JP4140453B2 - ジアリルアミン類酢酸塩重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジアリルアミン類酢酸塩重合体の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、インクジェット記録等のファインケミカル分野に使用する際、金属と接触しても反応しにくく、また有機溶媒への溶解性の高いジアリルアミン類酢酸塩重合体を簡単な操作により高収率で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジアリルアミン類塩酸塩重合体は、ジアリルアミン類塩酸塩を、所望により二酸化イオウの存在下重合させることにより、簡単に製造することができる点から、工業的に製造され、インクジェット記録等のファインケミカル分野で使用されることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−316472号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、例えば、ジアリルアミン類塩酸塩重合体をインクジェット記録の耐水化剤として使用する場合、耐水化剤はインクと別々のカートリッジに入れて使用されるが、本発明者等が検討したところ、ジアリルアミン類塩酸塩重合体が金属を腐食させやすいという問題があり、プリンタ装置を構成する金属を劣化させる可能性があることがわかった。
【0005】
そこで、本発明者等は、ジアリルアミン類塩酸塩重合体に代え、ジアリルアミン類酢酸塩重合体を用いれば上記課題を解決し得ると考えた。
ところが、ジアリルアミン類酢酸塩重合体を得るため、原料として、ジアリルアミン類塩酸塩に代えてジアリルアミン類酢酸塩を用いて重合させたところ、収率よく目的物を得ることができないことが分かった。
また、出発原料としてジアリルアミン類塩酸塩重合体を用い、その水溶液を水酸化ナトリウムで中和した後、脱塩しさらに酢酸を加えて、ジアリルアミン類酢酸塩重合体を得ることも考えられたが、ジアリルアミン類塩酸塩重合体の水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加えると不溶化し、目的物に誘導することは困難であることが分かった。
【0006】
本発明は、このような事情のもとで、インクジェット記録等のファインケミカル分野に使用する際、金属と接触しても腐食させにくく、また有機溶媒への溶解性の高いジアリルアミン類酢酸塩重合体を簡単な操作により高収率で製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するために検討を加えた結果、ジアリルアミン類塩酸塩重合体に特定の処理を施すことにより、新規なジアリルアミン類酢酸塩重合体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
【0011】
(1)一般式(II−a)
【0012】
【化10】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す)
または、一般式(II−b)
【0013】
【化11】
(式中、Rは一般式(II−a)におけると同一である)
で示される構成単位と、式(I−c)
【0014】
【化12】
で示される構成単位とを主要構成単位として含み、一般式(II−a)または(II−b)で示される構成単位の数mが3〜10,000の整数であり、式(I−c)で示される構成単位の数nが0または3〜10,000の整数であるジアリルアミン類塩酸塩重合体を用い、その水溶液に酢酸アルカリ金属塩を加え、得られた混合物をイオン交換膜電気透析処理することにより、ジアリルアミン類酢酸塩重合体の水溶液を得る工程を含むことを特徴とするジアリルアミン類酢酸塩重合体の製造方法、
を提供するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明の方法で得られたジアリルアミン類酢酸塩重合体(以下、単に「本発明の重合体」という)について説明する。
本発明の重合体は、一般式(I−a)または(I−b)で示される構成単位と式(I−c)で示される構成単位を主要構成単位とする。
【0016】
【化13】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す)
【0017】
【化14】
