JP4132908B2 - ガラスセラミックス、ガラスセラミックス基板、液晶パネル用対向基板および液晶パネル用防塵基板 - Google Patents

ガラスセラミックス、ガラスセラミックス基板、液晶パネル用対向基板および液晶パネル用防塵基板 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラスセラミックス、ガラスセラミックス基板、液晶パネル用対向基板および液晶パネル用防塵基板に関する。さらに詳しくは、本発明は、低熱膨張性、可視光領域における高透過性、低比重などの特性を有するガラスセラミックスおよび液晶プロジェクター用防塵基板あるいは液晶素子における薄膜トランジスタ付基板に対向する基板(TFT対向基板)などとして好適に用いられる、上記ガラスセラミックスからなるガラスセラミックス基板、並びに該ガラスセラミックス基板を用いてなる液晶パネル用の対向基板と防塵基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガラス中に微細な結晶相を析出させたガラスセラミックスは、低膨張特性を有するガラスとして広く知られている。例えば、特公昭47−5558号公報には室温付近の熱膨張係数が±0.2×10-7/℃であるガラスセラミックスが記載されている。大型天体望遠鏡の反射鏡やレーザージャイロスコープ、原器や定盤、耐熱調理器具などの用途に用いられている。
【0003】
従来、この種のガラスは着色剤を含有させなくても黄色ないし褐色に着色しており、一般的なガラスに比べて透過率が悪いために、石英ガラスの代替用途には透過率が障害となることが多かった。
【0004】
近年、大画面テレビの一つとして液晶プロジェクターが市販されている。この液晶プロジェクターの心臓部は石英基板で作られた液晶パネルであるが、液晶パネル表面に異物が付着した際にそれが投影されないよう、デフォーカスのための防塵ガラスが液晶パネルの両側に接着されている。本来この防塵ガラスには液晶基板と同じ石英を用いることが望ましいが、石英ガラスは高価なため、低膨張透明ガラスセラミックスを使用するものもある。同様に液晶パネルを構成する2枚のガラスのうち、TFTを形成しない側の基板(対向基板という)にも低膨張透明ガラスセラミックスを使用するものもある。しかしながら、前述のように、従来の低膨張透明ガラスセラミックスは石英ガラスに比べて短波長域の透過率が著しく悪いため、液晶プロジェクターの画質性能を低下させてしまう。特に400nm付近の透過率が低く、肉眼ではガラスが黄色あるいは褐色に見える。そのため投影画像もそのガラスの着色の影響を受けるのを免れなかった。
【0005】
また400nm以下の透過率が低いため、防塵ガラスの接着に紫外線硬化樹脂を使えなかった。そのため熱硬化樹脂を使用して接着していることが多いが、熱硬化は処理に時間がかかるため生産性に問題があった。
さらにこの種の低膨張透明ガラスセラミックスは溶融ガラスの粘度が高く、溶融ガラスの対流が起こりにくいので均質なガラスを得ることが難しい。しかも溶融温度が高いため溶融製造装置の制約が大きく、超高温溶融炉が必要となり製造コストが高くなるという欠点があった。
【0006】
またこの種の透明ガラスセラミックスは結晶化処理に時間がかかり、生産性が低いという問題もあった。前述の特公昭47−5558号公報記載のガラスセラミックスの実施例では昇温速度が8℃/時間で保持時間が4〜100時間とされている。例えば、800℃で24時間保持する実施例の場合、冷却開始までに32時間要する。
【0007】
さらに従来のこの種の透明ガラスセラミックスの比重は2.5以上のものが多い。液晶ディスプレイを始め、透明ガラスセラミックスの用途では比重は重要なファクターとなる。石英ガラスの比重は2.2であるため、石英ガラス代替のためには比重の大きさが障害となることもある。
このような事情から、低膨張透明ガラスセラミックスの透過率や溶融性を改善しようという試みが、これまで種々なされている。
【0008】
例えば、特開平3−23237号公報や特開平2−293345号公報にはTiO2を含有しないガラスセラミックスが記載されている。不純物であるFeイオンなどが共存するとガラスセラミックスを著しく着色するとされているTiイオンを含有しないことで着色を抑える試みである。このガラスセラミックスにおいては、TiO2はガラスセラミックスの核形成成分であるのでZrO2に置き換えているが、本来ZrO2はガラスに溶けにくい成分であるため、溶け残りやすく均質なガラスが得にくく、溶融に1600℃程度の高温が必要である。
【0009】
特許2516537号にはLi2Oを3〜6重量%含有し、かつ実質的にNa2OとK2Oを含まない低膨張透明ガラスセラミックスが記載されている。しかしながら、このガラスセラミックスは、Na2OとK2Oを含有しない上、Li2Oの含有量も6重量%以下であるため、溶融粘度が高く、均質化に時間がかかる。さらに結晶化速度を抑制する成分であるNa2OとK2Oを含有しないため、ガラスの結晶化速度が大きくなり、結晶化中のガラスにクラックが発生しやすい。したがって、それを防ぐためには結晶化が急激に起こらないよう、昇温速度を非常に遅くするか、比較的低温で長時間保持するなどの処理が必要である。例えば、この実施例では核形成温度と結晶成長温度でそれぞれ10時間ずつ保持している。どちらにせよ、結晶化処理に時間がかかり、生産性が低下しやすい。また透明性も従来品よりは向上しているが、未だ400nm付近およびそれ以下の透過率が低く黄色みを帯びている。したがってディスプレイ用途には不向きである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、容易に溶融可能であって、短時間の結晶化処理により、低熱膨張性、可視光領域における高透過性、低比重などの特性を有するガラスセラミックスおよびこのガラスセラミックスからなるガラスセラミックス基板、並びに該ガラスセラミックス基板を用いてなる液晶パネル用の対向基板と防塵基板を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の組成を有するガラスセラミックス用母材ガラスを熱処理し、β−石英系固溶体を含む結晶相を析出させてなるガラスセラミックス、β−石英系固有体を含む結晶相を有し、かつ特定の物性を有するガラスセラミックスが、その目的に適合し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)SiO2 55〜70モル%、Al23 13〜23モル%、アルカリ 金属酸化物11〜21モル%(ただし、Li2O 10〜20モル%で、Na2OとK2Oの合計量0.1〜3モル%)、TiO2 0.1〜4モル%およびZrO20.1〜2モル%を含むと共に、前記各成分の合計含有量が95モル%以上であって、BaO 0〜0.2モル%未満、P25 0〜0.1モル%未満、B23 0〜0.3モル%未満、SnO2 0〜0.1モル%未満のガラス組成を有するガラスセラミックス用母材ガラスに熱処理を施し、β−石英系固溶体を含む結晶相を析出させたことを特徴とするガラスセラミックス(以下、ガラスセラミックスIと称す。)、
【0013】
(2)ガラスセラミックス用ガラスが、Cs2O、MgO、CaO、SrO、ZnO、La23、Nb25、Y23、Bi23、WO3、As23、Sb23、FおよびSO3の中から選ばれる少なくとも1種の成分を、該成分とBaO、P25、B23およびSnO2との合計量が5モル%以下となる割合で含む第(1)項に記載のガラスセラミックス、
【0014】
(3)SiO2 55〜70モル%、Al23 13〜23モル%、アルカリ金属酸化物11〜21モル%(ただし、Li2O 10〜20モル%で、Na2OとK2Oの合計量0.1〜3モル%)、TiO2 0.1〜4モル%およびZrO20.1〜2モル%を含むと共に、前記各成分の合計含有量が95モル%以上のガラス組成を有するガラスセラミックス用母材ガラスに熱処理を施し、β−石英系固溶体を含む結晶相を析出させ、厚さ5mmに換算して、400〜750nmにおける分光透過率が70%以上であることを特徴とするガラスセラミックス(以下、ガラスセラミックスII−1と称す。)、
