JP3991177B2 - 直線案内軸受装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、高精度な加工装置及び測定装置、半導体製造や検査装置などにおいて、試料、工具、検出器などを高い位置決め精度をもって移動させることが可能な直線案内軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の直線案内軸受装置には、例えば、案内方向に延びるガイドレールと、このガイドレールの上側に跨がるように配置され且つ前記案内方向に移動可能な可動体と、この可動体を気体によって支持・案内する空気軸受部と、可動体を基台に対して吸引する吸引力付与手段と、を備えて構成されたものがある。
【0003】
このような直線案内軸受装置としては、例えば、特開平1−216120号公報に記載されたものがある。この公報に記載の直線案内軸受装置は、図5にその斜視図を示すが、ガイドレール12の側面が、スライダ13を案内方向(矢印X)に移動させるためのガイド面12aとなっている。このガイド面12aには、磁性体などからなる吸着板14が固定されている。そして、この吸着板14が固定されたガイド面12aと対向する位置に非磁性体のスライダ13が配置されている。このスライダ13には、前記ガイド面12aと対向する空気軸受19が設置されており、この空気軸受19の浮上力と釣り合う力で、ガイドレール12の側面12aとスライダ13とを、吸着板14を介してマグネット21で吸引するように構成したものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来の直線案内軸受装置は、マグネットに対する異物の付着に関して、なんら考慮されていなかった。すなわち、図5に示すように、マグネットや吸着板が外部に露出された状態で設けられているため、前記マグネットに異物が付着し易く、この異物の付着によって、所定の磁気力が得られなくなるという虞がある。
【0005】
さらにまた、最悪の場合には、空気軸受の隙間内や、マグネットと吸引板との隙間内にも異物が侵入し、焼き付け事故の発生につながる虞もある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点を解決することを課題とするものであり、吸引力付与手段に異物が侵入・付着することを防止することが可能な直線案内軸受装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明は、基台上を案内方向に移動可能な可動体と、当該可動体を当該基台に対して吸引する吸引力付与部と、当該吸引力付与部に設けられた異物侵入防止用カバーとを備えた直線案内軸受装置であって、吸引力付与部は、基台上に設けられた吸引部材と、当該吸引部材の上方に所定間隔をあけて設けられた磁石とを備えており、異物侵入防止用カバーは、前記吸引部材および前記磁石の前記案内方向に沿った両側を覆う吸引部材カバーと、磁石および吸引部材カバーの案内方向に沿った両側を覆う第1の磁石カバーと、磁石の案内方向の両端面を覆う第2の磁石カバーとを備え、前記吸引部材カバーと前記第1の磁石カバーとの間の隙間、及び、前記吸引部材カバーと前記第2の磁石カバーとの間の隙間は、前記可動体の移動範囲全体において、前記吸引部材と前記磁石との間に形成される隙間に比較して微小である、ことを特徴とする直線案内軸受装置を提供するものである。
【0008】
この構成を備えた直線案内軸受装置は、吸引力付与に異物入防止用のカバーが設けられているため、前記吸引力付与部における磁石と吸引部材との隙間に異物が侵入することを阻止することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態に係る直線案内軸受装置について図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施の形態に係る直線案内軸受装置の正面図、図2は、図1に示す直線案内軸受装置の吸引力付与部付近を示す拡大正面図、図3は、図2のIII−III線に沿った断面図、図4は、図2及び図3に示す吸引力付与部付近の斜視図である。
