JP4140282B2 - レーザビーム露光装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀等の感光材料に画像を形成するためにレーザビームを照射して露光するレーザビーム露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、画像データに基づいて画像を記録するためにハロゲン化銀写真の感光材料をレーザ光により露光していた。そして、近年、液処理が不要で熱現象により画像を顕像化できるハロゲン化銀熱現象感光材料が登場した。しかし、これをシングルモードのレーザダイオードにより発振されたレーザ光で露光すると干渉縞が発生し濃度ムラが生じてしまうことがある。この現象をフィルム断面とレーザ光との関係を示す概念図である図13を参照して説明する。
【0003】
図13(a)に示すように、ハロゲン化銀熱現像感光材料の感光層とPET(ポリエチレンテレフタレート)等の支持体とから構成された感光材料であるフィルムFにレーザ光が表面F1から入射すると、裏面F2で一部が反射し表面F1に戻ることにより、直接記録層に照射される光B1と、感光層を透過した光のうち、F2面で反射し、さらにF1面で反射された光B2との間で干渉が起こる。このため、感光層に照射される光量がフィルムの厚みにより変化し、その結果ハロゲン化銀熱現像感光材料の感光層への露光量が変動し、濃度ムラ、つまり干渉縞が生じてしまう。
【0004】
実際には、図13(b)に示すように、支持体の裏面F2側にはレーザ光の吸収層が設けられており、また、感光層に含まれるハロゲン化銀粒子による散乱線Sの発生のため、干渉による光量変化は上記の値より少なくなるが、吸収層と支持体層の境界面F2で反射が生じ、吸収層が寄与しなくなる。また、従来の感光材料は、含まれるハロゲン化銀粒子のサイズが大きく、また吸収層を多層に設けることができるので、干渉縞は発生し難いのに対し、熱現像感光材料は、従来の感光材料に比較してハロゲン化銀粒子が細かく、感光層内での散乱が従来のフィルムよりもずっと少なく、特に、フィルムコントラストγが2以上の硬調な熱現像材料である場合、干渉縞が顕著となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような干渉縞の発生を防止するために、縦シングルモードのレーザダイオードに高周波信号を重畳して縦マルチモード発光させることにより、レーザ干渉性を低減する技術が開発されたが、この方法では高周波信号を重畳するため、高周波ノイズが発生することとなり画質を低下させる原因となってしまう。また、レーザダイオードの駆動電流を変調することによりその光量を直接的に変動させて画像を記録しているが、この画像記録のための光量変動と干渉縞抑制のための高周波重畳とを両立してレーザダイオードを制御することは、技術的には複雑で困難であり、コストも高くなってしまう。
【0006】
本発明の課題は、簡易な技術で干渉縞を抑制するレーザビーム露光装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、
感光材料に対し、駆動電流に応じてレーザ光源から発光されたレーザビームを主走査方向、及び主走査方向に直交する副走査方向に走査して露光を行う露光手段を備えたレーザビーム露光装置において、
画像情報を構成する画素毎にデューティ比を100%未満に設定したパルスタイミングに応じて、当該画像情報に基づく光量制御信号を生成する信号生成手段と、
所定の主走査数毎に電流値を変更したバイアス電流を生成するバイアス電流生成手段と、
前記バイアス電流生成手段により生成されたバイアス電流を付加した、前記光量制御信号に基づく駆動電流を生成し、当該駆動電流を前記レーザ光源に印加する駆動電流印加手段と、
を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のレーザビーム露光装置において、