【0015】
(4)SiO2 55〜70モル%、Al23 13〜23モル%、アルカリ金属酸化物11〜21モル%(ただし、Li2O 10〜20モル%で、Na2OとK2Oの合計量0.1〜3モル%)、TiO2 0.1〜4モル%およびZrO20.1〜2モル%を含むと共に、前記各成分の合計含有量が95モル%以上のガラス組成を有するガラスセラミックス用母材ガラスに熱処理を施し、β−石英系固溶体を含む結晶相を析出させ、厚さ1.1mmに換算して、400〜750nmにおける分光透過率が85%以上であることを特徴とするガラスセラミックス(以下、ガラスセラミックスII−2と称す。)、
【0016】
(5)ガラスセラミックス用母材ガラスが、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、La23、Nb25、Y23、Bi23、WO3、P25、B23、As23、Sb23、SnO2、FおよびSO3の中から選ばれる少なくとも1種の成分を5モル%以下の割合で含む第(3)項または第(4)項に記載のガラスセラミックス、
【0017】
(6)30〜300℃の範囲の温度における平均線膨張係数が−10×10-7/℃〜+10×10-7/℃である第(1)項ないし第(5)項のいずれか1項に記載のガラスセラミックス、
(7)β−石英系固溶体を含む結晶相を有し、かつ厚さ5mmに換算して、400〜750nmにおける分光透過率が70%以上であること、30〜300℃の範囲の温度における平均線膨張係数が−10×10-7/℃〜+10×10-7/℃であることを特徴とするガラスセラミックス(以下、ガラスセラミックスIII−1と称す。)、
【0018】
(8)β−石英系固溶体を含む結晶相を有し、かつ厚さ1.1mmに換算して、400〜750nmにおける分光透過率が85%以上であること、30〜300℃の範囲の温度における平均線膨張係数が−10×10-7/℃〜+10×10-7/℃であることを特徴とするガラスセラミックス(以下、ガラスセラミックスIII−2と称す。)、
(9)結晶相が占める体積が50%以上である第(1)項ないし第(8)項のいずれか1項に記載のガラスセラミックス、
【0019】
(10)結晶相の大きさ(平均結晶粒径)が5〜100nmである第(1)項ないし第(9)項のいずれか1項に記載のガラスセラミックス、
(11)比重が2.2以上2.5未満である第(1)項ないし第(10)項のいずれか1項に記載のガラスセラミックス、
(12)第(1)項ないし第(11)項のいずれか1項に記載のガラスセラミックスからなるガラスセラミックス基板、
【0020】
(13)透光性基板と、その上に設けられた対向電極とを有する液晶パネル用対向基板であって、前記透光性基板として、第(12)項に記載のガラスセラミックス基板を用いたことを特徴とする液晶パネル用対向基板、
(14)液晶パネルが、(a)基板と該基板上に設けられた画素電極と該画素電極に接続されたスイッチング素子を有する駆動基板と、(b)前記駆動基板と所定の間隔を介して対向して設置され、かつ透光性基板と、該透光性基板上の前記画素電極と対向する位置に対向電極を備えた対向基板と、(c)前記駆動基板と対向基板との間に所定の間隔を保って形成され、かつ前記画素電極と対向電極との間に印加される電圧により駆動される液晶層とを有するものである第(13)項に記載の液晶パネル用対向基板、
【0021】
(15)さらに、駆動基板のスイッチング素子に対向する透光性基板上の位置に、遮光膜を有す第(14)項に記載の液晶パネル用対向基板、
(16)透明基板と、その上に形成された反射防止膜を備えた液晶パネル用防塵基板であって、前記透明基板として、第(12)項に記載のガラスセラミックス基板を用いたことを特徴とする液晶パネル用防塵基板、
(17)透明基板と、その上に形成された反射防止膜を備えた液晶パネル用防塵基板であって、前記透明基板として、厚さ5mmに換算して、400〜750nmにおける分光透過率が70%以上であるガラスセラミックス基板を用いたことを特徴とする液晶パネル用防塵基板、
【0022】
(18)透明基板と、その上に形成された反射防止膜を備えた液晶パネル用防塵基板であって、前記透明基板として、厚さ1.1mmに換算して、400〜750nmにおける分光透過率が85%以上であるガラスセラミックス基板を用いたことを特徴とする液晶パネル用防塵基板、
(19)ガラスセラミックス基板が、β−石英系固溶体を含む結晶相を有し、30〜300℃の範囲の温度における平均線膨張係数が−5×10-7/℃〜+5×10-7/℃である第(17)項または第(18)項に記載の液晶パネル用防塵基板、
【0023】
(20)ガラスセラミックス基板が、比重が2.2以上2.5未満である第(17)、第(18)項または第(19)項に記載の液晶パネル用防塵基板、および
(21)(a)基板と該基板上に設けられた画素電極と該画素電極に接続されたスイッチング素子を有する駆動基板と、(b)前記駆動基板と所定の間隔を介して対向して設置され、かつ透光性基板と、該透光性基板上の前記画素電極と対向する位置に対向電極を備えた対向基板と、(c)前記駆動基板と対向基板との間に所定の間隔を保って形成され、かつ前記画素電極と対向電極との間に印加される電圧により駆動される液晶層とを有する液晶パネルにおける、前記駆動基板および前記対向基板の少なくとも一方の外側に設けられる第(16)項ないし第(20)項のいずれか1項に記載の液晶パネル用防塵基板、
を提供するものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明のガラスセラミックスには、以下に示すガラスセラミックスI、ガラスセラミックスIIおよびガラスセラミックスIIIの3つの態様がある。
なお、ガラスセラミックIIには、ガラスセラミックII−1とII−2が、ガラスセラミックスIIIには、ガラスセラミックスIII−1とIII−2がある。
【0025】
すなわち、ガラスセラミックスIは、SiO2 55〜70モル%、Al2313〜23モル%、アルカリ金属酸化物11〜21モル%(ただし、Li2O10〜20モル%で、Na2OとK2Oの合計量0.1〜3モル%)、TiO20.1〜4モル%およびZrO2 0.1〜2モル%を含むと共に、前記各成分の合計含有量が95モル%以上であって、BaO 0〜0.2モル%未満、P25 0〜0.1モル%未満、B23 0〜0.3モル%未満、SnO2 0〜0.1モル%未満のガラス組成を有するガラスセラミックス用母材ガラスに熱処理を施し、β−石英系固溶体を含む結晶相を析出させたものであり、ガラスセラミックスIIには、SiO2 55〜70モル%、Al23 13〜23モル%、アルカリ金属酸化物11〜21モル%(ただし、Li2O 10〜20モル%で、Na2OとK2Oの合計量0.1〜3モル%)、TiO2 0.1〜4モル%およびZrO2 0.1〜2モル%を含むと共に、前記各成分の合計含有量が95モル%以上のガラス組成を有するガラスセラミックス用母材ガラスに熱処理を施し、β−石英系固溶体を含む結晶相を析出させ、厚さ5mmに換算して、400〜750nmにおける分光透過率が70%以上のもの(ガラスセラミックスII−1)と、SiO2 55〜70モル%、Al23 13〜23モル%、アルカリ金属酸化物11〜21モル%(ただし、Li2O 10〜20モル%で、Na2OとK2Oの合計量0.1〜3モル%)、TiO2 0.1〜4モル%およびZrO2 0.1〜2モル%を含むと共に、前記各成分の合計含有量が95モル%以上のガラス組成を有するガラスセラミックス用母材ガラスに熱処理を施し、β−石英系固溶体を含む結晶相を析出させ、厚さ1.1mmに換算して、400〜750nmにおける分光透過率が85%以上のもの(ガラスセラミックスII−2)とがあり、ガラスセラミックスIIIには、β−石英系固溶体を含む結晶相を有し、かつ厚さ5mmに換算して、400〜750nmにおける分光透過率が70%以上であって、30〜300℃の範囲の温度における平均線膨張係数が−10×10-7/℃〜+10×10-7/℃のもの(ガラスセラミックスIII−1)と、β−石英系固溶体を含む結晶相を有し、かつ厚さ1.1mmに換算して、400〜750nmにおける分光透過率が85%以上であって、30〜300℃の範囲の温度における平均線膨張係数が−10×10-7/℃〜+10×10-7/℃のもの(ガラスセラミックスIII−2)がある。
