JP4132114B2 - 整流子およびそれを用いた燃料ポンプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、整流子およびそれを用いた燃料ポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば自動車用の燃料ポンプとして、モータ部およびポンプ部を内蔵した電磁駆動式の燃料ポンプが多く使用されている。モータ部の複数に分割された整流子の接触部がブラシと摺動することによりコイルを巻回した電機子に電源から電流が供給され、電機子が回転する。この電機子の回転によりポンプ部のインペラが回転し燃料が燃料タンクから吸い上げられ、内燃機関(以下、「内燃機関」をエンジンという)に供給される。
【0003】
整流子の接触部は銅で形成されることが一般的である。銅製の接触部と摺動するブラシの硬度が低いとブラシの摩耗が激しく寿命が短くなるので、例えば硬度の高い無定形炭素をカーボン材に含有してブラシを形成し耐摩耗性を向上させることが考えられる。しかし、銅製の接触部は、例えば酸化した燃料や硫黄成分を含む燃料と反応して腐食することがある。また、導電性を有する硫化銅が生成されることにより、複数に分割されている接触部が電気的に接続する可能性がある。接触部が燃料と反応することを防止するために、米国特許番号第5175463号明細書に開示されているように接触部をカーボン材で形成するものが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、カーボン材で形成した接触部は銅製の接触部に比べて硬度が低く機械的強度が劣るので、カーボン材で形成した接触部を無定形炭素を含有して形成したブラシと摺動させると接触部の摩耗速度が速くなり、接触部が摩耗限界に達するまでの寿命が短くなるという問題がある。整流子の接触部をカーボン材にして燃料による腐食を防止しつつ機械的摩耗にも強くする提案はなされていない。
【0005】
また、接触部に用いるカーボン材として天然カーボンよりも硬度が高い人工カーボンを用いると、接触部の寿命は長くなるが、人工カーボンは天然カーボンに比べて高価であるから製造コストが上昇するという問題がある。
本発明の目的は、カーボン材を用いた耐久性に優れた整流子を提供することにある。また本発明の他の目的は、耐久性に優れた燃料ポンプを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の整流子によると、ブラシは天然カーボンに無定形炭素を含有した材質で形成され、整流子は天然カーボンに無定形炭素を5〜30重量%含有した材質でブラシとの接触部を形成したことにより、接触部の機械的強度が高くなり摩耗限界に達するまでの接触部の寿命が長くなるので、整流子の耐久性を向上させることができる。また、人工カーボンに比べて硬度は低いが安価な天然カーボンに無定形炭素を含有して接触部を形成することにより、耐久性に優れた整流子を安価に製造することができる。さらに、このような整流子を用いることにより、燃料ポンプの耐久性を向上することができる。
ここで、天然カーボンに含有する無定形炭素の含有量が少な過ぎると、接触部の耐久性を使用上必要な程度に向上させることができない。逆に、無定形炭素の含有量が多過ぎると、接触部を焼成する際にクラックが発生する恐れがある。接触部にクラックが発生すると整流子の接触部として使用できないので接触部の歩留りが低下する。そこで本発明の請求項1記載の整流子においては、天然カーボンに含有する無定形炭素の含有量を5〜30重量%に設定することにより、耐久性を向上させ、かつ焼成時のクラック発生を抑制し歩留りを向上することができる。
【0008】
本発明の請求項記載の整流子によると、鉄以上の導電率を有する金属端子と接触部とを電気的に接続することにより、整流子における電力損を低減することができる。本発明の請求項3記載の燃料ポンプによると、このような整流子を用いることにより、燃料ポンプの耐久性を向上することができる。
【0009】
本発明の請求項4記載の燃料ポンプによると、天然カーボン天然カーボンよりも電気抵抗の大きい無定形炭素を5〜30重量%含有した材質でブラシを形成することにより、整流子の接触部とブラシとの間の電気抵抗が大きくなる。したがって、整流において電流の正負の切り換えが速やかに行われるので、供給電力を効率よく電機子の回転運動に変換することができる。さらに、電気抵抗が大きくなることによりブラシと接触部との間で生じる火花が減少するので、ブラシおよび接触部の火花による温度上昇を抑制し、ブラシおよび接触部の寿命を延ばすことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示す実施例について説明する。
