JP4139662B2 - 光透過性電磁波遮蔽シート及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁波シールド(遮蔽)が必要な公共施設、ホール、病院、学校、企業ビル、研究所、精密部品製造工場、電磁波シールドルーム等の建築物の窓、或いは、電磁波を発生する電気製品の文字・画像表示部分等に利用する、透視可能な電磁波遮蔽性シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電磁波遮蔽性と共に光透過性も有する光透過性電磁波遮蔽シートとしては、ディスプレイ用途等を主体に、例えば次の様なものが挙げられる。
【0003】
(1)樹脂シート等の透明基材に、金等の高導電性金属を真空蒸着等で成膜して、シールド層として全面に透明な導電性薄膜からなる透明シールド層を設けた真空成膜品。
(2)シールド層として、繊維に金属めっきした導電性繊維メッシュ(シールドパターン層)を、透明基材にラミネートしたラミネート品。
(3)シールド層として導電性インキをパターン状にスクリーン印刷した導電性インキ層からなるシールドパターン層を透明基材に設けた印刷品。
(4)透明基材に銅等による導電性金属箔を積層した後、パターン形成にフォトリソグラフィ法を利用したエッチングにて、パターン金属層によるシールドパターン層をシールド層として設けたエッチング品(特許文献1等参照)。
(5)上記(4)にて、フォトリソグラフィ法で利用するエッチングレジストを黒色として、黒色レジストをパターン金属層に残しておく、視認性向上を図ったエッチング品(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−41682号公報
【特許文献2】
特開平9−293989号公報(〔請求項1〕、〔請求項4〕、〔請求項8〕、〔0005〕〜〔0007〕)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記(1)〜(5)の如き、従来の光透過性電磁波遮蔽シートは、電磁波遮蔽性能を主たる目的とするものであり、建築物の窓等の用途に適用しようとする場合に、その外観意匠に特別配慮されたものではなかった。(5)の黒色レジストを利用したものでも、単なる片面からの視認性向上を目的としたものであり、装飾性や意匠性を付与したものではなかった。
もちろん、これら従来の光透過性電磁波遮蔽シートは、該シートを通して、その反対側を透視できる光透過性を備えている点では、全く使用出来ないというものでは無いが、建築物の窓では、インテリア或いはエクステリア等として、美的要素も要求されることが多いからである。例えば、窓ガラスでは、単なる透明で厚み均一な窓ガラスも基本的な窓材として使用されているが、曇りガラス、凹凸模様付きガラス、ステンドグラス等と、窓ガラスそのもので装飾性や意匠性を表現したものも数多く使用されている。
【0006】
また、上記(1)〜(5)の如き、従来の光透過性電磁波遮蔽シートは、そのシールド層の特性についても、建築物の窓等の用途に適用しようとする場合には、次の様な問題が有った。
【0007】
すなわち、上記(1)の導電性薄膜の真空成膜品は、成膜工程が必要なことから、大面積のもをコストも含めて満足できる製品は難しい。また、GHz帯のシールド性能が要求される場合にはそれが十分に得られない。
また、上記(2)の導電性繊維メッシュのラミネート品は、繊維のめっき層が密着性に欠け、ラミネート加工時にめっき層が剥離したり、寒熱耐久性試験で剥離が発生したりする場合もある。また、縦・横の繊維がずれて視覚的に濃淡ができ易く、従って、ラミネート加工が難しい。また、高品質を維持する為に連続帯状の巻物として製造が極めて困難であり、歩留まりを向上することに限界もある。
また、上記(3)のスクリーン印刷を利用した印刷品は、微細な細線状(例えば50μm以下、特に40μm以下)の印刷パターンを形成できる導電性インキが実用上制限されてしまう。従って、光透過性を上げられない。また、スクリーン印刷は通常、枚葉印刷の為に連続パターンの印刷はできず、建築物の窓用途等に対して連続帯状物として大量生産するのには適さないという問題もある。
【0008】
以上の点から、シールドパターンとしては薄膜でない金属層が望まれる、この点に対しては、上記(4)や(5)のエッチング品が該当する。但し、これら(4)や(5)のエッチング品では、フォトリソグラフィ法を利用するので細線形成の点では優れているが、フォトリソグラフィ工程が生産性に劣る上、フォトマスクのサイズに制約があり、大面積には適さない。
【0009】
すなわち、本発明の課題は、光透過性電磁波遮蔽シートについて、建築物の窓等にも適用できる様にする為に、光透過性、電磁波遮蔽性能と共に、装飾性や意匠性も付与できる様にすることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで上記課題を解決すべく、請求項1記載の本発明の光透過性電磁波遮蔽シートでは、透明基材上にシールド層を積層した光透過性電磁波遮蔽シートにおいて、前記シールド層が不透明層を開口部を設けてパターン状に積層することで光透過性を確保し、かつ、前記開口部が占める面積比率の大小により柄模様を表現すると共に、該柄模様が視認可能である構成とした。
【0011】