(式中、Rは一般式(I−a)におけると同一である)
【0018】
【化15】
一般式(I−a)または(I−b)で示される構成単位は、Rが水素原子である場合はジアリルアミンモノマーに由来し、Rがメチル基である場合はN−メチルジアリルアミンモノマーに由来するものである。また、式(1−c)で示される構成単位は、二酸化イオウに由来するものである。
【0019】
本発明の重合体において、mは3〜10,000の整数であり、5〜5,000が好ましく、10〜1,000が特に好ましい。nは、0または3〜10,000の整数であり、5〜5,000が好ましく、10〜1,000が特に好ましい。
nが0の場合はジアリルアミン類酢酸塩の単独重合体、nが3〜10,000の場合はジアリルアミン類酢酸塩と二酸化イオウとの共重合体となる。
【0020】
本発明の重合体は、下記の4種類の重合体を含むものである。
(i)ジアリルアミン酢酸塩単独重合体(一般式(I−a)または(I−b)においてR=H、式(I―c)で示される構成単位の数n=0)
(ii)メチルジアリルアミン酢酸塩単独重合体(一般式(I−a)または(I―b)においてR=CH3、式(I−c)で示される構成単位の数n=0)
(iii)ジアリルアミン酢酸塩と二酸化イオウとの共重合体(一般式(I−a)または(I−b)においてR=H、一般式(I−a)または(I―b)で示される構成単位の数m=3〜10,000、式(I−c)で示される構成単位の数n=3〜10,000)
(iv)メチルジアリルアミン酢酸塩と二酸化イオウとの共重合体(一般式(I−a)または(I―b)においてR=CH3、一般式(I−a)または(I―b)で示される構成単位の数m=3〜10,000、式(I−c)で示される構成単位の数n=3〜10,000)
本発明の重合体が共重合体の場合、該共重合体は、一般式(I−a)または(I−b)の構成単位と式(I−c)の構成単位とが交互に結合している交互共重合体、一般式(I−a)または(I−b)の構成単位と式(I−c)の構成単位とがランダムに結合しているランダム共重合体を包含するが、交互共重合体が特に好ましい。
【0021】
また、一般式(I−a)または(I−b)の構成単位および式(I−c)の構成単位以外に第三の構成単位として、例えば一般式(I−d)
【0022】
【化16】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す)
で示される構成単位を含んでいても良い。
【0023】
本発明の重合体が共重合体の場合、一般式(I−a)または(I−b)の構成単位と式(I−c)の構成単位との含有割合は、モル比で99/1〜50/50の範囲付近が好ましく、より好ましくは90/10〜50/50の範囲付近であり、特に好ましくは50/50またはその近傍である。
また、一般式(I−a)または(I−b)の構成単位と式(I−c)の構成単位以外に第三の構成単位を含む場合、第三の構成単位の含有割合は、全構成単位を基準にして通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下である。
【0024】
本発明の重合体の分子量はmおよびnの数によって決定されるが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量で、通常300〜1,000,000好ましくは500〜500,000、特に好ましくは1,000〜100,000の範囲である。
本発明の重合体は、ジアリルアミン類酢酸塩重合体であり、金属に対する腐食性が弱く、例えば金属腐食が嫌われる分野に好適に用いることができる。また、有機溶媒に対する溶解性も高い。
【0025】
次に、本発明の重合体の製造方法について説明する。
本発明の重合体の製造方法は、一般式(II−a)
【0026】
【化17】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示す。)
または、一般式(II−b)
【0027】
【化18】
(式中、Rは一般式(II−a)におけると同一である)
で示される構成単位と、式(I−c)
【0028】
【化19】
で示される構成単位とを主要構成単位として含むジアリルアミン類塩酸塩重合体を用い、その水溶液に酢酸アルカリ金属塩を加え、得られた混合物をイオン交換膜電気透析処理することにより、本発明の重合体の水溶液を得る工程を含むことを特徴とする。
【0029】
