JP4569046B2 - 電動機 - Google Patents
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- Motor Or Generator Current Collectors (AREA)
Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動機に関し、例えば、自動車の燃料タンク内に設置される燃料ポンプ駆動用電動機に用いて好適である。
【０００２】
【従来の技術】
自動車の燃料タンク内に設置される燃料移送用の電動機駆動式の燃料ポンプとして、例えば、米国特許５０１３２２１号に開示されるようなものがある。これは、ポンプ室とこれを駆動する電動機とから構成されている。この電動機は、回転軸に垂直な平板形状の整流子へ、回転軸方向に弾性部材により付勢されて整流子に押圧接触するブラシを介して通電して電動機を回転させる構造となっている。この燃料ポンプは、燃料（例えば、ガソリン等炭化水素燃料）中に浸漬された状態で運転されるため、燃料に対する耐腐蝕性が要求される。そこで、米国特許５１５７２９９号および特開平９−１８２３８１号公報に開示されるものにおいては、整流子のブラシと接触摺動する接触部材に焼結炭素（カーボン）を用いて、燃料に対する耐腐蝕性を確保すると共に整流子やブラシの摩耗寿命を向上させている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
上述の電動機構造においては、ブラシを摺動自在に保持するブラシホルダと整流子とは軸方向に対向して配置されている。衝撃荷重が作用してアーマチャが軸方向にブラシホルダ側に移動した場合、整流子のカーボン製の接触部材がブラシホルダに衝突して、その衝撃で整流子のカーボン製の接触部材が破損する可能性があった。
【０００４】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、アーマチャが軸方向にブラシホルダ側に移動した場合でも整流子のカーボン製の接触部材がブラシホルダに衝突しないような構造とすることにより、整流子のカーボン製の接触部材の破損を防止できる電動機を提供することにある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成する為、以下の技術的手段を採用する。
【０００６】
本発明の請求項１に記載の電動機では、ブラシホルダ側へのアーマチャの軸方向移動を規制する規制部として、アーマチャに対向するように突出した突起部をブラシホルダに設け、この突起部によってアーマチャの移動が停止した時に、接触部材とブラシホルダとの間に隙間が形成される構成とした。また、請求項５に記載の電動機では、規制部をアーマチャをモールドしている樹脂に設けた。これにより、電動機に衝撃荷重が加わり、アーマチャがブラシホルダに向かって軸方向に移動した場合において、整流子の接触部材がブラシホルダに衝突することがない、つまり規制部のために整流子の接触部材がブラシホルダに衝突しないので、整流子のカーボン製の接触部材の破損を防止することができる。
【０００７】
請求項２または請求項３のように、ブラシホルダに設けた突起部をアーマチャの樹脂モールド部の外周部に対向させる、あるいは、整流子の保持部材に対向させることにより、容易に規制部を形成することができる。
【０００８】
本発明の請求項４に記載の電動機では、規制部を、アーマチャの樹脂モールド部の外周部の全周または一部をブラシホルダに向かって延出して形成した。これにより、容易に規制部を形成することができる。
【００１０】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態による電動機を、電動機駆動式の燃料ポンプに適用した場合を例に図に基づいて説明する。
【００１１】
（第１の実施形態）
本発明の第１の実施形態による燃料ポンプ１０を図１に示す。
【００１２】
燃料ポンプ１０は、例えば電子式燃料噴射システムの燃料供給システムにおいて車両等の燃料タンク内に収容されており、燃料タンク（図示せず）から吸入した燃料をエンジン（図示せず）に供給するものである。
【００１３】
燃料ポンプ１０はポンプ部２０と、このポンプ部２０を駆動するための電動機であるモータ部３０とから構成されている。
【００１４】
