JP4132948B2 - 半導体分布ブラッグ反射器および面発光半導体レーザ素子および面発光レーザアレイおよび面発光レーザモジュールおよび光インターコネクションシステムおよび光通信システム - Google Patents

半導体分布ブラッグ反射器および面発光半導体レーザ素子および面発光レーザアレイおよび面発光レーザモジュールおよび光インターコネクションシステムおよび光通信システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体分布ブラッグ反射器および面発光半導体レーザ素子および面発光レーザアレイおよび面発光レーザモジュールおよび光インターコネクションシステムおよび光通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、0.85μm帯,0.98μm帯に反射帯域を有する分布ブラッグ反射器(DBR)、および、このような分布ブラッグ反射器を共振器ミラーとした同波長帯の面発光半導体レーザ素子が知られている。分布ブラッグ反射器は、屈折率の異なる材料をそれぞれ媒質中の光の波長の1/4厚さに交互に積層して構成され、界面での光波の多重反射を利用し、99.9%以上もの高い反射率を得ることが可能である。
【0003】
また、面発光半導体レーザ素子は、発振閾値電流が低く、高速動作が可能であり、また2次元集積化が容易であることから、光インターコネクション,画像処理システムの光源として好適であり注目されている。面発光半導体レーザ素子は、光学利得を生じる領域が共振器領域中の一部分のみであり、また、共振器長が短いことから、99%以上の高い反射率を有する共振器ミラーが必要である。この共振器ミラーとしては分布ブラッグ反射器が好適である。
【0004】
分布ブラッグ反射器の材料としては、例えば半導体材料または誘電体材料等が挙げられるが、特に半導体材料による半導体分布ブラッグ反射器は通電が可能であり、面発光半導体レーザ素子への応用に適している。
【0005】
従来、このような面発光半導体レーザ素子として、GaAsを基板に用いたAlGaAs系材料による0.85μm帯および0.98μm帯の素子が知られており、この材料系では、AlGaAs材料による半導体分布ブラッグ反射器が共振器ミラーとして用いられている。
【0006】
AlGaAs系材料による半導体分布ブラッグ反射器は、Al組成の異なる2種のAlGaAs層から構成され、低屈折率層として、Al組成の大きい半導体層(例えばAlAs層)が用いられ、また、高屈折率層として、Al組成の小さな半導体層(例えばGaAs層)が用いられている。面発光半導体レーザ素子の典型的な例では、活性層を挟み、それぞれp型およびn型にドープされた半導体分布ブラッグ反射器が設けられ、光波の閉じ込めと活性領域へのキャリアの注入が行われている。
【0007】
また、面発光半導体レーザ素子では、閾値電流密度を低減する目的のために、活性層に近いp型半導体分布ブラッグ反射器の一部に、Al(Ga)As選択酸化層を酸化して得られる電流狭窄層(Al23)を設ける構造が知られている。Al23による電流狭窄層は良質な絶縁体であり、キャリアである正孔は、電流狭窄層によって狭窄され、活性層の限られた領域に注入されるので、容易に注入領域のキャリア密度を発振に要する閾値キャリア密度まで増加させることが可能であり、この結果、サブミリアンペアの低閾値電流を得ることができる。また、選択酸化層の屈折率は、半導体層に比べて低屈折率であるため、横モードの閉じ込め層として作用し、0.98μm帯の素子では狭窄径を4μm程度以下に絞ることで、単一基本横モード発振を得ることができる。
【0008】
しかしながら、上述のように、狭窄径を4μm程度以下に絞った素子では、狭窄領域の電流通路の面積が減少し、電気抵抗が非常に増大してしまうという不具合がある。上記のサイズにまで狭窄径を絞った素子では、狭窄によって生じる狭窄抵抗が素子抵抗の半分以上を占めてしまっているのが現状である。素子の高抵抗化は、動作電圧の上昇、発熱による出力飽和、変調速度の低下等の様々な不具合の原因となり、狭窄による抵抗を低減するために、狭窄領域の抵抗、及びその周辺の抵抗を低減させる必要がある。
【0009】
狭窄による高抵抗化の原因としては、本質的にp型半導体分布ブラッグ反射器の抵抗が高いことが挙げられる。p型半導体材料では、禁則帯幅の異なる2種の半導体層のヘテロ界面に生じるポテンシャル障壁の影響が大きく、n型半導体材料によるn型半導体分布ブラッグ反射器に比べて、非常に高抵抗となる。
【0010】
従来、p型半導体分布ブラッグ反射器の電気抵抗を低減するために、例えば、0.98μm帯等の面発光半導体レーザ素子においては、文献「Photonics Technology Letters Vol.2, No.4, 1990, p.p.234-236、Photonics Technology Letters Vol.4, No.12, 1992, p.p.1325-1327」等に示されているように、分布ブラッグ反射器を構成するAl組成の異なる2種の層の間に、これらの中間のAl組成を有した組成傾斜層等のヘテロ障壁緩衝層を設けることが知られている。
【0011】
このように、面発光半導体レーザ素子では、素子の低抵抗化が重要な課題であり、特にp半導体分布ブラッグ反射器の低抵抗化に関して、活発に研究・開発が行われている。低抵抗化には、上述のようなヘテロ障壁緩衝層を設けることが非常に効果的であり、更に、半導体分布ブラッグ反射器を構成する半導体層,特にヘテロ障壁緩衝層とこの周辺のドーピング濃度を高くすることが非常に効果的である。
【0012】
しかしながら、高濃度にドーピングされたp型半導体では、素子抵抗等の電気的特性を改善することができる反面、正孔の自由キャリア吸収、及び価電子帯間吸収が顕著になり、光学的特性が劣化するという問題がある。特に、面発光半導体レーザ素子において、素子の電力変換効率を向上させるためには、p型半導体分布ブラッグ反射器による発振光の吸収を低減させることが重要であり、電気的抵抗の低減と、光吸収損失の低減という相反する課題を同時に解決する必要がある。
【0013】
この課題を解決するものとして、特開2001−332812には、半導体分布ブラッグ反射器を用いた面発光半導体レーザ素子において、活性層側にあたる半導体分布ブラッグ反射器のドーピング濃度を活性層から離れた領域に対して相対的に低濃度とし、更に半導体分布ブラッグ反射器を構成する屈折率の異なる2種の半導体層の禁則帯幅の差を小さくする構成について示されている。
【0014】
この従来技術では、半導体分布ブラッグ反射器による光吸収の影響による光出力の劣化を改善する方法として、活性層の近傍に位置する半導体分布ブラッグ反射器のドーピング濃度を他の領域のドーピング濃度に比べて低くする構成としている。更に、ドーピング濃度を低減したことによる半導体分布ブラッグ反射器の電気的抵抗の増加を防止するために、上記の低濃度ドーピング領域の半導体分布ブラッグ反射器を構成する半導体層の禁則帯幅の差を、他の領域の禁則帯幅の差に比べて小さくし、ヘテロ界面に生じるポテンシャル障壁高さの低減を行っている。このような構成とした面発光レーザ素子では、光出力の飽和点は高く、また素子抵抗も低くできる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
このように、特開2001−332812では、光吸収を低減することを目的として、活性層近傍の領域のドーピング濃度を低減し、更に、これによる電気的抵抗の増加を防ぐために、半導体分布ブラッグ反射器を構成する2種の半導体層の禁則帯幅の差を小さくする構成としている。
【0016】
しかしながら、このようにヘテロ界面を構成する半導体層の禁則帯幅の差を小さくすることによって、ある程度の低抵抗化の効果は得られるものの、実際にはドーピング濃度を低減したことによってヘテロ界面の影響が大きくなることは避けられず、電気的抵抗を十分に低減するには限界があった。
【0017】
また、特開2001−332812に示されている素子では、禁則帯幅の差を小さくすることにより、半導体分布ブラッグ反射器の反射率が著しく低下してしまい、半導体分布ブラッグ反射器内への光のしみ出しが大きくなるという問題がある。また、禁則帯幅の差を小さくした領域の反射率が低下してしまうので、この低下分を補償するために、半導体分布ブラッグ反射器の積層数を増加しなければならないという問題もある。
【0018】
本発明は、反射率を低下させることなく、低抵抗で且つ光吸収損失が小さい半導体分布ブラッグ反射器および面発光半導体レーザ素子および面発光レーザアレイおよび面発光レーザモジュールおよび光インターコネクションシステムおよび光通信システムを提供することを目的としている。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、半導体分布ブラッグ反射器において、
該半導体分布ブラッグ反射器内不純物のドーピング濃度が互いに異なる第1の領域と第2の領域を有し前記第1の領域は光の入射側にあたり、前記第1の領域と前記第2の領域のそれぞれの領域で、屈折率が異なる2種の半導体層の間に、前記2種の半導体層の間の屈折率をもつ中間層を有し、
前記第1の領域における不純物のドーピング濃度は、前記第2の領域における不純物のドーピング濃度に対し低濃度であり、前記第1の領域における中間層の厚さは前記第2の領域における中間層の厚さに比べて厚いことを特徴としている。
【0020】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の半導体分布ブラッグ反射器において、前記第1の領域における2種の半導体層の禁則帯幅の差が、前記第2の領域における2種の半導体層の禁則帯幅の差に比べて小さいことを特徴としている。
【0023】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の半導体分布ブラッグ反射器において、半導体分布ブラッグ反射器の設計反射波長が1.1μmよりも長波であることを特徴としている。
【0024】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の半導体分布ブラッグ反射器が用いられていることを特徴とする面発光半導体レーザ素子である