本発明の重合体の製造方法においては、原料として一般式(II−a)または(II−b)の構成単位と式(I−c)の構成単位とを主要構成単位として含むジアリルアミン類塩酸塩重合体が用いられる。
ここで、ジアリルアミン類塩酸塩重合体は、一般式(II−a)または(II−b)で示される構成単位中のRが水素原子である場合はジアリルアミン塩酸塩重合体であり、Rがメチル基である場合はメチルジアリルアミン塩酸塩重合体であるが、これらの重合体は、公知の方法により得ることができる。また、日東紡績株式会社製の製品(例えば、メチルジアリルアミン塩酸塩重合体(PAS−M−1))を用いても良い。
【0030】
ジアリルアミン類塩酸塩重合体において、一般式(II−a)または(II−b)の構成単位の数mまたは式(I−c)の構成単位の数nのとり得る範囲、一般式(II−a)または(II−b)の構成単位と式(I−c)の構成単位の重合の形態、および一般式(II−a)または(II−b)の構成単位と式(I−c)の構成単位の重合比等は、対応する本発明の重合体における一般式(I−a)または(I−b)の構成単位と式(I−c)の構成単位における場合と同様である。
【0031】
本発明の重合体の製造方法においては、上述のジアリルアミン類塩酸塩重合体を水溶液として、これに酢酸アルカリ金属塩を加える。
酢酸アルカリ金属塩としては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムを例示することができる。使用する酢酸アルカリ金属塩の量は、原料のジアリルアミン類塩酸塩重合体中の一般式(II−a)または(II−b)の構成単位に対し、通常100〜300モル%、好ましくは105〜200モル%、特に好ましくは110〜150モル%である。
酢酸アルカリ金属塩の量が100モル%未満では酢酸塩に置換する比率が少なくなり、また、300モル%を超えると、イオン交換膜電気透析処理に時間がかかり過ぎ、製造効率が低下する。
【0032】
酢酸アルカリ金属塩をジアリルアミン類塩酸塩重合体の水溶液に加えるときは、固体のまま加えて溶解させてもよいし、酢酸アルカリ金属塩を水に溶解し水溶液の状態で加えてもよい。
【0033】
ジアリルアミン類塩酸塩重合体と酢酸アルカリ金属塩とが混合した水溶液は、適宜撹拌操作が加えられ、次工程のイオン交換膜電気透析処理に付される。
イオン交換膜電気透析法は、内部に電解液を有するイオン交換膜槽の両側に電圧を印加することにより、イオン交換膜を通して陽イオンまたは陰イオンを除去する方法である。
【0034】
本発明の重合体の製造方法に用いられる陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜は、一般的なイオン交換膜(例えば旭硝子社製CMW、AMV等)を用いることができる。またこれらのイオン交換膜を装着させる電気透析槽も、公知のものを用いることができ、市販されているものでよく、膜間隔、室数、室内透過等を特別に設定する必要はない。
【0035】
本発明の重合体の製造方法に用いられるイオン交換膜電気透析法の好ましい実施態様を、以下、図1を用いて説明する。
図1中、電気透析槽9は、その中に陽イオン交換膜Cと陰イオン交換膜Aとが交互に並行に配列され、膜により区画された希釈室3、濃縮室4および電極室5より成立しており、電気透析槽9の両端の電極室5には、それぞれ陽極と陰極の電極板6が設備されている。
【0036】
原液槽1には、ジアリルアミン類塩酸塩重合体と酢酸アルカリ金属塩とが混合した水溶液が投入され、ポンプP1により電気透析槽9の希釈室3に送られる。2つの電極板6に電圧を印加すると、希釈室3では、陽イオンと陰イオンに電離した塩化アルカリ金属等の金属塩が、それぞれ陽イオン交換膜Cと陰イオン交換膜Aを通して濃縮室4へ移動することにより、希釈室3から金属塩が除去される。目的物であるジアリルアミン類酢酸塩重合体は陽イオン交換膜Cにより遮断されて移動することができず、希釈室3にそのまま残留する。
【0037】
一方、濃縮液槽2及び電極室5には、濃縮液たる電解液が投入される。電解液としては、一般的には、1〜2%のNaCl溶液又は、Na2SO4溶液等が用いられるが、これらに限定されず電解質溶液であれば何れを用いてもよい。この濃縮液はポンプP2により濃縮室4へ送られる。
【0038】
ジアリルアミン類塩酸塩重合体と酢酸アルカリ金属塩とが混合した水溶液を原液槽1に投入して希釈室3へ循環させると同時に、電解液を濃縮液槽2へ投入して濃縮室4へ循環させることにより、原液槽1に投入された水溶液からは、徐々に塩化アルカリ金属等の金属塩が透析除去される。