モータ部３０はブラシ付の直流モータであり、円筒状のハウジング１１内に永久磁石（図示せず）を環状に配置し、この永久磁石の内周側に同心円上にアーマチャ３２を配置した構成となっている。
【００１５】
ポンプ部２０は、ケーシング本体２１、ケーシングカバー２２およびインペラ２３等から構成されている。ケーシング本体２１およびケーシングカバー２２により一つのケーシング部材が構成され、その内部に回転体としてのインペラ２３が回転自在に収容されている。ケーシング本体２１およびケーシングカバー２２は、例えばアルミのダイカスト成形により形成されている。ケーシング本体２１はハウジング１１の一方の端部内側に圧入固定されており、その中心に軸受２５が嵌着されている。ケーシングカバー２２は、ケーシング本体２１に被せられた状態でハウジング１１の一端にかしめ等により固定されている。ケーシングカバー２２の中心にはスラスト軸受２６が圧入固定されている。アーマチャ３２の回転シャフト３５の一方の端部は、軸受２５により回転自在に径方向に支持されているとともに、スラスト軸受２６によりスラスト方向の荷重を支持されている。
回転シャフト３５の他方の端部は、ブラシホルダ８０に嵌着されている軸受２７により回転自在に径方向に支持されている。
【００１６】
ケーシングカバー２２に燃料吸入口４０が形成されており、周縁部に羽根片を形成したインペラ２３が回転することにより図示しない燃料タンク内の燃料が燃料吸入口４０からポンプ流路４１に吸入される。ポンプ流路４１は、インペラ２３の外周に沿いケーシング本体２１とケーシングカバー２２との間にＣ字状に形成されている。ポンプ流路４１に吸入された燃料はインペラ２３の回転により加圧され、モータ部３０の燃料室３１に圧送される。
【００１７】
アーマチャ３２はモータ部３０内に回転自在に収容され、コイル（図示せず）がコア３２ａの外周に巻回されている。整流子５０は円板状に形成されており、アーマチャ３２の図１の上部に配設されている。図示しない電源から、コネクタ４５に埋設されたターミナル４６、ブラシ７０、整流子５０を介してコイルに電力が供給される。供給された電力によりアーマチャ３２が回転すると、アーマチャ３２の回転シャフト３５とともにインペラ２３が回転する。インペラ２３が回転すると、燃料吸入口４０からポンプ流路４１に燃料が吸入され、この燃料がインペラ２３の各羽根片から運動エネルギーを受けてポンプ流路４１から燃料室３１に圧送される。燃料室３１に圧送された燃料は、アーマチャ３２の周囲を通過し燃料吐出口４３から燃料ポンプ１０外に吐出される。燃料吐出口４３には逆止弁４４が収容されており、この逆止弁４４が燃料吐出口４３から吐出された燃料の逆流を防止している。
【００１８】
次にモータ部３０の構成を詳細に説明する。
【００１９】
整流子５０は、図２、および図３に示すように、等角度間隔に形成された８個の接触部材６０、および各接触部材６０を固定する固定部材５６を有している。
接触部材６０は、カーボンで形成されており、ブラシ７０と接触摺動する。端子部材５４は銅等の導電性の高い金属で形成されており、接触部材６０に接合され電気的に導通している。また、端子部材５４は整流子５０の外周側に突出する爪５５を有しており、この爪５５にアーマチャ３２のコイル（図示せず）がフュージングにより電気的に接続される。固定部材５６は絶縁性の熱硬化性樹脂、例えばフェノール樹脂等で形成されており、接触部材６０および端子部材５４を固定している。溝６１は接触部材６０から端子部材５４を通過し固定部材５６にまで達しているので、各接触部材６０は互いに電気的に絶縁されている。整流子５０は、アーマチャ３２のコア３２ａのポンプ部２０と反対側に、コア３２ａと所定の位置関係となるように回転シャフト３５に圧入固定されている。なお、図１において、端子部材５４は省略している。
【００２０】
アーマチャ３２は、磁性材料として、例えば電磁鋼板を多数積層して形成されたコア３２ａを回転シャフト３５に圧入固定して形成されている。また、コア３２ａのポンプ部２０と反対側には、整流子５０が固定されている。コア３２ａは、等角度間隔に形成された８個の突極（図示せず）を有し、隣合う突極間の溝、すなわち、スロット（図示せず）にはコイル（図示せず）が巻回されている。各コイルの両端は、整流子５０の爪５５にフュージングにより電気的に接続される。各コイルと爪５５の接続が完了した後、この接続部およびコイルの絶縁性を維持し、且つ燃料による腐蝕を防止するために、コア３２ａおよび整流子５０は樹脂３３によりモールドされる。なお、整流子５０のブラシホルダ８０側端面は、ブラシ７０と摺動接触可能とするためにモールドされない。