【0025】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の面発光半導体レーザ素子において、活性層のIII族材料が、Ga,Inのいずれか、または、全てであり、活性層のV族材料が、As,N,Sbのいずれか、または、全てであることを特徴としている。
【0026】
また、請求項6記載の発明は、請求項4または請求項5に記載の面発光半導体レーザ素子によって構成されていることを特徴とする面発光レーザアレイである。
【0027】
また、請求項7記載の発明は、請求項4または請求項5に記載の面発光半導体レーザ素子、または、請求項6記載の面発光レーザアレイが用いられていることを特徴とする面発光レーザモジュールである。
【0028】
また、請求項8記載の発明は、請求項4または請求項5に記載の面発光半導体レーザ素子、または、請求項6記載の面発光レーザアレイ、または、請求項7記載の面発光レーザモジュールを用いて構成された光インターコネクションシステムである。
【0029】
また、請求項9記載の発明は、請求項4または請求項5に記載の面発光半導体レーザ素子、または、請求項6記載の面発光レーザアレイ、または、請求項7記載の面発光レーザモジュールを用いて構成された光通信システムである。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0031】
第1の実施形態
本発明の第1の実施形態では、屈折率が異なる2種の半導体層の間に、前記2種の半導体層の間の屈折率をもつ中間層(半導体層)を有する半導体分布ブラッグ反射器において、該半導体分布ブラッグ反射器内の一部の領域における中間層(半導体層)の厚さが他の領域における中間層(半導体層)の厚さと異なっていることを特徴としている。
【0032】
図1は本発明の第1の実施形態の半導体分布ブラッグ反射器の具体例を示す図である。図1の半導体分布ブラッグ反射器は、0.98μmを設計反射波長とするp型半導体分布ブラッグ反射器であり、結晶成長方法としてMOCVD法を用いてGaAs基板上に作製されている。
【0033】
図1のp型半導体分布ブラッグ反射器の作製には、III族原料として、トリメチルアルミニウム(TMA),トリメチルガリウム(TMG)が用いられ、V族原料として、アルシン(AsH3)ガスが用いられている。また、p型のドーパントには、CBr4が用いられている。
【0034】
図1の半導体分布ブラッグ反射器は、p型半導体分布ブラッグ反射器Iとp型半導体分布ブラッグ反射器IIとが順次に積層されて構成されており、半導体分布ブラッグ反射器を構成する屈折率の異なる2種の半導体層の間には、2種の半導体層の間の屈折率を有する中間層(半導体層)として、図2に示すように、一方の組成から他方の組成へAl組成を線形に変化させた線形組成傾斜層が設けられている。ここで、図2は線形組成傾斜層周辺のバンドエネルギーを示した図である。なお、MOVCD法では、原料の供給量を変化させることでAlGaAsの組成を制御することができるので、容易に組成傾斜層を成長させることができる。
【0035】
ここで、第1の実施形態の半導体分布ブラッグ反射器では、積層方向に順次に積層されているp型半導体分布ブラッグ反射器Iとp型半導体分布ブラッグ反射器IIとで、中間層(線形組成傾斜層)の厚さが異なっている。
【0036】
図3には図1のp型半導体分布ブラッグ反射器Iの構成が示され、また、図4には図1のp型半導体分布ブラッグ反射器IIの構成が示されている。
【0037】
図3は、図1のp型半導体分布ブラック反射器Iにおける積層の1周期を示したものであり、図3を参照すると、ブラッグ反射器Iでは、低屈折率層としてp−AlAsが用いられ、高屈折率層としてp−GaAsが用いられている。また、これらの半導体層のそれぞれの間には、厚さ60nmの中間層(p−AlGaAs線形組成傾斜層)が設けられており、図3に示す構成を1周期とし、図1の半導体分布ブラッグ反射器では4周期が積層されている。
【0038】
また、図4は、図1のp型半導体分布ブラック反射器IIにおける積層の1周期を示したものであり、図4を参照すると、ブラッグ反射器IIでは、低屈折率層としてp−AlAsが用いられ、高屈折率層としてp−GaAsが用いられている。また、これらの半導体層のそれぞれの間には、厚さ30nmの中間層(p−AlGaAs線形組成傾斜層)が設けられており、図4に示す構成を1周期とし、図1の半導体分布ブラッグ反射器では20周期が積層されている。
【0039】
すなわち、第1の実施形態では、屈折率が異なる2種の半導体層の間に、前記2種の半導体層の間の屈折率をもつ中間層(組成傾斜層)を有する半導体分布ブラッグ反射器において、該半導体分布ブラッグ反射器内の一部の領域I(ブラッグ反射器I)における中間層(組成傾斜層)の厚さを他の領域II(ブラッグ反射器II)における中間層(組成傾斜層)の厚さに比べて厚い構成としている。
【0040】
ここで、ブラッグ反射器I,IIにおいて、ブラッグ反射器を構成する各層の厚さは、中間層(組成傾斜層)を含めて、分布ブラッグ反射器の多重反射の位相条件を満たすように、調整されている。具体的には、ブラッグ反射器Iにおけるp−AlAs層の厚さは12.3nmであり、p−GaAs層の厚さは20.3nmである。また、ブラッグ反射器IIにおけるp−AlAs層の厚さは51.6nmであり、p−GaAs層の厚さは40.9nmである。
【0041】
また、図1のp型半導体分布ブラッグ反射器は、ブラッグ反射器I側から光が入射されるものとして設計されており、領域I(ブラッグ反射器I)における不純物のドーピング濃度は、領域II(ブラッグ反射器II)における不純物のドーピング濃度に対し低濃度となるように、例えば5×1017cm-3程度にドーピングが施されている。
【0042】
このように、光の入射側にあたる、光の電界強度が相対的に大きな領域I(ブラッグ反射器I)での不純物ドーピング濃度を低濃度とすることにより、従来技術のように自由キャリア吸収、価電子帯間吸収による光の吸収損失を低減することができる。
【0043】
更に、図1の半導体分布ブラッグ反射器では、ドーピング濃度が相対的に低濃度である領域I(ブラッグ反射器I)における組成傾斜層の厚さを60nmと、領域II(ブラッグ反射器II)に比べて厚い構成としている。
【0044】
不純物濃度を低濃度とすると、ヘテロ界面におけるポテンシャル障壁の影響により、電気抵抗が高くなるが、図1の半導体分布ブラッグ反射器では、ドーピング濃度が相対的に低濃度である領域I(ブラッグ反射器I)における組成傾斜層の厚さを60nmと非常に厚くすることによって、ポテンシャル障壁を十分に平滑化することが可能となる。これによって、不純物ドーピング濃度を低濃度としたことによるヘテロ界面の影響のために、素子が高抵抗化することを防止できる。また、ドーピング濃度を低濃度としたことにより、光の吸収損失も低く、光学的,電気的に特性の優れた半導体分布ブラッグ反射器が得られる。
【0045】
なお、第1の実施形態において、半導体分布ブラッグ反射器は、GaAs基板上に、MOCVD法によって結晶成長を行なって作製できるが、この他の成長方法が用いられていても良い。また、上述の例では、半導体分布ブラッグ反射器を構成する屈折率の異なる2種の半導体層の間に設けられる中間層(屈折率の異なる2種の半導体層の間の屈折率(禁則帯幅)を有する半導体層)として、線形組成傾斜層を用いているが、中間層としては、この他にも、非線形に組成が変化する非線形組成傾斜層を用いても良いし、また、屈折率が異なる単層または複数の層によって構成されたものを用いても良い。
【0046】
p型半導体分布ブラッグ反射器では、上述のように、スパイク等の半導体へテロ界面におけるスパイク等のポテンシャル障壁の影響により高抵抗化し易いという問題があり、へテロ界面を構成する2種の半導体層の禁則帯幅の差が大きい程、また、ヘテロ界面付近のドーピング濃度が低濃度である程、高抵抗化は顕著である。従来、ヘテロ界面の影響を低減し、抵抗を低減するために、組成傾斜層等の2種の半導体層の間に設けるヘテロ障壁緩衝層のドーピング濃度を高濃度にしていたが、ドーピング濃度を高濃度としたことによって光吸収が増加し、光学特性を劣化させていたという問題がある。
【0047】
また、光吸収を低減するためには、不純物濃度を低減することが有効であるが、逆にヘテロ界面のポテンシャル障壁の影響が顕著となる。ヘテロ界面のポテンシャル障壁の影響を低減するためには、ヘテロ界面を構成する2種の半導体層の禁則帯幅の差を小さくすること等が考えられるが、反射率の低下が生じ、ブラッグ反射器の層数を増加させてしまう他に、ブラッグ反射器中への光の電界強度が大きな領域のしみ出しが大きくなり、低濃度ドーピング領域の厚さを更に厚く設けなければならず、結果的に抵抗値を増加させてしまう問題がある。また、禁則帯幅を小さくした場合でも、ヘテロ界面に設ける組成傾斜層を適切に設計しなければ十分に抵抗を低減することは難しい。
【0048】
また、例えば、分布ブラッグ反射器を面発光レーザ素子等の共振器ミラーとして用いる場合、ブラッグ反射器中にAl(Ga)Asを酸化してなる酸化狭窄層が設けられる場合が多く、更に酸化狭窄層は狭窄効果を高めるために、活性層に近い、低濃度ドーピング領域に設けられることが多い。酸化狭窄層の周辺においては、電流が集中し電流通路が小さくなることによって、ドーピング濃度を低濃度としない場合においても非常に高抵抗化し易い。
【0049】
これに対し、本発明の第1の実施形態の半導体分布ブラッグ反射器では、例えば上述のようなドーピング濃度の低い領域や、酸化狭窄層の周辺部等の高抵抗化しやすい領域の中間層(組成傾斜層)の厚さを、他の領域に対して相対的に厚くすることにより、以上の領域における電気的抵抗を非常に効果的に低減することができる。
【0050】
例えば、図5は、0.98μm帯における4ペアのp型半導体分布ブラッグ反射器の抵抗率を、ブラッグ反射器を構成する低屈折率層のAl組成をパラメータとして、組成傾斜層の厚さに対して示した図であり、縦軸は、各ブラッグ反射器の抵抗率をヘテロ界面の影響が全く無いと仮定した場合の値、つまり、単純にバルクの抵抗で決まる抵抗率によって規格化した値(規格化抵抗率)を示している。従って、図5では、ヘテロ界面の影響が低減されるに従って、規格化抵抗率は1に漸近していく。ここで、高屈折率層にはGaAs層を用いており、ブラッグ反射器のドーピング濃度は、光の吸収を低減するために、全ての領域で5×1017cm-3としている。
【0051】
図5から、半導体分布ブラッグ反射器の抵抗率は、Al組成の差を小さくすることによっても低下するが、これ以上に中間層(組成傾斜層)の厚さを厚くすることによって激減することが分かる。
