JP4140466B2 - 給紙装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動原稿供給装置(以下、ADF装置と言う)のような給紙装置に関し、特に、給紙(原稿)トレーにセットされた用紙(原稿)の先端部を規制するシャッタの駆動機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電子写真複写機やファクシミリ装置においては、原稿トレーにセットされた原稿を1枚ずつ分離して読取部に向けて給紙するためのADF装置が設けられている。このようなADF装置においては、原稿トレーにセットされた原稿を繰出すピックアップローラと、繰出された原稿を1枚ずつ分離して給送する分離ローラと、該分離ローラの下流側に配設され原稿を読取部に向け搬送する搬送ローラとが設けられている。また、ピックアップローラと分離ローラとの間には、多数枚の原稿を重ねて原稿トレーにセットする際に、その原稿の先端部を規制して紙揃えを行う為のシャッタが設けられている場合もある。
【0003】
上記のようなシャッタを備えたADF装置の例として、特許文献1に開示された給紙装置を挙げることができる。この特許文献1に開示された給紙装置は、上下揺動可能なピックアップアームの先端に回転可能に設けられたピックアップローラにより、原稿トレー上に堆積された原稿をその上層部より繰出すもので、シャッタは、このピックアップローラの揺動の動作に連動して、ピックアップローラと分離ローラとの間の原稿トレー上に出没可能に設けられている。このシャッタは、原稿トレーにセットされた原稿を全部送り出した後、原稿トレー上に突出して次の原稿の先端部を揃えて位置決めするよう機能する。そして、この原稿規制位置(原稿トレー上に突出した位置)と規制しない位置(原稿トレー上から退避した位置)とに、シャッタを各々開閉動作させ、且つ夫々の位置に固定保持させる機構として、プランジャー及び電磁コイルを備えたソレノイド機構が採用されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2003−31413号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1に開示されたシャッタの動作機構は、ソレノイド等の高価な電気部品により構成されるため、部品点数が増えると共に、ピックアップローラ等の他の機構部との同期を図る為の複雑な制御シークエンスも構築する必要があり、部品コスト及び設計・製造コストが嵩む原因となっていた。また、これらソレノイド等を含む機構部の設置スペースも確保する必要があり、装置を小型化するにおいてはまだ十分とは言えなかった。
【0006】
本発明は上記のような実情に鑑みなされたものであり、ソレノイド等の電気部品を使用せず、簡単な機構でシャッタを開閉動作させることを可能とし且つ設置スペースを小さくして装置の小型化を図り得る給紙装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1の発明に係る給紙装置は、上記のような用紙先端揃え用シャッタを備えた給紙装置において、このシャッタが、分離ローラの下流側に配設される搬送ローラにギヤの噛み合いによる伝達手段を介して連接された上下揺動機構に設けられ、該搬送ローラの正転時には、上記伝達手段を介した上下揺動機構の揺動をして、シャッタを用紙載置部上から退避させ且つこの退避状態を維持すると共に、上記搬送ローラの逆転時には上記伝達手段を介した上下揺動機構の揺動をして、シャッタを用紙載置部の上面に突出させ、且つ搬送ローラの停止の間この突出状態を維持するよう構成されていることを特徴とする。
【0008】
従って、搬送ローラの正転時、即ち用紙の搬送時には、シャッタは搬送ローラの正転動作に連動して用紙載置部上から退避し且つこの退避状態を維持しているから、用紙載置部上の用紙はシャッタが障害とならずに、滞ることなく逐次繰出され、目的部位(読取部等)に搬送されていく。また、搬送ローラの逆転時及び停止時は、用紙の繰出・搬送が終了し、次の用紙供給の為の待機状態であって、この時、シャッタは搬送ローラの逆転動作に連動して用紙載置部の上面に突出し且つ搬送ローラの停止の間この突出状態を維持するから、用紙載置部上には多数枚の用紙をシャッタによってその先端部を揃えてセットすることができる。そして、再び搬送ローラが正転を開始すると、シャッタが用紙載置部上から退避し且つこの退避状態を維持し、用紙載置部上の用紙は滞ることなく逐次繰出され、搬送されていく。