【００２１】
ブラシ７０は、カーボンで成形され、ブラシホルダ８０に設けられたガイド部８１内に軸方向に移動可能に収容されている。ブラシ７０には、ブラシ７０をターミナル４６と電気的に接続する導体であるピグテール（図示せず）が接合されている。ピグテールは、ガイド部８１内におけるブラシ７０の移動を妨げないように、多数の細い銅線からなる柔軟な撚り線で形成されている。ピグテールはブラシ押え板７２を介してターミナル４６に導通している。また、ブラシ７０は、弾性部材であるスプリング７６により整流子５０に向けて付勢されている。
【００２２】
ブラシホルダ８０は、絶縁材、例えば熱硬化性樹脂で形成されており、ブラシ７０を軸方向に移動可能に収容する一対のガイド部８１を有している。また、ブラシホルダ８０には、アーマチャ３２の回転シャフト３５を回転自在に径方向に支持する軸受け２７が嵌着されている。つまり、アーマチャ３２は、この軸受け２７と、ポンプ部２０のケーシング本体２１に嵌着されている軸受け２５とにより、その両端部を回転自在に径方向に支持されている。ブラシホルダ８０には、ブラシホルダ８０に向かうアーマチャ３２の軸方向移動を規制する規制部として、突起部８２が設けられている。突起部８２は、アーマチャ３２の樹脂３３の端面３３ａと対向する端面３３ａと同軸上の円弧状の端面８２ａを有している。この端面８２ａの軸方向位置は、外力によってアーマチャ３２がブラシホルダ８０に向かって軸方向に移動し端面３３ａが端面８２ａに当接した時に、接触部材６０とそれと対向するブラシホルダ８０との間に隙間Ｃが形成されるように決められている。
【００２３】
この隙間Ｃの設定について、別の表現で説明すると、図４に示すように、突起部８２の端面８２ａとそれと対向するアーマチャ３２の樹脂３３の端面３３ａとの対向距離Ｌ１と、接触部材６０の接触面６０ａとそれと対向するブラシホルダ８０の対向面８０ａとの対向距離Ｌ２とが、常にＬ１＜Ｌ２となるように、突起部８２の形状が決められている。すなわち、Ｃ＝Ｌ２−Ｌ１である。
【００２４】
以上説明した、本発明の第１の実施形態では、燃料ポンプ１０のモータ部３０においてブラシホルダ８０にアーマチャ３２の樹脂３３の端面３３ａに対向して突出する突起部８２を設け、且つ、この突起部８２のアーマチャ３２の樹脂３３の端面３３ａと対向する端面８２ａの軸方向位置を、外力によってアーマチャ３２がブラシホルダ８０に向かって軸方向に移動し端面３３ａが端面８２ａに当接した時に、接触部材６０とブラシホルダ８０との間に隙間Ｃが形成されるように、言換えると、接触部材６０がそれと対向するブラシホルダ８０に衝突しないように設定した。これにより、燃料ポンプ１０に衝撃荷重が加わり、アーマチャ３２がブラシホルダ８０に向かって軸方向に移動しても、整流子５０の接触部材６０がブラシホルダ８０に衝突すること抑止され、整流子５０のカーボン製の接触部材６０の破損を確実に防止することができる。
【００２５】
また、ブラシホルダ８０に突起部８２を設けるという小規模な変更で対処できるため、コスト上昇を最小限度に抑えて整流子５０のカーボン製の接触部材６０の破損を防止することができる。
【００２６】
（第２の実施形態）
次に、本発明の第２の実施形態による燃料ポンプ１０について説明する。
【００２７】
図５に、本発明の第２の実施形態による燃料ポンプ１０の部分断面図を示す。
【００２８】
この第２の実施形態では、上述の第１の実施形態における燃料ポンプ１０のモータ部３０に対して、ブラシホルダ８０に設けられた突起部８２の位置を変更したものである。すなわち、第２の実施形態においては、突起部８２は、整流子５０の固定部材５６の端面５６ａと対向する、端面５６ａと同軸上の円弧状の端面８２ａを有している。
【００２９】
この場合、燃料ポンプ１０に衝撃力が作用してアーマチャ３２がブラシホルダ８０に向かって軸方向に移動すると、端面５６ａが端面８２ａに当接してアーマチャ３２の移動が規制される。この時、第１の実施形態の場合と同様に、接触部材６０とブラシホルダ８０との間に隙間Ｃが形成されるので、接触部材６０がブラシホルダ８０に衝突することが抑止され、整流子５０のカーボン製の接触部材６０の破損を確実に防止することができる。
