JP4137227B2 - レーザ発振器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はレーザ光を発振させるレーザ発振器に係り、とりわけQスイッチ素子によって尖頭出力の高いパルス状のレーザ光を発振させることができるレーザ発振器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、レーザ発振器として、レーザ光を発生させる細長状固体増幅媒質と、固体増幅媒質の側方または端面と対向して配置され、固体増幅媒質に対して励起光を発光する発光装置とを備えたものが知られている。
【0003】
このようなレーザ発振器において、発光装置からの発光励起光が固体増幅媒質に対して入射すると、この励起光の作用を受けて固体増幅媒質よりレーザ光が誘導放出される。レーザ光はその後、出力ミラーと全反射ミラー間で多重反射して増幅された後、出力ミラーから外方へ放出される。
【0004】
ところでレーザ発振器の光路中に石英ガラス等からなるQスイッチ素子を配置し、Qスイッチ素子を高周波電力によって周期的にON・OFFしてレーザ光の発振を抑制したり急速に立ち上がらせることにより、尖頭出力の高いパルス状のレーザ光を形成するレーザ発振器が開発されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、従来からレーザ光の光路中にQスイッチ素子を配置してパルス状のレーザ光を形成するレーザ発振器が開発されているが、Qスイッチ素子を高い周期でON・OFFすると、石英ガラスに歪みが残留するためにQ値が十分に上がらず、発振効率が低下するため、ピークパワーも低くなる。そして、このように励起が十分に行なわれていない状態では発振を抑制するのに必要とされる高周波電力は小さくても十分であるが、この点は全く考慮されることなく高い周期でON・OFFする場合でも高い高周波電力をそのまま用いることがある。
【0006】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、パルス状レーザ光の周期に合わせて適切にQスイッチ素子を作動させることができるレーザ発振器を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、レーザ光を発生させる細長状固体増幅媒質と、固体増幅媒質に対して励起光を発光する発光装置と、固体増幅媒質の軸線方向に沿って固体増幅媒質を挾むように設けられた全反射ミラーおよび出力ミラーと、全反射ミラーと出力ミラーとの間のレーザ光の光路中に配置されたQスイッチ素子と、Qスイッチ素子に高周波電力をパルス状に印加してパルス状のレーザ光を生じさせるQスイッチドライバと、Qスイッチドライバに接続され、Qスイッチドライバによりパルス状に印加される高周波電力を制御する制御装置と、を備え、制御装置はパルス状に印加される高周波電力が各レーザ光の発振時に対応するカット部分と、カット部分間における立ち上がり部を含む投入部分とを有し、Qスイッチ素子のON・OFF動作の周波数が大きくなるにつれて徐々に必要な高周波電力が低下する関係に基づいてQスイッチドライバを制御することを特徴とするレーザ発振器である。
【0008】
本発明によれば、発光装置から固体増幅媒質に対して励起光を発光させると、この励起光の作用を受けて固体増幅媒質よりレーザ光が誘導放出される。ここで、制御装置によってQスイッチドライバーよりQスイッチ素子へ高周波電力をパルス状に印加すると、Qスイッチ素子が周期的にON・OFF動作し、レーザ光の発振を抑制したり急速に立ち上がらせることにより、出光ミラーからはパルス状のレーザ光が放出される。この場合、高周波電力は時間とともに徐々に大きくなるよう制御されるので、Qスイッチ素子のON・OFF動作が高周波数で行なわれる場合は、高周波電力のカット時に高周波電力の値を低く抑えることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
図1乃至図3は、本発明によるレーザ発振器の一実施の形態を示す図である。まず図2によりレーザ発振器の概略について説明する。
【0011】
図2に示すように、レーザ発振器10は、レーザ光を発生させる例えばYAGロッドからなる細長状固体増幅媒質11と、固体増幅媒質11の側方に配置され、固体増幅媒質11に対して励起光を発光するランプ等の発光装置12とを備えている。
【0012】
また固体増幅媒質11の軸線方向L(レーザ光の光路)に沿って、固体増幅媒質11を挾むように全反射ミラー14と出力ミラー13とが配置されている。さらに固体増幅媒質11と全反射ミラー14との間の光路L中に、音響光学Qスイッチ素子(以下、Qスイッチ素子)15が配置されている。
