JP4134422B2 - ロッカーアーム本体及びロッカーアーム - Google Patents

ロッカーアーム本体及びロッカーアーム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の動弁系に使用され、カムの駆動をバルブに伝えるロッカーアーム本体及びロッカーアームに関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
近年、内燃機関の動弁系の慣性重量の低減化の要請があり、このため、ロッカーアームの軽量化が望まれているが、鍛造や鋳造では、軽量化を達成するために薄肉の湾曲形状とすること等の最適設計が困難であり、結局、軽量化が困難であるという問題があった。また、鍛造や鋳造による成形後の後加工等も煩雑であり、製造コストが高いという問題もあった。
【0003】
そこで、プレス成形によりロッカーアームの本体を製造することが提案されている。一般にプレス成形に用いられる軟鋼やアルミニウム合金等の延性材料は、圧縮によっては破壊しないので、圧縮による破壊は考慮する必要がない。したがって、強度上、曲げの圧縮側に一対の側壁を配した溝形に形成する、すなわち上向きに開放する溝形に形成することが通例である。
【0004】
このように上向きに開いた溝形とするのは、ロッカーアーム本体の一端部に下方から当接するバルブクリアランス調整用のラッシュアジャスタとの干渉を避けなければならないという要請があるからでもある。
一方、図10(a)を参照して、上記のように上向きに開いた溝形をなすロッカーアームの本体91の他端には下方からバルブステム92(バルブの棒状の部分をいう)の頂部が当接するが、このバルブステム92の頂部によりロッカーアームが左右にガイドされないので、ロッカーアームの挙動が不安定となり、ロッカーアームがバルブステム92から外れたりするおそれがある。
【0005】
そこで、バルブを受ける部分を別部品で構成し残りの部分に接合する2ピース構造も考えられるが、部品点数が増加したり、接合工数が増加したりする。また、別部品を組み合わせるため完成品の寸法精度を確保することが困難である。
ところで、バルブステムを受ける部分として、図10(b)に示すように、一対の側壁93,94間に、折り返された部分95,96を含む下向きに開く溝形部97を設ける構造を採用したものがあるが(特開平4−259611号公報)、溝形部97の内隅部がR状となり、バルブステムを受けるための平面を確保できないので、バルブステムを安定して案内することができないという問題がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は強度がありバルブステムを安定して案内することのできる安価なロッカーアーム本体及びロッカーアームを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための課題解決手段として、請求項1記載の発明の態様は、底壁部の両側にプレス成形により折り曲げられた一対の側壁を対向させて上向きに開放する第1の溝形部と、この第1の溝形部の一対の側壁の上端からプレス成形によりそれぞれ外側に折り返され下方に延びる一対の折り返し壁と、これら一対の折り返し壁の下端をそれぞれ内向きに折り曲げて形成された一対の内向きフランジとを備え、これら内向きフランジの端面間でバルブステムの左右移動が規制され、第1の溝形部の底壁部を天壁部として、この天壁部と上記一対の折り返し壁とでバルブステムを受けるために下向きに開放する第2の溝形部が構成され、各側壁と対応する折り返し壁とが、折り返し壁のスプリングバックによる外側への拡がりを防止するようにプロジェクション溶接されており、上記折り返し壁の折り返しの起点では、折り返し壁が湾曲状をなして対応する側壁に連続しており、各側壁と対応する折り返し壁とがプロジェクション溶接された部分の上方において折り返しの内側に空間が形成されるように、折り返しの内側の面が湾曲状をなしていることを特徴とするものである。
【0008】
第1の溝形部の隅部では底壁部と側壁部との間にプレス成形に必要な曲げRを確保する必要があるので、隅部がR状となる。一方、第2の溝形部では、上記のような曲げRを確保する必要がなく、バルブステムを支持するための平坦面を広くできる結果、バルブステムを安定して支持することができる。また、折り返し壁の長さを所望に設定することにより、第2の溝形部の深さを所望に設定できる。すなわち、バルブステムの第2の溝形部からの離脱を防止できるのに必要最小限の深さで良いことになり、バルブステムの長尺化を招くことがない。
【0009】