【0009】
このように、用紙先端揃え用シャッタは、搬送ローラの正転、逆転及び停止に応じ、上記ギヤの噛み合いによる伝達手段を介した上下揺動機構の揺動をして、用紙載置部上からの退避及びその維持並びに用紙載置部上への突出及びその維持がなされるから、ソレノイド等の高価な電気部品を必要とせず、従って部品コストの高騰を来たさず、またその動作シークエンスに要する設計・製造コストも不要とされる。また、伝達手段がギヤの噛み合いによるものであるから、磨耗による機能低下等の経年変化も生じ難くなる。
【0010】
さらに、請求項1の発明は、上記上下揺動機構が、基端を支点として上下に揺動する第1リンクと、該第1リンクの揺動端に一端がピン結合されその途中の支点部を中心に垂直面域内で回動可能とされた第2リンクとよりなり、上記シャッタは第1リンクの途中に固設され、一方、上記伝達手段は、上記搬送ローラの駆動軸に固設されたギヤと、第2リンクの他端に連成された上記支点部を曲率中心とする円弧ギヤとよりなり、駆動伝達時には上記ギヤと円弧ギヤとが噛み合うよう構成されていることを特徴とする。そして、請求項2の発明では、上記第1リンクと第2リンクとの間に引張スプリングが張設され、この引張スプリングにより上記円弧ギヤが常に上記ギヤに対し噛み合う方向に付勢されていることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、伝達手段が搬送ローラの駆動軸に固設されたギヤと、該ギヤに噛み合う円弧ギヤとからなるから、搬送ローラの正・逆転動作に伴い、円弧ギヤのギヤに対する噛み合いをして、第2リンクがその途中の支点部を中心として垂直面域内で回動する。この第2リンクの垂直面域内での回動に伴い、該第2リンクの上記一端にピン結合された第1リンクがその基端部を支点として上下に揺動する。従って、この第1リンクの上下揺動により、シャッタが用紙載置部上に出没することになる。
【0012】
この場合、搬送ローラが正転或いは逆転を継続すると、上記円弧ギヤがギヤから外れ、両者の噛み合いによる駆動伝達が遮断されることになるが、この状態がシャッタを退避位置或いは突出位置に維持する状態である。従って、搬送ローラの正転時に、円弧ギヤがギヤから外れた後も、搬送ローラが正転を継続すると、シャッタが退避位置に維持され、用紙載置部上の用紙は、シャッタに邪魔されず滞りなく繰出され、目的部位に搬送されていく。また、搬送ローラの逆転時に、円弧ギヤがギヤから外れた後は、搬送ローラは停止するが、シャッタは用紙載置部上に突出し、その状態に維持される。従って、次の用紙を用紙載置部上にセットする際には、この突出したシャッタによって、その先端部を揃えることができる。
【0013】
上記のように、搬送ローラが正転或いは逆転・停止を継続すると、上記円弧ギヤがギヤから外れる。而して、第1リンクと第2リンクとの間に引張スプリングが張設され、この引張スプリングにより円弧ギヤが常にギヤに対し噛み合う方向に付勢されるよう構成すれば、搬送ローラが逆転・停止後に円弧ギヤがギヤから外れた状態で搬送ローラを正転させる際には、円弧ギヤがギヤに対して噛み合う方向に付勢されているから、両者の噛み合い関係が再び確立し、搬送ローラの回転動力が円弧ギヤを介して第2リンクに伝達されて、上述のようにシャッタの用紙載置部上からの退避がなされる。
【0014】
また、搬送ローラが正転を継続して円弧ギヤがギヤから外れた状態において、搬送ローラを一旦停止して逆転させる際にも、円弧ギヤがギヤに対して噛み合う方向に付勢されているから、両者の噛み合い関係が再び確立し、搬送ローラの逆転動力が円弧ギヤを介して第2リンクに伝達されて、上述のようにシャッタの用紙載置部上への突出がなされる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1はファクシミリ装置や複写機、或いはファクシミリと複写の両機能(プリンタ機能も含む)を備えた所謂複合機におけるADF1の要部の縦断面図を示すものである。図例のADF1は、シートものの原稿Dを1枚ずつ搬送しながら画像を読み取って、デジタル信号として出力するための原稿送り装置として構成されている。
【0016】
