JP4138951B2 - フローティング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続的に搬送される支持体に気体を吹きつけながら支持体を浮上させるとともに、支持体(通常、塗膜を伴う)を乾燥させるためのフローティングノズルおよびフローティング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、支持体上に塗設された塗膜を高速でしかも効率良く乾燥させるために、非接触の状態で支持体を搬送させつつ塗膜の乾燥を可能とするフローティングノズルの使用が注目されている。従来のフローティング装置の一例として、特開平9−262504号公報には、スリットを1つ以上有するフローティングノズルの幅方向両端部に側板を設けることにより、スリットから噴出された気体の流れを制御し、支持体の両端を持ち上げる方向に流すようにする提案がなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平9−262504号公報に記載のフローティングノズルの形態では、支持体(ウエブ)の搬送速度が、例えば100m/minを超えるような高速搬送となった場合には、支持体(ウエブ)の両端部でのバタツキが大きくなってくるという問題が生じ得る。そのため、高速搬送での安定した連続運転ができず、生産性の向上を図ることが困難になっていた。
【0004】
このような実状のもとに本発明は創案されたものであって、その目的は、支持体(ウエブ)の搬送速度が、例えば100m/minを超えるような高速搬送となった場合でも、支持体(ウエブ)の両端部でのバタツキが目立って大きくならず、高速搬送での安定した連続運転が可能で、生産性の向上を図ることがきるフローティングノズルおよびフローティング方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために、本発明は、連続的に搬送される支持体に気体を吹きつけながら支持体を浮上させるとともに、支持体または支持体に塗設された塗膜を乾燥させるためのフローティングノズルを用いたフローティング方法であって、当該フローティング方法に用いられるフローティングノズルは、ノズル本体となる筐体部と、当該筐体部の支持体対向面に長手方向に沿って形成され、気体の吹き出し口となるノズルスリットと、前記筐体部の長手方向両端部にそれぞれ形成されたフロー制御板とを有し、前記フロー制御板は、前記ノズルスリットの端部の覆い(roof)となるように、ノズルスリットの長手方向中央部に向けてフロー制御板とノズルスリットとの間隔が拡がるように形成された傾斜面を有して構成されており、前記フロー制御板の最上端部とノズルスリットとの距離をHo、ノズルスリットからの支持体の浮上高さをHsとした時、Hsが1.0Hoから1.5Hoまでの範囲内を維持でき、前記支持体の端部と、フロー制御板の開口端部との距離Lは、2〜30mmの範囲内となるようにフローティング運転条件が設定されてなるように構成される。
【0006】
また、本発明の好ましい態様として、前記フロー制御板は、ノズルスリットの長手方向中央部に向けられた開口部を形成するとともに、フロー制御板の側面側からの気体流出がないようにスリットの端部を覆ってエア溜めを備える形態を有してなるように構成される。
【0007】
また、本発明の好ましい態様として、前記フロー制御板は、ノズルスリットの長手方向中央部に向けて折り曲げられるように形成された傾斜面を有し、フロー制御板の側面側からは気体流出が可能となる形態を備えてなるように構成される。
【0008】
また、本発明の好ましい態様として、前記フロー制御板は、支持体面方向への調整が可能なように可動機構が設けられているように構成される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のフローティングノズルおよびフローティング方法について詳細に説明する。
【0012】
まず、最初に本発明のフローティングノズルの構成について説明する。図1には、乾燥室内にいわゆるエアーフローティングドライヤ1を上下に配置した乾燥炉3の概略構成図が示されている。この図の略中央には、図面の左側から右側へと連続的に搬送されるフィルム状の被乾燥体70が示されている。この被乾燥体70は、通常、後述するように支持体または支持体とこの支持体に塗設された塗膜から構成されている。
