム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ガリウム,ジルコニウム,ニオブ,モリブデン,銀,インジウム,セリウム,ハフニウム,タンタル,タングステンおよびビスマスからなる群のうちの少なくとも1種を含んでいる。このうちケイ素はスズと同様に単位重量あたりにおけるリチウムなどとの反応量が高く、容量をより高くすることができるからである。また、他の元素は、サイクル特性をより向上させることができるからである。
この負極活物質は、これらスズと、第2の構成元素と、第3の構成元素とを含み、リチウムなどと反応可能な反応相を有している。この反応相は、特定X線としてCuKα線を用い、挿引速度を1°/minとしたX線回折により得られる回折ピークの半値幅が回折角2θで1°以上であることが好ましく、5°以上であれば望ましい。1°未満であると、結晶性が高く十分なサイクル特性が得られないからである。
X線回折におけるリチウムと反応し得る反応相に対応するピークは、リチウムとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較することにより容易に特定することができる。リチウムとの電気化学的反応の後に変化したピークがリチウムと反応し得る反応相に対応するピークである。通常、反応相のピークは、例えば、2θ=20°〜50°の間に見られる。
負極活物質の構成元素の組み合わせを具体的に挙げれば、Sn−Co−C,Sn−Fe−C,Sn−Ti−C,Sn−V−C,Sn−Cr−C,Sn−Mn−C,Sn−Fe−C,Sn−Fe−C,Sn−Ni−C,Sn−Cu−C,Sn−Zn−C,Sn−Zr−C,Sn−Nb−C,Sn−Mo−C,Sn−Ag−C,Sn−Hf−C,Sn−Ta−C,Sn−W−C,Sn−Ga−C,Sn−I−C,Sn−Mg−C,Sn−Ce−C,Sn−Bi−C,Sn−Si−Co−C,Sn−Co−In−C,Sn−Co−In−Ti−C,Sn−Co−B,Sn−Co−AlあるいはSn−Co−Pなどがある。
この負極活物質は、例えば各構成元素の原料を混合して電気炉,高周波誘導炉あるいはアーク溶解炉などにより溶解しその後凝固することにより、また、ガスアトマイズあるいは水アトマイズなどの各種アトマイズ法、各種ロール法、またはメカニカルアロイング法あるいはメカニカルミリング法などのメカノケミカル反応を利用した方法により製造することができる。中でも、メカノケミカル反応を利用した方法により製造することが好ましい。負極活物質を低結晶化あるいは非晶質な構造とすることができるからである。この方法には、例えば、遊星ボールミル装置やアトライター等の製造装置を用いることができる。
原料には、各構成元素の単体を混合して用いてもよいが、構成元素の一部については合金を用いることが好ましい。特に、スズおよび第3の構成元素の一部あるいは全部を予め合金化しておき、これに第2の構成元素の原料を加えてメカニカルアロイング法により合成することが望ましい。第2の構成元素を後で加えることにより、低結晶化あるいは非晶質な構造とすることができ、反応時間の短縮も図ることができるからである。なお、原料の形態は粉体であってもよいし、塊状であってもよい。
この負極活物質は、例えば次のようにして二次電池に用いられる。
(第1の電池)
図1は第1の電池の断面構造を表すものである。この二次電池はいわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を介して積層し巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、例えばニッケルのめっきがされた鉄により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、液状の電解質である電解液が注入され、セパレータ23に含浸されている。また、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回電極体20は、例えば、センターピン24を中心に巻回されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウムなどよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
図2は図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面あるいは片面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質としては、例えば、硫化チタン(TiS2 ),硫化モリブデン(MoS2 ),セレン化ニオブ(NbSe2 )あるいは酸化バナジウム(V2 O5 )などのリチウムを含有しない金属硫化物あるいは金属酸化物などが挙げられる。また、Lix MO2 (式中、Mは一種以上の遷移金属を表し、xは電池の充放電状態によって異なり、通常0.05≦x≦1.10である)を主体とするリチウム複合酸化物なども挙げられる。このリチウム複合酸化物を構成する遷移金属Mとしては、コバルト、ニッケル、マンガン等が好ましい。このようなリチウム複合酸化物の具体例としては、LiCoO2 ,LiNiO2 ,Lix Niy Co1-y O2 (式中、x,yは電池の充放電状態によって異なり、通常0<x<1,0<y<1である)、スピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物等を挙げることができる。
負極22は、例えば、正極21と同様に、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面あるいは片面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。負極集電体22Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
負極活物質層22Bは、例えば、本実施の形態に係る負極活物質を含み、必要に応じてポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んで構成されている。このように本実施の形態に係る負極活物質を含むことにより、この二次電池では、高容量が得られると共に、サイクル特性を向上させることができるようになっている。負極活物質層22Bは、また、本実施の形態に係る負極活物質に加えて他の負極活物質、または導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。他の負極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な炭素質材料が挙げられる。この炭素質材料は、充放電サイクル特性を向上させることができると共に、導電剤としても機能するので好ましい。炭素質材料としては、例えば難黒鉛化炭素,易黒鉛化炭素,グラファイト,熱分解炭素類,コークス,ガラス状炭素類,有機高分子化合物焼成体,活性炭およびカーボンブラックなどのいずれか1種または2種以上を用いることができる。このうち、コークス類には、ピッチコークス,ニードルコークスあるいは石油コークスなどがあり、有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子化合物を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。これらの炭素質材料の形状は、繊維状,球状,粒状あるいは鱗片状のいずれでもよい。
この炭素質材料の割合は、本実施の形態の負極活物質に対して、1質量%以上95質量%以下の範囲内であることが好ましい。炭素質材料が少ないと負極22の導電率が低下し、多いと電池容量が低下してしまうからである。
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
セパレータ23に含浸された電解液は、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。
溶媒としては、炭酸エステルなどの非水溶媒が挙げられる。非水溶媒は、例えば、大気圧(1.01325×105 Pa)において沸点が150℃より高い高沸点溶媒と、沸点が150℃以下である低沸点溶媒とに分けられるが、これらを混合して用いた方が高いイオン伝導性を得ることができるので好ましい。高沸点溶媒としては、例えば、炭酸プロピレン、炭酸エチレンあるいはγ−ブチロラクトンが挙げられる。また、低沸点溶媒としては、例えば炭酸ジエチル、炭酸ジメチルあるいは炭酸エチルメチルが挙げられる。これらの溶媒は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