【0026】
まず、ガラスセラミックスIおよびIIについて説明する。
該ガラスセラミックスIおよびIIに用いられるガラスセラミックス用母材ガラスの特徴は、Li2O、Na2O、K2Oなどのアルカリ金属成分を従来の低膨張透明ガラスセラミックスより多く含むことである。これによって、▲1▼ガラスの溶融粘度を低下させ均質なガラスセラミックスが容易に得られるようになる、▲2▼溶融温度を下げることができるので溶融装置の制約が小さくなる、▲3▼溶融温度が低いのでガラス溶融中に容器や耐火物から不純物が混入しにくくガラスセラミックスの着色を低く抑えられる、▲4▼結晶化時間を短縮しても結晶化時にクラックが発生しないため製造コストも安くできる、▲5▼ガラスセラミックスの比重を軽くできるなどのメリットがある。
【0027】
従来のガラスでは本発明の範囲のLi2Oを含有すると析出結晶が大きくなり、ガラスセラミックスの透明性が著しく損なわれるとされてきた(特許2516537号など)。本発明者はLi2Oを多く含有しても他の成分で結晶析出をコントロールすることで、結晶の粗大化を防ぐことができることを見いだした。
【0028】
さらにアルカリ金属酸化物を合計量で11モル%以上含有することで、ガラスの溶融粘度を下げ、溶融ガラスの対流を促進し均質性を向上させるとともに、溶融温度を低下させ、ガラス溶解容器からの異物混入による着色も防止できることを見いだした。それと同時に比重も軽くできる。
【0029】
またNa2Oおよび/またはK2Oを比較的多く含有することも特徴である。従来の透明ガラスセラミックスでは熱膨張係数を大きくするこれらのアルカリ金属成分の含有量を極力低く抑えている(特開昭62−182135号公報など)。本発明者はNa2Oおよび/またはK2Oを多く含有しても析出結晶量が増えることによってバランスするガラス組成を有する母材ガラスを使用することによって、30〜300℃の範囲の温度における平均線膨張係数が−10×10-7/℃〜+10×10-7/℃であるガラスセラミックスが得られることを見いだした。
【0030】
母材ガラスに結晶化のための熱処理を施すことにより、結晶相がアモルファス相中に分散したガラスセラミックスが得られる。析出する結晶相のうち、合計体積が最も多いものはβ−石英固溶体および/またはβ−ユークリプタイト固溶体(以下これらをβ−石英系固溶体という。)である。中でも、このβ−石英系固溶体の結晶相のみを析出させることが好ましい。また結晶相の大きさ(平均結晶粒径)は5〜100nm程度であり、ガラスセラミックス中で結晶相が占める体積は50%以上とすることが好ましい。
【0031】
さらにNa2Oおよび/またはK2Oはガラスの急激な結晶化を抑制し、ガラスセラミックスの曇りや着色を防止すると共に、結晶化中のクラックを抑える効果がある。これによって、結晶化処理の昇温速度を大きくでき、短時間での処理が可能になった。
【0032】
次に本発明のガラスセラミックスIおよびIIに用いられるガラスセラミックス用母材ガラスの好ましい組成範囲について述べる。
SiO2はガラスの基本成分であり、β−石英系固溶体を形成するために不可欠な成分でもある。55モル%未満では耐失透性が悪化し、透明なガラスセラミックスが得られない。逆に70モル%を越えると溶融が困難になる。したがってSiO2の含有量は55〜70%に限定される。好ましくは63〜68%である。
【0033】
Al23もβ−石英系固溶体を析出させるのに不可欠な成分である。13モル%未満では結晶が粗大化し、透明なガラスセラミックスが得られない。逆に23モル%を越えるとガラスの耐失透性が悪化し、ガラスセラミックスが白濁しやすくなる。したがってAl23の含有量は13〜23モル%に限定される。好ましくは15〜20モル%である。
【0034】
Li2Oもβ−石英系固溶体を析出させるのに不可欠な成分である。Li2Oが10モル%未満ではガラスの粘度が高く、溶融が困難になる。逆に20モル%を越えると結晶が粗大化し透明なガラスセラミックスが得られない。したがってLi2Oの含有量は10〜20モル%に限定される。好ましくは12〜17モル%である。
【0035】
Na2OとK2Oはガラスの溶融性を向上させるとともに、熱膨張特性を調整でき、ガラスの結晶化速度を抑制し、白濁やクラックを抑えることができる重要な成分である。Na2OとK2Oの合計含有量が0.1モル%未満では上記効果がなく、3モル%を越えると熱膨張係数が大きくなりやすい。したがってNa2OとK2Oの含有量は0.1〜3モル%に限定される。好ましくは0.5〜2モル%であり、より好ましくは1〜2モル%である。
【0036】
アルカリ金属酸化物の合計量が11モル%未満では、ガラスの粘度が高くなり、均質なガラスを得ることが困難になる。逆に21モル%を越えると結晶の粗大化を制御しきれず、無色透明なガラスセラミックスが得られない。したがってアルカリ金属酸化物の合計量は11〜21%に限定される。好ましくは12〜17モル%である。
【0037】
TiO2は結晶核を形成する重要な成分である。0.1モル%未満ではその効果がなく、熱処理で結晶化が起こりにくい。逆に4モル%を越えると耐失透性が悪化する。したがってTiO2の含有量は0.1〜4モル%に限定される。好ましい含有量は1〜3モル%である。
【0038】
前述のように、TiイオンとFeイオンが共存すると著しくガラスセラミックスを着色させるが、本発明のガラスセラミックスは光学ガラス級の原料を使用することによって実質的にFeイオンを含まない。したがってTiO2を含有するにもかかわらず無色透明なガラスセラミックスを得ることができる。そのため核形成成分としてZrO2を単独で使用する場合と比べてZrO2の含有量を減らすことができる。これによって溶融温度を下げることができ、TiO2とZrO2の共存によって、より微細な結晶を多く析出させることができ、このことがさらに透過率の向上につながる。
【0039】
ZrO2も結晶核を形成する成分としてTiO2と併用して用いることによって、微細な結晶を析出することができる重要な成分である。ZrO2の含有量が0.1モル%未満ではその効果が無く、逆に2モル%を越えるとガラスに溶けにくくなる。従ってZrO2の含有量は0.1〜2モル%に限定される。好ましくい含有量は0.5〜1.5モル%である。
【0040】
Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、La23、Nb25、Y23、Bi23、WO3、P25、B23、As23、Sb23、SnO2、FおよびSO3は必須成分ではないが、溶融粘度の低下、清澄、熱膨張係数や透過率の調整などの目的で5モル%以下の範囲で適宜用いることができる。5モル%を越えると、耐失透性、透過率などに悪影響を与える。
【0041】
Cs2OはK2Oと同様の効果があるが、Na2OやK2Oに比べて原料が高価である上、ガラスセラミックスの比重を大きくする。したがってCs2Oの含有量は1モル%未満が好ましい。
【0042】
