JP4131096B2 - 回路基板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属マスクを用いて基板に回路形成する方法の一つで、特に一続きの回路を基板の表裏に形成する回路基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、基板上に回路を形成する方法は多種多様あり、基板上にあらかじめ設けられた蒸着粒子を回路となる部分だけを残して除去する方法と、基板上に必要部分のみ露出させてそれ以外をマスキングして蒸着粒子を露出部に析出させることで回路とする方法とに大別される。後者の場合、一般的には、レジストを用いたフォトリソグラフィ法を用いるか、或いは金属マスクを用いて、マスキングをする方法がある。フォトリソグラフィは、パターン形成の微細化・多層化・複雑な回路の引回しに有利であるが、その反面、レジスト形成および剥離工程を必要とするために基板の種類やコスト・環境対策などに課題がある。
【0003】
一方、金属マスクによるパターニングは、基板へのセッティングが容易であること、マスクを繰り返し使用できコストに有利であることから、従来より簡易なパターニングに使用されてきたが、パターンの微細化や複雑な回路の引き回しには課題が多いのが現状である。
【0004】
先ず、微細化の点では、エッチングによる金属マスクの加工精度上、パターン幅(金属マスクの開口部幅)は、金属マスクの板厚程度までしか安定して作製できず、例えばパターンの最小幅が150μmの場合、板厚は150μm以下を使用せざるを得ない。従って、さらに微細パターンを形成しようとすれば、板厚をさらに薄くしなければならず、マスクの強度的な問題が出てくる。
【0005】
一方、複雑な回路の引き回しとして、例えば図19に示すような閉回路もしくは略閉回路状のパターンがある。図19中の2は回路ユニット、4は配線部である。この閉回路状のパターンを形成する方法として、特開昭53−97795号に示されるように、金属マスクのパターンの一部を残して片側からのみエッチングした部位を作り、ほぼ閉回路状のパターンを形成する方法が知られている。しかし、微細パターンを形成する場合、上記に述べたように板厚を薄くする必要があるため補強部の厚みも十分えられなくなり、またマスクの作製及び使用に耐え得る厚みは100μm程度であるため、マスクの強度的な問題が顕著になり、
他の従来例として、特許10−83458号では、パターンを形成したマスクにパターンを横断する補強部を設けているが、スペーサーによりマスクを基板から浮かせて保持し、さらに蒸着の際に蒸着源から基板を傾けることでその補強部の下にも蒸着粒子を届かせることで、閉回路パターンを形成できることを提案している。しかしこの方法では、回路に必要な部位が基板に密着しておらず全ての回路の輪郭において蒸着粒子が入り込み、任意のパターン幅(特に微細な幅である程)の回路を形成することが難しい。また、上記の特開昭53−97795号、特許10−83458号の提案においても、パターン形成部に必要とする膜厚が薄くなるとその補強部の下でのパターンのつながりは不十分となり、例えば後にそのパターン形成部を用いて電気的処理を必要とする場合(電気メッキや、分極処理など)に、導電体パターンとしての役目をなさない可能性がある。
【0006】
更に他の従来例として、特開昭56−51571号には、単純な回路の組み合わせで、回数を分けてパターニングすることで上記課題を解決することが提案されているが、例えば基板として機能性材料を用いてセンサ等を構成する場合は、両面に位置決めされたパターンを必要とし、金属マスクを基板の両側から精度よく挟み込む必要があり、一度形成されたパターンに別のパターンが描かれた金属マスクを精度良くセッティングすることは難しく、また煩雑な機構が必要となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来例の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、金属マスクを用いる簡易なパターニング方法で、基板の表裏両面に多数個の回路ユニットが連結されたパターンを接続信頼性のある方法で、且つ、回路基板上の電極部位と、配線部位とでそれぞれ異なるパターニングを、一度セットした金属マスクを交換することなく、物理蒸着にて実現できる回路基板の製造方法を提供するにあり、他の目的とするところは、パターン幅を微細化するために金属マスクの板厚を薄くした場合でもその強度を確保できる回路基板の製造方法を提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明にあっては、1枚の基板1上に多数個の回路ユニット2を閉回路パターンもしくは略閉回路パターンで形成するにあたって、センサなどの電極部3と配線部4とを基板1の表裏両面に物理蒸着により薄膜形成するようにした回路基板の製造方法において、基板1の表裏両面に、電極部3のパターン形成部5と配線部4のパターン形成部6とを有し且つ配線部4のパターン形成部6の一部に非パターン部7間に接続される橋状の補強部8が設けられた下部金属マスク9を挟み込み、下部金属マスク9の非パターン部7を基板1に密着させた状態で基板1上に電極部3と配線部4とを薄膜形成する工程と、基板1の表裏両面に下部金属マスク9を配置した状態で一方の下部金属マスク9上に、少なくとも下部金属マスク9の橋状の補強部8上に対向する配線部用パターン形成部11を有し且つ電極部3が非パターン部12となっている上部金属マスク10を配置して、配線部4を薄膜形成する工程とを備えていることを特徴としており、このように構成することで、上記2段階の工程で、下部金属マスク9と上部金属マスク10とを基板1に一度セットするだけで、基板1の表裏両面に電極部3と配線部4とを異なるパターニングで形成することができる。しかも、金属マスク9,10を一度セットするだけでよく、そのうえ一度セットした金属マスク9,10を交換する必要がなく、さらに下部金属マスク9に設けられる橋状の補強部8の上方に、上部金属マスク10の配線部用パターン形成部11を配置することで、薄膜パターンのつながり性が良くなり、閉回路もしくは略閉回路状のパターンを容易に形成できるようになる。
【0009】
また請求項2記載の発明は、請求項1において、橋状の補強部8を、各回路ユニット2の配線部4の接続部位における1ユニットとして切り出される切り代部60に配置したことを特徴とするのが好ましく、この場合、下部金属マスク9の橋状の補強部8において物理蒸着による膜の厚み、質が異なる場合でも、この箇所を回路ユニット2の切り代部60とすることで、回路ユニット2の配線信頼性を確保できる。
【0010】