高沸点溶媒としては、また、ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体が挙げられ、中でも、化1に示した炭酸エチレン誘導体あるいは化2に示した炭酸プロピレン誘導体を用いるようにすればより好ましい。負極22における溶媒の分解反応を抑制することができ、サイクル特性を向上させることができるからである。
(式中、X1,X2,X3およびX4は、水素基,フッ素基,塩素基,臭素基あるいはヨウ素基のうちのいずれかを表す。それらは同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つはフッ素基,塩素基,臭素基あるいはヨウ素基である。)
(式中、X5,X6,X7,X8,X9およびX10は、水素基,フッ素基,塩素基,臭素基あるいはヨウ素基のうちのいずれかを表す。それらは同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つはフッ素基,塩素基,臭素基あるいはヨウ素基である。)
このようなハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体について具体的に例を挙げれば、化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化4に示した4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化5に示した4,5−ジフルオロ−1, 3−ジオキソラン−2−オン、化6に示した4−ジフルオロ−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化7に示した4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化8に示した4,5−ジクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化9に示した4−ブロモ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化10に示した4−ヨード−1,3−ジオキソラン−2−オン、化11に示した4−フルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、あるいは化12に示した4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどがあり、中でも、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが望ましい。より高い効果を得ることができるからである。
ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体の含有量は、溶媒全体に対して、0.1質量%以上80質量%以下の範囲内であることが好ましい。少ないと、負極22における溶媒の分解反応を抑制する効果が低く、多いと粘度が高くなり、イオン伝導率が低下するからである。
溶媒としては、更に、不飽和化合物の環状炭酸エステルを含むことが好ましい。溶媒の分解反応を抑制することができるからである。不飽和化合物の環状炭酸エステルとしては、例えば1,3−ジオキソール−2−オン,4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいはそれらの誘導体が挙げられる。
不飽和化合物の環状炭酸エステルの含有量は、溶媒全体に対して、0.5質量%以上10質量%以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内で溶媒の分解反応を抑制する効果が高いからである。
電解質塩としては、例えばリチウム塩が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、LiClO4 ,LiAsF6 ,LiPF6 ,LiBF4 ,LiB(C6 H5 )4 ,CH3 SO3 Li,CF3 SO3 Li,LiClあるいはLiBrなどが挙げられる。なお、電解質塩としては、リチウム塩を用いることが好ましいが、リチウム塩でなくてもよい。充放電に寄与するリチウムイオンは、正極21などから供給されれば足りるからである。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、例えば、正極活物質と必要に応じて導電剤および結着剤とを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの混合溶剤に分散させて正極合剤スラリーを作製する。次いで、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し乾燥させ圧縮して正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製する。続いて、正極21に正極リード25を溶接する。
また、例えば、本実施の形態に係る負極活物質と必要に応じて他の負極活物質と結着剤とを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの混合溶剤に分散させて負極合剤スラリーを作製する。次いで、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し乾燥させ圧縮して負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。続いて、負極22に負極リード26を溶接する。
そののち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。次いで、電解液を電池缶11の内部に注入する。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が完成する。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、電解質を介して負極22に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、電解質を介して正極21に吸蔵される。ここでは、負極22に、第1の構成元素であるスズと、第2の構成元素と、第3の構成元素とを含み、第2の構成元素の含有量が9.8質量%以上49質量%以下である負極活物質を含有するようにしたので、高い容量を保ちつつ、低結晶あるいは非晶質な構造となり、サイクル特性が改善される。
このように本実施の形態に係る二次電池によれば、負極活物質に、第1の構成元素としてスズを含むようにしたので、高容量を得ることができる。また、第2の構成元素として、ホウ素,炭素,アルミニウムおよびリンからなる群のうちの少なくとも1種を含み、これらの含有量を9.8質量%以上49質量%以下とするようにしたので、結晶性の低いあるいは非晶質な構造を有するようにすることができ、サイクル特性を向上させることができる。更に、第3の構成元素として、ケイ素,マグネシウム,チタン,バナジウム,クロム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ガリウム,ジルコニウム,ニオブ,モリブデン,銀,インジウム,セリウム,ハフニウム,タンタル,タングステンおよびビスマスからなる群のうちの少なくとも1種を含むようにしたので、容量をより高く、またはサイクル特性をより向上させることができる
また、電解質にハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を含むようにすれば、負極22における溶媒の分解反応を抑制することができ、サイクル特性を更に向上させることができる。更にまた、電解質に不飽和化合物の環状炭酸エステルを含むようにしても、サイクル特性を向上させることができる。
(第2の電池)
図3は、第2の二次電池の構成を表すものである。この二次電池は、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものであり、小型化,軽量化および薄型化が可能となっている。
正極リード31および負極リード32は、それぞれ、外装部材40の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード31および負極リード32は、例えば、アルミニウム,銅,ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回電極体30とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
なお、外装部材40は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム,ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