前記バイアス電流生成手段は、前記バイアス電流の電流値を干渉縞が非可視化するように変更することを特徴としている。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1から3の何れか一つに記載のレーザビーム露光装置において、
前記バイアス電流生成手段は、1主走査おきにバイアス電流を生成することを特徴とする。
【0010】
この請求項1、3、4記載の発明によれば、1主走査おきのバイアス電流を生成し、このバイアス電流を付加した、光量制御信号に基づく駆動電流をレーザ光源に印加するので、1主走査おきに異なる干渉パターンが感光材料に現れることとなり、マクロ空間的に干渉縞を非可視化できる。従って、簡易な技術で干渉縞を抑制する安価なレーザビーム露光装置を提供することができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のレーザビーム露光装置において、
前記バイアス電流生成手段は、前記バイアス電流の電流値をランダムに変更することを特徴としている。
【0012】
この請求項2記載の発明によれば、バイアス電流の電流値をランダムに変更するので、露光条件のばらつきに対応して干渉縞を非可視化することができる。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1から4の何れか一つに記載のレーザビーム露光装置において、
前記露光手段は、前記レーザビームを副走査方向に一部重ね合わせて露光することを特徴としている。
【0014】
この請求項5記載の発明によれば、異なる波長のレーザビームで多重に露光することとなるので、異なる波長のレーザビームどうしが相殺して、ミクロ空間的にも干渉縞を非可視化することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
まず、構成を説明する。
図1は、本実施の形態におけるレーザビーム露光部120を含む画像記録装置100の正面図であり、図2はその左側面図である。
図1、2において、画像記録装置100は、感光材料であるフィルムFを1枚づつ給送する給送部110、給送されたフィルムFを露光するレーザビーム露光部120、露光されたフィルムFを現像する熱現像部130、から構成される。フィルムFは、ハロゲン化銀粒子と有機酸銀とを含有する感光層を支持体状に有し、フィルムコントラストγが2以上であるハロゲン化銀熱現像感光材料である。
【0016】
以下、各部について詳細に説明する。
給送部110は、堆積された複数枚のフィルムFを収容するトレイTが上下二段に設けられている。各トレイTの前方端部側の上部には、フィルムFの前端部を吸着して上下動する吸着ユニット111が設けられている。また、吸着線状領域の近傍には、吸着ユニット111により給送されたフィルムFを矢印(1)方向(水平方向)へ給送する給送ローラ対112が設けられている。また、吸着ユニット111は、前後に移動可能に構成され、吸着したフィルムFを給送ローラ対112へ搬送する。そして、給送ローラ対112により給送されたフィルムFを垂直方向に搬送する複数の搬送ローラ対141が設けられている。これらの発送ローラ対141により、フィルムFを図2の矢印(2)に示す方向(下方)に搬送する。
【0017】
画像記録装置100の下部には、搬送方向変換部145が設けられている。この搬送方向変換部145は、図1、及び図2に示すように、搬送ローラ対141により図2の矢印(2)に示す鉛直方向下方に搬送されたフィルムFを矢印(3)で示すように水平方向に搬送し、次いで、搬送方向を矢印(3)から矢印(4)へ直角に変換して搬送し、次いで搬送方向を変換され搬送されたフィルムFを図1の矢印(5)に示す鉛直方向上方に搬送方向を変えて搬送する。
【0018】
そして、図1に示すように、搬送方向変換部145から搬送されたフィルムFを図1の矢印(6)で示す鉛直方向上方に搬送する複数の搬送ローラ対142が設けられ、フィルムFを画像記録装置100の左側面から図1の矢印(6)で示す鉛直方向上方に搬送する。
【0019】
レーザビーム露光部120は、この鉛直方向上方への搬送途中で、フィルムFの感光面を赤外域780〜860nmの範囲内の波長を有するレーザ光で走査露光し、露光画像信号に応じた潜像を形成させる。