【0052】
このように、十分に厚い組成傾斜層を設けた場合には、Al組成の差を著しく小さくしなくとも、十分に抵抗を低減出来ることが分かる。
【0053】
また、図6は、0.98μm帯における5ペアのp型半導体分布ブラッグ反射器について、ブラッグ反射器を構成する低屈折率層のAl組成をパラメータとして、反射率を中間層(組成傾斜層)の厚さに対して示した図である。ここで、0.98μmに反射波長を有する、組成傾斜層を設けない構造における高屈折率層であるGaAs層の厚さは、69.5nmであり、低屈折率層であるAlAs,Al0.8Ga0.2As,Al0.6Ga0.4As,Al0.4Ga0.6Asの厚さは、それぞれ、80.2nm,77.5nm,74.8nmである。図6からは、低屈折率層のAl組成を減じることによってブラッグ反射器の反射率が大きく低下することと、例えば60nm程度もの厚い中間層(組成傾斜層)を設けた場合であっても、反射率への影響は低屈折率層のAl組成の変化に比べて少ないことが分かる。
【0054】
従って、この第1の実施形態の半導体分布ブラッグ反射器では、ドーピングが低濃度である領域においても、従来技術のように反射率に大きな影響を与える程度に低屈折率層のAl組成を低減しなくとも、厚い中間層(組成傾斜層)を設けることによって、反射率を高く維持したまま十分に抵抗を低減することができる。また、反射率が高いことによって、光の半導体分布ブラッグ反射器へのしみ出しも低減できるので、低濃度領域の層数を低減することが可能であり、半導体分布ブラッグ反射器全体としての抵抗も低く抑えることができる。また、反射率への影響が少ないので、ブラッグ反射器の層数を増やす必要が無く、積層数の増加による抵抗の増加を防ぐことができる。
【0055】
また、このように中間層(組成傾斜層)の厚さを厚くした領域に、選択酸化層等の酸化狭窄層を設けて電流の狭窄を行う場合には、酸化狭窄により電流が集中する領域の抵抗が低減していることにより、抵抗の増加が低減できる。
【0056】
以上のように、この第1の実施形態では、光の吸収損失、電気的抵抗が小さく、光学的,電気的に特性の優れた半導体分布ブラッグ反射器を得ることができる。
【0057】
ここで、本発明の第1の実施形態として、分布ブラッグ反射器I及びIIの中間層(組成傾斜層)の厚さ及びドーピング濃度が異なる2つの領域から構成されたp型分布ブラッグ反射器について示したが、この他にも、p型分布ブラッグ反射器としては、2つの領域から構成されたもの以外にも、更に複数の(3つ以上の)中間層の厚さ及びドーピング濃度が異なる領域から構成されたものであっても良い。
【0058】
第2の実施形態
本発明の第2の実施形態では、上述した第1の実施形態の半導体分布ブラッグ反射器において、屈折率が異なる2種の半導体層の間の屈折率を有する中間層(半導体層)の厚さが厚い領域における2種の半導体層の禁則帯幅の差が、屈折率が異なる2種の半導体層の間の屈折率を有する中間層(半導体層)の厚さが薄い領域における2種の半導体層の禁則帯幅の差に比べて小さいことを特徴としている。
【0059】
図7は本発明の第2の実施形態の半導体分布ブラッグ反射器の具体例を示す図である。図7の半導体分布ブラッグ反射器は、0.98μmを設計反射波長とするp型半導体分布ブラッグ反射器であり、結晶成長方法としてMOCVD法を用いてGaAs基板上に作製されている。
【0060】
また、図7の半導体分布ブラッグ反射器は、第1の実施形態のp型半導体分布ブラッグ反射器と同様に、中間層(組成傾斜層)の厚さが異なる2つの領域I,II(2つのブラック反射器I,II)によって構成されているが、この第2の実施形態では、更に、それぞれの領域I,IIにおける低屈折率層のAl組成が異なっている。
【0061】
図8には、図7のp型半導体分布ブラッグ反射器Iにおける1周期の構成が示され、また、図9には、図7のp型半導体分布ブラッグ反射器IIにおける1周期の構成が示されている。
【0062】
図8,図9の例では、領域I(ブラッグ反射器I)の低屈折率層として、図8に示すようにp−Al0.8Ga0.2Asが用いられているのに対し、領域II(ブラッグ反射器II)の低屈折率層として、図9に示すようにp−AlAsが用いられている。また、それぞれの領域I,IIの高屈折率層には、p−GaAs層が用いられている。
【0063】
また、ブラッグ反射器Iの各へテロ界面には、厚さ60nmの中間層(p−AlGaAs線形組成傾斜層)が設けられ、ブラッグ反射器IIの各へテロ界面には、厚さ30nmの中間層(p−AlGaAs線形組成傾斜層)が設けられている。
【0064】
ここで、ブラッグ反射器I,IIにおいて、ブラッグ反射器を構成する各層の厚さは、中間層(組成傾斜層)を含めて、分布ブラッグ反射器の多重反射の位相条件を満たすように調整されている。具体的には、ブラッグ反射器Iにおけるp−Al0.8Ga0.2As層の厚さは18.0nmであり、p−GaAs層の厚さは、11.8nmである。また、ブラッグ反射器IIにおけるp−AlAs層の厚さは51.6nmであり、p−GaAs層の厚さは40.9nmである。
【0065】
また、図7の半導体分布ブラッグ反射器は、基板表面である領域I(ブラッグ反射器I)側から光が入射されるとして設計されており、領域I(ブラッグ反射器I)における不純物のドーピング濃度は、例えば5×1017cm-3程度と領域II(ブラッグ反射器II)における不純物ドーピング濃度に対して相対的に低濃度となっている。
【0066】
図7,図8,図9の半導体分布ブラッグ反射器では、領域I(ブラッグ反射器I)の低屈折率層がp−Al0.8Ga0.2Asとなっており、低屈折率層のAl組成が低減していることによって(AlAsからAl0.8Ga0.2Asに低減していることによって)、ヘテロ界面のポテンシャル障壁の発生を抑制することができる。
【0067】
更に、一般にAlGaAs混晶はAl組成が小さい程、キャリアである正孔の移動度が大きくなる傾向がある。従って、本発明のように、厚い組成傾斜層により、十分にヘテロ界面におけるポテンシャル障壁の影響が低減されたブラッグ反射器では、移動度が大きくなることによる抵抗の低減を効果的に得ることが可能である。従って、反射率が著しく低減しない程度に低濃度ドーピング領域の低屈折率層のAl組成を低減することにより、更に、電気的抵抗が低減されたブラッグ反射器を得ることができる。
【0068】
このように、第2の実施形態においても、光の吸収損失、電気抵抗が小さく、光学的,電気的に特性の優れた半導体分布ブラッグ反射器を得ることができる。
【0069】
また、第2の実施形態では、半導体分布ブラッグ反射器内の一部の領域における中間層(組成傾斜層)の厚さを他の領域に比べ厚くするとともに、更に、この領域における半導体分布ブラッグ反射器を構成する2種の半導体層の禁則帯幅の差が他の領域に比べて相対的に小さい構成とすることによって、以下のように、電気的抵抗をより一層低減することができる。
【0070】
すなわち、前述したように、ヘテロ界面における高抵抗化の原因は、ヘテロ界面に生じるポテンシャル障壁であり、ヘテロ界面を構成する半導体層の禁則帯幅の差が大きい程、また、ヘテロ界面のドーピング濃度が低い程、電気的抵抗が高くなる。例えば、光の吸収損失を低減するために、光の入射側にあたるブラッグ反射器の半導体層のドーピング濃度を低濃度とすると、ドーピング濃度を低減したことによって、ヘテロ界面の影響が顕著になり、高抵抗化し易いが、この第2の実施形態のように、このような領域の中間層(組成傾斜層)の厚さを他の領域に比べ厚くすることによって、電気的抵抗を効果的に低減することが可能であり、この際、更に、半導体分布ブラッグ反射器を構成する半導体層の禁則帯幅の差を小さくすることによって、電気的抵抗をより一層効果的に低減することができる。
【0071】
また、例えば、半導体分布ブラッグ反射器を面発光半導体レーザ素子等の共振器ミラーとして用いる場合等、半導体分布ブラッグ反射器中にAl(Ga)Asを酸化してなる酸化狭窄層が設けられる場合が多く、更に、酸化狭窄層は、狭窄効果を高めるために、活性層に近い低濃度ドーピング領域に設けられることが多い。酸化狭窄領域の周辺においては、電流通路が小さくなることによって、ドーピング濃度を低密度としない場合においても非常に高抵抗化し易い。
【0072】
しかしながら、この第2の実施形態の半導体分布ブラッグ反射器のように、ドーピング濃度の低い領域や、酸化狭窄層の周辺部等の高抵抗化しやすい領域の中間層(組成傾斜層)の厚さを厚くすることによって、この領域における電気的抵抗を非常に効果的に低減することが可能であり、この際、更に、半導体分布ブラッグ反射器を構成する半導体層の禁則帯幅の差を小さくすることによって、電気的抵抗をより一層効果的に低減することができる。
【0073】
例えば、図5に示すように組成傾斜層の厚さを50nmとすることにより、いずれの構造においても非常に効果的に電気的抵抗が低減されるが、半導体分布ブラッグ反射器を構成する半導体層の禁則帯幅の差を更に小さくすることによって、より一層低抵抗となる。従って、更に電気的抵抗を低減するには、半導体層の禁則帯幅の差を小さくすることが有効であることが分かる。また、AlGaAs混晶はAl組成が小さい程、キャリアである正孔の移動度が大きくなる傾向があるので、上述の構成とすることでより低抵抗となる。しかし、図6のように、禁則帯幅の差をあまり小さくしすぎると、反射率への影響が大きくなり、半導体分布ブラッグ反射器への光のしみだしが顕著となってしまうので、反射率を考慮しながら、特性が著しく劣化しないように、低屈折率層のAl組成を選ぶことにより、より電気的特性の優れた半導体分布ブラッグ反射器を得ることが可能となる。
【0074】
なお、第2の実施形態において、半導体分布ブラッグ反射器は、GaAs基板上に、MOCVD法によって結晶成長を行なって作製できるが、この他の成長方法が用いられていても良い。また、上述の例では、半導体分布ブラッグ反射器を構成する屈折率の異なる2種の半導体層の間に設けられる中間層(屈折率の異なる2種の半導体層の間の屈折率(禁則帯幅)を有する半導体層)として、線形組成傾斜層を用いているが、中間層としては、この他にも、非線形に組成が変化する非線形組成傾斜層を用いても良いし、また、屈折率が異なる単層または複数の層によって構成されたものを用いても良い。
【0075】
第3の実施形態