上記では第2の溝形部を形成するための折り返し壁は第1の溝形部の側壁部から外側に折り返される。このため、折り返し壁間の幅が広くなり、バルブステムの左右移動を規制する幅が広くなるので、バルブステムが多少左右にがたつくおそれがある。もともと、バルブステムの径はカム係合用のローラを支持するために必要なロッカーアーム本体の幅と比較して小さい。仮に、ロッカーアーム本体の幅自体を上記第1及び第2の溝形部を形成する部分で相対的にせまくなるように絞るとすると、成形が困難となるうえに強度も弱くなるおそれがある。
これに対して、本態様では、上記一対の折り返し壁の下端をそれぞれ内向きに折り曲げて形成された一対の内向きフランジを備え、これら内向きフランジの端面間でバルブステムの左右移動が規制されるので、ロッカーアーム本体の幅を絞ることなく簡単な曲げ加工にてバルブステムを左右方向に規制する幅を狭めることができる。
【0010】
また、各側壁と対応する折り返し壁とを、折り返し壁のスプリングバックによる外側への拡がりを防止するようにプロジョクション溶接してあるので、折り返し壁がスプリングバック等の影響で外側に拡がることを防止することができると共に、全体としての強度を向上さることができる。
また、上記折り返し壁の折り返しの起点では折り返し壁が湾曲状をなして対応する側壁に連続しており、しかも上記のようにプロジェクション溶接により折り返し壁の拡がりを防止されていると、折り返し壁の起点において曲げRを大きくしておいても良くなり、曲げ加工時の割れ等の発生を防止することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1の参考の形態のロッカーアームの取り付け状態を示す概略図である。図1を参照して、本ロッカーアーム1はカムフォロワ型のロッカーアームであり、ロッカーアーム本体2と、このロッカーアーム本体2の中央部に支軸3を介して取り付けられ、カム20に係合するローラ4とを有している。ロッカーアーム本体2は第1及び第2の端部5,6を有している。第1の端部5は、内燃機関のシリンダヘッド7から上方へ延びる支点としてのリフタポスト8の上に受容される。第2の端部6はバルブステム9の上端10に係合している。
【0013】
図1において、16はバルブステム9を持ち上げ方向(すなわちバルブを開放する方向)に付勢する圧縮コイルばねであり、17は圧縮コイルばね16を保持するリテーナスプリングである。
ロッカーアームの斜視図である図2を参照して、ロッカーアーム本体2は、第1の端部5を含み上向きに開放する溝形状をなす主体部2aを有している。また、ロッカーアーム本体2の第2の端部6には、上向きに開いた第1の溝形部2bと、下向きに開いた第2の溝形部2cが設けられている。
【0014】
ロッカーアーム本体2は相対向する第1及び第2の側壁部11,12を備えており、主体部2aの一部では、第1及び第2の側壁部11,12の下端縁同士が底壁部13によって連結されて上向きに開放する溝形が構成され、主体部2aの残りの部分では上下双方に開放している。
上向きに開いた第1の溝形部2bは、第1及び第2の側壁部11,12とこれらの側壁部11,12の下端縁同士を連結する底壁部14により溝形に構成されている。第1及び第2の側壁部11,12はプレス成形により底壁部14から略直角に折り曲げられたものである。また、第1及び第2の側壁部11,12の上端からプレス成形によりそれぞれ外側に折り返された第1及び第2の折り返し壁32,33が、第1及び第2の側壁部11,12の外側面に沿いながら下方に延びている。
【0015】
これら第1及び第2の折り返し壁32,33と、上記第1の溝形部2bの底壁部14により兼用される天壁部15とによって、下向きに開放する上記第2の溝形部2cが構成されている。図3に示すように、第2の溝形部2cの隅部40には、曲げRが不要であり、したがって、隅部40には溝形内に突出する湾曲部がない。
【0016】
図3を参照して、バルブステム9の上端10は第2の溝形部2c内に導入され、天壁部14により受けられると共に左右の第1及び第2の側壁部11,12によって左右方向への移動を規制されている。バルブステム9はシリンダヘッド7から上記の圧縮コイルばね16を貫通して上方へ延びている。この圧縮コイルばね16は、バルブステム9を取り囲んだ状態でシリンダヘッド7とバルブステム9に取り付けられた環状の上記リテーナスプリング17に当接している。リテーナスプリング17の内周部には、バルブステム9の周溝18に嵌め入れられた一対のコッタピン19が、楔状に係合している。
【0017】
再び図1を参照して、ローラ4に係合するオーバーヘッドカム20が回転すると、これにより、ロッカーアーム1が揺動されてバルブステム9が長手方向に動くときにバルブステム9の下方端に位置するバルブ(図示せず)が開いたり、閉じたりするようになっている。リフタポスト8は油圧式のラッシュアジャスタのプランジャにより構成されている。ラッシュアジャスタは内部のオイルの働きにより、自動的にバルブクリアランスを調整するものである。バルブが開くときには、内部のオイルがプランジャが下がらないように作用し、バルブが閉じるときには、内部のリターンスプング(図示せず)の働きでプランジャが微小量上がり、バルブクリアランスがゼロになる。