【００３０】
（第３の実施形態）
次に、本発明の第３の実施形態による燃料ポンプ１０について説明する。
【００３１】
図６に、本発明の第３の実施形態による燃料ポンプ１０の部分断面図を示す。
【００３２】
この第３の実施形態では、前述の第１の実施形態における燃料ポンプ１０のモータ部３０に対して、ブラシホルダ８０に向かうアーマチャ３２の軸方向移動を規制する規制部の設定位置を、ブラシホルダ８０からアーマチャ３２に変更したものである。すなわち、第３の実施形態においては、アーマチャ３２をモールドしている樹脂３３を、ブラシホルダ８０に向かって円環状に延長（つまり突出）させている。
【００３３】
この場合、燃料ポンプ１０に衝撃力が作用してアーマチャ３２がブラシホルダ８０に向かって軸方向に移動すると、樹脂３３の端面３３ａがブラシホルダ８０に当接してアーマチャ３２の移動が規制される。この時、第１の実施形態の場合と同様に、接触部材６０とブラシホルダ８０との間に隙間Ｃが形成されるので、接触部材６０がブラシホルダ８０に衝突することが抑止され、整流子５０のカーボン製の接触部材６０の破損を確実に防止することができる。
【００３４】
以上説明した、本発明の第１の実施形態および第２の実施形態において、突起部８２の端面８２ａを円弧状に形成しているが、これを円環状に形成してもよい。
【００３５】
また、以上説明した、本発明の第３の実施形態において、アーマチャ３２をモールドしている樹脂３３を、ブラシホルダ８０に向かって円環状に延長しているが、これを円環状ではなく、部分的に円弧状に延長してもよい。この場合、アーマチャ３２の回転シャフト３５まわりの不釣り合い重量を小さくするために、複数箇所を等角度間隔で円弧状に延長すればよい。
【００３６】
また、樹脂３３の端面３３ａを規制部材として用いず、整流子５０の樹脂製の固定部材５６を規制部材としてブラシホルダ８０に当接するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の第１の実施形態による燃料ポンプ１０の断面図である。
【図２】本発明の第１の実施形態による整流子５０の平面図である。
【図３】図２のＩＩＩ−ＩＩＩ線断面図である。
【図４】図１におけるＩＶ部拡大図であり、アーマチャ３２の樹脂３３の端面３３ａが突起部８２に当接した状態を示す。
【図５】本発明の第２の実施形態による燃料ポンプ１０の部分断面図である。
【図６】本発明の第３の実施形態による燃料ポンプ１０の部分断面図である。
【符号の説明】
１０ 燃料ポンプ
１１ ハウジング
２０ ポンプ部
２１ ケーシング本体
２２ ケーシングカバー
２３ インペラ
２５ 軸受
２６ スラスト軸受
２７ 軸受
３０ モータ部（電動機）
３１ 燃料室
３２ アーマチャ
３２ａ コア
３３ 樹脂
３３ａ 端面
３５ 回転シャフト（回転軸）
４０ 燃料吸入口
４１ ポンプ流路
４３ 燃料吐出口
４４ 逆止弁
４５ コネクタ
４６ ターミナル
５０ 整流子
５４ 端子部材
５５ 爪
５６ 固定部材
５６ａ 端面
６０ 接触部材
６１ 溝
７０ ブラシ
７２ ブラシ押え板
７６ スプリング（弾性部材）
８０ ブラシホルダ
８１ ガイド部
８２ 突起部（規制部）
８２ａ 端面
Ｃ 隙間
Ｌ１、Ｌ２ 対向距離
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動機に関し、例えば、自動車の燃料タンク内に設置される燃料ポンプ駆動用電動機に用いて好適である。
【０００２】
【従来の技術】
自動車の燃料タンク内に設置される燃料移送用の電動機駆動式の燃料ポンプとして、例えば、米国特許５０１３２２１号に開示されるようなものがある。これは、ポンプ室とこれを駆動する電動機とから構成されている。この電動機は、回転軸に垂直な平板形状の整流子へ、回転軸方向に弾性部材により付勢されて整流子に押圧接触するブラシを介して通電して電動機を回転させる構造となっている。この燃料ポンプは、燃料（例えば、ガソリン等炭化水素燃料）中に浸漬された状態で運転されるため、燃料に対する耐腐蝕性が要求される。そこで、米国特許５１５７２９９号および特開平９−１８２３８１号公報に開示されるものにおいては、整流子のブラシと接触摺動する接触部材に焼結炭素（カーボン）を用いて、燃料に対する耐腐蝕性を確保すると共に整流子やブラシの摩耗寿命を向上させている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