原液槽1に投入されるジアリルアミン類塩酸塩重合体と酢酸アルカリ金属塩とが混合した水溶液には、未反応のジアリルアミン類塩酸塩重合体や酢酸アルカリ金属塩が含まれているが、塩化アルカリ金属等の金属塩が除去されるにつれて、ジアリルアミン類塩酸塩重合体がジアリルアミン類酢酸塩重合体に転換される。最終的には、原液槽1には目的のジアリルアミン類酢酸塩重合体の水溶液が、濃縮液槽2には塩化アルカリ金属等が濃縮貯蔵されることになる。かくして、ジアリルアミン類酢酸塩重合体の水溶液を得ることができる。
【0039】
本発明の方法によれば、ジアリルアミン酢酸塩単独重合体、メチルジアリルアミン酢酸塩単独重合体、ジアリルアミン酢酸塩と二酸化イオウとの共重合体およびメチルジアリルアミン酢酸塩と二酸化イオウとの共重合体の何れかを製造することができる。これらのうち、二酸化イオウを含む重合体はアルカリ水溶液中で不安定になるので、本発明の方法がアルカリ性の状態を経由しないで目的物を得ることができる点を考慮すると、ジアリルアミン酢酸塩と二酸化イオウとの共重合体およびメチルジアリルアミン酢酸塩と二酸化イオウとの共重合体の製造に好適である。
【0040】
このようにして得られたジアリルアミン類酢酸塩重合体の水溶液を取り出し、この後公知の方法により濃縮またはアセトンに再沈するなどして、ジアリルアミン類酢酸塩重合体を得ることもできる。また、ジアリルアミン類酢酸塩重合体は、用途によって、水や有機溶媒等の溶媒で希釈して使用しても良い。
上記の通り、従来のジアリルアミン類塩酸塩重合体の水溶液に比べ、その水溶液が金属に対する腐食性が弱く、有機溶媒への溶解性が高いジアリルアミン類酢酸塩重合体を簡易な方法で収率よく得ることが可能となる。
【0041】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、以下の実施例、参考例で得られた重合体の重量平均分子量、塩素イオン濃度は、下記の方法に従って測定した。
〈重合体の重量平均分子量の測定〉
重合体の重量平均分子量(Mw)は、日立L−6000型高速液体クロマトグラフを使用し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。溶離液流路ポンプは日立L−6000、検出器はショーデックスRI SE−61示差屈折率検出器、カラムはアサヒパックの水系ゲル濾過タイプのGS−220HQ(排除限界分子量3,000)とGS−620HQ(排除限界分子量200万)とをダブルに接続したものを用いた。サンプルは溶離液で0.5g/100mlの濃度に調整し、20μlを用いた。溶離液には、0.4mol/lの塩化ナトリウム水溶液を使用した。カラム温度は30℃で、流速は1.0ml/分で実施した。標準サンプルとして分子量106、194、440、600、1470、4100、7100、10300、12600、23000などのポリエチレングリコールを用いて較正曲線を求め、その較正曲線を基に共重合体の重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0042】
<塩素イオン濃度測定>
分離カラムにIonPac AS12Aを用い、イオンクロマト法により測定した。溶離液には2.7mmol/L 炭酸ナトリウム水溶液 / 0.3mmol/L 炭酸水素ナトリウム水溶液、検出器には電気伝導度検出器を用いた。
【0043】
参考例1 ジアリルアミン塩酸塩と二酸化イオウとの共重合体(50/50)の製造
かき混ぜ機、ジムロート還流器、温度計を備えた1Lの4つ口セパラブルフラスコ中で、ジアリルアミン塩酸塩水溶液205.57g(1mol)を水125.73gに溶解し、ついで、それに二酸化イオウ64.06g(1mol)を加えた。得られるモノマー水溶液にラジカル開始剤として過硫酸アンモニウム1.98gを添加し、60℃で24時間の重合を行なった。
【0044】
重合終了後、水591.06gを加えてジアリルアミン塩酸塩と二酸化イオウの共重合体(共重合比1:1)の水溶液988.40gを得た。この共重合体の重合収率と重量平均分子量をGPCにより測定した。重合収率95%、重量平均分子量5,000であった(m=25、n=25)。
【0045】
参考例2 メチルジアリルアミン塩酸塩と二酸化イオウとの共重合体(50/50)の製造