MgOはガラスの溶融性の向上およびガラスセラミックスの熱膨張性の調整の目的で用いることができる。特に熱膨張係数を容易に高めることができるので好ましい成分である。しかしMgOは400nm近傍の透過率を低下させ、ガラスセラミックスを褐色に着色しやすい。したがってMgOの含有量は0〜3モル%が好ましい。特に好ましくは0〜1モル%である。
【0043】
CaO、SrO、BaOはガラスセラミックスの熱膨張特性を調整するのに用いることができるが、析出結晶が粗大化しやすくガラスセラミックスの透過率を低下させやすい。特にSrO、BaOはその傾向が顕著である。また、SrO、BaOを加えると、比重も大きくなりやすい。
特に、BaOは着色防止の点から、その含有量は0.2モル%未満が好ましく、より好ましくは0.1モル%以下、さらに好ましくは含有しないことが望ましい。
【0044】
CaO、SrO、BaOの含有量は合計量で3モル%未満が好ましい。さらにSrOは、BaOと同様に含有しない方が望ましい。
ZnOは溶融性向上と透過率の維持の点で特に好ましいが、比重を増加させやすい。ZnOの含有量は0〜3モル%が好ましい。特に好ましくは0〜1モル%である。
【0045】
25、B23は、結晶相の過度な成長による可視光散乱(特に短波長側の散乱)によるガラスセラミックスの着色防止の観点から、P25の含有量は0.1モル%未満が好ましく、より好ましくは0.05モル%以下、さらに好ましくは含有しないことが望ましい。また、B23の含有量は0.3モル%未満が好ましく、より好ましくは0.1モル%未満、さらに好ましくは含有しないことが望ましい。本発明では、Li2O並びにアルカリ金属酸化物の合計量を所定の範囲としているので、これらの組成の含有量を低減あるいは排除してもガラスの溶解性が損なわれることがない。
【0046】
As23は人体に有害な成分であるので使用に制約が大きいが、清澄剤として有効な成分であり、しかもガラスセラミックスの透過率、ガラスの均質性を低下させないので特性上は好ましく用いられる。0.5モル%を越えると清澄効果は変わらないので、As23の含有量は0.5モル%以下が好ましく、As23を含有しないものがさらに好ましい。従来のガラスセラミックス用母材ガラスでは、As23は清澄剤としての機能だけでなく、着色を抑える働きもしていた。したがって、従来の母材ガラスでは有毒成分であるにもかかわらず、As23を含有させていたが、本発明の母材ガラスではAs23を加えなくても、ガラスセラミックスの着色を抑えることができ、可視光領域における分光透過率および波長400nmにおける透過率を高くすることができる。
【0047】
一方、Sb23は清澄剤としては有用な成分であるが、0.1モル%以上含有させるとガラスセラミックスを着色しやすいので、Sb23の含有量は0.1モル%未満が好ましい。さらに好ましくは0.05モル%以下である。本発明のガラスセラミックスはガラスの溶融粘度が低いため、Sb23が0.05モル%以下でも充分な清澄作用を得ることができる。
【0048】
SnO2も清澄の効果があるが、0.1モル%以上含有させるとガラスセラミックスを着色しやすいので、SnO2の含有量は0.1モル%未満が好ましく、より好ましくは0.05モル%以下、さらに好ましくは含有しないことが望ましい。
【0049】
清澄剤として最も好ましいものはSO3である。SO3の清澄剤としての効果は古くから知られており、ソーダライムガラスには広く用いられている。本発明者は、SO3はガラスの清澄作用だけでなく、ガラスセラミックスの着色防止およびZrO2の溶解促進に非常に有効であることを見出した。SO3は含有成分の硫酸塩として導入することができる。特にアルカリ成分の硫酸塩(例えば硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム)や、硫酸ジルコニウムなどが好ましく用いられる。Sb23をこの種のガラスに使用すると溶解ガラス表面に不混和層が生じることがある。また、ZrO2原料がその不混和層に取り込まれ、ZrO2の溶解を妨げ、最後まで溶け残ることがある。SO3は原料のガラス化反応を促進し、Sb23のように不混和層にZrO2を取り囲んで溶け残りを生じさせることがない。SO3の好ましい含有量としては、0.1モル%以上3モル%未満のアルカリ成分に相当する硫酸塩で導入するのがよい。
その他の成分は本発明の目的を損なわない範囲で含有させることができるが、比重を増加させやすく、あまり好ましくはない。
【0050】
また、ガラスセラミックスの透過率の低下は、結晶相の過度な成長や母材ガラス中に含まれている着色成分に起因する。着色成分は、Fe、V、Mn、Ni、Co、Cu、Ce、Crなどの化合物またはイオンであり、可視光全域(400〜750nm)にわたり、厚さ5mmに換算して分光透過率が70%以上、好ましくは90%以上の高い透過率を有するガラスセラミックスII−1を得る点から、また、厚さ1.1mmに換算して分光透過率が85%以上の高い透過率を有するガラスセラミックスII−2を得る点から、これらの着色成分については排除することが望ましい。
【0051】
以上の理由より母材ガラスの組成を次のようにする。
SiO2 55〜70モル%、
Al23 13〜23モル%、
アルカリ金属酸化物の合計量 11〜21モル%、
Li2O 10〜20モル%、
Na2OとK2Oの合計量 0.1〜3モル%、
TiO2 0.1〜4モル%、
ZrO2 0.1〜2モル%、
上記成分の合計含有量 95モル%以上。
【0052】
さらに、可視光全域(400〜750nm)にわたり、高い透過率を得るために、
BaO 0〜0.2モル%未満、
25 0〜0.1モル%未満、
23 0〜0.3モル%未満、
SnO2 0〜0.1モル%未満、
【0053】
また、上記組成のうち、酸化鉄、鉛化合物を含まないもの、As23を含まないもの、SrOおよびBaOを含まないものが望ましく、酸化鉄、鉛化合物、As23を含まないもの、酸化鉄、鉛化合物、SrO、BaOを含まないもの、As23、SrO、BaOを含まないものがより望ましく、酸化鉄、鉛化合物、As23、SrO、BaOを含まないものがさらに望ましい。また、SnO2は清澄効果が小さい上、着色が大きいので、0.1モル%未満に抑えることが好ましく、含まない方がさらに好ましい。さらに、母材ガラスの製造過程で耐失透性を向上させるためにCaOは含まない方が好ましい。また、Sb23は0.05モル%以下であることが好ましく、含まない方がさらに好ましい。さらに、原料の一部に硫酸塩を使用するのが好ましい。
【0054】
また母材ガラス中のアルカリ金属酸化物としては、必須成分であるLi2Oに加え、Na2OまたはK2Oの2成分、あるいはNa2OおよびK2Oの3成分からなることが望ましい。Cs2Oは高価な上、比重を大きくするので含まない方がより好ましい。
【0055】
上記組成にCs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、La23、Nb23、Y23、Bi23、WO3、P25、B23、As23、Sb23、SnO2、FおよびSO3の群から選ばれた少なくとも1種の成分を任意成分として5モル%以下含有させることができるが、任意成分は酸化物として含有させることが好ましい。上記任意成分を加える場合は、ZnOまたはSb23、あるいはZnOおよびSb23を加えることが好ましい。
【0056】
ガラスセラミックス用母材ガラスとして特に好ましい組成はモル%表示で、SiO2を63〜68%、Al23を15〜20%、Li2Oを12〜17%、Na2OとK2Oを合計含有量で0.5〜2%、TiO2を1〜3%、ZrO2を0.5〜1.5%、MgOを1%以下、ZnOを1%以下、Sb23を0.1%未満含むものであり、比重を増加させないために、上記成分よりなる組成がさらに好ましい。さらに上記組成範囲において、Na2OとK2Oを合計含有量を1〜2%とすることが好ましい。
なお、ガラス原料の調合時の組成、母材ガラスの組成、ガラスセラミックスの組成はそれぞれ概ね同じである。
【0057】