本発明の第3の実施形態は、第1または第2の実施形態の半導体分布ブラッグ反射器において、該半導体分布ブラッグ反射器内の光の電界強度に応じて、該半導体分布ブラッグ反射器内の複数の中間層(半導体層)の厚さ及びドーピング濃度が相違していることを特徴としている。
【0076】
より具体的に、第3の実施形態では、半導体分布ブラッグ反射器内の光の電界強度が大きな領域においては、中間層(半導体層)の厚さを厚く、且つ不純物のドーピング濃度を低くする一方、光の電界強度が小さな領域においては、中間層(半導体層)の厚さを薄く、且つ不純物のドーピング濃度を高くしている。
【0077】
図10は本発明の第3の実施形態の半導体分布ブラッグ反射器の具体例を示す図である。図10の半導体分布ブラッグ反射器は、0.98μm帯を設計反射波長とするp型半導体分布ブラッグ反射器であり、結晶成長方法としてMOCVD法を用いてGaAs基板上に作製されている。
【0078】
また、図10の半導体分布ブラッグ反射器は、第1の実施形態のp型半導体分布ブラッグ反射器と同様に、中間層(組成傾斜層)の厚さが異なる2つの領域I,II(2つのブラック反射器I,II)によって構成されているが、第3の実施形態では、領域Iにおける中間層(組成傾斜層)の厚さ、及び不純物のドーピング濃度と、領域IIにおける中間層(組成傾斜層)の厚さ、及び不純物のドーピング濃度とが、光の電界強度に応じて相違している。この際、半導体分布ブラッグ反射器を構成する各層の厚さは、中間層(組成傾斜層)を含めて、半導体分布ブラッグ反射器の多重反射の位相条件を満たすように調整されている。
【0079】
具体的に、図10の半導体分布ブラッグ反射器は、基板表面側である領域I(ブラッグ反射器I)側から光が入射されるとして設計されており、領域I(ブラッグ反射器I)では図11のように低屈折率層としてp−Al0.8Ga0.2Asが用いられ、高屈折率層としてp−GaAsが用いられている。なお、図11は、領域Iにおける半導体分布ブラッグ反射器の構成を示す図であり、半導体分布ブラッグ反射器Iは、図11のように1対のp−GaAs/p−Al0.8Ga0.2As層と、それぞれの層の間に設けられた2つの組成傾斜層よりなる基本構造を1周期とし、図10ではこの基本構造を繰り返し5周期積層して構成されている。図11は、図10の半導体分布ブラッグ反射器における組成傾斜層の厚さの変化の様子を詳しく示すために、上記の基本構造を2周期積層した構造について示したものである。
【0080】
また、図12は図10の半導体分布ブラッグ反射器における領域IIにおける構成を示す図であり、領域II(ブラッグ反射器II)では、図12のように、低屈折率層としてp−Al0.8Ga0.2Asが用いられ、高屈折率層としてp−GaAsが用いられている。なお、図12は同様に、領域II(ブラッグ反射器II)における基本構造を示した図であり、領域IIではp−AlGaAsとp−GaAs層のそれぞれの間には厚さ30nmの中間層(組成傾斜層)が設けられており、図10では、図12に示す基本構造を1周期とし、20周期が繰り返し積層されている。
【0081】
ここで、領域II(ブラッグ反射器II)において、各へテロ界面には、厚さ30nmの中間層(組成傾斜層)が設けられている。
【0082】
また、領域II(ブラッグ反射器II)におけるAl0.8Ga0.2As層及びGaAs層の不純物のドーピング濃度は1×1018cm-3程度としている。中間層(組成傾斜層)のドーピング濃度は、これと同程度かやや高濃度とすることによって、より効果的に低抵抗化が行える。
【0083】
一方、領域I(ブラッグ反射器I)における中間層(組成傾斜層)のドーピング濃度は、光の電界強度が大きい表面側から基板側に向かって(図10,図11の矢印Rの方向に向かって)次第に高濃度となるように調整されており、これに対応して、中間層(組成傾斜層)の厚さは、表面側から基板側に向かって(図10,図11の矢印Rの方向に向かって)次第に薄くなるように設定されている。
【0084】
具体的に、領域I(ブラッグ反射器I)では、表面側におけるドーピング濃度は例えば5×1017cm-3となっており、基板側に向かって次第に増加するように(領域II(ブラッグ反射器II)のドーピング濃度に向かって)調整されている。また、中間層(組成傾斜層)の厚さも、表面側の60nmから基板側に向かって次第に減少するように(ブラッグ反射器IIにおける厚さ30nmに向かって)調整されている。
【0085】
より具体的には、領域I(ブラッグ反射器I)の最表面のヘテロ界面には、厚さ60nmの中間層(組成傾斜層)が設けられており、この中間層(組成傾斜層)を挟むp−Al0.8Ga0.2As層の厚さは18.0nmであり、p−GaAs層の厚さは11.8nmである。そして、領域I(ブラッグ反射器I)における中間層(組成傾斜層)の厚さは、この中間層(組成傾斜層)の厚さ60nmから、領域II(ブラッグ反射器II)の方向に向かって、領域II(ブラッグ反射器II)の中間層(組成傾斜層)の厚さである30nmになるように、ドーピング濃度に応じて徐々に厚さを減少させている。これに伴って、p−Al0.8Ga0.2As層、p−GaAs層の膜厚は次第に増加している。ここで、領域II(ブラッグ反射器II)におけるp−Al0.8Ga0.2As層の厚さは51.6nmであり、p−GaAs層の厚さは40.9nmである。
【0086】
この第3の実施形態の半導体分布ブラッグ反射器では、入射される光の電界強度の大きな領域で、不純物のドーピング濃度を低濃度とし、更に、不純物のドーピング濃度が低濃度となることによって高抵抗となることを防止するために、中間層(組成傾斜層)の厚さを選んでおり(中間層の厚さを厚くしており)、これにより、不必要に抵抗を増加させること無く、また、領域I(ブラッグ反射器I)における反射率を低下させること無く、効率良く吸収損失を低減することが可能となり、光学的,電気的特性の優れたブラッグ反射器を得ることができる。
【0087】
このように、第3の実施形態の半導体分布ブラッグ反射器では、ブラッグ反射器中に厚さが異なった複数の中間層(組成傾斜層)が設けられており、組成傾斜層の厚さ及びドーピング濃度が、半導体分布ブラッグ反射器に入射される光の電界強度に応じて相違しており(具体的に、電界強度が大きな領域においては組成傾斜層の厚さが厚く、更にドーピング濃度が低くなる構成とし、一方電界強度が小さな領域においては、組成傾斜層の厚さが薄く、更にドーピング濃度が高くなる構成としており)、これにより、半導体分布ブラッグ反射器内の電界強度に応じて効率良く、光の吸収損失の低減、及び低抵抗化を図ることができる。
【0088】
半導体分布ブラッグ反射器では、各半導体層の屈折率の違いによる光波の多重反射を利用し、反射波が強め合うように各半導体の厚さは反射波が強め合う位相条件となるように選ばれている。従って、光波の反射は単一の反射鏡のように表面のみで生じるのではなく、光波は半導体分布ブラッグ反射器の内部に浸透しながら、徐々に反射を受けており、入射表面ほど、光の電界強度が強くなっている。
【0089】
従って、光の電界強度に応じて、電界強度が大きな領域における半導体分布ブラッグ反射器のドーピング濃度を低濃度とし、さらにドーピング濃度に応じて十分に低抵抗化できるように組成傾斜層の厚さを決めることによって、より効果的に光の吸収損失の低減と、電気的抵抗の低減を行うことが可能になる。このように、不純物のドーピング濃度を光の電界強度に応じて定めると、吸収を低減するために設けた低ドーピング濃度領域において、必要以上にドーピング濃度を低濃度としてしまうことが無くなるので、不必要に抵抗を増加させたり、組成傾斜層を設けて反射率を低下させたりすることが防止できる。
【0090】
しかしながら、第3の実施形態においても、光の電界強度が大きな入射表面近傍の領域では、ドーピング濃度を十分に低濃度とする必要があるので、十分に厚い組成傾斜層を設けて、低抵抗化することが重要である。
【0091】
また、例えば、半導体分布ブラッグ反射器を面発光半導体レーザ素子等の共振器ミラーとして用いる場合、ブラッグ反射器中にAl(Ga)Asを酸化してなる酸化狭窄層が設けられる場合が多く、更に、酸化狭窄層は、狭窄効果を高めるために、活性層に近い低濃度ドーピング領域に設けられることが多い。酸化狭窄領域の周辺においては、電流通路が小さくなることによって、ドーピング濃度を低密度としない場合においても非常に高抵抗化し易い。
【0092】
このように、酸化狭窄層の周辺では、狭窄により電流通路が減少し、高抵抗化しやすい上に、ドーピング密度が低濃度であることが多いことから、高抵抗になってしまう問題がある。しかしながら、この第3の実施形態のように、このような領域の組成傾斜層を他の領域に比べて十分に厚い構成とすると、狭窄により電流が集中する領域の抵抗が十分に低減されていることにより、抵抗の増加を低減することができる。
【0093】
以上のように、ドーピング濃度の低い領域や、酸化狭窄層の周辺部等の高抵抗化しやすい領域の中間層(組成傾斜層)の厚さを厚くすることによって、ブラッグ反射器の抵抗を非常に効果的に低減することができる。従って、この第3の実施形態では、光学的,電気的に特性の優れた半導体分布ブラッグ反射器を得ることができる。
【0094】
なお、第3の実施形態では、ドーピング濃度,中間層厚さが相違する半導体分布ブラッグ反射器として、中間層の厚さ及びドーピング濃度が光の入射側から、光の電界強度に対応して次第に薄く且つ高濃度となる半導体分布ブラッグ反射器を用いて説明したが、第1,第2の実施形態では、中間層の厚さが異なる2種の領域からなる半導体分布ブラッグ反射器において、中間層の厚い領域におけるドーピングの濃度を低濃度とし、中間層の薄い領域におけるドーピングの濃度を高濃度として、中間層の厚さ及びドーピング濃度を相違させた構成としており、同様に、効果的に光の吸収損失の低減と電気抵抗の低減を図ることができるものである。
【0095】
なお、第3の実施形態において、半導体分布ブラッグ反射器は、GaAs基板上に、MOCVD法によって結晶成長を行なって作製できるが、この他の成長方法が用いられていても良い。また、上述の例では、半導体分布ブラッグ反射器を構成する屈折率の異なる2種の半導体層の間に設けられる中間層(屈折率の異なる2種の半導体層の間の屈折率(禁則帯幅)を有する半導体層)として、線形組成傾斜層を用いているが、中間層としては、この他にも、非線形に組成が変化する非線形組成傾斜層を用いても良いし、また、屈折率が異なる単層または複数の層によって構成されたものを用いても良い。
【0096】
第4の実施形態