【0020】
画像記録装置100の上部に熱現像部130が設けられ、熱現像部130のドラム14の近傍には、搬送ローラ対142で図1の矢印(6)に示す鉛直方向上方に搬送されたフィルムFをドラム14へ供給する供給ローラ対143が設けられている。ドラム14へフィルムFを供給するタイミングは、成り行きによるランダムなタイミングで供給する。なお、ランダムなタイミングで供給するのではなく、タイミングを図って供給することとしてもよい。
【0021】
熱現像部130のドラム14は、フィルムFとドラム14の外周面とが密着した状態で、図1の矢印(7)に示す方向に共に回転しながら、ドラム14がフィルムFを加熱し熱現像する。すなわち、フィルムFの潜像を可視画像に形成する。その後、図1のドラム14に対し右方まで回転したときに、ドラム14からフィルムFを離す。熱現像部130の右測方には、複数の搬送ローラ対144が設けられており、ドラム14から離れたフィルムFを、図1の矢印(8)に示すように右斜め下方に搬送しつつ冷却する。そして、搬送ローラ対144が冷却されたフィルムFを搬送しつつ、濃度計118がフィルムFの濃度を測定する。その後、複数の搬送ローラ対144は、ドラム14から離れたフィルムFを図1の矢印(9)に示すように水平方向に搬送し、画像記録装置100の上部から取り出せるように、画像記録装置100の右上方部に設けられた排出トレイ160に排出する。
【0022】
次に、本発明に係るレーザビーム露光部120について詳細に説明する。
図3は、レーザビーム露光部120の構成を示す概念図である。
図3において、レーザビーム露光部120は、変調部123、ドライバ124、バイアス電流生成回路124a、レーザ光源部125、フォトダイオード125a、ミラー128a、128b、集光レンズ126、シリンドリカルレンズ115、回転他面鏡113、fθレンズ114、ミラー116から構成される。
【0023】
レーザビーム露光部120は、放射線CT装置、スキャナ等の画像信号生成装置121から画像I/F122を介して送信された画像データGに基づいて変調部123により強度変調されたレーザ光Lを、回転多面鏡113により偏光してフィルムF上を主走査(図3に示すX方向)するとともに、フィルムFをレーザ光Lに対して主走査方向と略直角な方向(図3に示すY方向)に相対移動させることにより副走査し、レーザ光Lを用いてフィルムF状に潜像を形成するものである。
【0024】
変調部123は、D/A変換回路を備えて画像I/F122から入力された画像データGを画像信号にアナログ変換し、画素クロックに同期して該画像信号の各画素のデューティ比が50%となるパルスタイミングを設定し、このパルスタイミングに応じて該画像信号に基づく光量制御信号(パルス信号)を生成し、ドライバ124に出力する。つまり、変調部123がドライバ124を介してレーザ光源125へ出力する駆動電流を振幅変調することによりレーザ光Lの光量を変調する。すなわち、変調部123は、信号生成手段としての機能を有する。
【0025】
バイアス電流生成回路124aは、主走査に同期した水平同期信号に基づいて1主走査おきに所定のバイアス電流を生成して、ドライバ124で生成された駆動電流に供給する。なお、生成するバイアス電流の電流値は適宜設定可能とする。すなわち、バイアス電流生成回路124aは、バイアス電流生成手段としての機能を有する。
【0026】
ドライバ124は、変調部123から光量制御信号を入力されると、バイアス電流生成回路124aで生成されるバイアス電流を付加した、光量制御信号に基づく駆動電流(パルス電流)を生成し、生成した駆動電流をレーザ光源部125に印加してパルス駆動することにより、レーザ光を発振させる。また、ドライバ124は、フォトダイオード125aから入力された光量モニタ信号に基づいてレーザ光源部125の出力光量を調整制御する。
【0027】