本発明の母材ガラスの作製方法としては特に制限はなく、従来慣用されている方法を用いることができる。例えば、ガラス原料として酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、塩化物、硫酸塩などを適宜用い、所望の組成になるように秤量し、混合して調合原料とする。これを耐熱坩堝に入れ1450〜1550℃程度の温度で溶融し、撹拌、清澄して均質な溶融ガラスとする。従来のガラスセラミックス用母材ガラスでは溶融温度を1600℃程度とかなり高温にしなければならなかったが、上記母材ガラスでは1550℃以下で溶解することができる。本発明のガラスセラミックスが着色しない理由は、母材ガラスの組成にあるが、さらに加えて、1600℃程度の高温にしなくても溶融が可能なため、溶融時のガラスが触れる容器や耐火物から不純物が混入しにくくなるためである。不純物にはガラスセラミックスを着色してしまう物質も含まれている。母材ガラスの組成ならびに比較的低温における溶融がガラスセラミックスの着色を抑えている。
【0058】
次いでガラスを成形枠に鋳込み、ガラスブロックを形成した後、ガラスの徐冷点近くに加熱した炉に移し、室温まで冷却する。
本発明のガラスセラミックスIおよびIIは、前述のガラスセラミックス用母材ガラスに熱処理を施し、β−石英系固溶体を含む結晶相を析出させたものであり、そして、ガラスセラミックスII−1は、厚さ5mmに換算して、400〜750nmにおける分光透過率が70%以上のものである。
また、ガラスセラミックスII−2は、厚さ1.1mmに換算して、400〜750nmにおける分光透過率が85%以上のものである。
【0059】
これらのガラスセラミックスIおよびIIにおいては、30〜300℃の範囲の温度における平均線膨張係数が−10×10-7/℃〜+10×10-7/℃の範囲に制御することができる。
【0060】
次に、本発明のガラスセラミックスIII−1は、β−石英系固溶体を含む結晶相を有し、かつ厚さ5mmに換算して、400〜750nmにおける分光透過率が70%以上であって、30〜300℃の範囲の温度における平均線膨張係数が−10×10-7/℃〜+10×10-7/℃のものである。
また、ガラスセラミックスIII−2は、β−石英系固溶体を含む結晶相を有し、かつ厚さ1.1mmに換算して、400〜750nmにおける分光透過率が85%以上であって、30〜300℃の範囲の温度における平均線膨張係数が−10×10-7/℃〜+10×10-7/℃のものである。
【0061】
本発明のガラスセラミックスにおいて、β−石英系固溶体を含む結晶相とは、β−石英固溶体および/またはβ−ユークリプタイト固溶体を含む結晶相のことをいう。中でもガラスセラミックス中の結晶相のうち、β−石英系固溶体の占める体積割合が最も多いものが好ましく、結晶相がβ−石英系固溶体のみからなるものがより好ましい。また、結晶相が占める体積は、通常50%以上であり、結晶相の大きさ(平均結晶粒径)は、通常5〜100nmである。
【0062】
さらに、本発明のガラスセラミックスにおいては、ガラスセラミックスに光を透過させるカラーディスプレイ用途には三原色(波長435.8nm、546.1nm、700nm)における透過率が重要である。三原色波長における透過率が全て80%以上であることが好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。本発明のガラスセラミックスは、通常厚さ5mmに換算して430nmにおける透過率が80%以上であり、三原色波長の透過率が全て80%以上であることが好ましい。
【0063】
また、厚さ1.1mmに換算して430nmにおける透過率が85%以上であり、同じく厚さ1.1mmに換算して三原色波長の透過率が全て85%以上であることが好ましい。
【0064】
本発明のガラスセラミックスは、可視域の透過率が高いだけではなく、紫外域における立ち上がりが従来のガラスセラミックスに比べて短波長側にシフトしている。これはガラスセラミックスの結晶化速度を制御することによって、析出するβ−石英系固溶体の結晶粒径をより小さく揃えることができたためと考えられる。本発明のガラスセラミックスは、紫外線硬化に有用な波長365nmの光の透過率が厚さ1mmに換算して概ね70%以上であるので、紫外線硬化に充分な紫外線を透過供給できる。したがって紫外線硬化樹脂を有効に利用することができ、これによって接着工程に要する時間を大幅に短縮でき、液晶プロジェクターを始め、幅広い分野で製造コストを低減することができる。
【0065】
本発明のガラスセラミックスは、30〜300℃の範囲の温度における平均線膨張係数を−10×10-7/℃〜+10×10-7/℃とすることができ、前述の可視光領域において高い透過率を有すると共に、広い温度範囲で熱膨張による体積変化が小さい。また、耐熱衝撃性にも優れている。したがって、石英ガラスの代替品として使用し得ると同時に、石英ガラスと接合しても、熱膨張、収縮によって、反りや変形が起こりにくいといった効果がある。好ましい平均線膨張係数は、−5×10-7/℃〜+5×10-7/℃、さらに好ましくは−2×10-7/℃〜+2×10-7/℃が望ましい。本発明のガラスセラミックスを液晶プロジェクター用防塵基板あるいは液晶素子における薄膜トランジスタ付基板に対向する基板に使用する場合、液晶プロジェクターの使用環境、製造プロセスにおける温度環境(30〜150℃)の範囲の温度における平均線膨張係数が−10×10-7/℃〜+10×10-7/℃、好ましくは−5×10-7/℃〜+5×10-7/℃、さらに好ましくは−2×10-7/℃〜+2×10-7/℃とすることが望ましい。
【0066】
さらに、本発明のガラスセラミックスは、比重を2.2以上2.5未満とすることができ、低比重である。従来の透明ガラスセラミックスの比重は、2.5以上のものが多く、石英ガラスの比重は2.2であるため、石英ガラス代替用としては大きな障害となっていた。これに対し、本発明のガラスセラミックスは、石英ガラスに近い低比重を有しており、石英ガラス代替用として有利である。
【0067】
本発明のガラスセラミックスは、例えば以下に示す方法により製造することができる。
前述のガラスセラミックス用母材ガラスのブロックを、適宜切断し、室温から750℃以上の温度に加熱して結晶化を行う。この結晶化においては、室温から950℃程度まで徐々に昇温するか、あるいは段階的に昇温する方法を用いることができるが、好ましくは、650〜750℃の温度で30分〜2時間程度保持した後、800〜950℃の温度に昇温し30分〜2時間程度保持する2段階の熱処理がよい。昇温速度は50〜300℃/時間が好ましい。従来のガラスセラミックスに比べると、結晶化処理工程が短時間で済む。
また溶融ガラスを薄板状に成形して母材ガラスを作製し、これに結晶化処理を施した後、主表面に研削、研磨加工を施すか、あるいは、母材ガラスの主表面に研削、研磨加工を施してガラスセラミックス基板を得ることができる。このようにして得られたガラスセラミックス基板は、可視光領域において高い透過率を示し、軽量かつ低熱膨張性を備え、化学的にも安定している。このような基板は、ディスプレイ用基板、特にポリシリコン液晶ディスプレイ用に対向し、液晶ディスプレイを構成する基板(TFT対向基板)や、液晶プロジェクター用防塵基板、天体望遠鏡や半導体露光装置の反射鏡用基板、回折格子、情報記録媒体用基板、定盤などに使用することができる。
【0068】
TFT対向基板には、必要に応じて透明導電膜を、液晶プロジェクター用防塵基板には、反射防止膜を設けてもよい。
また上記ガラスセラミックスの用途としては、石英ガラスの代替品や測定原器、レーザー発振器やレーザージャイロスコープなどの部品を示すことができる。
【0069】
次に、本発明のガラスセラミックスを液晶パネル用の対向基板および防塵基板に用いる場合について説明する。