この様な構成とすることで、光透過性と電磁波遮蔽性能と共に、柄模様によって、これまでの単調な光透過性電磁波遮蔽シートではなし得なかった、装飾性や意匠性も付与できる。その結果、建築物の窓等へも十分に適用できる。また、シールド層が柄模様を兼用できるので、新たな追加的な層として装飾層を設けなくても、光透過性と電磁波遮蔽性能と共に、装飾性や意匠性も付与できる。
【0012】
また、請求項2記載の本発明の光透過性電磁波遮蔽シートは、請求項1記載の光透過性電磁波遮蔽シートにおいて、前記柄模様に位置同調させて前記柄模様上に、視認可能な装飾層を設けてなる構成とした。
【0013】
この様な構成とすることで、光透過性と電磁波遮蔽性能を付与できると共に、装飾層は、シールド層が呈する色調等の外観とは独立して表現でき、前記シールド層による柄模様に比べて、装飾性や意匠性をより高意匠に付与できる。
【0015】
また、請求項3記載の本発明の光透過性電磁波遮蔽シートは、透明基材の一方の面側にシールド層を積層すると共に、前記透明基材のいずれかの面側に光透過性のある装飾層を積層した光透過性電磁波遮蔽シートにおいて、前記シールド層は不透明層を開口部を設けてパターン状に積層することで光透過性を確保し、かつ、前記開口部が占める面積比率の大小により柄模様を表現したものであって、前記装飾層と前記柄模様とがいずれも視認可能である構成とした。この様な構成とすることで、光透過性と電磁波遮蔽性能と共に、装飾層はシールド層(柄模様)とは独立した装飾層となる為に、シールド層のパターンとは無関係な自由な柄模様の表現が可能となり、装飾性や意匠性を高意匠に付与できる。
【0016】
また、請求項4記載の本発明の光透過性電磁波遮蔽シートは、請求項3記載の光透過性電磁波遮蔽シートにおいて、前記装飾層が前記透明基材に隣接して設けられている構成とした。
【0017】
また、請求項5記載の本発明の光透過性電磁波遮蔽シートは、請求項2記載の光透過性電磁波遮蔽シートに於いて更に、前記シールド層が導電性金属層であり、前記装飾層が着色樹脂層である構成とした。
【0018】
この様な構成とすることで、前記装飾層は、着色樹脂層によって任意の色調を表現できるので、前記シールド層による柄模様に比べて、装飾性や意匠性をより高意匠に付与できる。また、シールド層がパターン金属層(パターン状のシールド層)であるので、電磁波遮蔽性能も良い。
【0019】
また、請求項6記載の本発明の光透過性電磁波遮蔽シートは、請求項5記載の光透過性電磁波遮蔽シートに於いて更に、前記着色樹脂層が導電性金属層の不要部分をエッチングで除去する為のレジストである構成とした。
【0020】
この様な構成とすることで、前記装飾層は、エッチングレジストを流用(兼用)できる。
【0021】
また、請求項7記載の本発明の光透過性電磁波遮蔽シートは、請求項1〜6のいずれかに記載の光透過性電磁波遮蔽シートに於いて、記装飾層および/ないし前記柄模様が、連続的に濃淡が変化するグラデーション柄である構成とした。前記装飾層が、連続的に濃淡が変化するグラデーション柄である構成は好ましい一形態である。
【0022】
この様に前記装飾層および/ないし前記柄模様としてグラデーション柄を採用することで、光透過性電磁波遮蔽シートの施工時に継ぎが発生した場合でも違和感なく設置できる。
【0023】
また、請求項8記載の本発明の光透過性電磁波遮蔽シートの製造方法は、請求項6に記載の光透過性電磁波遮蔽シートに対する好ましい製造方法の一形態であり、透明基材と導電性金属箔とを接着剤を介して積層一体化した後、導電性金属箔の透明基材から遠い方の面に、所望のパターン状にフレキソ印刷により着色レジストを設けて、導電性金属箔をエッチングして不要部分を除去しパターン状のシールド層からなる柄模様とすることで前記柄模様上に位置同調した着色レジストからなる着色樹脂層を装飾層として形成する、製造方法とした。
【0024】
この様な構成の製造方法とすることで、請求項6に記載の光透過性電磁波遮蔽シートについて、そのパターン金属層(パターン状のシールド層)のパターン形成に印刷方式、それもフレキソ印刷を採用している為に、大面積で連続帯状物として生産性良く巻物形態で大量生産でき、また高精度のパターンも可能となる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、実施の形態を説明する。
【0027】
〔概要〕
先ず、図1で、本発明の光透過性電磁波遮蔽シート10について、その基本的な形態例として3形態を例示する。本発明の光透過性電磁波遮蔽シートでは、少なくとも透明基材1とシールド層2の他に、更に、装飾性、意匠性の付与の為に、装飾層3を設ける。この装飾層3としては、電磁波遮蔽性能を発揮するシールド層2との関係に於いて、各種の形態を取り得る。
【0028】
シールド層2としては、基本的には特に制限は無く従来公知のいずれでも良く、用途・要求特性に応じたものを採用すれば良い。シールド層2としては、それ自体が不透明の為に、開口部を設けてパターン状に形成することで光透過性を確保する形態のシールドパターン層2A〔図1(A)及び(B)参照〕と、それ自体が透明で全面に形成できる透明シールド層2B〔図1(C)参照〕とがある。シールドパターン層2Aは導電性金属箔をエッチングでパターン状にしたもの等であり、透明シールド層2Bは透明な金属薄膜層等である。
【0029】