【0013】
図1においてエアーフローティングドライヤ1は、被乾燥体70に向けて、複数のフローティングノズル10を備えており(図1の例では、上方および下方からそれぞれ4つのノズル10)、図1の例では上下のフローティングノズル10は、入口部分を除いて互いに入れ違いに配置されている。そして、フローティングノズル10の先端(被乾燥体70に近い側)には、気体を吹き出すためのノズルスリットが形成されている。
【0014】
図1の例では、上下各フローティングノズル10は、エアーフローティングドライヤ1として、一体的に構成されるとともに図示のごとく内部で連通されており、供給される乾燥用気体8の共用を図っている。しかしながら、このような一体化を図ることなく、個々のフローティングノズル10を乾燥室内に適宜配置して(例えば、特開平9−262504号公報に開示してある図3のレイアウト)、図1に示される一体化のエアーフローティングドライヤ1と同様な効果を得ることもできる。
【0015】
図2は、1つのフローティングノズル10の好適な態様を示す正面図であり、図1との関係においては、図1の側面方向から見た図面に相当し、あくまで図1で突出したように見えるフローティングノズル10の1つを示した図面である。図3は、図2のA部を拡大した概略断面図であり、図4は、図2の概略斜視図であり、図5は図2のB−B断面の概略矢視図である。
【0016】
図2〜図5に示されるように本発明のフローティングノズル10は、ノズル本体を構成し、供給される乾燥用気体が流通する筐体部11と、この筐体部11の被乾燥体70(支持体)対向面12側(図4)に長手方向(矢印(α)−(α)方向:支持体の幅方向と同じ)に沿って形成され気体の吹き出し口となるノズルスリット17,17と、筐体部11の長手方向両端部にそれぞれ形成されたフロー制御板20,20とを有している。本発明におけるノズルスリット17は、筐体部11の対向面12上に、長手方向(支持体の幅方向と同じ)端部から端部まで連続的に形成されている。
【0017】
本発明におけるフロー制御板20は、被乾燥体70を浮上させつつ、被乾燥体70を高速搬送させた場合においても走行の安定性を確保できるように特別の形態を備えている。すなわち、図2〜図5に示される本発明の好適な実施形態において、フロー制御板20は、前記ノズルスリット17の端部の覆い(roof) となるように、ノズルスリット17の長手方向((矢印(α)−(α)方向:支持体の幅方向と同じ))の中央部に向けて拡がるように形成された傾斜面21を有している。さらに図2〜図5に示される本発明の好適な実施形態において、フロー制御板20は、ノズルスリット17の長手方向中央部に向けられた開口部25を形成するとともに、フロー制御板20の側面側からの気体流出がないようにノズルスリット17の端部を完全に覆ってエア溜めPを備える形態を有している。
【0018】
このようなフロー制御板20は、被乾燥体70(支持体)方向への調整移動が可能なように可動機構が設けられていることが好ましい。可動機構としては、例えば、フロー制御板20の固定箇所に長穴18を形成し、この長穴18を通して高さ方向を調整してボルト止めするようにすればよい。
【0019】
上記フロー制御板20の開口部25の上部は、図4や図5に示されるように円弧状形状とすることが好ましい。円弧状形状とすることにより、被乾燥体70(支持体)端部でのいわゆるバタツキが極めて少なくなるように制御できる。この場合、図5(図8)に示されるように円弧状形状に沿うように支持体を走行させるのが良い。また、円弧状形状に変えて台形形状とすることもできる。
【0020】