一般に、液晶用表示装置に用いられる液晶パネルは、液晶層と、液晶層を挟んで互いに対向して設けられ、液晶層を保持・駆動するための、駆動基板及び対向基板を有している。駆動基板は、基板と、基板上に設けられた画素電極と画素電極に接続されたスイッチング素子を有している。一方、対向基板は、透光性基板と、この透光性基板上の画素電極と対向する位置に設けられた対向電極を備えている。液晶層は、これらの駆動基板、対向基板の間に配向膜を介して保持され、画素電極と対向電極との間に印加される電圧により駆動される。
【0070】
ここで、対向基板側から入射した光は、前記画素電極及び対向電極により制御される液晶層の配向によって、各画素ごとに透過率が制御され、所定の画像を形成する。更に、上述した液晶パネルにおいては、放熱の目的及び液晶パネルに塵などが付着した場合の画質劣化を防止するために、駆動基板と対向基板のうち少なくとも1つの外側に、防塵基板として、所定の厚さの透光性基板が接合される場合がある。
本発明のガラスセラミックスを用いた基板は、このような液晶パネルの対向基板用、及び、防塵基板用の透光性基板として好適に用いることができる。
【0071】
図1は、防塵基板を備えた液晶パネルの構造の1例を示す模式図であって、本発明においては、液晶パネル1の対向基板2の透光性基板13および防塵基板4a、4bの透明基板14a、14bとして、前述の本発明のガラスセラミックス基板が用いられる。
【0072】
まず、本発明のガラスセラミックス基板を用いた対向基板2について説明する。
対向基板2は、本発明のガラスセラミックス基板を用いた透光性基板13上に、対向電極20が設けられた構造をしている。又、必要に応じて、駆動基板に形成されたスイッチング素子17に入射光が入射するのを防止するための遮光層19が駆動基板のスイッチング素子17に対向する位置にマトリックス状に設けられる。
【0073】
この遮光層19は、通常、入射光を遮光する材料であれば良い。遮光層としては、遮光層の吸収による熱によって液晶パネルの誤作動を防止するために、光の入射側は高反射膜であることが好ましい。さらに、液晶層内の迷光を防止するために、駆動基板側は低反射膜であることが好ましい。より好ましくは、遮光層19は、光の入射側に高反射膜、駆動基板側に低反射膜を積層した積層膜とすることが望ましい。この遮光層は、公知のフォトリソグラフィ法等により、透光性基板13上に形成することができる。
【0074】
透光性基板13上に設けられる対向電極20は、駆動基板3の画素電極16と共に、液晶層15の配向を制御する。この対向電極20は入射光に対して透明な材料で形成される。例えば、透明導電膜が挙げられ、可視光に対しては、ITO膜などが公知の方法にて形成される。
【0075】
なお、入射光を有効に画素領域に入射させるため、対向基板の手前(光入射側)に、マイクロレンズアレイが形成された基板を設けてもよい。
また、必要に応じて、対向基板にカラーフィルタを設けてもよく、この場合カラー表示が可能となる。
【0076】
次に、本発明のガラスセラミックス基板を用いた防塵基板4a,4bについて説明する。
防塵基板4a,4bは、放熱及び、対向基板2や駆動基板3に付着した塵などによる画質の低下を防止するため、対向基板2あるいは駆動基板3の外側に接合される。この防塵基板4a,4bは、本発明のガラスセラミックスを用いた透明基板14a,14b上に反射防止膜21a,21bが設けられた構造をしている。
【0077】
対向基板2の外側に設けられる場合、防塵基板4aの光の入射側には、反射防止膜21aが設けられている。また、駆動基板3の外側に防塵基板4bが設けられる場合には、光の出射側に反射防止膜21bが設けられる。反射防止膜21a,21bとしては、使用する入射光に対する反射防止特性を有するものが用いられ、例えば可視光の場合、TiO2とSiO2の交互積層膜などが知られている。反射防止膜21a,21bは、スパッタ法や蒸着等の公知の方法で透明基板14a,14b上に形成することができる。
【0078】
この防塵基板4a,4bと、対向基板2あるいは、駆動基板3との接合は、紫外線硬化樹脂などの接着剤により行うのが好ましい。本発明のガラスセラミックス基板は、従来のガラスセラミックス基板と比較し、紫外線硬化に有用な365nm付近での透過率に優れているため、紫外線硬化樹脂による接合が可能である。
【0079】
なお、防塵基板4a,4bは対向基板2及び駆動基板3の外側に設けられていてもよく、又、いずれか一方に設けられていてもよい。また、駆動基板3のスイッチング素子を駆動する配線への光の入射を防止するため、防塵基板の外周部に所定の幅の遮光膜を設けることができる。
以上のように、本発明のガラスセラミックス基板を液晶パネル用の対向基板、防塵基板用の透光性基板として使用することができる。
【0080】
本発明はまた、透明基板として、厚さ5mmに換算して、400〜750nmにおける分光透過率が70%以上および/または厚さ1.1mmに換算して400韓750nmにおける分光透過率が85%以上であるガラスセラミックス基板を用いた液晶パネル用防塵基板をも提供する。前記ガラスセラミックス基板としては、β−石英系固溶体を含む結晶相を有し、30〜300℃の範囲の温度における平均線膨張係数が−5×10-7/℃〜+5×10-7/℃であるものが好ましく、また比重2.2以上2.5未満のものが好ましい。
【0081】
本発明のガラスセラミックスは、可視光領域、特に従来のガラスセラミックスと比較して短波長領域の透過率が良いため、液晶パネルによって形成される像に着色の影響が少ない。また、従来のガラスセラミックスと比較して、比重が軽いため、液晶パネルの軽量化に有利である。更には、ガラス自身の生産性が良いため、基板が低コストで得られる。このような点から、本発明のガラスセラミックスを液晶パネル用基板として使用した場合、従来より使用されている石英ガラスの代替品として、液晶パネルの低コスト化に有用である。
【0082】
このように、本発明のガラスセラミックスを用いた対向基板、防塵基板は、液晶ディスプレイ、液晶プロジェクタなどの液晶表示装置の液晶パネルに好適に用いることができる。
【0083】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1〜10、比較例1〜3
原料は酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、塩化物、硫酸塩などを使用し、表1〜表3の組成になるように秤量、混合してバッチ原料を作製した。ここで、ガラスの清澄、溶融促進および着色防止の目的で、Na2O、K2O、Li2Oのうち、合計0.5〜2モル%を硫酸塩原料を使用した。なお、硫酸塩は、そのほとんどが加熱溶融、清澄過程で分解、揮発してしまうので、得られるガラス中にはほとんど残らない。したがって、表においては、特にSO3という表記はしていない。
【0084】
この調合原料を白金坩堝に入れ、1450〜1550℃に加熱、溶融、撹拌し、均質化、清澄を行った後、鋳型に流し込んだ。ガラスが固化した後、次いでガラスの徐冷点近くに加熱しておいた電気炉に移し、室温まで徐冷した。
【0085】
得られたガラスブロックから約300×300×2mmのガラスを切り出し、電気炉中で加熱し結晶化してガラスセラミックスを作製した。結晶化は表1〜表3のように第1保持温度と第2保持温度の2段階で一定時間保持して行った。第1保持温度までの昇温速度は200℃/時間、第1保持温度から第2保持温度までの昇温速度は60℃/時間で行った。
【0086】
このようにして得られたガラスセラミックスの物性を下記のようにして測定すると共に、析出結晶相のX線回折を行った。その結果を表1〜表3に示す。
(1)平均線膨張係数
熱機械分析装置(TMA)で測定した値から、30〜300℃の温度範囲における平均線膨張係数を算出したものである。(日本光学硝子工業会規格を準用し、温度範囲を100〜300℃から30〜300℃に修正した平均線膨張係数を用いた。)