そして、装飾層3には、その内容により例えば、次の様なものがある。シールドパターン層2A自体のパターンに変化を付けて柄模様を表現したものを兼用型装飾層3A〔図1(A)参照〕と呼び、電磁波遮蔽性能は無いがシールドパターン層2Aのパターンに位置同調して設けられたものを位置同調型装飾層3B〔図1(A)参照〕と呼び、シールド層2とは層及びパターン的に独立の層として設けられたものを独立型装飾層3C〔図1(B)及び(C)参照〕と呼ぶことにする。これら各種装飾層は、用途に応じて1種単独で又は2種以上を併用する。ここで、具体例を例示すれば、位置同調型装飾層3Bは、シールドパターン層2Aを導電性金属箔のエッチングで形成する際の着色レジストによる着色樹脂層である。また、この様にして形成されたシールドパターン層2A自体を目視可能に構成すればそれは兼用型装飾層3Aである。また、独立型装飾層3Cは、透明基材上に印刷形成した通常の装飾層である。
【0030】
そして、この様な光透過性電磁波遮蔽シートの好適な一製造方法としては、例えば、透明基材と導電性金属箔とを接着剤で積層後、着色レジストをフレキソ印刷して柄模様の着色樹脂層を形成して、導電性金属箔をエッチングしてパターン金属層をシールドパターン層として形成すれば、シールドパターン層上に残した着色樹脂層は位置同調型装飾層となり、位置同調型装飾層を有する光透過性電磁波遮蔽シートが得られる。
【0031】
以下、更に、各層毎に順を追って本発明を詳述する。
【0032】
〔透明基材〕
透明基材1の素材としては、透明性のある熱可塑性樹脂、或いは熱硬化性樹脂等の樹脂材料を用いることができる。但し、巻物形態での製造及び施行時に望まれる可撓性の点では、熱硬化性樹脂よりは熱可塑性樹脂の方が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、或いは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、或いは、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂等である。こられらの中でも、透明性、耐熱性、耐薬品性、コスト等の点より、ポリエチレンテレフタレートは最も好ましい樹脂である。
【0033】
透明基材は、これら樹脂の単体又は2種以上の混合物からなる、単層シート或いは2層以上の積層シートを用いることができる。
透明基材の厚みは用途に応じたものとすれば良く特に制限はないが、通常、25〜300μm、好ましくは50〜150μmである。厚みが50μm未満ではコシ(腰)が無く、施行時の作業性が低下する。なお、ポリエチレンテレフタレート等で50μm未満のシートを用いる場合は、他のシート(例えば、熱線カット機能付きポリエチレンテレフタレートシート、ハードコートポリエチレンテレフタレートシート)と積層して厚みを厚くした積層シートとして用いても良い。一方、厚みが150μm超過でも、高透明性ポリエチレンテレフタレートシート等であれば、透明性は維持できるが、コスト高となる。
【0034】
また、透明基材には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン吹付処理、プラズマ処理、易接着プライマー塗工処理等の公知の易接着処理を施しても良い。例えば、ポリエチレンテレフタレートシート等では、市販の易接着処理品を用いれば、更なる易接着処理を省略する事もできる。
【0035】
〔シールド層〕
シールド層2は、それ自体が電磁波遮蔽性能を有する層であり、基本的には特に制限は無く、従来公知の各種シールド層を、用途・要求特性に応じて採用すれば良い。なお、シールド層としては、その材料自体は不透明でその実質部分では不透明層となるが、開口部を設けてパターン状に積層することで光透過性を確保したシールドパターン層2Aと、その材料自体に光透過性があり全面に設ける事もできる透明シールド層2Bとに、大別される。
【0036】
シールドパターン層2Aとしては、金属層がパターン状に形成されたパターン金属層が電磁波遮蔽性能的に優れている。パターン金属層の形成方法は基本的はに特に限定されるものではないが、例えば、導電性金属箔をエッチングしてパターン状にすることで形成できる、また、この方法は生産性も良い。また、シールドパターン層2Aとしては、銅、銀、カーボン等の導電性粉末を含有する導電性インキをパターン状に印刷して形成した導電性インキ層、或いは、導電性繊維メッシュも、メッシュと言うパターンで不透明材料である点で該当する。
一方、透明シールド層2Bとしては、金等の高導電性金属を真空蒸着等で成膜した透明な導電性薄膜層がある。なお、透明シールド層2Bでも、半透明膜として形成して、柄模様を表現する様にパターン状に形成すれば、兼用型装飾層3Aとなり得る。
【0037】
シールドパターン層2Aは、電磁波遮蔽性能に優れているが不透明材料である金属材料を使用でき、また大面積を考えた場合にコスト的優位性の点でも、本発明の光透過性電磁波遮蔽シートとしては、代表的なシールド層である。
【0038】
シールドパターン層2Aとするパターン金属層としては、従来公知のものを用途に応じて使用すれば良い。例えば、パターン金属層を導電性金属箔のエッチングで形成する場合では、該導電性金属箔の材料としては、導電性を有し、更にエッチングできるものであれば特に制限は無いが、銅、アルミニウム等が入手容易性等の点で好ましい。なかでも、銅は、導電性、及び、微細なエッチング適性に優れているので、高価ではあるが、最も好ましい。
【0039】
なお、導電性金属箔の厚みは、パターン金属層のパターンの線幅等に応じて適宜なものとすれば良く、通常5〜50μm程度で良いが、細線(例えば50μm以下、特に40μm以下)パターンに対しては、より好ましくは9〜18μm程度のものが良い。厚みが厚い程、細かい形状を高精度でパターン形成し難くなり、逆に厚みが薄すぎると導電性金属箔としての取り扱い性、導電性が低下する。