また請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2において、橋状の補強部8を二股状に形成すると共に、その間隔を下部金属マスク9の板厚D以上としたことを特徴とするのが好ましく、この場合、橋状の補強部8を二股に分けることで橋状の補強部8の強度を上げることができると共に、薄膜パターンのつながり性を確保できる。
【0011】
また請求項4記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、橋状の補強部8の断面形状が基板1側に向かって先細状となるように、橋状の補強部8の側面8aを傾斜させることを特徴とするのが好ましく、この場合、蒸着源50からの蒸着粒子が橋状の補強部8の傾斜した側面8aを回り込んで基板1側に蒸着され易くなる。
【0012】
また請求項5記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、橋状の補強部8の断面形状を、蒸着源50側に膨らんだアーチ状としたことを特徴とするのが好ましく、この場合、蒸着源50からの蒸着粒子が橋状の補強部8を一層回り込み易くすることができる。
【0013】
また請求項6記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかにおいて、橋状の補強部8の上に被せられる上部金属マスク10の配線部用パターン形成部11の大きさを、橋状の補強部8の端部8bから少なくとも上部金属マスク10の板厚d以上の広がりを持つ大きさにしたことを特徴とするのが好ましく、この場合、上部金属マスク10の配線部用パターン形成部11が下部金属マスク9の補強部8の上方から位置ずれしないように配置でき、上下2枚の金属マスク9,10の位置関係に精度を持たせることができるようになる。
【0014】
また請求項7記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかにおいて、橋状の補強部8を含む下部金属マスク9全体を、下部金属マスク9の板厚Dの1/2以下の太さでメッシュ状に織られた支持体13にて支持したことを特徴とするのが好ましく、この場合、メッシュ状の支持体13を用いて細い橋状の補強部8を含む下部金属マスク9全体を支持することによって、パターン幅を微細化するために金属マスク9,10の板厚を薄くした場合でも、橋状の補強部8の部位の強度を上げることができると共に、物理蒸着に支障をきたさないようにしながら、金属マスク9,10による薄膜形成が行えるようになる。
【0015】
また請求項8記載の発明は、請求項1において、基板1上の1つの回路ユニット2に対して2箇所以上の隣接する回路ユニット2からの配線を行うことを特徴とするのが好ましく、この場合、閉回路もしくは略閉回路のパターンを形成するにあたって、配線部4のつながり信頼性を向上させることができる。
【0016】
また請求項9記載の発明は、請求項1において、基板1の表裏両面の下部金属マスク9を基板1に対して各々位置決めし且つ上部金属マスク10を位置決めするための位置決めガイド14を備えたマスク固定治具15を設けたことを特徴とするのが好ましく、この場合、基板1の表裏両面の金属マスク9,10がマスク固定治具15により基板1に対して各々位置決めされるようになり、金属マスク9,10の位置合わせ精度が良くなる。
【0017】
また請求項10記載の発明は、基板1の表裏両面に、電極部3のパターン形成部5と配線部4のパターン形成部6とを有し且つ配線部4のパターン形成部6の一部に非パターン部7間に接続される橋状の補強部8が設けられた下部金属マスク9を挟み込み、下部金属マスク9の非パターン部7を基板1に密着させた状態で基板1上に電極部3と配線部4とを薄膜形成する工程と、基板1の表裏両面に下部金属マスク9を挟み込むと共に一方の下部金属マスク9上に、少なくとも下部金属マスク9の橋状の補強部8上に対向する配線部用パターン形成部11を有し且つ電極部3が非パターン部12となっている上部金属マスク10を配置して基板1上に配線部4を薄膜形成する工程とを備えていることを特徴としており、このように構成することで、下部金属マスク9に設けられる橋状の補強部8の上方に、上部金属マスク10の配線部用パターン形成部11を配置することで、薄膜パターンのつながり性が良くなり、閉回路もしくは略閉回路状のパターンを容易に形成できるようになる。そのうえ、上部金属マスク10の脱着が容易で且つ位置ずれもしにくなり、薄膜パターンの精度向上を図ることができる。
【0018】
また請求項11記載の発明は、請求項1において、上部金属マスク10及び下部金属マスク9を各々磁性体とし、非蒸着面16側に配置した磁石17により基板1と各金属マスク9,10とを吸着保持することを特徴とするのが好ましく、この場合、上部金属マスク10と下部金属マスク9とを重ねて基板1上にセットする作業を、磁石17を利用して簡易且つ精度良く行うことができると共に、基板1に対する金属マスク9,10の位置ずれも防止できる。
【0019】
また請求項12記載の発明は、請求項11において、剛性の高い非磁性体からなるプレート18を非蒸着面16側の下部金属マスク9と磁石17との間に配置し、蒸着面側の上部金属マスク10の脱着時においてプレート18を仮固定して磁石17を上部金属マスク10から離反する方向に移動させるためのプレート押さえ用治具80を設けたことを特徴とするのが好ましく、この場合、プレート18が磁石17に引き付けられないように、プレート押さえ用治具80によってプレート18を保持したまま、上部金属マスク10の取り付け或いは取り外しができ、しかも上部金属マスク10を取り付ける際には位置ずれなく取り付け可能となる。また磁石17が移動することによって、上部金属マスク10が磁石17に引き付けられて撓むことがないため、基板1の破損を引き起こすこともなくなる。
【0020】
また請求項13記載の発明は、請求項11において、上部金属マスク10の脱着時において磁石17を上部金属マスク10から一時的に遠ざけるための手段を設けたことを特徴とするのが好ましく、この場合、上部金属マスク10の脱着時に上部金属マスク10を磁石17から一時的に切り離すことができ、上部金属マスク10が磁石17に引き付けられなくなり、上部金属マスク10の取り付け或いは取り外しが容易に行えると共に、取り付けの際には上部金属マスク10を位置ずれなく取り付け可能となり、基板1の破損を引き起こすこともなくなる。
【0021】
また請求項14記載の発明は、請求項1において、蒸着源50に対して基板1の表裏方向が入れ替わるように基板1を回転させるための回転軸20を設け、基板1を回転させながら薄膜形成を行うことを特徴とするのが好ましく、この場合、基板1の表裏両面とも薄膜形成を行いながら、同時に配線部4の橋状の補強部8の下方における薄膜パターンのつながり性を良くすることができる。