ADF1の原稿供給口部2aには原稿トレー2bが着脱自在に装着され、この原稿供給口部2aと原稿トレー2bとにより原稿載置部(用紙載置部)2が構成されている。原稿供給口部2a上には、原稿載置部2に堆積された原稿(用紙)Dを上層部より繰出すピックアップローラ3が配設され、このピックアップローラ3に引き続き、繰出された原稿を1枚ずつ分離して給送する原稿分離装置4が装備されている。該原稿分離装置4は、分離ローラ4aとこの分離ローラ4aの周体に弾接するよう付勢された分離パッド4bからなる。ピックアップローラ3で繰出された原稿は、分離ローラ4aと分離パッド4bとの間に導入され、分離ローラ4aの回転に伴う両者の紙に対する摩擦係数の差により1枚ずつ分離され、下流側に給送される。4cは、分離パッド4bを分離ローラ4aの周体に弾接させる為の圧縮スプリングである。
【0017】
上記原稿分離装置4により1枚ずつ分離された原稿は、湾曲した搬送路5を経て搬送ローラ6に至り、プレッシャーローラ6aによりニップされて搬送され、プラテン7上を通過して排出ローラ8により排出トレー9上に排出される。原稿が該プラテン7上を通過する際、このプラテン7の下部に待機された読取走査装置10により原稿上の画情報が逐次読み取られ、上記のようにデジタル信号として出力される。この読取走査装置10は、蛍光灯或いは冷陰極管からなる光源10aと、複数のミラー10b…と、集光レンズ10cと、CCD(電荷結合素子)10dとよりなり、これらがユニット化され、キャリッジ10e上に搭載されている。光源10aからの照射光は、プラテン7上の読取ポイントPを通過する原稿により反射され、その後4個のミラー10b…で反射を繰り返し、集光レンズ10cで集光され、CCD10dに入光する(1点鎖線の光路参照)。CCD10dでは、原稿上に描かれた画情報が電気信号に変換され、デジタル信号として出力される。
【0018】
図例の読取走査装置10は、フラットベッドスキャナ(FBS)にも兼用するよう構成されている。即ち、図示を一部省略したが、図1における破断部分の右側にはFBS部11が連成されている。上記キャリッジ10eは、図例ではADF原稿の読取位置に静止された状態を示すが、FBS原稿の読取時には、FBS部11内に移動し、FBS部11内をプラテンガラス12の下面に沿って往復移動し、この往復移動の間、プラテンガラス12上に載置された原稿の画情報が、読取走査装置10によって上記同様に読み取られる。ADF1、原稿トレー2b及び排出トレー9は一体化されてプラテンカバーを構成し、紙面奥側をヒンジ部(不図示)として上下に開閉可能とされている。従って、FBS部11にて原稿読み取りを行う際は、このプラテンカバーを開け、露見したプラテンガラス12上に原稿を載置することによりなされる。
【0019】
上記分離ローラ4a、搬送ローラ6及び排出ローラ8は、1個のモータ(不図示)を駆動源とし、適宜ギヤ或いはベルト等の伝達手段(同)を介し駆動伝達がなされるよう構成されている。また、ピックアップローラ3は、分離ローラ4aの駆動系から駆動伝達されるよう構成されており、以下これについて詳細に説明する。図2は、ピックアップローラ3と分離ローラ4aとをユニット化した駆動機構を下から見上げた状態の斜視図、図3は同分解斜視図である。
【0020】
4dは、分離ローラ4aの駆動軸であり、前記モータの駆動力を得て軸回転する。該駆動軸4dには、後記する差動手段を介して該駆動軸4dと一体回転するプーリー4eが嵌装されている。また、駆動軸4dにはフリー回転可能に分離ローラ4aが嵌装されており、プーリー4e及び分離ローラ4aの細径筒部4e1、4a1には両者を共役するコイルスプリング4fが套嵌されている。このコイルスプリング4fは、スプリングクラッチとして機能するものであり、駆動軸4dが正回転(図2の矢視A方向)する際は、この回転力が該コイルスプリング4fを巻き締めるように組み込まれる。従って、駆動軸4dが正回転し、プーリー4eが一体回転すると、コイルスプリング4fが巻き締まり、上記細径筒部4e1、4a1がコイルスプリング4fを介して互いに緊合する結果、プーリー4eの回転が分離ローラ4aに伝達され、分離ローラ4aが正回転(原稿を給送する方向)、即ちA方向に回転する。
【0021】