開口部25の高さHo(図3に示されるノズルスリット17から開口部25の上部までの距離)は、フローティングの操作条件に基づき適宜選定可能であるが、通常、1mm以上とすることが望ましい。また、図3に示されるように被乾燥体70(支持体)の端部と、フロー制御板20の開口端部との距離Lは、1〜100mm、好ましくは2〜50mm、より好ましくは5〜30mm、さらにより好ましくは15〜20mmとするのがよい。このLの値が、1mm未満となると支持体と開口端部の間からの気体の流出が困難となるため、バタツキを生じる可能性がある。また、100mmを超えると、フローの制御の効果が少なくなる。Lの下限は1mm以上あれば小さい程、フロー制御効果は大きいが、支持体の幅方向の走行ずれが発生する場合はその程度により上記の範囲でLの値を設定すればよい。上記の範囲で距離Lを設定することにより、高速搬送中、被乾燥体70(支持体)端部でのいわゆるバタツキが少なくなるように制御できる。
【0021】
また、実際のフローティング運転条件として、上述したフロー制御板20の最上端部とノズルスリット17との距離をHo、ノズルスリット17からの被乾燥体70(支持体)の浮上高さをHs とした時、Hs が1.0Hoから1.5Hoまでの範囲内(Hs =1.0Ho〜1.5Ho)を維持できるようにノズルからのエア吹き出し圧力、支持体に加える張力等のフローティング運転条件を設定することが好ましい。この範囲で高速搬送中、被乾燥体70(支持体)端部でのいわゆるバタツキが少なくなるように制御できる。
【0022】
本発明の実施形態において、ノズルスリット17は、筐体部11の被乾燥体70(支持体)対向面12側(図4)に2本2列に形成されているが、この数について特に制限はない。また、ノズルスリット17は、図5に示されるように、筐体部11を2つの部材11aと11bの組み合わせにより構成し、これらの端部を組み合わせてノズルスリット17を形成し、ノズルスリット17から噴出される気体の流れが、対向面12の中央部に向くようにノズルスリット17を構成するのが好ましい。また、図8に示されるように板材にノズルスリット17を切り込んで開口させたものであってもよい。
【0023】
図6および図7には、それぞれ上述した実施形態とな異なる他の実施形態が示される。図6および図7は、それぞれ、先に述べた図4に相当する図であり、図6および図7におけるフロー制御板30および40は、それぞれ、ノズルスリット17の中央部に向けて折り曲げられるように形成された傾斜面31および41を有している点では、図4のフロー制御板20と同様である。しかしながら、フロー制御板30,40の側面に相当する位置は塞がれておらず、気体流出が可能となっている点で図4に示されるフロー制御板20とは異なる。なお、フロー制御板30の傾斜面31は図示のごとく湾曲形状、フロー制御板40の傾斜面41は図示のごとく平板形状をなしている。
【0024】
また、図9には、他のエアーフローティングドライヤ2の一形態が示されており、この図に示されるように、上下のフローティングノズル10が互いに対向するように配置されてもよい。
【0025】
なお、図3に示されるように、被乾燥体70としては、支持体71の上に塗設された磁性塗膜72を一例として挙げることができるが、特にこの構成からなる被乾燥体に限定されるわけではない。
【0026】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
【0027】
まず、最初に下記に示されるような塗布液Iを準備した。
【0028】
(具体的実験)
上記塗布液組成Iを用い、下記の塗布条件で、連続的に搬送される12μm厚さ(幅1000mm)のポリエチレンテレフタレート支持体の上に、磁性塗膜を塗布した後、図1に示されるような乾燥炉を通過させ、実際の乾燥実験を行ない、(1)支持体のバタツキの評価および(2)フロー制御板20と支持体との接触の有無を確認した。フローティングノズル10、特に、フロー制御板20の仕様は下記表1に示されるように種々のものを用いるとともに、支持体との位置関も種々変えて実験を行った。フローティングノズル10からのエア吹き出し圧力は20.0mmH2 Oに設定した。
【0029】
塗布条件
塗布部張力:16.0Kg/m幅
塗布速度:400m/min
支持体幅:1000mm
支持体厚さ:12.0μm
乾燥後磁性層厚さ:2.0μm
ノズルエアー吹き出し圧力:20mmH2 O
(1)支持体のバタツキの評価
搬送される支持体のバタツキを目視にて確認して、下記の判断基準のもとにレベル分けを行った。
【0030】
◎…目視にてバタツキが確認できない
○…僅かにバタツキがあるが支持体がフローティングノズルに接触せず、実用上問題がない