上述の電動機構造においては、ブラシを摺動自在に保持するブラシホルダと整流子とは軸方向に対向して配置されている。衝撃荷重が作用してアーマチャが軸方向にブラシホルダ側に移動した場合、整流子のカーボン製の接触部材がブラシホルダに衝突して、その衝撃で整流子のカーボン製の接触部材が破損する可能性があった。
【０００４】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、アーマチャが軸方向にブラシホルダ側に移動した場合でも整流子のカーボン製の接触部材がブラシホルダに衝突しないような構造とすることにより、整流子のカーボン製の接触部材の破損を防止できる電動機を提供することにある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成する為、以下の技術的手段を採用する。
【０００６】
本発明の請求項１に記載の電動機では、ブラシホルダ側へのアーマチャの軸方向移動を規制する規制部として、アーマチャに対向するように突出した突起部をブラシホルダに設け、この突起部によってアーマチャの移動が停止した時に、接触部材とブラシホルダとの間に隙間が形成される構成とした。また、請求項５に記載の電動機では、規制部をアーマチャをモールドしている樹脂に設けた。これにより、電動機に衝撃荷重が加わり、アーマチャがブラシホルダに向かって軸方向に移動した場合において、整流子の接触部材がブラシホルダに衝突することがない、つまり規制部のために整流子の接触部材がブラシホルダに衝突しないので、整流子のカーボン製の接触部材の破損を防止することができる。
【０００７】
請求項２または請求項３のように、ブラシホルダに設けた突起部をアーマチャの樹脂モールド部の外周部に対向させる、あるいは、整流子の保持部材に対向させることにより、容易に規制部を形成することができる。
【０００８】
本発明の請求項４に記載の電動機では、規制部を、アーマチャの樹脂モールド部の外周部の全周または一部をブラシホルダに向かって延出して形成した。これにより、容易に規制部を形成することができる。
【００１０】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態による電動機を、電動機駆動式の燃料ポンプに適用した場合を例に図に基づいて説明する。
【００１１】
（第１の実施形態）
本発明の第１の実施形態による燃料ポンプ１０を図１に示す。
【００１２】
燃料ポンプ１０は、例えば電子式燃料噴射システムの燃料供給システムにおいて車両等の燃料タンク内に収容されており、燃料タンク（図示せず）から吸入した燃料をエンジン（図示せず）に供給するものである。
【００１３】
燃料ポンプ１０はポンプ部２０と、このポンプ部２０を駆動するための電動機であるモータ部３０とから構成されている。
【００１４】
モータ部３０はブラシ付の直流モータであり、円筒状のハウジング１１内に永久磁石（図示せず）を環状に配置し、この永久磁石の内周側に同心円上にアーマチャ３２を配置した構成となっている。
【００１５】
ポンプ部２０は、ケーシング本体２１、ケーシングカバー２２およびインペラ２３等から構成されている。ケーシング本体２１およびケーシングカバー２２により一つのケーシング部材が構成され、その内部に回転体としてのインペラ２３が回転自在に収容されている。ケーシング本体２１およびケーシングカバー２２は、例えばアルミのダイカスト成形により形成されている。ケーシング本体２１はハウジング１１の一方の端部内側に圧入固定されており、その中心に軸受２５が嵌着されている。ケーシングカバー２２は、ケーシング本体２１に被せられた状態でハウジング１１の一端にかしめ等により固定されている。ケーシングカバー２２の中心にはスラスト軸受２６が圧入固定されている。アーマチャ３２の回転シャフト３５の一方の端部は、軸受２５により回転自在に径方向に支持されているとともに、スラスト軸受２６によりスラスト方向の荷重を支持されている。
回転シャフト３５の他方の端部は、ブラシホルダ８０に嵌着されている軸受２７により回転自在に径方向に支持されている。
【００１６】
