JP4134303B2 - 画像データ処理装置、画像データ処理方法、ならびにプログラム及び記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、画像データを蓄積するハードディスクドライブ(HDD)等の画像蓄積手段を有し、そこに蓄積した画像データに画像の品質を高める所要の画像処理を施して外部装置に送信する画像データ処理装置に関し、また、このように画像の品質を高める画像処理方法、画像データ処理装置を制御するコンピュータをこのような画像処理を行う手段として機能させるためのプログラム及び、このようなプログラムを記録した記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
画像データを取り扱う画像データ処理装置として、従来から例えば図18に示すようなデジタル複合機が知られている。まず、このデジタル複合機について説明する。図18はそのデジタル複合機の構成を示すブロック図である。
図18に示すように、このデジタル複合機は、読取ユニット501,画像処理ユニット502,ビデオ制御部503,書込ユニット504の一連の構成部,さらにはメモリ制御ユニット505及びメモリモジュール506によって形成される複写機を構成する部分(複写機部分)と、マザーボード511を介して、追加的にファクシミリ制御ユニット512,プリンタ制御ユニット513,スキャナ制御ユニット514等のユニットとが接続されることにより、デジタル複合機としての各機能を実現するものである。
【0003】
すなわち、上記一連の構成部による一つのシステム、具体的にはシステムコントローラ507,RAM508及びROM509によって一連の動作がコントロールされている複写機部分にファクシミリ制御ユニット512,プリンタ制御ユニット513,スキャナ制御ユニット514をアドオンすることにより、デジタル複合機の機能を実現するものである。
また、図示は省略するが、上記各ユニットを複写機にアドオンするものではなく、複写機能部分,ファクシミリ機能部分,プリンタ機能部分等をそれぞれユニット化して組み合わせ、これら各ユニットから入力する画像データを効率よく処理するデジタル複合機も案出されている。
【0004】
そして、上述したようなデジタル複合機がマザーボードを介して機能ユニットをアドオンするものであっても、複写機に特化することなく各機能ユニットを作り分けて組み合わせるものであっても、デジタル複合機の多機能化に伴い、画像データの転送制御はシステムのパフォーマンス向上の観点から非常に重要な要素となっている。
従って、転送制御の観点、すなわち、各機能ユニット間による画像データの転送効率や、メモリ等の記憶部における記憶効率を考慮して、画像データは必要に応じて圧縮されていた。換言すると、画像データを圧縮することでデジタル複合機はそのパフォーマンスの向上を図っていた。
【0005】
このようなデジタル複合機において、別途HDD等の画像蓄積装置を設け、ここに読取ユニット501で読み取ったりネットワークを介して接続する外部装置から受信したりした画像データを蓄積することが行われている。さらに、外部装置からの要求に応じて、画像蓄積装置に蓄積した画像データをその外部装置に送信することも行われている。そしてもちろん、上述の圧縮処理は、画像蓄積装置に画像データを蓄積する場合でも同様に行われている。
しかしながら、このように蓄積した画像データをもとに画像を再現しようとする場合、モアレと呼ばれる濃度ムラが発生し、画質が劣化してしまうことがあった。この理由としては、例えば、1.網点画像のような規則的な濃淡分布がある画像を読み取った場合に原稿の網点周期と画像読み取り時のサンプリング周期との間で干渉が生じてしまうこと、2.規則的な濃淡分布を含む画像データに不可逆圧縮のための符号化処理を施した場合に符号化処理周期との間で干渉が生じてしまうこと、3.空間フィルタ処理による飽和演算や急峻なガンマ処理等の非線型処理により高周波成分が発生してしまうこと等が考えられる。
【0006】
このモアレを低減する方法としては、例えば画像データを局所的に平滑化する平滑化フィルタ処理を行ったり、飽和が起きないような弱い空間フィルタ処理や滑らかなガンマ処理を行うことでモアレ発生を抑制する方法が知られている。
しかし、このような方法では、画像中の網点部についてはモアレを低減することができるが、画像の特にエッジ部のシャープさが落ち、文字等の線画部においては、ボケたり解像力が低下したりしてしまい、画質を十分に向上させることができないという問題があった。
このような問題を解決する技術として、例えば特開平5−41793号公報に開示されているデジタル画像処理装置がある。このデジタル画像処理装置においては、もとの画像データのサンプリング周波数よりも高い周波数の画像データを補間によって生成し、その画像データを元の周波数の画像データに変換するというモアレ補正処理を行うことにより、モアレの低減を図っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示されているデジタル画像処理装置においては、フィルタ処理やガンマ補正処理は、モアレ補正処理後の元の解像度の画像データに対して行うため、モアレ補正処理によってモアレを低減しても、これらの処理の時点で生じる干渉により再度モアレが発生してしまい、全体としてモアレの低減効果は十分でなかった。
また、読み取り時の画素密度を上げれば、モアレの少ない画像が得られるが、このためにはそれだけの画素分解能を持つ読み取り装置が必要であるので、実現は技術的、コスト的に困難である。特に、外部から受信した画像データを蓄積しておく場合には、一部の読み取り装置について高分解能のものを用いたとしても、低分解能の装置で読み取った画像データが混在していれば、その画像データについては別途モアレの低減策を講じなければならない。
この発明は、このような問題を解決し、不可逆圧縮され、画像データ蓄積手段に蓄積された画像データを伸長して外部装置に送信する場合において、画像のシャープさを維持しながら画像データを画像に再現する際のモアレの発生を低減することを目的とする。また、このような処理を簡単な構成で行うことができるようにすることも目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、この発明の画像データ処理装置は、画像データを蓄積する画像データ蓄積手段と、画像データを上記蓄積手段に蓄積する際に、その画像データに不可逆圧縮を施す手段とを有する画像データ処理装置において、上記不可逆圧縮を施され、上記画像データ蓄積手段に蓄積された画像データを伸長する手段と、その手段による伸長後の画像データに対して、その画像データの各画素について入力よりも出力のダイナミックレンジを広く取った、エッジ情報を強調する空間フィルタ処理を施す空間フィルタ処理手段と、その手段による処理後の画像データに対して高解像度への解像度変換処理を行った後でダイナミックレンジを上記空間フィルタ処理前のレンジに戻す解像度増加処理手段と、その手段による処理後の画像データに対してガンマ補正処理を行うガンマ補正手段と、その手段による処理後の画像データを外部装置に送信する送信手段とを設けたものである。