本発明の第4の実施形態は、第1乃至第3のいずれかの実施形態の半導体分布ブラッグ反射器において、半導体分布ブラッグ反射器の設計反射波長が1.1μmよりも長波であることを特徴としている。
【0097】
図13は第4の実施形態の半導体分布ブラッグ反射器の具体例を示す図である。図13の半導体分布ブラッグ反射器は、1.3μm帯を設計反射波長とするp型半導体分布ブラッグ反射器であり、結晶成長法としてMOCVD法によってGaAs基板上に作製されている。
【0098】
また、図13の半導体分布ブラッグ反射器は、第1の実施形態のp型半導体分布ブラッグ反射器と同様に、中間層(組成傾斜層)の厚さが異なる2つの領域I,IIによって構成されている。
【0099】
ここで、図14は、図13のp型半導体分布ブラッグ反射器Iにおける積層の1周期を示したものであり、図13を参照すると、ブラッグ反射器Iでは、低屈折率層としてp−Al0.8Ga0.2Asが用いられ、高屈折率層としてp−GaAsが用いられている。また、これらの半導体層のそれぞれの間には厚さ80nmの中間層(p−AlGaAs線形組成傾斜層)が設けられており、図13の半導体分布ブラッグ反射器では図14に示す構成を1周期とし、4周期が積層されている。
【0100】
同様に、図15は、図13のp型半導体分布ブラッグ反射器IIにおける積層の1周期を示したものであり、ブラッグ反射器IIでは、低屈折率層としてp−AlAsが用いられ、高屈折率層としてp−GaAsが用いられている。また、これらの半導体層のそれぞれの間には厚さ50nmの中間層(p−AlGaAs線形組成傾斜層)が設けられており、図13の半導体分布ブラッグ反射器では図15に示す構成を1周期とし、20周期が積層されている。
【0101】
また、図13の半導体分布ブラッグ反射器は、基板表面である領域I(ブラッグ反射器I)側から光が入射されるものとして設計されており、領域Iにおける不純物のドーピング濃度は、例えば5×1017cm-3と、領域IIにおけるドーピング濃度に対して相対的に低濃度となるようにしている。
【0102】
図13の半導体分布ブラッグ反射器の設計反射波長は1.3μmと長波長帯であり、従来の0.98μm帯等のブラッグ反射器と比べ長波となっている。このような長波長帯においては、価電子帯間の光吸収が非常に顕著となることが知られている。例えば、文献「IEEE J. Quantum Electron. Vol.33 No.8 1997 p.p.1369」には、1.3μm帯の光に対するGaAsの光吸収係数は、0.98μm帯の約2倍であり、更に1.5μm帯では、約3倍となることが記載されている。このように、1.1μmよりも長波の光に対しては、光吸収が非常に顕著になり、高効率な半導体分布ブラッグ反射器を得るためには、光吸収の低減を行うことが非常に重要である。
【0103】
図13の半導体分布ブラッグ反射器では、光の入射側にあたる領域Iのドーピング濃度を相対的に低濃度としており、光の吸収損失が少ない。更に、反射波長が長波となったことによって、半導体分布ブラッグ反射器を構成する層の厚さが従来の0.98μm帯の面発光レーザ素子等と比べて厚くなっている。このため、厚い中間層(組成傾斜層)を設ける場合においても、反射率の低下への影響が少なくなっている。また、厚い中間層(組成傾斜層)を設けることによって、ヘテロ界面のポテンシャル障壁を平滑化する効果が非常に高くなっている。従って、半導体分布ブラッグ反射器を構成する2種の半導体層の禁則帯幅の差が大きな場合においても、中間層(組成傾斜層)により電気的抵抗を低減する効果が十分に得られる。従って、半導体分布ブラッグ反射器への光のしみ出しは小さく抑えられ、低濃度ドーピング領域の厚さを薄くすることができる。さらに、半導体分布ブラッグ反射器の層数を低減することができ、電気抵抗を低く抑えることができる。
【0104】
このように、第4の実施形態では、光の吸収損失が少なく、電気抵抗が低い、特性の優れた長波長帯域における半導体分布ブラッグ反射器が得られる。
【0105】
より詳細に説明すると、p型半導体分布ブラッグ反射器の光吸収の原因である価電子帯間吸収は、電子が光を吸収し、価電子帯のスピン軌道スプリットオフバンドから、ヘビーホール及びライトホールバンドに遷移することによって生じ、これらの準位間のエネルギー差が僅かであることから、より長波の光に対して吸収が顕著となる。従って、光通信等で重要な1.3μm及び1.5μm帯では、これまでGaAs基板上に作製されていたレーザ素子等の0.85μm,0.98μm帯等の光に比べ、非常に大きな吸収損失が存在する。つまり、従来技術によるp型半導体分布ブラッグ反射器では、吸収係数が大きいので、抵抗が低く、かつ、吸収損失が小さいという両方の特性を兼ね備えた特性の優れたp型半導体分布ブラッグ反射器を得ることが難しい。
【0106】
しかしながら、本発明の第1乃至第3のいずれかの実施形態の構成では、前述のように、光吸収が顕著となる領域、つまり、半導体分布ブラッグ反射器内において光の強度が大きな領域の光吸収を、抵抗を増加させることなく低減することが可能である。また、この第4の実施形態の1.1μmよりも長波の反射波長を有する半導体分布ブラッグ反射器として、例えば、1.3μm帯での組成傾斜層を設けない構造における、高屈折率層であるGaAs層の厚さは、95.2nmであり、低屈折率層であるAlAsの厚さは111.6nmと、波長の長波長化に伴って厚くなっている。このように反射波長が長波である程、組成傾斜層が半導体分布ブラッグ反射器内に占める割合が少なくなり、反射率に与える影響を低減することができる。つまり、反射率を高く維持したまま、従来の0.85μm帯,0.98μm帯の半導体分布ブラッグ反射器よりも厚い組成傾斜層を設けることが可能となる。組成傾斜層は厚さが厚くなる程、ヘテロ界面のポテンシャル障壁を平滑にする効果が高いので、電気的抵抗を十分に低減することが可能となる。
【0107】
図16は、1.3μmを反射波長とした5ペアの半導体分布ブラッグ反射器について、低屈折率層のAl組成をパラメータとして、組成傾斜層の厚さに対する反射率を示す図である。図16において、半導体分布ブラッグ反射器の高屈折率層はGaAsとしている。組成傾斜層を設けない場合の、低屈折率層であるAlAs,Al0.8Ga0.2As,Al0.6Ga0.4As,Al0.4Ga0.6As層の厚さは、それぞれ、111.6nm,108.2nm,104.8nm,101.5nmであり、高屈折率層であるGaAs層の厚さは上記のように、95.2nmである。図16を参照すると、0.98μm帯の半導体分布ブラッグ反射器と同様に、大半が組成傾斜層となるような厚い組成傾斜層を設けた場合でも、反射率への影響は比較的少ないことが分かる。
【0108】
従って、このような長波長帯を反射波長とした半導体分布ブラッグ反射器では、従来の0.98μm帯の半導体分布ブラッグ反射器に比べて、組成傾斜層の反射率への影響がより少なく、低濃度ドーピング領域における反射率を高く維持し、半導体分布ブラッグ反射器中の光のしみ出しを低減することが容易となる。
【0109】
よって、この第4の実施形態の半導体分布ブラッグ反射器は、低濃度ドーピング領域の層数を低減することが可能であり、ブラッグ反射器全体として低抵抗であり、また低濃度領域における反射率も十分に高いので、半導体分布ブラッグ反射器の層数を増加させる必要が少なく、同様にブラッグ反射器全体としての抵抗を低く抑えることができる。
【0110】
このように、波長が1.1μm帯よりも長波の半導体分布ブラッグ反射器において、特に顕著に低抵抗とすることができる。
【0111】
また、更に、第1乃至第3の実施形態で述べたように、ブラッグ反射器を面発光半導体レーザ素子等の共振器ミラーとして用いる場合、ブラッグ反射器中にAl(Ga)Asを酸化してなる酸化狭窄層が設けられる場合が多く、更に酸化狭窄層は狭窄効果を高めるために、活性層に近い低濃度ドーピング領域に設けられることが多い。酸化狭窄層の周辺の領域の組成傾斜層を他の領域に比べて十分に厚い構成とすると、狭窄により電流が集中する領域の抵抗が十分に低減されていることにより、抵抗の増加を低減することができる。
【0112】
以上のように、この第4の実施形態では、光の吸収損失、及び電気的抵抗が十分に低く、光学的,電気的に特性の優れた長波長帯域(反射波長が1.1μmよりも長波の帯域)における半導体分布ブラッグ反射器を得ることができる。
【0113】
なお、第4の実施形態において、半導体分布ブラッグ反射器は、GaAs基板上に、MOCVD法によって結晶成長を行なって作製できるが、この他の成長法,例えばMBE法等が用いられていても良い。また、上述の例では、半導体分布ブラッグ反射器を構成する屈折率の異なる2種の半導体層の間に設けられる中間層(屈折率の異なる2種の半導体層の間の屈折率(禁則帯幅)を有する半導体層)として、線形組成傾斜層を用いているが、中間層としては、この他にも、非線形に組成が変化する非線形組成傾斜層を用いても良いし、また、屈折率が異なる単層または複数の層によって構成されたものを用いても良い。
【0114】
第5の実施形態
上述した第1乃至第4のいずれかの実施形態の半導体分布ブラッグ反射器を用いて面発光半導体レーザ素子を構成することができる。
【0115】
本発明の第5の実施形態は、第1乃至第4のいずれかの実施形態の半導体分布ブラッグ反射器を共振器ミラーとして用いた面発光半導体レーザ素子である。
【0116】
図17は第5の実施形態の面発光半導体レーザ素子の具体例を示す図である。図17の面発光半導体レーザ素子は、GaInNAsを活性層とした1.3μm帯面発光レーザ素子であり、トリメチルアルミニウム(TMA),トリメチルガリウム(TMG),トリメチルインジウム(TMI),アルシン(AsH3)ガスを原料とし、MOCVD法によって結晶成長が行われている。この際、活性層の窒素原料には、ジメチルヒドラジン(DMHy)を用いている。また、p型ドーパントにはCBr4を用い、n型ドーパントにはH2Seを用いている。
【0117】
すなわち、図17の面発光半導体レーザ素子は、n−GaAs基板上に、n−GaAsバッファー層を形成した後、AlAs/GaAsを1対としたn型半導体分布ブラッグ反射器36ペア、GaAs共振器スペーサー層、GaInNAs/GaAs多重量子井戸構造(活性層)、GaAs共振器スペーサー層、p型半導体分布ブラッグ反射器が順次に形成されている。
【0118】