駆動電流の生成について詳細に説明する。まずドライバ124が光量制御信号に応じた駆動電流を生成してレーザ光源部125に出力すると、この駆動電流にバイアス電流が供給されてレーザ光源部125に印加される。バイアス電流が供給された分だけ駆動電流は電流値が変動するため、ドライバ124は、レーザ光源部125の出力光量をフォトダイオード125aを介して検出し、バイアス電流が印加された分だけ変動した光量を修正した駆動電流を新たに生成してレーザ光源部125に出力する。つまり、バイアス電流を付加した、光量制御信号に基づく駆動電流を生成する。すなわち、ドライバ124は、駆動電流印加手段としての機能を有する。
【0028】
なお、ドライバ124は、予めバイアス電流生成回路124aで生成されるバイアス電流の電流値を考慮した駆動電流を生成することとしてもよい。例えば、バイアス電流生成回路124aで生成されるバイアス電流が10mAと設定されている場合、光量制御信号に基づいて生成したパルス電流から10mAを差し引いた駆動電流を生成して、バイアス電流が供給された際に光量制御信号に基づいた駆動電流となるようにしてもよい。
【0029】
レーザ光源部125は、レーザダイオード等から構成され、バイアス電流が付加された駆動電流を入力されると、この駆動電流に応じたレーザ光Lを発振する。また、フォトダイオード125aは、レーザ光源部125から照射されたレーザ光をミラー128a、128bを介して受光することによりレーザ光源部125からの出力光量をモニタし、そのモニタ結果を光量モニタ信号としてドライバ124に出力する。
【0030】
ここで、レーザダイオードの順方向電流に対するレーザ光出力特性について図4を参照して詳細に説明する。一般的にレーザダイオードは、ある電流値、つまり閾値I以下のバイアス電流を印加しても光が出力されず、閾値I以上の駆動電流を印加すると光が出力され、その光量は印加電流量に比例する。なお、このときの閾値Iは、レーザダイオードがおかれている周囲環境の温度により変動する。従って、バイアス電流生成回路124aで生成するバイアス電流の電流値は、この閾値Iの変動を考慮して設定することが好ましい。
【0031】
また、レーザダイオードは、例えば図5に示すように温度に応じて発振波長が変動する温度依存性を有する。図5において、レーザダイオードが温度t1の時、その発振波長はλ1であり、温度t2の時、その発振波長はλ2である。また、レーザダイオードの温度は印加される駆動電流量に応じて変動する特性を有し、例えばその駆動電流が約15mA変動すると、発振波長は約0.5nm変動する。つまり、レーザダイオードに温度差を与えることでその発振波長を制御することができる。なお、上記説明は具体例であり、その温度依存の程度、及び駆動電流による温度変動の程度は、用いるレーザダイオードによりそれぞれ異なる。
【0032】
レーザ光源部125から出力されたレーザ光Lは、集光レンズ126を通過してそのビーム光径が変換され、シリンドリカルレンズ115で一方向(本実施の形態では上下方向)にのみ収束されて、図3で矢印Aに示す回転方向に回転する回転多面鏡113の鏡面に対し、回転多面鏡の回転軸に垂直な潜像として入射する。回転多面鏡113は、レーザ光Lを主走査方向に反射偏光し、偏光されたレーザ光Lは、4枚のレンズを組み合わせてなるシリンドリカルレンズを含むfθレンズ114を通過した後、航路上に主走査方向に延在して設けられたミラー116で反射されて、搬送装置142により矢印Y方向に搬送されている(副走査されている)フィルムFの被走査面上を、矢印X方向に繰り返し主走査され、フィルムF上の被走査面前面にわたって走査が行われる。なお、fθレンズ114のシリンドリカルレンズは、入射したレーザ光LをフィルムFの被走査面上に副走査方向にのみ収束させる。すなわち、回転多面鏡113、fθレンズ114、ミラー116、搬送装置142は、露光手段としての機能を有する。
【0033】
次に、フィルムFについて詳細に説明する。