このような画像データ処理装置において、上記ガンマ補正手段による処理後の画像データに対して、所定周波数以上の高周波成分を遮断する処理を含む低解像度への解像度変換処理を行う解像度低減処理手段をさらに設けるとよい。
【0009】
さらに、上記解像度低減処理手段を、画像データの解像度を上記解像度増加処理手段による処理前の解像度に変換する手段とするとよい。
【0010】
さらに、上記送信手段によって送信する画像データを、上記外部装置において閲覧が可能な汎用のフォーマットに変換するフォーマット変換手段を設けるとよい。
さらに、上記解像度増加処理手段を、主走査方向又は副走査方向のいずれか一方のみについて解像度変換処理を行う手段とするとよい。
あるいは、上記解像度増加処理手段を、2倍以上の整数倍の解像度への解像度変換処理を行う手段とするとよい。
あるいはまた、上記解像度増加処理手段を、解像度600dpiの画像データを解像度1200dpiの画像データに変換する解像度変換処理を行う手段とするとよい。
【0011】
また、この発明のプログラムは、画像データを蓄積する画像データ蓄積手段と、画像データを上記蓄積手段に蓄積する際に、その画像データに不可逆圧縮を施す手段とを有する画像データ処理装置を制御するコンピュータを、上述した各手段として機能させるためのプログラムである。
そして、この発明の記録媒体は、このようなプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体である。
【0012】
また、この発明の画像データ処理方法は、不可逆圧縮を施された後で伸長された画像データに対して、その画像データの各画素について入力よりも出力のダイナミックレンジを広く取った、エッジ情報を強調する空間フィルタ処理を施し、その処理後の画像データに対して高解像度への解像度変換処理を行った後でダイナミックレンジを上記空間フィルタ処理前のレンジに戻す処理を行い、その処理後の画像データに対してガンマ補正処理を行い、その処理後の画像データを外部装置に送信するものである。
このような画像データ処理方法において、上記ガンマ補正処理後の画像データに対して、所定周波数以上の高周波成分を遮断する処理を含む低解像度への解像度変換処理を行うようにするとよい。
【0013】
さらに、上記低解像度への解像度変換処理によって、画像データの解像度を上記高解像度への解像度変換処理を行う前の解像度に変換するようにするとよい。
【0014】
さらに、上記外部装置に送信する画像データを、その外部装置において閲覧が可能な汎用のフォーマットに変換するようにするとよい。
さらに、上記高解像度への解像度変換処理によって、主走査方向又は副走査方向のいずれか一方のみについて解像度変換処理を行うようにするとよい。
あるいは、上記高解像度への解像度変換処理によって、2倍以上の整数倍の解像度への解像度変換処理を行うようにするとよい。
あるいはまた、上記高解像度への解像度変換処理によって、解像度600dpiの画像データを解像度1200dpiの画像データに変換するようにするとよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
〔第1の実施形態:図1乃至図7〕
まず、この発明の画像データ処理装置の第1の実施形態である画像処理システム及び、その画像処理システムを用いたこの発明の画像処理方法の実施形態について説明する。図1はその画像処理システムにおけるネットワーク配信用画像処理に関連する部分の構成を示すブロック図、図2はその画像処理システムのネットワーク配信用画像処理における画像データの解像度とダイナミックレンジについて説明するための図、図3はその画像処理システムの全体構成を示すブロック図、図4はその画像処理システムにおいてネットワーク配信用画像処理の対象となる画像データの例を示す図、図5はその画像データに従来のMTF補正を施した結果の例を示す図、図6は同じくこの発明に係る画像処理におけるMTF補正を施した結果の例を示す図、図7は図6に示した画像データを周波数解析した結果を示す図である。
【0016】
この画像処理システム100は、図3に示すように、システムコントローラ101,ハードディスクドライブ(HDD)102,コピー装置104,ネットワークインタフェース(I/F)111,ネットワーク配信用画像処理部112を備えている。
システムコントローラ101は、この画像処理システム100を統括制御する制御手段であり、CPU,ROM,RAM等によって構成される。そして、コピー装置104の動作制御や、画像処理システム100内での画像データの転送,画像データのHDD102への蓄積/読み出し,ネットワーク配信用画像処理部112における画像処理,ネットワークI/F111を介しての外部装置との情報の授受等の制御を行う。
【0017】
HDD102は、画像データを蓄積する画像データ蓄積手段であり、主としてコピーエンジン部105のスキャナ装置106で読み取った画像データの蓄積を行う。この他に、ネットワークI/F111を介して外部装置から受信した画像データや、この画像処理システム100の制御に必要な設定情報等も記憶するようにしてもよい。
【0018】
コピー装置104は、それ自体で完結したコピー装置であり、コピーエンジン部105,コピーコントローラ109,操作パネル110を備えている。そしてコピーエンジン部105は、原稿の画像を所定の解像度で読み取って画像データを出力する画像読取手段であるスキャナ装置106,スキャナ装置106で読み取った画像データあるいはシステムコントローラ101から入力する画像データに対してプリンタ装置108による画像形成に適した画像データとするための種々の画像処理を施す画像処理部(イメージ・プロセシング・ユニット:IPU)107,画像処理部107から入力する画像データに基づいて用紙に画像を形成する画像形成手段であるプリンタ装置108を備えている。
【0019】
コピーコントローラ109は、コピー装置104の動作を制御する制御手段であり、コピーエンジン部105及び操作パネル110の動作の制御や、操作パネル110へのデータ入出力の制御を行う。具体的には、例えばどのようなオプションが取り付けられているかを判定するためにコピーエンジン部105の構成を確認したり、スキャナ装置106やプリンタ装置108の各部の状態を確認したり、これらの装置の動作に起動を掛けたり、プロセスの進行状況を確認したり、エラー発生時にその状況を詳細に確認したりする。
操作パネル110は、例えば400×640ドットの液晶ディスプレイによる表示部と16×16エリア分割のタッチパネルとから構成され、表示部とタッチパネルの機能を使用して、ユーザと対話しながら各機能の設定を受け付けたり、必要な各種ステータス・メッセージを表示したりするユニットである。
【0020】
また、コピー装置104とシステムコントローラ101とは、スキャナ装置106で読み取った画像データやプリンタ装置108で画像形成出力する画像データを転送するためのビデオインタフェース113と、スキャナ装置106やプリンタ装置108の動作を指示したり、その状態を確認したり、操作パネル110と通信したりするためのコマンド/レスポンスインタフェース114で接続されている。
