JP4139490B2 - 静圧空気軸受直線案内装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、高精度な加工装置及び測定装置、半導体製造や検査装置などにおいて、試料、工具、検出器などを高い位置決め精度をもって移動させることが可能な静圧気体軸受直線案内装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の静圧気体軸受直線案内装置には、案内方向に延びるガイドレールと、このガイドレールの上側に跨がるように配置され且つ前記案内方向に移動可能な可動体と、この可動体を気体によって支持・案内する空気軸受部と、可動体を基台に対して吸引する吸引力付与部と、を備えて構成されたものがある。
【0003】
このような静圧気体軸受直線案内装置としては、例えば、図3に示すように、上面に水平な基準面50aを備えて案内方向に延びる基台50を有している。この基台50は、一般的にセラミックスや石などによって構成されている。基台50の上面の幅方向(案内方向に直交する水平方向)中心から若干偏位した位置には、ガイドレール51が突設されている。このガイドレール51は、基準面50aに沿って案内方向に延びている。この基台50の基準面50aの上方に、所定間隔をあけて可動体であるテーブル55の下面が、基準面50aに対して平行に対向配置されている。
【0004】
テーブル55の下面には、ガイドレール51を両側から挟むように、ガイドレール51の各側面に所定間隔をあけて対向する対向面を持った対向部56及び57がそれぞれ形成されている。この対向部56及び57のガイドレール51の側面に対向する面には、水平方向を支持する水平方向空気軸受部53がそれぞれ配置されている。また、対向部56の下面には、上下方向を支持する上下方向空気軸受部54が配置されている。また、テーブル55の下面であって、対向部56と幅方向で対象な位置には、対向部58が形成されている。この対向部58の下面には、前記と同様に上下方向を支持する上下方向空気軸受部54が配置されている。これらの対向部56〜58は、案内方向に所定間隔をあけて複数個設けられている。
【0005】
さらに、上下方向空気軸受部54の幅方向外側には、吸引力発生部59が各々設けられている。この吸引力発生部59は、基台50の基準面50aに設けられてガイドレール51と平行に延びる、例えば強磁性体からなる吸引レール59aと、テーブル55の下面に支持されて吸引レール59aの上面と所定間隔をあけて対向した磁石59bと、から構成されている。この吸引力発生部59は、その吸引力を大きくするために、吸引レール59aを透磁率の高い、例えば純鉄や鉄系の磁性材料で形成している。
【0006】
なお、符号60は、テーブル55の移動を行う公知の駆動装置である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の静圧気体軸受直線案内装置は、基台がセラミックスや石などから構成され、吸引レールが純鉄や鉄系の磁性材料で構成されているため、両者の熱膨張係数が異なることになる。ここで、純鉄の熱膨張係数は、9〜10×10-6/℃であり、セラミックス(アルミナ)の熱膨張係数は、4〜8×10-6/℃、石の熱膨張係数は、6〜9×10-6/℃である。このため、使用時の温度変化によって、熱膨張係数の違う材料間で寸法にずれが生じる、いわゆる「バイメタル現象」が起こり、真直度精度が悪化する虞がある。
【0008】
さらに、静圧気体軸受直線案内装置の保管温度や輸送時の温度が大きく変化した場合(例えば、夏季30℃以上、冬季10℃以下など)は、使用の際に常温に戻っても、ボルトの結合部などが位置ずれを起こして元の精度に戻らないという虞もある。