図4は、図3に示した巻回電極体30のI−I線に沿った断面構造を表すものである。巻回電極体30は、正極33と負極34とをセパレータ35および電解質層36を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ37により保護されている。
正極33は、正極集電体33Aの片面あるいは両面に正極活物質層33Bが設けられた構造を有している。負極34は、負極集電体34Aの片面あるいは両面に負極活物質層34Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層34Bの側が正極活物質層33Bと対向するように配置されている。正極集電体33A,正極活物質層33B,負極集電体34A,負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、それぞれ上述した正極集電体21A,正極活物質層21B,負極集電体22A,負極活物質層22Bおよびセパレータ23と同様である。
電解質層36は、電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。電解液(すなわち溶媒、電解質塩など)の構成は、図1に示した円筒型の二次電池と同様である。高分子化合物は、例えばポリフッ化ビニリデンあるいはフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系高分子化合物、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、またはポリアクリロニトリルなどが挙げられる。特に、酸化還元安定性の観点からは、フッ素系高分子化合物が望ましい。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、正極33および負極34のそれぞれに、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させて電解質層36を形成する。そののち、正極集電体33Aの端部に正極リード31を溶接により取り付けると共に、負極集電体34Aの端部に負極リード32を溶接により取り付ける。次いで、電解質層36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ37を接着して巻回電極体30を形成する。最後に、例えば、外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込み、外装部材40の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間には密着フィルム41を挿入する。これにより、図3および図4に示した二次電池が完成する。
また、この二次電池は、次のようにして製造してもよい。まず、上述したようにして正極33および負極34を作製し、正極33および負極34に正極リード31および負極リード32を取り付けたのち、正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ37を接着して、巻回電極体30の前駆体である巻回体を形成する。次いで、この巻回体を外装部材40で挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材40の内部に収納する。続いて、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物とを用意し、外装部材40の内部に注入する。
電解質用組成物を注入したのち、外装部材40の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。次いで、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層36を形成し、図3に示した二次電池を組み立てる。
この二次電池は、第1の二次電池と同様に作用し、同様の効果を得ることができる。
(第3の電池)
図5は、第3の二次電池の断面構成を表すものである。この二次電池は、正極リード51が取り付けられた正極52と、負極リード53が取り付けられた負極54とを、電解質層55を介して対向配置させた平板状の電極体50をフィルム状の外装部材56に収容したものである。外装部材56の構成は、上述した外装部材40と同様である。
正極52は、正極集電体52Aに正極活物質層52Bが設けられた構造を有している。負極54は、負極集電体54Aに負極活物質層54Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層54Bの側が正極活物質層52Bと対向するように配置されている。正極集電体52A,正極活物質層52B,負極集電体54A,負極活物質層54Bの構成は、それぞれ上述した正極集電体21A,正極活物質層21B,負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bと同様である。
電解質層55は、例えば、固体電解質により構成されている。固体電解質には、例えば、リチウムイオン導電性を有する材料であれば無機固体電解質、高分子固体電解質のいずれも用いることができる。無機固体電解質としては、窒化リチウムあるいはヨウ化リチウムなどを含むものなどが挙げられる。高分子固体電解質は、主に、電解質塩と電解質塩を溶解する高分子化合物とからなるものである。高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートなどのエステル系高分子化合物、アクリレート系高分子化合物を単独あるいは混合して、または共重合させて用いることができる。
高分子固体電解質は、例えば、高分子化合物と、電解質塩と、混合溶剤とを混合したのち、混合溶剤を揮発させて形成することができる。また、電解質塩と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを、混合溶剤に溶解させ、混合溶剤を揮発させたのち、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることにより形成することもできる。
無機固体電解質は、例えば、正極52あるいは負極54の表面にスパッタリング法,真空蒸着法,レーザーアブレーション法,イオンプレーティング法,あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition )法などの気相法、またはゾルゲル法などの液相法により形成することができる。
この二次電池は、第1または第2の二次電池と同様に作用し、同様の効果を得ることができる。
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1−1〜1−8)
まず、負極活物質を作製した。原料であるSn−Co合金粉末と、炭素粉末とを所定の割合で混合し、全体の投入粉末量を10gとして乾式混合した。この混合物を直径9mmの鋼玉約400gと共に、伊藤製作所製の遊星ボールミルの反応容器中にセットした。反応容器中をアルゴン雰囲気に置換し、毎分250回転の回転速度による10分間の運転と、10分間の休止とを、運転時間の合計が20時間になるまで繰り返した。そののち、反応容器を室温まで冷却して合成された負極活物質粉末を取り出し、200メッシュのふるいを通して粗粉を取り除いた。得られた負極活物質粉末について組成分析を行った。炭素の含有量は、炭素・硫黄分析装置により測定し、スズおよびコバルトの含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光分析により測定した。また、X線回折により反応相の回折ピークの半値幅を測定した。これらの分析値を表1に示す。
次に、図1に示した円筒型の二次電池を作製した。まず、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを0.5:1のモル比で混合し、空気中において890℃で5時間焼成してリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。得られたLiCoO2 についてX線回折を行ったところ、JCPDS(Joint Committee of Powder Diffraction Standard)ファイルに登録されたLiCoO2 のピークとよく一致していた。続いて、このリチウム・コバルト複合酸化物を粉砕して平均粒子径が10μmの粉末状とし、正極活物質とした。
次いで、このLiCoO2 95質量部と、Li2 CO3 粉末5質量部とを混合し、この混合物91質量部と、導電材としてグラファイト(ロンザ製 KS-15 )6質量部と、結着材としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合し、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとした。そののち、この正極合剤スラリーを厚み20μmの帯状のアルミニウム箔よりなる正極集電体21Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層21Bを形成し正極21を作製した。そののち、正極集電体21Aの一端にアルミニウム製の正極リード25を取り付けた。