上記プーリー4eの回転は、ピックアップローラ3にも伝達される。即ち、上記駆動軸4dには、駆動軸4dを支点として上下に揺動可能なフレーム3aが取付けられており、このフレーム3aの先側に軸回転可能に支持された支軸3bに、ピックアップローラ3がフリー回転可能に嵌装されている。また、この支軸3bには、プーリー3cがフリー回転可能に嵌装されており、このプーリー3cと分離ローラ4a側のプーリー4eとにベルト3dが張設され、分離ローラ4a側のプーリー4eの回転がピックアップローラ3側のプーリー3cに伝達されるようになされている。
【0022】
このプーリー3cの回転は、ワンウェイクラッチ及び差動クラッチを介してピックアップローラ3に伝達される。即ち、支軸3bにはワンウェイクラッチ3f1が嵌装されており、このワンウェイクラッチ3f1とプーリー3cとの外周部には両者を共役してコイルスプリング3fが圧嵌めされている。このコイルスプリング3fは、プーリー3cの正回転方向、即ちA方向(原稿の繰出し方向)が巻き緩み方向となるような関係で組み込まれている。通常の、プーリー3cがA方向に回転することによるワンウェイクラッチ3f1への駆動伝達時には、コイルスプリング3fの巻き緩みを生じず、その巻締め力によって駆動伝達されるように設計されており、これにより、ピックアップローラ3に異常負荷(例えば、原稿を逆方向に引っ張り出す力)がかかったような場合に、コイルスプリング3fが緩み、プーリー3cの駆動伝達系等への衝撃を緩和し、その損耗を防止することができる。
【0023】
ワンウェイクラッチ3f1は、コイルスプリング3fを介して図2に示すA方向の回転力が作用した時には、支軸3bにロックされ、逆に反A方向の力が作用した時にはアンロックするよう機能するものである。このロックにより、プーリー3cのA方向への回転力が支軸3bに駆動伝達される。このようなワンウェイクラッチ3f1としては、上記した機能を奏するものであれば、既知のものが適宜選択採用される。
【0024】
上記ワンウェイクラッチ3f1に隣接して支軸3bに差動クラッチ部材3eが固設され、該差動クラッチ部材3eはスラスト方向に延びるクラッチ爪3e1を備え、また、ピックアップローラ3の端面にはスラスト方向のクラッチ爪3e2が突設され、両クラッチ爪3e1、3e2が噛み合った時に相互の回転伝達がなされる。この両クラッチ爪3e1、3e2による差動クラッチ手段の機能については後記する。
【0025】
上記フレーム3aは、トルクリミット手段を介し、駆動軸4dの正逆回転に連動して上下に揺動する。即ち、駆動軸4dにその軸心に直交するよう貫挿されたピン3gを介し、駆動軸4dに一体化された一方のカップリング部材3hと、フレーム3aの外面に一体若しくは弾接される他方のカップリング部材3iとの間に圧縮スプリング3j(トルクリミッタ)が圧縮状態で弾装されている。従って、駆動軸4dがA方向に正回転する時、両カップリング部材3h、3i間には圧縮スプリング3jの復元弾力によるフリクションが作用しているから、フレーム3aに対してB方向に揺動する力が作用する。フレーム3aがB方向に揺動する結果、図1に示すように原稿トレー2b上に堆積された原稿Dの最上層部にピックアップローラ3が当接する。
【0026】
ピックアップローラ3が原稿Dの最上層部に当接した後も駆動軸4dが正回転を継続すると、ピックアップローラ3の揺動は原稿Dの堆積層によって阻止されるが、駆動軸4dの回転は上記フリクション力に抗して継続される。従って、この駆動軸4dの回転は、ピックアップローラ3及び分離ローラ4aに伝達され、原稿トレー2b上の原稿Dが最上層部から繰出され、1枚ずつ分離されて搬送路5に向け給送される。この繰出し、給送により原稿トレー2b上の原稿Dの堆積層厚が小さくなって行くが、フレーム3aに対しては、駆動軸4dがA方向に回転している間、常にB方向への力が作用しているから、ピックアップローラ3は原稿Dの最上層部に常に押圧付勢され、原稿Dの繰出しが滞りなくなされる。そして、原稿Dの繰出し、給送が完了し、駆動軸4dが一旦停止し、その後反A方向に逆回転すると、圧縮スプリング3jのフリクション作用により、フレーム3aには反B方向の力が作用してその先側が持ち上がり、その後の駆動軸4dの停止によりピックアップローラ3は原稿トレー2b上方の待機位置に保持される。尚、図例では、フレーム3aとカップリング部材3iとの間に、フエルトリング3kが介装されている。このフエルトリング3kは、圧縮スプリング3jのフリクション作用に伴う駆動軸4aとフレーム3aとの一体化を維持すると共に、ピックアップローラ3が原稿の堆積層上に当接してその揺動が阻止された後の、駆動軸4aの回転に伴うカップリング部材3iとフレーム3aとの接触摩擦抵抗を緩和するよう機能する。