【0022】
また請求項15記載の発明は、請求項1において、薄膜形成用の蒸着粒子の平均自由行程が金属マスク9,10のパターン形成部5,6の開口幅より小さい雰囲気ガス中にて薄膜形成を行うことを特徴とするのが好ましく、この場合、蒸着粒子が金属マスク9,10のパターン形成部5,6を通過して基板1上に届きやすくなり、膜厚の均一性が向上すると共に、蒸着粒子を橋状の補強部8の下方の橋状部位にも十分に届かせることができ、薄膜パターンのつながり性が良くなる。
【0023】
また請求項16記載の発明は、請求項1において、焦電効果のある基板1のの表裏両面に赤外線センサ2aの電極部3と配線部4とを薄膜形成することを特徴とするのが好ましく、この場合、赤外線の取り込み量が増える結果、検出性能が良くなる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0025】
図1(a)(b)は製造途中の断面図を示し、図2(a)は下部金属マスク9の配線部4のパターン形成部6付近の斜視図を示し、図2(b)は赤外線センサ2aの電極部3と配線部4の斜視図を示している。
【0026】
1枚の基板1上には、多数個の回路ユニット2(図10)が配置され、各回路ユニット2は配線部4を介してすべて連結されており、閉回路もしくは略閉回路パターンとなっている。赤外線センサ2a(図18)などの電極部3と配線部4とを基板1の表裏両面に薄膜形成形成するにあたって、予め基板1の表裏両面に下部金属マスク9をそれぞれ挟み込むと共に、一方の下部金属マスク9の上に上部金属マスク10を配置するようにしている。
【0027】
ここで、下部金属マスク9は、図1に示すように、電極部3のパターン形成部5と配線部4のパターン形成部6とを有し且つ配線部4のパターン形成部6の一部に非パターン部7間に接続される橋状の補強部8が設けられている。この下部金属マスク9の作製方法として、金属マスク9,10のエッチングによる方法がある。このとき橋状の補強部8の部位は、金属マスク9,10の両面に貼るレジストパターンを片側のみ開口させてエッチングを行う。なおこれは一例であり、他の方法で形成されてもよいものである。
【0028】
上部金属マスク10には、少なくとも下部金属マスク9の橋状の補強部8上に対向する配線部用パターン形成部11が開口しており、上記電極部3に対応する部位は非パターン部7となっている。ここで下部金属マスク9の橋状の補強部8の下側に形成される薄膜は、他の回路部分(補強部位以外の配線部4)の薄膜とは異なるため、上部金属マスク10の補強部8との対向位置に配線部用パターン形成部11を開口しており、これによって、橋状の補強部8の下側における薄膜パターンのつながり性(物理蒸着膜のつながり)を確保できるようにしている。なお、上部金属マスク10の配線部用パターン形成部11は最低限、橋状の補強部8の上方に設けられる必要があるが、橋状の補強部8以外の配線部4全体に亘って設けられてもよいものである。ここで、基板1上に形成される回路ユニット2が赤外線センサ2a(図18)の場合、電極部3は例えば、300Å以下の極薄膜、配線部4は例えば300Å以上とされる。この配線部4は隣接する回路ユニット2の配線パターンとの接続用を兼ねている。
【0029】
しかして、基板1の表裏両面に下部金属マスク9と上部金属マスク10とを相対的に位置決めし、物理蒸着によって基板1上にセンサユニットの電極部3と配線部4とを各々形成する。このとき最初に図1(b)に示すように、下部金属マスク9の非パターン部7を基板1に密着させて、物理蒸着により電極部3と配線部4とを薄膜形成する工程を行い、次に図1(a)に示すように、下部金属マスク9を基板1上に残したままで、基板1の表裏両面のいずれか一方の下部金属マスク9上に上部金属マスク10を重ねて、物理蒸着により配線部4を薄膜形成する工程を行う。これにより、基板1への金属マスク9,10の一度のセッティングで、電極部3と配線部4とを異なるパターンで形成できるようになる。つまり、金属マスク9,10を基板1の表裏両面から精度良く挟み込むことができるため、従来のように一度形成されたパターンに別のパターンを精度良くセットするという困難な作業を省略でき、またセッティングのための煩雑な機構を別途用意する必要もなくなる。
【0030】
なお、図1(a)に示す工程と図1(b)に示す工程の順序はどちらを先にしてもよいが、いずれの場合においても、2種類の金属マスク9,10を基板1の表裏両面に1度セットするだけで、基板1の表裏両面に電極部3と配線部4とを異なるパターンで形成できる。
【0031】
また、上記のように金属マスク9,10を一度セットするだけでよく、また一度セットした金属マスク9,10を交換する必要がないため、回路(特に配線部4)の微細化を実現できると共に、金属マスク9,10の非パターン部7(非開口部)を基板1に密着させているため、回路に必要な部位が基板1に密着することとなり、全ての回路の輪郭において蒸着粒子が入り込むおそれがなく、任意のパターン幅(特に微細な幅である程)の回路を形成することが容易となる。この結果、例えばコンデンサなどの各回路ユニット2の配置面積の省スペース化、配線部4の接続パターンの変更に容易に対応できるものとなる。
【0032】
さらに、下部金属マスク9に橋状の補強部8を設けることで、閉回路もしくは略閉回路状のパターンが形成可能となる。ここで、下部金属マスク9のみによる薄膜形成では、橋状の補強部8の下でのパターンのつながりが不十分となるが、上部金属マスク10の配線部用パターン形成部11を橋状の補強部8の上方に配置して、ここからも物理蒸着を行うことで、パターンのつながりが十分となり、従って、パターン形成部を用いて電気的処理を必要とする場合(電気メッキや、分極処理など)において、導電体パターンとしての役目を十分に果すことができるようになる。
【0033】
この結果、金属マスク9,10を用いる簡易なパターニング方法で、基板1の表裏両面に多数個の回路ユニット2が連結されたパターンを接続信頼性のある方法で、且つ、基板1上の電極部位と配線部位とでそれぞれ異なるパターニングを、一度セットした金属マスク9,10を交換することなく、物理蒸着にて容易に実現できるものである。
【0034】
ところで、図2(b)において、橋状の補強部8が、各回路ユニット2の配線部4の接続部位における1ユニットとして切り出される切り代部60に配置されているのが望ましい。本例では、センサユニットとしての赤外線センサ2a(図18)は、基板1の表裏両面の電極部3と配線部4とからなり、この配線部4と隣り合う回路ユニット2の配線部4との間が切り代部60となっている。また各回路ユニット2の切り離しは、例えば、ダイシング・カッター、レーザ、サンドブラスト、劈開などの方法が挙げられる。しかして、下部金属マスク9の橋状の補強部8において物理蒸着による膜形成を行う場合、補強部8の下方の膜の厚み、質は他の配線部位と異なる可能性が大きいため、1つの回路ユニット2の中にそのような箇所を設けることが望ましくない場合がある。これを回避するため、本例では、隣り合う回路ユニット2間の配線部4を切り代部60としている。これにより、橋状の補強部8が回路ユニット2内に位置しなくなり、回路ユニット2内の配線信頼性を確保できるようになる。