ここで、p型半導体分布ブラッグ反射器は、Al0.8Ga0.2As/GaAsを1対とした4対のp型半導体分布ブラッグ反射器I(領域I)と、Al0.8Ga0.2As/GaAsを1対とした18対のp型半導体分布ブラッグ反射器II(領域II)とによって構成されており、発振領域である活性層に近く、光電界強度が大きな領域に位置するブラッグ反射器I(領域I)のドーピング濃度は発振光の吸収損失を低減するように5×1017cm-3程度と、ブラッグ反射器IIにおけるドーピング濃度1×1018cm-3に対して、相対的に低濃度となるようにドーピングが施されている。
【0119】
また、p型半導体分布ブラッグ反射器I(領域I)の各へテロ界面には、一方の半導体層から他方の半導体層へAl組成を線形に変化させた厚さ80nmの線形組成傾斜層(中間層)が設けられている。また、p型半導体分布ブラッグ反射器II(領域II)の各へテロ界面にも、同様に、厚さ50nmの線形組成傾斜層(中間層)が設けられている。
【0120】
1.3μm帯のように長波の面発光半導体レーザ素子では、反射率を著しく低下させることなく、このように厚い組成傾斜層(中間層)を設けることが可能である。
【0121】
また、図17の面発光半導体レーザ素子では、活性層側から1対目のp型半導体分布ブラッグ反射器I(領域I)の界面に、厚さ30nmのAlAs選択酸化層が設けられている。また、p型半導体分布ブラッグ反射器の最表面のGaAs層は、ドーピング濃度を高くし、コンタクト層と兼用するようにしている。
【0122】
ここで、p型半導体分布ブラッグ反射器及びn型半導体分布ブラッグ反射器を構成する各層の厚さは、組成傾斜層(中間層)を含めて、第1の実施形態と同様に分布ブラッグ反射器の多重反射の位相条件を満たすように調整されており、AlAs選択酸化層に接したAl0.8Ga0.2As層の厚さも同様に調整が行われている。また、この面発光半導体レーザ素子の活性層と2つの共振器スペーサー層における発振光の位相変化は、2πに等しく、λキャビティーを形成している。また、活性層は、λキャビティーの中央、つまり光の定在波の腹となる位置に配置されている。
【0123】
図17の面発光半導体レーザ素子は、上記のような積層構造(素子積層膜)を形成した後、次のようにして作製される。
【0124】
すなわち、上記のような積層構造を形成した後、公知の写真製版,ドライエッチング法により、素子部となる領域を残し、p−GaAsコンタクト層の表面から、n半導体分布ブラッグ反射器に接したGaAs共振器スペーサー層の途中までの各層のエッチング除去を行なう。この際、素子部となるメサは30μm×30μmの方形メサ形状としている。
【0125】
次に、加熱した純水を窒素ガスによりバブリングして得られた雰囲気中で加熱を行い、AlAs選択酸化層のエッチング側面から素子中央部に向かい、横方向から選択酸化を行い、電流狭窄構造を設ける。ここで、電流通路となる領域の大きさは5μm×5μmとする。
【0126】
次に、メサ部をポリイミド等の絶縁性樹脂によって埋め込んだ後、電極材料の蒸着、及びリフトオフ法を用いて、素子の上面に光出射部に開口を有したp型電極を形成する。次に、GaAs基板の裏面にn型電極を形成し、図17の面発光半導体レーザ素子を作製することができる。
【0127】
図17の面発光半導体レーザ素子では、特に発振光の強度が強い活性層近傍におけるp型半導体分布ブラッグ反射器のドーピング濃度が低減されており、これにより、光吸収による損失が低減されており、これによって、素子のスロープ効率を向上させ、発振閾値電流を低減させることができる。更に、p型ブラッグ反射器I(領域I)における中間層(組成傾斜層)の厚さを、p型ブラッグ反射器II(領域II)における中間層(組成傾斜層)の厚さに比べて厚く設けたことで、ドーピング濃度を低濃度としているにもかかわらず、ヘテロ界面のポテンシャル障壁が十分平滑化されており、抵抗値の増加,動作電圧の増加が生じるのを防止できる。従って、素子の発熱も増加することが無く、新たな発熱による出力の低下は見られず、逆に、光の吸収損失が低減したことにより、従来よりも高出力を得ることが可能となる。
【0128】
また、図17の面発光半導体レーザ素子は、活性層材料をGaInNAsとしており、GaAs基板上にAl(Ga)As/GaAsによる特性の優れた半導体分布ブラッグ反射器を用いて1.3μmで発振する面発光半導体レーザ素子を構成することができる。GaInNAs混晶は、GaAs共振器スペーサー層との伝導帯バンド不連続量が大きく、活性層への電子の閉じ込め効果が高いので、高温まで安定な発振が得られる。また、1.3μm帯は石英ファイバの零分散帯にあたり、同シングルモードファイバを用いることにより、高速通信が可能である。このことから、図17の面発光半導体レーザ素子は、石英シングルモードファイバと組み合わせることによって、高速通信システムを容易に実現することが可能となる。
【0129】
なお、上述の例では、n型半導体基板上に結晶成長を行って作製された面発光半導体レーザ素子について説明したが、面発光半導体レーザ素子としては、この他にも、p型半導体基板上に結晶成長を行なって作製されたものであっても良い。
【0130】
図18には、p型半導体基板上に結晶成長を行なって作製された面発光半導体レーザ素子の例が示されている。図18の面発光半導体レーザ素子は、p−GaAs基板上に、MOCVD法により図17の面発光半導体レーザ素子と同様に結晶成長を行って作製される。
【0131】
すなわち、図18の面発光半導体レーザ素子は、先ず、p−GaAs基板上に、p−GaAsバッファー層の結晶成長を行った後、Al0.8Ga0.2As/GaAsを1対とする32対のp型半導体分布ブラッグ反射器II(領域II)の結晶成長を行い、続いて、Al0.5Ga0.5As/GaAsを1対とする5対のp型半導体分布ブラッグ反射器I(領域I)、GaAs共振器スペーサー層、GaInNAs/GaAs多重量子井戸活性層、GaAsスペーサー層、Al0.8Ga0.2As/GaAsを1対とする24対のn型半導体分布ブラッグ反射器の結晶成長を行って作製される。
【0132】
図18の面発光半導体レーザ素子では、図17の面発光半導体レーザ素子と同様に、p型半導体分布ブラッグ反射器II(領域II)の各へテロ界面には、電気的抵抗を低減するための厚さ50nmの線形組成傾斜層(中間層)が、また、p型半導体分布ブラッグ反射器I(領域I)の各へテロ界面には、厚さ80nmの線形組成傾斜層(中間層)が、半導体分布ブラッグ反射器の多重反射の位相条件を満たすように設けられている。また、活性層に一番近いAl0.8Ga0.2As/GaAsのヘテロ界面には、AlAs選択酸化層が同様に位相条件を考慮して設けられている。
【0133】
図18の面発光半導体レーザ素子は、結晶成長の後、図17の面発光半導体レーザ素子と同様に、ドライエッチング、選択酸化、絶縁性樹脂による埋め込み、電極形成が行われている。但し、ドライエッチング工程では、p型半導体分布ブラッグ反射器中のAlAs選択酸化層を酸化させるために、p型半導体分布ブラッグ反射器の途中までエッチングが行われている。
【0134】
図18の面発光半導体レーザ素子も図17の面発光半導体レーザ素子と同様に、p型半導体分布ブラッグ反射器による光の吸収損失が低減したことによって、発振閾値電流が低減し、スロープ効率を向上させることができる。また、素子抵抗の増加が防止されたことによって、動作電圧は低く、高出力を得ることができる。
【0135】
また、図18の面発光半導体レーザ素子は、石英シングルモードファイバと組み合わせることによって、高速通信システムを容易に実現することが可能となる。
【0136】
このように、第5の実施形態の面発光半導体レーザ素子では、活性層に近い発振光の電界強度が大きな領域におけるp型半導体分布ブラッグ反射器のドーピング濃度を、活性層から離れた発振光の電界強度が比較的小さい領域におけるドーピング濃度に対して低濃度とすることによって、光の吸収損失を低減し、スロープ効率の向上、発振閾値電流の低減が可能となる。
【0137】
また、本発明では、p型ブラッグ反射器の低濃度ドーピング領域における組成傾斜層の厚さを、その他の高濃度ドーピング領域に比べて厚くすることにより、低濃度ドーピング領域のヘテロ界面のポテンシャル障壁が十分に平滑化され、抵抗値を増加させることなく光の吸収損失を低減することが可能となる。この際、組成傾斜層の厚さは図6のように十分に厚くした場合であっても、反射率に与える影響は少なく、従って、十分に厚い組成傾斜層を設けることができる。従って、従来のように低濃度領域における電気抵抗を低減するために、Al組成を著しく低下させる必要がなく、低濃度ドーピング領域の反射率を高く維持することが可能である。よって、ブラッグ反射器中への光のしみ出しが低減され、低濃度ドーピング領域の厚さを薄くするできるので、抵抗の増加が防止できる。また、ブラッグ反射器の積層数も少なくすることができるので、抵抗の増加を防止することができる。
【0138】
更に、面発光半導体レーザ素子では、半導体分布ブラッグ反射器中にAl(Ga)Asを酸化してなる酸化狭窄層が設けられる場合が多く、更に酸化狭窄層は狭窄効果を高めるために、活性層に近い低濃度ドーピング領域に設けられることが多い。酸化狭窄層の周辺においては、電流が集中し電流通路が小さくなることによって、ドーピング濃度を低濃度としない場合においても、非常に高抵抗化し易いという問題がある。
【0139】
しかしながら、本発明の半導体分布ブラッグ反射器のように、例えば上述の様なドーピング濃度の低い領域や、酸化狭窄層の周辺部等の高抵抗化しやすい領域の組成傾斜層の厚さを、他の領域に対して相対的に厚くすることにより、以上の領域における抵抗を非常に効果的に低減することが可能である。
【0140】
よって、従来の素子に比べ、動作電圧、素子の発熱を低減することが可能であり、熱による飽和出力が高く、吸収損失が低減したことにより、スロープ効率が向上し、発振閾値電流が低減した面発光半導体レーザ素子を得ることができる。
【0141】
このように、第5の実施形態の面発光半導体レーザ素子は、素子抵抗を増加させることなく、面発光半導体レーザ素子における発振光の吸収損失を低減し、スロープ効率を向上させ、更に発振閾値電流を低減させ、更に高出力動作を可能とし、更に電力変換効率を向上させる特性を有している。
【0142】
なお、この第5の実施形態の面発光半導体レーザ素子において、活性層のIII族材料を、Ga,Inのいずれか、または、全てのものとし、活性層のV族材料を、As,N,Sbのいずれか、または、全てのものとすることができる。
