以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1に、この発明の第1実施形態としてのマイクロ波帯無線通信システムの概略構成を示す。このマイクロ波帯無線通信システムは、ミリ波帯無線送信装置9とミリ波帯無線受信装置10を有している。なお、ここで、マイクロ波帯とは、マイクロ波帯とミリ波帯とを含む周波数帯域をいう。また、このマイクロ波帯無線通信システムは、ミリ波帯無線送信装置9の入力端子IPに接続された周波数配列器5とミリ波帯無線受信装置10の出力端子500に接続された分波器190を備える。この分波器190には複数のTV受像機31が接続される。また、上記分波器190には、地上波放送用アンテナ1aと衛星放送用アンテナ1bが接続される。
また、上記マイクロ波帯無線通信システムは、上記ミリ波帯無線受信装置10と分波器190と衛星放送用/地上波放送用チューナ30とで構成される本発明の電子機器を含んでいる。
図1に示すように、この第1実施形態のマイクロ波帯無線通信システムが有する送信側のミリ波帯無線送信装置9は、周波数配列器5とこの周波数配列器5に接続される基準信号付加/電力レベル制御回路2と、周波数変換/送信回路3と、局部発振器7と、送信アンテナ4とを備えている。
まず、図1を参照して、送信側の周波数配列器5および上記ミリ波帯無線送信装置9の概略構成と概略動作を説明する。この送信側では、まず、最初のステップとして、周波数配列器5において、図6(A)に示すように、例えば、地上波放送用アンテナ1aからの入力変調波信号5aと衛星放送用アンテナ1bからの入力変調波信号5bは、夫々、増幅器51と52で、夫々の入力変調信号5a,5bの電力レベルが略等しくなるように調整され、混合器53で周波数配列され、一系列の入力信号5e(周波数fIF1e)が生成される。
次のステップとして、ミリ波帯無線送信装置9では、上記入力信号5eは、基準信号付加/電力レベル制御回路2に入力され、図6(B)に示すように、周波数軸上に配列された一系列の入力変調波信号5e(周波数fIF1e)は、第1の周波数変換がなされる。基準信号付加/電力レベル制御回路2では、この第1の周波数変換がなされた第1のIF信号71aは、レベル制御されると同時に、適正レベルの基準信号71cが付加され、中間周波数多重信号(周波数配列信号)である第1のIF多重信号71dが生成される。
次のステップとして、上記基準信号付加/電力レベル制御回路2が出力した第1のIF多重信号71dは、周波数変換/送信回路3に入力される。そして、周波数変換/送信回路3では、第1のIF多重信号71dは、局部発振器7が出力する局部発振信号でもって、ミリ波帯に周波数変換されて増幅される。
図6(C)に示すように、上記周波数変換され増幅されて生成された無線多重信号72は、送信アンテナ4により無線信号として送信される。なお、図6(A)〜図6(C)において、白抜きの矢印記号は信号の配列方向を示している。
次に、図1を参照して、上記ミリ波帯無線受信装置10の概略構成と概略動作を説明する。このミリ波帯無線受信装置10は、送信側からの無線多重信号を受信する受信アンテナ14と、この受信アンテナ14からの無線多重信号73を受けて第1の周波数ダウンコンバートを行う周波数変換/受信回路11と、局部発振信号を供給する局部発振器8と、受信側の第2の周波数ダウンコンバートを行う基準信号再生/周波数変換回路12とを備えている。上記周波数変換/受信回路11が第1のダウンコンバータをなし、上記基準信号再生/周波数変換回路12が第2のダウンコンバータをなす。
このミリ波帯無線受信装置10は、その動作ステップにおいて、まず、最初のステップとして、図7(A)に示すように、送信側からの無線多重信号72を受信アンテナ14で受信し、この受信アンテナ14からの無線多重信号73を周波数変換/受信回路11で受けて第1の周波数ダウンコンバートを行う。つまり、周波数変換/受信回路11では、局部発振器8が供給する局部発振信号により、無線多重信号73を第2の中間周波数帯に変換し、図7(B)に示すように、中間周波数多重信号である第2のIF多重信号74を生成する。なお、図7(A)〜図7(C)において、白抜きの矢印記号は信号の配列方向を示している。
次のステップとして、上記第2のIF多重信号74は、基準信号再生/周波数変換回路12によって、第2の受信側周波数ダウンコンバートがなされた後、基準信号再生/周波数変換回路12によって、図7(C)に示すように、元の一系列の入力信号5e(周波数fIF1e)に相当する一系列の出力信号76(周波数fIF1e)が再生される。
すなわち、上記基準信号再生/周波数変換回路12は、図7(B)に示す第2のIF多重信号74の中から、後述するフィルタでもって基準信号74cを抽出して増幅し、この基準信号74cでもって、中間周波数多重信号である第2のIF多重信号74を周波数変換する。これにより、上記基準信号再生/周波数変換回路12は、図7(C)に示すように、送信側で入力された一系列の入力信号5e(周波数fIF1e)を1系列の出力信号76(周波数fIF1e)として再生する。
次に、この無線受信装置10の出力端子500から出力された上記出力信号76は、受信側の最後のステップとして、周波数逆配列/分離部190に入力される。この周波数逆配列/分離部190では、受信側で再生された入力信号5eに相当する1系列のシリアルな出力信号76(周波数fIF1e)の中から、地上波放送用の信号5aに対応する信号76aおよび衛星放送用の信号5bに対応する信号76bが再生される。この分波された信号76aと76bは、複数のTV受像機31中の夫々の複数の衛星放送用/地上波放送用チューナ30に入力される。
次に、図2を参照して、この第1の実施の形態のマイクロ波帯無線通信システムの詳細な構成を説明する。
図2に示すように、マイクロ波帯無線送信装置の一例としてのミリ帯無線送信装置9は、周波数配列部5に接続される中間周波数変換部の一例である第1の周波数変換回路2aと、基準信号源2cと、多重信号生成手段の一例である基準信号付加回路2dと、送信側周波数変換部の一例であるミリ波周波数変換回路3aとを備えている。
上記第1の周波数変換回路2aと基準信号源2cと基準信号付加回路2dとが、上記基準信号付加/電力レベル制御回路2を構成している。また、上記ミリ波周波数変換回路3aは上記周波数変換/送信回路3と上記局部発振器7とを構成している。
上記基準信号付加/電力レベル制御回路2は、入力端子IPに接続された第1の周波数変換回路2aと、この第1の周波数変換回路2aに接続された基準信号付加回路2dと、この基準信号付加回路2dに接続された基準信号源2cとを有する。
上記第1の周波数変換回路2aは、上記入力端子IPに入力側が接続された増幅器203aと、この増幅器203aの出力側に入力ポートが接続された周波数混合器201を有する。この周波数混合器201のもう1つの入力ポートには、上記基準信号付加回路2dが有する電力分配器204bが接続されている。この電力分配器204bには、基準信号源2cが接続されている。
また、上記基準信号付加回路2dは、上記電力分配器204bに入力側が接続されたレベル制御器95と、このレベル制御器95の出力側に入力ポートが接続された電力合成器204aを有する。この電力合成器204aのもう1つの入力ポートは、上記第1の周波数変換回路2aが有する増幅器203bの出力側に接続されている。この第1の周波数変換回路2aは、上記周波数変換器201の出力端子と上記増幅器203bの入力側との間に接続されたフィルタ202aを有する。なお、上記増幅器203aと203bは、レベル制御器を含んでいる。
また、上記ミリ波周波数変換回路3aは、上記基準信号付加回路2dの電力合成器204aの出力側に入力ポートが接続された周波数ミキサ301と、この周波数ミキサ301のもう1つの入力ポートに接続された局部発振器7と、上記周波数ミキサ301の出力ポートに入力側が接続されたバンドパスフィルタ302と、このバンドパスフィルタ302の出力側に接続されたミリ波増幅器303とを有する。
上記ミリ波周波数変換回路3aの上記ミリ波増幅器303の出力側には、送信アンテナ4が接続される。
上記構成のミリ波帯無線送信装置9の動作を説明する。
上記周波数配列部5では、地上波放送用アンテナ1aからの入力変調波信号5aおよび衛星放送用アンテナ1bからの入力変調波信号5bが、夫々、増幅器51および増幅器52でもって電力レベルが調整される。これにより、各入力変調波信号5a,5bの電力レベルが略等しくなるように調整され、各入力変調波信号5a,5bは、さらに、混合器53で電力合成されると共に周波数配列される。これにより、図6(A)に例示する一系列の入力信号5e(周波数fIF1e)が生成される。ここで、入力変調信号5aと入力変調信号5bとが同じ周波数帯である場合には、両者を直接電力合成することはできないので、両者のうちのいずれかの入力変調信号を周波数変換した上で、夫々の信号が電力合成される。これにより、一系列の入力信号5e(周波数fIF1e)が生成される。また、ここでは、各入力変調信号5a,5bの電力レベルが略等しくなるように調整したが、各入力変調信号5a,5bの品質に応じて、各入力変調信号5a,5bの電力レベルを異なったレベルとして電力合成しても構わない。
次に、上記周波数軸上に配列された一系列の入力信号5e(周波数fIF1e)は、増幅器203aで、適当なレベルまで増幅され、周波数混合器201に入力されて、第1の周波数変換がなされる。この第1の周波数変換がなされた第1のIF信号71aは、フィルタ202aにより片側波帯信号のみが濾波され、増幅器203bによって適正レベルまで調整される。なお、この調整は、増幅器203bにアッテネーターを適宜組み合わせて行ってもよい。
上記レベル調整の後の第1のIF信号71aは、電力合成器204aに入力される。一方、この電力合成器204aには、基準信号源2cから出力されて基準信号付加回路2dの電力分配器204bに入力され、レベル制御器95によって、適正レベルに調整された基準信号71cが入力される。
そして、この電力合成器204aでは、上記第1のIF信号71aに上記基準信号71cが付加されて、図6(B)に示すような中間周波数多重信号(周波数配列信号)としての第1のIF多重信号71dが生成される。
上述の如く、基準信号源2cから出力される周波数fLO1を有した基準信号71cは、電力分配器204bで2分配され、一方の基準信号71cは周波数混合器201に局部発振信号として入力される。また、電力分配された他方の基準信号71cは、レベル制御器95に入力され、後述する適当なレベル制御がなされた後、基準信号71cとして、電力合成器204aに入力される。そして、電力合成器204aにおいて、上述の如く、上記基準信号71cと第1のIF信号71aとが電力合成され、第1のIF多重信号71dが生成される。
ここで、上記第1のIF信号71aは、上記第1の周波数変換回路2aの周波数混合器201と増幅器203bとの間に接続されたフィルタ202aにより濾波され、増幅器203(もしくは増幅器203とアッテネーターとの組み合わせ)でもって、増幅されレベル制御がなされた後、基準信号71cが付加される構成としている。
このように、上記第1のIF信号71aは、増幅器203b等で構成されたレベル制御手段によってレベル制御された後に、基準信号71cが付加される。したがって、増幅器203bは、第1のIF信号71aに比べてレベルの大きい基準信号71cによって歪むことがなく、レベルの小さい上記第1のIF信号71a信号のみを、効率よく線形に増幅することができる。
さらに、第1のIF多重信号71dが含む第1のIF信号71aの電力レベルと上記基準信号71cの電力レベルとを、増幅器203b(あるいはアッテネータとの組み合わせ)とレベル制御器95とで、それぞれ、独立に制御できる。したがって、第1のIF信号71aの電力レベルと上記基準信号71cの電力レベルとを各々独立に制御して両者の電力レベル配分比を制御できるから、送信側の周波数変換/送信回路3を、フルパワーで、より線形に駆動できる。