【0040】
なお、導電性金属箔をパターン金属層として使用する場合、導電性金属箔はパターン化する前に、透明基材に積層一体化した後に、パターン化するとパターン形状の維持が容易である。透明基材と導電性金属箔を積層し一体化する為には、それらを接着剤層4で接着・積層すると良い〔図1(A)及び(B)等参照〕。その際の積層法としてはドライラミネーション法が代表的である。なお、導電性金属箔の不要部分が除去された部分では、接着剤層が残存するので、接着剤層は透明としておく。
【0041】
接着剤層に用いる接着剤としては、用途に応じたものを適宜使用すれば良く、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の硬化型接着剤が挙げられる。なかでも、主剤にポリエステルポリオールを用い、硬化剤にイソシアネート系硬化剤を用いたウレタン樹脂系接着剤は、コスト、塗工適性、硬化後の透明性、比較的低温での硬化性、及び取り扱い性に優れている点で好ましい接着剤の一つである。なお、接着剤は、ロールコート、スプレーコート等の塗工法、或いは、グラビア印刷、スクリーン印刷等の印刷法で施せば良い。
【0042】
なお、透明基材、導電性金属箔の接着剤と接する面には、必要に応じ適宜、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等の公知のカップリング剤による接着強化処理を行っても良い。また、接着力強化の点で、導電性金属箔の接着剤面は、粗面化処理面(粗化処理面)としておくのが好ましい。また、粗面化処理面は、例えば、銅箔の場合では製造メーカや製品で様々であるが、代表的には樹脂層面側に対して明度及び彩度が低い茶褐色を呈している。また、この他、黒色系、黄色系、桃色等の色調もある。その色調を、パターン金属層からなる兼用型装飾層の色調に活用するのも良い。
【0043】
〔シールドパターン層のパターン形状〕
シールドパターン層の平面視のパターン形状は、基本的には用途に応じた任意形状で良い。パターンの形状は、原稿や印刷版の刷版時等に、コンピュータ上での公知のデジタル画像処理によって任意形状の画像を生成することで容易に対応できる。そして、パターン形状を更に変形すれば、兼用型装飾層としてや、位置同調型装飾層としての柄模様を表現したパターンにできる。この点については、後の〔装飾層〕のところで述べるとして、先ず、柄模様を表現しない場合のベースとなるパターンについて説明する。
【0044】
上記パターンとしては、シールドパターン層2Aの非形成部分(シールドパターン層に対して開口部となる部分)の形状が、正方形〔例えば図7(A)参照、図面では白い部分〕、長方形〔例えば図7(B)参照〕、三角形〔例えば図7(C)〕、六角形〔例えば図7(D)参照〕、八角形、その他の多角形、或いはこれら多角形で角に丸みのある形状〔例えば図7(F)参照〕、或いは、円形〔例えば図7(E)参照〕、楕円形、或いは、これら形状の組合わせ(例えば、八角形と四角形)等である。また、これらの形状の並び方は、正方格子〔例えば図7(A)、(E)、(F)参照〕の格子配列の他、並び方を調整して千鳥調〔例えば図7(B)〜(C)参照〕とすることも可能である。
なお、もちろんだか、シールドパターン層の形成部分は、分断せず連続した形状とするのが、電磁波遮蔽性能の点で好ましい。
この様なパターンでシールドパターン層を形成することで、それ自体は不透明材料からなる層でも光透過性を電磁波遮蔽性と共に有する層となる。
【0045】
シールドパターン層のパターンは、電磁波遮蔽性能を高くするには開口率(シールドパターン層非形成部分である開口部が全面積に閉める面積比率)を小さくし、開口部サイズを小さくる。開口率60%未満では光透過性が十分に得られないが、高い電磁波遮蔽性能が得られる。逆に開口率90%超過では、高い光透過性が得られるが、パターン形成の為の印刷条件やエッチング条件は高い精度での制御が必要になる。
また、開口部のサイズは、電磁波遮蔽性能に大きく影響するため、(開口率90%以下の条件で)1mm以下が好ましい。望ましくは350μmであれば、一般的な電磁波遮蔽性能40dBが得られる。
なお、もちろんだが、兼用型装飾層や位置同調型装飾層との関連で、シールドパターン層の開口率を調整する場合は、開口率は電磁波遮蔽性能、光透過率と共に柄模様に応じたものとなる。
【0046】
また、光透過性と電磁波遮蔽性能を高度に両立させる為には、シールドパターン層のパターンは、なるべく細い細線で形成し、且つ非形成部分をなるべく広くするのが好ましい。この為には、該細線の線幅は、用途にもよるが200μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更により好ましくは40μm以下とするのが良い。なお、線幅の下限は、形成方法にもよるが、フレキソ印刷で樹脂層をパターン状に直接形成するのであれば、フレキソ印刷時の線の欠け発生等の点、及び導電性金属箔使用の場合はその実用的な厚み下限界等の点でも、少なくとも10μm以上とするのが良い。
【0047】
〔装飾層〕
先ず、装飾層3としては、光透過性を確保しつつ柄模様を表現したものであれば如何なるものでも良い。装飾層3には、電磁波遮蔽性能がそれ自体にないものと、それ自体に有するものとがある。装飾層それ自体に電磁波遮蔽性能を有するものが兼用型装飾層3A〔図1(A)参照〕であり、装飾層それ自体に電磁波遮蔽性能が無いものが位置同調型装飾層3B〔図1(A)参照〕と独立型装飾層3C〔図1(B)及び(C)参照〕である。兼用型装飾層3Aによる柄模様は、その反射光或いは透過光を観察した際に意匠として認識される。