本発明の整流子をインタンク式燃料ポンプに適用した例を図1、図2および図3に示す。
図1に示すように、燃料ポンプ10はポンプ部20とこのポンプ部20を駆動する電磁駆動部としてのモータ部30とから構成されている。モータ部30はブラシ付の直流モータであり、円筒状のハウジング11内に永久磁石31を環状に配置し、この永久磁石31の内周側に同心円上に電機子32を配置した構成となっている。
【0011】
ポンプ部20は、ケーシング本体21、ケーシングカバー22およびインペラ23等から構成され、ケーシング本体21およびケーシングカバー22は、例えばアルミのダイカスト成形により形成されている。ケーシング本体21はハウジング11の一方の端部内側に圧入固定されており、その中心に嵌着された軸受24が電機子32の回転シャフト35を回転自在に支持している。ポンプ部20で吸入された燃料はモータ部30内に圧送される。一方、ケーシングカバー22は、ケーシング本体21に被せられた状態でハウジング11の一端にかしめ等により固定されている。このケーシングカバー22の中心にはスラスト軸受25が固定され、これによって回転シャフト35のスラスト荷重が受けられるようになっている。ケーシングカバー22には吸入口40が形成されており、図示しない燃料タンク内の燃料が吸入口40からポンプ部20のポンプ流路41に吸入される。ケーシング本体21およびケーシングカバー22により一つのケーシングが構成され、その内部にインペラ23が回転自在に収容されている。
【0012】
インペラ23の周縁部には羽根片が形成されており、インペラ23の回転により吸入口40からポンプ流路41に吸入された燃料はモータ部30内に圧送される。
電機子32はモータ部30内に回転自在に収容され、図示しないコイルがコア32aの外周に巻回されている。整流子60は電機子32の図1の上部に配設されており、図示しない電源から、コネクタ45に埋設されたターミナル46、図示しないブラシ、整流子60を介してコイルに電力が供給される。ブラシおよびブラシと摺動する整流子60の後述する接触部62は天然カーボンに無定形炭素を含有して形成されている。
【0013】
整流子60は、図2および図3に示すように等角度間隔に分割された8個のセグメント61と、セグメント61を支持する樹脂製の支持部69とからなる。各セグメント61は、接触部62および接触部62と電気的に接続している銅製端子部63からなる。各セグメント61を分割している溝は支持部69にまで達しているので、各セグメント61は互いに電気的に絶縁されている。爪部63aは各端子部63の外周側に突出しており、コイルと電気的に接続している。
【0014】
電機子32のコイルに通電し電機子32が回転すると、この電機子32の回転シャフト35とともにインペラ23が回転する。インペラ23が回転すると、吸入口40からポンプ流路41内に燃料が吸入され、この燃料がインペラ23の各羽根片から運動エネルギーを受けてポンプ流路41内からモータ部30の内部に圧送される。モータ部30の内部に圧送された燃料は、電機子32の周囲を通過して燃料吐出口43から吐出される。
【0015】
次に、整流子60の製造手順を説明する。
▲1▼端子部母材と接触する接触部母材の端面にニッケルめっきを施し、このニッケル面と端子部母材とをはんだ付けする。端子部母材は外周に爪部63aを有する円板状の銅製であり、接触部母材は天然カーボンに無定形炭素を含有して形成したものである。▲2▼端子部母材に樹脂をモールドして支持部69を形成する。▲3▼支持部69に達するまで接触部母材および端子部母材を分割し、接触部62および端子部63を形成する。
【0016】
この後、爪部63aにコイルをヒュージングして接触部62とコイルとを電気的に接続する。
ここで、接触部母材を形成する際に天然カーボンに含有する無定形炭素の含有量が少な過ぎるとブラシと摺動する接触部の機械的強度が不十分になり、無定形炭素を含有して形成したブラシと摺動させると接触部の摩耗が激しく寿命が短くなる。逆に、無定形炭素の含有量が多すぎると、カーボン材に含有して成形したのち接触部母材を焼成する際にクラックが発生し易くなるので接触部母材の歩留りが低下する。
【0017】
接触部母材の機械的強度を高め、歩留りを向上させるために、天然カーボンに含有する無定形炭素の含有量を5〜30重量%にすれば使用上要求される耐久性および歩留りを満たすことができる。さらに、無定形炭素の含有率を20重量%前後にすることが耐久性および歩留りの点から望ましい。