【0021】
ネットワークI/F111は、この画像処理システム100をローカルエリアネットワーク(LAN)等のネットワーク120に接続するインタフェースであり、システムコントローラ101はここを介してネットワーク120に接続された外部装置とデータの授受を行う。そして、データの授受を制御するシステムコントローラ101と共に、ネットワーク配信用画像処理部112による処理後の画像データを外部装置に送信する送信手段として機能する。
ネットワーク配信用画像処理部112は、システムコントローラ101がネットワーク120に接続された外部装置に対してHDD102に蓄積した画像データを送信する際に、所要の画像処理を行う画像処理手段である。このネットワーク配信用画像処理部112の構成とここで行う画像処理とがこの発明の主要な特徴であり、この点については後に詳述する。
【0022】
このような画像処理システム100は、スキャナ装置106で読み取った原稿を複写すると共にその画像データをHDD102に蓄積し、ネットワーク120に接続された外部装置からの要求に応じて、HDD102に蓄積した画像データに所定の画像処理を施してその外部装置あるいは別の外部装置に送信することができる。ここで、この動作の概略について説明する。
操作パネル110から複写の実行が指示されると、スキャナ装置106が原稿を走査し、その画像を読み取って画像データを画像処理部107に対して出力する。この画像データは、スキャナ装置106の機能や読み取りモードに応じて、モノクロの画像データであったりカラーのRGBの画像データであったりする。
【0023】
画像処理部107は、スキャナ装置106から入力する画像データに対して所定の画像処理を施し、プリンタ装置108による画像形成に適した画像データに変換する。そして、この画像データを一旦システムコントローラ101に送信し、システムコントローラ101がその画像データをHDD102に記憶させる。この際、HDD102の記憶領域を有効に活用し、またデータ転送の負荷を低減するため、システムコントローラ101において画像データに所定の不可逆圧縮処理を施してからHDD102に記憶させる。
その後、この画像データを再度画像処理部107に転送し、画像処理部107においてこの画像データからプリンタ装置108の駆動信号を生成し、プリンタ装置108をその駆動信号によって駆動して用紙に画像を形成させる。以上の処理によって複写を実行すると共に読み取った画像データをHDD102に蓄積する。
【0024】
一方、ユーザは、ネットワーク120を介して接続された外部装置からこの負画像処理システム100にアクセスし、HDD102に蓄積されている画像データを検索し、所望の画像データの転送を指示することができる。システムコントローラ101は、この指示を受け取ると、HDD102からその画像データを選択して読み出し、HDD102では圧縮状態で蓄積されているので伸長処理を行って元の画像データに戻し、ネットワーク配信用画像処理部112で所要の画像処理を施し、ネットワークI/F111を介して指示された送信先に対して画像データを送信する。
【0025】
次に、上述したネットワーク配信用画像処理部112の構成について説明する。
ネットワーク配信用画像処理部112は、図1及び図2に示すように、空間フィルタ処理部201,解像度変換処理部202,ガンマ補正処理部203,外部出力用処理部210を備えている。
空間フィルタ処理部201は、システムコントローラ101によってHDD102から読み出されて入力される画像データに対し、入力よりも出力のダイナミックレンジを広く取った空間フィルタ処理を施す空間フィルタ処理手段であり、解像度m dpi(ドット・パー・インチ),ダイナミックレンジp bit(ビット)の画像データに対して、解像度は変化させず、出力をダイナミックレンジq bit(p<q)とする空間フィルタ処理を行う。そして、例えば、m=600,p=8,q=10とすることができる。
処理の内容は、3×3画素マトリクス対応のラプラシアン等の、画像の文字部や絵柄部のエッジ情報を強調するMTF補正と、網点原稿に発生するモアレを抑えるためのスムージング処理であり、画像データが文字画像のデータであればMTF補正処理を、写真画像のデータであればスムージング処理を選択的に行う。
【0026】
解像度変換処理部202は、空間フィルタ処理部201による処理後の画像データに対し、高解像度への解像度変換処理を行う解像度増加処理手段であり、解像度m dpi,ダイナミックレンジq bitの画像データに対して、解像度をn dpi(m<n)に上げると共にダイナミックレンジをp bitに戻す解像度変換処理を行う。この解像度変換処理は例えば内挿法や3次関数コンボリューション法を用いる補間によって行うことができ、nは例えばn=1200とすることができる。
【0027】
ガンマ補正処理部203は、解像度変換処理部202による処理後の画像データに対し、ガンマ補正処理を行うガンマ補正手段である。この処理は、スキャナ装置106における読み取り特性と、画像データの送信先の装置における画像出力特性とをマッチングさせるための画像データ補正である。これは、基本的には読み取った原稿と同様な画像を出力先の装置において出力させるための処理であるが、出力画像データを用いてOCR(Optical Character Reader)に文字認識を行わせる場合に、文字検出が容易になるような濃度補正を施す処理等も含む。
【0028】
外部出力用処理部210は、単純2値化処理部211,2値誤差拡散処理部212,2値ディザ処理部213,単純多値処理部214,多値ディザ処理部215,画像フォーマット変換処理部216を備えており、ガンマ補正処理部203による処理後の画像データを、所定のフォーマットに変換する処理を行う。
この外部出力用処理部210においては、ガンマ補正処理部203による処理後の画像データに対し、まず、単純2値化処理,2値誤差拡散処理,2値ディザ処理,単純多値処理,多値ディザ処理のいずれかを、ユーザによる選択や出力先装置からの指示等に応じて画像データの使用目的に合うように選択して行う。そして、このようにすることにより、データの圧縮効果を高めたり、画像処理システム100において複写出力した画像と同じ特性の画像を外部装置でも出力可能にしたりすることができる。これらの各処理を行う手段が単純2値化処理部211から多値ディザ処理部215までの5つの処理手段である。
【0029】
単純2値化処理部211は、入力する多値の画像データに対して所定の値を閾値とする単純2値化処理を行って2値の画像データに変換する手段であり、画像データをOCR等を用いた文字認識に用いたい場合や、複写の際に文字モードで読み取られた画像データ等には、この単純2値化処理部211によって単純2値化処理を行うとよい。このようにすれば、OCRによる文字認識が容易になり、また、多値データを2値化して取り扱うことができるのでデータ量を削減することができ、汎用フォーマットに変換する際の画像データの圧縮率も向上させることができるので、さらにデータ量を削減することができる。