【0048】
なお、これら各種装飾層の光透過性電磁波遮蔽シート内に於ける層的位置関係は特に制限はないが、位置同調型装飾層は通常はシールドパターン層に隣接してその上又は下に設けられる。また、独立型装飾層は通常は透明基材に隣接して設けられる。
【0049】
〔装飾層:兼用型装飾層〕
兼用型装飾層3Aは、シールドパターン層のパターン自体によって柄模様を表現した層であるが、その為には、シールドパターン層のパターンに於ける開口部が占める面積比率(開口率)の大小により柄模様の濃淡を表現すると良い。これは、網点印刷が網点の大小で網点が占める面積比率を変えて濃淡を表現することで、白と黒(或いは中間調の2レベル)の2値画像はもとより、階調を有する画像も表現できるのと同じである。但し、光透過性電磁波遮蔽シートに於いては、光透過性と電磁波遮蔽性を両立させる事も必要であるので、開口率100%の部分を局所的に有すると、当該部分の電磁波遮蔽性能が無くなるので好ましくない。しかし、開口率0%の部分は電磁波遮蔽性能的には何ら問題なく、柄模様及び光透過性として問題なければ、相応の面積で有していても良い。
【0050】
なお、開口率を調整する為には、具体的には例えば、開口部形状は相似形で且つ(面内)重心位置は同じにしてサイズのみを変化させれば良い。また、開口率や位置に応じて、開口部の形状やその重心位置を変えても良い。
また、兼用型装飾層の形成方法は、次の位置同調型装飾層で更に詳しく述べる。
【0051】
〔装飾層:位置同調型装飾層〕
位置同調型装飾層3Bは、シールドパターン層のパターンに位置同調したパターンを有し該パターンの開口部が占める面積比率の大小により柄模様の濃淡を表現した装飾層である。この様な位置同調型装飾層の形成方法としては、例えば、、シールドパターン層2Aを、導電性金属層をパターン化したパターン金属層として形成する為に、導電性金属箔をエッチングでパターン化する際、エッチングレジストに着色レジストを用いてエッチング後、着色レジストをそのまま残せば、着色レジストは着色樹脂層であり、それが位置同調型装飾層となる。また、これと同時に形成されたシールドパターン層の面を目視可能に構成すれば、それは兼用型装飾層となる。
【0052】
導電性金属箔等の導電性金属層上にパターン状にレジストを形成する方法としては、導電性金属層上の全面にフォトレジストを塗布後、露光、現像するフォトリソグラフィ法、或いは、導電性金属層上に最初からパターン状にレジストを印刷形成する印刷法が代表的であるが、印刷法の方がフォトリソグラフィ法よりも、生産性、大面積への対応の点で優れている。
【0053】
上記印刷法に於ける印刷方式としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷等が挙げられる。但し、線幅50μm以下、特に40μm以下の微細なパターンの場合は、オフセット印刷やフレキソ印刷が好ましく、更に、広幅(1m幅以上)で、しかも連続帯状物に対して連続印刷するにはフレキソ印刷が好適である。
なお、フレキソ印刷によるインキの厚みは、微細パターンを形成する為には、2μm以下が好ましい。耐エッチング液性に優れる電離放射線硬化型インキ等を使用することにより、0.5μm程度の厚みでもエッチング可能である。
【0054】
エッチングレジストとするインキとしては、紫外線等で硬化し無溶剤型の電離放射線硬化型インキを使用することができる。インキは、水性インキでも良いが、乾燥後、水で溶解してしまう様なインキの場合は、その後のエッチングでレジストとして機能できず不適当である。なお、導電性金属箔等の導電性金属層のエッチングは、公知のエッチング液、例えば金属が銅の場合では、一般的な塩化第二鉄溶液、塩化銅溶液等となる。
【0055】
なお、電離放射線硬化型インキに用いる電離放射線硬化性樹脂としては、公知の各種モノマー、オリゴマー、プレポリマー等を、粘度、密着性、顔料分散性等を考慮して、適宜選択・配合した樹脂組成物を使用することができる。また、粘度を高めとする場合は、オリゴマー、プレポリマーを主体としたインキ配合とすれば良い。また、この様な電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系等のアクリレート系樹脂(組成物)等がある。
なお、電離放射線とは、紫外線、電子線等であり、紫外線硬化型インキは紫外線照射で、電子線硬化型インキは電子線照射で、インキを硬化させる。
【0056】
インキの着色は、透明着色でも不透明着色でも良い。着色は顔料や染料等の着色剤の添加で着色すれば良い。フレキソ印刷ではインキ膜厚が薄くなる為に透明着色が容易である。透明着色の場合、例えば、カーボンブラックの添加で透明黒とした着色樹脂層を、銅の導電性金属層上に印刷形成した場合、導電性金属層が透視されそれが茶色や褐色の外観となる。これらは、銅箔の粗面化処理面の色と類似色となる。
なお、着色レジストは、位置同調型装飾層としない場合でも、エッチング後に残すことで、形成面側のパターン金属層の金属光沢が嫌われる場合に、それを低減できる。
【0057】
〔装飾層:独立型装飾層〕