【0011】
図1ないし図4に示すように、本実施の形態に係る直線案内軸受装置は、上面に水平な基準面1aを備え且つ案内方向(図3及び図4に矢印Xで示す)に延びる基台1と、基台1の上面1aの幅方向(案内方向に垂直な方向)の略中央部に、案内方向Xに沿って設けられたガイドレール2と、ガイドレール2に案内されて移動する可動体としてのテーブル3と、テーブル3を支持・案内する空気軸受部4と、テーブル3を基台1に対して吸引する吸引力付与部5と、吸引力付与部5に設けられた異物侵入防止用カバー6と、を備えて構成されている。
【0012】
ガイドレール2は、断面長方形を備えたレール部材からなり、基準面1aの案内方向Xに沿って配置されている。このガイドレール2は、底面(基準面1a側)と、左右側面の計3面が、真直、平面、平行、及び直角精度が良好に設定されている。
【0013】
なお、このガイドレール2の幅を狭く構成することで、ナローガイド状態とすることができる。これによって、一対の水平方向空気軸受4aの間の距離が狭くなり、モーメント剛性の強いものとすることができる。
【0014】
テーブル3は、基台1の基準面1aの上方に所定間隔をあけた状態で、基準面1aに対して下面及び上面が平行となるよう配置されている。テーブル3の下面であって、ガイドレール2を挟んだ両側に対応する位置には、ガイドレール2と所定の間隔をあけて且つガイドレール2を挟むように、一対の空気軸受部4が対向配置されている。
【0015】
各々の空気軸受部4は、ガイドレール2に対向する面に、ガイドレール2の側面に水平に空気を吹き出す空気穴が形成されている。そして、この空気穴からガイドレール2に対し空気を吹き出すことで、ガイドレール2との間に水平方向空気軸受4aが形成され、テーブル3は、ガイドレール2に対し、水平方向に支持される。このように、水平方向空気軸受4aは、ガイドレール2を両側から挟み込むように配置されているため、ガイドレール2に対して偏った力がかからないため、ガイドレール2の変形を低減することができる。
【0016】
また、各々の空気軸受部4の下面(基準面1aと対向する面)には、基準面1aに向けて空気を吹き出す空気穴が形成されている。そして、この空気穴から基準面1aに空気を吹き出すことで、テーブル3の下面と基準面1aとの間に上下方向空気軸受4bが形成され、テーブル3は、基準面1a対し、上下方向に支持される。
【0017】
なお、一対の空気軸受部4は、テーブル3の案内方向Xに、互いに間隔をおいて、任意の設置数で設けることができる。また、上下方向空気軸受4bの空気穴から吹き出される空気の圧力は、各上下方向空気軸受4bに対し、それぞれ独立に設定することもできる。このようにすることで、例えば、テーブル3の変形によって、上下方向空気軸受4bと、基準面1aとの間の隙間が変化しても、前記空気の給気圧力を調整することで微調整ができ、テーブル3を安定して支持することができる。
【0018】
吸引力付与部5は、基台1の基準面1a上の幅方向両側端部に設けられた吸引部材5aと、テーブル3の下面であって、幅方向両端部に設けられたスペーサ5cと、スペーサ5cの下面に設けられた永久磁石5bと、から構成されている。
【0019】
吸引部材5aは、断面長方形を備えたレール部材からなり、基準面1aの案内方向Xに沿って配置されている。
【0020】
永久磁石5bは、スペーサ5cを介して吸引部材5aと所定の間隔をあけて設けられている。このスペーサ5cは、吸引部材5aと永久磁石5bとの間隙の調整、つまり永久磁石5bの高さ位置を調整し易くするために設けられている。この吸引力付与部5により、テーブル3は基台1に対して吸引される。
【0021】
なお、吸引力付与部5を空気軸受部4に隣接したことで、テーブル3の吸引と浮上のせん断応力が、テーブル3に作用しないようにしている。また、この吸引力付与部5及び空気軸受部4は、案内方向Xに、互いに間隔をおいて、任意の設置数で設けることができる。
【0022】
異物侵入防止用カバー6は、吸引部材5aを覆う吸引部材カバー6aと、永久磁石5bを覆う第1の磁石カバー6bと、第2の磁石カバー6cと、から構成されている。