図6は、フィルムFの断面図であり、露光時におけるフィルムF内の化学反応を模式的に示した図である。図7は、加熱時におけるフィルムF内の化学反応を模式的に示した、図6と同様な断面図である。図6、及び図7において、フィルムFは、PETからなる支持体(基層)上に、ポリビニルブラチールを取材とする感光層が形成され、更にその上にセルロースブチレートからなる保護層が形成されている。感光層には、ベヘン酸銀(Beh、Ag)と、還元剤、及び調色剤とが配合されている。
【0034】
露光時に、レーザビーム露光部120によりレーザ光LがフィルムFに対して照射されると、図4に示すように、レーザ光Lが照射された領域に、ハロゲン化銀粒子が感光し、潜像が形成される。一方、フィルムFが加熱されて最低熱現像温度以上になると、図6に示すように、ベヘン酸から銀イオン(Ag+)が放出され、銀イオンを放出したベヘン酸は調色剤と錯体を形成する。その後銀イオンが拡散して、感光したハロゲン化粒子を核として還元剤が作用し、化学的反応により銀画像が形成されると思われる。このようにフィルムFは、感光性ハロゲン化銀粒子と、有機銀塩と、銀イオン還元剤とを含有し、40℃以下の温度では実質的に熱現像されず、80℃以上である最低熱現像温度以上の温度で熱現像されるようになっている。
【0035】
熱現像材料に用いられる感光性のハロゲン化銀は、典型的に、有機銀塩に関して、0.75〜25mol%の範囲で用いられることができ、好ましくは、2〜20mol%の範囲で用いられることができる。また、フィルムFは、有機銀塩を感光層中のハロゲン化銀粒子に対して銀量で4倍以上含有していることが好ましい。また、ハロゲン化銀粒子の平均粒径は0.1μm以下である。
【0036】
このハロゲン化銀は、臭化銀や、ヨウ化銀、塩化銀、臭化ヨウ化銀、塩化臭化ヨウ化銀、塩化臭化銀等のあらゆる感光性ハロゲン化銀であってもよい。このハロゲン化銀は、これらに限定されるものではないが、立方体や、斜方晶系状や、平板状、四面体等を含む、感光性であるところのあらゆる形態であってもよい。
【0037】
有機銀塩は、銀にイオンの還元源を含むあらゆる有機材料である。有機酸の、特に長鎖脂肪酸(10〜30の炭素原子、好ましくは15〜28の炭素原子)の銀塩が好ましい。そして、画像記録層の重量の約5〜30%であることが好ましい。
【0038】
この熱現像材料に用いられることができる有機銀塩は、光に対して比較的安定な銀塩であって、露光された光触媒(例えば写真用ハロゲン化銀等)と還元剤の存在において、80℃以上の温度に加熱された時に銀画像を形成する銀塩である。
【0039】
好ましい有機銀塩としては、カルボキシル基を有する有機化合物の銀塩が含まれる。それらには、脂肪カルボン酸の銀塩、及び芳香族カルボン酸の銀塩が含まれる。脂肪族カルボン酸の銀塩として好ましい例には、ベヘン酸銀、ステアリン酸銀等が含まれ、脂肪族カルボン酸におけるハロゲン原子、又はヒドロキシルとの銀塩も効果的に用いうる。メルカプト、又はチオン基を有する化合物、及びそれらの誘導体の銀塩も用いうる。更に、イミノ基を有する化合物の銀塩も用いうる。
【0040】
有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元できるいずれの材料でもよく、好ましくは有機材料である。フェニドン、ヒドロキノン、及びカテコールのような従来の写真現像剤が有用であるが、フェノール還元剤が好ましい。還元剤は、画像記録層の1〜10重量%存在するべきである。多層構成においては、還元剤が乳剤層以外の層に添加される場合は、わずかに高い割合である約2〜15重量%がより望ましい。
【0041】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
まず、説明の前提として、レーザ光の波長と干渉縞の相関について説明する。
図8は、フィルムFにレーザ光が垂直入射する場合を示す図である。まず、レーザが単一波長である場合を説明すると、図8において、フィルムFの表面F1の入射点5で入射した入射光がフィルムFの裏面F2で一部が反射し、その反射光が入射点5に入射する。フィルムFの感光層の厚さD2を20μm、屈折率n2を1.5、支持体1の厚さD1を180μm、屈折率n1を1.5、レーザ光の波長をλ1=0.800μmとすると、光路差δは次式で求められる。