【0018】
ロッカーアーム本体2は、板金をプレス成形により打ち抜き形成して得られた図4に示すような展開板Aを用いて形成される。すなわち、この展開板Aは、第1の側壁部11を形成するための第1の部分21と、第2の側壁部12を形成するための第2の部分22と、主体部2aの底壁部13を形成するための第3の部分23とを備えている。また、展開板Aは、第1の溝形部2bの底壁部14(すなわち第2の溝形部2cの天壁部15)を形成するための第4の部分24と、第1及び第2の部分21,22からそれぞれ延設された第5の部分25とを備えている。各第5の部分25は第1及び第2の部分と同一平面をなして第4の部分24と反対方向に延びている。図4において、26はローラ4を下方へ突出させるための開口である。29はローラ4の支軸3の両端を支持する支持孔である。
【0019】
展開板Aは、まず、第1の部分21が第1の折り曲げ線27を中心として第3及び第4の部分23,24に対してプレス成形により直角状に折り曲げ形成されると共に、第2の部分22が第1の折り曲げ線28を中心として、第3及び第4の部分23,24に対してプレス成形により直角状に折り曲げ形成される。
これにより、図5(a)に示すような中間体Bが得られる。この中間体Bでは、主体部2aが形成されると共に、第2の端部6に第1の溝形部2bが形成される。また、第1の溝形部2bを構成する第1及び第2の側壁部11,12の同一平面上に上記第5の部分25がそれぞれ延設されている。
【0020】
次いで、第2の折り曲げ線30,31を中心として、各第5の部分25を、第1及び第2の側壁部11,12の外側にそれぞれ折り返すことにより、図5(b)に示すように第1及び第2の側壁部11,12の外側面にそれぞれ沿いつつ下方へ延びる第1及び第2の折り返し壁32,33を形成し、第2の溝形部2cを得る。これにより、ロッカーアーム本体2が完成する。
【0021】
参考の形態では、バルブステム9を受ける第2の溝形部2cの隅部40に、曲げRを確保する必要がないので、バルブステム9を支持するための平坦面を広くできる結果、バルブステム9を安定して支持することができる。また、折り返し壁32,33の長さの設定により、第2の溝形部2cの深さを所望に設定することができ、バルブステム9の長尺化を防止することができる。
【0022】
次いで、図6は本発明の第2の参考の形態のロッカーアーム本体の第2の端部の断面図である。図6を参照して、本第2の参考の形態が第1の参考の形態と異なるのは、第1及び第2の折り返し壁32,33の下部をそれぞれ、プレス成形により天壁部15に沿うように内向きに折り曲げて内向きフランジ34,35を形成することにより、折り返し壁32,33を断面アングル状に形成してあることである。
【0023】
本第2の参考の形態では、第2の溝形部2cの内幅は、各折り返し壁32,33の内向きフランジ34,35の端面36,37同士間の間隔となり、バルブステム9の左右方向の移動を規制する幅dを狭めることができる。また、ロッカーアーム本体2の幅を途中で絞るようなことがないので、強度が確保される。なお、内向きフランジ34,35の長さを互いに異ならせることにより、バルブステム9を受ける中心をロッカーアーム本体2の幅中心からオフセットさせても良い。この場合、設計の自由度が向上する。
【0024】
次いで、図7は本発明の第3の参考形態のロッカーアーム本体の要部の斜視図である。図7を参照して、本第3の参考形態が第1の参考形態と異なるのは、第1及び第2の側壁部11,12と対応する第1及び第2の折り返し壁32,33とをそれぞれプロジェクション溶接部38により固定してあることである。本第3の参考形態では、各折り返し壁32,33がスプリングバック等の影響で外側に拡がることを防止することができると共に、ロッカーアーム本体2全体としての強度を向上させることができる。
【0025】
次いで、図8は図7の参考形態の変更例としてのの実施の形態のロッカーアーム本体の要部の断面図である。図8を参照して、本第の実施の形態が第3の参考形態と異なるのは、各折り返し壁32,33の折り返しの起点において、各折り返し壁32,33が湾曲部39を形成して対応する側壁部11,12に連続するようにしたことである(図8では折り返し壁33のみを示してある。)。
【0026】
本第の実施の形態では、下記の利点がある。すなわち、プロジェクション溶接により折り返し壁32,33の拡がりを防止されている場合において、折り返し壁32,33の折り返しの中心(起点)において湾曲部39の曲げRを大きくしておいても良くなり、曲げ加工時の割れ等の発生を防止することができる。