×…バタツキがひどく実用上問題がある
結果を下記表1に示した。
【0031】
【表1】
【0032】
【発明の効果】
上記の結果より本発明の効果は明らかである。すなわち、本発明は、連続的に搬送される支持体に気体を吹きつけながら支持体を浮上させるとともに、支持体または支持体に塗設された塗膜を乾燥させるためのフローティングノズルであって、当該フローティングノズルは、ノズル本体となる筐体部と、当該筐体部の支持体対向面に長手方向に沿って形成され、気体の吹き出し口となるノズルスリットと、前記筐体部の長手方向両端部にそれぞれ形成されたフロー制御板とを有し、前記フロー制御板は、前記ノズルスリットの端部の覆い(roof) となるように、ノズルスリットの長手方向中央部に向けて形成された傾斜面を有してなるように構成されているので、支持体の搬送速度が、例えば100m/minを超えるような高速搬送となった場合でも、支持体のバタツキが目立って大きくならず、高速搬送での安定した連続運転が可能で、生産性の向上を図ることがきるという極めて優れた効果が発現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】乾燥室内にいわゆるエアーフローティングドライヤを上下に配置した乾燥炉の概略構成図である。
【図2】フローティングノズルの好適な態様を示す正面図である。
【図3】図2のA部を拡大した概略断面である。
【図4】図2のフローティングノズルの概略斜視図である。
【図5】図2のB−B断面の概略矢視図である。
【図6】フローティングノズルの他の実施形態を示す概略斜視図である。
【図7】フローティングノズルの他の実施形態を示す概略斜視図である。
【図8】図5に相当する図面であり、図5の変形例を示す図面である。
【図9】図1に相当する図面であり、図1の変形例を示す図面である。
【符号の説明】
1…エアーフローティングドライヤ
3…乾燥炉
8…乾燥用気体
10…フローティングノズル
11…筐体部
12…被乾燥体の対向面
17…ノズルスリット
18…長穴
20,30,40…フロー制御板
21,31,41…傾斜面
25…開口部
70…被乾燥体
71…支持体
72…塗膜
P…エア溜め
Claims (4)
- 連続的に搬送される支持体に気体を吹きつけながら支持体を浮上させるとともに、支持体または支持体に塗設された塗膜を乾燥させるためのフローティングノズルを用いたフローティング方法であって、
当該フローティング方法に用いられるフローティングノズルは、
ノズル本体となる筐体部と、
当該筐体部の支持体対向面に長手方向に沿って形成され、気体の吹き出し口となるノズルスリットと、
前記筐体部の長手方向両端部にそれぞれ形成されたフロー制御板とを有し、
前記フロー制御板は、前記ノズルスリットの端部の覆い(roof)となるように、ノズルスリットの長手方向中央部に向けてフロー制御板とノズルスリットとの間隔が拡がるように形成された傾斜面を有して構成されており、
前記フロー制御板の最上端部とノズルスリットとの距離をHo、ノズルスリットからの支持体の浮上高さをHsとした時、Hsが1.0Hoから1.5Hoまでの範囲内を維持でき、前記支持体の端部と、フロー制御板の開口端部との距離Lは、2〜30mmの範囲内となるようにフローティング運転条件が設定されてなることを特徴とするフローティング方法。 - 前記フロー制御板は、ノズルスリットの長手方向中央部に向けられた開口部を形成するとともに、フロー制御板の側面側からの気体流出がないようにスリットの端部を覆ってエア溜めを備える形態を有してなる請求項1に記載のフローティング方法。
- 前記フロー制御板は、ノズルスリットの長手方向中央部に向けて折り曲げられるように形成された傾斜面を有し、フロー制御板の側面側からは気体流出が可能となる形態を備えてなる請求項1に記載のフローティング方法。
- 前記フロー制御板は、支持体面方向への調整が可能なように可動機構が設けられている請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のフローティング方法。
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