また、ミリ波帯無線受信装置10側における第2の周波数変換の際に、第2のIF多重信号74自体を、この第2のIF多重信号74中に含まれる基準信号74cでもって周波数ダウンコンバートする場合、所望信号と基準信号の電力配分比には最適な配分比が存在する。
したがって、あらかじめ送信側のミリ波帯無線送信装置9において、上記第1のIF多重信号71dを生成する段階で、(上記第のIF信号71aの電力)/(基準信号71cの電力)の設定を適当な比率に設定して、受信感度の高い最適の電力配分比にすることが望ましい。これにより、周波数変換効率(受信感度)を高め、無線伝送距離を拡大することを可能とする。
尚、この第1実施形態において、一例として、レベル制御器95や、増幅器203a,203bで使用されているレベル制御部のアッテネーターを、チップ部品の抵抗でT型アッテネータやπ型アッテネータにより構成してもよい。また、上記基準信号付加回路2dが有する電力合成器204a,204bとしては、出力ポートが互いにアイソレーション特性を有したウイルキンソン型合成器とすることが望ましい。これにより、各電力合成器204a,204bの出力ポートに漏れこんでくる信号を抑圧し、各機能回路を正常に動作させることができる。詳細には、このウイルキンソン型合成器で構成した電力合成器204a,204bと、増幅器203a,203bとによって、第1のIF信号71aが基準信号付加回路2d側へ漏れ込むことを防げる。さらに、付加された基準信号71cが、電力合成器204aから周波数混合器201へ逆流することを防ぐことが可能となる。
ここで、この周波数変換においては、下側波帯信号を用いることが望ましい。この下側波帯信号を用いることによって、周波数変換後の第1のIF信号71aは周波数特性が反転する。この周波数特性の反転によって、広帯域信号である第1のIF信号71aは、レベル制御機能を有する増幅器203や、次段以降のミリ波帯へのアップコンバート(送信機側)およびダウンコンバート(受信機側)における周波数変換/増幅特性の周波数特性(周波数平坦性)を改善できる。その理由を以下に説明する。
通常、準マイクロ波帯(UHF帯)以上の高周波数においては、無線送信装置9、無線受信装置10における周波数変換過程や増幅の過程で、一系列の信号の信号レベルは、周波数高域側よりも周波数低域側の方が、損失が小さくなる(増幅の場合は利得が大きくなる)。したがって、周波数低域側に比べて周波数高域側の方が、損失が大きくなる(増幅の場合は利得が小さくなる)。したがって、平坦な周波数特性を理想とするのに対して、上記一系列の信号の信号レベルは、横軸を周波数とし、縦軸を信号強度レベルとしたとき、右下がりの周波数特性となる。なお、この無線送信装置9に入力される入力信号5e(周波数fIF1e)自体も、一系列の多チャンネル映像信号の広帯域信号であるが故に、高域側と低域側でレベル差を有し、高域側がレベル低下した変調信号となっている。
したがって、周波数特性を改善して平坦な特性とするために、送信側の第1の周波数変換回路2aによる第1の周波数変換において、下側波帯を用いることにより(具体的にはフィルタ202aで下側波帯を選択することにより)、周波数変換後の周波数特性の高域側と低域側とを反転させることができる。つまり、第1の周波数変換回路2aにおけるフィルタ202a以後の信号処理過程では、周波数特性が低域側と高域側で反転された信号に対して、この信号の高域側で損失が大きく(利得が小さく)、低域側で損失が小さく(利得が大きい)という特性が付加されてゆく。これにより、上記入力時の上記入力信号5eの周波数特性が補償され、第1のIF多重信号71d,無線多重信号72において、より平坦な周波数特性を実現できる。
つまり、図6(A)に示す一系列の入力信号5eから図6(B)に示す第1のIF多重信号71dの生成過程において、信号の周波数配置が次に示すように変換される。
(信号) (周波数)
第1のIF基準信号71c : fLO1
第1のIF信号71a : fLO1−fIF1e
この反転された第1のIF信号71aに、上記第1の周波数変換で用いた基準信号源2cによる局部発振信号を電力分配器204bで分配された基準信号71cを付加する。このことにより、以後の処理過程(増幅、周波数変換)における周波数特性を改善できる。つまり、以後の周波数変換/増幅の過程では、入力信号5eに対して周波数配列が低域側と高域側で反転された第1のIF信号71aに対して、信号の高域側で損失が大きく(利得が小さく)、低域側で損失が小さい(利得が大きい)という特性が付加されて行く。このため、信号の周波数特性はより平坦な特性になってゆく。なお、上記無線送信装置9において入力信号5eに対して反転された信号は、後述の無線受信装置10側における基準信号74cを用いた第2の周波数ダウンコンバートでもって、自動的に元の正転した送信側の入力信号5e(周波数fIF1e)に戻った一系列の信号76(周波数fIF1e)となる。
図6(B)に示す第1のIF多重信号71dは、次に、図2に示すミリ波周波数変換回路3aに入力される。このミリ波周波数変換回路3aは、周波数ミキサ301とバンドパスフィルタ302とミリ波増幅器303が入力側から出力側に順に接続されている。また、周波数ミキサ301には局部発振器7が接続されている。
上記ミリ波周波数変換回路3aにおいて、第1のIF多重信号71dは、局部発振器7と周波数ミキサ301によってミリ波帯に周波数アップコンバートされた後、バンドパスフィルタ302で所望の多重信号が濾波される。このミリ波帯への周波数変換は、前述した周波数特性改善のために、上側波帯信号を用いる。そして、上記多重信号をミリ波増幅器303で増幅した後、送信アンテナ4によりミリ波帯の無線多重信号72として空間に放出される。ここで、送信アンテナ4とミリ波増幅器303とが送信手段を構成している。
なお、望ましい一例では、周波数ミキサ301としては偶高調波ミキサ等のN次(N:2以上の自然数)高調波ミキサを用いる。このN次高調波ミキサを用いることで、局部発振器7の局部発振周波数を1/Nに低減できる。具体的には、この一例では、2次の高調波ミキサを採用することによって、局部発振器7の局部発振周波数を1/2に低減できる。例えば、送信無線多重信号72および受信無線多重信号73が60GHz帯であるようなミリ波帯無線送信装置9およびミリ波帯無線受信装置10であれば、局部発振器7が出力する局部発振信号の周波数fL02は、25GHz〜30GHz帯でよい。したがって、局部発振器7を60GHz帯で直接発振させる必要がなくなり、周波数安定度の高いミリ波帯無線送信装置を、ワイアボンディング等の容易な実装でもって簡易に製作できる。
なお、図6(B)に示す第1のIF多重信号71dから図6(C)に示す送信無線多重信号72の生成過程において、信号の周波数配置が次に示すように変換される。
(信号) (周波数)
無線基準信号72c : fLO1+fLO2
無線信号72a : fLO1+fLO2−fIF1e
次に、受信側について説明する。図2に示すように、マイクロ波帯無線受信装置の一例としてのミリ帯無線受信装置10は、受信アンテナ14と、第1のダウンコンバータとしての周波数変換/受信回路11と、局部発振器8と、第2のダウンコンバータとしての基準信号再生/周波数変換回路12とを備えている。
上記周波数変換/受信回路11は、入力側から出力側に順に接続された低雑音アンプ110、ミリ波バンドパスフィルタ111、周波数ミキサ112を有する。上記局部発振器8は周波数ミキサ112に接続されている。
また、上記基準信号再生/周波数変換回路12は、入力側から出力側に順に接続された中間周波数アンプ159、信号分配回路161、伝送線路162、周波数ミキサ部12a、増幅器195を有する。上記伝送線路162が第1の経路P1を構成している。また、上記信号分配回路161と上記周波数ミキサ部12aとの間には、第2の経路P2を構成する伝送線路163、バンドパスフィルタ171、増幅器180および伝送線路163が順に接続されている。
また、上記周波数ミキサ部12aはミキサMXとキャパシタ196を含んでいる。上記周波数ミキサ部12aの出力側に増幅器195の入力側が接続され、この増幅器195の出力側に出力端子500が接続されている。
このミリ波帯無線受信装置10の出力端子500には、分波器190が接続され、この分波器190にはTV受像機31が有する衛星放送用/地上波放送用チューナ30が接続される。
このミリ波帯無線受信装置10において、受信アンテナ14により受信されたミリ波帯無線多重信号73は、周波数変換/受信回路11に入力される。つまり、無線多重信号73は、一端、低雑音アンプ110により増幅される。次に、ミリ波帯バンドパスフィルタ111によって濾波された所望信号を、周波数ミキサ112でもって、局部発振器8からの局部発振信号(周波数fLO3)を用いて、第2の中間周波数帯に周波数ダウンコンバートして、中間周波数多重信号である第2のIF多重信号74を生成する。
なお、このミリ波帯の無線多重信号73に対する周波数ダウンコンバートは、図7(A),(B)に示すように、無線多重信号73を上側波帯として選択するダウンコンバートである。したがって、図6(C)に示す送信側の無線多重信号72よりも、図7(A)に示す受信側の局部発振周波数fLO3は、より低い周波数となる。なお、図6(C)に示すように、無線多重信号72は、無線基準信号72c(周波数(fLO1+fLO2))と、無線信号72a(周波数(fLO1+fLO2−fIF1e))とを含んでいる。また、図7において、白抜きの矢印は信号の配列方向を示している。
さらに、望ましい一実施例では、周波数ミキサ112として、偶高調波ミキサ等のN次(Nは2以上の自然数)高調波ミキサを採用する。この場合、局部発振器8の局部発振周波数を1/Nとすることができる。具体的一例としては、周波数ミキサ112を2次の高調波ミキサとすることによって、局部発振器8の局部発振周波数を1/2とすることができる。したがって、周波数安定度の高い無線受信装置10を、ワイヤボンディング等の容易な実装でもって簡易に製作できる。このことは、前述した送信側の周波数変換/送信回路3と同様である。
図7(A)に示す受信無線多重信号73を、第2の中間周波数帯に周波数ダウンコンバートして、図7(B)に示す第2のIF多重信号74を生成する。この生成過程により、上記第2のIF多重信号74は、下記の周波数配置に変換される。
(信号) (周波数)
第2のIF基準信号74c:fLO1+fLO2−fLO3
第2のIF信号74a :(FLO1+FLO2−FLO3)−fIF1e
周波数変換/受信回路11から出力された第2のIF多重信号74は、一端、中間周波数アンプ159により増幅され、信号分配回路161で2分配される。上記信号分配器161は、各出力ポート間で例えば20dB程度のアイソレーション特性を有するウイルキンソン型2分配器で構成される。この信号分配器161によって、各出力ポートで不要な漏れ信号を抑制し、各回路を正常動作させることができる。尚、上記中間周波数アンプ159と信号分配器161の両方の機能を有する分岐アンプを採用しても構わない。この分岐アンプは、図示しないが、1つの入力部と2つの出力部から構成され、この2つの出力部の出力回路は、並列したトランジスタから2出力を取る。このため、2つの出力部の互いの出力ポート間は、非常に大きなポート間アイソレーションを確保することができる。
次に、第2のIF多重信号74は、信号分配回路161で、第1の経路P1をなす伝送線路162と第2の経路P2をなす伝送線路163とに分配され、第1の経路P1では、そのまま、周波数ミキサ部12aに入力される。一方、もう一方の第2の経路P2では、バンドパスフィルタ171が、上記第2のIF多重信号74のうちの基準信号74cである周波数(fLO1+fLO2−fLO3)の成分を帯域通過させる。この基準信号74cは、増幅器180によって増幅され、第2のIF多重信号74と同期した周波数ミキサ部12aの局部発振信号として動作する。すなわち、この基準信号74cは、周波数ミキサ部12aに入力され、周波数ミキサ部12aは第2のIF多重信号74を周波数ダウンコンバートして、送信側の入力信号5e(周波数fIFe)を出力信号76(周波数fIFe)として再生する。この再生された出力信号76(周波数fIFe)は、必要に応じて増幅器195で増幅され、出力端子500から出力される。この出力信号76は、一例として、分波器(または分配器)190によって分波または分配され、TV受像機31中の衛星放送波用/地上波放送用チューナ30に接続される。