次いで、図9は本発明の第参考形態のロッカーアーム本体の要部の断面図であある。図9を参照して、本第参考形態が第1の参考形態と異なるのは、各折り返し壁32,33の厚みt1を各側壁部11,12の厚みt2よりも薄くしてあることである(図9では折り返し壁3のみを示してある。)。
【0027】
本第参考形態では、折り返し壁32,33の厚みを相対的に薄くしてあるので、折り返し壁32,33を容易に折り返して曲げることができる。また、ロッカーアーム本体2の揺動の先端側の質量を軽くすることができるので、慣性質量を低減することができる結果、内燃機関の高回転化に寄与することができる。
【0028】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更を施すことができる。
【0029】
【発明の効果】
請求項1記載の発明では、バルブステムを受ける第2の溝形部の隅部に、曲げRを確保する必要がないので、バルブステムを支持するための平坦面を広くできる結果、バルブステムを安定して支持することができる。また、折り返し壁の長さの設定により、第2の溝形部の深さを所望に設定することができ、バルブステムの長尺化を防止することができる。
【0030】
また、ロッカーアーム本体の幅を絞ることなく簡単な曲げ加工にてバルブステムの左右方向の規制幅を狭めることができるので、バルブステムをより安定して支持することができる。
また、各側壁と対応する折り返し壁とをプロジェクション溶接することにより、折り返し壁がスプリングバック等の影響で外側に拡がることを防止することができると共に、全体としての強度を向上さけることができる。
【0031】
また上記のようにプロジェクション溶接により折り返し壁の拡がりを防止されていると、折り返し壁の起点において曲げRを大きくしておいても良くなり、曲げ加工時の割れ等の発生を防止することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の参考形態のロッカーアームの取り付け状態を示す概略図である。
【図2】 ロッカーアームの斜視図である。
【図3】 バルブステム及びロッカーアームの要部の断面図である。
【図4】 ロッカーアーム本体の製造に用いる展開板である。
【図5】 (a)及び(b)はロッカーアーム本体の製造工程を順次に示す斜視図である。
【図6】 本発明の第2の参考形態のロッカーアーム本体の要部の断面図ある。
【図7】 本発明の第3の参考形態のロッカーアーム本体の要部の斜視図である。
【図8】 本発明の第の実施の形態のロッカーアーム本体の要部の正面図である。
【図9】 本発明の第参考形態のロッカーアーム本体の要部の正面図である。
【図10】 (a)及び(b)はそれぞれ従来のロッカーアームの本体のバルブステムを受ける部分の正面図である。
【符号の説明】
1 ロッカーアーム
2 ロッカーアーム本体
2a 主体部
2b 第1の溝形部
2c 第2の溝形部
9 バルブステム
10 上端
11 第1の側壁部
12 第2の側壁部
13 底壁部
14 底壁部
15 天壁部
32 第1の折り返し壁
33 第2の折り返し壁
34,35 内向きフランジ
A 展開板
27,28 第1の折り曲げ線
30,31 第2の折り曲げ線
36,37 端面
38 プロジェクション溶接部
d 規制する幅

Claims (2)

  1. 底壁部の両側にプレス成形により折り曲げられた一対の側壁を対向させて上向きに開放する第1の溝形部と、
    この第1の溝形部の一対の側壁の上端からプレス成形によりそれぞれ外側に折り返され下方に延びる一対の折り返し壁と、
    これら一対の折り返し壁の下端をそれぞれ内向きに折り曲げて形成された一対の内向きフランジとを備え、
    これら内向きフランジの端面間でバルブステムの左右移動が規制され、
    第1の溝形部の底壁部を天壁部として、この天壁部と上記一対の折り返し壁とでバルブステムを受けるために下向きに開放する第2の溝形部が構成され、
    各側壁と対応する折り返し壁とが、折り返し壁のスプリングバックによる外側への拡がりを防止するようにプロジェクション溶接されており、
    上記折り返し壁の折り返しの起点では、折り返し壁が湾曲状をなして対応する側壁に連続しており、
    各側壁と対応する折り返し壁とがプロジェクション溶接された部分の上方において折り返しの内側に空間が形成されるように、折り返しの内側の面が湾曲状をなしていることを特徴とするロッカーアーム本体。
  2. 請求項1に記載のロッカーアーム本体と、ロッカーアーム本体により支持されたローラとを備えることを特徴とするロッカーアーム。
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