【0027】
上記ピックアップローラ3により繰出され、分離ローラ4aにより1枚ずつ分離された原稿Dは、搬送ローラ6に至り、この搬送ローラ6によりレジストされ、読取ポイントPに向け搬送される。搬送ローラ6による周速度は、ピックアップローラ3及び分離ローラ4aの周速度よりやや大とされているが、これは連続供給される原稿の各ページ間隔を確保する為である。従って、搬送路5の長さの関係で、先端が搬送ローラ6に差し掛かった時には、原稿Dの後半部分は、分離ローラ4a及びピックアップローラ3に拘束されているから、その周速度差により原稿Dに搬送負荷(引張り力)が掛かることになる。この原稿Dの引張り力は、分離ローラ4a及びピックアップローラ3に対してスプリングクラッチとしてのコイルスプリング4f及びワンウェイクラッチ3f1をアンロックする(駆動軸4d及び支軸3bとの分離)方向に作用する。従って、分離ローラ4a及びピックアップローラ3はそれぞれの駆動伝達系から遮断され、空回転して上記搬送負荷が軽減される。
【0028】
上記のように、駆動軸4dが正回転している間、ピックアップローラ3は常に原稿Dの最上層部に押圧され、また、プーリー4eからプーリー3cへの駆動伝達系も常に作動している。従って、先行原稿の後端がピックアップローラ3から外れ、上記引張力がピックアップローラ3に作用しなくなると、プーリー3cからピックアップローラ3への駆動伝達が再開し、次原稿の繰出しがなされる。この場合、上記引張力の作用がなくなった後、直ちに次原稿の繰出しがなされると、先行原稿の後端と次原稿の先端が同時に分離ローラ4aに導入されることになるが、次原稿の先端は分離ローラ4aと分離パッド4bとの分離作用によりその進入が阻止される。その為、次原稿の先側部分が分離ローラ4aとピックアップローラ3との間で湾曲し、そのまま次原稿の給送がなされると原稿ジャムが発生することになる。
【0029】
上記のような原稿ジャムの発生を未然に防止するため、図例の機構では、ワンウェイクラッチ3f1とピックアップローラ3との間に差動クラッチ手段を介在させている。この差動クラッチ手段は、上記差動クラッチ部材3eに設けられた爪3e1と、ピックアップローラ3の端部に設けられた爪3e2とよりなる。即ち、ピックアップローラ3が原稿Dにより引っ張られた状態でA方向に空回転している間は、その引張力による周速度が駆動伝達系による周速度より大であるから、ピックアップローラ3側の爪3e2が差動クラッチ部材3e側の爪3e1に対して同回転方向Aの後側より当接した状態にあるが、原稿Dの後端がピックアップローラ3から外れると、上記引張作用が解除され、ピックアップローラ3の空回転が停止する。
【0030】
そして、その後も差動クラッチ部材3eのA方向への回転が継続されるから、差動クラッチ部材3e側の爪3e1が略1回転して、ピックアップローラ3側の爪3e2に対して同回転方向Aの後側より当接する。この当接により、差動クラッチ部材3eからピックアップローラ3への駆動伝達関係が確立し、ピックアップローラ3のA方向への回転が開始する。従って、原稿Dの後端がピックアップローラ3から外れてから、この駆動伝達関係が確立するまでの間は、ピックアップローラ3が停止しているから、先行原稿の後端部がピックアップローラ3から外れ分離ローラ4aを抜け出るまでの間、ピックアップローラ3が停止して次原稿の繰出し動作をしないことになり、先行原稿の後端部と次原稿の先端部とが同時に給送されることがなく、上記のような原稿ジャムが発生することがない。
【0031】
図1に示すように、ピックアップローラ3が待機状態にある時は、原稿載置部2上に用紙先端揃え用シャッタ13が突出している。従って、この状態で原稿トレー2b上に原稿Dをセットする際、このシャッタ13により先端が揃えられる。そして、このシャッタ13は、原稿の給送時には原稿載置部2上から退避し、原稿の給送が終了した後は、再び原稿載置部2上に突出し待機状態とされる。このようなシャッタ13の原稿載置部2上への突出或いは原稿載置部2上からの退避動作は、搬送ローラ6の回転と連動してなされる。以下、この動作について、図4乃至図6を参照して詳細に説明する。
【0032】