独立型装飾層3Cは、従来公知の通常の各種印刷方式による装飾層を適宜採用できる。独立型装飾層は、通常は透明基材に対して形成される。或いはまた、別の透明樹脂シート等に対して印刷形成した後、ラミネート、或いは転写等で形成する等しても良い。例えば、独立型装飾層3Cは、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、インキジェット印刷、転写印刷等の公知の各種印刷法で形成すれば良い。また、ストライプ柄等の比較的シンプルな柄模様である場合には塗工法で形成することもできる。
【0058】
なお、独立型装飾層とは言っても、それが全面にわたって完全に不透明であれば、光透過性電磁波遮蔽シートとしての光透過性は確保できないので、少なくとも光透過性が必要な部分は透明性のあるインキを用いる。また、遮光性が要求される部分がある場合は、当該部分には遮光性の高いインキを用いると良い。
【0059】
なお、独立型装飾層、或いはその他の型の装飾層も含めて、装飾層が表現する柄模様は、用途に応じたものとすれば良く任意である。例えば、木目模様、石目模様、布目模様、タイル調模様、煉瓦調模様、皮絞模様、幾何学模様、抽象絵柄模様(例えばグラデーション柄等)、文字、マイクロ文字、記号、マーク、図形等である。
【0060】
なお、グラデーション柄は、例えば図6(A)及び(B)で例示する様に濃淡が連続的(理想的には無段階だが段階的でも良い)に或る方向性を持って変化する柄であるが、その濃部分或いは淡部分を施工時の光透過性電磁波遮蔽シートの外周部分とする事によって、隣合せて施行する際に、継ぎ目部分を視覚的に目立ち難く継ぎ目を違和感無く施行できる効果も得られる。
なお、図6(A)に例示のグラデーション柄は、図面左右方向(両矢印方向)が濃淡変化方向で、図面右側が濃部分、左側が淡部分とした柄である。一方、図6(B)に例示のグラデーション柄は、図面左右方向(両矢印方向)が濃淡変化方向で、図面左右両側が濃部分、中央が淡部分とした柄である。
【0061】
ところで、シールドパターン層をエッチング形成時に、着色樹脂層として着色レジストを残しても、シールドパターン層のパターンが柄模様を表現していない通常のパターンであれば、着色樹脂層の形成パターンはシールドパターン層のパターンと位置同調してはいるが、その着色樹脂層は該パターンで柄模様を表現していないので位置同調型装飾層ではない。しかし、この様に(形成部分の)パターンが位置同調している場合でも、着色樹脂層の面内で表現する色模様、或いは前記パターンに対して大柄に形成したパターン自体の柄模様等で(前記パターンとは無関係な)柄模様は表現できる。この様な着色樹脂層は独立型装飾層である。また、この様な独立型装飾層は、例えば、印刷面が平坦な透明基材に印刷する代わりに、シールドパターン層上にその凹凸を利用して凸部上にのみインキが乗る様な転写印刷等で形成した、柄模様を表現した転写層等が該当する。
【0062】
〔その他の構成層〕
本発明による光透過性電磁波遮蔽シートは、更に必要に応じ適宜、他の構成層を追加的に設けて良い。例えば、表面保護層、ハードコート層、粘着剤層、熱線カット層等である。
例えば、図2及び図4に例示の光透過性電磁波遮蔽シート10は、透明基材1のシールド層3形成側の面の全面に、透明樹脂等からなる表面保護層5を設けた形態例である。
また、図3及び図5に例示の光透過性電磁波遮蔽シート10は、透明基材1のシールド層3形成側の面の全面に、粘着剤層6及び離型紙7をこの順に積層した構成である。
【0063】
上記表面保護層5は、シールド層2を傷や表面酸化等から保護する為の透明な層であり、透明樹脂からなる樹脂組成物を塗布等して形成すれば良い。表面保護層の形成は、スプレーコート、ロールコート、グラビアコート等の塗工法、或いは、スクリーン印刷等の印刷法で形成すれば良い。なお、透明樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等を使用できるが、表面保護層が接する他層(例えば、シールド層2、装飾層3、接着剤層4、着色樹脂層8等)に対する接着性、及び皮膜強度を有する樹脂を選定すれば良い。なお、接着性向上の為に、上記樹脂組成物中には、シランカップリング剤等の公知のカップリング剤を添加しても良い。
【0064】
表面保護層5は、ハードコート層としても良い。ハードコート層とするには、それに用いる透明樹脂に、例えば、ウレタン樹脂、或いはアクリレート系等の電離放射線硬化性樹脂等の硬質塗膜が得られる硬化性樹脂を使用し、更に必要に応じシリカ、アルミナ等の硬質無機粉末を添加すれば良い。また、この様な硬質塗膜は、透明基材に対しても設けても良い。つまり、透明基材のシールド層を積層しない側の面に対して、表面保護層(ハードコート層)を設けた構成である。また、ハードコート層により、施行時及び(窓等の)清掃時のクリーニング適性(表面硬度)も光透過性電磁波遮蔽シートに付与できる。
【0065】
また、図3及び図5に例示の如く、粘着剤層6を設けることにより、光透過性電磁波遮蔽シートを、該粘着剤層によって窓等に容易に貼り付けることができる。粘着剤層6は、図面に例示とは逆に透明基材の面に対して設けても良い。なお、粘着剤層も表面保護層同様に光透過性の点で透明層とする。なお、粘着剤層に用いる粘着剤としては、アクリル樹脂系、ゴム系、シリコーン系等の公知の粘着剤を用途に応じて適宜使用すれば良い。なかでも、アクリル樹脂系は、透明性、耐候性等の点で優れている。
【0066】
また、粘着剤層を設ける場合は、施行時まで粘着剤層を保護する為に、離型紙7を粘着剤層上に積層した構成とするのが好ましい。離型紙としては、例えば、基材にシリコーン系離型剤を塗布形成したもの等であるが、紙ベース、以外に、樹脂ベース(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等)、或いは紙と樹脂の複合ベースでも良く、公知のものを適宜選択使用すれば良い。なお、離型紙の場合は透明性は不要である。