かき混ぜ機、ジムロート還流器、温度計を備えた1Lの4つ口セパラブルフラスコ中で、メチルジアリルアミン塩酸塩水溶液210.93g(1mol)を水27.45gに溶解し、ついで、それに二酸化イオウ64.06g(1mol)を加えた。得られるモノマー水溶液にラジカル開始剤として過硫酸アンモニウム2.12gを添加し、60℃で24時間の重合を行なった。
【0046】
重合終了後、水753.99gを加えてメチルジアリルアミン塩酸塩と二酸化イオウの共重合体(共重合比1:1)水溶液1058.55gを得た。この共重合体の重合収率と重量平均分子量をGPCにより測定した。重合収率93%、重量平均分子量4,000であった(m=20、n=20)。
【0047】
参考例3 ジアリルアミン塩酸塩単独重合体の製造
かき混ぜ機、ジムロート還流器、温度計を備えた1Lの4つ口セパラブルフラスコ中に、ジアリルアミン塩酸塩水溶液205.57g(1mol)を仕込んだ。そのモノマー水溶液にラジカル開始剤として過硫酸アンモニウム4.01gを添加し、60℃で48時間の重合を行なった。
【0048】
重合終了後、単独水458.52gを加えてジアリルアミン塩酸塩単独重合体水溶液668.10gを得た。この共重合体の重合収率と重量平均分子量をGPCにより測定した。重合収率97%、重量平均分子量50,000であった(m=400、n=0)。
【0049】
参考例4 メチルジアリルアミン類塩酸塩単独重合体の製造
かき混ぜ機、ジムロート還流器、温度計を備えた1Lの4つ口セパラブルフラスコ中に、メチルジアリルアミン塩酸塩水溶液246.08g(1mol)を仕込んだ。そのモノマー水溶液にラジカル開始剤として過硫酸アンモニウム4.43gを添加し、60℃で72時間の重合を行なった。
【0050】
重合終了後、水487.74gを加えてメチルジアリルアミン塩酸塩重合体水溶液738.25gを得た。この共重合体の重合収率と重量平均分子量をGPCにより測定した。重合収率93%、重量平均分子量25,000であった(m=180、n=0)。
【0051】
実施例1 ジアリルアミン酢酸塩と二酸化イオウとの共重合体(50/50)の製造
攪拌子を入れた2Lビーカー中に参考例1で得たジアリルアミン塩酸塩と二酸化イオウの1:1共重合体494.20g(0.50mol)および酢酸ナトリウム54.41g(0.65mol)を仕込み、マグネチックスターラーを用いて攪拌溶解し、混合水溶液を得た。
上記混合溶液を、イオン交換膜電気透析に付した。電気透析装置として旭硝子製−DU-Ob槽を用い、この中に、同じく旭硝子製の陽イオン交換膜CMVと陰イオン交換膜AMVを図1のように配列して希釈室3、濃縮室4及び電極室5を設け、更に原液槽1、濃縮液槽2、循環ポンプP1,P2を設置した。
原液槽1には原液として、上記の操作により得られた混合水溶液を入れた。また濃縮液槽2にはNaCl水溶液を仕込んだ。これらの液を循環しながら、電極間に16−17ボルトの直流電圧を印加した結果、最終的に濃度20.0wt%のジアリルアミン酢酸塩と二酸化イオウとの共重合体(共重合比1:1)水溶液525.54g(収率95%)を得た。
この共重合体の重量平均分子量、塩素イオン濃度およびpHをそれぞれ測定したところ、表1に示す結果が得られた。この共重合体のm,nは、それぞれ、m=25、n=25である。塩素イオン濃度の測定結果から、酢酸塩(塩酸塩が10%以下)に変換したことが判明した。
また、共重合体水溶液の一部をアセトン溶媒により再沈し、固体の共重合体として取り出した。そのIRスペクトルを図2に示す。IRスペクトル中の1580cm−1付近にカルボン酸イオンの吸収があり、酢酸塩に変換したことが確認できる。
【0052】
実施例2 メチルジアリルアミン酢酸塩と二酸化イオウとの共重合体(50/50)の製造
攪拌子を入れた2Lビーカー中に参考例2で得たメチルジアリルアミン塩酸塩と二酸化イオウの共重合体529.28g(0.50mol)および酢酸ナトリウム54.41g(0.65mol)を仕込み、マグネチックスターラーを用いて攪拌溶解した。
得られた溶液を、実施例1で記載した方法に従いイオン交換膜電気透析に付し、濃度20.0wt%のメチルジアリルアミン酢酸塩と二酸化イオウとの1:1共重合体の水溶液558.84g(収率95%)を得た。
この共重合体の重量平均分子量、塩素イオン濃度およびpHをそれぞれ測定したところ、表1に示す結果が得られた。この共重合体のm,nは、それぞれ、m=20、n=20である。塩素イオン濃度の測定結果から、酢酸塩に変換したことが判明した。