ケーシングカバー２２に燃料吸入口４０が形成されており、周縁部に羽根片を形成したインペラ２３が回転することにより図示しない燃料タンク内の燃料が燃料吸入口４０からポンプ流路４１に吸入される。ポンプ流路４１は、インペラ２３の外周に沿いケーシング本体２１とケーシングカバー２２との間にＣ字状に形成されている。ポンプ流路４１に吸入された燃料はインペラ２３の回転により加圧され、モータ部３０の燃料室３１に圧送される。
【００１７】
アーマチャ３２はモータ部３０内に回転自在に収容され、コイル（図示せず）がコア３２ａの外周に巻回されている。整流子５０は円板状に形成されており、アーマチャ３２の図１の上部に配設されている。図示しない電源から、コネクタ４５に埋設されたターミナル４６、ブラシ７０、整流子５０を介してコイルに電力が供給される。供給された電力によりアーマチャ３２が回転すると、アーマチャ３２の回転シャフト３５とともにインペラ２３が回転する。インペラ２３が回転すると、燃料吸入口４０からポンプ流路４１に燃料が吸入され、この燃料がインペラ２３の各羽根片から運動エネルギーを受けてポンプ流路４１から燃料室３１に圧送される。燃料室３１に圧送された燃料は、アーマチャ３２の周囲を通過し燃料吐出口４３から燃料ポンプ１０外に吐出される。燃料吐出口４３には逆止弁４４が収容されており、この逆止弁４４が燃料吐出口４３から吐出された燃料の逆流を防止している。
【００１８】
次にモータ部３０の構成を詳細に説明する。
【００１９】
整流子５０は、図２、および図３に示すように、等角度間隔に形成された８個の接触部材６０、および各接触部材６０を固定する固定部材５６を有している。
接触部材６０は、カーボンで形成されており、ブラシ７０と接触摺動する。端子部材５４は銅等の導電性の高い金属で形成されており、接触部材６０に接合され電気的に導通している。また、端子部材５４は整流子５０の外周側に突出する爪５５を有しており、この爪５５にアーマチャ３２のコイル（図示せず）がフュージングにより電気的に接続される。固定部材５６は絶縁性の熱硬化性樹脂、例えばフェノール樹脂等で形成されており、接触部材６０および端子部材５４を固定している。溝６１は接触部材６０から端子部材５４を通過し固定部材５６にまで達しているので、各接触部材６０は互いに電気的に絶縁されている。整流子５０は、アーマチャ３２のコア３２ａのポンプ部２０と反対側に、コア３２ａと所定の位置関係となるように回転シャフト３５に圧入固定されている。なお、図１において、端子部材５４は省略している。
【００２０】
アーマチャ３２は、磁性材料として、例えば電磁鋼板を多数積層して形成されたコア３２ａを回転シャフト３５に圧入固定して形成されている。また、コア３２ａのポンプ部２０と反対側には、整流子５０が固定されている。コア３２ａは、等角度間隔に形成された８個の突極（図示せず）を有し、隣合う突極間の溝、すなわち、スロット（図示せず）にはコイル（図示せず）が巻回されている。各コイルの両端は、整流子５０の爪５５にフュージングにより電気的に接続される。各コイルと爪５５の接続が完了した後、この接続部およびコイルの絶縁性を維持し、且つ燃料による腐蝕を防止するために、コア３２ａおよび整流子５０は樹脂３３によりモールドされる。なお、整流子５０のブラシホルダ８０側端面は、ブラシ７０と摺動接触可能とするためにモールドされない。
【００２１】
ブラシ７０は、カーボンで成形され、ブラシホルダ８０に設けられたガイド部８１内に軸方向に移動可能に収容されている。ブラシ７０には、ブラシ７０をターミナル４６と電気的に接続する導体であるピグテール（図示せず）が接合されている。ピグテールは、ガイド部８１内におけるブラシ７０の移動を妨げないように、多数の細い銅線からなる柔軟な撚り線で形成されている。ピグテールはブラシ押え板７２を介してターミナル４６に導通している。また、ブラシ７０は、弾性部材であるスプリング７６により整流子５０に向けて付勢されている。
【００２２】
ブラシホルダ８０は、絶縁材、例えば熱硬化性樹脂で形成されており、ブラシ７０を軸方向に移動可能に収容する一対のガイド部８１を有している。また、ブラシホルダ８０には、アーマチャ３２の回転シャフト３５を回転自在に径方向に支持する軸受け２７が嵌着されている。つまり、アーマチャ３２は、この軸受け２７と、ポンプ部２０のケーシング本体２１に嵌着されている軸受け２５とにより、その両端部を回転自在に径方向に支持されている。ブラシホルダ８０には、ブラシホルダ８０に向かうアーマチャ３２の軸方向移動を規制する規制部として、突起部８２が設けられている。突起部８２は、アーマチャ３２の樹脂３３の端面３３ａと対向する端面３３ａと同軸上の円弧状の端面８２ａを有している。この端面８２ａの軸方向位置は、外力によってアーマチャ３２がブラシホルダ８０に向かって軸方向に移動し端面３３ａが端面８２ａに当接した時に、接触部材６０とそれと対向するブラシホルダ８０との間に隙間Ｃが形成されるように決められている。