【0035】
図3は、橋状の補強部8を二股状に形成すると共に、その間隔Eを下部金属マスク9の板厚D以上とした場合を示している。図3(a)中のCはパターン幅である。橋状の補強部8が長細くなると強度上の問題が生じるため、本例では橋状の補強部8を二股に分けるようにしている。これにより、橋状の補強部8の強度を上げることができる。さらに、「橋状の補強部8の間隔E>下部金属マスク9の板厚D」とすることにより、橋状の補強部8間の間隔Eが広がって、薄膜パターンのつながり性を確保できるようになる。
【0036】
図4は、橋状の補強部8の断面形状が基板1側に向かって先細状となるように、橋状の補強部8の両側面8aを傾斜させた場合を示している。なお図4(a)中のHは補強部8の高さ、Dは下部金属マスク9の板厚、Cはパターン幅である。本例の下部金属マスク9の作製方法の一例を図5に示す。フォトレジスト21を金属マスク9,10の両面に配置してエッチングする。このとき橋状の補強部8の箇所には、金属マスク9,10の片面をレジスト部21aで被い、もう片面はフォトレジスト21に開口部21cを形成し、この開口部21cが形成されている片側からのみエッチングを行う。その際、橋状の補強部8となる橋状部位の断面の中心部のみわずかにレジスト部21bを残した状態でエッチングすることで、エッチング速度が橋状部位の断面の中央と端で異なるようにすることができ、最終的に図4(b)に示す断面形状の金属マスク(下部金属マスク9)を得ることができる。なお、エッチングの際において、橋状の補強部8形成のためフォトレジスト21に開口部21cを有する側からのエッチング液の圧力を高くしてもよいものである。しかして、橋状の補強部8の断面形状を基板1側に向かって先細状としたことで、蒸着源からの蒸着粒子が橋状の補強部8の傾斜した側面8aを回り込んで基板1側に蒸着され易くなり、これにより、薄膜パターンのつながり性を良くすることができる。
【0037】
図6は橋状の補強部8の断面形状を、蒸着源側(図6(b)の上方側)に膨らんだアーチ状とした場合の一例を示している。図6(a)中のEは補強部8の幅、Hは補強部8の高さ、Dは下部金属マスク9の板厚、Cはパターン幅である。本例では、下部金属マスク9を作製した後に、橋状の補強部8をプレス等で、基板1と反対側に向かって凸となる形状に加工する。これにより、蒸着源からの蒸着粒子が橋状の補強部8を一層回り込み易くなり、基板1上に薄膜形成される薄膜パターンのつながり性を良くすることができる。
【0038】
図7、図8は、下部金属マスク9の橋状の補強部8の上に被せられる上部金属マスク10の配線部用パターン形成部11の大きさを、橋状の補強部8の端部8bから少なくとも上部金属マスク10の板厚d以上の広がりを持つ大きさにした場合の一例を示している。なお図8中のJは上部金属マスク10の配線部用パターン形成部11の幅、Gは橋状の補強部8の端部8bから配線部用パターン形成部11に至る横方向の距離であり、このGは上部金属マスク10の板厚d以上とされている。しかして、下部金属マスク9の上に上部金属マスク10をセットする。このとき下部金属マスク9の橋状の補強部8の端部8bから上部金属マスク10の配線部用パターン形成部11までの距離Gが、上部金属マスク10の板厚dよりも大きくなっているため、上部金属マスク10の配線部用パターン形成部11が下部金属マスク9の補強部8の上方から位置ずれしないように配置でき、これにより2枚の金属マスク9,10の位置関係に精度を持たせることができると共に、蒸着源50からの蒸着粒子が橋状の補強部8周辺に十分に行き渡るようになり、基板1上に形成される薄膜パターンのつながり性を良くすることができる。
【0039】
図9は、下部金属マスク9全体を、下部金属マスク9の板厚D(図4)の1/2以下の太さでメッシュ状に織られた支持体13にて支持した場合を示している。メッシュ状の支持体13は下部金属マスク9と一体形成されている場合と、別体で形成されている場合のいずれであってもよい。前者の場合の作製方法としては、例えば、メッシュに電鋳やメッキなどにより下部金属マスク9のパターン形成部を析出させる方法、或いはレーザなどによりスポット状に溶接する方法などがある。しかして、メッシュ状の支持体13を用いて細い橋状の補強部8を含む下部金属マスク9全体を支持することによって、橋状の補強部8の部位の強度を上げることができる。従って、パターン幅を微細化するために、下部金属マスク9の板厚を薄くした場合でも、下部金属マスク9の強度的な問題は生じなくなる。さらに、下部金属マスク9と支持体13とを一体形成した場合は、基板1へのセッティングが容易となる。しかも、支持体13をメッシュ状としたことにより、蒸着源50からの蒸着粒子が支持体13を通過して基板1上に到達できるようになり、従って、物理蒸着に支障をきたさないようにしながら、薄膜形成を行えるようになる。
【0040】
図10は、基板1上の1つの回路ユニット2に対して2箇所以上の隣接する回路ユニット2からの配線を行う場合の一例を示している。図10(a)は、複数個の回路ユニットからなるユニット例を3列配置し、ユニット列内部の配線部4’と、ユニット列端部間の配線部4”とを閉回路状に連続させた場合の一例を示し、図10(b)は、ユニット列内部の配線部4’と、ユニット列端部間の配線部4”とを閉回路状に連続させ、さらに配線部4cにて配線部4’間を接続した場合の一例を示している。いずれの場合も、閉回路パターンを形成するにあたって、配線部4(4’,4”)のつながり信頼性を向上させることができると共に、配線部4のパターン形成後の電気的処理(分極など)が確実に行えるようになる。
【0041】
図11は、基板1の表裏両面の下部金属マスク9を位置決めすると共に、上部金属マスク10を位置決めする位置決めガイド14を備えたマスク固定治具15を設けた場合を示している。本例のマスク固定治具15は、基板1の外周部に外嵌されるリング形状の下側治具15aと、リング形状の上側治具15bとに分かれている。下側治具15aの両側2箇所には、基板1に対して垂直方向に位置決めガイド14が各々突設されており、各位置決めガイド14が基板1の表裏両面に配置される各下部金属マスク9(一方の下部金属マスクは図示せず)の外周部の両側2箇所に設けたガイド孔22と、上部金属マスク10の外周部の両側2箇所に設けたガイド孔23とを各々貫通して、上側治具の両側2箇所に設けたガイド溝24に各々嵌合している。これにより、基板1の表裏両面の金属マスク9,10が、マスク固定治具15により基板1に対して各々位置決めされるようになり、金属マスク9,10の位置合わせ精度が良くなる。また金属マスク9,10のセッティング作業がはかどると共に、薄膜パターンの精度向上を図ることができる。