図4乃至図6は、シャッタ13の動作機構を示す概略図であり、図4はピックアップローラ3が待機位置にあり且つシャッタ13が原稿載置部2上へ突出した状態を、図5はピックアップローラ3が下降すると共にシャッタ13が退避位置に収納される過程の状態を、図6はシャッタ13が退避位置に収納され原稿の給送が可能な状態をそれぞれ示す。図において、シャッタ13は、基端を支点14aとして上下に揺動する第1リンク14の途中に一体形成されている。該第1リンク14の揺動端には、第2リンク15の一端がピン14bを介して結合されている。第2リンク15は、その途中の支点部15aを中心に垂直面域内で回動可能とされており、上記ピン14bとの結合部分には、該ピン14bを相対摺動可能とする長孔15bが長手方向に沿って開設されている。第2リンク15の他端側には円弧ギヤ16が形成されており、この円弧ギヤ16の曲率中心が上記支点部15aと合致するよう形成されている。
【0033】
搬送ローラ6の駆動軸6bには、ギヤ17が固設され、このギヤ17に上記円弧ギヤ16が噛み合うようになされている。尚、図1、図4〜6においては、搬送ローラ6は、このギヤ17の背後に隠れた状態で示されている。第1リンク14と第2リンク15との間には、引張スプリング18が張設されており、この引張スプリング18の作用により、図4では円弧ギヤ16が常にX方向に弾力付勢された状態、即ち、円弧ギヤ16は、ギヤ17にX方向より接触した状態に維持される。
【0034】
また、分離ローラ4aの駆動軸4dには、プーリー4eが駆動軸4dと一体回転するよう嵌装されており、前記した通りこのプーリー4eの回転がベルト3d及びプーリー3c等を介してピックアップローラ3に回転伝達される。プーリー4eと駆動軸4dとの一体化は、駆動軸4dに対してその軸心に直交するよう貫設されたピン4gとプーリー4eとの係合によってなされる。プーリー4eの端面には、ピン4gとの係合に遊びを持たせる広角の係合空所4hが形成されており、この係合空所4hとピン4gとにより、前記した差動手段が構成される。
【0035】
斯くして、図4の状態から、分離ローラ4aの駆動軸4dがA方向に回転(正回転)を開始すると、同時に搬送ローラ6及びギヤ17もY方向に回転を開始する。円弧ギヤ16が常にX方向に弾力付勢されているから、ギヤ17の回転に伴い、直ちに両者の噛み合い関係が確立し、この噛み合い作用により第2リンク15が支点部15aを中心としてX方向に回転する。この第2リンク15の回転により、ピン14bの長孔15b内の摺動を伴いながら、第1リンク14が支点14aを中心としてZ方向に揺動し、これに伴いシャッタ13の原稿載置部2上からの退避が開始される。図5はこの退避の過程を示している。
【0036】
また、駆動軸4dのA方向への回転開始と同時に、ピックアップローラ3が前記したフレーム3aのB方向への揺動により下降を開始する。この下降は原稿載置部2上の原稿(図4〜6では不図示)の最上層部にピックアップローラ3が当接した時に停止する。この当接した時に、ピックアップローラ3が回転していると、原稿が直ちに繰出されることになるが、この時は、図5に示すようにシャッタ13がまだ退避途中にあり、その為繰出された原稿がシャッタ13に突っかかり、原稿ジャムが発生する原因となることがある。そこで、本実施形態では、ピックアップローラ3が原稿載置部2上の原稿の最上層部に当接しても、直ちにはピックアップローラ3が回転を開始しないよう、差動手段4g、4hによってその回転の遅延がなされる。
【0037】
即ち、図4はその前段階で駆動軸4dが反A方向に逆回転して停止した状態であるので、ピン4gと係合空所4hとは反A方向側で係合しており、A方向では遊びがある状態である。従って、駆動軸4dがA方向に回転を開始しても、この遊びの為にピン4gと係合空所4hとは直ちには係合せず、その為プーリー4eに回転が伝達されず、よって、この間ではピックアップローラ3は回転せず、シャッタ13が完全に退避するまでは原稿の繰出しがなされないのである。
【0038】
図6は、搬送ローラ6がY方向への回転を継続し、第2リンク15が回転し、また第1リンク14が揺動した結果、シャッタ13が原稿載置部2上から完全に退避した状態を示す。そして、この状態では、ピン4gと係合空所4hとがA方向で係合し、駆動軸4dのA方向への回転が、プーリー4e、ベルト3d及びプーリー3cを介してピックアップローラに伝達され、原稿の繰出しがシャッタ13に影響されることなく滞りなくなされる。そして、その後も駆動軸4dのA方向への回転が継続されることにより、原稿載置部2上の原稿は逐次繰出され、給送されて、搬送ローラ6により読取ポイントPに搬送され、排出トレー9に排出されて行く。