また、上述した負極活物質粉末80質量部と、導電剤としてグラファイト(ロンザ製 KS-15 )11質量部およびアセチレンブラック1質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン8質量部とを混合し、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとした。そののち、この負極合剤スラリーを厚み10μmの帯状銅箔よりなる負極集電体22Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、一定圧力で圧縮成型して負極活物質層22Bを形成し負極22を作製した。続いて、負極集電体22Aの一端にニッケル製の負極リード26を取り付けた。
正極21および負極22をそれぞれ作製したのち、厚み25μmのポリプロピレン−ポリエチレン−ポリプロピレンからなる3層構造のセパレータ23(宇部興産製 UP3015 )を用意し、負極22,セパレータ23,正極21,セパレータ23の順に積層してこの積層体を渦巻状に多数回巻回し、粘着テープを用いて巻き終わり部分を固定して巻回電極体20を作製した。
巻回電極体20を作製したのち、巻回電極体20を一対の絶縁板12,13で挟み、負極リード26を電池缶11に溶接すると共に、正極リード25を安全弁機構15に溶接して、巻回電極体20をニッケルめっきした鉄製の電池缶11の内部に収納した。そののち、電池缶11の内部に電解液を減圧方式により注入して、直径18mm、高さ65mmの円筒型の二次電池を作製した。電解液には、炭酸エチレンと炭酸ジメチルとを、炭酸エチレン:炭酸ジメチル=40:60の質量比で混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を1mol/lとなるように溶解させたものを用いた。
実施例1−1〜1−8に対する比較例1−1〜1−5として、原料であるSn−Co合金粉末と、炭素粉末とを所定の割合で混合して負極活物質を合成したことを除き、またはSn−Co合金粉末を負極活物質として用いたことを除き、他は実施例1−1〜1−8と同様にして二次電池を作製した。これらの負極活物質粉末についても炭素,スズおよびコバルトの含有量、並びに反応相の回折ピークの半値幅を測定した。これらの分析値を表1に併せて示す。
得られた実施例1−1〜1−8,比較例1−1〜1−5の二次電池について、サイクル特性を測定した。それらの結果を表1に示す。なお、サイクル特性は次のようにして測定した。
まず、25℃の環境において2500mAの定電流定電圧充電を上限電圧4.2Vまで行ったのち、2000mAの定電流放電を終止電圧2.6Vまで行い、同一の充放電条件で150サイクル行い、1サイクル目の放電容量を100とした場合の150サイクル目の放電容量維持率(%)を求めた。
表1から分かるように、容量維持率は、負極活物質における炭素の含有量が増加するに伴い大きくなり、極大値を示したのち低下した。すなわち、負極活物質における炭素の含有量を9.8質量%以上49質量%以下とすれば、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
(実施例2−1〜2−8)
化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸エチレンと、炭酸ジメチルとを、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸エチレン:炭酸ジメチル=20:20:60の質量比で混合した溶媒を用いたことを除き、他は実施例1−1〜1−8と同様にして二次電池を作製した。
実施例2−1〜2−8に対する比較例2−1〜2−5として、原料であるSn−Co合金粉末と、炭素粉末とを比較例1−1〜1−3,1−5と同様の割合で混合して負極活物質粉末を合成したことを除き、または比較例1−4と同様のSn−Co合金粉末を負極活物質として用いたことを除き、他は実施例2−1〜2−8と同様にして二次電池を作製した。
得られた実施例2−1〜2−8,比較例2−1〜2−5の二次電池について実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を表2および図6に示す。なお、図6では、実施例1−1〜1−8,比較例1−1〜1−5の結果と共に示した。
表2および図6から分かるように、実施例1−1〜1−8と同様の結果が得られた。また、化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含む電解液を用いた実施例2−1〜2−8によれば、これを含まない電解液を用いた実施例1−1〜1−8よりも容量維持率が飛躍的に向上した。すなわち、電解液に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
(実施例3−1〜3−6)
原料であるSn−Fe合金粉末と、炭素粉末とを所定の割合で混合して負極活物質粉末を合成したことを除き、他は実施例1−1〜1−8と同様にして二次電池を作製した。その際、負極活物質粉末について組成分析を行った。炭素の含有量は、炭素・硫黄分析装置により測定し、スズおよび鉄の含有量は、ICP発光分析により測定した。また、X線回折により反応相の回折ピークの半値幅を測定した。これらの分析値を表3に示す。
実施例3−1〜3−6に対する比較例3−1〜3−3として、原料であるSn−Fe合金粉末と、炭素粉末とを所定の割合で混合して負極活物質粉末を合成したことを除き、またはSn−Fe合金粉末を負極活物質として用いたことを除き、他は実施例3−1〜3−6と同様にして二次電池を作製した。その際、負極活物質粉末における炭素,鉄およびコバルトの含有量、並びに反応相の回折ピークの半値幅は、実施例3−1〜3−6と同様にして測定した。これらの分析値を表3に併せて示す。
得られた実施例3−1〜3−6,比較例3−1〜3−3の二次電池について、実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を表3に示す。
表3から分かるように、実施例1−1〜1−8と同様の結果が得られた。すなわち、負極活物質における炭素の含有量を9.8質量%以上49質量%とすれば、鉄を含むようにしても、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
(実施例4−1〜4−6)
化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸エチレンと、炭酸ジメチルとを、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸エチレン:炭酸ジメチル=20:20:60の質量比で混合した溶媒を用いたことを除き、他は実施例3−1〜3−6と同様にして二次電池を作製した。
実施例4−1〜4−6に対する比較例4−1〜4−3として、原料であるSn−Fe合金粉末と、炭素粉末とを比較例3−1,3−3と同様の割合で混合して負極活物質粉末を合成したことを除き、または比較例3−2と同様のSn−Fe合金粉末を負極活物質として用いたことを除き、他は実施例4−1〜4−6と同様にして二次電池を作製した。
得られた実施例4−1〜4−6,比較例4−1〜4−3の二次電池について、実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を表4および図7に示す。なお、図7では、実施例3−1〜3−6,比較例3−1〜3−3の結果も併せて示した。
表4および図7から分かるように、実施例3−1〜3−6と同様の結果が得られた。また、化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含む電解液を用いた実施例4−1〜4−6によれば、これを含まない電解液を用いた実施例3−1〜3−6よりも容量維持率が飛躍的に向上した。すなわち、電解液に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
(実施例5−1〜5−6)
原料であるSn−Co合金粉末と、ホウ素粉末とを所定の割合で混合して負極活物質粉末を合成したことを除き、他は実施例1−1〜1−8と同様にして二次電池を作製した。その際、負極活物質粉末について組成分析を行った。スズ,コバルトおよびホウ素の含有量は、ICP発光分析により測定した。また、X線回折により反応相の回折ピークの半値幅を測定した。これらの分析値を表5に示す。