【0042】
図12は、最初に、基板1の表裏両面に下部金属マスク9を挟み込むと共に一方の下部金属マスク9上に上部金属マスク10を配置して基板1上に配線部4を薄膜形成する工程を行い、その後、上部金属マスク10のみを取り外して、基板1上に電極部3と配線部4とを薄膜形成する工程を行う場合を示している。本例では、下部金属マスク9と上部金属マスク10とを基板1にセッティングして薄膜パターンを形成した後に、上部金属マスク10を取り外すという図12(a)→図12(b)の工程手順を踏むため、上部金属マスク10の脱着が容易で、位置ずれもしにくなり、薄膜パターンの精度向上を図ることができる。
【0043】
図13は、上部金属マスク10及び下部金属マスク9を各々磁性体とし、非蒸着面16側から磁石17により基板1と各金属マスク9,10とを吸着保持する場合を示している。本例では、マスク固定治具15にて上下の金属マスク9,10を基板1に対して位置決めしている。マスク固定治具15の構造は図11の実施形態と同様である。また金属マスク9,10を形成する磁性体材料として、例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼が使用される。磁石17は、永久磁石、電磁石のいずれでもよい。このことは以下の実施形態においても同様である。しかして、上部金属マスク10と下部金属マスク9とを重ねて基板1上にセットする作業を、磁石17を利用して簡易且つ精度良く行うことができると共に、基板1に対する金属マスク9,10の密着性に優れたものとなる。さらに磁石17によって金属マスク9,10に対して基板1が位置ずれしないため、薄膜パターンの精度が向上する。なお、磁石17は金属マスク9,10の非蒸着面16側に配置されるため、物理蒸着の妨げとはならないものである。なお磁石17は1つではなく、金属マスク9,10を同一面内で均等に保持できるようにするために、極性を互い違いに配置した複数の磁石で構成してもよいものである。
【0044】
図14は、剛性の高い非磁性体からなるプレート18を非蒸着面16側の下部金属マスク9と磁石17との間に配置し、蒸着面側の上部金属マスク10の脱着時においてプレート押さえ用治具80によりプレート18を仮固定して磁石17を上部金属マスク10から離反する方向イに移動させる場合を示している。本例では、マスク固定治具15にて上下の金属マスク9,10を基板1に対して位置決めしている。マスク固定治具15の構造は図11の実施形態と同様である。プレート押さえ用治具80は、磁石17を嵌め込む開口部30と、開口部の縁部から突設して先端がプレート18に当接するガイド部31とを備えている。しかして、前記図13の実施形態と同様、磁石17によって上部金属マスク10と下部金属マスク9とを吸着保持できるという効果が得られ、さらに加えて上部金属マスク10の取り付け或いは取り外しをする際に、非磁鋼製のプレート18を非蒸着面16側の下部金属マスク9と磁石17との間に配置し、プレート押さえ用治具80の開口部30を磁石17の外周に嵌め込み、ガイド部31をプレート18の下面に当接させて、磁石17をプレート18から図14の矢印イ方向に浮かせるようにする。これにより、非磁鋼製のプレート18が磁石17に引き付けられないようにプレート押さえ用治具80によってプレート18を保持したまま、上部金属マスク10の取り付け或いは取り外しが容易に行えるようになると共に、取り付けの際には上部金属マスク10を位置ずれなく取り付け可能となる。しかも磁石17の切り離し時に、上部金属マスク10が磁石17に引き付けられて撓むことがないため、基板1の破損を引き起こすことがなくないものである。
【0045】
図15は上部金属マスク10の脱着時において磁石17を上部金属マスク10から一時的に遠ざけるためのホルダー押さえ用治具38を設けた場合の例を示している。なお、マスク固定治具15にて上下の金属マスク9,10を基板1に対して位置決めしている点は図11の実施形態と同様である。本例では、金属マスク9,10を吸着保持するための磁石17の下面には磁石ホルダー35が固着されており、磁石ホルダー35の両端部が引っ張りコイルバネ36によってホルダーケース37の天井面に連結されている。磁石ホルダー35の端部は基板1の端部よりも外側方に突出し、その突出した部分を上方から棒状のホルダー押さえ用治具38にて押圧することで、磁石ホルダー35を下方にスライドさせるようにしている(図1(b)の状態)。これにより磁石ホルダー35と一体の磁石17が非蒸着面16側の下部金属マスク9から一時的に切り離されるようになる。このように、上部金属マスク10を磁石17から一時的に切り離すことで、上部金属マスク10が磁石17に引き付けられなくなり、上部金属マスク10の取り付け或いは取り外しが容易にできるようになる。また上部金属マスク10を取り付ける際には位置ずれなく取り付け可能となる。しかも磁石17を矢印イ方向に切り離す時に、上部金属マスク10が磁石17に引き付けられて撓むことがないため、基板1の破損を引き起こすこともなくなる。また、上部金属マスク10の脱着後に、ホルダー押さえ用治具38による押さえを解除すると、磁石ホルダー35は引っ張りコイルバネ36のバネ力によって元の位置に復帰できるので(図15(a)の状態)、磁石17によって金属マスク9,10を吸着保持できる状態に自動的に戻すことができる。
【0046】
図16は、蒸着源50に対して基板1の表裏方向が入れ替わるように基板1を回転させるための回転軸20を設け、基板1を回転させながら薄膜形成を行う場合を示している。本例では、真空槽40の内部に、上下の金属マスク9,10が設けられた回転可能な基板1と蒸着源50とを収納し、基板1を蒸着源50に対して表裏両面が入れ替わるように回転軸20回りに回転させながら、真空蒸着法により基板1の表裏両面に同時に薄膜形成を行うものである。なお、基板1の回転方向は同じでもよいが、膜厚の均一性を向上させためには、物理蒸着時間の半ばで反対方向に回転させるのが望ましい。また本例では、基板1の表裏両面に配置されている下部金属マスク9の橋状の補強部8が回転することにより、蒸着源50からの蒸着粒子を橋状の補強部8の下方における基板1上の橋状部位にも十分に届かせることができるため、薄膜パターンのつながり性が良くなる。つまり、基板1の表裏両面とも薄膜形成を行いながら、同時に配線部4における橋状部位のつながり性を良くすることができるようになる。しかも、基板1の回転によって多方向から蒸着粒子が吹きつけられる形となり、これにより特に微細なパターンを均一に且つ精度良く形成できるという利点もある。