【0039】
この間、ギヤ17と円弧ギヤ16との噛み合い関係は解除され、シャッタ13は退避状態が維持されるから、原稿の給送の邪魔になることがない。第1リンク14及び第2リンク15の回転及び揺動の結果、図6に示すように両者の屈折関係が図4の場合と逆になり、その結果、引張スプリング18の第2リンク15に対する弾性付勢力は図6のようにX1方向に切り替わる。ギヤ17はその後もY方向に回転を続けるので、X1方向とY方向との対向関係により、ギヤ17と円弧ギヤ16とは接触状態ではあるが噛み合うことはなく、シャッタ13の退避状態が維持される。
【0040】
そして、原稿載置部2上の原稿が全て給送され、その読み取りが完了すると、前記モータ(不図示)が一旦停止し、その後逆回転する。この逆回転によりギヤ17は、反Y方向に回転し、これに伴いギヤ17と円弧ギヤ16とが噛み合い、第2リンク15はX1方向に回転する。この第2リンク15のX1方向への回転作用を受けて、第1リンク14が上記Z方向とは逆の方向に揺動し、シャッタ13が図4に示すように、原稿載置部2上に突出した状態に復帰する。また、上記モータの逆回転により、分離ローラ4aの駆動軸4dが反A方向に回転し、これに伴い上記圧縮スプリング(トルクリミッタ)3jの作用によりフレーム3aが反B方向に揺動し、ピックアップローラ3が図4に示す位置に戻ることになる。その後のモータの停止により、次の原稿給送操作があるまで、図4の待機状態が維持される。
【0041】
このように、シャッタ13の原稿載置部2上における出没動作は、搬送ローラ6の回転に連動する伝達手段(ギヤ17、円弧ギヤ16の噛み合い)を介した上下揺動機構(第1リンク14、第2リンク15)の上下揺動によりなされるよう構成されているから、従来のようにソレノイド及びこれに付帯する高価な部品等を必要とせず、装置の低コスト化が図られる。また、第1リンク14及び第2リンク15間に張設された引張スプリング18の作用により、各動作過程におけるギヤ17と円弧ギヤ16との噛み合い状態への移行が円滑になされ、シャッタ13の原稿載置部2上における出没動作が的確になされる。
【0042】
図7(a)(b)は、上記引張スプリング18に代え、各動作過程におけるギヤ17と円弧ギヤ16との噛み合い状態への移行を円滑になす為の手段の別例を示すものであり、図7(a)はその要部の斜視図、図7(b)は同縦断面である。搬送ローラ6の駆動軸6bには規制アーム19の基部19aが駆動軸6bの廻りに回動可能に嵌装されている。ギヤ17とこの基部19aとの間にはトルクリミッタとしての圧縮スプリング20が圧縮状態で弾装されている。また、規制アーム19の長手方向に沿って長孔19bが開設されており、この長孔19bには、第2リンク15に突設されたピン15cが摺動可能に挿入されている。
【0043】
このような構成においては、例えば、駆動軸6bがY方向に回転(搬送ローラ6の正回転)すると、ギヤ17との噛み合いにより円弧ギヤ16がX方向に回転する。この時、規制アーム19は、圧縮スプリング20のトルクリミッタとしての作用により、駆動軸6bに連動してY方向に回転する。駆動軸6bのY方向への回転中やがて円弧ギヤ16がギヤ17から外れ、その噛み合い状態が解除されるが、その後も駆動軸6bのY方向への回転が継続され、図6に示すような状態でシャッタ13が退避状態に維持され原稿の給送がなされる。この駆動軸6bのY方向への回転の間、規制アーム19は、ピン15cと長孔19bとの規制作用を受けて、回転せず静止状態に維持される。
【0044】
そして、駆動軸6bのY方向への回転が停止し、その後反Y方向に回転を開始すると、規制アーム19が圧縮スプリング20のトルクリミッタとしての作用により反Y方向に回転する。規制アーム19が反Y方向へ回転しようとすると、ピン15cと長孔19bとの規制作用により、円弧ギヤ16に反X方向の力が作用し、円弧ギヤ16がギヤ17に対する噛み合い状態に誘導される。従って、シャッタ13の突出状態への移行が円滑になされる。尚、圧縮スプリング20に代え、ウエーブワッシャをギヤ17と基部19aとの間に圧縮状態で弾装させること、或いは、圧縮スプリング20やウエーブワッシャに代えて、基部19aの駆動軸4dに対する嵌装面に摩擦部材を介在させることも可能である。
【0045】