【0013】
このQスイッチ素子15は石英ガラス等からなり、超音波とレーザ光の相互作用による回折損失を利用してON・OFF動作するようになっている。このQスイッチ素子15にはQスイッチ素子15に対してパルス状に高周波電力を印加するQスイッチドライバ16が接続されており、このQスイッチドライバ16は制御装置17によって、高周波電力が時間とともに徐々に大きくなるよう制御されるとともに、その立ち上がりカーブを自由に設定できるようにされる。
【0014】
なおQスイッチ素子15は固体増幅媒質10と全反射ミラー14との間に配置する必要はなく、固体増幅媒質10と出力ミラー13との間に配置してもよい。
【0015】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
図2において、発光装置12から励起光が固体増幅媒質11に対して発光され、この励起光の作用を受けて固体増幅媒質11よりレーザ光が誘導放出される。ここで、Qスイッチドライバ16から高周波電力がQスイッチ素子15に印加されると、Qスイッチ素子媒体中に周期的な屈曲率の変動を生じて回析格子が形成され、ブラッグの条件と一般に呼ばれる条件を満たす角度で入射したレーザ光は、回析による散乱損失を受けるためにレーザの発振が抑制され、固体増幅媒質11内にエネルギーが蓄積される。この状態で高周波電力を急速にOFFすることにより、レーザ発振が急速に立ち上がって出力ミラーからレーザ光が放出される。
【0016】
そこでこの場合、制御装置17がQスイッチドライバ16を制御し、Qスイッチドライバ16から高周波電力がパルス状にQスイッチ素子15に印加される。この場合、このパルス状の高周波電力を調整することにより、Qスイッチ15がON・OFF動作して、出力ミラーからパルス状のレーザ光が放出される。
【0017】
次に図1(a)(b)により高周波電力の調整内容について説明する。図1(a)(b)に示すように、Qスイッチドライバ16からQスイッチ素子15に印加される高周波電力は、時間とともに0から徐々に直線的に大きくなるよう調整される。図1(a)(b)において、縦軸は高周波電力(RFP)を示し、横軸は時間(t)を示す。
【0018】
具体的には図1(a)(b)に示すように、まず、最初にRFPが瞬間的にカットされ、カットの待機時間を10マイクロ秒とする。次にRFPが時間とともに徐々に大きくなるよう直線的に上昇し、立ち上がり時間を30マイクロ秒とする。
【0019】
ここでQスイッチ素子15を1KHzでON・OFF動作させる場合は(図1(a))、高周波電力がカットされている時間が10マイクロ秒、RFPが投入されている時間が990マイクロ秒となる。すなわち、RFPの立ち上がり時間を遅くしても、Qスイッチ素子15のパルス間でRFPは100%の電力となるよう十分に立ち上がる。
【0020】
このように、Qスイッチ素子15に印加される高周波電力(RFP)を制御した場合、Qスイッチ素子15はRFPに対応してON・OFF動作を行なう。このとき図3に示すように、固体増幅媒質11内においてレーザ光励起が連続して行なわれている場合、Qスイッチ素子15はON動作時にレーザ光の発振を抑制し、固体増幅媒質11内にエネルギを蓄える。次にQスイッチ素子15がOFF動作を行なうと、固体増幅媒質11内のエネルギが急激に放出され、固体増幅媒質から出たレーザ光はパルス状のレーザ光となって、出力ミラー13から放出される。
【0021】
次にQスイッチ素子15を50kHzでON・OFF動作させる場合は(図1(b))、10マイクロ秒のカット時間の後に10マイクロ秒のRFP投入時間を設け、その後再びRFPをカットする。
【0022】
Qスイッチ素子15を高い繰り返しによりON・OFFする場合、すなわちQスイッチ素子15の動作を固体増幅媒質11の励起寿命より短い周期といった高い周波数でON・OFF動作した場合、固体増幅媒質11内におけるレーザ光の励起が十分大きくならない。このため、例えば33%程度のRFPが印加されるだけで、Qスイッチ素子15はレーザ光の発振を十分制御することができる。
【0023】
ここでQスイッチ素子15のON・OFF動作の周波数と、このときレーザ光の発振を抑制するのに必要なRFPとの関係を図4に示す。図4に示すように、周波数1kHzの場合にレーザ光の発振を抑制するのに必要とされるRFPを100%とすると、周波数が大きくなるにつれて必要RFPの大きさは徐々に小さくなる。例えば図4に示すように、周波数が1kHzのとき必要RFPは100%であり、周波数が10kHzのとき必要RFPは60%であり、周波数が20kHzのとき必要RFPは40%となる。また周波数が50kHzのとき必要RFPは上述のように33%となる。