【0030】
2値誤差拡散処理部212と2値ディザ処理部213は、多値データに対して誤差拡散処理やディザ処理といった中間調処理を行って2値の画像データに変換する手段であり、この処理を行えば、原稿の絵柄部等の階調特性を保持したまま画像データを取り出すことができる。また、多値データを2値データとするため、データ量を削減することができる。そして、例えば画像データを2値プリンタに対して出力して画像形成を行わせる場合等にこれらの処理が有効である。中間調処理を行っており、HDD102への蓄積時に読み取った原稿とほぼ同等な出力を得ることができるためである。
単純多値処理部214は、多値画像データをそのまま出力する手段であり、多値ディザ処理部215は、中間調処理としてディザ処理を行い、出力を多値とする手段である。これらの処理では、もとの画像データの階調特性を保持しておくことができるので、画像データを多値プリンタに対して出力して画像形成を行わせる場合等に有効である。
【0031】
画像データにこれらのいずれかの処理を施した後、必要であれば、フォーマット変換手段である画像フォーマット変換処理部216によって、TIFF(Tagged Image File Format)形式やJPEG(Joint Photographic Expert Group)形式等の外部装置で閲覧できる形式の汎用フォーマットに変換する。このようにすれば、HDD102に蓄積している画像データをPC(パーソナルコンピュータ)等の外部端末で容易に閲覧や編集することができる。なお、使用するフォーマットはユーザによる選択や出力先装置からの指示等に応じて適宜設定する。またプリンタに出力して画像形成を行わせる場合等、汎用フォーマットへの変換が不要である場合には、変換は行わないものとする。
そして、画像フォーマット変換処理部216による処理後の画像データは、ネットワークI/F111に送信され、ここからネットワーク120を介して外部装置に送信される。
【0032】
次に、ネットワーク配信用画像処理部112における画像処理について説明する。
システムコントローラ101は、画像データを外部装置に転送すべき指示を受け取ると、HDD102からその画像データを選択して読み出す。そして、HDD102では画像データは圧縮状態で蓄積されているので、伸長処理を行って元の画像データに復元する。
その後、復元した画像データに対して画像処理を行うため、ネットワーク配信用画像処理部112の空間フィルタ処理部201に入力する。ここで、画像データは、解像度600dpiで1画素8ビット(m=600,p=8)の、図4に示すような写真画像のデータであるとする。このデータは、網点等の周期的な画像を等間隔にサンプリングしたデータに相当し、実際には2次元での画像読み取りを行う場合もあるが、説明を簡単にするため1次元で示している。そして、図4では横軸は画素番号、縦軸はその画素におけるデータ値を示す。以下の画像データの内容を示す図でも同様とする。
【0033】
空間フィルタ処理部201では、この画像データに対して空間フィルタ処理(ここではMTF補正)を行う。
ここで、入力は1画素8ビットで各画素0から255までのダイナミックレンジのデータであるが、従来のように出力も1画素8ビットとすると、入力データに対してMTF補正の演算の行った結果が0を下回るか255を上回った場合でも0や255としなければならず、飽和が起こってしまう。この場合、MTF補正処理の結果画像データは例えば図5のようになってしまう。このような画像データは高調波を含み、これは画像形成や表示を行う場合のモアレの発生の原因となる。
【0034】
そこで、ここでは空間フィルタ処理部201の出力を入力より多いビット数のデータとしている。例えば1画素10ビット(q=10)とすれば、ダイナミックレンジを−512から+511として、入力よりも広いダイナミックレンジを取ることができる。そして、このようにすれば、MTF補正処理による飽和を起こりにくくすることができる。例えば図4の画像データに対して出力10ビットのMTF補正処理を行った結果は、図6に示すようになり、飽和もそれによる高調波の発生も起こっていない。
なお、ダイナミックレンジの取り方は、飽和が起こらなければ、0から+1023や−256から+767等としてもよい。
【0035】
空間フィルタ処理部201による処理後の画像データに対しては、解像度変換処理部202において高解像度への解像度変換処理を行う。そして、この解像度変換処理において、ダイナミックレンジはシステムコントローラ101からの入力時の値に戻す。ここでは、解像度1200dpi(n=1200),1画素8ビットのデータに変換するものとする。
この処理は、m=600dpi,q=10bitの入力画像データをn=1200,q=10bitに解像度変換した後に、0及び255で飽和処理を行ってダイナミックレンジをp=8bitに低下させる。解像度の高い画像データにおいてはモアレは発生しにくいので、このように解像度変換を行ってから飽和処理を行えば、低解像度の状態で飽和処理を行うよりも、モアレの発生を低減することができる。
【0036】
図6に示したMTF補正処理後の画像データに上記の解像度変換処理を行った画像データについて周波数解析を行った結果が図7である。図7では、横軸が周波数(lpi:ライン・パー・インチ),縦軸が相対強度を示す。図7に示すとおり、300lpi以上の高周波成分は100lpi付近の成分に比較して少なく、高周波成分の構成比率がこの程度であればモアレはほとんど認識されない。
【0037】
解像度変換処理部202による処理後の画像データに対しては、ガンマ補正処理部203においてガンマ補正処理を行う。このガンマ補正は、解像度変換処理部202で解像度を高めた画像データに対して行うため、急峻なガンマ補正であってもモアレは発生しにくい。
ガンマ補正処理後の画像データは、外部出力用処理部210において、上述したように単純2値化処理,2値誤差拡散処理,2値ディザ処理,単純多値処理,多値ディザ処理のいずれかの処理を施し、必要であればTIFFやJPEG等の汎用フォーマットに変換した後、ネットワークI/F111に送信し、ここからネットワーク120を介して外部装置に送信する。
【0038】
上述のように構成したネットワーク配信用画像処理部112においてこのような画像処理を行うことにより、送信先の外部装置で画像データを画像に再現する際のモアレの発生を低減することができる。また、この際、文字画像のデータに対しては平滑化処理を行わず、また急峻なガンマ補正も可能であるので、画像のシャープさを維持することもできる。
【0039】
なお、ここでは、ネットワーク配信用画像処理部112を構成する各処理部は専用のハードウェアによって構成し、処理の高速化を図っている。しかし、汎用性を高めるためにこれらをプログラマブルなプロセッサによって構成するようにしてもよいし、システムコントローラ101のCPUあるいはこれとは別に設けたCPUに所定の制御プログラムを実行させることによって各処理部及び送信手段の機能を果たさせるようにしてもよい。