実施例5−1〜5−6に対する比較例5−1,5−2として、原料であるSn−Co合金粉末と、ホウ素粉末とを所定の割合で混合して負極活物質粉末を合成したことを除き、他は実施例5−1〜5−6と同様にして二次電池を作製した。その際、負極活物質におけるホウ素,スズおよびコバルトの含有量、並びに反応相の回折ピークの半値幅は、実施例5−1〜5−6と同様にして測定した。これらの分析値を表5に併せて示す。
得られた実施例5−1〜5−6,比較例5−1,5−2の二次電池について実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を比較例1−4の結果と共に表5に示す。
表5から分かるように、実施例1−1〜1−8と同様の結果が得られた。すなわち、負極活物質におけるホウ素の含有量を9.8質量%以上49質量%以下としても、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
(実施例6−1〜6−6)
化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸エチレンと、炭酸ジメチルとを、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸エチレン:炭酸ジメチル=20:20:60の質量比で混合した溶媒を用いたことを除き、他は実施例5−1〜5−6と同様にして二次電池を作製した。
実施例6−1〜6−6に対する比較例6−1,6−2として、原料であるSn−Co合金粉末と、ホウ素粉末とを比較例5−1,5−2と同様の割合で混合して負極活物質粉末を合成したことを除き、他は実施例6−1〜6−6と同様にして二次電池を作製した。
得られた実施例6−1〜6−6,比較例6−1,6−2の二次電池について実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を比較例2−4の結果と共に表6および図8に示す。なお、図8では、実施例5−1〜5−6、比較例1−4,5−1,5−2の結果も併せて示した。
表6および図8から分かるように、実施例5−1〜5−6と同様の結果が得られた。また、化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含む電解液を用いた実施例6−1〜6−6によれば、これを含まない電解液を用いた実施例5−1〜5−6よりも容量維持率が飛躍的に向上した。すなわち、電解液に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
(実施例7−1〜7−6)
原料であるSn−Co合金粉末と、アルミニウム粉末とを所定の割合で混合して負極活物質粉末を合成したことを除き、他は実施例1−1〜1−8と同様にして二次電池を作製した。その際、負極活物質粉末について組成分析を行った。スズ,コバルトおよびアルミニウムの含有量は、ICP発光分析により測定した。また、X線回折により反応相の回折ピークの半値幅を測定した。これらの分析値を表7に示す。
実施例7−1〜7−6に対する比較例7−1〜7−3として、原料であるSn−Co合金粉末と、アルミニウム粉末とを所定の割合で混合して負極活物質粉末を合成したことを除き、他は実施例7−1〜7−6と同様にして二次電池を作製した。その際、負極活物質粉末におけるアルミニウム,スズおよびコバルトの含有量、並びに反応相の回折ピークの半値幅は、実施例7−1〜7−6と同様にして測定した。これらの分析値を表7に併せて示す。
得られた実施例7−1〜7−6,比較例7−1〜7−3の二次電池について実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を比較例1−4の結果と共に表7に示す。
表7から分かるように、実施例1−1〜1−8と同様の結果が得られた。すなわち、負極活物質におけるアルミニウムの含有量を9.8質量%以上49質量%以下としても、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
(実施例8−1〜8−6)
化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸エチレンと、炭酸ジメチルとを、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸エチレン:炭酸ジメチル=20:20:60の質量比で混合した溶媒を用いたことを除き、他は実施例7−1〜7−6と同様にして二次電池を作製した。
実施例8−1〜8−6に対する比較例8−1〜8−3として、原料であるSn−Co合金粉末と、アルミニウム粉末とを比較例7−1〜7−3と同様の割合で混合して負極活物質粉末を合成したことを除き、他は実施例8−1〜8−6と同様にして二次電池を作製した。
得られた実施例8−1〜8−6,比較例8−1〜8−3について実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を比較例2−4の結果と共に表8および図9に示す。なお、図9では、実施例7−1〜7−6,比較例1−4,7−1〜7−3の結果も併せて示した。
表8および図9から分かるように、実施例7−1〜7−6と同様の結果が得られた。また、化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含む電解液を用いた実施例8−1〜8−6によれば、これを含まない電解液を用いた実施例7−1〜7−6よりも容量維持率が飛躍的に向上した。すなわち、電解液に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
(実施例9−1〜9−6)
原料であるSn−Co合金粉末と、リン粉末とを所定の割合で混合して負極活物質粉末を合成したことを除き、他は実施例1−1〜1−8と同様にして二次電池を作製した。その際、負極活物質粉末について組成分析を行った。スズ,コバルトおよびリンの含有量は、ICP発光分析により測定した。また、X線回折により反応相の回折ピークの半値幅を測定した。これらの分析値を表9に示す。
実施例9−1〜9−6に対する比較例9−1〜9−3として、原料であるSn−Co合金粉末と、リン粉末とを所定の割合で混合して負極活物質粉末を合成したことを除き、他は実施例9−1〜9−6と同様にして二次電池を作製した。その際、負極活物質におけるリン,スズおよびコバルトの含有量、並びに反応相の回折ピークの半値幅は、実施例9−1〜9−6と同様にして測定した。これらの分析値を表9に併せて示す。
得られた実施例9−1〜9−6,比較例9−1〜9−3の二次電池について実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を比較例1−4の結果と共に表9に示す。
表9から分かるように、実施例1−1〜1−8と同様の結果が得られた。すなわち、負極活物質におけるリンの含有量を9.8質量%以上49質量%以下としても、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
(実施例10−1〜10−6)
化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸エチレンと、炭酸ジメチルとを、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸エチレン:炭酸ジメチル=20:20:60の質量比で混合した溶媒を用いたことを除き、他は実施例9−1〜9−6と同様にして二次電池を作製した。
実施例10−1〜10−6に対する比較例10−1〜10−3として、原料であるSn−Co合金粉末と、リン粉末とを比較例9−1〜9−3と同様の割合で混合して負極活物質粉末を合成したことを除き、他は実施例10−1〜10−6と同様にして二次電池を作製した。
得られた実施例10−1〜10−6,比較例10−1〜10−3の二次電池について実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を比較例2−4の結果と共に表10および図10に示す。なお、図10では、実施例9−1〜9−6,比較例1−4,9−1〜9−3の結果も併せて示した。
表10および図10から分かるように、実施例9−1〜9−6と同様の結果が得られた。また、化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含む電解液を用いた実施例10−1〜10−6によれば、これを含まない電解液を用いた実施例9−1〜9−6よりも容量維持率が飛躍的に向上した。すなわち、電解液に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
(実施例11−1〜11−19)