【0067】
なお、熱線カット層は、公知の赤外線吸収剤を表面保護層や粘着剤層の樹脂中に添加してこれら層を兼用させたり、或いは、透明樹脂シート中に添加して熱線カットシートとして、このシートをラミネートすれば良い。熱線カットシートの場合、それを透明基材乃至は透明基材の一部としても良い。なお、透明樹脂シートの樹脂としては、前述透明基材で述べた樹脂等が使用される。
また、熱線カット層は、Al、SiO2、TiO2、SnO、ITO(インジウム・スズ酸化物)、ATO(アンチモン・スズ酸化物)等の物質を蒸着等の物理的薄膜形成手法により薄膜としたものを利用できる。また、これらの薄膜は、透湿防止、帯電防止等の機能も付与できる。
【0068】
【実施例】
次に実施例及び比較例により本発明を更に説明する。
【0069】
〔実施例1〕
図3断面図の如き光透過性電磁波遮蔽シート10を次に様にして作製した。
先ず、透明基材1とする厚み100μmのポリエチレンテレフタレートシートに、導電性金属箔として厚み12μmの銅箔を、ドライラミネート用のウレタン系接着剤を用いて貼り合わせて、透明基材に導電性金属箔が接着剤層を介して積層した構成の積層シートを用意した。
【0070】
次に、上記積層シートの導電性金属箔の面上に、フレキソ印刷により無溶剤タイプで黒色の紫外線硬化型インキを、所望のパターン状に印刷し、紫外線を照射してインキを硬化させて、エッチングレジストとする着色樹脂層(後の位置同調型装飾層3Bとなる)を形成した。なお、印刷パターンは、非印刷部となる開口部形状が正方形で、この正方形を縦横に正方格子状に配列したパターンで、開口部の面積比率を連続的に変化させることで、柄模様として図6(A)の如きグラデーション柄(濃淡が連続帯状の透明基材の幅方向で変化)を表現したパターンである。
【0071】
次いで、塩化第二鉄溶液により、導電性金属箔をエッチングし、印刷部分(着色樹脂層形成部分)を残して、非印刷部分の不要な導電性金属箔を除去して、所望の柄模様を表現したパターン金属層をシールドパターン層2Aとして形成した。なお、このシールドパターン層2Aは、透明基材1側からは透視できる層であり、透明基材側からの外観として、グラデーション柄を表現した、兼用型装飾層3Aを構成するものである。
【0072】
更に、シールドパターン層2A形成側の面全面に、アクリル系粘着剤を用いた無色透明な粘着剤を塗工して粘着剤層6を形成した後、該粘着剤層6上に、紙ベースの離型紙7を貼り合わせて、図3の如き光透過性電磁波遮蔽シート10を得た。
【0073】
得られた光透過性電磁波遮蔽シートは、透明基材1に対してシールドパターン層2A側は、着色樹脂層からなる位置同調型装飾層3Bが装飾層3として観察され、黒いグラデーション柄の意匠を有した。一方、他方の面側からは、シールド層2として形成したシールドパターン層2Aからなる兼用型装飾層3が装飾層3として観察され、こちらは銅箔の色を呈するグラデーション柄の意匠を有した。また、このグラデーション柄により光の透過率が連続的に変化する調光性(機能)も有するものとなった。
なお、電磁波遮蔽性能は、1GHzにおいて40dBであった。
【0074】
〔実施例2〕
図5の断面図の如き光透過性電磁波遮蔽シート10を次に様にして作製した。
先ず、透明基材1とする厚み100μmのポリエチレンテレフタレートシートに、光透過性の着色透明インキを印刷して装飾層3の柄模様として、図6(A)の如きグラデーション柄(濃淡が連続帯状の透明基材の幅方向で変化)を表現した独立型装飾層3Cを形成した。
【0075】
次に、印刷面側に、導電性金属箔として厚み12μmの銅箔を、ドライラミネート用のウレタン系接着剤を用いて貼り合わせて、透明基材が、その装飾層側の面で導電性金属箔と接着剤層を介して積層した構成の積層シートを用意した。
【0076】
次に、上記積層シートの導電性金属箔の面上に、フレキソ印刷により無溶剤タイプで黒色の紫外線硬化型インキを、開口形状が正方形となる、線幅30μm、開口幅300μmの正方格子配列パターン〔図7(A)参照〕を、厚み1μmに印刷し、紫外線を照射してインキを硬化させ、エッチングレジストとする着色樹脂層8を形成した。
【0077】
次いで、塩化第二鉄溶液により、導電性金属箔をエッチングし、印刷(着色樹脂層)部分を残して、非印刷部分の不要な導電性金属箔を除去して、パターン金属層をシールドパターン層2Aとして形成した。
【0078】
更に、シールドパターン層2Aの側の面全面に、アクリル系粘着剤を用いた無色透明な粘着剤を塗工して粘着剤層6を形成した後、該粘着剤層6上に、紙ベースの離型紙7を貼り合わせて、図5の如き光透過性電磁波遮蔽シート10を得た。
【0079】
得られた光透過性電磁波遮蔽シートは、表裏両面から、装飾層3として形成した独立型装飾層3Cのグラデーション柄の意匠が観察された。また、このグラデーション柄により光の透過率が連続的に変化する調光性(機能)も有するものとなった。
なお、電磁波遮蔽性能は、1GHzにおいて40dBであった。
【0080】
〔実施例3〕
実施例2に於いて、独立型装飾層3C(装飾層3)の柄模様を、光透過性の着色透明インキによるステンドグラス調の絵柄に変更した他は、実施例2と同様にして、図5の如き光透過性電磁波遮蔽シートを作製した。
【0081】