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点を解決することを課題とするものであり、大きな温度変化が生じてもバイメタル現象が起こることを低減し、安定した真直度精度を保つことが可能な静圧気体軸受直線案内装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明は、基台と、当該基台上を案内方向に移動可能な可動体と、前記基台の上に前記案内方向に沿って設けられ、前記可動体を前記案内方向にガイドするガイド部材と、当該可動体を気体によって支持・案内する空気軸受部と、当該可動体を当該基台に対して磁気吸引する、当該可動体に設けられた磁石および当該基台に設けられた磁性材料の吸引レールを備えた吸引力付与部と、を備えた静圧気体直線案内軸受装置であって、前記空気軸受部は、前記ガイド部材の側面に対向するように設けられ、当該ガイド部材の側面に対して空気を吹き出すように構成され、前記可動体を当該ガイド部材に対して水平方向に支持する、水平方向空気軸受と、前記基台に対向するように設けられ、当該基台に対して空気を吹き出すように構成され、前記可動体を上下方向に支持する上下方向軸受と、を備え、前記上下方向軸受は前記基台の前記案内方向の両側に形成されてなり、前記吸引付与部は、前記基台の前記案内方向の両側で、前記上下方向軸受に隣接されて設けられ、前記基台は、熱膨張係数6〜9×10 -6 /℃の石から構成され、前記吸引レールは、前記石の膨張係数に応じて選ばれた、熱膨張係数9〜10×10 -6 /℃の鉄から構成されていることを特徴とする静圧気体軸受直線案内装置を提供するものである。
【0011】
この構成を備えた静圧気体軸受直線案内装置は、基台と吸引レールの熱膨張係数がほぼ同じであるため、大きな温度変化が生じても、両者の間に寸法変化が生じることがなく、いわゆる「バイメタル現象」が起こることを低減することができる。このため、安定した真直度精度を保つことができる。
【0012】
また、基台をセラミックスまたは石から構成したため、錆びることがなく、さらに、金属より熱膨張係数が小さいため、変形することが少なく、寸法精度が向上する。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態に係る静圧気体軸受直線案内装置について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る静圧気体軸受直線案内装置の正面図、図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る静圧気体軸受直線案内装置は、上面に水平な基準面1aを備え且つ案内方向に延びる基台1と、基台1の上面に案内方向に沿って設けられたガイド部材2と、ガイド部材2に案内されて移動する可動体の構成要素であるテーブル3と、テーブル3を支持・案内する空気軸受部6、7及び8と、空気軸受部6、7及び8に対して吸引力を与える吸引力付与部10と、を備えて構成されている。
【0016】
基台1は、アルミナセラミックスから構成されており、その熱膨張係数は、4.7×10-6/℃である。基台1の基準面1aの幅方向(案内方向に直交する水平方向)の中央部から一方の端部(図1では左側)に若干偏位した位置には、ガイド部材2が設けられている。また、基台1の幅方向両側には、後に詳述する吸引力付与部10の吸引レール10aが固定され、案内方向に沿って延びている。
【0017】
ガイド部材2は、断面長方形を備えたレール部材からなり、基準面1aの案内方向に沿って配置されている。このガイド部材2は、底面(基準面1a側)と、左右側面の計3面が真直、平面で、平行、直角精度が良好に設定されており、基台1と同様に、アルミナセラミックスから構成されている。また、このガイド部材2は、幅が狭く構成されているため、ナローガイド状態となる。このため、水平方向空気軸受6a及び7aの距離が狭くなり、モーメント剛性の強いものとなる。
【0018】
テーブル3は、基台1の基準面1aの上方に所定間隔をあけた状態で配置されている。テーブル3の下面には、ガイド部材2と所定の間隔をあけて且つガイド部材2を両側から挟むように、一対の空気軸受部6及び7が対向配置されている。この空気軸受部6及び7は、図2に示すように、案内方向に互いに間隔をあけて各々2個所設置されている。この空気軸受部6及び7の、ガイド部材2の側面に対向する面には、水平方向を支持する水平方向空気軸受6a及び7aがそれぞれ配置されている。