原料であるSnと第3の構成元素との合金粉末と、炭素粉末とを所定の割合で混合して負極活物質粉末を合成したことを除き、他は実施例1−5,3−4と同様にして二次電池を作製した。その際、第3の構成元素は、マグネシウム,チタン,バナジウム,クロム,マンガン,ニッケル,銅,亜鉛,ガリウム,ジルコニウム,ニオブ,モリブデン,銀,インジウム,セリウム,ハフニウム,タンタル,タングステンまたはビスマスとした。また、負極活物質粉末について組成分析を行った。炭素の含有量は、炭素・硫黄分析装置により測定し、スズおよび第3の構成元素の含有量は、ICP発光分析により測定した。更に、X線回折により反応相の回折ピークの半値幅を測定した。これらの分析値を表11に示す。なお、組成における数値は各構成元素の割合を質量比で表したものである。
得られた実施例11−1〜11−19の二次電池について、実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を実施例1−5,3−4の結果と共に表11に示す。
表11から分かるように、実施例1−5,3−4と同様の結果が得られた。すなわち、第3の構成元素としてマグネシウム,チタン,バナジウム,クロム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ガリウム,ジルコニウム,ニオブ,モリブデン,銀,インジウム,セリウム,ハフニウム,タンタル,タングステンあるいはビスマスを含むようにしても、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
(実施例12−1〜12−19)
化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸エチレンと、炭酸ジメチルとを、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸エチレン:炭酸ジメチル=20:20:60の質量比で混合した溶媒を用いたことを除き、他は実施例11−1〜11−19と同様にして二次電池を作製した。
得られた実施例12−1〜12−19の二次電池について、実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を実施例2−5,4−4の結果と共に表12に示す。
表11,12から分かるように、実施例11−1〜11−19と同様の結果が得られた。また、化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含む電解液を用いた実施例12−1〜12−19によれば、これを含まない電解液を用いた実施例11−1〜11−19よりも、容量維持率が飛躍的に向上した。すなわち、電解液に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
(実施例13−1,13−2)
原料であるSn−Co−In合金粉末、またはSn−Co−In−Ti合金粉末と、炭素粉末とを所定の割合で混合して負極活物質粉末を合成したことを除き、他は実施例1−1〜1−8と同様にして二次電池を作製した。その際、負極活物質粉末について組成分析を行った。炭素の含有量は、炭素・硫黄分析装置により測定し、スズ,コバルト,インジウムおよびチタンの含有量は、ICP発光分析により測定した。また、X線回折により反応相の回折ピークの半値幅を測定した。これらの分析値を表13に示す。なお、組成における数値は各構成元素の割合を質量比で表したものである。
得られた実施例13−1,13−2の二次電池について、実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を表13に併せて示す。
表13から分かるように実施例1−5,3−4,11−1〜11−19と同様の結果が得られた。すなわち、負極活物質に第3の構成元素を2種以上を含むようにしても、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
(実施例14−1,14−2)
化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸エチレンと、炭酸ジメチルとを、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸エチレン:炭酸ジメチル=20:20:60の質量比で混合した溶媒を用いたことを除き、他は実施例13−1,13−2と同様にして二次電池を作製した。
得られた実施例14−1,14−2の二次電池について実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を表14に併せて示す。
表13,14から分かるように、実施例13−1,13−2と同様の結果が得られた。また、化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含む電解液を用いた実施例14−1,14−2によれば、これを含まない電解液を用いた実施例13−1,13−2よりも容量維持率が飛躍的に向上した。すなわち、電解液に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
(実施例15−1)
原料であるSn−Co合金粉末と、ケイ素粉末と、炭素粉末とを所定の割合で混合して負極活物質粉末を合成したことを除き、他は実施例1−1〜1−8と同様にして二次電池を作製した。その際、負極活物質粉末について組成分析を行った。炭素の含有量は、炭素・硫黄分析装置により測定し、スズ,コバルトおよびケイ素の含有量は、ICP発光分析により測定した。また、X線回折により反応相の回折ピークの半値幅を測定した。これらの分析値を表15に示す。なお、組成における数値は各構成元素の割合を質量比で表したものである。
得られた実施例15−1の二次電池について、実施例1−1〜1−8と同様にして、サイクル特性を測定した。その結果を初回放電容量および実施例1−6の結果と共に表15に併せて示す。
表15から分かるように、ケイ素を含む負極活物質を用いた実施例15−1によれば、ケイ素を含まない負極活物質を用いた実施例1−5よりも容量が向上した。
すなわち、負極活物質にケイ素を含むようにすれば、容量をより高くすることができることが分かった。
(実施例16−1)
化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸エチレンと、炭酸ジメチルとを、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸エチレン:炭酸ジメチル=20:20:60の質量比で混合した溶媒を用いたことを除き、他は実施例15−1と同様にして二次電池を作製した。
得られた実施例16−1の二次電池について、実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。その結果を実施例2−5の結果と共に表16に併せて示す。
表15,16から分かるように、実施例15−1と同様の結果が得られた。また、化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含む電解液を用いた実施例16−1によれば、これを含まない電解液を用いた実施例15−1よりも容量維持率が向上した。すなわち、電解液に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
(実施例17−1〜17−18)
化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと炭酸エチレンと炭酸ジメチルとを混合した溶媒、または4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと炭酸ジメチルとを混合した溶媒、または4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと炭酸プロピレンと炭酸ジメチルとを混合した溶媒を用いたことを除き、他は実施例1−5,2−5と同様にして二次電池を作製した。その際、実施例17−1〜17−9における4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸エチレン:炭酸ジメチル(質量比)は、それぞれ、0.1:39.9:60、0.5:39.5:60、1:39:60、5:35:60、10:30:60、15:25:60、25:15:60、30:10:60、35:5:60とし、実施例17−10〜17−16における4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸ジメチル(質量比)は、それぞれ、40:60、50:50、60:40、65:35、70:30、80:20、90:10とし、実施例17−17,17−18における4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸プロピレン:炭酸ジメチル(質量比)は、それぞれ30:10:60、20:20:60とした。