得られた光透過性電磁波遮蔽シートは、表裏両面から、装飾層3として形成した独立型装飾層3Cのステンドグラス調の意匠が観察された。
なお、電磁波遮蔽性能は、1GHzにおいて40dBであった。
【0082】
【発明の効果】
(1)本発明の請求項1記載の光透過性電磁波遮蔽シートによれば、光透過性と電磁波遮蔽性能と共に、これまでの単調な光透過性電磁波遮蔽シートではなし得なかった、装飾性や意匠性も付与できる。その結果、建築物の窓等へも十分に適用できる。
(2)また、新たな追加的な層として装飾層を設けなくても、光透過性と電磁波遮蔽性能と共に、装飾性や意匠性も付与できる。
【0083】
(3)また、請求項2記載の光透過性電磁波遮蔽シートによれば、光透過性と電磁波遮蔽性能を付与できると共に、装飾層は、シールド層が呈する色調等の外観とは独立して表現でき、請求項1記載の光透過性電磁波遮蔽シートの場合に比べて、装飾性や意匠性をより高意匠に付与できる。
(4)また、請求項5記載の光透過性電磁波遮蔽シートによれば、装飾層は着色樹脂層によって任意の色調で表現できるので、請求項1記載の光透過性電磁波遮蔽シートの場合に比べて、装飾性や意匠性をより高意匠に付与できる。また、シールド層が導電性金属層であるので、電磁波遮蔽性能も良い。
(5)更に、請求項6記載の光透過性電磁波遮蔽シートによれば、前記着色樹脂層が導電性金属層の不要部分をエッチングで除去する為のレジストであるので、装飾層にエッチングレジストを流用(兼用)できる。
【0084】
(6)また、請求項3記載の光透過性電磁波遮蔽シートによれば、光透過性と電磁波遮蔽性能と共に、シールド層からなる柄模様とは無関係な自由な装飾層の表現が可能となり、装飾性や意匠性を高意匠に付与できる。
【0085】
(7)また、装飾層および/ないし柄模様をグラデーション柄とすれば、光透過性電磁波遮蔽シートの施工時に継ぎが発生した場合でも違和感なく設置できる。
【0086】
(8)また、本発明の光透過性電磁波遮蔽シートの製造方法によれば、請求項6に記載の光透過性電磁波遮蔽シートについて、そのパターン金属層(パターン状のシールド層)のパターン形成に印刷方式、それもフレキソ印刷を採用している為に、大面積で連続帯状物として生産性良く巻物形態で大量生産でき、また、高精細のパターンも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光透過性電磁波遮蔽シートのうち3形態を例示する断面図。
【図2】本発明の光透過性電磁波遮蔽シートの別の一形態を例示する断面図。
【図3】本発明の光透過性電磁波遮蔽シートの別の一形態を例示する断面図。
【図4】本発明の光透過性電磁波遮蔽シートの別の一形態を例示する断面図。
【図5】本発明の光透過性電磁波遮蔽シートの別の一形態を例示する断面図。
【図6】柄模様としてグラデーション柄の2例を示す平面図。
【図7】シールドパターン層のパターンの幾つかを例示する平面図。
【符号の説明】
1 透明基材
2 シールド層
2A シールドパターン層
2B 透明シールド層
3 装飾層
3A 兼用型装飾層
3B 位置同調型装飾層
3C 独立型装飾層
4 接着剤層
5 表面保護層
6 粘着剤層
7 離型紙
8 着色樹脂層
10 光透過性電磁波遮蔽シート
Claims (8)
- 透明基材上にシールド層を積層した光透過性電磁波遮蔽シートにおいて、前記シールド層が不透明層を開口部を設けてパターン状に積層することで光透過性を確保し、かつ、前記開口部が占める面積比率の大小により柄模様を表現すると共に、該柄模様が視認可能であることを特徴とする光透過性電磁波遮蔽シート。
- 前記柄模様に位置同調させて前記柄模様上に、視認可能な装飾層を設けてなることを特徴とする請求項1記載の光透過性電磁波遮蔽シート。
- 透明基材の一方の面側にシールド層を積層すると共に、前記透明基材のいずれかの面側に光透過性のある装飾層を積層した光透過性電磁波遮蔽シートにおいて、前記シールド層は不透明層を開口部を設けてパターン状に積層することで光透過性を確保し、かつ、前記開口部が占める面積比率の大小により柄模様を表現したものであって、前記装飾層と前記柄模様とがいずれも視認可能であることを特徴とする光透過性電磁波遮蔽シート。
- 前記装飾層が前記透明基材に隣接して設けられていることを特徴とする請求項3記載の光透過性電磁波遮蔽シート。
- 前記シールド層が導電性金属層であり、前記装飾層が着色樹脂層であることを特徴とする請求項2記載の光透過性電磁波遮蔽シート。
- 前記着色樹脂層が導電性金属層の不要部分をエッチングで除去する為のレジストであることを特徴とする請求項5記載の光透過性電磁波遮蔽シート。
- 前記装飾層および/ないし前記柄模様が、連続的に濃淡が変化するグラデーション柄であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光透過性電磁波遮蔽シート。
- 請求項6に記載の光透過性電磁波遮蔽シートの製造方法であって、透明基材と導電性金属箔とを接着剤を介して積層一体化した後、導電性金属箔の透明基材から遠い方の面に、所望のパターン状にフレキソ印刷により着色レジストを設けて、導電性金属箔をエッチングして不要部分を除去しパターン状のシールド層からなる柄模様とすることで前記柄模様上に位置同調した着色レジストからなる着色樹脂層を装飾層として形成する、光透過性電磁波遮蔽シートの製造方法。
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