無定形炭素を含有せずに形成した接触部と、無定形炭素を8重量%含有して形成した接触部との耐久試験の結果を図4に示す。試験条件は、通電電流5A、回転数8000rpm 、作動時間500hである。接触部と摺動するブラシも天然カーボンに無定形炭素を8重量%含有して形成したものを使用した。図4に示すように、無定形炭素を8重量%含有した方が含有しなかったものに比べはるかに耐久性に優れていることが判る。無定形炭素の含有率は8重量%に限るものではなく、前述した5〜30重量%の含有率で接触部を形成すれば、無定形炭素を含有せずに形成した接触部と比べてはるかに良好な耐久性を示す試験結果を得ることができる。また、ブラシも天然カーボンに5〜30重量%の含有率で無定形炭素を含有して形成することが望ましい。
【0018】
以上説明した本発明の実施の形態を示す実施例では、ブラシと摺動する整流子60の接触部62を天然カーボンに無定形炭素を含有して形成したことにより、接触部62の機械的強度が高まり、ブラシとの摺動による摩耗量が減少する。したがって、接触部が摩耗限界に達するまでの寿命が長くなるので燃料ポンプの耐久性が向上する。また、安価な天然カーボンを使用できるので整流子の製造コストを低減できる。
【0019】
また本実施例では、接触部62およびブラシともに天然カーボンに電気抵抗の大きい無定形炭素を含有した材質で形成することにより、金属で形成したものに比べて接触部62とブラシとの間の電気抵抗が大きくなる。したがって、電機子32の回転に伴う整流において電流の正負の切り換えが速やかに行われるので、電源からコイルに供給される電力を効率よく電機子32aの回転運動に変換することができる。さらに、電気抵抗が大きくなることによりブラシと接触部と62の間で生じる火花が減少するので、ブラシおよび接触部62の火花による温度上昇を抑制し、ブラシおよび接触部の寿命を延ばすことができる。
【0020】
また、接触部62およびブラシを天然カーボンに無定形炭素を含有して形成したことにより、酸化した燃料や硫黄成分を含む燃料と接触部62およびブラシが接触しても接触部62およびブラシの腐食を防止することができる。例えば銅製の接触部と比較すると、硫黄成分と接触部が反応して導電性を有する硫化銅が接触部の各セグメント間に形成されないので、各セグメント間の絶縁を保持することができる。
【0021】
また本実施例では、全体として円板状に形成された接触部62を用いたが、接触部を全体として円筒状に形成し、円筒状の側面にブラシを接触させる構成にすることも可能である。
また、鉄以上の導電率を有する材質であれば、例えば銅に代えて黄銅、ステンレス鋼、それら材質の合金等で端子部を形成することも可能である。
【0022】
また本実施例は、インタンク式の燃料ポンプに本発明の整流子の構成を適用したものであるが、燃料ポンプに限らず耐久性を要求される使用分野であればどのような分野においても本発明の整流子を用いることが効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の燃料ポンプを示す断面図である。
【図2】本実施例の整流子を示す平面図である。
【図3】図2のIII −III 線断面図である。
【図4】接触部に無定形炭素を用いた場合と用いなかった場合の耐久性を示す特性図である。
【符号の説明】
10 燃料ポンプ
11 ハウジング
20 ポンプ部
30 モータ部
32 電機子
60 整流子
61 セグメント(整流子)
62 接触部(整流子)
63 端子部(整流子、金属端子)
69 支持部(整流子)

Claims (4)

  1. ポンプ部とこのポンプ部を駆動するモータ部とから構成されて、前記モータ部内に回転自在に電機子を収容する燃料ポンプに用いられ、前記モータ部のブラシと接触し前記電機子の前記ポンプ部と反対側に配設される整流子において、前記ブラシは天然カーボンに無定形炭素を含有した材質で形成され、前記整流子は天然カーボンに無定形炭素を5〜30重量%含有した材質で前記ブラシとの接触部が形成されていることを特徴とする整流子。
  2. 前記接触部は鉄以上の導電率を有する金属端子と電気的に接続していることを特徴とする請求項1記載の整流子。
  3. 請求項1に記載の整流子を用いることを特徴とする燃料ポンプ。
  4. 前記ブラシは、天然カーボンに無定形炭素を5〜30重量%含有した材質で形成されていることを特徴とする請求項3記載の燃料ポンプ。
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