ここで、第2のIF多重信号74から、複数の放送波を再生する信号処理のプロセスについて説明する。この第2のIF多重信号74が、この信号74に含まれる基準信号74cによって周波数ダウンコンバートされる。この周波数ダウンコンバートによって復調信号(周波数fIFe)としての出力信号76を生成するプロセスは、次のように表現できる。
すなわち、図7(B)に示す第2のIF多重信号74は、上記基準信号74cによって周波数ダウンコンバートされることで、基準信号74cの周波数(fLO1+fLO2−fLO3)から第1のIF信号74aの周波数((fLO1+fLO2−fLO3)−fIF1e)が減算され、図7(C)に示すように、周波数fIF1eの出力信号76が生成される。
以上のように、第2のIF多重信号74中に含まれる基準信号74cにより第2のIF多重信号を周波数ダウンコンバートする過程では、基準信号74cを増幅器180で増幅して電力レベルを高くする。これにより、周波数ミキサ部12aを線形動作させることができる。なお、この増幅器180は、比帯域10%以下の狭帯域増幅特性を有し、フィルタ171と組み合わせて、基準信号74cのみを抽出して増幅するような動作特性であればより望ましい。
また、上記基準信号再生/周波数変換回路12は、第2のIF多重信号74をこの第2のIF多重信号74中に含まれる基準信号74cで周波数ダウンコンバートする構成である。したがって、図7(C)に示すように、周波数ダウンコンバートされた出力信号76(周波数fIF1e)には、基準信号74cを基準信号74cで周波数変換されたことで発生するDC(直流)成分も含まれてしまう。このため、周波数変換ミキサ部12aは、DC成分をカットするキャパシタ196を含むことが望ましい。
なお、上記ウイルキンソン型分配器で構成した信号分配回路161においては、この分配回路161が起点となり第2のIF多重信号74は、同位相で2分配される。ここで、この分配回路161から周波数ミキサ部12aに至る第1,第2の2つの経路が存在する。つまり、第1の経路P1とは、分配回路161から、伝送線路162を経由してミキサMXに至る経路長L2の経路であり、第2の経路P2とは、伝送線路163とフィルタ171と増幅器180と伝送線路163とを経由して、ミキサMXに至る経路長L3の経路である。
この第1の経路P1の経路長L2と第2の経路P2の経路長L3との和である総経路長L1(=L2+L3)は、上記第2のIF多重信号74の最低周波数に対応する1波長λ以下であることが望ましい。この場合、上記第1の経路P1と第2の経路P2からなる総経路長L1のループは、1、λ以下となり寄生発振ループにる不要発振波が生じ難くなる。なお、ここで、上記経路長L2とL3は、正確には電気長であるが、物理長であっても構わない。
尚、図3(A)に示すように、伝送線路162を経由する第1の経路P1(経路長:L2)にアッテネータ197を挿入してもよく、図3(B)に示すように、上記第1の経路P1に、アイソレータ198を挿入してもよく、アイソレータ198に替えて低利得の増幅器を挿入しても構わない。この低利得の増幅器とは、上記第2の経路P2(経路長L3)側の増幅器180の利得に比較して利得が低いことを意味する。
これらアッテネータ197、アイソレータ198や上記低利得増幅器の挿入によって、上記第1、第2の経路による総経路長L1のループによる信号のフィードバック成分を低減し抑圧する効果がある。したがって、上記第1,第2の経路によるループは負帰還のループ特性に近づく。これにより、周波数変換ミキサ部12aの出力特性は、ノイズフロアの上昇や、不要波成分が抑圧された安定した出力特性を示す。とりわけ、減衰率の小さい1dB〜数dB程度のアッテネータ197の挿入は、(上記第2のIF信号74aの電力)/(基準信号74cの電力)を、より確実に1以下にする効果を有する。したがって、周波数ミキサ部12aによる第2の周波数ダウンコンバートをより線形な動作に近づけることできる。これにより、無線伝送区間において、歪みやノイズの少ない安定した受信特性を得ることができる。
尚、上記第1の実施の形態のマイクロ波帯無線通信システムでは、入力信号5eを地上放送波5aと衛星放送波5bを有する信号として説明したが、この入力信号5eは、2つの衛星放送波や衛星放送波とCATV(Cable Television)信号等の組み合わせであっても構わないし、その他、例えば、無線LAN等のIF(中間周波数)段階またはRF(高周波)での変調波信号等を入力変調波信号としてもよい。また、上記第1実施形態では、ミリ波帯の無線信号を送受信する無線通信システムについて説明したが、無線信号はミリ波帯に限るものではなく、本発明はミリ波帯を含むマイクロ波の周波数帯域の無線信号を送受信するシステムにおいて適用できる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施形態のマイクロ波帯無線通信システムを説明する。この第2実施形態は、ミリ波帯無線送信装置9の構成は、前述の第1実施形態と同様であり、さらに、受信装置10側のミリ波帯から第2のIF多重信号74を生成する第1のダウンコンバータの周波数ミキサ112の部分までは、前述の第1実施形態と同様である。
すなわち、この第2実施形態は、基準信号再生/周波数変換回路12の構成が第1の実施形態と異なる。この第2実施形態は、第2のIF多重信号74から、この多重信号74に含まれる基準信号74cによる周波数ダウンコンバートで、復調信号としての出力信号76(周波数fIF1e)を生成することで、入力信号5eを再生する部分が前述の第1実施形態と異なる。したがって、この第2実施形態では、この第1実施形態と異なる基準信号再生/周波数変換回路12の部分について説明する。
前述の第1実施形態では、上記基準信号再生/周波数変換回路12が有する2分配器161から周波数ミキサ部12aに至る2つの経路、つまり、第1の経路P1をなす伝送線路162と第2の経路P2をなす伝送線路163,フィルタ172,伝送線路163および増幅器180でもってループを構成している。このループにおいては、個々の信号分配回路161や周波数ミキサ部12aが構成する分配/合成部における各ポート間のアイソレーション特性が十分確保されていることが必要であるが、このループの経路長を限定するものではない。
これに対し、この第2実施形態における基準信号再生/周波数変換回路12の構成においては、さらに、この受信装置10の受信感度を高めるために、基準信号再生/周波数変換回路12を図4(A)に示す構成とした。図4(A)に示すように、この第2実施形態の周波数変換回路12では、ウイルキンソン型分配器からなる信号分配回路161が起点となり、この分配回路161で、第2のIF多重信号74が同位相で2分配されている。
この分配回路161から周波数ミキサ部12aに至る二つの経路、つまり分配回路161から伝送線路162を経由して周波数ミキサ部12aに至る経路長L2の第1の経路P1と、分配回路161から伝送線路163、フィルタ171、増幅器180、伝送線路163を経由して周波数ミキサ部12aに至る経路長L3の第2の経路P2とが存在する。
この第2実施形態では、上記第1の経路P1の経路長L2と上記第2の経路P2の経路長L3とを、略同等な経路長とした。第2のIF多重信号74に含まれる基準信号74cは、経路長L2の第1の経路P1と経路長L3の第2の経路P2との両経路を通過して、周波数ミキサ部12aに入力される。上記両経路を伝送される両基準信号74cは、上記入力点で同位相となる。このため、ミキサ部12a中では、基準信号74cの成分は同位相で合成され、位相が揃った一つの局部発振信号としてミキサ部12aを駆動することとなる。
通常、図4(A)に示すように、経路長L3の第2の経路P2側では、基準信号7 4cは、フィルタ171で抽出され増幅器180で増幅される。このため、経路長L2の第1の経路P1側における基準信号74cの成分よりも経路長L3の第2の経路P2側の基準信号74cの成分の方が信号レベルが大きい。したがって、経路長L2の第1の経路P1と経路長L3の第2の経路P2とで、基準信号74cの位相が異なってくると寄生の位相雑音成分が生じ、信号品質を劣化させる要因となる。
これに対し、この第2実施形態では、上述のごとく、第1の経路P1の経路長L2と第2の経路P2の経路長L3とを略同等な経路長としたことで、上記両経路を伝送される両基準信号74cは、上記ミキサ部12aへの入力点で同位相となる。したがって、上記寄生の位相雑音成分の発生を防いで、信号品質を向上できる。
次に、図4(B)に、この第2実施形態における基準信号再生/周波数変換回路12の構成の一例をより詳細に示す。なお、ここでは、簡便ために、第1の経路P1の経路長L2と第2の経路P2の経路長L3を物理長で説明するが、前述したように正確には電気長のほうが望ましい。
上記第1の経路P1における伝送線路162の物理長を、上記第2の経路P2における2つの伝送線路163,163の物理長と、フィルタ171と増幅器180において信号が通過する経路長との和に等しくとする。これによって、第1の経路P1の経路長L2と第2の経路P2の経路長L3の物理長を同一とすることができる。これにより、第1の経路P1を経由する基準信号74cの位相と、第2の経路P2を経由する基準信号74cの位相とが略同等となる。これにより、受信側の第2のダウンコンバータとしての周波数変換回路12におけるダウンコンバートにおいて、第1、第2の経路からミキサMXへ局部発振信号源となる基準信号74cを入力することによって、上記2つの経路から同位相の基準信号74cを、ミキサMXで合成でき、信号レベルもより大きくすることができる。その結果、周波数変換損失を小さくでき、無線伝送距離をより大きくすることができる上に、寄生の位相雑音成分が生じることがなく、周波数変換後の信号品質を保つことができる。
次に、ミキサ部12aの構成を説明する。図4(B)に示すように、このミキサ部12aは、ウイルキンソン型合成器127と入力回路121と出力回路125で構成される。このウイルキンソン型合成器127は、λ/4伝送線路Lw1,Lw2と抵抗Rwで構成している。λ/4伝送線路Lw1は、上記第1の経路P1の伝送線路162と抵抗Rwの一端との間に接続されている。また。もう1つの伝送線路Lw2は、上記第2の経路P2の伝送線路163と上記抵抗Rwの他端との間に接続されている。また、この抵抗Rwの両端はこのウイルキンソン型合成器127の出力端子に接続されている。また、このウイルキンソン型合成器127の出力端子は、入力回路121の入力側に接続され、この入力回路121の出力側はトランジスタ123のベース端子に接続されている。
この入力回路は、伝送線路LI1、LI2、LI3とキャパシタCIおよび抵抗RIで構成されている。伝送線路LI1、LI2は入力側から出力側に順に接続され、この伝送線路LI1とLI2との接続点とグランドとの間に上記伝送線路LI3と上記キャパシタCIとが順に直列接続されている。また、上記伝送線路LI3と上記キャパシタCIとの接続点に上記抵抗RIの一端が接続されている。
上記トランジスタ123は、エミッタ端子が接地され、コレクタ端子が出力回路125に接続されている。この出力回路125は、短絡回路126とキャパシタ196と、この短絡回路126とキャパシタ196との間に接続された伝送線路Lc4を有する。この伝送線路Lc4と短絡回路126との接続点とグランドとの間にインダクタとキャパシタとの直列回路が接続され、このインダクタとキャパシタとの接続点にもう1つのインダクタの一端が接続されている。
また、上記短絡回路126は、直列接続された3つの伝送線路Lc1〜Lc3を有し、伝送線路Lc1とLc2との接続点とグランドとの間に、トラップ回路129aが接続され、伝送線路Lc2とLc3との接続点とグランドとの間にトラップ回路129bが接続されている。上記トラップ回路129a,129bは、それぞれ、インダクタとキャパシタとが直列に接続された回路で構成されている。