【００２３】
この隙間Ｃの設定について、別の表現で説明すると、図４に示すように、突起部８２の端面８２ａとそれと対向するアーマチャ３２の樹脂３３の端面３３ａとの対向距離Ｌ１と、接触部材６０の接触面６０ａとそれと対向するブラシホルダ８０の対向面８０ａとの対向距離Ｌ２とが、常にＬ１＜Ｌ２となるように、突起部８２の形状が決められている。すなわち、Ｃ＝Ｌ２−Ｌ１である。
【００２４】
以上説明した、本発明の第１の実施形態では、燃料ポンプ１０のモータ部３０においてブラシホルダ８０にアーマチャ３２の樹脂３３の端面３３ａに対向して突出する突起部８２を設け、且つ、この突起部８２のアーマチャ３２の樹脂３３の端面３３ａと対向する端面８２ａの軸方向位置を、外力によってアーマチャ３２がブラシホルダ８０に向かって軸方向に移動し端面３３ａが端面８２ａに当接した時に、接触部材６０とブラシホルダ８０との間に隙間Ｃが形成されるように、言換えると、接触部材６０がそれと対向するブラシホルダ８０に衝突しないように設定した。これにより、燃料ポンプ１０に衝撃荷重が加わり、アーマチャ３２がブラシホルダ８０に向かって軸方向に移動しても、整流子５０の接触部材６０がブラシホルダ８０に衝突すること抑止され、整流子５０のカーボン製の接触部材６０の破損を確実に防止することができる。
【００２５】
また、ブラシホルダ８０に突起部８２を設けるという小規模な変更で対処できるため、コスト上昇を最小限度に抑えて整流子５０のカーボン製の接触部材６０の破損を防止することができる。
【００２６】
（第２の実施形態）
次に、本発明の第２の実施形態による燃料ポンプ１０について説明する。
【００２７】
図５に、本発明の第２の実施形態による燃料ポンプ１０の部分断面図を示す。
【００２８】
この第２の実施形態では、上述の第１の実施形態における燃料ポンプ１０のモータ部３０に対して、ブラシホルダ８０に設けられた突起部８２の位置を変更したものである。すなわち、第２の実施形態においては、突起部８２は、整流子５０の固定部材５６の端面５６ａと対向する、端面５６ａと同軸上の円弧状の端面８２ａを有している。
【００２９】
この場合、燃料ポンプ１０に衝撃力が作用してアーマチャ３２がブラシホルダ８０に向かって軸方向に移動すると、端面５６ａが端面８２ａに当接してアーマチャ３２の移動が規制される。この時、第１の実施形態の場合と同様に、接触部材６０とブラシホルダ８０との間に隙間Ｃが形成されるので、接触部材６０がブラシホルダ８０に衝突することが抑止され、整流子５０のカーボン製の接触部材６０の破損を確実に防止することができる。
【００３０】
（第３の実施形態）
次に、本発明の第３の実施形態による燃料ポンプ１０について説明する。
【００３１】
図６に、本発明の第３の実施形態による燃料ポンプ１０の部分断面図を示す。
【００３２】
この第３の実施形態では、前述の第１の実施形態における燃料ポンプ１０のモータ部３０に対して、ブラシホルダ８０に向かうアーマチャ３２の軸方向移動を規制する規制部の設定位置を、ブラシホルダ８０からアーマチャ３２に変更したものである。すなわち、第３の実施形態においては、アーマチャ３２をモールドしている樹脂３３を、ブラシホルダ８０に向かって円環状に延長（つまり突出）させている。
【００３３】
この場合、燃料ポンプ１０に衝撃力が作用してアーマチャ３２がブラシホルダ８０に向かって軸方向に移動すると、樹脂３３の端面３３ａがブラシホルダ８０に当接してアーマチャ３２の移動が規制される。この時、第１の実施形態の場合と同様に、接触部材６０とブラシホルダ８０との間に隙間Ｃが形成されるので、接触部材６０がブラシホルダ８０に衝突することが抑止され、整流子５０のカーボン製の接触部材６０の破損を確実に防止することができる。
【００３４】
以上説明した、本発明の第１の実施形態および第２の実施形態において、突起部８２の端面８２ａを円弧状に形成しているが、これを円環状に形成してもよい。
【００３５】