【0023】
吸引部材カバー6aは、吸引部材5aの案内方向Xに沿った両側に、互いに平行となるよう設けられている。この吸引部材カバー6aは、特に、図1、図2及び図4に示すように、永久磁石5bの案内方向Xに沿った両側をもカバーすることになる。
【0024】
第1の磁石カバー6bは、スペーサ5cの案内方向Xに沿った両側に互いに平行に設けられており、結果として、永久磁石5bの案内方向Xに沿った両側をカバーするものである。この第1の磁石カバー6bは、吸引部材カバー6aの外側に配置されている。すなわち、第1の磁石カバー6bは、永久磁石5b及び吸引部材カバー6aを覆うように設置されている。
【0025】
第2の磁石カバー6cは、永久磁石5bの案内方向Xの両端面をカバーするように、スペーサ5cの下面に設けられている。
【0026】
このように、永久磁石5b及び吸引部材5aは、吸引部材カバー6a、第1の磁石カバー6b及び第2の磁石カバー6cによって覆われるため、異物が侵入・付着することを防止することができる。
【0027】
なお、吸引部材カバー6aと、第1の磁石カバー6bとの間に形成される隙間、及び吸引部材カバー6aと、第2の磁石カバー6cとの間に形成される隙間は、テーブル3の移動範囲全体において、吸引部材5aと永久磁石5bとの間に形成される隙間に対して十分に微小であり、且つ互いに非接触であるように設定した。これによって、テーブル3の移動精度に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0028】
また、特に、吸引部材5aの上面は、異物が付着しやすいため、第2の磁石カバー6cと、吸引部材5aとの間に形成される隙間は、永久磁石5bと吸引部材5aとの間に形成される隙間より小さくすることが好ましい。すなわち、第2の磁石カバー6cと、吸引部材5aとの間に形成される隙間は、可能な限り小さくすることが好ましい。これにより、永久磁石5b及びスペーサ5cを直線運動(案内方向Xへの移動)させながら、吸引部材5a上面に付着した異物を除去することが可能となる。
【0029】
なお、吸引部材カバー6a、第1の磁石カバー6b及び第2の磁石カバー6cは、非磁性体で構成することが望ましい。
【0030】
さらにまた、この直線案内軸受装置には、特に図示しないが、テーブル3の移動を行う公知の駆動装置が設けられている。
【0031】
次に、本実施の形態に係る直線案内軸受装置の具体的な動作について説明する。
【0032】
この直線案内軸受装置が作動する際は、各々の上下方向空気軸受4bの空気穴から空気を基準面1aに向けて吹き出し、これによってテーブル3は、基準面1aに対して上下方向に浮上支持されて水平となる。また、各々の水平方向空気軸受4aの空気穴から空気をガイドレール2に向けて吹き出し、これによってテーブル3は、幅方向の位置決めがなされる。このテーブル3は、図示しない駆動装置によって駆動され、ガイドレール2に沿って案内方向Xに移動される。
【0033】
この時、吸引力付与部5と、空気軸受部4とが、近接して設けられているため、吸引力付与部5による吸引力と、上下方向空気軸受4bによる浮上力によるせん断応力が、ほとんどテーブル3に作用せず、吸引力と浮上力とが釣り合った状態でテーブル3の良好な移動が行える。
【0034】
この移動に際して、テーブル3は、その上下方向の支持が各々の上下方向空気軸受4bによって独立して制御されるため、基準面1aに対して常に上下方向に安定して維持される。また、このテーブル3は、水平方向空気軸受4aを対向配置していることによって、ガイドレール2に対して偏った力がかからないため、スムーズな移動が行われる。
【0035】
この時、永久磁石5b及び吸引部材5aは、吸引部材カバー6a、第1の磁石カバー6b及び第2の磁石カバー6cによって覆われるため、永久磁石5b及び吸引部材5aや、永久磁石5bと吸引部材5aとの間に、異物が侵入して付着することが防止されるため、常に所定の磁気力を得ることができる。また、異物による焼き付け事故の発生も防止することができる。
【0036】