ミキサ部12aは、経路長L2の第1の経路P1からの信号と経路長L3の第2の経路P2からの信号とが、ウイルキンソン型合成器127で合成されるベース注入型のトランジスタミキサ(もしくはゲート注入型のFETミキサ)であることが望ましい。また、このミキサ部12aを構成するトランジスタ123はHBT(ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)やHEMT(高電子移動度トランジスタ)等のマイクロ波トランジスタであることが望ましい。ここで、このウイルキンソン型合成器127は、同位相合成器であり、かつ、同位相で合成された基準信号74cはエミッタ(ソース)接地のトランジスタ123へ、第2のIF信号74a成分とともに、入力回路121を経由して入力されることになる。なお、上記トランジスタ123は、ソース接地のFETであってもよい。
この構成の無線受信装置10は、無線伝送距離が長くなると、受信アンテナ14で受信され、周波数変換/受信回路11で第1の周波数変換がなされた第2のIF多重信号74の信号レベルは小さくなる。このため、上記エミッタ(もしくはソース)接地トランジスタ123の増幅作用および周波数変換作用によって、低入力レベルの局部発振信号(基準信号)74cに対しても周波数変換損失を小さくすることができる。したがって、受信感度を高めて、無線伝送距離を大きくすることが可能となる。尚、ウイルキンソン型合成器127は、λ/4伝送線路と抵抗で構成しているが、インダクタやキャパシタおよび抵抗等の集中定数線路のみで構成されても構わない。
また、このミキサ部12aの出力回路125においては、入力信号成分の第2のIF多重信号74に含まれる第1のIF多重信号74aと基準信号74cの両方を短絡する短絡回路126を有している。とりわけ、この第2実施形態では、広帯域信号である第2のIF多重信号74の高域側成分を短絡トラップするトラップ回路129aと低域側を短絡しトラップするトラップ回路129bを有している。上記第2のIF多重信号74の帯域幅に応じて2つのトラップ回路129aと129bのうちの両方を使うかどちらか一方のトラップ回路のみを使うかを決めればよい。この短絡回路126によって、このミキサ部12aの出力側に漏れた第2のIF多重信号74の成分を再度トランジスタ123側に矢印128a,128bで表すように反射帰還させて、トランジスタ123の周波数ミキシング効率を高くすることができる。なお、ここでは、トラップ回路129aおよび129bを集中定数線路で構成したが分布定数線路で構成しても構わない。
尚、この第2実施形態においても、上記第1の経路P1と第2の経路P2の2つの経路における経路長L2とL3の和である総経路長L1(=L2+L3)は、上記第2のIF多重信号74の最低周波数に対応する1波長λ以下であることが望ましい。これにより、上記総経路長L1の第1,第2の経路で形成されるループは、1、λ以下となり、寄生発振ループによる不要発振波が生じ難くなる。
(第3の実施形態)
次に、この発明の第3実施形態のマイクロ波帯無線通信システムを説明する。この第3実施形態は、ミリ波帯無線送信装置9の構成およびミリ波帯の無線多重信号73から第2のIF多重信号74の成分を生成するミリ波帯無線受信装置10側の第1のダウンコンバータに相当する周波数変換/受信回路11の部分は第1実施形態と同等である。
また、この第3実施形態は、第2のIF多重信号74から、この多重信号74中に含まれる基準信号74cによる周波数ダウンコンバートによって、復調信号(周波数fIF1e)である出力信号76を生成する(入力信号5eを再生する)部分が第1実施形態と異なる。したがって、この第3実施形態では、この第2のダウンコンバータに相当する基準信号再生/周波数変換回路12の部分について説明する。
前述の第2実施形態では、上記第1の経路P1の経路長L2および上記第2の経路P2の経路長L3を略同等な電気長とし、ミキサ部12aの入力側もウイルキンソン型電力合成器127とベース(またはゲート)注入型ミキサ部12aにより基準信号74cについて同位相合成した。
これに対し、この第3実施形態では、図5(A)に示すように、第2のダウンコンバータ(第2の周波数変換手段)を構成するミキサ部12aは、エミッタ(またはソース)接地型トランジスタ123aとベース(またはゲート)接地型のトランジスタ123bとで構成されるカスコード型ミキサを有する。
また、このカスコード型ミキサを有するミキサ部12aは、上記エミッタ接地型トランジスタ123aのベース端子に第1の注入回路121が接続され、この第1の注入回路121は第1の注入ポート121aを有している。また、このエミッタ接地型トランジスタ123aのコレクタ端子は、伝送線路124を介して、ベース接地型トランジスタ123bのエミッタ端子に接続される。このベース接地型のトランジスタ123bのベース端子には第2の注入回路122が接続され、この第2の注入回路122は第2の注入ポート122aを有している。さらに、このベース接地型のトランジスタ123bの出力側には出力回路125およびDC(直流成分)カット用のキャパシタ196が接続される。なお、上記エミッタ接地型トランジスタ123aをソース接地型トランジスタとしてもよく、上記ベース接地型トランジスタ123bをゲート接地型トランジスタとしてもよい。また、上記伝送線路124はインダクタとしてもよい。
ここで、図5(B)に、この第2のダウンコンバータとしてのカスコード型のミキサ部12aの望ましい接続形態の一例を詳細に示す。図5(B)に示すように、第1の注入回路121は、入力信号の整合回路MC1およびトランジスタへのDC供給回路DC1、バイパスコンデンサBC1より構成される。一方、第2の注入回路122は、入力信号の整合回路MC2およびトランジスタへのDC供給回路DC2、バイパス用コンデンサ回路BC1等から構成されてなる。尚、カスコードタイプのトランジスタは、デユアルベースタイプのトランジスタ(またはデユアルゲートタイプのFET)であっても構わない。
この第3実施形態の周波数変換回路12では、第2のIF多重信号74をウイルキンソン型分配器161で第1の経路P1と第2の経路P2に2分配する。この第2の経路P2では、フィルタ171でもって基準信号74cを濾波し増幅器180で増幅することで抽出され選択された基準信号74cを第1の注入ポート121aに入力する。この第1の注入ポート121aに入力された基準信号74cは、第1の注入回路121を経由して上記エミッタ接地トランジスタ123aのベース端子に入力される。一方、上記第1の経路P1に分配された上記第2のIF多重信号74は、電力分配器161から第2の注入ポート122aに直接入力されることとなり、この第2の注入ポート122aから第2の注入回路122を経由してベース接地トランジスタ123bのベース端子に入力される。
この第3実施形態が有する出力回路125に関しては、前述の第2実施形態が有する出力回路と同様の構成であり、第2のIF多重信号74についての入力信号短絡回路126等を有している。
なお、この第3実施形態において、入力整合回路をなす第1、第2の注入回路121、122は、図5(B)に示したように、分布定数線路と集中定数線路との組み合わせて構成してもよく、集中定数線路のみで構成してもよい。また、上記第2のIF多重信号74の周波数帯が低い場合には、カスコードタイプのミキサMXの変換利得を十分に大きくすることができるので、増幅器180を省略しても構わない。また、上記エミッタ接地型トランジスタ123aはソース接地型トランジスタであってもよく、上記ベース接地型トランジスタ123bはゲート接地型トランジスタであってもよい。
次に、この第3実施形態の動作を説明する。
図5(B)に示すように、第2のIF多重信号74は電力分配器161で2分配され、一方の端子から第2の経路P2に向かった第2のIF多重信号74に対して濾波および増幅が行われることで、抽出,選択された基準信号74cは、上記カスコードタイプのミキサ部12aの第1の注入ポート121aに入力される。この基準信号74cは、入力回路をなす第1の注入回路121を介して、トランジスタ123aのベース端子に入力される。
一方、上記電力分配器161から第1の経路P1に分配された第2のIF多重信号74は、直接に第2の注入ポート122aに入力され、入力回路122を介してベース接地トランジスタ123bのベース端子に入力される。
上記2つの注入ポート121a,122aから入力された基準信号74c,第2のIF多重信号74は、トランジスタ123aおよび123bの両トランジスタで増幅と同時にミキシング動作が行われる。伝送線路124では、第2のIF信号74aと基準信号74cに関し、最適位相と最大感度(最適駆動インピーダンス)に調整される。また、この第3実施形態でも上記第2実施形態と同様に出力回路125中の入力信号短絡回路126によって、入力信号成分である第2のIF多重信号74の成分を反射帰還させてトランジスタ123a,123bの内部の非線形動作効率を高めて周波数変換の感度特性を高くすることができる。
尚、この第3実施形態では、カスコード型のミキサMXを備えたことで、周波数ミキサ部12aの変換損失を小さくすることができる上に、各入力端子121a,122a間のアイソレーション特性を改善する(十分大きくする)ことができる。この入力端子121a,122a間のアイソレーションによって、第1実施形態で述べた寄生ループをカット(開放)することができ、寄生発振等を除去できる。なお、上記電力分配器161としては、受動型のウイルキンソン型デバイダが一般的であるが、マイクロ波トランジスタから構成された分岐アンプで構成しても構わない、この分岐アンプは、分岐間のアイソレーションが高く、このカスコード型のミキサ部12aと組み合わせると非常に大きなポート間アイソレーションを確保することができ、第1、第2実施形態で述べた寄生ループを開放し、この寄生ループによる寄生発振をより効果的に防止できる。
また、前述の第2実施形態は、1個のトランジスタ123でミキサ機能を実現するシングルミキサのタイプであるので、入力ポートは1つであり、基準信号74cおよび第2のIF多重信号74に対して、一様な入力インピーダンスでミキサ部12aを駆動するしかなかった。
これに対して、この第3実施形態では、上記カスコード型のミキサ部12aの第1の注入ポート121aに、基準信号74c成分を抽出,増幅する第2の経路P2(経路長L3)が接続され、第2注入ポート122aに周波数変換される第2のIF多重信号74成分を伝達する第1の経路P1(経路長L2)が接続される構成である。この第3実施形態の構成によれば、カスコード型のミキサ部12aを採用したことにより、別個の入力端子121a,122aを有し、各注入回路121,122により、最適な入力インピーダンスでミキサ部12aを駆動できる。このため、ミキサ部12aとしての周波数変換特性や歪み特性を改善することが可能となる。
また、この第3実施形態では、ミキサ部12aの局部発振成分となる基準信号74cを第1の注入ポート121aに入力し、本来の周波数変換すべき第2のIF信号多重信号74を第2の注入ポート122aに入力している。これにより、この実施形態の送受信システムで必要となる基準信号成分に対する感度特性を低入力レベルから動作させ、かつ基準信号74c成分のレベル変動を鈍くすることができる。つまり上記第1注入ポートは、ダイナミックレンジが広くかつ、基準信号74c成分に対して増幅作用も有するため、送信装置9側で、送信無線信号72aに対して送信基準信号72cのレベルを相対的にを低くでき送信効率(本来伝送すべき信号対基準信号の比率)を改善することができる。加えて、受信無線多重信号信号73のレベルの変動に対しても、受信側の第2の周波数変換された信号76の変動も、より線形動作に近くなり、急激な変化を低減することができ、より安定した受信が可能となる。
(第4の実施の形態)
次に、図8に、この発明の第4実施形態としてのマイクロ波帯無線通信システムの構成を示す。このマイクロ波帯無線通信システムは、マイクロ波帯無線送信装置9とマイクロ波帯無線受信装置10Nとを備える。なお、ここで、マイクロ波帯とは、マイクロ波帯とミリ波帯とを含む周波数帯域をいう。