【0053】
実施例3 ジアリルアミン酢酸塩単独重合体の製造
攪拌子を入れた2Lビーカー中に参考例3で得たジアリルアミン塩酸塩重合体334.05g(0.5mol)と酢酸ナトリウム54.41g(0.65mol)を仕込み、マグネチックスターラーを用いて攪拌溶解した。
得られた溶液を、実施例1で記載した方法に従いイオン交換膜電気透析に付し、濃度20.0wt%のジアリルアミン酢酸塩重合体水溶液373.37g(収率95%)を得た。
この単独重合体の重量平均分子量、塩素イオン濃度およびpHをそれぞれ測定したところ、表1に示す結果が得られた。この共重合体のm,nは、それぞれ、m=400、n=0である。塩素イオン濃度の測定結果から、酢酸塩に変換したことが判明した。
【0054】
実施例4 メチルジアリルアミン酢酸塩単独重合体の製造
攪拌子を入れた2Lビーカー中に参考例4で得たメチルジアリルアミン塩酸塩重合体369.13 g(0.5mol)と酢酸ナトリウム54.41g(0.65mol)を仕込み、マグネチックスターラーを用いて攪拌溶解した。
得られた溶液を、実施例1で記載した方法に従いイオン交換膜電気透析に付し、濃度20.0wt%のメチルジアリルアミン酢酸塩重合体水溶液406.70g(収率95%)を得た。
この単独重合体の重量平均分子量、塩素イオン濃度およびpHをそれぞれ測定したところ、表1に示す結果が得られた。この共重合体のm,nは、それぞれ、m=180、n=0である。塩素イオン濃度の測定結果から、酢酸塩に変換したことが判明した。
【0055】
【表1】
比較例1 別法によるジアリルアミン酢酸塩と二酸化イオウの共重合体製造の試み
原料として参考例1で得られたジアリルアミン塩酸塩と二酸化イオウの共重合体(共重合比1:1)水溶液を用い、それを水酸化ナトリウムで中和した後、脱塩し、さらに酢酸を加えてジアリルアミン類酢酸塩重合体を得ることを試みた。まず、かき混ぜ機、ジムロート還流器、温度計を備えた500mlの4つ口セパラブルフラスコ中で、参考例1で得たジアリルアミン塩酸塩と二酸化イオウの共重合体296.52g(0.30mol)の水溶液を氷冷し、それに水酸化ナトリウム水溶液48.00g(0.30mol)をゆっくり滴下したところ不溶化した。そのため、それ以降の操作はできなかった。
【0056】
試験例1 メチルジアリルアミン酢酸塩重合体の溶解性
実施例4で得られた20重量%のメチルジアリルアミン酢酸塩単独重合体溶液1.0gの有機溶剤(10ml)に対する溶解性(30℃)を検討した。結果を表2に示す。本発明で得られた酢酸塩重合体は、参考例4で得られた対応する塩酸塩重合体に比べ特定の有機溶媒に溶解しやすいことが判明した。
【0057】
【表2】
試験例2 ジアリルアミン酢酸塩と二酸化イオウとの共重合体(共重合比1:1)の金属に対する耐腐食性
実施例1で得られたジアリルアミン酢酸塩と二酸化イオウとの共重合体(共重合比1:1)の10%水溶液を調製した。次いで、得られた水溶液中にアルミ薄片を入れ、60℃で放置しアルミ表面に腐食が始まる日(腐食日)を調べた。その結果、腐食日は11日であった。一方、比較として参考例1で得られたジアリルアミン塩酸塩と二酸化イオウとの共重合体(共重合比1:1)の10%水溶液を調製して、それの腐食日を調べたところ1日であった。本発明により製造した酢酸塩重合体は、対応する塩酸塩重合体に比べ、金属に対して耐腐食性を有することが判明した。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、インクジェット記録等のファインケミカル分野において、金属と接触しても反応せず、有機溶媒への溶解性の高い、新規ジアリルアミン類酢酸塩重合体を、簡単な操作により収率良く、工業的に有利に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の重合体の製造方法において用いられる電気透析装置の概略図である。
【図2】実施例1で得られたジアリルアミン酢酸塩と二酸化イオウとの共重合体の赤外分光スペクトル図である。
【符号の説明】
1 原液槽
2 濃縮液槽
3 希釈室
4 濃縮室
5 電極室
6 電極板
7 濃縮液経路
8 濃縮液経路
9 電気透析槽
Claims (1)
- 一般式(II−a)
または、一般式(II−b)
で示される構成単位と、式(I−c)
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