尚、上記実施形態ではADFにおける例を述べたが、これに限らず各種画像形成装置における記録紙の給紙装置にも本発明が適用され得ることは言うまでもない。また、シャッタ13が原稿載置部2上に対して下方より出没するようにしているが、上方より出没するようになすことも可能である。更に、シャッタ13を図1の紙面方向に複数配置すること、或いは、ギヤ17及び円弧ギヤ16を搬送ローラ6の軸方向両側に配置して上記同様の伝達作用を行わせることも可能であり、これらは設計的事項として任意に採用されることである。
【0046】
【発明の効果】
本発明の給紙装置においては、用紙先端揃え用シャッタは、搬送ローラの正転、逆転及び停止に応じ、ギヤの噛み合いによる伝達手段を介した上下揺動機構の揺動をして、用紙載置部上からの退避及びその維持並びに用紙載置部上への突出及びその維持がなされるから、ソレノイド等の高価な電気部品を必要とせず、従って部品コストの高騰を来たさず、またその動作シークエンスに要する設計・製造コストも不要とされる。また、伝達手段がギヤの噛み合いによるものであるから、磨耗による機能低下等の経年変化も生じ難くなる。しかも、このような効果は、請求項1の発明のように極めて簡単な機構により達成され、設置スペースを小さくして装置の小型化を図り得るものとなる。更に、請求項2の発明のように第1リンクと第2リンクとの間に引張スプリングを張設すれば、各動作の移行切り替えが円滑になされ、シャッタの上記出没動作が的確になされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ADFと走査装置の要部を示す縦断面図である。
【図2】 ピックアップローラと分離ローラとをユニット化した駆動機構を下から見上げた状態の斜視図である。
【図3】 同分解斜視図である。
【図4】 シャッタの動作機構を示す説明図である。
【図5】 同動作機構によりシャッタが変位した状態を示す説明図である。
【図6】 同動作機構によりシャッタが更に変位した状態を示す説明図である。
【図7】 (a)(b)は各動作過程におけるギヤと円弧ギヤとの噛み合い状態への移行を円滑になす為の手段の別例を示すものであり、(a)はその要部の斜視図、図7(b)は同縦断面である。
【符号の説明】
1 ADF(給紙装置)
2 原稿載置部(用紙載置部)
3 ピックアップローラ
4a 分離ローラ
6 搬送ローラ
13 用紙先端揃え用シャッタ
14 第1リンク(上下揺動機構)
14a 支点
14b ピン
15 第2リンク(上下揺動機構)
15a 支点部
16 円弧ギヤ(伝達手段)
17 ギヤ(伝達手段)
18 引張スプリング

Claims (2)

  1. 用紙載置部上に置かれた用紙を繰出すピックアップローラと、繰出された用紙を一枚ずつ分離して給送する分離ローラと、該分離ローラの下流側に配設された搬送ローラと、上記ピックアップローラと分離ローラとの間の用紙載置部上に出没可能に設けられた用紙先端揃え用シャッタとを備えた給紙装置であって、上記シャッタは、上記搬送ローラにギヤの噛み合いによる伝達手段を介して連接された上下揺動機構に設けられ、該搬送ローラの正転時には、上記伝達手段を介した上下揺動機構の揺動をして、シャッタを用紙載置部上から退避させ且つこの退避状態を維持すると共に、上記搬送ローラの逆転時には上記伝達手段を介した上下揺動機構の揺動をして、シャッタを用紙載置部の上面に突出させ、且つ搬送ローラの停止の間この突出状態を維持するよう構成され
    上記上下揺動機構は、基端を支点として上下に揺動する第1リンクと、該第1リンクの揺動端に一端がピン結合されその途中の支点部を中心に垂直面域内で回動可能とされた第2リンクとよりなり、上記シャッタは第1リンクの途中に固設され、一方、上記伝達手段は、上記搬送ローラの駆動軸に固設されたギヤと、第2リンクの他端に連成された上記支点部を曲率中心とする円弧ギヤとよりなり、駆動伝達時には上記ギヤと円弧ギヤとが噛み合うよう構成されていることを特徴とする給紙装置。
  2. 上記第1リンクと第2リンクとの間に引張スプリングが張設され、この引張スプリングにより上記円弧ギヤが常に上記ギヤに対し噛み合う方向に付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
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