この場合において、この制御プログラムははじめからシステムコントローラ101に設けたROM等に格納しておけばよいが、記録媒体である別のROM等のメモリに記録して提供することもできる。また、SRAMやEEPROM、メモリカードのような、他の不揮発性記録媒体(メモリ)に記録して提供することももちろん可能である。この制御プログラムを記憶させるメモリを書き換え可能な不揮発性記憶手段とすれば、技術の進歩に応じたプログラムのアップデートが容易になる。さらに、ネットワーク120に接続され、プログラムを記録した記録媒体を備える外部機器からダウンロードして実行させるようにすることも可能である。以下の各実施形態や変形例においても同様である。
【0040】
また、上述した画像処理を行う場合、画像データをネットワーク配信用画像処理部112に入力する前に、システムコントローラ101によって画像データの解像度や画像サイズを変換できるようにしてもよい。このような処理の後に上述した画像処理を行うので、解像度や画像サイズの変換処理によってモアレが生じた場合でも、上述の画像処理によってそのモアレの影響を低減することができ、解像度や画像サイズの変換を単純間引きのような簡易な処理で行った場合でも画質の低下を防止することができる。
【0041】
〔第2の実施形態:図8乃至図12〕
次に、この発明の画像データ処理装置の第2の実施形態である画像処理システム及び、その画像処理システムを用いたこの発明の画像処理方法の実施形態について説明する。図8はその画像処理システムにおけるネットワーク配信用画像処理に関連する部分の構成を示すブロック図、図9はその画像処理システムのネットワーク配信用画像処理における画像データの解像度とダイナミックレンジについて説明するための図、図10はその画像処理システムにおいてネットワーク配信用画像処理の対象となる図4に示した画像データに従来のMTF補正を施した結果の例を示す図、図11は同じく高解像度への解像度変換処理を施した結果の例を示す図、図12は図11に示した画像データを周波数解析した結果を示す図である。
この画像処理システムは、ネットワーク配信用画像処理部122の構成が第1の実施形態の画像処理システムと異なるのみであるので、この点についてのみ説明する。
【0042】
この画像処理システムのネットワーク配信用画像処理部122は、図8及び図9に示す通り、第1の解像度変換処理部204,空間フィルタ処理部205,ガンマ補正処理部203,第2の解像度変換処理部206,外部出力用処理部210を備えている。
第1の解像度変換処理部204は、システムコントローラ101によってHDD102から読み出されて入力される画像データに対し、高解像度への解像度変換処理を行う解像度増加処理手段であり、解像度m dpi,ダイナミックレンジp bitの画像データに対して、解像度をn dpi(m<n)に上げる解像度変換処理を行う。この解像度変換処理は例えば内挿法や3次関数コンボリューション法を用いる補間によって行うことができ、例えばm=600,p=8,n=1200とすることができる。
【0043】
空間フィルタ処理部205は、第1の解像度変換処理部204による処理後の画像データに対し、空間フィルタ処理を施す空間フィルタ処理手段であり、解像度n dpi,ダイナミックレンジp bit(ビット)の画像データに対して、解像度やダイナミックレンジを保ったまま空間フィルタ処理を行う。空間フィルタ処理として、MTF補正処理やスムージング処理を画像データの内容に応じて選択的に行う点は、第1の実施形態の場合と同様である。
ガンマ補正処理部203は、空間フィルタ処理部205による処理後の画像データに対し、ガンマ補正処理を行う点以外は、第1の実施形態の場合と同様なガンマ補正手段である。
【0044】
第2の解像度変換処理部206は、ガンマ補正処理部203による処理後の画像データに対し、低解像度への解像度変換処理を行う解像度低減処理手段であり、解像度n dpi,ダイナミックレンジp bitの画像データに対して、解像度を第1の解像度変換処理部204による処理前のm dpiに下げる解像度変換処理を行う。この解像度変換処理は例えば300lpi以上の高周波成分を遮断する平滑フィルタと間引きによるダウンサンプリングによって行うことができる。
外部出力用処理部210は、第1の実施形態の場合と同様なものである。
【0045】
次に、この画像処理システムのネットワーク配信用画像処理部122における画像処理について説明する。
この実施形態においても、システムコントローラ101は、画像データを外部装置に転送すべき指示を受け取ると、HDD102からその画像データを選択して読み出し、伸長処理を行い、画像処理を行うため、ネットワーク配信用画像処理部122の第1の解像度変換処理部204に入力する。ここで、画像データは、第1の実施形態の場合と同様な、解像度600dpiで1画素8ビット(m=600,p=8)の、図4に示すような写真画像のデータであるとする。
このような画像データに対して従来のように通常のMTF補正を行うと、その結果は例えば図10に示すようになり、強調処理によって画像データの一部は0あるいは255に飽和してしまう。そしてこれが画像ではモアレとして観察される。
【0046】
これに対し、この画像処理システムにおいては、まず第1の解像度変換処理部204で高解像度への解像度変換処理を行う。ここでは、解像度1200dpi(n=1200),1画素8ビットのデータに変換するものとする。すなわち、解像度2倍の画像データに変換する。また、ダイナミックレンジは変更しない。
図4に示した入力画像データに上記の解像度変換処理を行った画像データは図11に示すようになり、この画像データについて周波数解析を行った結果が図12である。図12では、横軸が周波数(lpi),縦軸が相対強度を示す。図12に示すとおり、この時点では300lpi以上の高周波成分は発生しておらず、モアレは認識されない。
【0047】
第1の解像度変換処理部204による処理後の画像データに対しては、空間フィルタ処理部205において空間フィルタ処理(ここではMTF補正)を行う。
ここでは、第1の実施形態の場合と異なり、入力と出力のダイナミックレンジはどちらもp=8ビットである。従って、入力データに対してMTF補正の演算の行った結果が0を下回るか255を上回った場合でも0や255としなければならず、飽和が起こってしまう。しかし、解像度を高くしているため、飽和はあまり起こらず、飽和によって生じる高周波成分もわずかであるので、モアレはほとんど生じない。なお、図示は省略するが、この空間フィルタ処理後の画像データを周波数特性解析した結果は、第1の実施形態の解像度変換処理部202での処理後の画像データに対して解析を行った場合(図7に示した)とほぼ同様になった。
【0048】
空間フィルタ処理部205による処理後の画像データに対しては、ガンマ補正処理部203においてガンマ補正処理を行う。このガンマ補正は、第1の実施形態の場合と同様、解像度を高めた画像データに対して行うため、急峻なガンマ補正であってもモアレは発生しにくい。