【0047】
図17は、薄膜形成用の蒸着粒子ロの平均自由行程が金属マスク(図示せず)のパターン形成部の開口幅ハより小さい雰囲気ガス中にて薄膜形成を行う場合を示している。本例では、真空槽40の圧力を例えば102〜10-2(Pa)とし、その内部に表裏両面に金属マスクが取り付けられた基板1と、蒸着源50とを収納し、真空蒸着法により基板1上に薄膜形成を行うものである。この場合において、真空槽40内部の雰囲気ガスとして、不活性ガス(N2,Arなど)を導入して圧力を高くしてもよい。しかして、蒸着粒子ロの平均自由行程が金属マスクのパターン形成部の開口幅ハより小さい雰囲気ガス中にて薄膜形成を行うことで、蒸着粒子ロが金属マスクのパターン形成部を通過して基板1上に届きやすくなり、真空蒸着による薄膜形成が可能となる。またこのとき、蒸着源50からの蒸着粒子ロを橋状の補強部8(図1)の下方の橋状部位にも十分に届かせることができるため、薄膜パターンのつながり性が良くなる。さらに、蒸着源50の位置に関係なく、基板1をセッティングできるため、セッティング作業がはかどるという利点もある。なお、真空蒸着法に代えて、スパッタ法などのプラズマを用いて薄膜形成してもよく、この場合、槽内部にプラズマを維持させるのに必要なスパッタ用ガスを導入する方法であってもよい。
【0048】
図18は、焦電効果のある基板1の表裏両面に赤外線センサ2aの電極部3と配線部4とを薄膜形成する場合を示している。本例では、焦電効果のある基板1として、LiTaO3,PZTなどの焦電材料を用いる。また配線部4の材料と電極部3の材料とを異種にしている。電極部3はNiCr,Ni、金黒、硫化銀などで形成し、配線部4をNiCr,Ni、Au,Pt,Alなどで形成する。さらに、配線部4と電極部3の2つの膜形成工程において、その膜厚を異ならせている。ここでは、図18に示す上側の電極部3の膜を配線部4より薄い膜とすることで、赤外線の反射率を低下させると共に、下側の電極部3を厚くして赤外線の反射率を高めている。これにより赤外線が上側の電極部3から吸収され、下側の電極部3で反射されることで、赤外線の取り込み量が増える結果、検出性能が良くなり、小型で感度のよい赤外線センサ2aを製造することができる。
【0049】
【発明の効果】
上述のように請求項1記載の発明にあっては、基板の表裏両面に、電極部のパターン形成部と配線部のパターン形成部とを有し且つ配線部のパターン形成部の一部に非パターン部間に接続される橋状の補強部が設けられた下部金属マスクを挟み込み、下部金属マスクの非パターン部を基板に密着させた状態で基板上に電極部と配線部とを薄膜形成する工程と、基板の表裏両面に下部金属マスクを配置した状態で一方の下部金属マスク上に、少なくとも下部金属マスクの橋状の補強部上に対向する配線部のパターン形成部を有し且つ電極部が非パターン部となっている上部金属マスクを配置して、配線部を薄膜形成する工程とを備えているので、上記2段階の工程で、下部金属マスクと上部金属マスクとを基板に一度セットするだけで、基板の表裏両面に電極部と配線部とを異なるパターニングで形成することができる。しかも、金属マスクを一度セットするだけでよく、そのうえ一度セットした金属マスクを交換する必要がないため、薄膜パターン精度が向上し、回路(特に配線部)の微細化を実現できると共に、下部金属マスクに設けられる橋状の補強部の上方に、上部金属マスクのパターン形成部を配置したことにより、薄膜パターンのつながり性が良くなり、閉回路もしくは略閉回路状のパターンの形成が容易となる。この結果、金属マスクを用いる簡易なパターニング方法でありながら、基板の表裏両面に多数個の回路ユニットが連結された閉回路もしくは略閉回路のパターンを接続信頼性のある方法で、且つ、回路基板上の電極部位と配線部位とでそれぞれ異なるパターニングを、一度セットした金属マスクを交換することなく、物理蒸着にて簡単に且つ精度良く形成できるものである。
【0050】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の効果に加えて、橋状の補強部を、各回路ユニットの配線部の接続部位における1ユニットとして切り出される切り代部に配置したので、下部金属マスクの橋状の補強部において物理蒸着による膜の厚み、質が異なる場合でも、この箇所を回路ユニットの切り代部とすることで、回路ユニットの配線信頼性を確保できるものである。
【0051】
また請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の効果に加えて、橋状の補強部を二股状に形成すると共に、その間隔を下部金属マスクの板厚以上としたので、橋状の補強部を二股に分けることで橋状の補強部の強度を上げることができると共に、橋状の補強部の間隔>下部金属マスクの板厚とすることで、橋状の補強部間の間隔が広がって、薄膜パターンのつながり性を確保できるようになる。
【0052】
また請求項4記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の効果に加えて、橋状の補強部の断面形状が基板側に向かって先細状となるように、橋状の補強部の側面を傾斜させたので、蒸着源からの蒸着粒子が橋状の補強部の傾斜した側面を回り込んで基板側に蒸着され易くなり、薄膜パターンのつながり性を良くすることができる。
【0053】
また請求項5記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の効果に加えて、橋状の補強部の断面形状を、蒸着源側に膨らんだアーチ状としたので、蒸着源からの蒸着粒子が橋状の補強部を一層回り込み易くなり、基板上に形成される薄膜パターンのつながり性を良くすることができる。
【0054】
また請求項6記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の効果に加えて、橋状の補強部の上に被せられる上部金属マスクの配線部用パターン形成部の大きさを、橋状の補強部の端部から少なくとも上部金属マスクの板厚以上の広がりを持つ大きさにしたので、配線部用パターン形成部が下部金属マスクの補強部の上方から位置ずれしないように配置でき、これにより上下2枚の金属マスクの位置関係に精度を持たせることができると共に、蒸着源からの蒸着粒子が橋状の補強部周辺に十分に行き渡るようになり、基板上に形成される薄膜パターンのつながり性を良くすることができる。
【0055】