【0143】
これらの材料から成る活性層は、GaAs基板上に結晶成長が可能であり、反射率、熱伝導性、プロセス制御(結晶成長や、Al(Ga)As混晶等の選択酸化)の点において優れた特性を持つAlGaAs系材料によるDBRを用いた面発光半導体レーザ素子を得ることができる。また、これらの材料を活性層に用いることで、0.85μm帯及び0.98μm帯、更に光ファイバ通信で重要な1.3μm帯,1.5μm帯を含む、1.1μmよりも長波の発振光を得ることができる。
【0144】
具体的に、波長1.3μm帯の面発光半導体レーザ素子と石英シングルモードレーザとを組み合わせることによって、高速光通信を実現することが可能になる。また、1.5μm帯の素子によるDWDMを用いれば、大容量通信を実現することが可能になる。
【0145】
この際、特に、上述した活性層材料の中でも、GaInN(Sb)As混晶材料は、1.1μm以上の発振を得ることができる上に、キャリア閉じ込め層となるGaAs層に対して、GaInN(Sb)As層の伝導帯のバンド不連続量が大きく、電子のオーバーフローが低減できるので、高温まで安定な発振を得ることができる。
【0146】
これらに加えて、本発明の面発光半導体レーザ素子では、上述のように、従来の素子に比べて、光の吸収損失が小さく、低抵抗であるので、スロープ効率が向上し、発振閾値電流を低減することができる。また、抵抗が低いので、飽和出力が高く、高出力を得ることができる。また、電力変換効率が高く、低消費電力も小さい。以上のように、光通信,光伝送用として好適な面発光半導体レーザ素子を提供することができる。
【0147】
以上の各実施形態において、半導体分布ブラッグ反射器の材料としてAlGaAs混晶について説明を行なったが、この他にもGaInP混晶を用いることも可能である。GaInP混晶はGaAs基板に対し格子整合が可能であり、禁則帯幅もGaAs化合物半導体に比べ大きい(屈折率はGaAs化合物半導体に比べ小さい)ので、AlGaAs混晶の代わりに低屈折率層として用いることができる。また、GaInP混晶半導体は、AlGaAs混晶半導体層に対して湿式エッチングにおける選択性を有しており、湿式エッチングによりメサを形成する場合のエッチングストップ層としても用いることができるので、同工程による面発光レーザ素子ではエッチング制御性を向上させることができる。
【0148】
第6の実施形態
本発明の第6の実施形態は、第5の実施形態の面発光半導体レーザ素子によって構成された面発光レーザアレイである。
【0149】
図19は第6の実施形態の面発光レーザアレイの具体例を示す図である。図19の面発光レーザアレイは、第5の実施形態の面発光半導体レーザ素子を2次元的に3×3個集積したモノリシックレーザアレイとなっている。図19の面発光レーザアレイでは、個々の面発光半導体レーザ素子を独立に駆動するために、個別にp電極配線が設けられている。なお、図19の面発光レーザアレイは、第5の実施形態と同様の手順,方法で作製されている。
【0150】
図19の面発光レーザアレイでは、この面発光レーザアレイを構成する個々の面発光半導体レーザ素子は、光の吸収損失が小さく、更に低抵抗であり、特にアレイとした場合の電力変換効率が高いので、効率の高い面発光レーザアレイを得ることができる。
【0151】
すなわち、本発明の面発光半導体レーザ素子は、前述したように、スロープ効率が大きく、発振閾値電流が低く、電力変換効率が高く、低消費電力のものにすることができる。従って、このような本発明の面発光半導体レーザ素子により構成された面発光レーザアレイは、アレイ全体としての電力変換効率が高く、非常に高効率なものとなる。
【0152】
また、面発光レーザアレイを形成することによって、並列光伝送が容易となり、更に大容量の光伝送、光通信を行うことが可能である。また、本発明の面発光半導体レーザ素子の前述した活性層材料によって1.3μm帯で発振する面発光レーザアレイを構成した場合には、高速並列伝送,通信が可能になる。また、同様に、1.5μm帯付近で発振するレーザアレイを構成した場合には、WDM,DWDM等の波長多重通信が可能であり、更に高速,大容量光伝送,光通信が可能な面発光レーザアレイを提供することができる。
【0153】
第7の実施形態
本発明の第7の実施形態は、第5の実施形態の面発光半導体レーザ素子、または、第6の実施形態の面発光レーザアレイを用いた面発光レーザモジュールである。
【0154】
図20は第7の実施形態の面発光レーザモジュールの具体例を示す図である。図20の面発光レーザモジュールは、シリコン基板上に、1次元モノリシック面発光レーザアレイと、マイクロレンズアレイと、ファイバアレイ(石英シングルモードファイバ)とが実装されて構成されている。
【0155】
ここで、面発光レーザアレイには、第6の実施形態の面発光レーザアレイがファイバに対向して設けられており、この面発光レーザアレイは、マイクロレンズアレイを介して、シリコン基板に形成されたV溝に実装されている石英シングルモードファイバと結合している。この面発光レーザアレイの発振波長は1.3μm帯であり、石英シングルモードファイバを用いることで、高速光並列伝送を行なうことができる。
【0156】
また、この第7の実施形態の面発光レーザモジュールの光源として、第6の実施形態の面発光レーザアレイを用いることにより、光の吸収損失が小さく、更に低抵抗であり、電力変換効率が高い面発光レーザモジュールを得ることができる。
【0157】
このように、第7の実施形態の面発光レーザモジュールには、光の吸収損失が低減された低抵抗な第5の実施形態の面発光半導体レーザ素子、又は、第6の実施形態の面発光レーザアレイが用いられており、これによって、スロープ効率が大きく、発振閾値電流が低く、電力変換効率が高く、低消費電力な面発光レーザモジュールを提供することができる。
【0158】
特に、GaInNAs混晶半導体を活性層材料とした1.3μm帯面発光レーザと石英シングルモードファイバとを組み合わせた面発光レーザモジュールは、1.3μm帯が石英の零分散帯に当たるため、高速変調に非常に適した構成となり、この面発光レーザモジュールを用いることによって、高速,大容量な光通信,光伝送を行うことが可能となる。
【0159】
また、1.5μm帯で発振する面発光半導体レーザ素子を用いた面発光レーザモジュールでは、WDM,DWDM等の波長多重通信が可能であり、更に、高速,大容量の光伝送,光通信が可能となる。以上のように、特性の優れた高速,大容量の光伝送,光通信が可能な面発光レーザモジュールを提供することができる。
【0160】
第8の実施形態
本発明の第8の実施形態は、第5の実施形態の面発光半導体レーザ素子、または、第6の実施形態の面発光レーザアレイ、または、第7の実施形態の面発光レーザモジュールを用いて構成された光インターコネクションシステムである。
【0161】
図21は第8の実施形態の一例としての並列光インターコネクションシステムを示す図である。図21の光インターコネクションシステムでは、機器1と機器2との間が光ファイバアレイ(石英シングルモードファイバアレイ)を用いて接続されている。ここで、送信側である機器1には、第7の実施形態の面発光レーザアレイによる面発光レーザモジュールと、これの駆動回路とが備わっている。また、受信側である機器2には、フォトダイオードアレイモジュールと信号検出回路とが備わっている。
【0162】
図21の光インターコネクションシステムでは、第7の実施形態の面発光レーザモジュールを用いることで、発振光の吸収損失が小さく、更に低抵抗であり、電力変換効率を高くすることができ、消費電力が小さく特性の優れた光伝送システムを得ることができる。また、GaInNAsを活性層とした本発明の面発光レーザアレイを用いた面発光レーザモジュールを用いることによって、環境温度の変化に対しても、安定な、非常に信頼性の高いインターコネクションシステムを構成することができる。
【0163】
なお、上述の例では、並列光インターコネクションシステムを例に説明したが、この他にも、第5の実施形態におけるような単一素子を用いたシリアル伝送システムを構成することもできる。また、光インターコネクションシステムとしては、第7の実施形態の面発光レーザモジュールの他にも、第5の実施形態,第6の実施形態の面発光半導体レーザ素子,面発光レーザアレイを用いることができる。また、機器間の光インターコネクションシステムの他にも、ボード間,チップ間,チップ内の光インターコネクションに適用することもできる。
【0164】
このように、第8の実施形態は、第5の実施形態の面発光半導体レーザ素子、または、第6の実施形態の面発光レーザアレイ、または、第7の実施形態の面発光レーザモジュールを用いて構成されている光インターコネクションシステムであり、この光インターコネクションシステムには、吸収損失が低減された低抵抗な面発光半導体レーザ素子、または、面発光レーザアレイ、または、面発光レーザモジュールが用いられるので、電力変換効率が高く、低消費電力な光インターコネクションシステムを構築できる。
【0165】
特に、GaInNAs混晶半導体を活性層材料とした1.3μm帯面発光レーザと石英シングルモードファイバとを組み合わせた面発光レーザモジュールによって構成された光インターコネクションシステムは、1.3μm帯が石英の零分散帯に当たるため、高速変調に非常に適した構成であり、高速,大容量な光伝送を行うことが可能である。また、GaInNAs混晶半導体を活性層とした面発光半導体レーザ素子は、環境温度等の変化に対しても高温まで安定に発振を得ることが可能であるので、非常に信頼性の高い光インターコネクションシステムを提供することができる。
【0166】
このように、第8の実施形態では、第5の実施形態の面発光半導体レーザ素子、または、第6の実施形態の面発光レーザアレイ、または、第7の実施形態の面発光レーザモジュールを用いることによって、高速,大容量な光伝送が可能であり、また電力変換効率が高く、更に信頼性の高い光インターコネクションシステムを提供することができる。
【0167】
第9の実施形態
本発明の第9の実施形態は、第5の実施形態の面発光半導体レーザ素子、または、第6の実施形態の面発光レーザアレイ、または、第7の実施形態の面発光レーザモジュールを用いて構成された光通信システムである。
【0168】