なお、吸引部材カバー6a、第1の磁石カバー6b、第2の磁石カバー6c及び吸引部材5aには、耐焼き付け性を向上させる目的で、固体潤滑剤などの皮膜を形成することもできる。
【0037】
また、本実施の形態では、磁気吸引力を与える手段として、永久磁石を使用した場合について説明したが、これに限らず、電磁石や真空吸引などその他の非接触手段を使用することもできる。
【0038】
以上説明したように、本発明に係る直線案内軸受装置は、吸引力付与に異物入防止用のカバーを設けた構造を備えているため、当該吸引力付与に異物が侵入し、付着することを防止することができる。この結果、安定した磁気力が得られ、焼き付け事故などの発生を防止するという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の本実施の形態に係る直線案内軸受装置の正面図である。
【図2】図1に示す直線案内軸受装置の吸引力付与部付近を示す拡大正面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図2及び図3に示す吸引力付与部付近の斜視図である。
【図5】従来の直線案内軸受装置の斜視図である。
【符号の説明】
1 基台
1a 基準面
2 ガイドレール
3 テーブル
4 空気軸受部
4a 水平方向空気軸受
4b 上下方向空気軸受
5 吸引力付与部
5a 吸引部材
5b 永久磁石
5c スペーサ
6 異物侵入防止用カバー
6a 吸引部材カバー
6b 第1の磁石カバー
6c 第2の磁石カバー

Claims (5)

  1. 基台上を案内方向に移動可能な可動体と、当該可動体を当該基台に対して吸引する吸引力付与部と、当該吸引力付与部に設けられた異物侵入防止用カバーとを備えた直線案内軸受装置であって、
    吸引力付与部は、
    基台に設けられた吸引部材と、
    当該吸引部材所定間隔をあけ、前記可動体側に設けられた磁石と、
    を備えており、
    異物侵入防止用カバーは、
    前記吸引部材に設けられ、当該吸引部材および磁石の案内方向に沿った両側を覆う吸引部材カバーと、
    前記可動体の下面側に設けられ、前記磁石および前記吸引部材カバーの案内方向に沿った両側を覆う第1の磁石カバーと、
    前記可動体の下面側に設けられ、前記磁石の案内方向の両端面を覆う第2の磁石カバーと、
    を備え、
    前記吸引部材カバーと前記第1の磁石カバーとの間の隙間、及び、前記吸引部材カバーと前記第2の磁石カバーとの間の隙間は、前記可動体の移動範囲全体において、前記吸引カバーと前記磁石との間に形成される隙間に比較して微小である、ことを特徴とする直線案内軸受装置。
  2. 前記吸引力付与部は、前記可動体の下面に設けられたスペーサをさらに備え、前記磁石は、当該スペーサの下面に前記吸引部材と所定間隔をあけて設けられており、
    前記吸引部材カバーは、前記吸引部材の案内方向に沿った両側に設けられ、前記第1の磁石カバーは、前記スペーサの案内方向に沿った両側に設けられ、前記第2の磁石カバーは、前記スペーサの下面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の直線案内軸受装置。
  3. 前記吸引部材カバー、前記第1の磁石カバー、および前記第2の磁石カバーは非磁性体で構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の直線案内軸受装置。
  4. 基台上に設けられたガイドレールと、当該ガイドレールを挟むように設けられた一対の空気軸受部とをさらに備えており、
    前記吸引力付与部は、当該空気軸受部に隣接して設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の直線案内軸受装置。
  5. 前記空気軸受部は、ガイドレールの側面に空気を吹き出すことでガイドレールとの間に水平方向空気軸受を形成し、且つ基台の基準面に空気を吹き出すことで基準面との間に上下方向空気軸受を形成することを特徴とする請求項4記載の直線案内軸受装置。
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