δ=2(D1×n1+D2×n2)
【0042】
上記の場合、δ=600μmとなり、これはレーザ光の波長0.800μmの整数倍となる。このとき、波長λ1の入射光の入射点5における位相は、図9(a)に示す位相になり、反射光の入射点5における位相は図9(b)に示すような位相となり、両位相が一致するため、記録層2に照射される光量は最大となる。これに対して、支持体1の厚さを180.13μmとすると、光路差δは、波長0.800μmの750.5倍となり、このとき反射光の入射点5における位相は図9(c)に示す位相となるため、記録層2に照射される光量は最小となる。このようにフィルムFの支持体1の厚みのばらつきにより記録層2を照射する光量が変化し、干渉縞が生じることとなる。
【0043】
次に、レーザ光が2つの異なる波長を有する場合を説明すると、上述の例で、波長がλ1=0.800μm、λ2=0.80053μmのレーザ光が照射された場合、上記光路差δ=600μmは、この2つの波長に対してそれぞれ750倍、749.5倍となり、感光層2に照射される光量は両者の和、つまり最大と最小の中間となる。ここで、例えば光路差δ=600.4μmとなった場合でも、この光路差δは2つの波長に対して、それぞれ750.5倍、750倍となり、やはり感光層2に照射される光量は変わらない。
以上のように、2つの異なる波長のレーザ光で露光することにより、干渉の影響を低減させることができることがわかる。
【0044】
次に、レーザビーム露光部120により行われるレーザ光Lの制御について説明する。
まず、画像信号生成装置121により生成された画像データGが画像I/F122に入力されると、変調部123は、該画像データGを画像信号にアナログ変換し、画素クロックに同期して該画像信号の各画素のデューティ比を50%に設定したパルスタイミングで、画像信号に基づく光量制御信号を生成してドライバ124に出力する。
【0045】
このとき、バイアス電流生成回路124aは、主走査に同期した水平同期信号に基づいて1主走査おきに所定のバイアス電流を生成する。例えば、レーザ光が出力する閾値Iが30mAであった場合、環境温度による閾値Iの変動を考慮した電流値15mAのバイアス電流を1主走査おきに生成する。そして、ドライバ124は、生成されたバイアス電流を付加した、光量制御信号に基づく駆動電流を生成してレーザ光源部125に印加する。
【0046】
具体的にこのバイアス電流が付加された駆動電流について、図10の駆動電流のパルスパターン例を参照して説明する。図10において、走査線1〜4における駆動電流は同一の画像情報に基づく駆動電流であり、画像信号の画素毎にデューティ比50%のパルスタイミングが設定さている。最初の走査線1では0mAのバイアス電流、つまりバイアス電流が付加されない駆動電流が、次の走査線2では15mAのバイアス電流(図中の斜線部で示す)が付加された駆動電流が、次の走査線3ではバイアス電流が付加されない駆動電流が、次の走査線4では15mAのバイアス電流が付加された駆動電流が流れている。図10に示すように、ドライバ124はバイアス電流の付加に関わらず、光量制御信号に基づいた駆動電流を生成するため、同一の画像情報に基づく駆動電流が出力される走査線1〜4においては、バイアス電流の付加に関わらず同一の画像がフィルムFに露光されることとなる。
【0047】
そしてこのとき、図10において、走査線1でレーザ光源部125から発光されるレーザ光の波長がλ1であるとすると、次の走査線2では、光量制御信号に応じた駆動電流が流れていない位置でもバイアス電流が流れているため、レーザ光源部125のレーザダイオードの温度が上昇して波長が変動することとなり、走査線1におけるレーザ光の波長λ1とは異なる波長λ2のレーザ光により露光される。また、走査線3では走査線1と同様にバイアス電流が流れていないため、波長λ1のレーザ光により露光され、走査線4では走査線2と同様の電流値のバイアス電流が流れているので、波長λ2のレーザ光により露光されることとなる。
【0048】