ガンマ補正処理部203による処理後の画像データに対しては、第2の解像度変換処理部206によって低解像度への解像度変換処理を行う。ここでは、n=1200dpiの入力画像データをm=600dpiの画像データに変換する。ダイナミックレンジは、入出力共にp=8bitである。
この解像度変換は、300lpi以上の高周波成分を遮断する平滑フィルタと間引きによるダウンサンプリングによって行うが、この処理により、空間フィルタ処理やガンマ処理によって発生する高周波成分を除去してモアレをより効果的に防止することができる。
【0049】
第2の解像度変換処理部206による解像度変換処理後の画像データは、外部出力用処理部210において、第1の実施形態の場合と同様に所要の処理を施した後、ネットワークI/F111に送信し、ここからネットワーク120を介して外部装置に送信する。
【0050】
上述のように構成したネットワーク配信用画像処理部122においてこのような画像処理を行うことにより、送信先の外部装置で画像データを画像に再現する際のモアレの発生を低減することができる。また、この際急峻なガンマ補正が可能であるので、画像のシャープさを維持することもできる。
特に、空間フィルタ処理やガンマ処理を高解像度の画像データに対して行うことによりモアレの発生を効果的に防止でき、さらに元の解像度に戻す解像度変換処理によってモアレの原因となる高周波成分を除去できるので、モアレ防止効果を最大限に発揮させることができる。
上述した例の場合では、600dpi程度の比較的低解像度の読み取り装置で読み取った画像データであっても、1200dpi程度の高解像度の読み取り装置で読み取った場合と同程度の品質の画像を得ることができる。
【0051】
〔第3の実施形態:図13,図14〕
次に、この発明の画像データ処理装置の第3の実施形態である画像処理システム及び、その画像処理システムを用いたこの発明の画像処理方法の実施形態について説明する。図13はその画像処理システムにおけるネットワーク配信用画像処理に関連する部分の構成を示すブロック図、図14はその画像処理システムのネットワーク配信用画像処理における画像データの解像度とダイナミックレンジについて説明するための図である。
この画像処理システムは、ネットワーク配信用画像処理部132においてガンマ補正処理部203と外部出力用処理部210との間に第2の解像度変換処理部206を設けた点が第1の実施形態の画像処理システムと異なるのみであるので、この点についてのみ説明する。なお、第1の実施形態の解像度変換処理部202については、ここでは、第2の解像度変換処理部206と区別するために第1の解像度変換処理部202としている。
【0052】
第2の解像度変換処理部206は、第2の実施形態で説明した第2の解像度変換処理部206と同様な解像度低減処理手段であり、解像度n dpi,ダイナミックレンジp bitの画像データに対して、解像度を第1の解像度変換処理部204による処理前のm dpiに下げる解像度変換処理を行う。
そして、この画像処理システムのネットワーク配信用画像処理部132における画像処理では、ガンマ補正処理部203による処理後の画像データに対して第2の実施形態の場合と同様な低解像度への解像度変換処理を行う。また、第2の解像度変換処理部206による解像度変換処理後の画像データは、外部出力用処理部210において、第1の実施形態の場合と同様に所要の処理を施した後、ネットワークI/F111に送信し、ここからネットワーク120を介して外部装置に送信する。
【0053】
上述のように構成したネットワーク配信用画像処理部132においてこのような画像処理を行うことにより、送信先の外部装置で画像データを画像に再現する際のモアレの発生を低減することができる。また、この際急峻なガンマ補正が可能であるので、画像のシャープさを維持することもできる。
特に、ガンマ処理を高解像度の画像データに対して行うことによりモアレの発生を効果的に防止でき、さらに元の解像度に戻す解像度変換処理の時にモアレの原因となる高周波成分を除去できるので、モアレ防止効果は大きい。上述した例の場合では、第2の実施形態の場合と同様、600dpi程度の比較的低解像度の読み取り装置で読み取った画像データであっても、1200dpi程度の高解像度の読み取り装置で読み取った場合と同程度の品質の画像を得ることができる。
【0054】
ところで、この実施形態と第2の実施形態の違いは、空間フィルタ処理を低解像度の状態で行い、入力よりも出力のダイナミックレンジを広く取るようにした点である。空間フィルタ処理を低解像度で行うことにより、第2の実施形態の場合と比較して若干モアレ低減効果は低いが、第2の解像度変換処理部206において高周波成分を除去できるのでほとんど問題にならない。一方で、空間フィルタ処理に必要な係数マトリクスを小さくすることができるので、空間フィルタ処理部201のメモリ容量を低減でき、ハードウェアの部品を削減することができる。
【0055】
〔各実施形態の変形例:図15乃至図17〕
次に、上述した各実施形態の変形例について、図15乃至図17を用いて説明する。図15は、第3の実施形態の画像処理システムに第1の変形例を適用した画像処理について説明するための図14と対応する図、図16は同じく第2の変形例を適用した画像処理について説明するための図、図17は同じく第3の変形例を適用した画像処理について説明するための図である。
【0056】
まず、第1の変形例は、図15に示すように、第1の解像度変換処理部222において主走査方向のみについてm dpiからn dpiに解像度を増加させる解像度変換処理を行うようにしたものである。第2の解像度変換処理部226では、主走査方向のみについてn dpiの解像度をm dpiに戻し、最終的には第1の解像度変換処理部222による処理前の解像度としている。
ここで、主走査方向とは、スキャナ装置106によって画像を読み取る場合の主走査方向、あるいはプリンタ装置108によって画像データに基づいて画像形成を行う場合の主走査方向となる方向であり、データ転送時にはライン同期信号の間に1ライン分の画像データとして転送されるデータの画素が並ぶ方向である。従って、画像に回転処理が施された場合等には、読み取り時点とは主走査方向が変化する場合がある。
【0057】
モアレ除去の効果は、このように主走査方向と副走査方向の一方のみについて解像度変換を行うだけでも十分に効果がある場合もある。このとき、副走査方向の解像度変換を行うためには解像度変換処理部に複数ライン分のバッファを設ける必要があるのに対し、主走査方向のみの解像度変換では1ライン分のバッファでよいので、回路の簡略化の観点からは、主走査方向について解像度変換を行う方が望ましい。しかし、副走査方向のみについて解像度変換を行うようにしてもよい。
この構成は、スキャナ装置106が主走査方向600dpi,副走査方向1200dpiのように非均等な解像度での読み取りを行う場合に、低解像度で読み取った方向のみについて解像度変換を行うように適用すると、特に効果的である。
【0058】