この第4実施形態が備えるマイクロ波帯無線送信装置9は、図2に示す第1実施形態のミリ波帯無線送信装置9と同じ構成であり、この第4実施形態は、無線受信装置10Nの構成だけが第1実施形態の無線受信装置10と異なる。すなわち、図8に示すように、上記無線受信装置10Nが有する第2のダウンコンバータとしての基準信号再生/周波数変換回路12Nが、中間周波数アンプ159の入力側に接続された第1のフィルタとしてのフィルタ172を有する点と、周波数ミキサ部12aと増幅器195との間に接続されたフィルタ175を有する点だけが、上述の第1実施形態の無線受信装置10と異なる。したがって、この第4実施形態では、上述の第1実施形態同様の部分については概略を説明し、上述の第1実施形態と異なる点を重点的に説明する。
この第4実施形態のマイクロ波帯無線通信システムの概略構成は、図1に示される。
図1に示すように、送信側のマイクロ波帯無線送信装置9の概略構成は、周波数配列器5と周波数変換、基準信号付加/電力レベル制御回路2と、周波数変換/送信回路3と、局部発振器7と、送信アンテナ4とを備えている。
上記ミリ波帯無線送信装置9の動作は、まず、最初の動作ステップとして、周波数配列器5において、図11Aに示すように、例えば、地上波放送用アンテナ1aからの入力変調波信号5aおよび衛星放送用アンテナ1bからの入力変調波信号5bは、夫々増幅器51,52で、夫々の入力変調信号5a,5bの電力レベルが調整され、混合器53で周波数配列され、一系列の入力変調信号5e(fIF1e)が生成される。なお、図11Aには周波数軸上で信号の生成過程を示している。
次の動作ステップとして、上記入力変調信号5eは、基準信号付加/電力レベル制御回路2に入力され、図11Bに示すように、周波数軸上に配列された一系列の入力変調波信号5e(周波数fIF1e)は、第1の周波数変換がなされる。この基準信号付加/電力レベル制御回路2では、第1の周波数変換がなされた第1のIF信号71aは、レベル制御されると同時に、適正レベルの基準信号71cが付加され、中間周波数多重信号(周波数配列信号)である第1のIF多重信号71d(周波数(fLO1−fIF1e)が生成される。
ここでは、一例として、下側波帯を所望波として用いた場合について説明する。この場合、図8の第1の周波数変換回路2aが有するフィルタ202aの不完全性により、レベル差は大きく異なるが、図11Bに破線で示すように、上側波帯の不要波成分(周波数:fLO1+fIF1e)も生じてくる。
次の動作ステップとして、上記第1のIF多重信号71dは、周波数変換/送信回路3に入力される。そして、周波数変換/送信回路3では、第1のIF多重信号71dは、局部発振器7からの局部発振信号(周波数fLO2)を用いて、ミリ波帯に周波数変換されて増幅される。
図11Cに示すように、上記周波数変換され増幅されて生成された無線多重信号72は、送信アンテナ4により無線信号として送信される。なお、図11A〜図11Cにおいて、白抜きの矢印記号は信号の配列方向を示している。また、図11Cにおいて、破線は無線多重信号72に伴う不要波信号(周波数:fLO1+fLO2+fIF1e)を表している。
一方、図1に示すように、ミリ波帯無線受信装置10の概略構成は、送信側からの無線多重信号を受信する受信アンテナ14と、この受信アンテナ14からの無線多重信号73を受けて第1の周波数ダウンコンバートを行う周波数変換/受信回路11と、局部発振信号を供給する局部発振器8と、受信側の第2の周波数ダウンコンバートを行う基準信号再生/周波数変換回路12とを備えている。上記周波数変換/受信回路11が第1のダウンコンバータをなし、上記基準信号再生/周波数変換回路12が第2のダウンコンバータをなす。
このミリ波帯無線受信装置10は、その動作ステップにおいて、まず、最初のステップとして、図1および図12Aに示すように、送信側からの無線多重信号72を受信アンテナ14で受信し、この受信アンテナ14からの無線多重信号73を周波数変換/受信回路11で受けて第1の周波数ダウンコンバートを行う。つまり、周波数変換/受信回路11では、図8に示す局部発振器8が供給する局部発振信号(周波数fLO3)により、無線多重信号73を第2の中間周波数帯に変換し、図12Bに示すように、中間周波数多重信号である第2のIF多重信号74を生成する。なお、図12A,図12Bにおいて、白抜きの矢印記号は信号の配列方向を示している。また、図12Aにおいて、破線は無線多重信号73に伴う不要波信号(周波数:fLO1+fLO2+fIF1e)を表している。
次のステップとして、第2のIF多重信号74は、基準信号再生/周波数変換回路12Nに入力され、図8に示す第1のフィルタ172によって、図12Bに示すように、不要波信号が抑圧される。そして、この基準信号再生/周波数変換回路12Nは、図12Bに示す第2のIF多重信号74の中から第2のフィルタ171でもって基準信号74cを抽出して増幅し、この基準信号74cでもって、中間周波数多重信号である第2のIF多重信号74を周波数ダウンコンバートする。これにより、上記基準信号再生/周波数変換回路12は、送信側で入力された一系列の入力信号5e(周波数fIF1e)を1系列の出力信号76(周波数fIF1e)として再生する。
次に、この無線受信装置10の出力端子500から出力された上記出力信号76は、受信側の最後のステップとして、周波数逆配列/分離部190に入力される。この周波数逆配列/分離部190では、受信側で再生された入力信号5eに相当する1系列のシリアルな出力信号76(周波数fIF1e)の中から、地上波放送用の信号5aに対応する信号76aおよび衛星放送用の信号5bに対応する信号76bが再生される。この分波された信号76aと76bは、複数のTV受像機31中の夫々の複数の衛星放送用/地上波放送用チューナ30に入力される。
次に、図8を参照して、この第4の実施の形態のマイクロ波帯無線通信システムの詳細な構成を説明する。前述の如く、この第4実施形態では、マイクロ波無線送信装置9は第1実施形態と同様の構成である。この第4実施形態は、マイクロ波帯無線受信装置10Nが第1のフィルタとしてのフィルタ172とフィルタ175を有する点と周波数ミキサ部12aの構成とが上述の第1実施形態と異なる。したがって、この第4実施形態は、第1実施形態と同様の部分については概略を説明し、第1実施形態と異なる点を主に説明する。
図8は、この第4実施形態のマイクロ波帯無線通信システムの詳細な構成を示している。図8に示すように、マイクロ波帯無線送信装置の一例としてのミリ帯無線送信装置9は、周波数配列部5および、中間周波数変換部の一例である第1の周波数変換回路2aと、基準信号源2cと、多重信号生成手段の一例である基準信号付加回路2dと、送信側周波数変換部の一例としてのミリ波周波数変換回路3aとを備えている。
上記周波数配列部5では、地上波放送用アンテナ1aからの入力変調波信号5aおよび衛星放送用アンテナ1bからの入力変調波信号5bが、夫々増幅器51,52で電力レベルが調整される。これにより、各入力変調波信号5a,5bの電力レベルが略等しくなるように調整され、各入力変調波信号5a,5bは、さらに、混合器53で電力合成されると共に周波数配列される。これにより、図11Aに例示する一系列の入力信号5e(周波数fIF1e)が生成される。ここで、入力変調信号5aと入力変調信号5bとが同じ周波数帯であれば、両者を直接電力合成することはできないので、両者のうちのどちらか一方の入力変調信号を周波数変換した上で、夫々の信号が電力合成される。これにより、一系列の入力信号5e(周波数fIF1e)が生成される。ここでは、各入力変調信号5a,5bは、互いに周波数帯が異なっているので、そのまま電力合成器53で合成している。さらに、ここでは、各入力変調信号5a,5bの電力レベルが略等しくなるように調整したが、各入力変調信号5a,5bの品質に応じて、各入力変調信号5a,5bの電力レベルを異なったレベルとして電力合成しても構わない。
次に、上記周波数軸上に配列された一系列の入力信号5e(周波数fIF1e)は、増幅器203aで、適当なレベルまで増幅,調整され、周波数混合器201に入力されて、第1の周波数変換がなされる。この第1の周波数変換がされた第1のIF信号71aは、フィルタ202aにより片側波帯信号のみが濾波され、増幅器203bによって適正レベルまで調整される。なお、この調整は、増幅器203bにアッテネーターを適宜組み合わせて行ってもよい。
その後、一方で適正レベルに調整された基準信号71cが電力合成器204aにより、第1のIF信号71aに付加され、中間周波数多重信号(周波数配列信号)としての第1のIF多重信波信号71dが生成される。
ここで、基準信号源2cから出力される周波数fLO1を有した基準信号71cは、電力分配器204bで2分配され、一方の基準信号71cは周波数変換器201の局部発振信号として入力される。また、電力分配された他方の基準信号71cは、レベル制御器95に入力され、後述する適当なレベル制御がなされた後、基準信号71cとして、電力合成器204aに入力される。そして、電力合成器204aにおいて、上記基準信号71cと第1のIF信号71aとが電力合成され、第1のIF多重信号71dが生成される。
ここで、上記第1のIF信号71a信号は、フィルタ202aにより濾波され、増幅器203(もしくは増幅器203とアッテネーターとの組み合わせ)でもって、増幅され、レベル制御がなされた後、基準信号71cが付加される構成としている。
このように、上記第1のIF信号71aは、増幅器203b等からなるレベル制御手段によってレベル制御された後に、基準信号71cが付加される。したがって、増幅器203bは、第1のIF信号71aに比べてレベルの大きい基準信号71cにより歪むことがなく、レベルの小さい上記第1のIF信号71a信号のみを、効率よく線形に増幅することができる。
さらに、第1のIF多重信波信号71dが含む第1のIF信号71aの電力レベルと基準信号71cの電力レベルとを、増幅器203b(あるいはアッテネータとの組み合わせ)とレベル制御器95とで、それぞれ、独立に制御できる。したがって、第1のIF信号71aの電力レベルと上記基準信号71cの電力レベルとを各々独立に制御して両者の電力レベル配分比を制御できるから、送信側の周波数変換/送信回路3を、フルパワーで、より線形に駆動できる。
また、ミリ波帯無線受信装置10側における第2の周波数変換の際に、第2のIF多重信号74自体を、この第2のIF多重信号74中に含まれる基準信号74cでもって周波数ダウンコンバートする場合、所望信号と基準信号の電力配分比には最適な配分比が存在する。
したがって、あらかじめ送信側のミリ波帯無線送信装置9において、上記第1のIF多重信号71dを生成する段階で、(上記第のIF信号71aの電力)/(基準信号71cの電力)の設定を適当な比率に設定して、受信感度の高い最適の電力配分比にすることが望ましい。これにより、周波数変換効率(受信感度)を高め、無線伝送距離を拡大することを可能とする。
尚、この第4実施形態において、一例として、レベル制御器95や、増幅器203a,203bで使用されているレベル制御部のアッテネーターを、チップ部品の抵抗でT型アッテネータやπ型アッテネータにより構成してもよい。また、上記基準信号付加回路2dが有する電力合成器204a,204bとしては、出力ポートが互いにアイソレーション特性を有したウイルキンソン型合成器とすることが望ましい。これにより、各電力合成器204a,204bの出力ポートに漏れこんでくる信号を抑圧し、各機能回路を正常に動作させることができる。詳細には、このウイルキンソン型合成器で構成した電力合成器204a,204bと、増幅器203a,203bとによって、第1のIF信号71aが基準信号付加回路2d側へ漏れ込むことを防げる。さらに、付加された基準信号71cが、電力合成器204aから周波数混合器201へ逆流することを防ぐことが可能となる。
ここで、この周波数変換においては、下側波帯信号を用いることが望ましい。この下側波帯信号を用いることによって、周波数変換後の第1のIF信号71aは周波数特性が反転する。この周波数特性の反転によって、広帯域信号である第1のIF信号71aは、レベル制御機能を有する増幅器203や、次段以降のミリ波帯へのアップコンバート(送信機側)およびダウンコンバート(受信機側)における周波数変換/増幅特性の周波数特性(周波数平坦性)を改善できる。その理由を以下に説明する。