このようにして、1走査線おきに異なる波長のレーザ光により露光されると、前提で説明したように1走査線では単一波長で露光しているため干渉縞が生じることとなり、フィルムFには、図11に示すように1走査線おきに異なる干渉パターン(図11における○●の繰り返しが干渉縞のパターンを示す)が現れることとなる。しかし、ミクロ的に見た場合には各走査線で干渉縞が生じているが、1走査線毎にその干渉縞のパターンがずれているので各走査線を含む領域全体をマクロ的に見た場合、干渉縞が非可視化されることとなる。なお、バイアス電流生成回路124aにより生成するバイアス電流の電流値は、バイアス電流を印加した走査線におけるレーザ光の波長が、干渉縞がマクロ的に非可視化されるような波長となる電流値に設定することが好ましいが、フィルムFの厚みのばらつき等の露光条件のばらつきを考慮してランダムな電流値に設定することとしてもよい。
【0049】
また、上述した露光方法でさらにビーム径に対して副走査方向の走査ピッチを小さくすることにより多重露光を行うこととしてもよい。図11を参照して具体的に説明すると、例えば2重に露光を行う場合、走査ピッチPTに対してビーム径Wが2倍になっているので、隣接する走査線において異なる波長のレーザ光が2重に照射される領域が存在し、該領域で露光されるレーザ光の強度は2重に照射されたレーザ光の合成強度となる。つまり、走査線1では波長λ1のレーザ光で、走査線2では波長λ2のレーザ光で露光された場合、2重に異なるレーザ光で照射された領域では、前提で説明したように波長が異なるレーザ光がフィルムFに入射することにより、位相がずれた2つのレーザ光どうしが相殺するため、干渉縞の影響を低減させることができる。
【0050】
すなわち、1走査線毎に異なる波長のレーザ光を他の走査線に重ねて多重に露光することにより、異なる波長のレーザ光同士が相殺することとなり、ミクロ空間的にも干渉縞を非可視化することが可能となる。
【0051】
以上のように、高周波信号を重畳することなく、1走査線おきにバイアス電流を印加した駆動電流によりレーザ光源部125を駆動するという簡単な技術により、フィルムF全体でマクロ空間的、或いは多重露光することによりミクロ空間的にも干渉縞を非可視化することができ、安価なコストで記録画像の画質を向上させることができる。
【0052】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係るレーザビーム露光部120の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、上述した説明では、変調部123がデューティ比50%の光量制御信号を生成することとしたが、このデューティ比は100%未満であればどの値でもバイアス電流の影響が出るので、その値は限定しない。しかし特に好ましいデューティ比は50%である。
【0053】
また、上述した説明では、バイアス電流生成回路124aが、1主走査おきに所定の電流値のバイアス電流を生成し、駆動電流に印加させることとして説明したが、これに限らず1走査線おきに電流値を変更したバイアス電流を印加して、1主走査おきに異なる波長のレーザ光を発光させることとしてもよい。例えば、図10において、走査線1、及び3ではバイアス電流を印加せず波長λ1のレーザ光で露光し、走査線2では15mAのバイアス電流を印加して波長λ2のレーザ光で露光したとすると、走査線4では走査線2とは異なる電流値、例えば10mAのバイアス電流を印加することにより他の走査線とは異なる波長λ3のレーザ光を生じさせて露光させる。このようにすることにより、走査線毎に異なる干渉パターンがそれぞれ現れるので、干渉パターンのランダム化を図って、マクロ空間的な非可視化を実現することが可能となる。
【0054】
また、上述した説明では、バイアス電流生成回路124aは1走査線おきにバイアス電流を生成してレーザ光源部125に出力していたが、これに限らず、マクロ空間的に干渉縞を非可視化できるのであれば、例えば2走査線おき等、バイアス電流を印加する走査線の間隔を大きくしてもよい。しかし特に好ましいのは1走査線おきにバイアス電流を印加することである。