【0087】
(2)分光透過率
厚さ2mmに両面研磨したガラスセラミックスを分光光度計を使用して測定した。
(3)比重
日本光学硝子工業会規格に基づいて比重計で測定した。
(4)析出結晶相の大きさ(平均結晶粒径)
電子顕微鏡により、析出結晶相の大きさ(平均結晶粒径)を測定した。
【0088】
なお、各実施例は、いずれも厚さ5mmに換算した波長400〜750nmにおける分光透過率はすべて70%以上であり、厚さ1.1mmに換算した波長400〜750nmのける分光透過率はすべて85%以上であった。また、ガラスセラミックス中で析出結晶相が占める割合は、50%以上であった。
【0089】
【表1】
Figure 0004132908
【0090】
【表2】
Figure 0004132908
【0091】
【表3】
Figure 0004132908
[注]
1)β石固は、β−石英系固溶体のことである。
【0092】
2)含有量0.1モル%未満の成分以外は、小数点以下2桁目を四捨五入して表示した。
【0093】
上記各実施例によって得られるガラスセラミックス板の両主面に研削、研磨加工を施すことにより、ガラスセラミックス基板が得られる。用途に応じて基板各部の寸法を決めれば、ディスプレイ用基板、特にTFT対向基板や、液晶プロジェクター用防塵基板、天体望遠鏡や半導体露光装置の反射鏡用基板、回折格子、情報記録媒体用基板、定盤などに使用することができる。
また上記ガラスセラミックスの用途としては、石英ガラスの代替品や測定原器、レーザー発振器やレーザージャイロスコープなどの部品を示すことができる。
【0094】
実施例11
本実施例は、実施例1〜10のガラスセラミックスを用いて液晶プロジェクタの液晶パネルに用いられる対向基板を作製した例である。
図2は、本実施例の対向基板30を示す模式図である。この対向基板30は、本発明のガラスセラミックスからなる透光性基板31上に、対向電極32が設けられた構造を有している。
【0095】
まず、実施例1〜10によって得られたガラスセラミックス板の両主面に研削、研磨加工を施した後切断し、大きさ200mm×200mm、1.1mmの厚さのガラス基板を作製した。
次に、このガラス基板の一面上に、液晶を駆動するための対向電極としてのITO膜を140nm形成した。ITO膜の形成は、スパッタリング法によって行った。得られたITO膜のシート抵抗は20Ω/□であった。
【0096】
更に、ITO膜を形成したガラス基板を20mm×18mmの大きさに切断した。
これにより、基板31上にITO膜32が形成された本実施例の液晶パネル用対向基板30が得られた。
【0097】
本実施例で得られた液晶パネル用対向基板を用いて、投射型液晶プロジェクタ用の液晶パネルを作成したところ、実施例1〜10のいずれのガラスセラミックスを用いた場合でも、着色の少ない良質な像が得られ、本発明のガラスセラミックスを用いた液晶パネル用対向基板は、従来の石英を用いた対向基板の代替品として、使用が可能なことが確認できた。
【0098】
実施例12
本実施例は、実施例11と同様、実施例1〜10のガラスセラミックスを用いて液晶プロジェクタの液晶パネルに用いられる対向基板を作製した例である。
実施例11との相違点は、本実施例では、本発明のガラスセラミックスを用いた透光性基板上に、駆動基板に形成されるTFTなどのスイッチング素子に光が入射するのを防止するための遮光層(ブラックマトリクス)をパターン状に形成した点である。
図3(a)〜(d)は本実施例の対向基板の製造工程を示す模式図である。
【0099】
まず、実施例11と同様にして、実施例1〜10のガラスセラミックス板から、大きさ200mm×200mm、厚さ1.1mmのガラス基板41を作製した。
次に、このガラス基板41の一面上に、遮光層42を100nmの厚さに形成した。(図3(a))遮光層42は、ガラス基板側に形成される入射光に対して高反射な膜と、液晶側に形成される低反射膜の2層の積層構造とした。本実施例では高反射膜としてアルミニウム層を用い、低反射膜として、窒化クロム層を用いた。
【0100】
この遮光層42の形成には、スパッタリング法を用いた。具体的には、ターゲット材として、幅15cmのターゲット材中、基板搬入側の5cm幅がアルミニウムで、基板搬出側の10cm幅がクロムとなっているターゲット材を用い、インラインスパッタ装置を用いてこのターゲットを連続的にスパッタすることにより成膜した。また、窒化クロム成膜時には、基板搬出側から窒素を含むアルゴンガスを流しながら、成膜を行った。
【0101】
このようにして、ガラス基板41上にアルミニウム薄膜を20nm、その上に、窒化クロム薄膜を80nm形成した。この際、アルミニウム薄膜と窒化クロム薄膜の間には、アルミニウムと窒化クロムの両方を含む混合領域が形成された。この混合領域中、アルミニウムの濃度は、ガラス基板側から窒化クロム層側へ連続的に減少していた。
【0102】
次に、形成した遮光層42に所定のパターン44を形成した。遮光層42のパターン44は、対向基板に液晶層を挟んで対向して設けられる駆動基板のスイッチング素子への光の入射を防止する位置に設けられる。
【0103】
まず、遮光層42の窒化クロム膜上に、感光性樹脂(レジスト)43を500nmの厚みで塗布した。(図3(b))さらに、フォトマスクを用い、このレジスト層を幅4μm、ピッチ26μmのマトリックス状に形成した。
【0104】
次に、このマトリックス状のレジスト層を形成した基板をクロムエッチング液(和光純薬社製HY液)に浸漬して、形成されているレジストパターンに従って、窒化クロム薄膜をエッチングして、窒化クロム薄膜にパターンを形成した。次いで、この基板をレジスト除去液であるアルカリ性水溶液に浸漬し、レジストを除去すると同時にアルミニウム薄膜をエッチングして、アルミニウム薄膜に窒化クロム薄膜パターンに従ったパターンを形成した。このようにして、遮光層42に、遮光層パターン44を形成した。(図3(c))
【0105】
次に、遮光層パターン44上を覆うように、ガラス基板上に、液晶駆動用の電極として対向電極であるITO膜45を140nmの厚さに形成した。(図3(d))
ITO膜の形成は、スパッタリング法によって行った。得られたITO膜45のシート抵抗は25Ω/□であった。
【0106】
更に、遮光層パターン44及びITO膜45を形成したガラス基板41を20mm×18mmの大きさに切断した。
これにより、本実施例の液晶パネル用対向基板が得られた。
【0107】
本実施例で得られた液晶パネル用対向基板を用いて、投射型液晶プロジェクタ用の液晶パネルを作成したところ、実施例1〜10のいずれのガラスセラミックスを用いた場合でも、着色の少ない良質な像が得られ、本発明のガラスセラミックスを用いた液晶パネル用対向基板は、従来の石英を用いた対向基板の代替品として、使用が可能なことが確認できた。
【0108】
実施例13
本実施例は、本発明のガラスセラミックスを用い、液晶プロジェクタの液晶パネル用に用いられる防塵基板を作製した例である。
図4は本実施例の防塵基板50を示す模式図である。
【0109】
まず、透明基板として、実施例1〜10によって得られたガラスセラミックス板の両主面に研削、研磨加工を施した後切断し、大きさ200mm×200mm、1.1mmの厚さのガラス基板を作製した。
【0110】
次に、このガラス基板の一面上に、可視光(波長430〜650nm)に対する反射防止膜を形成した。反射防止膜は、ガラス基板側から、酸化アルミニウム(Al23)層,酸化ジルコニウム(ZrO2)層,フッ化マグネシウム(MgF2)層が積層された3層構造をしており、各層の膜厚はそれぞれ、約83nm,約132nm,約98nmである。
【0111】
この反射防止膜は、各層の材料を順次真空蒸着によって成膜することにより作製した。
この反射防止膜を形成した基板の可視光(波長430〜650nm)に対する透過率は96%以上で、反射率は0.6%以下であった。