通常、準マイクロ波帯(UHF帯)以上の高周波数においては、無線送信装置9、無線受信装置10における周波数変換過程や増幅の過程で、一系列の信号の信号レベルは、周波数高域側よりも周波数低域側の方が、損失が小さくなる(増幅の場合は利得が大きくなる)。したがって、周波数低域側に比べて周波数高域側の方が、損失が大きくなる(増幅の場合は利得が小さくなる)。したがって、平坦な周波数特性を理想とするのに対して、上記一系列の信号の信号レベルは、横軸を周波数とし、縦軸を信号強度レベルとしたとき、右下がりの周波数特性となる。なお、この無線送信装置9に入力される入力信号5e(周波数fIF1e)自体も、一系列の多チャンネル映像信号の広帯域信号であるが故に、高域側と低域側でレベル差を有し、高域側がレベル低下した変調信号となっている。
したがって、周波数特性を改善して平坦な特性とするために、送信側の第1の周波数変換回路2aによる第1の周波数変換において、下側波帯を用いることにより(具体的にはフィルタ202aで下側波帯を選択することにより)、周波数変換後の周波数特性の高域側と低域側とを反転させることができる。つまり、第1の周波数変換回路2aにおけるフィルタ202a以後の信号処理過程では、周波数特性が低域側と高域側で反転された信号に対して、この信号の高域側で損失が大きく(利得が小さく)、低域側で損失が小さく(利得が大きい)という特性が付加されてゆく。これにより、上記入力時の上記入力信号5eの周波数特性が補償され、第1のIF多重信号71d,無線多重信号72において、より平坦な周波数特性を実現できる。
つまり、図11Aに示す一系列の入力信号5eから図11Bに示す第1のIF多重信号71dの生成過程において、信号の周波数配置が次に示すように変換される。
(信号) (周波数)
第1のIF基準信号71c : fLO1
第1のIF信号71a : fLO1−fIF1e
この反転された第1のIF信号71aに、上記第1の周波数変換で用いた基準信号源2cによる局部発振信号を電力分配器204bで分配された基準信号71cを付加する。このことにより、以後の処理過程(増幅、周波数変換)における周波数特性を改善できる。つまり、以後の周波数変換/増幅の過程では、入力信号5eに対して周波数配列が低域側と高域側で反転された第1のIF信号71aに対して、信号の高域側で損失が大きく(利得が小さく)、低域側で損失が小さい(利得が大きい)という特性が付加されて行く。このため、信号の周波数特性はより平坦な特性になってゆく。なお、上記無線送信装置9において入力信号5eに対して反転された信号は、後述の無線受信装置10側における基準信号74cを用いた第2の周波数ダウンコンバートでもって、自動的に元の正転した送信側の入力信号5e(周波数fIF1e)に戻った一系列の信号76(周波数fIF1e)となる。
図11Bに示す第1のIF多重信号71dは、次に、図8に示すミリ波周波数変換回路3aに入力される。このミリ波周波数変換回路3aは、周波数ミキサ301とバンドパスフィルタ302とミリ波増幅器303が入力側から出力側に順に接続されている。また、周波数ミキサ301には局部発振器7が接続されている。
上記ミリ波周波数変換回路3aにおいて、第1のIF多重信号71dは、局部発振器7と周波数ミキサ301によってミリ波帯に周波数アップコンバートされた後、バンドパスフィルタ302で所望の多重信号が濾波される。このミリ波帯への周波数変換は、前述した周波数特性改善のために、上側波帯信号を用いる。そして、上記多重信号をミリ波増幅器303で増幅した後、送信アンテナ4によりミリ波帯の無線多重信号72として空間に放出される。ここで、送信アンテナ4とミリ波増幅器303とが送信手段を構成している。
なお、望ましい一例では、周波数ミキサ301としては偶高調波ミキサ等のN次(N:2以上の自然数)高調波ミキサを用いる。このN次高調波ミキサを用いることで、局部発振器7の局部発振周波数を1/Nに低減できる。具体的には、この一例では、2次の高調波ミキサを採用することによって、局部発振器7の局部発振周波数を1/2に低減できる。例えば、送信無線多重信号72および受信無線多重信号73が60GHz帯であるようなミリ波帯無線送信装置9およびミリ波帯無線受信装置10であれば、局部発振器7が出力する局部発振信号の周波数fL02は、25GHz〜30GHz帯でよい。したがって、局部発振器7を60GHz帯で直接発振させる必要がなくなり、周波数安定度の高いミリ波帯無線送信装置を、ワイアボンディング等の容易な実装でもって簡易に製作できる。
ただし、ミリ波周波数変換回路3aにおけるバンドパスフィルタ302の不完全性に起因して、図11Cに破線で示す不要信号(周波数fLO1+fLO2+fIF1e)は完全には抑圧されずに残り、この残存した不要信号はわずかながら送信アンテナ4により放射されてしまう。
なお、図6(B)に示す第1のIF多重信号71dから図6(C)に示す送信無線多重信号72の生成過程において、信号の周波数配置が次に示すように変換される。
(信号) (周波数)
無線基準信号72c : fLO1+fLO2
無線信号72a : fLO1+fLO2−fIF1e
次に、受信側について説明する。図2に示すように、マイクロ波帯無線受信装置の一例としてのミリ帯無線受信装置10は、受信アンテナ14と、第1のダウンコンバータとしての周波数変換/受信回路11と、局部発振器8と、第2のダウンコンバータとしての基準信号再生/周波数変換回路12Nとを備えている。上記周波数変換/受信回路11と局部発振器8とが周波数変換部112を構成している。上記周波数変換/受信回路11は、入力側から出力側に順に接続された低雑音アンプ110、ミリ波バンドパスフィルタ111、周波数ミキサ119を有する。上記局部発振器8は周波数ミキサ119に接続されている。
また、上記基準信号再生/周波数変換回路12Nは、入力側から出力側に順に接続されたフィルタ172、中間周波数アンプ159、信号分配回路161、伝送線路162、周波数ミキサ部12a、フィルタ175、増幅器195を有する。上記フィルタ172は中間周波数多重信号から不要波を除去する第1のフィルタである。
上記伝送線路162が第1の経路P1を構成している。また、上記信号分配回路161と上記周波数ミキサ部12aとの間には、第2の経路P2を構成する伝送線路163、バンドパスフィルタ171、増幅器180および伝送線路163が順に接続されている。上記バンドパスフィルタ171は上記中間周波数多重信号から基準信号を抽出する第2のフィルタである。
上記周波数ミキサ部12aはミキサMXと帰還回路としてのトラップ回路196Nを含んでいる。上記周波数ミキサ部12aの出力側に増幅器195の入力側が接続され、この増幅器195の出力側に出力端子500が接続されている。
このミリ波帯無線受信装置10の出力端子500には、分波器190が接続され、この分波器190にはTV受像機31が有する衛星放送用/地上波放送用チューナ30が接続される。
このミリ波帯無線受信装置10において、受信アンテナ14により受信されたミリ波帯無線多重信号73は、周波数変換/受信回路11に入力される。つまり、無線多重信号73は、一端、低雑音アンプ110により増幅される。次に、ミリ波帯バンドパスフィルタ111によって濾波された所望信号を、周波数ミキサ119でもって、局部発振器8からの局部発振信号(周波数fLO3)を用いて、第2の中間周波数帯に周波数ダウンコンバートして、中間周波数多重信号である第2のIF多重信号74を生成する。
なお、このミリ波帯の無線多重信号73に対する周波数ダウンコンバートは、図12A,図12Bに示すように、無線多重信号73を上側波帯として選択するダウンコンバートである。したがって、図11Cに示す送信側の無線多重信号72よりも、図12Bに示す受信側の局部発振周波数fLO3は、より低い周波数となる。なお、図11Cに示すように、無線多重信号72は、無線基準信号72c(周波数(fLO1+fLO2))と、無線信号72a(周波数(fLO1+fLO2−fIF1e))とを含んでいる。また、図12A,図12Bおいて、白抜きの矢印は信号の配列方向を示している。
さらに、望ましい一実施例では、周波数ミキサ119として、偶高調波ミキサ等のN次(Nは2以上の自然数)高調波ミキサを採用する。この場合、局部発振器8の局部発振周波数を1/Nとすることができる。具体的一例としては、周波数ミキサ119を2次の高調波ミキサとすることによって、局部発振器8の局部発振周波数を1/2とすることができる。したがって、周波数安定度の高い無線受信装置10を、ワイヤボンディング等の容易な実装でもって簡易に製作できる。このことは、前述した送信側の周波数変換/送信回路3aと同様である。
図12Aに示す受信無線多重信号73を、第2の中間周波数帯に周波数ダウンコンバートして、図12Bに示す第2のIF多重信号74を生成する。この生成過程により、上記第2のIF多重信号74は、下記の周波数配置に変換される。
(信号) (周波数)
第2のIF基準信号74c:fLO1+fLO2−fLO3
第2のIF信号74a :(fLO1+fLO2−fLO3)−fIF1e
ところで、上記無線多重信号73は、周波数変換/受信回路11の低雑音アンプ110で増幅されるが、この低雑音アンプ110は、不要波信号(周波数fLO1+fLO2+fIF1e)も増幅する。そして、この低雑音アンプ110の後段のミリ波バンドパスフィルタ111は急峻度が低いため、上記不要波信号を十分に抑圧できず、第1の周波数ダウンコンバートの結果、図12Aに示すの不要波信号(周波数(fLO1+fLO2−fLO3)+fIF1e)として残ってくる。さらにまた、無線伝送距離が短い場合,信号レベルの大きい無線基準信号73cでもって、低雑音アンプ110や周波数ミキサ119において歪みが生じ、上記不要波信号(周波数fFLO1+fLO2+fIF1e)は増強されてしまう。
図12Bに示すように、第2のIF多重信号74は、第1のフィルタであるフィルタ172によって、上記不要波信号(周波数(fLO1+fLO2−fLO3)+fIF1e)が完全に除去される。これにより、次段の基準信号再生/周波数変換回路(第2のダウンコンバータ)12Nを正常に動作させて、第2の周波数変換によって、信号品質であるCN(キャリア対雑音比)の劣化を低減することができ、品質の高い信号を復調できる。
以下この動作についてより詳しく説明する。上記のように、第1のフィルタであるフィルタ172により、所望波である中間信号多重信号である無線多重信号73が選択され、このフィルタ172を通過する。その後、上記無線多重信号73は、中間周波数アンプ(IFアンプ)159により増幅され、信号分配回路161で2分配される。この信号分配器161は、各出力ポート間でアイソレーション特性を有するウイルキンソン型2分配器で分配される。
これにより、各出力ポートで不要な漏れ信号を抑圧し、各回路を正常動作させることができる。尚、上記中間周波数アンプ159と信号分配器161の両方の機能を有する分岐アンプを採用しても構わない。この分岐アンプは、図示しないが、1つの入力部と2つの出力部から構成され、この2つの出力部の出力回路は、並列したトランジスタから2出力を取る。このため、2つの出力部の互いの出力ポート間は、非常に大きなポート間アイソレーションを確保することができる。
次に、第2のIF多重信号74は、信号分配回路161で、第1の経路P1をなす伝送線路162と第2の経路P2をなす伝送線路163とに分配され、第1の経路P1では、そのまま、周波数ミキサ部12aに入力される。一方、もう一方の第2の経路P2では、バンドパスフィルタ171が、上記第2のIF多重信号74のうちの基準信号74cである周波数(fLO1+fLO2−fLO3)の成分を帯域通過させる。この基準信号74cは、増幅器180によって増幅され、第2のIF多重信号74と同期した周波数ミキサ部12aの局部発振信号として動作する。すなわち、この基準信号74cは、周波数ミキサ部12aに入力され、周波数ミキサ部12aは第2のIF多重信号74を周波数ダウンコンバートして、送信側の入力信号5e(周波数fIFe)を出力信号76(周波数fIFe)として再生する。この再生された出力信号76(周波数fIFe)は、必要に応じて増幅器195で増幅され、出力端子500から出力される。この出力信号76は、一例として、分波器(または分配器)190によって分波または分配され、TV受像機31中の衛星放送波用/地上波放送用チューナ30に出力される。