次に、第2の変形例は、図16に示すように、第1の解像度変換処理部202において2以上の整数倍の解像度に解像度変換処理を行うようにしたものである。aを倍率とする。第2の解像度変換処理部206では、a×m dpiの解像度をm dpiに戻し、最終的には第1の解像度変換処理部222による処理前の解像度としている。
このような整数倍の解像度変換処理は、0値挿入と平滑フィルタの組み合わせで行うことができ、整数分の1の解像度変換は帯域制限を行う平滑フィルタとダウンサンプリング(まびき)によって行うことができる。そして、任意倍率への変倍回路のような大掛かりなハードウェアは必要なく、必要最小限のハードウェアで画像のひずみがない解像度変換を行うことができ、それによってモアレの少ない画像データを送信する画像処理システムを安価に構築することが可能になる。
【0059】
第3の変形例は、図17に示すように、ネットワーク配信用画像処理部162への入力画像データの解像度を600dpiとし、第1の解像度変換処理部202においてこれを1200dpiの解像度に変換するようにしたものである。第2の解像度変換処理部206では、1200dpiの解像度を600dpiに戻し、最終的には第1の解像度変換処理部202による処理前の解像度としている。
モアレ低減のためには、まず高解像度で画像を読み取ることが好ましい。そして、現在の汎用スキャナにおいて、600dpiの解像度のものは、高速であっても比較的安価である。プリンタについても、高速動作時に安定して画像を形成できるのは600dpi程度の解像度のものまでである。従って、画像処理システム100にコピー動作を行わせたり、外部のプリンタに画像データを送信して画像形成を行わせたりする場合には、画像データを600dpiの解像度とすることが好ましい。
【0060】
また、モアレ低減のために行う高解像度への解像度変換については、高解像度の方が好ましいが、解像度を増すほどデータサイズが大きくなり、これを扱うために大容量のメモリが必要になり、処理回路も複雑になってしまう。従って、第2の変形例で説明した「整数倍」の条件も考慮すると、1200dpiへの変換が妥当である。
従って、現在の技術レベルで低コストでこの発明の効果を最大限に発揮させるためには、この変形例の構成が有効である。
【0061】
なお、ここでは各変形例を第3の実施形態に適用した例について説明したが、他の実施形態にも適用できることはもちろんである。
また、第1の実施形態で説明したシステムコントローラ101による画像データの解像度や画像サイズの変換処理も、他の実施形態や変形例に適用することができる。
上述した各実施形態で使用したm,n,p,qの数値例は一例に過ぎず、他の数値を適用してもよいことも、もちろんである。
【0062】
また、第2及び第3の実施形態において、第2の解像度変換処理部206では第1の解像度変換処理部における処理前の解像度に変換するとしたが、出力先の装置やユーザからの要求によっては、かならずしもこのようにする必要はなく、処理前の解像度と異なる解像度に変換するようにしてもよい。
さらに、この発明の画像データ処理装置は、複写機能を有する画像処理システムに限られるものではなく、例えば原稿を読み取るためのスキャナ装置のみを有するもの、あるいは蓄積する画像データを外部装置から入力するものであってもよい。
【0063】
【発明の効果】
以上説明してきたように、この発明の画像データ処理装置及び画像データ処理方法によれば、送信先の外部装置で画像データを画像に再現する際のモアレの発生を低減することができる。またこの際、画像のシャープさを維持することもできる。
また、この発明のプログラムによれば、画像データ処理装置に備えるコンピュータを上記のような画像処理を行う手段として機能させることができる。
また、この発明の記録媒体によれば、上記のプログラムを記憶していないコンピュータにそのプログラムを記憶させ、その実行によって上記のような画像処理を行う手段として機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の画像データ処理装置の第1の実施形態である画像処理システムにおけるネットワーク配信用画像処理に関連する部分の構成を示すブロック図である。
【図2】その画像処理システムのネットワーク配信用画像処理における画像データの解像度とダイナミックレンジについて説明するための図である。
【図3】その画像処理システムの全体構成を示すブロック図である。
【図4】その画像処理システムにおいてネットワーク配信用画像処理の対象となる画像データの例を示す図である。
【図5】その画像データに従来のMTF補正を施した結果の例を示す図である。
【図6】同じくこの発明に係る画像処理におけるMTF補正を施した結果の例を示す図である。
【図7】図6に示した画像データを周波数解析した結果を示す図である。
【図8】この発明の画像データ処理装置の第2の実施形態である画像処理システムにおけるネットワーク配信用画像処理に関連する部分の構成を示すブロック図である。
【図9】その画像処理システムのネットワーク配信用画像処理における画像データの解像度とダイナミックレンジについて説明するための図である。
【図10】図4に示した画像データに従来のMTF補正を施した結果の図5とは別の例を示す図である。
【図11】その画像処理システムにおいてネットワーク配信用画像処理の対象となる図4に示した画像データに高解像度への解像度変換処理を施した結果の例を示す図である。
【図12】図11に示した画像データを周波数解析した結果を示す図である。
【図13】この発明の画像データ処理装置の第3の実施形態である画像処理システムにおけるネットワーク配信用画像処理に関連する部分の構成を示すブロック図である。
【図14】その画像処理システムのネットワーク配信用画像処理における画像データの解像度とダイナミックレンジについて説明するための図である。
【図15】第3の実施形態の画像処理システムに第1の変形例を適用した画像処理について説明するための図14と対応する図である。
【図16】同じく第2の変形例を適用した画像処理について説明するための図である。
【図17】同じく第3の変形例を適用した画像処理について説明するための図である。
【図18】従来のデジタル複合機の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
100:画像処理システム
101:システムコントローラ
102:HDD 104:コピー装置
105:コピーエンジン部 106:スキャナ装置
107:画像処理部 108:プリンタ装置
109:コピーコントローラ 110:操作パネル
111:ネットワークI/F
112,122,132,142,152,162:ネットワーク配信用画像処理部
120:ネットワーク
201,205:空間フィルタ処理部
202:解像度変換処理部 203:ガンマ補正処理部
204:第1の解像度変換処理部
206:第2の解像度変換処理部
210:外部出力用処理部 211:単純2値化処理部
212:2値誤差拡散処理部
213:2値ディザ処理部 214:単純多値処理部
215:多値ディザ処理部