得られた実施例17−1〜17−18の二次電池について実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を実施例1−5,2−5の結果と共に表17に示す。
表17から分かるように、実施例1−5,2−5,17−1〜17−16によれば、容量維持率は、溶媒における4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量の増加に伴い大きくなり、極大値を示したのち、低沸点溶媒である炭酸ジメチルの含有量の減少に伴い低下した。また実施例17−17,17−18によれば、高沸点溶媒として炭酸プロピレンを含むようにしても容量維持率が向上した。すなわち、溶媒における4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量は0.1質量%以上80質量%以下の範囲内で効果的であることが分かった。また、炭酸エチレンに代えて他の高沸点溶媒を用いても、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
(実施例18−1,18−2)
化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと炭酸エチレンと炭酸エチルメチルとを、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸エチレン:炭酸エチルメチル=20:20:60の質量比で混合した溶媒、または4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと炭酸エチレンと炭酸ジエチルとを、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸エチレン:炭酸ジエチル=20:20:60の質量比で混合した溶媒を用いたことを除き、他は実施例2−5と同様にして二次電池を作製した。
得られた実施例18−1,18−2の二次電池について実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を実施例2−5の結果と共に表18に示す。
表18から分かるように、実施例2−5と同様の結果が得られた。すなわち、電解液に炭酸ジメチル以外の他の低沸点溶媒を用いても、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
(実施例19−1〜19−6)
化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン以外のハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体と、炭酸エチレンと、炭酸ジメチルとを、ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体:炭酸エチレン:炭酸ジメチル=20:20:60の質量比で混合した溶媒を用いたことを除き、他は実施例1−5,2−5と同様にして二次電池を作製した。その際、ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体は、実施例19−1では、化4に示した4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、実施例19−2では、化6に示した4−ジフルオロ−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、実施例19−3では、化7に示した4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、実施例19−4では、化9に示した4−ブロモ−1,3−ジオキソラン−2−オン、実施例19−5では、化10に示した4−ヨード−1,3−ジオキソラン−2−オン、実施例19−6では、化11に示した4−フルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンとした。
得られた実施例19−1〜19−6の二次電池について実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を実施例1−5,2−5の結果と共に表19に示す。
表19から分かるように、実施例2−5と同様の結果が得られた。また、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含む電解液を用いた実施例2−5によれば、他のハロゲン原子を有する環状の炭酸エステルを含む電解液を用いた実施例19−1〜19−6よりも容量維持率が向上した。
すなわち、電解液にハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を含むようにすれば、サイクル特性を向上させることができ、特に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含むようにすれば、好ましいことが分かった。
(実施例20−1)
炭酸エチレンと、炭酸ジメチルと、1, 3−ジオキソール−2−オンとを、炭酸エチレン:炭酸ジメチル:1, 3−ジオキソール−2−オン=38:60:2の質量比で混合した溶媒を用いたことを除き、他は実施例1−5と同様にして二次電池を作製した。
得られた実施例20−1の二次電池について実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。その結果を実施例1−5の結果と共に表20に示す。
表20から分かるように、1, 3−ジオキソール−2−オンを含む電解液を用いた実施例20−1によれば、1, 3−ジオキソール−2−オンを含まない電解液を用いた実施例1−5よりも容量維持率が向上した。すなわち、電解液に1, 3−ジオキソール−2−オンを含むようにすれば、サイクル特性がより向上させることができることが分かった。
(実施例21−1〜21−7)
化3に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸エチレンと、炭酸ジメチルと、1, 3−ジオキソール−2−オンとを混合した溶媒を用いたことを除き、他は実施例17−5と同様にして二次電池を作製した。その際、実施例21−1〜21−7における4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸エチレン:炭酸ジメチル:1, 3−ジオキソール−2−オン(質量比)は、それぞれ、10:29.5:60:0.5、10:29:60:1、10:28:60:2、10:25:60:5、10:22:60:8、10:20:60:10、10:18:60:12とした。
得られた実施例21−1〜21−7の二次電池について、実施例1−1〜1−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を実施例17−5の結果と共に表21に示す。
表21から分かるように、1, 3−ジオキソール−2−オンを含む電解液を用いた実施例21−1〜21−7によれば、1, 3−ジオキソール−2−オンを含まない電解液を用いた実施例17−5よりも容量維持率が向上した。また、容量維持率は、1, 3−ジオキソール−2−オンの含有量の増加に伴い大きくなり、極大値を示したのち低下した。すなわち、電解液に1, 3−ジオキソール−2−オンを含むようにすれば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含むようにしても、サイクル特性をより向上させることができ、特に1, 3−ジオキソール−2−オンの含有量が0.5質量%以上10質量%以下の範囲内であれば、好ましいことが分かった。
(実施例22−1〜22−8,23−1〜23−8)
図3および図4に示した二次電池を作製した。まず、実施例1−1〜1−8と同様にして正極33および負極34を作製した。その際、正極33には、導電材としてケッチェンブラック(ライオン製)を用いた。また、Sn−Co合金粉末と、炭素粉末とを混合して合成した負極活物質を用いた負極34には、導電材としてのグラファイト(ロンザ製 KS-15 )に代えて、他のグラファイト(JFE スチール製 球晶黒鉛 MESOPHASE FINE CARBON ・ GRAPHITE POWDER )を用いた。