ここで、第2のIF多重信号74から、複数の放送波を再生する信号処理のプロセスについて説明する。この第2のIF多重信号74が、この信号74に含まれる基準信号74cによって周波数ダウンコンバートされる。この周波数ダウンコンバートによって復調信号(周波数fIFe)としての出力信号76を生成するプロセスは、次のように表現できる。
すなわち、図13Aに示す第2のIF多重信号74は、上記基準信号74cによって周波数ダウンコンバートされることで、基準信号74cの周波数(fLO1+fLO2−fLO3)から第1のIF信号74aの周波数((fLO1+fLO2−fLO3)−fIF1e)が減算され、図13Bに示すように、周波数fIF1eの出力信号76が生成される。
以上のように、第2のIF多重信号74中に含まれる基準信号74cにより第2のIF多重信号を周波数ダウンコンバートする過程では、狭帯域フィルタ171によって、第2のIF多重信号74から基準信号74cを抽出し、この基準信号74cを増幅器180で増幅して電力レベルを高くする。これにより、周波数ミキサ部12aを線形動作させることができる。
また、第1のダウンコンバートの後に、第2のダウンコンバートの前段階で発生している不要波信号を、第1のフィルタ172でもって除去するので、第2のIF多重信号を伝送すべき信号である所望の中間周波数多重信号に限定することが可能となる。よって、第2のフィルタである狭帯域フィルタ171でもって、上記中間周波数多重信号の中から基準信号のみを、より確実に抽出することができる。
一方、上記第1のフィルタ172を有さない場合には、通常、第2のフィルタとしてのフィルタ171は狭帯域フィルタであるので、基準信号73cの近傍では、図12Aに示すように、基準信号73cのみを抽出,濾波できるが、基準信号73cよりも周波数がオクターブバンド以上高い周波数やDC近傍の帯域では、十分な抑圧度を持たない。このため、フィルタ171では、不要波等が選択,濾波されて、増幅器180で増幅される。このことは、第2の周波数コンバートにおける信号劣化の要因となる。
これに対し、この実施形態では、第1のフィルタ172と第2のフィルタ171とを組み合わせることにより、増幅器180で上記基準信号のみを忠実に増幅することができるので、雑音成分や不要波成分の少ない基準信号成分を再生することができる(効果1)。
また、上記第1のフィルタ172を有さない場合には、もう一方の経路P1をなす伝送線路162の側においても、上記第2のIF多重信号(中間周波数多重波信号)74の他に、上記不要波信号である周波数((fLO1+fLO2−fLO3)+fIF1e)の成分が、周波数ミキサ部12aに入力されて、正常な周波数ダウンコンバートができなくなる。よって、ダウンコンバートされた出力信号のCN品質を劣化させてしまう。
これに対し、この実施形態では、第1のフィルタ172で所望信号である第2のIF多重信号(中間周波数信号)74を選択,濾波することによって、第2の周波数コンバートを、正常にシングルサイドバンドのダウンコンバートとして動作させることができる(効果2)。
上記2つの効果の結果、特性が良好な第2の周波数ダウンコンバートを行うことが可能となり、第2のダウンコンバートによるCN劣化を低減できる。
なお、図9Aに示すように、第2の周波数ダウンコンバート部をなす基準信号再生/周波数変換回路12Nにおいては、周波数ミキサ部12aの出力側には、基準信号を抽出するフィルタ177を備えたトラップ回路196Nが接続されている。このトラップ回路196Nは、基準信号を入力側に帰還する帰還回路をなし、上記周波数ミキサ部12aの出力側に漏れてきた基準信号74cの成分をトラップして、周波数ミキサ部12aに帰還する。これにより、フィードバックされた上記基準信号74cは上記周波数ミキサ部12aの局部発振源として活用することができる。よって、上記周波数ミキサ部12aの周波数変換利得を向上させて、周波数ミキサ部12aの入出力特性に関し線形動作領域を拡張し周波数帯域幅を広げ、無線伝送距離を拡大することができる。
さらに、図9Aに示すように、基準信号再生/周波数変換回路12Nにおいて、周波数ミキサ部12aの入力側にアイソレータ(または減衰器)162を挿入することにより、上記基準信号再生/周波数変換回路12N中の再生ループ169の帰還量を低減することができる。これにより、上記再生ループ169を負帰還化でき、不要発振波を無くし、上記周波数変換回路12Nを正常に動作させることができる。
また、図9Bに示すように上記周波数ミキサ部12aは、ソース接地またはエミッタ接地を用いたマイクロ波トランジスタ123とウイルキンソン型電力合成器127と入力回路121、および出力回路125Nを備えたゲート注入型またはベース注入型ミキサ部としてもよい。この電力合成器127、入力回路121およびマイクロ波トランジスタ123は前述の第2実施形態の図4(B)に示す合成器127、入力回路121およびマイクロ波トランジスタ123と同構成である。また、出力回路125Nは、図4(B)の出力回路125の短絡回路126に替えて、図9Bに示す短絡回路126Nを備えた。また、図9Bに示すように、電力分配器161は電力合成器127と同じ構成である。
この構成によれば、特に、上記電力分配器161のポートアイソレーション、信号入力ポートと局部発振信号入力ポートをなす電力合成器127のポートアイソレーションにより、上記再生ループ169の帰還量を少なくすることによって、上記再生ループ169を安定化できる。しかも、入力回路121からの信号をマイクロ波トランジスタ123のベース側またはゲート側から入力する構成とすることで、周波数ミキサ部12aは増幅機能も有することになる。よって、周波数ミキサ部12aは、変換利得が高く、不要発振等の少ない安定した周波数変換が可能となる。
加えて、上記周波数ミキサ部12aは、中間周波数信号波を少ない基準信号源パワーで周波数変換できる。このため、無線伝送距離も拡大することができ、無線伝送距離を延長できる。つまり、再生される基準信号74cのパワーが小さくなっても、少ない基準信号パワーで、低損失の周波数変換が可能であり、CN(キャリア対雑音比)の高い良好な品質の周波数変換が可能となる。
加えて、上記構成の無線受信装置によれば、第1のダウンコンバート後に、発生している不要波信号を、第2のダウンコンバートの前段階において、第1のフィルタ172が除去できる。このため、第1のフィルタ172から中間周波数アンプ159に伝送される信号を、伝送すべき信号である所望の中間周波数多重信号に限定することが可能となる。これにより、第2のフィルタ171で上記中間周波数多重信号の中から基準信号のみを抽出できる。よって、増幅器180は上記基準信号のみを忠実に増幅することができ、雑音成分や不要波成分の少ない基準信号を再生することができる。加えて、第1の経路P1中に広帯域フィルタを持たないので、第1の経路P1と第2の経路P2で構成されるループL1は、広帯域の共振器が構成されず、ある周波数で発振する正帰還ループとなることも無く安定したループとすることができる。
なお、この第4実施形態では、図9Bに示す周波数ミキサ部12aは出力回路125Nに替えて、図10に示すように短絡回路126Nを短絡回路LC10の後段に配置した出力回路125Mを備えてもよい。
(第5の実施の形態)
次に、図14を参照して、この発明の第5の実施の形態を説明する。この第5実施形態では、マイクロ波帯無線送信装置9の構成は前述の第4実施形態と同じ構成である。また、この第5実施形態は、前述の第4実施形態のマイクロ波帯無線受信装置10Nに替えて、図14に示すマイクロ波帯無線受信装置10Uを有する。
このマイクロ波帯無線受信装置10Uは、周波数変換部112の構成はマイクロ波帯無線受信装置10Nと同様である。一方、第2のダウンコンバータとしての基準信号再生/周波数変換回路12Uが、第4実施形態での基準信号再生/周波数変換回路12Nと異なる。
図14に示すように、この第5実施形態が備えるマイクロ波帯無線受信装置10Uの基準信号再生/周波数変換回路12Uは、第2の経路P2において、2つの伝送路163の間に、フィルタ171a、増幅器180a、フィルタ171b、増幅器180bが順に直列接続されている点が、前述の第4実施形態の基準信号再生/周波数変換回路12Nと異なる。また、この第5実施形態では、基準信号再生/周波数変換回路12Uは、増幅器159を分配器161と伝送路162との間に挿入した点が、前述の基準信号再生/周波数変換回路12Nと異なる。前述の基準信号再生/周波数変換回路12Nでは、増幅器159をフィルタ172と分配器161との間に接続している。
この第5実施形態の基準信号再生/周波数変換回路12Uでは、第1のフィルタ172は、周波数変換/受信回路11の周波数ミキサ119からの中間周波数多重信号である第2のIF多重信号74を通過させる。この第2のIF多重信号74は、電力分配器161で第1の経路P1と第2の経路P2とに2分配される。第1の経路P1では増幅器159によって第2のIF多重信号74が増幅され、可変減衰器をなす伝送路162を経由してミキサ部12aへ入力される。一方、第2の経路P2では、第2のIF多重信号74はフィルタ171aでもって基準信号が抽出され、増幅器180aで増幅される。この増幅された基準信号は、次のフィルタ171bと増幅器180bによってさらに抽出されて増幅される。
つまり、この実施形態では、フィルタ171a,増幅器180aとフィルタ171b,増幅器180bの2段構成によって抽出,増幅された基準信号をミキサ部12aに入力している。
この第5実施形態では、前述の第4実施形態と同様に、無線多重信号73を第1のダウンコンバートした後に、第1のフィルタ172により、第2のダウンコンバートの前段階で不要波成分を除去することができる。したがって、電力分配器161への信号を伝送すべき信号である第2のIF多重信号74に限定することが可能となる。よって、第2のフィルタをなすフィルタ171a,171bでもって上記第2のIF多重信号74の中から基準信号74cのみを抽出することができる。よって、増幅器180a,180bによって上記基準信号74cのみを忠実に増幅することができ、雑音成分や不要波成分の少ない基準信号を再生できる。
また、この第5実施形態では、ミキサ部12aへの第1の経路P1中に、増幅器159を有しているので、第1の経路P1と第2の経路P2とで構成されるループL1(169)は、上記増幅器159のアイソレーション作用によって、負帰還ループとなり安定したループを得ることができる。さらに、上記増幅器159の増幅度と可変減衰器をなす伝送路162および増幅器180a,180bの増幅度でもって、所望信号である第2のIF信号74aと基準信号74cとのバランスを調整可能である。つまり、(第2のIF信号74aの電力)/(基準信号74cの電力)を小さくすることによって、上記ミキサ部12aの局部発振ポートを、入力信号である所望信号つまり第2のIF信号74aに比較して局発信号である基準信号74cを大電力として駆動することができる。よって、ミキサ部12aを理想的なミキサの動作に近づけることができ、良好な周波数変換を実現できる。この結果、特性が良好な第2の周波数ダウンコンバートを実現することが可能となり、第2のダウンコンバートによるCN(キャリア対雑音比)の劣化を小さくすることができる。
(第6の実施の形態)
次に、図15を参照して、この発明の第6実施形態について説明する。この第6実施形態は、前述の第5実施形態のマイクロ波帯受信装置10Nに替えて、図15に示すマイクロ波帯無線受信装置10Vを有する。
このマイクロ波無線受信装置10Vは、周波数変換部112の構成はマイクロ波帯無線受信装置10Nと同様である。一方、第2のダウンコンバータとしての基準信号再生/周波数変換回路12Vが、第4実施形態での基準信号再生/周波数変換回路12Nと異なる。