また請求項7記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の効果に加えて、橋状の補強部を含む下部金属マスク全体を、下部金属マスクの板厚の1/2以下の太さでメッシュ状に織られた支持体にて支持したので、メッシュ状の支持体を用いて細い橋状の補強部を含む下部金属マスク全体を支持することによって、パターン幅を微細化するために金属マスクの板厚を薄くした場合でも、橋状の補強部の部位の強度を上げることができると共に、支持体をメッシュ状としたことで、蒸着粒子が支持体を通過して基板上に到達できるようになり、従って、物理蒸着に支障をきたさないようにしながら、金属マスクによる薄膜パターンが形成できるものである。
【0056】
また請求項8記載の発明は、請求項1記載の効果に加えて、基板上の1つの回路ユニットに対して2箇所以上の隣接する回路ユニットからの配線を行うので、閉回路もしくは略閉回路のパターンを形成するにあたって、配線部のつながり信頼性を向上させることができ、そのうえ配線部のパターン形成後の電気的処理(分極など)が確実に行えるようになる。
【0057】
また請求項9記載の発明は、請求項1記載の効果に加えて、基板の表裏両面の下部金属マスクを基板に対して各々位置決めし且つ上部金属マスクを位置決めするための位置決めガイドを備えたマスク固定治具を設けたので、基板の表裏両面の金属マスクがマスク固定治具により基板に対して各々位置決めされるようになり、上下の金属マスクの位置合わせ精度が良くなり、金属マスクのセッティング作業がはかどると共に、薄膜パターンの精度向上を図ることができる。
【0058】
また請求項10記載の発明は、基板の表裏両面に、電極部のパターン形成部と配線部のパターン形成部とを有し且つ配線部のパターン形成部の一部に非パターン部間に接続される橋状の補強部が設けられた下部金属マスクを挟み込み、下部金属マスクの非パターン部を基板に密着させた状態で基板上に電極部と配線部とを薄膜形成する工程と、基板の表裏両面に下部金属マスクを挟み込むと共に一方の下部金属マスク上に、少なくとも下部金属マスクの橋状の補強部上に対向する配線部のパターン形成部を有し且つ電極部が非パターン部となっている上部金属マスクを配置して基板上に配線部を薄膜形成し、その後、上部金属マスクのみを取り外して、基板上に電極部と配線部とを薄膜形成する工程とを備えているので、下部金属マスクと上部金属マスクとを基板にセッティングして薄膜形成を行った後に、上部金属マスクのみを取り外して、下部金属マスクによる薄膜形成を行うことにより、上部金属マスクの脱着が容易で且つ位置ずれもしにくなる。
【0059】
また請求項11記載の発明は、請求項1記載の効果に加えて、上部金属マスク及び下部金属マスクを各々磁性体とし、非蒸着面側に配置した磁石により基板と各金属マスクとを吸着保持するので、上部金属マスクと下部金属マスクとを重ねて基板上にセットする作業を、磁石を利用して簡易且つ精度良く行うことができると共に、基板に対する金属マスクの密着性が良好となる。また、磁石の吸引力で金属マスクに対して基板が位置ずれしないため、薄膜パターンの精度を一層向上させることができる。
【0060】
また請求項12記載の発明は、請求項11記載の効果に加えて、剛性の高い非磁性体からなるプレートを非蒸着面側の下部金属マスクと磁石との間に配置し、プレートを仮固定して磁石を上部金属マスクから離反する方向に移動させるためのプレート押さえ用治具を設けたので、上部金属マスクの取り付け或いは取り外しをする際に、プレート押さえ用治具にてプレートを仮固定して、磁石をプレートから切り離して上部金属マスクから離反する方向に移動させることで、プレートが磁石に引き付けられないように、プレート押さえ用治具によってプレートを保持したまま、上部金属マスクの取り付け或いは取り外しができるようになる。従って、上部金属マスクを取り付ける際には位置ずれなく取り付け可能となる。また磁石が移動することによって、上部金属マスクが磁石に引き付けられて撓むことがないため、基板の破損を引き起こすこともなくなり、基板を充分に保護できるようになる。
【0061】
また請求項13記載の発明は、請求項11記載の効果に加えて、上部金属マスクの脱着時において磁石を上部金属マスクから一時的に遠ざけるための手段を設けたので、上部金属マスクの脱着時に上部金属マスクを磁石から一時的に切り離すことにより、上部金属マスクが磁石に引き付けられなくなり、上部金属マスクの取り付け或いは取り外しが容易に行えると共に、取り付けの際には上部金属マスクを位置ずれなく取り付け可能となる。しかも磁石の移動の際に、上部金属マスクが磁石に引き付けられて撓むことがないため、基板の破損を引き起こすこともなくなる。
【0062】
また請求項14記載の発明は、請求項1記載の効果に加えて、蒸着源に対して基板の表裏方向が入れ替わるように基板を回転させるための回転軸を設け、基板を回転させながら薄膜形成を行うので、基板の表裏両面とも薄膜形成を行いながら、同時に配線部の橋状の補強部の下方における薄膜パターンのつながり性を良くすることができる。しかも、基板の回転によって多方向から蒸着粒子が吹きつけられる形となり、これにより膜厚の均一性が向上し、微細なパターンを均一に且つ精度良く形成することが可能となる。
【0063】
また請求項15記載の発明は、請求項1記載の効果に加えて、薄膜形成用の蒸着粒子の平均自由行程が金属マスクのパターン形成部の開口幅より小さい雰囲気ガス中にて薄膜形成を行うので、蒸着粒子が金属マスクのパターン形成部を通過して基板上に届きやすくなり、膜厚の均一性が向上する。さらに蒸着粒子を橋状の補強部の下方の橋状部位にも十分に届かせることができるため、薄膜パターンのつながり性が良くなる。しかも、蒸着源の位置に関係なく、基板をセッティングできるため、セッティング作業がはかどるという利点もある。
【0064】
また請求項16記載の発明は、請求項1記載の効果に加えて、焦電効果のある基板の表裏両面に赤外線センサの電極部と配線部とを薄膜形成するので、赤外線の取り込み量が増える結果、検出性能が良くなり、小型で感度のよい赤外線センサを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の一例を示し、(a)は上部金属マスクと下部金属マスクとをセッティングした場合の断面図、(b)は上部金属マスクを取り外した場合の断面図である。
【図2】(a)は同上の下部金属マスクの斜視図、(b)は電極部と配線部とが薄膜形成されている回路基板の斜視図である。
【図3】(a)は他の実施形態を示す斜視図、(b)は補強部位の説明図である。
【図4】更に他の実施形態を示し、(a)は橋状の補強部付近の斜視図、(b)は(a)のA―A’線断面図である。
【図5】(a)〜(c)は同上の下部金属マスクの形成方法の説明図である。
【図6】更に他の実施形態を示し、(a)は橋状の補強部付近の斜視図、(b)は(a)のB―B’線断面図である。