次いで、高分子化合物として、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体のうち分子量が重量平均分子量で70万であるもの(A)と、31万であるもの(B)とを(A):(B)=9:1の質量比で混合したものを用意した。共重合体におけるヘキサフルオロプロピレンの割合は7質量%とした。続いて高分子化合物と、電解液と、混合溶剤である炭酸ジメチルとを、高分子化合物:電解液:炭酸ジメチル=1:4:8の質量比で混合し、70℃で攪拌して溶解させ、ゾル状の前駆溶液を作製した。電解液には、溶媒に電解質塩としてLiPF6 を0.7mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。溶媒は、実施例22−1〜22−8では、炭酸エチレンと、炭酸プロピレンと、1,3−ジオキソール−2−オンとを、炭酸エチレン:炭酸プロピレン:1,3−ジオキソール2−オン=49:49:2の質量比で混合したものとし、実施例23−1〜23−8では、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸プロピレンと、1,3−ジオキソール−2−オンとを、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸プロピレン:1,3−ジオキソール2−オン=49:49:2の質量比で混合したものとした。
得られた前駆溶液を、正極33および負極34のそれぞれにバーコーターを用いて塗布したのち、70℃の恒温槽で混合溶剤を揮発させゲル状の電解質層36を形成した。
そののち、電解質層36をそれぞれ形成した正極33と負極34とを、厚み16μmのポリエチレンからなるセパレータ35(東燃化学製 E16MMS )を介して積層し、平たく巻回して巻回電極体30を形成した。
得られた巻回電極体30をラミネートフィルムよりなる外装部材40に減圧封入することにより図3および図4に示した二次電池を作製した。
実施例22−1〜22−8,23−1〜23−8に対する比較例22−1〜22−5,23−1〜23−5として、原料であるSn−Co合金粉末と、炭素粉末とを比較例1−1〜1−3,1−5と同様の割合で混合して合成した負極活物質粉末を用いたことを除き、または比較例1−4と同様のSn−Co合金粉末を負極活物質として用いたことを除き、他は実施例22−1〜22−8,23−1〜23−8と同様にして二次電池を作製した。
得られた実施例22−1〜22−8,23−1〜23−8および比較例22−1〜22−5,23−1〜23−5の二次電池について、サイクル特性を測定した。それらの結果を表22,23および図11に示す。
なお、サイクル特性は次のようにして測定した。まず、25℃の環境において830mAの定電流定電圧充電を終止電圧2.6Vまで行い、660mAの定電流放電を終止電圧2.6Vまで行い、同一の充放電条件で150サイクル行い、1サイクル目の放電容量を100とした場合の150サイクル目の放電容量維持率(%)を求めた。
表22,23および図11から分かるように、実施例1−1〜1−8,2−1〜2−8と同様の結果が得られた。すなわち、ゲル状の電解質を用いても、負極活物質における炭素の含有量を9.8質量%以上49質量%以下とすれば、サイクル特性を向上させることができ、特に、電解液に、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
(実施例24−1〜24−6,25−1〜25−6,26−1〜26−6,27−1〜27−6,28−1〜28−6,29−1〜29−6)
実施例24−1〜24−6,25−1〜25−6として、原料であるSn−Co合金粉末と、ホウ素粉末とを実施例5−1〜5−6と同様の割合で混合して合成した負極活物質粉末を用いたことを除き、他は実施例22−1〜22−8,23−1〜23−8と同様にして二次電池を作製した。また、実施例24−1〜24−6,25−1〜25−6に対する比較例24−1,24−2,25−1,25−2として、原料であるSn−Co合金粉末と、ホウ素粉末とを比較例5−1,5−2と同様の割合で混合して合成した負極活物質粉末を用いたことを除き、他は実施例24−1〜24−6,25−1〜25−6と同様にして二次電池を作製した。
実施例26−1〜26−6,27−1〜27−6として、原料であるSn−Co合金粉末と、アルミニウム粉末とを実施例7−1〜7−6と同様の割合で混合して合成した負極活物質粉末を用いたことを除き、他は実施例22−1〜22−8,23−1〜23−8と同様にして二次電池を作製した。また、実施例26−1〜26−6,27−1〜27−6に対する比較例26−1〜26−3,27−1〜27−3として、原料であるSn−Co合金粉末と、アルミニウム粉末とを比較例7−1〜7−3と同様の割合で混合して合成した負極活物質粉末を用いたことを除き、他は実施例26−1〜26−6,27−1〜27−6と同様にして二次電池を作製した。
実施例28−1〜28−6,29−1〜29−6として、原料であるSn−Co合金粉末と、リン粉末とを実施例9−1〜9−6と同様の割合で混合して合成した負極活物質粉末を用いたことを除き、他は実施例22−1〜22−8,23−1〜23−8と同様にして二次電池を作製した。また、実施例28−1〜28−6,29−1〜29−6に対する比較例28−1〜28−3,29−1〜29−3として、原料であるSn−Co合金粉末と、リン粉末とを比較例9−1〜9−3と同様の割合で混合して合成した負極活物質粉末を用いたことを除き、他は実施例28−1〜28−6,29−1〜29−6と同様にして二次電池を作製した。
得られた実施例24−1〜24−6,25−1〜25−6,26−1〜26−6,27−1〜27−6,28−1〜28−6,29−1〜29−6および比較例24−1,24−2,25−1,25−2,26−1〜26−3,27−1〜27−3,28−1〜28−3,29−1〜29−3の二次電池について、実施例22−1〜22−8,23−1〜23−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を比較例22−4,23−4の結果と共に表24〜29および図12〜14に示す。
表24〜29および図12〜14から分かるように、実施例22−1〜22−8,23−1〜23−8と同様の結果が得られた。すなわち、負極活物質におけるホウ素,アルミニウムあるいはリンの含有量を9.8質量%以上49質量%以下としても、サイクル特性を向上させることができ、特に、電解液に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
(実施例30−1,31−1)
原料であるSn−Ti合金粉末と、炭素粉末とを実施例11−2と同様の割合で混合して合成した負極活物質粉末を用いたことを除き、他は実施例22−1〜22−8,23−1〜23−8と同様にして二次電池を作製した。
得られた実施例30−1,31−1の二次電池について、実施例22−1〜22−8,23−1〜23−8と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を表30,31に示す。
表30,31から分かるように、実施例22−5,23−5と同様の結果が得られた。すなわち、第3の構成元素としてマグネシウム,チタン,バナジウム,クロム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ガリウム,ジルコニウム,ニオブ,モリブデン,銀,インジウム,セリウム,ハフニウム,タンタル,タングステンあるいはビスマスを含むようにしても、サイクル特性を向上させることができ、特に、電解液に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、巻回構造の二次電池およびシート型の二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明は、コイン型、ボタン型あるいは角型などの外装部材を用いた他の形状を有する二次電池、または巻回構造以外の他の構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。
また、実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、負極活物質と反応可能であればナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの長周期型周期表における他の1族の元素、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などの長周期型周期表における2族の元素、またはアルミニウムなどの他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17…ガスケット、20,30…巻回電極体、21,33,52…正極、21A,33A,52A…正極集電体、21B,33B,52B…正極活物質層、22,34,54…負極、22A,34A,54A…負極集電体、22B,34B,54B…負極活物質層、23,35…セパレータ、24…センターピン、25,31,51…正極リード、26,32,53…負極リード、36,55…電解質層、37…保護テープ、40,56…外装部材、41…密着フィルム、50…電極体。