図15に示すように、この第6実施形態が備えるマイクロ波帯無線受信装置10Vの基準信号再生/周波数変換回路12Vは、前述の第4実施形態での基準信号再生/周波数変換回路12NにおけるループL1に替えて、ループL2とL3を有する点が、第4実施形態と異なる。
すなわち、図15に示すように、上記基準信号再生/周波数変換回路12Vは、中間周波数アンプ159の出力側に接続された第1の分配器161aと、この第1の分配器161aに接続された第1〜第3の経路K1〜K3を有する。
この第1の経路K1は、順に直列接続された第1経路フィルタ173、可変減衰器162b、第1のミキサ部12bを有する。また、第2の経路K2は、順に直列接続された基準信号抽出フィルタ171、増幅器180c、第2の分配器161bを有する。また、第3の経路K3は、順に直列接続された第3経路フィルタ174、可変減衰器162a、第2のミキサ部12aを有する。
上記第2の分配器161bと第1のミキサ部12bとの間には、第4の経路K4が接続され、この第4の経路K4は第1の増幅器180bを有する。また、上記第2の分配器161bと第2のミキサ部12aとの間には、第5の経路K5が接続され、この第5の経路K5は第2の増幅器180aを有する。なお、第1のミキサ部12aはミキサMX1と帰還回路196aを有し、第2のミキサ部12bはミキサMX2と帰還回路196bを有する。この帰還回路196a,196bは上述した図9Aのトラップ回路196Nと同様の構成である。
また、上記第1、第2、第4の経路K1、K2、K4がループL2を構成し、上記第2、第3、第5の経路K2、K3、K5がループL3を構成している。
そして、上記第2のミキサ部12aと第2の出力端子500aとの間には、フィルタ175a、増幅器195が順に直列接続されている。また、上記第1のミキサ部12bと第1の出力端子500bとの間には、フィルタ175b、増幅器199が順に直列接続されている。
この第6実施形態では、無線多重信号73を周波数変換部112によって第1のダウンコンバートして、基準信号再生/周波数変換回路12Vに入力する。この基準信号再生/周波数変換回路12Vでは、まず、フィルタ172でもって、第2のIF多重信号74を通過させたのち中間周波数アンプ159で増幅する。その後、この第2のIF多重信号74は、第1の分配器(電力分配器)161aによって、第1の経路K1と第2の経路K2と第3の経路K3とに3分配される。
第2の経路K2では、基準信号抽出フィルタ171で基準信号74cを抽出する。この抽出された基準信号74cは増幅器180cで増幅され、第2の分配器161bによって、第4の経路K4と第5の経路K5に分配される。上記基準信号74cは、第4の経路K4の第1の増幅器180bで増幅されて、第1のミキサ部12bに伝送され、第1のミキサ部12bの局部発振信号となる。また、上記基準信号74cは、第5の経路K5の第2の増幅器180aで増幅されて、第2のミキサ部12aに伝送され、第2のミキサ部12aの局部発振信号となる。
一方、第1,第3の経路K1,K3では、第2のIF多重信号74は、第1経路フィルタ173と第3の経路フィルタ174によって、図16Cに示すように、帯域分割される。これにより、第2のIF信号74aは第2のIF信号74a−aと第2のIF信号74a−bとに帯域分割される。つまり、第2のIF多重信号74は、図16Cに示すように、第1経路フィルタ173の通過特性と第3経路フィルタ174の通過特性に応じて分波される。なお、図16A,図16Bは図12A,12Bと同じ図であり、無線多重信号73,第2のIF多重信号74を表す周波数特性図である。
図17Aにフィルタ173で分波された第2のIF信号74a−aの周波数配置を示し、図17Bに第3経路フィルタ174で分波された第2のIF信号74a−bの周波数配置を示す。なお、図17A,図17Bでは、基準信号抽出フィルタ171の透過特性によって基準信号74cが抽出される様子も併せて示している。
図17Aに示すように、第1経路フィルタ173で分波された信号には、所望信号の一部としての第2のIF信号74a−aと基準信号74cを含んでいる。また、図17Bに示すように、第3経路フィルタ174で分波された信号には、所望信号の一部としての第2のIF信号74a−bを含んでいるが、基準信号74cは含んでいない。図17A,図17Bに示すように、基準信号74cの周波数は(fLO1+fLO2)−fLO3であり、第2のIF信号74a−aの周波数は(fLO1+fLO2−fLO3)−fIF1aであり、第2のIF信号74a−bの周波数は(fLO1+fLO2−fLO3)−fIF1bである。
具体例としては、図8に示す変調波信号5aと5bとして、地上デジタル放送信号(周波数fIF1a)と衛星放送信号(周波数fIF1b)を用いた場合、第1経路フィルタ173では、上記基準信号74cと上記地上デジタル放送信号に対応する第2のIF信号74a−aとが選択,通過される。一方、第3経路フィルタ174では、上記衛星放送信号に対応する第2のIF信号74a−bが選択,通過される。
そして、上記第2のIF信号74a−a,74a−bは、減衰器162a,162bでレベル調整された後、第2,第1のミキサ部12a,12bの入力信号となり、第5,第4の経路K5,K4からの抽出された上記局部発振信号により第2の周波数変換がなされる。この第2の周波数変換によって、図17Cに示すように、図8のミリ波帯無線送信装置9への入力信号波である地上波信号(周波数fIF1a)に対応する変調波信号76aおよび衛星放送信号(周波数fIF1b)に対応する変調波信号76bが復調される。
尚、上記減衰器162a,162bは、0.1dB〜3dB程度の弱い減衰器であるが、アイソレータでも構わない。上記減衰器やアイソレータにより、第1,第2の経路K1,K2によってできるループL2、および第1,第3の経路K1,K3によってできるループL3を負帰還ループに近づけることができる。これにより、上記基準信号74cによる第2の周波数変換をより安定に行うことが可能となる。
加えて、この第6実施形態では、上記第1経路フィルタ173および第3経路フィルタ174により第2のIF多重信号74を帯域分割して、第2の周波数変換を狭帯域で行う構成であるので、周波数変換に伴う高調波歪み、とりわけ2次,3次歪みの影響を低減できる。さらに、第2のミキサ部12a,第1のミキサ部12bにおける出力部の帰還回路196a,196bを、インダクタ(L)とキャパシタ(C)で構成した回路とすることで帯域制限することができる。これにより、ミキサ部12a,12bの変換利得を大きくでき、伝送距離を大きくすることができる。
さらに、この第6実施形態では、第2のIF多重信号74を3分配する上記第1の分配器161aの後段に、増幅器180a,180b,180cを配置して、周波数ミキサ部12a,12bにおいて、局部発振部を共用化しており、かる、上記増幅器180a,180bを基準信号74cを2分配する第2の分配器161bの後段に配置している。これにより、上記増幅器180a〜180cによるアイソレーション作用によって、各第2のIF多重信号74a−a,74a−bが、ミキサ部12a,12bの局部発振端子から漏れること防止できる。
尚、上記第6実施形態では、入力変調波信号5a,5bとして、地上放送波と衛星放送波を採用して説明したが、二つの衛星放送波や、衛星放送波とCATV(Cable Television)信号等の組み合わせであっても構わないし、その他、例えば無線LAN等のIF(中間周波数)段階またはRF(高周波)での変調波信号等を入力変調波信号としてもよい。また、上記実施形態では、ミリ波帯の無線信号を送受信する無線通信システムについて説明したが、無線信号はミリ波帯に限るものではなく、この発明はミリ波帯を含むマイクロ波の周波数帯域の無線信号を送受信するシステムにおいて適用できる。
(第7の実施の形態)
次に、この発明の第7実施形態を説明する。この第7実施形態は前述の第6実施形態の変形例に相当する。
すなわち、この第7実施形態は、図15に示す第1の経路K1が有する第1経路フィルタ173を高域通過フィルタとし、第3の経路K3が有する第3経路フィルタ174を低域通過フィルタとした。これにより、上記ループL2とL3のサイズを小さくし回路形状を小さくして、ループL2,L3の発振周波数を高くすることによって、ループL2,L3の動作をより安定化できる。これについて、以下に説明する。
図18Cに、第2のIF多重信号74における、各フィルタ173,174による分波による信号の分離領域を示す。つまり、フィルタ173は点線で示す通過特性を示し、フィルタ174は一点鎖線で示す通過特性を示す。なお、図18Aは無線多重信号73を表す周波数配置図であり、図18Bは第2のIF多重信号74を表す周波数配置図である。
図19Aに示すように、第1の経路K1の第1経路フィルタ(高域通過フィルタ)173はその透過特性によって基準信号74cと第2のIF信号74a−aを通過させる。一方、図19Bに示すように、第3の経路K3の第3経路フィルタ(低域通過フィルタ)174はその透過特性によって第2のIF信号74a−bのみを通過させる。なお、図19A,図19Bでは、第2の経路K2のバンドパスフィルタ171が基準信号74cを抽出する様子も合わせて示している。また、図19Cは、図17Cと同じ図であり、地上波信号(周波数fIF1a)に対応する変調波信号76aおよび衛星放送信号(周波数fIF1b)に対応する変調波信号76bを示している。
次に、上記ループL2,L3のサイズの小型化、回路形状の小型化について説明する。図20Aは第1経路フィルタ(高域通過フィルタ)173の基本等価回路(共振器185a)を示し、図20Bは第3経路フィルタ(低域通過フィルタ)174の基本等価回路(共振器185b)を示し、図20Cは基準信号抽出フィルタ(狭帯域通過フィルタ)171の基本等価回路(共振器185c,185d)を示している。なお、各フィルタでの不要波の抑圧度については必要により段数を増やすことで調整できる。
図20Cに示すように、第2の経路K2の基準信号74cの抽出に用いる狭帯域通過フィルタ171は、共振器185c,185dをなすキャパシタンス(C)やインダクタンス(L)により構成でき、狭帯域の単純な構成のバンドパスフィルタとすることができる。この狭帯域なバンドパスフィルタは、小型チップ部品や積層基板技術およびIC技術等を用いることにより小型な構成にできる。また、図20Aに示すように、第1の経路K1の第1経路フィルタ(高域通過フィルタ)173は、基本的には共振器185aのみで構成でき、小型チップ部品や積層基板技術やIC技術等を用いることにより小型な構成にできる。また、図20Bに示すように、第3の経路K3の第3経路フィルタ(低域通過フィルタ)174も、基本的には共振器185bのみで構成でき、小型チップ部品や積層基板技術やIC技術等を用いることにより小型な構成にできる。
すなわち、図20A,20Bに示すように、第1,第3の経路K1,K3のように広帯域特性が必要なところに、高域通過フィルタ173,低域通過フィルタ174を用いることにより、各フィルタ173,174を構成する共振器185a,185bを少なく単純化することができる。これにより、上記ループL2およびループL3のサイズを小さくし、かつ、不要共振等を抑圧できる。
ここで、バンドパスフィルタ(または低域通過フィルタ)172は、図18Bに示すように、第2のIF多重信号74を変換する前に、不要波から第2のIF多重信号74を分離している。このため、第1,第3の経路K1,K3を高域通過フィルタ173,低域通過フィルタ174で簡素化すると共に、高域通過フィルタ173,低域通過フィルタ174で片側帯域分割する構成とした場合にも、所望の第2のIF信号74a−a,74a−bのみを通過,分離できる。
したがって、この第7実施形態によれば、第2のIF信号74a−a,74a−bと基準信号74cを不要波信号が抑圧されていると共に雑音が少ない所望の信号とすることができ、かつ、安定化させた状態のループL2とL3とで第2の周波数変換を行うことができる。よって、良好な周波数変換特性が実現可能となる。