【0019】
水平方向空気軸受6a及び7aは、ガイド部材2に対向する面に、ガイド部材2に水平に空気を吹き出す空気穴が形成されている。この空気穴からガイド部材2に対し空気を吹き出すことで、テーブル3は、ガイド部材2に対し水平方向に支持される。このように、水平方向空気軸受6及び7は、ガイド部材2を挟み込むようにガイド部材2の両側に対向して配置されているため、ガイド部材2に対して偏った力がかからない。このため、ガイド部材2の変形を低減することができる。
【0020】
また、空気軸受部6の下面には、上下方向を支持する上下方向空気軸受6bが配置されている。
【0021】
また、テーブル3の下面であって、2つの空気軸受部6と幅方向で対象な位置には、空気軸受部8が形成されている。この空気軸受部8の下面には、前記と同様に上下方向を支持する上下方向空気軸受8bが各々配置されている。
【0022】
各上下方向空気軸受6b及び8bには、その下面に基準面1aに向けて空気を吹き出す空気穴が形成されている。この空気穴から基準面1aに空気を吹き出すことで、テーブル3は、基準面1a対して上下方向に支持される。また、空気穴から吹き出される空気の圧力は、各上下方向空気軸受6b及び8bに対しそれぞれ独立に設定することができるようになっている。このため、例えばテーブル3の変形によって、上下方向空気軸受6b及び8bと、基準面1aとの間の隙間が変化しても、前記空気の給気圧力を調整することで微調整ができるようになっている。
なお、水平方向空気軸受6a及び7a、上下方向空気軸受6b及び8bの各空気軸受に、空気を供給する装置、及び経路は図示しないが、任意に設定されている。
【0023】
さらに、テーブル3の幅方向最端部(空気軸受部6及び8の幅方向外側)には、吸引力付与部10の構成要素である永久磁石10bがスペーサ10cを介して吸引レール10aと所定の間隔をあけて各々設けられている。なお、この永久磁石10b及びスペーサ10cは、吸引レール10aと共に吸引力付与部10を構成する。このスペーサ10cは、吸引レール10aと永久磁石10bとの間隙の調整、つまり永久磁石10bの高さ位置を調整し易くするために設けられている。この吸引力付与部10により、テーブル3は基台1に対して吸引される。
【0024】
なお、吸引力付与部10を空気軸受部6及び8(上下方向空気軸受6b及び8b)に隣接したことで、テーブル3の吸引と浮上のせん断応力が、テーブル3に作用しないようにしている。
【0025】
また、吸引レール10aは、基台1と同様の熱膨張係数を備えた低熱膨張材料、例えば、低熱膨張鋳物(熱膨張係数:4〜5×10-6/℃)を用いて構成した。このため、温度変化によって、熱膨張係数の違う材料間で寸法にずれが生じる、いわゆる「バイメタル現象」が起こることがなく、安定した真直度精度を得ることができる。
【0026】
なお、この静圧気体軸受直線案内装置には、特に図示しないが、テーブル3の移動を行う公知の駆動装置が設けられている。
【0027】
この静圧気体軸受直線案内装置が作動する際は、上下方向空気軸受6b及び8bの空気穴から空気を基準面1aに向けて吹き出し、これによってテーブル3は、基準面1aに対して上下方向に浮上支持されて水平となる。また、水平方向空気軸受6a及び7bの空気穴から空気をガイド部材2に向けて吹き出し、これによってテーブル3は、幅方向の位置決めがなされている。そして、テーブル3は、駆動装置11によって駆動されて、案内方向に移動される。この時、吸引力付与部10と、上下方向空気軸受部6b及び8bとが、近接して設けられているため、吸引力付与部10による吸引力と、上下方向空気軸受部6b及び8bによる浮上力によるせん断応力が、ほとんどテーブル3に作用せず、吸引力と浮上力とが釣り合った状態でテーブル3の良好な移動が行える。
【0028】
この移動に際して、テーブル3は、その上下方向の支持が各々の上下方向空気軸受6b及び8bによって独立して制御されるため、基準面1aに対して常に水平方向に安定して維持される。また、このテーブル3は、水平方向空気軸受6a及び7aによって、ガイド部材2に対して偏った力がかからないため、スムーズな移動が行われる。