【0055】
その他、本実施の形態におけるレーザビーム露光装置120を構成する各装置、又は構成部分の細部構成、及び細部動作に関しても本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【0056】
【発明の効果】
請求項1、3、4記載の発明によれば、1主走査おきのバイアス電流を生成し、このバイアス電流を付加した、光量制御信号に基づく駆動電流をレーザ光源に印加するので、1主走査おきに異なる干渉パターンが感光材料に現れることとなり、マクロ空間的に干渉縞を非可視化できる。従って、簡易な技術で干渉縞を抑制する安価なレーザビーム露光装置を提供することができる。
【0057】
請求項2記載の発明によれば、バイアス電流の電流値をランダムに変更するので、露光条件のばらつきに対応して干渉縞を非可視化することができる。
【0058】
請求項5記載の発明によれば、異なる波長のレーザビームで多重に露光することとなるので、異なる波長のレーザビームどうしが相殺して、ミクロ空間的にも干渉縞を非可視化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレーザビーム露光装置を適用した実施の形態の画像記録装置100の正面図である。
【図2】図1の画像記録装置100の左側面図である。
【図3】図1のレーザビーム露光部120の構成を説明する図である。
【図4】レーザダイオードにおける印加電流とレーザ光出力との相関を示す図である。
【図5】レーザダイオードにおける温度依存性を示す図である。
【図6】本実施の形態におけるフィルムFの断面図であり、露光時におけるフィルムF内の化学的反応を模式的に示した図である。
【図7】加熱時のフィルムF内の化学反応を模式的に示した、図4と同様の図である。
【図8】レーザ光の波長と干渉縞との相関を説明する図である。
【図9】(a)は波長λ1のレーザ光の位相を示す図であり、(b)、(c)は、波長λ2のレーザ光の位相を示す図である。
【図10】バイアス電流を供給された駆動電流のパルスパターンを示す図である。
【図11】走査線毎の干渉パターンを示す図である。
【図12】多重露光を模式的に示した図である。
【図13】干渉縞が生じる原因を説明するための図である。
【符号の説明】
1 フィルムFの支持体
2 フィルムFの感光層
100 熱現像装置
120 レーザビーム露光部
123 変調部
124 ドライバ
124a バイアス電流生成回路
125 レーザ光源
130 現像部
142 搬送装置
F フィルム
Claims (5)
- 感光材料に対し、駆動電流に応じてレーザ光源から発光されたレーザビームを主走査方向、及び主走査方向に直交する副走査方向に走査して露光を行う露光手段を備えたレーザビーム露光装置において、
画像情報を構成する画素毎にデューティ比を100%未満に設定したパルスタイミングに応じて、当該画像情報に基づく光量制御信号を生成する信号生成手段と、
所定の主走査数毎に電流値を変更したバイアス電流を生成するバイアス電流生成手段と、
前記バイアス電流生成手段により生成されたバイアス電流を付加した、前記光量制御信号に基づく駆動電流を生成し、当該駆動電流を前記レーザ光源に印加する駆動電流印加手段と、
を備えることを特徴とするレーザビーム露光装置。 - 前記バイアス電流生成手段は、前記バイアス電流の電流値をランダムに変更することを特徴とする請求項1記載のレーザビーム露光装置。
- 前記バイアス電流生成手段は、前記バイアス電流の電流値を干渉縞が非可視化するように変更することを特徴とする請求項1記載のレーザビーム露光装置。
- 前記バイアス電流生成手段は、1主走査おきにバイアス電流を生成することを特徴とする請求項1から3の何れか一つに記載のレーザビーム露光装置。
- 前記露光手段は、前記レーザビームを副走査方向に一部重ね合わせて露光することを特徴とする請求項1から4の何れか一つに記載のレーザビーム露光装置。
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