また、以上説明した、本発明の第３の実施形態において、アーマチャ３２をモールドしている樹脂３３を、ブラシホルダ８０に向かって円環状に延長しているが、これを円環状ではなく、部分的に円弧状に延長してもよい。この場合、アーマチャ３２の回転シャフト３５まわりの不釣り合い重量を小さくするために、複数箇所を等角度間隔で円弧状に延長すればよい。
【００３６】
また、樹脂３３の端面３３ａを規制部材として用いず、整流子５０の樹脂製の固定部材５６を規制部材としてブラシホルダ８０に当接するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の第１の実施形態による燃料ポンプ１０の断面図である。
【図２】本発明の第１の実施形態による整流子５０の平面図である。
【図３】図２のＩＩＩ−ＩＩＩ線断面図である。
【図４】図１におけるＩＶ部拡大図であり、アーマチャ３２の樹脂３３の端面３３ａが突起部８２に当接した状態を示す。
【図５】本発明の第２の実施形態による燃料ポンプ１０の部分断面図である。
【図６】本発明の第３の実施形態による燃料ポンプ１０の部分断面図である。
【符号の説明】
１０ 燃料ポンプ
１１ ハウジング
２０ ポンプ部
２１ ケーシング本体
２２ ケーシングカバー
２３ インペラ
２５ 軸受
２６ スラスト軸受
２７ 軸受
３０ モータ部（電動機）
３１ 燃料室
３２ アーマチャ
３２ａ コア
３３ 樹脂
３３ａ 端面
３５ 回転シャフト（回転軸）
４０ 燃料吸入口
４１ ポンプ流路
４３ 燃料吐出口
４４ 逆止弁
４５ コネクタ
４６ ターミナル
５０ 整流子
５４ 端子部材
５５ 爪
５６ 固定部材
５６ａ 端面
６０ 接触部材
６１ 溝
７０ ブラシ
７２ ブラシ押え板
７６ スプリング（弾性部材）
８０ ブラシホルダ
８１ ガイド部
８２ 突起部（規制部）
８２ａ 端面
Ｃ 隙間
Ｌ１、Ｌ２ 対向距離
Claims (5)
- カーボンで形成され互いに電気的に絶縁されている複数の接触部材と、
前記複数の接触部材を固定する固定部材とを備える円板状の整流子と、
回転軸を有すると共に軸方向の一端に前記整流子が同軸上に固定されたアーマチャと、
弾性部材により付勢されて前記アーマチャの軸方向から前記整流子の前記複数の接触部材に接触される一対のブラシと、
前記アーマチャの前記整流子側に軸方向に対向して配置され前記回転軸を回動自在に径方向に保持すると共に、前記ブラシを軸方向に移動可能に保持するブラシホルダとを備え、
前記アーマチャが樹脂モールドされている電動機において、
前記ブラシホルダ側への前記アーマチャの軸方向移動を規制する規制部として、前記アーマチャに対向するように突出した突起部を前記ブラシホルダに設け、前記突起部により前記アーマチャの移動が停止した時に、前記接触部材と前記ブラシホルダとの間に隙間が形成されることを特徴とする電動機。 - 前記突起部は、前記アーマチャの樹脂モールド部の外周部に対向していることを特徴とする請求項１に記載の電動機。
- 前記突起部は、前記整流子の前記固定部材に対向していることを特徴とする請求項１に記載の電動機。
- 前記規制部は、前記アーマチャの樹脂モールド部の外周部の全周または一部を前記ブラシホルダに向かって突出させて形成したことを特徴とする請求項１に記載の電動機。
- カーボンで形成され互いに電気的に絶縁されている複数の接触部材と、
前記複数の接触部材を固定する固定部材とを備える円板状の整流子と、
回転軸を有すると共に軸方向の一端に前記整流子が同軸上に固定されたアーマチャと、
弾性部材により付勢されて前記アーマチャの軸方向から前記整流子の前記複数の接触部材に接触される一対のブラシと、
前記アーマチャの前記整流子側に軸方向に対向して配置され前記回転軸を回動自在に径方向に保持すると共に、前記ブラシを軸方向に移動可能に保持するブラシホルダとを備え、
前記アーマチャが樹脂モールドされている電動機において、
前記ブラシホルダ側への前記アーマチャの軸方向移動を規制する規制部を、前記アーマチャをモールドしている樹脂に設け、前記規制部は、前記ブラシホルダに対向するように前記ブラシホルダに向かって突出しており、前記規制部により前記アーマチャの移動が停止した時に、前記接触部材と前記ブラシホルダとの間に隙間が形成されることを特徴とする電動機。
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