【0029】
なお、本実施の形態では、基台1を熱膨張係数が、4.7×10-6/℃であるアルミナセラミックスで構成した場合いついて説明したが、これに限らず、基台1は、石や他のセラミックスから構成することができる。この場合、例えば、熱膨張係数が6〜9×10-6/℃程度の石を使用できる。また、セラミックスとしては、例えば、アルミナ(Al2O3)セラミックス(熱膨張係数:4〜8×10-6/℃)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)セラミックス(熱膨張係数:5×10-6/℃)、窒化珪素(Si3N4)セラミックス(熱膨張係数:3〜4×10-6/℃)等が挙げられる。
【0030】
この場合には、吸引レール10aも、吸引レール10aとしての機能を損なわず、且つ基台1の構成材料の熱膨張係数とほぼ同じ熱膨張係数を備えた材料から構成することが必要である。
【0031】
また、本実施の形態では、磁気吸引力を与える手段として、永久磁石を使用した場合について説明したが、これに限らず、電磁石や真空吸引などその他の非接触手段を使用することもできる。
【0032】
さらにまた、本実施の形態では、一対の水平方向空気軸受を2個(合計4個)所配置した場合について説明したが、これに限らず、一対の水平方向空気軸受の設置数及び設置箇所は、テーブルのサイズや、ストロークの長さなどに応じて任意に決定することができる。
【0033】
そしてまた、本実施の形態では、上下方向空気軸受をテーブルの幅方向両側に各々2個づつ、合計4個設置した場合について説明したが、これに限らず、上下方向空気軸受の設置数及び設置箇所は、テーブルのサイズや、ストロークの長さなどに応じて任意に決定することができる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る静圧気体軸受直線案内装置は、基台と吸引レールの熱膨張係数がほぼ同じであるため、大きな温度変化が生じても、両者の間に寸法変化が生じることがなく、バイメタル現象が起こることを低減することができる。この結果、安定した真直度精度を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の本実施の形態に係る静圧気体軸受直線案内装置の正面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】従来の静圧気体軸受直線案内装置の正面図である。
【符号の説明】
1 基台
1a 基準面
2 ガイド部材
3 テーブル
6、7、8 空気軸受部
6a、7a 水平方向空気軸受
6b、8b 上下方向空気軸受
10 吸引力付与部
10a 吸引レール
10b 永久磁石
10c スペーサ
Claims (1)
- 基台と、当該基台上を案内方向に移動可能な可動体と、前記基台の上に前記案内方向に沿って設けられ、前記可動体を前記案内方向にガイドするガイド部材と、
当該可動体を気体によって支持・案内する空気軸受部と、当該可動体を当該基台に対して磁気吸引する、当該可動体に設けられた磁石および当該基台に設けられた磁性材料の吸引レールを備えた吸引力付与部と、を備えた静圧気体直線案内軸受装置であって、
前記空気軸受部は、
前記ガイド部材の側面に対向するように設けられ、当該ガイド部材の側面に対して空気を吹き出すように構成され、前記可動体を当該ガイド部材に対して水平方向に支持する、水平方向空気軸受と、
前記基台に対向するように設けられ、当該基台に対して空気を吹き出すように構成され、前記可動体を上下方向に支持する上下方向軸受と、
を備え、
前記上下方向軸受は前記基台の前記案内方向の両側に形成されてなり、
前記吸引付与部は、前記基台の前記案内方向の両側で、前記上下方向軸受に隣接されて設けられ、
前記基台は、熱膨張係数6〜9×10 -6 /℃の石から構成され、前記吸引レールは、前記石の膨張係数に応じて選ばれた、熱膨張係数9〜10×10 -6 /℃の鉄から構成されていることを特徴とする静圧気体軸受直線案内装置。
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