【0024】
上述のように周波数が50kHzのとき、レーザ光の発振を抑制するのに必要とされるRFPは約33%となる。一方、RFPの立ち上がり時間は前述したように30マイクロ秒に設定されているので、50kHzによってQスイッチ素子15をON・OFF動作させると、RFPが丁度33%まで立ち上がった時点で、次のRFPカットのタイミングがくることになる。従ってRFPはその後33%以上に上昇することはない。このRFP33%の値は、レーザ光の発振を抑制するのに十分な値となっているので、レーザ光の発振を確実に抑えることができるとともに、不必要なRFPの印加を防ぐことができる。
【0025】
ここで、図7によりQスイッチ素子15に対してRFPを徐々に大きくすることなく急激に印加する比較例を示す。図7に示すように、RFPを急激に100%印加した場合、例えばQスイッチ素子15を50kHzのような高い周波数で動作させると(図7(b))、RFPを必要以上に過大に印加することになる。
【0026】
なお上記実施の形態においてRFPを0から徐々に直線的に大きくなよう制御する例を示したが、これに限らず例えばRFPをまず立ち上がり時に十分短い時間でレーザ光の発振を制御することが可能な値まで立ち上げ、その後20マイクロ秒で100%の出力まで徐々に直線的に大きくなるよう制御してもよい(図5(a)(b))。
【0027】
また、例えば周波数が50kHzの時のレーザ光発振制御に必要となるRFPが低周波数(1kHz)のRFPに対して60%であり、周波数25kHzの時の必要なRFPが低周波数のRFPに対して100%である場合には、RFPのカット時にRFPが丁度これらの値となるような傾きを定めてもよい。またRFPは直線的に徐々に大きくする必要はなく、曲線状に大きくしてもよい(図6)。
【0028】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、Qスイッチ素子を高周波数でON・OFF動作する場合、カット時においてQスイッチ素子に高周波電力の値を低く抑えることができる。一般に高周波数でON・OFF動作する場合、レーザ光発振を抑制するために必要となる高周波電力は小さい値ですむ。このため、高周波数でON・OFF動作する際、高周波電力の値を低く抑えることにより、レーザ光発振を確実に抑制しながら不必要な高周波電力の印加を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるレーザ発振器の一実施の形態を示すQスイッチ素子に印加される高周波電力の波形を示す図。
【図2】レーザ発振器を示す概略図。
【図3】Qスイッチ素子に印加される高周波電力、固体増幅媒質の励起状態およびパルス状レーザ光を示す図。
【図4】Qスイッチ素子の動作の周波数と高周波電力との関係を示す図。
【図5】Qスイッチ素子に印加される高周波電力の他の波形を示す図。
【図6】Qスイッチ素子に印加される高周波電力の更に他の波形を示す図。
【図7】Qスイッチ素子に印加される高周波電力の比較例の波形を示す図。
【符号の説明】
10 レーザ発振器
11 固体増幅媒質
12 発光装置
13 出力ミラー
14 全反射ミラー
15 Qスイッチ素子
16 Qスイッチドライバ
17 制御装置
Claims (3)
- レーザ光を発生させる細長状固体増幅媒質と、
固体増幅媒質に対して励起光を発光する発光装置と、
固体増幅媒質の軸線方向に沿って固体増幅媒質を挾むように設けられた全反射ミラーおよび出力ミラーと、
全反射ミラーと出力ミラーとの間のレーザ光の光路中に配置されたQスイッチ素子と、
Qスイッチ素子に高周波電力をパルス状に印加してパルス状のレーザ光を生じさせるQスイッチドライバと、
Qスイッチドライバに接続され、Qスイッチドライバによりパルス状に印加される高周波電力を制御する制御装置と、を備え、
制御装置はパルス状に印加される高周波電力が各レーザ光の発振時に対応するカット部分と、カット部分間における立ち上がり部を含む投入部分とを有し、Qスイッチ素子のON・OFF動作の周波数が大きくなるにつれて徐々に必要な高周波電力が低下する関係に基づいてQスイッチドライバを制御することを特徴とするレーザ発振器。 - Qスイッチは全反射ミラーと固体増幅媒質との間に配置されていることを特徴とする請求項1記載のレーザ発振器。
- 制御装置は高周波電力の立ち上がり部の形状を可変とすることができる請求項1または2記載のレーザ発振器。
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