【図7】更に他の実施形態を示す平面図である。
【図8】(a)は同上の上部金属マスクの斜視図、(b)は下部金属マスクの斜視図である。
【図9】更に他の実施形態を示す斜視図である。
【図10】(a)(b)は更に他の実施形態を示すパターン例の説明図である。
【図11】更に他の実施形態を示す分解斜視図である。
【図12】(a)(b)は更に他の実施形態を示す工程説明図である。
【図13】更に他の実施形態を示す断面図である。
【図14】更に他の実施形態を示し、(a)は磁石による金属マスクの吸着保持状態の説明図、(b)はプレート押さえ用治具にて磁石を浮かせる場合の説明図である。
【図15】更に他の実施形態を示し、(a)(b)は磁石を移動させる場合の説明図である。
【図16】更に他の実施形態の説明図である。
【図17】更に他の実施形態の説明図である。
【図18】更に他の実施形態の説明図である。
【図19】従来例の説明図である。
【符号の説明】
1 基板
2 回路ユニット
2a 赤外線センサ
3 電極部
4 配線部
5 電極部のパターン形成部
6 配線部のパターン形成部
7 非パターン部
8 橋状の補強部
8a 側面
8b 端部
9 下部金属マスク
10 上部金属マスク
11 上部金属マスクのパターン形成部
12 上部金属マスクの非パターン部
13 支持体
14 位置決めガイド
15 マスク固定治具
16 非蒸着面
17 磁石
18 プレート
20 回転軸
38 プレート押さえ用治具
50 蒸着源
d 上部金属マスクの板厚
D 下部金属マスクの板厚

Claims (16)

  1. 1枚の基板上に多数個の回路ユニットを閉回路パターンもしくは略閉回路パターンで形成するにあたって、センサなどの電極部と配線部とを基板の表裏両面に物理蒸着により薄膜形成するようにした回路基板の製造方法において、基板の表裏両面に、電極部のパターン形成部と配線部のパターン形成部とを有し且つ配線部のパターン形成部の一部に非パターン部間に接続される橋状の補強部が設けられた下部金属マスクを挟み込み、下部金属マスクの非パターン部を基板に密着させた状態で基板上に電極部と配線部とを薄膜形成する工程と、基板の表裏両面に下部金属マスクを各々配置した状態で、一方の下部金属マスク上に、少なくとも下部金属マスクの橋状の補強部上に対向する配線部のパターン形成部を有し且つ電極部が非パターン部となっている上部金属マスクを配置して、配線部を薄膜形成する工程とを備えていることを特徴とする回路基板の製造方法。
  2. 橋状の補強部を、各回路ユニットの配線部の接続部位における1ユニットとして切り出される切り代部に配置したことを特徴とする請求項1記載の回路基板の製造方法。
  3. 橋状の補強部を二股状に形成すると共に、その間隔を下部金属マスクの板厚以上としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の回路基板の製造方法。
  4. 橋状の補強部の断面形状が基板側に向かって先細状となるように、橋状の補強部の側面を傾斜させたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
  5. 橋状の補強部の断面形状を、蒸着源側に膨らんだアーチ状としたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
  6. 橋状の補強部の上に被せられる上部金属マスクの配線部用パターン形成部の大きさを、橋状の補強部の端部から少なくとも上部金属マスクの板厚以上の広がりを持つ大きさにしたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
  7. 橋状の補強部を含む下部金属マスク全体を、下部金属マスクの板厚の1/2以下の太さでメッシュ状に織られた支持体にて支持することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
  8. 基板上の1つの回路ユニットに対して2箇所以上の隣接する回路ユニットからの配線を行うことを特徴とする請求項1記載の回路基板の製造方法。
  9. 基板の表裏両面の下部金属マスクを基板に対して各々位置決めし且つ上部金属マスクを位置決めするための位置決めガイドを備えたマクス固定治具を設けたことを特徴とする請求項1記載の回路基板の製造方法。
  10. 1枚の基板上に多数個の回路ユニットを閉回路パターンもしくは略閉回路パターンで形成するにあたって、センサなどの電極部と配線部とを基板の表裏両面に物理蒸着により薄膜形成するようにした回路基板の製造方法において、基板の表裏両面に、電極部のパターン形成部と配線部のパターン形成部とを有し且つ配線部のパターン形成部の一部に非パターン部間に接続される橋状の補強部が設けられた下部金属マスクを挟み込み、下部金属マスクの非パターン部を基板に密着させた状態で基板上に電極部と配線部とを薄膜形成する工程と、基板の表裏両面に下部金属マスクを挟み込むと共に一方の下部金属マスク上に、少なくとも下部金属マスクの橋状の補強部上に対向する配線部のパターン形成部を有し且つ電極部が非パターン部となっている上部金属マスクを配置して基板上に配線部を薄膜形成し、その後、上部金属マスクのみを取り外して、基板上に電極部と配線部とを薄膜形成する工程とを備えていることを特徴とする回路基板の製造方法。
  11. 上部金属マスク及び下部金属マスクを各々磁性体とし、非蒸着面側に配置した磁石により基板と各金属マスクとを吸着保持することを特徴とする請求項1記載の回路基板の製造方法。
  12. 剛性の高い非磁性体からなるプレートを非蒸着面側の下部金属マスクと磁石との間に配置し、蒸着面側の上部金属マスクの脱着時においてプレートを仮固定して磁石を上部金属マスクから離反する方向に移動させるためのプレート押さえ用治具を設けたことを特徴とする請求項11記載の回路基板の製造方法。
  13. 上部金属マスクの脱着時において磁石を上部金属マスクから一時的に遠ざけるための手段を設けたことを特徴とする請求項11記載の回路基板の製造方法。
  14. 蒸着源に対して基板の表裏方向が入れ替わるように基板を回転させるための回転軸を設け、基板を回転させながら薄膜形成を行うことを特徴とする請求項1記載の回路基板の製造方法。
  15. 薄膜形成用の蒸着粒子の平均自由行程が金属マスクのパターン形成部の開口幅より小さい雰囲気ガス中にて薄膜形成を行うことを特徴とする請求項1記載の回路基板の製造方法。
  16. 焦電効果のある基板の表裏両面に赤外線センサの電極部と配線部とを薄膜形成することを特徴とする請求項1記載の回路基板の製造方法。
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