図22は第9の実施形態の光通信システムの一例としての光LANシステムを示す図である。図22の光LANシステムは、第5の実施形態の面発光半導体レーザ素子、または、第6の実施形態の面発光レーザアレイ、または、第7の実施形態の面発光レーザモジュールを用いて構成されている。
【0169】
すなわち、図22の光LANシステムでは、サーバーとコアスイッチとの間の光伝送の光源、および/または、コアスイッチと各スイッチとの間の光伝送の光源、および/または、スイッチと各端末との間の光伝送の光源に、第5の実施形態の面発光半導体レーザ素子、または、第6の実施形態の面発光レーザアレイ、または、第7の実施形態の面発光レーザモジュールが用いられている。また、各機器間は石英シングルモードファイバまたはマルチモードファイバによって結合を行っている。このような光LANの物理層としては、例えば1000BASE−LX等のギガビットイーサネットが挙げられる。
【0170】
図22の光LANシステムでは、光伝送の光源に、第5の実施形態の面発光半導体レーザ素子、または、第6の実施形態の面発光レーザアレイ、または、第7の実施形態の面発光レーザモジュールが用いられることで、発振光の吸収損失が小さく、低抵抗であり、更に電力変換効率を高くすることができ、消費電力の小さな光伝送システムを提供することができる。更に、GaInNAsを活性層とした本発明の面発光レーザでは、環境温度等,駆動条件の変化に対しても安定に発振が得られ、信頼性の高い光通信システムを構成することができる。
【0171】
このように、第9の実施形態は、第5の実施形態の面発光半導体レーザ素子、または、第6の実施形態の面発光レーザアレイ、または、第7の実施形態の面発光レーザモジュールを用いて構成された光通信システムであり、この光通信システムには、光の吸収損失が低減された低抵抗な面発光半導体レーザ素子、または、面発光レーザアレイ、または、面発光レーザモジュールが用いられるので、電力変換効率が高く、低消費電力な光通信システムを構築できる。
【0172】
特に、GaInNAs混晶半導体を活性層材料とした1.3μm帯面発光レーザと石英シングルモードファイバとを組み合わせた面発光レーザモジュールによって構成された光通信システムは、1.3μm帯が石英の零分散帯に当たるため、高速変調に非常に適した構成であり、高速,大容量な光通信,光伝送を行うことが可能である。また、GaInNAs混晶半導体を活性層とした面発光半導体レーザ素子は、環境温度等の変化に対しても高温まで安定に発振を得ることが可能であるので、非常に信頼性の高い光通信システムを得ることができる。
【0173】
このように、第9の実施形態では、第5の実施形態の面発光半導体レーザ素子、または、第6の実施形態の面発光レーザアレイ、または、第7の実施形態の面発光レーザモジュールを用いることによって、高速,大容量な光通信が可能であり、また電力変換効率が高く、更に信頼性の高い光通信システムを提供することができる。
【0174】
ここで、光通信システムとして、LANについて説明を行ったが、この他にも幹線系やWAN,MAN等にも用いることができる。また、端末は、光により情報の授受を行う全ての情報機器端末に用いることができる。
【0175】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1乃至請求項3記載の発明によれば、半導体分布ブラッグ反射器において、
該半導体分布ブラッグ反射器内不純物のドーピング濃度が互いに異なる第1の領域と第2の領域を有し前記第1の領域は光の入射側にあたり、前記第1の領域と前記第2の領域のそれぞれの領域で、屈折率が異なる2種の半導体層の間に、前記2種の半導体層の間の屈折率をもつ中間層を有し、
前記第1の領域における不純物のドーピング濃度は、前記第2の領域における不純物のドーピング濃度に対し低濃度であり、前記第1の領域における中間層の厚さは前記第2の領域における中間層の厚さに比べて厚いので、反射率を低下させることなく、低抵抗で且つ光吸収損失が小さい半導体分布ブラッグ反射器を提供することができる。
【0176】
また、請求項4または請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の半導体分布ブラッグ反射器が用いられているので、発振光の吸収損失が低く、更に抵抗が低く、高出力動作が可能で、効率の高い面発光半導体レーザ素子を提供することができる。
【0177】
また、請求項6記載の発明によれば、請求項4または請求項5に記載の面発光半導体レーザ素子によって構成されているので、発振光の吸収損失が低く、更に抵抗が低く、高出力動作が可能で、効率の高い面発光レーザアレイを提供することができる。
【0178】
また、請求項7記載の発明によれば、請求項4または請求項5に記載の面発光半導体レーザ素子、または、請求項6記載の面発光レーザアレイが用いられているので、高出力動作が可能で、電力変換効率が高く、消費電力が低い面発光レーザモジュールを提供することができる。
【0179】
また、請求項8記載の発明によれば、請求項4または請求項5に記載の面発光半導体レーザ素子、または、請求項6記載の面発光レーザアレイ、または、請求項7記載の面発光レーザモジュールを用いて構成された光インターコネクションシステムであるので、低消費電力で、電力変換効率の高い光インターコネクションシステムを提供することができる。
【0180】
また、請求項9記載の発明によれば、請求項4または請求項5に記載の面発光半導体レーザ素子、または、請求項6記載の面発光レーザアレイ、または、請求項7記載の面発光レーザモジュールを用いて構成された光通信システムであるので、低消費電力で、電力変換効率の高い光通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の半導体分布ブラッグ反射器の具体例を示す図である。
【図2】線形組成傾斜層の一例を示す図である。
【図3】図1のp型半導体分布ブラッグ反射器Iの構成例を示す図である。
【図4】図1のp型半導体分布ブラッグ反射器IIの構成例を示す図である。
【図5】0.98μm帯における4ペアのp型半導体分布ブラッグ反射器の抵抗率を、ブラッグ反射器を構成する低屈折率層のAl組成をパラメータとして、組成傾斜層の厚さに対して示した図である。
【図6】0.98μm帯における5ペアのp型半導体分布ブラッグ反射器について、ブラッグ反射器を構成する低屈折率層のAl組成をパラメータとして、反射率を中間層(組成傾斜層)の厚さに対して示した図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の半導体分布ブラッグ反射器の具体例を示す図である。
【図8】図7のp型半導体分布ブラッグ反射器Iの構成を示す図である。
【図9】図7のp型半導体分布ブラッグ反射器IIの構成を示す図である。
【図10】本発明の第3の実施形態の半導体分布ブラッグ反射器の具体例を示す図である。
【図11】図10の半導体分布ブラッグ反射器の領域Iを示す図である。
【図12】図10の半導体分布ブラッグ反射器の領域IIを示す図である。
【図13】第4の実施形態の半導体分布ブラッグ反射器の具体例を示す図である。
【図14】図13の半導体分布ブラッグ反射器の領域Iを示す図である。
【図15】図13の半導体分布ブラッグ反射器の領域IIを示す図である。
【図16】1.3μmを反射波長とした5ペアの半導体分布ブラッグ反射器について、低屈折率層のAl組成をパラメータとして、組成傾斜層の厚さに対する反射率を示す図である。
【図17】第5の実施形態の面発光半導体レーザ素子の具体例を示す図である。
【図18】p型半導体基板上に結晶成長を行なって作製された面発光半導体レーザ素子の例を示す図である。
【図19】第6の実施形態の面発光レーザアレイの具体例を示す図である。
【図20】第7の実施形態の面発光レーザモジュールの具体例を示す図である。
【図21】第8の実施形態の一例としての並列光インターコネクションシステムを示す図である。
【図22】第9の実施形態の光通信システムの一例としての光LANシステムを示す図である。

Claims (9)

  1. 半導体分布ブラッグ反射器において、
    該半導体分布ブラッグ反射器内不純物のドーピング濃度が互いに異なる第1の領域と第2の領域を有し前記第1の領域は光の入射側にあたり、前記第1の領域と前記第2の領域のそれぞれの領域で、屈折率が異なる2種の半導体層の間に、前記2種の半導体層の間の屈折率をもつ中間層を有し、
    前記第1の領域における不純物のドーピング濃度は、前記第2の領域における不純物のドーピング濃度に対し低濃度であり、前記第1の領域における中間層の厚さは前記第2の領域における中間層の厚さに比べて厚いことを特徴とする半導体分布ブラッグ反射器。
  2. 請求項1記載の半導体分布ブラッグ反射器において、前記第1の領域における2種の半導体層の禁則帯幅の差が、前記第2の領域における2種の半導体層の禁則帯幅の差に比べて小さいことを特徴とする半導体分布ブラッグ反射器。
  3. 請求項1または請求項2に記載の半導体分布ブラッグ反射器において、半導体分布ブラッグ反射器の設計反射波長が1.1μmよりも長波であることを特徴とする半導体分布ブラッグ反射器。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の半導体分布ブラッグ反射器が用いられていることを特徴とする面発光半導体レーザ素子。
  5. 請求項4記載の面発光半導体レーザ素子において、活性層のIII族材料が、Ga,Inのいずれか、または、全てであり、活性層のV族材料が、As,N,Sbのいずれか、または、全てであることを特徴とする面発光半導体レーザ素子。
  6. 請求項4または請求項5に記載の面発光半導体レーザ素子によって構成されていることを特徴とする面発光レーザアレイ。
  7. 請求項4または請求項5に記載の面発光半導体レーザ素子、または、請求項6記載の面発光レーザアレイが用いられていることを特徴とする面発光レーザモジュール。
  8. 請求項4または請求項5に記載の面発光半導体レーザ素子、または、請求項6記載の面発光レーザアレイ、または、請求項7記載の面発光レーザモジュールを用いて構成された光インターコネクションシステム。
  9. 請求項4または請求項5に記載の面発光半導体レーザ素子、または、請求項6記載の面発光レーザアレイ、または、請求項7記載の面発光レーザモジュールを用いて構成された光通信システム。
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