216:画像フォーマット変換処理部
Claims (22)
- 画像データを蓄積する画像データ蓄積手段と、画像データを前記蓄積手段に蓄積する際に、その画像データに不可逆圧縮を施す手段とを有する画像データ処理装置であって、
前記不可逆圧縮を施され、前記画像データ蓄積手段に蓄積された画像データを伸長する手段と、
該手段による伸長後の画像データに対して、該画像データの各画素について入力よりも出力のダイナミックレンジを広く取った、エッジ情報を強調する空間フィルタ処理を施す空間フィルタ処理手段と、
該手段による処理後の画像データに対して高解像度への解像度変換処理を行った後でダイナミックレンジを前記空間フィルタ処理前のレンジに戻す解像度増加処理手段と、
該手段による処理後の画像データに対してガンマ補正処理を行うガンマ補正手段と、
該手段による処理後の画像データを外部装置に送信する送信手段とを設けたことを特徴とする画像データ処理装置。 - 請求項1記載の画像データ処理装置であって、
前記ガンマ補正手段による処理後の画像データに対して、所定周波数以上の高周波成分を遮断する処理を含む低解像度への解像度変換処理を行う解像度低減処理手段をさらに設けたことを特徴とする画像データ処理装置。 - 請求項2記載の画像データ処理装置であって、
前記解像度低減処理手段は、画像データの解像度を前記解像度増加処理手段による処理前の解像度に変換する手段であることを特徴とする画像データ処理装置。 - 請求項1乃至3のいずれか一項記載の画像データ処理装置であって、
前記送信手段によって送信する画像データを、前記外部装置において閲覧が可能な汎用のフォーマットに変換するフォーマット変換手段をさらに設けたことを特徴とする画像データ処理装置。 - 請求項1乃至4のいずれか一項記載の画像データ処理装置であって、
前記解像度増加処理手段は、主走査方向又は副走査方向のいずれか一方のみについて解像度変換処理を行う手段であることを特徴とする画像データ処理装置。 - 請求項1乃至4のいずれか一項記載の画像データ処理装置であって、
前記解像度増加処理手段は、2倍以上の整数倍の解像度への解像度変換処理を行う手段であることを特徴とする画像データ処理装置。 - 請求項1乃至4のいずれか一項記載の画像データ処理装置であって、
前記解像度増加処理手段は、解像度600dpiの画像データを解像度1200dpiの画像データに変換する解像度変換処理を行う手段であることを特徴とする画像データ処理装置。 - 不可逆圧縮を施された後で伸長された画像データに対して、該画像データの各画素について入力よりも出力のダイナミックレンジを広く取った、エッジ情報を強調する空間フィルタ処理を施し、
その処理後の画像データに対して高解像度への解像度変換処理を行った後でダイナミックレンジを前記空間フィルタ処理前のレンジに戻す処理を行い、
その処理後の画像データに対してガンマ補正処理を行い、
その処理後の画像データを外部装置に送信することを特徴とする画像データ処理方法。 - 請求項8記載の画像データ処理方法であって、
前記ガンマ補正処理後の画像データに対して、所定周波数以上の高周波成分を遮断する処理を含む低解像度への解像度変換処理を行うことを特徴とする画像データ処理方法。 - 請求項9記載の画像データ処理方法であって、
前記低解像度への解像度変換処理によって、画像データの解像度を前記高解像度への解像度変換処理を行う前の解像度に変換することを特徴とする画像データ処理方法。 - 請求項8乃至10のいずれか一項記載の画像データ処理方法であって、
前記外部装置に送信する画像データを、該外部装置において閲覧が可能な汎用のフォーマットに変換することを特徴とする画像データ処理方法。 - 請求項8乃至11のいずれか一項記載の画像データ処理方法であって、
前記高解像度への解像度変換処理によって、主走査方向又は副走査方向のいずれか一方のみについて解像度変換処理を行うことを特徴とする画像データ処理方法。 - 請求項8乃至11のいずれか一項記載の画像データ処理方法であって、
前記高解像度への解像度変換処理によって、2倍以上の整数倍の解像度への解像度変換処理を行うことを特徴とする画像データ処理手順。 - 請求項8乃至11のいずれか一項記載の画像データ処理方法であって、
前記高解像度への解像度変換処理によって、解像度600dpiの画像データを解像度1200dpiの画像データに変換することを特徴とする画像データ処理方法。 - 画像データを蓄積する画像データ蓄積手段と、画像データを前記蓄積手段に蓄積する際に、その画像データに不可逆圧縮を施す手段とを有する画像データ処理装置を制御するコンピュータを、
前記不可逆圧縮を施され、前記画像データ蓄積手段に蓄積された画像データを伸長する手段と、
該手段による伸長後の画像データに対して、該画像データの各画素について入力よりも出力のダイナミックレンジを広く取った、エッジ情報を強調する空間フィルタ処理を施す空間フィルタ処理手段と、
該手段による処理後の画像データに対して高解像度への解像度変換処理を行った後でダイナミックレンジを前記空間フィルタ処理前のレンジに戻す解像度増加処理手段と、
該手段による処理後の画像データに対してガンマ補正処理を行うガンマ補正手段と、
該手段による処理後の画像データを外部装置に送信する送信手段として機能させるためのプログラム。 - 請求項15記載のプログラムであって、
前記コンピュータを、前記ガンマ補正手段による処理後の画像データに対して、所定周波数以上の高周波成分を遮断する処理を含む低解像度への解像度変換処理を行う解像度低減処理手段として機能させるためのプログラムをさらに含むプログラム。 - 請求項16記載のプログラムであって、
前記解像度低減処理手段の機能は、画像データの解像度を前記解像度増加処理手段による処理前の解像度に変換する機能であることを特徴とするプログラム。 - 請求項15乃至17のいずれか一項記載のプログラムであって、
前記コンピュータを、前記送信手段によって送信する画像データを、前記外部装置において閲覧が可能な汎用のフォーマットに変換するフォーマット変換手段として機能させるためのプログラムをさらに含むプログラム。 - 請求項15乃至18のいずれか一項記載のプログラムであって、
前記解像度増加処理手段の機能は、主走査方向又は副走査方向のいずれか一方のみについて解像度変換処理を行う機能であることを特徴とするプログラム。 - 請求項15乃至18のいずれか一項記載のプログラムであって、
前記解像度増加処理手段の機能は、2倍以上の整数倍の解像度への解像度変換処理を行う機能であることを特徴とするプログラム。 - 請求項15乃至18のいずれか一項記載のプログラムであって、
前記解像度増加処理手段の機能は、解像度600dpiの画像データを解像度1200dpiの画像データに変換する解像度変換処理を行う機能であることを特徴とするプログラム。 - 請求項15乃至21のいずれか一項記載のプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
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