【0112】
次に、反射防止膜を形成したガラス基板を大きさ25mm×18mmに切断した。
このようにして、透明基板51上に反射防止膜52が形成された本実施例の防塵基板50を得た。
【0113】
次に、本実施例で得られた液晶パネル用防塵基板50を用いて、投射型液晶プロジェクタ用の液晶パネルを作製した。防塵基板は、対向基板及び駆動基板の外側へ接合し、接合には、紫外線硬化樹脂を用いた。紫外線硬化型樹脂を使用したため、従来の熱硬化性樹脂を用いて接合した場合と比較し、接着工程に要する時間を大幅に短縮できた。
【0114】
以上のようにして製造した液晶パネルは、実施例1〜10のいずれのガラスセラミックスを用いた場合でも、着色の少ない良質な像が得られ、本発明のガラスセラミックスを用いた防塵基板は、石英を用いた防塵基板の代替品として使用が可能なことが確認できた。
なお、本発明のガラスセラミックスを用いた、液晶パネル用対向基板及び防塵基板は、反射型プロジェクタ等、反射型の液晶パネルにも使用することができる。
【0115】
【発明の効果】
本発明のガラスセラミックスに用いられるガラスセラミックス用母材ガラスは、溶融温度が比較的低いので、一般的な光学ガラスの溶融炉を用いて極めて均質性の良い母材ガラスを得ることができるとともに、着色し難い組成に加えてガラス溶融中に容器や耐火物から着色の原因となる不純物が混入しにくいので、可視光領域における高い分光透過率、低熱膨張特性、低い比重の本発明のガラスセラミックスを比較的短時間の結晶化処理によって作製することができる。
【0116】
この本発明のガラスセラミックスは、可視光領域における高い分光透過率、低熱膨張特性を備えた、比重の小さなガラスセラミックスであるので、高価な石英ガラスの代替材料として使用することができる。また熱膨張率が小さいので、耐熱衝撃性に優れた材料を提供することも出来る。
【0117】
さらに本発明のガラスセラミックス基板は、基板材料として上記ガラスセラミックスを用いているので、透明、低熱膨張、軽量などの特徴を有し、液晶プロジェクター用防塵基板などの各種用途に好適に用いられる。
また、本発明のガラスセラミックス基板を用いた液晶パネル用の対向基板および防塵基板は、軽量であって、液晶パネルの軽量化に有利である上、ガラスセラミックス自体の生産性がよいため、低コストで得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】防塵基板を備えた液晶パネルの構造の1例を示す模式図である。
【図2】実施例11の対向基板を示す模式図である。
【図3】実施例12における対向基板の製造工程を示す模式図である。
【図4】実施例13の防塵基板を示す模式図である。
【符号の説明】
1 液晶パネル
2、30 対向基板
3 駆動基板
4a、4b、50 防塵基板
11 基板
13、31 透光性基板
14a、14b、51 透明基板
15 液晶層
16 画素電極
17 スイッチング素子
19、42 遮光層
20、32 対向電極
21a、21b、52 反射防止膜
41 ガラス基板
43 感光性樹脂
44 遮光層パターン
45 ITO膜

Claims (15)

  1. SiO 55〜70モル%、Al 13〜23モル%、アルカリ金属酸化物12.1〜21モル%(ただし、Li12〜20モル%で、NaOとKOの合計量0.1〜3モル%)、TiO 0.1〜4モル%およびZrO 0.1〜2モル%を含むと共に、前記各成分の合計含有量が95モル%以上であって、BaO 0〜0.2モル%未満、P 0モル%、B 0〜0.3モル%未満、SnO 0〜0.1モル%未満のガラス組成を有するガラスセラミックス用母材ガラスに熱処理を施し、β−石英系固溶体を含む結晶相を析出させ、厚さ5mmに換算して、400〜750nmにおける分光透過率が70%以上であることを特徴とするガラスセラミックス。
  2. SiO 55〜70モル%、Al 13〜23モル%、アルカリ金属酸化物12.1〜21モル%(ただし、Li12〜20モル%で、NaOとKOの合計量0.1〜3モル%)、TiO 0.1〜4モル%およびZrO 0.1〜2モル%を含むと共に、前記各成分の合計含有量が95モル%以上であって、BaO 0〜0.2モル%未満、P 0モル%、B 0〜0.3モル%未満、SnO 0〜0.1モル%未満のガラス組成を有するガラスセラミックス用母材ガラスに熱処理を施し、β−石英系固溶体を含む結晶相を析出させ、厚さ1.1mmに換算して、400〜750nmにおける分光透過率が85%以上であることを特徴とするガラスセラミックス。
  3. ガラスセラミックス用母材ガラスが、CsO、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、La、Nb、Y、Bi、WO 、B 、As、Sb、SnO、FおよびSOの中から選ばれる少なくとも1種の成分を5モル%以下の割合で含む請求項またはに記載のガラスセラミックス。
  4. 30〜300℃の範囲の温度における平均線膨張係数が−10×10−7/℃〜+10×10−7/℃である請求項1ないしのいずれか1項に記載のガラスセラミックス。
  5. 結晶相が占める体積が50%以上である請求項1ないしのいずれか1項に記載のガラスセラミックス。
  6. 結晶相の大きさ(平均結晶粒径)が5〜100nmである請求項1ないしのいずれか1項に記載のガラスセラミックス。
  7. 比重が2.2以上2.5未満である請求項1ないしのいずれか1項に記載のガラスセラミックス。
  8. 請求項1ないしのいずれか1項に記載のガラスセラミックスからなるガラスセラミックス基板。
  9. 透光性基板と、その上に設けられた対向電極とを有する液晶パネル用対向基板であって、前記透光性基板として、請求項に記載のガラスセラミックス基板を用いたことを特徴とする液晶パネル用対向基板。
  10. 液晶パネルが、(a)基板と該基板上に設けられた画素電極と該画素電極に接続されたスイッチング素子を有する駆動基板と、(b)前記駆動基板と所定の間隔を介して対向して設置され、かつ透光性基板と、該透光性基板上の前記画素電極と対向する位置に対向電極を備えた対向基板と、(c)前記駆動基板と対向基板との間に所定の間隔を保って形成され、かつ前記画素電極と対向電極との間に印加される電圧により駆動される液晶層とを有するものである請求項に記載の液晶パネル用対向基板。
  11. さらに、駆動基板のスイッチング素子に対向する透光性基板上の位置に、遮光膜を有する請求項10に記載の液晶パネル用対向基板。
  12. 透明基板と、その上に形成された反射防止膜を備えた液晶パネル用防塵基板であって、前記透明基板として、請求項に記載のガラスセラミックス基板を用いたことを特徴とする液晶パネル用防塵基板。
  13. ガラスセラミックス基板が、β−石英系固溶体を含む結晶相を有し、30〜300℃の範囲の温度における平均線膨張係数が−5×10−7/℃〜+5×10−7/℃である請求項12に記載の液晶パネル用防塵基板。
  14. ガラスセラミックス基板が、比重が2.2以上2.5未満である請求項12または13に記載の液晶パネル用防塵基板。
  15. (a)基板と該基板上に設けられた画素電極と該画素電極に接続されたスイッチング素子を有する駆動基板と、(b)前記駆動基板と所定の間隔を介して対向して設置され、かつ透光性基板と、該透光性基板上の前記画素電極と対向する位置に対向電極を備えた対向基板と、(c)前記駆動基板と対向基板との間に所定の間隔を保って形成され、かつ前記画素電極と対向電極との間に印加される電圧により駆動される液晶層とを有する液晶パネルにおける、前記駆動基板および前記対向基板の少なくとも一方の外側に設けられる請求項12ないし14のいずれか1項に記載の液晶パネル用防塵基板。
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